特許拒絶査定不服審判
2015-021619
LNG燃料供給システム
- 審判番号
- 2015-021619
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-194614
- 請求日
- 2015年12月04日
- 審決日
- 2017年01月23日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヒュンダイ ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 平岩 正一
- 審判官 渡邊 真
- 審判官 栗田 雅弘
- 分類
- P18 .121-Z (F17C) / P18 .575-Z (F17C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-194614「LNG燃料供給システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 4日出願公開、特開2014-159870〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本件出願は、平成25年9月19日(パリ条約による優先権主張日2013年(平成25年)2月19日、大韓民国)の出願であって、平成26年9月29日付け(同年10月7日発送)で拒絶理由が通知され、平成27年1月7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月31日付け(同年8月4日発送)で拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成27年12月4日に本件審判の請求と同時に手続補正書が提出され、平成28年4月19日に上申書が提出されたものである。
第2.平成27年12月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年12月4日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
平成27年12月4日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について本件補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(1)本件補正前
「【請求項1】
LNG貯蔵タンクからエンジンまで連結された燃料供給ラインと、
前記燃料供給ライン上に具備され、前記LNG貯蔵タンクから排出されたLNGを高圧で加圧して圧力が臨界圧力より低くて温度が臨界温度より低い液体状態で、圧力が臨界圧力より高くて温度が臨界温度より低い過冷却状態に変化させるポンプと、
前記エンジンと前記ポンプとの間の前記燃料供給ライン上に具備され、前記ポンプから供給される前記過冷却液体状態のLNGを加熱して超臨界状態に相変化させて前記エンジンに供給する熱交換器と、
を含み、
前記ポンプと前記熱交換器は、それぞれLNGを変化させ、LNGが液体から気体に気化される潜熱区間を迂回させることを特徴とするLNG燃料供給システム。」
(2)本件補正後
「【請求項1】
LNG貯蔵タンクからエンジンまで連結された燃料供給ラインと、
前記燃料供給ライン上に具備され、前記LNG貯蔵タンクから排出されたLNGを高圧で加圧して圧力が臨界圧力より低くて温度が臨界温度より低い液体状態で、圧力が臨界圧力より高くて温度が臨界温度より低い過冷却液体状態に変化させるポンプと、
前記エンジンと前記ポンプとの間の前記燃料供給ライン上に具備され、前記ポンプから供給される前記過冷却液体状態のLNGを加熱して、前記LNGの圧力が臨界圧力より高く、前記LNGの温度が臨界温度より高い、超臨界状態に相変化させて前記エンジンに供給する熱交換器と、
を含み、
前記ポンプは、前記液体状態のLNGを前記過冷却液体状態のLNGに変化させ、前記熱交換器は、前記過冷却液体状態のLNGを前記超臨界状態のLNGに相変化させて、LNGが液体から気体に気化される潜熱区間を迂回させ、前記熱交換器は、前記臨界温度より高いエンジン要求温度に前記LNGを加熱することを特徴とするLNG燃料供給システム。」
2.補正の適否
請求人が審判請求書の請求の理由の(3)(b)で主張するとおり、本件補正の特許請求の範囲の請求項1についての補正は当初明細書の段落0046、0049、0008、当初図面の図4等の記載を根拠としており、本件補正前の請求項1の発明特定事項における熱交換器及びポンプの機能を限定し明確化するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正の特許請求の範囲の請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。
(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。
(2)引用文献に記載された発明
ア.これに対し、原査定の拒絶理由で引用され、本件優先日前に発行された国際公開第2011/078689号(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。([]内は当審による仮訳を示す。)
(ア)「A system for gas supply to dual-fuel or gas engines and boil-off gas reliquefaction
The present invention relates to the energy integration and utilization of waste heat available in combined systems for fuel gas supply and Boil-Off Gas (BOG) reliquefaction, and in particular a gas supply system for engines such as dual- fuel or gas engines for vessels transporting liquefied nature gas (LNG) and including a BOG reliquefaction plant.」(1頁2~8行)
[デュアル燃料又はガスエンジンへのガス供給及びボイルオフガス再液化システム
本発明は、燃料ガス供給及びボイルオフガス(BOG)再液化、特に液化天然ガス(LNG)を輸送し、BOG再液化プラントを含む船舶用のデュアル燃料又はガスエンジンのようなエンジン用のガス供給システム用の複合システムで利用可能な廃熱のエネルギー統合及び利用に関する。]
(イ)「Condensate from the BOG reliquefaction plant or LNG from the cargo tanks being supplied with the cargo pumps is sent to at least one high pressure (HP) pump for feeding the evaporator. LNG normally above the supercritical pressure is heated to "gas" in a heat exchanger. This heat exchanger is referred to as an evaporator or vaporizer. Thereafter, the high pressure gas is delivered to the propulsion engines or gas turbines, not shown. The discharge pressure of such a high pressure pump is typically up to 30 MPa (300 bar) at design case. The LNG temperature at higher pressure is typically in a range from -140 to -150 °C. As LNG at high pressure is supercritical, it is not possible to distinguish between liquid and gas phase. Nevertheless, the heating of LNG to ambient temperature at high pressure is referred to as evaporation in this document.
...
LNG at typically -160 °C and 2 to 40 bar is pressurized by means of at least one cryogenic pump (HP pump) arranged in front of the LNG vaporizer to typically 300 bar. Then, LNG is evaporated and heated to ambient condition - typically +40 °C in a heat exchanger, i.e. the evaporator.」(1頁32行~2頁27行)
[カーゴポンプによって供給されるBOG再液化プラントからの凝縮物またはカーゴタンクからのLNGは、蒸発器に供給するための少なくとも1つの高圧(HP)ポンプに送られる。通常、超臨界圧力を超えるLNGは、熱交換器において「ガス」に加熱される。この熱交換器は、蒸発器または気化器と呼ばれる。その後、高圧ガスは、図示されていない推進用のエンジンまたはガスタービンに供給される。このような高圧ポンプの吐出圧力は、典型的には設計上30MPa(300バール)までである。より高圧でのLNG温度は、典型的に-140~-150°Cの範囲内である。高圧のLNGは超臨界であるため、液相と気相を区別することはできない。それにもかかわらず、高圧での周囲温度へのLNGの加熱は、本明細書では蒸発と称される。
・・・
典型的には-160°C及び2~40バールのLNGは、LNG気化器の前に配置された少なくとも1つの低温ポンプ(HPポンプ)によって典型的には300バールに加圧される。次いで、LNGを蒸発させ、熱交換器、すなわち蒸発器において周囲条件、典型的には+40°Cまで加熱される。]
すなわち、カーゴタンクからカーゴポンプで供給されたLNGは、蒸発器に供給するためのHPポンプに送られ、高圧ポンプから吐出された超臨界圧力よりも高い圧力のLNGが加熱されて「ガス」になり、このガスが推進用エンジンに供給されること、典型的には-160°Cで2~40バールのLNGがHPポンプで300バールまで加圧され、この高圧状態のLNGの温度は-140~-150°Cであり、超臨界状態であること、さらには、高圧のLNGは、高圧状態で環境温度、典型的には+40°Cまで加熱されることが記載されている。
(ウ)「At, first it is considered useful to give a more detailed summary of the system for gas supply to dual- fuel or gas engines and BOG reliquefaction as regards the patent application above. Both condensate from the BOG reliquefaction plant or LNG from at least one cargo tank 5 being supplied with a cargo pump 51 via a line 52 is sent to at least one FTP pump 53 for feeding an evaporator 6 as to produce and deliver gas via a line 54 to the propulsion engines or gas turbines, not shown. Condensate can be returned to the cargo tank via a line 55. Is is also possible to mix condensate and LNG in a separator 10 arranged upstream the HP pump 53, the separator being vented by means of a valve 101.
The system shown in Figure 1 is based on an evaporation of LNG at high pressure with a heating source. The evaporation is effected by means of the closed loop comprising the LNG evaporator or vaporizer 6, a brine pump 7, and a heating source in the form of a steam/hot water steamer 8. LNG at typically -160 °C and 2 to 40 bar is pressurized by means of at least one cryogenic pump, i.e. the HP pump 53, arranged in front of the LNG vaporizer 6 to typically 300 bar.」(4頁24行~5頁2行)
[最初に、上記の特許出願に関するデュアル燃料またはガスエンジンへのガス供給のシステム及びBOG再流動化のためのシステムのより詳細な要約を与えることは有用であると考えられる。BOG再液化プラントからの凝縮液または少なくとも1つのカーゴタンク5からライン52を介してカーゴポンプ51によって供給されるLNGの両方が、図示されていない推進用のエンジンまたはガスタービンにライン54を介してガスを生成及び送達するために蒸発器6に供給する少なくとも1つのFTPポンプ53に送られる。凝縮液は、ライン55を介してカーゴタンクに戻すことができる。HPポンプ53の上流に配置された分離器10に凝縮液とLNGを混合することも可能であり、分離器はバルブ101によって排気される。
図1に示すシステムは、加熱源を用いて高圧でLNGを蒸発させることに基づいている。蒸発は、LNG蒸発器または気化器6、ブラインポンプ7、及び蒸気/温水スチーマー8の形態の加熱源を含む閉ループによって行われる。典型的には-160°C及び2~40°CのLNGが、LNG気化器6の前に配置された少なくとも1つの低温ポンプ、すなわちHPポンプ53によって、典型的には300バールに加圧される。]
(エ)これらの記載事項を、技術常識を考慮しながら整理すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「LNGを含むカーゴタンク5から推進用エンジンまで連結されたラインと、
前記ライン上に具備され、前記カーゴタンク5から排出されたLNGを-160°Cで2~40バールの状態から、-140~-150°Cで300バールの超臨界状態に変化させるHPポンプと、
前記推進用エンジンと前記HPポンプとの間の前記ライン上に具備され、前記HPポンプから供給される前記高圧状態のLNGを加熱して、高圧状態で+40°Cに加熱されたガスの状態に相変化させて前記推進用エンジンに供給する蒸発器と、
を含み、
前記HPポンプは、液体状態のLNGを前記高圧状態のLNGに変化させ、前記蒸発器は、前記高圧状態のLNGを環境温度まで加熱するガス供給システム。」
イ.原査定の拒絶理由で引用され、本件優先日前に頒布された刊行物である特開2000-230478号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液化ガスの加圧装置に関するものであり、更に詳しくは真空断熱された容器等に充填されている液化ガスを液体状態のまま効率よく加圧して、その容器内以上の高圧の液化ガスや、更にその加圧された液化ガスを所定の温度まで加熱して、例えば超臨界状態のガスを得るための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】通常使用される二酸化炭素などはボンベに常温で加圧充填されたり、あるいは-20℃程度まで冷却し、圧力を2MPa程度まで低下させた真空断熱された容器(以下、ボンベと略称する)に充填されている。そして、このような液化二酸化炭素をボンベ内以上の圧力、例えば10MPaの液化ガス状態にして使用する場合には、その液化二酸化炭素が供給される圧縮機の周囲を低温冷凍機を用いて-30℃付近まで冷却しながら、1500~2000rpmのような高速で回転するモーターを用いた多段ポンプによって圧縮するか、複数のピストンを使用した往復ポンプをモーターで駆動して圧縮する液加圧方式を用いていた。また、二酸化炭素を高圧の気体状態、例えば超臨界状態で使用する場合には、液化二酸化炭素を臨界温度以上に加熱して気化蒸発させた後、気体圧縮機(ブースター)で圧縮するガス加圧方式が一般的に採用されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の液加圧方式にあっては、圧縮機内に液化二酸化炭素を吸い込むときに、二酸化炭素が気化して吸い込み能力が低下する現象(キャビテーション)を防止するため、上記したように、その圧縮機の周辺を別途設置する冷凍機によって作られた冷媒で冷却する必要があり、従って設備が大型化し、コストの増加と設置スペースが大きくなる問題があった。また、ガス加圧方式の場合には、液化二酸化炭素を気化蒸発させる蒸発器が必須であり、加圧には電動機やエアを駆動源とするブースターが使われるが、圧縮時の発熱を除去する冷却装置が必要となり、一般に効率が低く、コンパクトで大容量の装置を製作するのは困難であった。
【0004】
そこで、本発明は、液化ガスを液状のまま圧縮して運転効率を高く保持するとともに、別途冷却設備を設ける必要をなくしてコンパクトに構成することができ、高圧の液化ガスはもちろん、それを別途設ける加熱器で加熱して、例えば超臨界状態のガスとして取り出すことも可能にした液化ガスの加圧装置を得ることを目的とするものである。」
(イ)これらの記載事項を、技術常識を考慮しながら整理すると、引用文献2には以下の技術的事項が記載されていると認める。
「超臨界状態のガスを得るために、従来は、液化ガスを気化蒸発させた後に圧縮していたのに対して、液化ガスを液状のまま圧縮するようにして、これにより運転効率を向上すること。」
(3)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「LNGを含むカーゴタンク5」「推進用エンジン」は、それぞれ補正発明の「LNG貯蔵タンク」「エンジン」に相当し、引用発明の「ライン」は、加熱されたLNGを推進用エンジンに供給するものであるから、補正発明の「燃料供給ライン」に相当する。
また、引用発明では、カーゴタンク5からカーゴポンプ51を用いて供給されたLNGを、HPポンプによって超臨界圧力よりも高い圧力とするところ、天然ガスの主成分であるメタンの臨界温度と臨界圧力は-82.6°C、46.4barであって、天然ガスの臨界温度と臨界圧力も大きくは変わらない。
してみると、引用発明の「-160°Cで2~40バールの状態」及び「-140~-150°Cで300バールの超臨界状態」は、それぞれ補正発明の「圧力が臨界圧力より低くて温度が臨界温度より低い液体状態」及び「圧力が臨界圧力より高くて温度が臨界温度より低い過冷却液体状態」に相当するから、引用発明の「HPポンプ」は補正発明の「ポンプ」に相当する。
さらに、引用発明では、高圧ポンプから吐出された超臨界圧力よりも高い圧力のLNGを蒸発器によって+40°Cに加熱することから、引用発明の「高圧状態で+40°Cに加熱されたガスの状態」は補正発明の「圧力が臨界圧力より高く、前記LNGの温度が臨界温度より高い、超臨界状態」に相当し、引用発明の「蒸発器」は補正発明の「熱交換器」に相当する。
そして、引用発明の「ガス供給システム」は、LNGを加熱して推進用エンジンに供給するから補正発明の「LNG燃料供給システム」に相当する。
したがって、補正発明と引用発明とは、次の点で一致している。
「LNG貯蔵タンクからエンジンまで連結された燃料供給ラインと、
前記燃料供給ライン上に具備され、前記LNG貯蔵タンクから排出されたLNGを高圧で加圧して圧力が臨界圧力より低くて温度が臨界温度より低い液体状態で、圧力が臨界圧力より高くて温度が臨界温度より低い過冷却液体状態に変化させるポンプと、
前記エンジンと前記ポンプとの間の前記燃料供給ライン上に具備され、前記ポンプから供給される前記過冷却液体状態のLNGを加熱して、前記LNGの圧力が臨界圧力より高く、前記LNGの温度が臨界温度より高い、超臨界状態に相変化させて前記エンジンに供給する熱交換器と、
を含み、
前記ポンプは、前記液体状態のLNGを前記過冷却液体状態のLNGに変化させ、前記熱交換器は、前記過冷却液体状態のLNGを前記超臨界状態のLNGに相変化させて、前記熱交換器は、前記臨界温度より高いエンジン要求温度に前記LNGを加熱するLNG燃料供給システム。」
そして、補正発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
[相違点]
補正発明では、「LNGが液体から気体に気化される潜熱区間を迂回させ」るのに対して、引用発明では、潜熱区間を迂回する旨が明記されていない点。
[相違点]について
引用文献2には、補正発明と同様、超臨界状態のガスを得るために、従来、液化ガスを気化蒸発させた後に圧縮していたのに対して、液化ガスを液状のまま圧縮するようにして、これにより運転効率を向上するとの技術的事項が記載されている。上記技術的事項は、運転効率向上のため、液化ガスの圧縮を液状のまま行うようにしたものであるから、「潜熱区間を迂回させ」るものといえる。そして、引用発明においても、運転効率を向上させようとすることは当然行われることであり、引用発明の熱交換器によるLNGの相変化を液体から気体に気化される潜熱区間を迂回させたものとして、運転効率を向上させることも、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、上記相違点にかかる構成は引用文献2に記載されており、補正発明は、引用発明に引用文献2に記載の技術的事項を適用することにより当業者が容易に想到し得たものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。
なお、審判請求人は、上申書の(2)(c-2)において、
「引用文献1には、LNGの相変化曲線についても、超臨界点についても記載はありません
・・・引用文献1には、上記(a)~(c)の状態変化を辿って、LNGが供給されることが記載されているとはいえず、引用文献1は、LNGの状態変化を制御してエネルギー使用効率を向上するという、本願発明1の課題についても、また、その解決手段についても、記載ないしは示唆するものではありません。引用文献2、3にも、本願発明1の課題および解決手段は、記載されておらず、また、示唆もされていません。」
等と主張しているが、引用文献1には、「超臨界圧力を超えるLNGは、熱交換器において「ガス」に加熱される。」こと、「高圧のLNGは超臨界であるため、液相と気相を区別することはできない。」こと、及び、「典型的には-160°C及び2~40バールのLNGは、LNG気化器の前に配置された少なくとも1つの低温ポンプ(HPポンプ)によって典型的には300バールに加圧される。次いで、LNGを蒸発させ、熱交換器、すなわち蒸発器において周囲条件、典型的には+40°Cまで加熱される。」といった状態変化を辿って、LNGが供給されることが記載されており、また、引用文献2には、上記のとおり、運転効率の向上を図って液化ガスを液状のまま圧縮することが記載されており、これはLNGの状態変化を制御してエネルギー使用効率を向上するものである。
また、引用文献1において「-140~-150°Cで300バールの超臨界状態」にしたLNGを+40°Cまで加熱するに際して、圧力を300バールから一旦下げることが当然であると認識することもできない。
よって、審判請求人による上記主張は、採用することができない。
3.むすび
したがって、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。
第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1~8に係る発明は、平成27年1月7日に手続補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示すとおりである。
2.引用文献に記載された発明
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された引用文献及びその記載内容は上記第2.2.(2)に示したとおりである。
3.対比・検討
本願発明は、上記第2.2.で検討した補正発明において、「過冷却状態」、「超臨界状態」について付加された要件を省き、ポンプ、熱交換器の態様について付加された限定事項を削除するものである。
そうすると、本願発明を構成する事項のすべてを含み、さらに他の事項を付加した補正発明が、上記第2.2.(4)で示したとおり、引用発明、及び、引用文献2に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、審判請求人は上申書において、
「LNG貯蔵タンクからエンジンまで連結された燃料供給ラインと、
前記燃料供給ライン上に具備され、前記LNG貯蔵タンクから排出されたLNGを高圧で加圧して圧力が臨界圧力より低くて温度が臨界温度より低い液体状態で、圧力が臨界圧力より高くて温度が臨界温度より低い過冷却液体状態に変化させるポンプと、
前記エンジンと前記ポンプとの間の前記燃料供給ライン上に具備され、前記ポンプから供給される前記過冷却液体状態のLNGを加熱して、前記LNGの圧力が臨界圧力より高く、前記LNGの温度が臨界温度より高い、超臨界状態に相変化させて前記エンジンに供給する熱交換器と、
を含み、
前記ポンプは、前記LNGを1bar~25barで加圧する、前記LNG貯蔵タンク中に設けられた、ブースティングポンプと、前記ブースティングポンプによって加圧された前記LNGを、200bar~400barで加圧する、高圧ポンプを含み、
前記高圧ポンプは、前記液体状態のLNGを前記過冷却液体状態のLNGに変化させ、前記熱交換器は、前記過冷却液体状態のLNGを前記超臨界状態のLNGに相変化させて、LNGが液体から気体に気化される潜熱区間を迂回させ、前記熱交換器は、前記臨界温度より高いエンジン要求温度に前記LNGを加熱し、
前記LNGは、ボイルオフガスと熱交換されず、また、ボイルオフガスと混合されずに、前記エンジンに供給されることを特徴とするLNG燃料供給システム。」
との補正案を示して、
「補正案により補正される請求項1に係る発明によれば、『前記LNGを1bar~25barで加圧する、前記LNG貯蔵タンク中に設けられた、ブースティングポンプ』との発明特定事項により、『(a)LNGの圧力が臨界圧力より低くて温度が臨界温度より低い液体状態から(b)LNGの圧力が臨界圧力より高くて温度が臨界温度より低い過冷却液体状態に変化させる』ことが、より明確になると思料します。また、『ボイルオフガスと熱交換されず、また、ボイルオフガスと混合されずに、前記エンジンに供給される』との発明特定事項により、引用文献1に記載された、タンク中のカーゴポンプから熱交換器までの供給経路に、オプチマイザーおよびセパレータを設ける必要性がないことが、明確になると思料します。」
と述べている。
しかしながら、本願発明は、明確性が問題にされたのではなく、特許法第29条第2項の規定により拒絶をすべき旨の査定を受けたものであり、また、オプチマイザーおよびセパレータの要否についても当業者がBOG処理等を考慮して適宜に決し得る事項と認められるから、上記補正案による補正を受容したとしても拒絶理由が解消されるものとは認められない。
4.むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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