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特許拒絶査定不服審判

2018-005968

車載貯蔵容器への水素ガス充填方法

審判番号
2018-005968
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-245802
請求日
2018年05月01日
審決日
2019年04月08日
公報発行日
2019年07月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】岩谷産業株式会社
  • 【請求人代理人】鈴江 正二
審判長/審判官
  • 審判長 渡邊 豊英
  • 審判官 門前 浩一
  • 審判官 佐々木 正章
分類
P18 .121-WZ (F17C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-245802「車載貯蔵容器への水素ガス充填方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年6月4日出願公開、特開2015-102229〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成25年11月28日の出願であって、平成29年7月21日付けで拒絶理由が通知され、同年9月13日に意見書の提出と共に手続補正がされ、平成30年1月23日付けで拒絶査定(謄本送達日は、同月30日)がされ、これに対して、同年5月1日に拒絶査定不服審判が請求され、同年12月5日付けで当審から拒絶理由が通知され、平成31年2月8日に意見書が提出されたものである。 第2 本願発明 1 本願発明の要旨 本願発明(請求項の数2。)のうち請求項1に係る発明の要旨は、平成29年9月13日に手続補正された請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。 「水素ガス貯蔵容器(2)に貯蔵されている水素ガスを水素ガス移送路により自動車(C)に搭載されている車載貯蔵容器(3)に移送充填する車載貯蔵容器への水素ガス充填方法であって、 水素ガス移送路(4)の途中に2系統の水素ガス通路(5)・(6)を形成し、一方の水素ガス通路(5)に熱交換器(11)を介装して低温水素ガス通路とするとともに、他方の水素ガス通路(6)を常温水素ガス通路とし、低温水素ガス通路(5)の分岐部(7)と熱交換器(11)との間に流路絞り具(9)を介装するとともに、常温水素ガス通路(6)の分岐部(7)よりも下流部分に流路絞り具(10)を介装し、この各流路絞り具(9)・(10)の開度を予め定められた値に設定することで低温水素ガス通路(5)と常温水素ガス通路(6)をそれぞれ流れる水素ガスの流量比を固定し、熱交換器(11)に冷媒液化ガスを供給して冷媒液化ガスと低温水素ガス通路内を流れる水素ガスとの間で熱交換して低温水素ガス通路(5)内を流れる水素ガスを冷媒液化ガスの沸点温度域まで冷却し、熱交換器(11)の下流側の低温水素ガス通路(5)を流れる低温水素ガスと常温水素ガス通路(6)を流れる常温水素ガスとを合流させて所定温度範囲に設定された充填用水素ガスとし、この充填用水素ガスを車載貯蔵容器(3)に移送充填することを特徴とする車載貯蔵容器に移送充填する水素ガス充填方法。」 2 本願明細書の記載事項 本願明細書には、次の記載がある。 (1)「【0006】 この特許文献1に記載されている水素ガスの冷却技術は、水素ガスを供給する水素ガス供給路の途中にバイパス路を形成し、このバイパス路に液化ガスを冷媒とする熱交換器を介装して水素ガスの一部を冷却し、液化ガスとの熱交換により冷却された低温水素ガスと、水素ガス供給路を流通する常温水素ガスとを合流させることで所定温度範囲の充填用水素ガスを構成するようにしている。そして、この特許文献1に記載されている水素ガスの冷却技術では、水素ガス供給路を流れる常温水素ガスの流量と、バイパス路に流す水素ガスの流量とを分岐点の下流にそれぞれ設けた流量調整弁で調整し、この流量調整弁の開度を合流後の水素ガス供給路に設置した温度検出手段で検出した温度に基づきフィードバック制御するようにしている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0007】 【特許文献1】特開2011-127754号公報」 (2)「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 上述の特許文献1に記載されている水素ガスの冷却方法では、熱交換器で液化ガスと熱交換して-196℃~0℃の範囲に冷却した後の低温水素ガスと熱交換器を通らない常温水素ガスとを合流させた後の混合水素ガスの温度を検出し、その検出温度に基づき、熱交換器側に供給する水素ガス量と熱交換されない水素ガス量とをその分岐部の直後に配置した流量制御弁の開度を調整制御して、充填ガスを目標温度である-30℃~-40℃となるように制御している。この方法は、流量制御弁の開度を調整し、車載貯蔵容器に充填する水素ガスの温度を調節するため、温度がやや不安定になるという問題や、温度が安定するまでに時間がかかるという問題、また、合流させた後の水素ガス温度を検出し、それぞれの流量調整弁の開度を制御するための制御機構を燃料充填設備に組み込まなければならないことから燃料充填設備が複雑かつ大形化して、イニシャルコストが高くなるという問題を有していた。 【0009】 本発明は、コンパクトでイニシャルコストを低減できる燃料充填装置を使用して、車載貯蔵容器に所定量の水素ガスを所望の時間内に充填することのできる車載貯蔵容器への水素ガス充填方法を提供することを目的とする。」 (3)「【発明の効果】 【0012】 本発明では、車載貯蔵容器に水素ガスを移送貯蔵するに当たり、熱交換器で液化ガス冷媒と熱交換することで、液化ガスの沸点温度域まで冷却した低温水素ガスと高圧水素ガス貯蔵容器からの常温ガスとを、予め定められた流量比で混合させることで、所定温度範囲内の水素ガスにして、車載貯蔵容器に移送充填するものであるから、フィ-ドバック制御等の複雑な温度制御を行わなくてもよく、燃料充填設備(ディスペンサー)をコンパクトに構成することができてイニシャルコストの低減化を図ることができるだけでなく、予め設定された流量比で供給水素ガスの温度を決定しているから、供給水素ガス温度を短時間で安定させることができる。」 (4)「【実施例】 【0026】 低温水素ガス通路(5)を流れる高圧水素ガスと、常温水素ガス通路(6)を流れる高圧水素ガスの流量を設定する流量調節弁(9)・(10)の開度をそれぞれ20%および80%、及び、それぞれ40%および60%とした場合での混合ガスの温度は、次表の通りであった。その際の流量比はそれぞれ15:85、45:55程度であった。なお、H2 OUTガス温度は熱交換器出口での低温水素ガスの温度である。 【0027】 【表1】 「 」 第3 当審における拒絶理由の概要 平成30年12月5日付けの当審における拒絶理由通知の概要は次のとおりのものである。 「本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項1、2 <引用文献一覧> 1.特開2011-127754号公報(原査定の引用文献1) 3.特開2007-64473号公報(新たに引用)」 第4 引用文献について 1 原審の拒絶査定時に引用され、また、当審からの拒絶理由においても引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開2011-127754号公報には、次の記載がある。 (1)【背景技術】、段落【0002】 「水素自動車では、水素ガスを燃料タンクに高圧で充填することが要求されるため、水素ガスを燃料タンクに充填する際には、断熱圧縮による温度上昇が起きる。また、水素ガスは一般的なガスと異なり、断熱膨張させるとジュールトムソン効果により温度が上昇する性質を有する。 充填作業の効率を上げるため、水素ガスの供給流量を高く設定する場合には、水素ガスは高温になりやすいため、燃料タンクへの充填に際しては予め水素ガスを-30℃~-40℃程度に冷却する必要がある。」 (2)段落【0041】 「水素ガス流出管18は、主熱交換器2で冷却された水素ガスを外部の水素自動車などに給するためのもので、その温度を計測する温度計20と圧力を計測する圧力計(図示略)および圧力発信器(図示略)が設けられている。 温度計20からの水素ガス温度信号は水素ガス流入管17に設けられた流量調整弁19に送られ、水素ガス流出管18を流れる水素ガスの温度に基づいて補助熱交換器4の内管12に送り込まれる水素ガスの流量が制御されるように構成されている。」 (3)段落【0041】 「さらに、水素ガス流入管17と水素ガス流出管18とを直接結ぶバイパス管21が設けられている。このバイパス管21は、補助熱交換器4の内管12及び主熱交換器2の内管5と並列的に接続される形態となっており、水素ガス流入管17を流れる水素ガスの一部がバイパス管21を通って直接水素ガス流出管18に流れるようになっている。 バイパス管21には、流量調整弁22が設けられており、この流量調整弁22は上記温度計20からの水素ガス温度信号に基づいてその開度が調整されてバイパス管21を流れる水素ガスの流量が調整されるようになっている。」 (4)段落【0043】 「次に、本実施形態の水素ガス冷却装置1の運転方法について説明する。 先ず、水素ガス流入管17から温度0~40℃、圧力0~90MPa(ゲージ圧)の水素ガスを導入し、その流量を流量調整弁19により調整して補助熱交換器4の内管12に送り込む。 一方、ヘッドタンク3において、気化した液化ガスからなる排出ガスをヘッドタンク3から予備冷却ガス供給管11を介して補助熱交換器4の外管13内に供給する。」 (5)段落【0044】 「補助熱交換器4の内管12に供給された水素ガスは、内管12内を流れてその壁面に接することで予備冷却され、温度-196~0℃、圧力0~90MPa(ゲージ圧)の予備冷却された水素ガスとして出口12bから導出され、主熱交換器2の内管5に供給される。 補助熱交換器4の外管13内の排出ガスは、水素ガスを冷却した後に排出管14から系外へと排出される。」 (6)段落【0045】 「次に、補助熱交換器4によって予備冷却された温度-196~0℃、圧力0~90MPa(ゲージ圧)の水素ガスを主熱交換器2の内管5に送り込む。 一方、ヘッドタンク3から液化窒素などの液化ガスを、液化ガス供給管8を介して主熱交換器2の外管6内に供給して外管6内に貯める。」 (7)段落【0046】 「主熱交換器2の内管5に供給された水素ガスは、内管5内を流れてその壁面に接することで冷却され、水素ガス流出管18から温度-196~0℃、圧力0~90MPa(ゲージ圧)の冷却水素ガスとして導出され、水素自動車などに供給される。 一方、主熱交換器2の外管6内の液化ガスは、水素ガスを冷却することで加熱され、その一部は気化して気泡状となって液化ガス中に混合した状態となる。」 (8)段落【0048】 「この運転操作の際、水素ガス流出管18を流れる冷却水素ガスの温度を温度計20によって監視し、目的温度から逸脱した場合には、温度計20からの制御信号が水素ガス流入管17に設けられた流量調整弁19とバイパス管21に設けられた流量調整弁22に送信され、流量調整弁19、22の開度を調整して水素ガス流入管17あるいはバイパス管21を流れる未冷却の水素ガスの流量を変化させて目的の温度の冷却水素ガスが得られるようにする。」 (9)段落【0055】 「更にまた、本実施形態の水素ガス冷却装置1によれば、冷却水素ガスの温度調節を、流量調整弁19、22および戻り管15の3つの手段で行うことができるので、水素ガスの流量が大幅に変動しても、常に冷却水素ガスの温度を目的の温度域に保つことができる。」 (10)【図1】 「 」 (11)引用発明 以上から、引用文献1には、「水素ガス流入管17から温度0~40℃、圧力0~90MPa(ゲージ圧)の水素ガスを導入し、 その水素ガスの一部を水素ガス流入管17と水素ガス流出管18とを直接結ぶバイパス管21に送り込み、 その水素ガスの一部以外を液化窒素が外筒に供給された主熱交換器2の内筒に流すことにより温度-196~0℃、圧力0~90MPa(ゲージ圧)の冷却された水素ガスとし、 この運転操作の際、水素ガス流出管18を流れる冷却水素ガスの温度を温度計20によって監視し、目的温度から逸脱した場合には、温度計20からの制御信号が水素ガス流入管17に設けられた流量調整弁19とバイパス管21に設けられた流量調整弁22に送信され、流量調整弁19、22の開度を調整して水素ガス流入管17あるいはバイパス管21を流れる未冷却の水素ガスの流量を変化させて目的の温度の冷却水素ガスが得られるようにし、 水素ガス流出管18から水素自動車の燃料タンクに水素ガスを供給する充填方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 2 引用文献3の記載事項 上記引用文献3には、以下の記載がある。 (1)【技術分野】、【0001】 「本発明は,例えば,燃料電池自動車等へ燃料である水素ガスを供給する水素供給ステーション等に設けられるガス供給装置に関する。さらに詳細には,圧縮したガスを貯蔵する貯蔵タンクから高圧タンクへガスを供給するガス供給装置に関するものである。」 (2)段落【0008】 「本発明によれば,供給元ガス容器から出力されたガスは,高低温分離器で高温ガスと低温ガスとに分離される。そのうちの高温ガスは放熱器で放熱されるので,ある程度降温される。さらに,この降温された高温ガスと低温ガスとが合流部で合流されるので,合流後のガスは十分低温なものとなる。従って,供給先へ供給されるガスは十分低温に降温されているので,供給先へ供給された後も,タンクの仕様上要求される程度には低温状態とすることが容易にできる。従って,樹脂製のタンクに対しても高圧ガスを急速充填可能なガス供給装置となっている。」 (3)段落【0029】 「例えば,上記の例のように,低温ガス:高温ガス=80%:20%の流量比で低温ガスの温度が(入力ガスの温度-31.4℃)とできるとする。この場合,蓄ガス器13の温度が25℃であれば,合流部25における混合ガスの温度は2℃程度とできる。もしこれと同等の冷却能力を通常のチラーで得るためには,1kmol/minの急速充填をする場合,18kW程度の冷却能力が必要となる。本形態ではこれを節約できるのである。」 (4)【図1】 「 」 第5 対比・判断 1 検討 (1)本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の水素ガス流入管17、バイパス管21及び水素ガス流出管18をまとめたものは、その機能からみて、本願発明の「水素ガス移送路」に相当する。 イ 引用発明の、水素ガス流入管17のうちバイパス管との分岐点より下流部分と水素ガス流出管18のうちバイパス管との合流点より上流部分とを合わせた部分(以下、この部分を「本件冷却管路」という。)及びバイパス管21は、本願発明の「低温水素ガス通路」及び「常温ガス通路」にそれぞれ相当する。これらの管が「2系統の水素ガス通路」を形成することは、第4、1(10)から明らかである。 ウ 引用発明の燃料タンク、流量調整弁19及び流量調整弁22は、本願発明の「車載貯蔵容器(3)」、「流路絞り部(9)」及び「流路絞り部(10)」にそれぞれ相当する。 エ 引用発明の主熱交換器2は、本願発明の「熱交換器(11)」に相当し、液化窒素との間で熱交換されていることから、「沸点温度域まで冷却」していることは明らかである。 オ 引用発明においては、バイパス管を流れる水素ガスと本件冷却管路を流れる水素ガスとが合流する旨の記載はないが、第4、1(10)に摘記した【図1】の記載から明らかである。 (2)一致点について したがって、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。 「水素ガスを水素ガス移送路により自動車に搭載されている車載貯蔵容器に移送充填する車載貯蔵容器への水素ガス充填方法であって、 水素ガス移送路の途中に2系統の水素ガス通路を形成し、一方の水素ガス通路に熱交換器を介装して低温水素ガス通路とするとともに、他方の水素ガス通路を常温水素ガス通路とし、低温水素ガス通路の分岐部と熱交換器との間に流路絞り具を介装するとともに、常温水素ガス通路の分岐部よりも下流部分に流路絞り具を介装し、熱交換器に冷媒液化ガスを供給して冷媒液化ガスと低温水素ガス通路内を流れる水素ガスとの間で熱交換して低温水素ガス通路内を流れる水素ガスを冷媒液化ガスの沸点温度域まで冷却し、熱交換器の下流側の低温水素ガス通路を流れる低温水素ガスと常温水素ガス通路を流れる常温水素ガスとを合流させて所定温度範囲に設定された充填用水素ガスとし、この充填用水素ガスを車載貯蔵容器に移送充填することを特徴とする車載貯蔵容器に移送充填する水素ガス充填方法。」 (3)相違点について そして、本願発明と引用発明とは次の2点で相違する。 ア 相違点1 水素ガスの供給源について、本願発明においては、「水素ガス貯蔵容器(2)に貯蔵されている水素ガス」であるのに対し、引用発明では特定されていない点。 イ 相違点2 充填用水素ガスについて、本願発明においては、「この各流路絞り具(9)・(10)の開度を予め定められた値に設定することで低温水素ガス通路(5)と常温水素ガス通路(6)をそれぞれ流れる水素ガスの流量比を固定」することで「所定温度範囲に設定された充填用水素ガスと」するのに対して、引用発明においては、「水素ガス流出管18を流れる冷却水素ガスの温度を温度計20によって監視し、目的温度から逸脱した場合には、温度計20からの制御信号が水素ガス流入管17に設けられた流量調整弁19とバイパス管21に設けられた流量調整弁22に送信され、流量調整弁19、22の開度を調整して水素ガス流入管17あるいはバイパス管21を流れる未冷却の水素ガスの流量を変化させて目的の温度の冷却水素ガスが得られるよう」にする点。 (4)相違点についての判断 ア 相違点1について 水素ガスの供給源を水素ガス貯蔵容器とすることは、第4、2の(1)に摘記したように、引用文献3に「【技術分野】・・・燃料電池自動車等へ燃料である水素ガスを供給する・・・ガス供給装置に関する。・・・圧縮したガスを貯蔵する貯蔵タンクから高圧タンクへガスを供給するガス供給装置に関するものである。」と記載されていることからも明らかなように技術分野を構成する程に広く認知された、本願出願前周知の技術であったと認められるから、相違点1は、当業者があれば容易に選択できたことといえる。 イ 相違点2について (ア)引用発明における目的温度について 「目的温度」とは、第4、1(1)に摘記した「・・・-30℃~-40℃程度に冷却する必要がある。」という記載から、-30℃~-40℃程度であるといえる。そして、「目的温度から逸脱」とは、-30℃程度以上になるか、-40℃程度以下になることと解される。 (イ)検討 a 引用発明は、「水素ガス流出管18を流れる・・・目的の温度の冷却水素ガスが得られるよう」にするものであり、流量調整弁19、22の開度を制御するものである。 b 一方、本願発明は、前記相違点2に認定したように、各流路絞り具(9)(10)の開度を予め定められた値に設定することで、低温水素ガス通路(5)と常温水素ガス通路(6)をそれぞれ流れる水素ガスの流量比を固定するものであり、各流路絞り具(9)(10)の開度を制御しないものである。 c 一般にある機器における調整要素(引用発明では、流量調整弁19、22)を制御するか否かは、その機器に求められる性能やかけられるコスト等を勘案し、当業者が適宜決定し得る事項である。 d そして、前記第4、2(1)~(3)に摘記した引用文献3の記載のように、燃料電池自動車等へ水素ガスを供給する際に、低温ガスと高温ガスの流量比を固定することにより、樹脂製のタンクに対しても高圧ガスを充填可能であることが、本願出願前に知られていたのであるから、引用発明において、流量調整弁19、22の開度を制御しないようにすることに、阻害要因があるということはできない。 e むしろ、引用文献3の上記記載に接した当業者であれば、引用発明において、流量調整弁19、22の開度を制御することを止めて、それらの開度を予め定められた値に設定することで、水素ガス流入管17を流れるガスとバイパス管21を流れるガスの流量比を固定することには、容易に想到し得たというべきである。 (ウ)相違点2に係る効果の予測性について a 前記第2、2(3)に摘記した「フィ-ドバック制御等の複雑な温度制御を行わなくてもよく、燃料充填設備(ディスペンサー)をコンパクトに構成することができてイニシャルコストの低減化を図ることができる」という効果については、制御を行わないことから、自明な効果に過ぎない。 b 前記第2、2(3)に摘記した「予め設定された流量比で供給水素ガスの温度を決定しているから、供給水素ガス温度を短時間で安定させることができる。」という効果についても、流量比を固定するという手段を選択したことにより、当業者が予測可能な効果に過ぎない。 (5)小括 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献1、3の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であり、特許法第29条第 2項の規定により特許を受けることができない発明である。 2 平成31年2月8日提出の意見書における主張に対して (1)請求人は、「引用文献1に開示されている水素を冷却するための技術思想は、バイパス路を流れる水素ガス(非熱処理水素ガス)と、水素ガス流入管を流れる水素ガス(熱処理済み水素ガス)とを合流させた後の合流水素ガスのガス温度を検知し、この検知温度に基づき非熱処理水素ガスと熱処理済み水素ガスとの流量比を変更(流量比をフィードバック制御)しようとするものであって、本願発明の技術思想である、『冷媒液化ガスの沸点温度域まで冷却した水素ガスと、熱処理を行わない常温水素ガスとを、予め設定されている固定の流量比で混合させる』ものではなく、本願発明のこのような技術思想を想像させるような開示もなされていない。」と主張する。 (2)しかしながら、上記第4、1(9)に摘記したように、引用文献1には、「水素ガスの流量が大幅に変動しても、常に冷却水素ガスの温度を目的の温度域に保つことができる。」とあり、大幅なガスの流量の変化がない場合に、温度検知及び流量比を変更するための手段を省略できるかを検討することの動機付けになるといえる。請求人の主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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