特許拒絶査定不服審判
2023-020511
ヒューマンマシン統合システム及び方法
- 審判番号
- 2023-020511
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-556349
- 請求日
- 2023年12月01日
- 審決日
- 2024年10月08日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ケース ウェスタン リザーブ ユニバーシティ
- 【請求人代理人】西内 盛二
- 審判長/審判官
- 審判長 篠塚 隆
- 審判官 伊藤 隆夫
- 審判官 野崎 大進
- 分類
- P18 .121-Z (G06F) / P18 .575-Z (G06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-556349「ヒューマンマシン統合システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月24日国際公開、WO2020/191033、令和 4年 5月13日国内公表、特表2022-525424〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)3月18日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2019年(平成31年)3月18日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年11月11日 :翻訳文の提出
令和 4年11月25日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 4月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 7月27日付け:拒絶査定
令和 5年12月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年12月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年12月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 方法であって、
プロセッサを含むコントローラによってユーザから動きに関連する生理学的データを受信することと、
動きに関連する生理学的データから伝送可能な信号に翻訳する汎用翻訳層を含む前記コントローラによって、前記動きに関連する生理学的データを、ネットワークを介して送信される前記伝送可能な信号に翻訳することと、
前記コントローラによって伝送可能な信号を前記ネットワークを介して前記ネットワークに接続される少なくとも1つのデバイスに送信することとを含み、
前記少なくとも1つのデバイスは、動きに関連する生理学的データに基づいてアクションを実行するために、伝送可能な信号の少なくとも一部を、前記少なくとも1つのデバイスのコンポーネントによって使用され得る形式に翻訳する別の汎用翻訳層を含み、
前記少なくとも1つのデバイスが前記コントローラの汎用翻訳層へのフィードバック信号を送信し、且つ前記フィードバック信号が前記コントローラによってユーザが伝送可能なフォーマットに翻訳されることにより、前記コントローラは、前記少なくとも1つのデバイスによって実行されたアクションに関連する触覚を前記ユーザに経験させるための、前記ユーザの神経系の神経入力としての電気刺激信号を生成することを特徴とする方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和5年4月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 方法であって、
プロセッサを含むコントローラによってユーザから動きに関連する生理学的データを受信することと、
前記コントローラによって動きに関連する生理学的データを、ネットワークを介して送信される伝送可能な信号に翻訳することと、
前記コントローラによって伝送可能な信号を前記ネットワークを介して前記ネットワークに接続される少なくとも1つのデバイスに送信することとを含み、
前記少なくとも1つのデバイスは、動きに関連する生理学的データに基づいてアクションを実行するために、伝送可能な信号の少なくとも一部を、前記少なくとも1つのデバイスのコンポーネントによって使用され得る形式に翻訳し、
前記少なくとも1つのデバイスが前記ユーザへのフィードバック信号を前記コントローラに送信することにより、前記コントローラは、前記少なくとも1つのデバイスによって実行されたアクションに関連する神経的感覚を前記ユーザに経験させるための神経入力の、ユーザが伝送可能なフォーマットに翻訳するようにすることを特徴とする方法。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「コントローラ」、「少なくとも1つのデバイス」、及び「フィードバック信号」によりユーザに経験させる「神経的感覚」の内容とその伝達手段について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2018/212225号(2018年(平成30年)11月22日国際公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審により付与。以下同様。)
「[0028] [ロボットシステムの概要]
図1は、本発明の一実施形態に係るロボットシステム1の概略的な構成を示すブロック図である。
ロボットシステム1は、n(nは2以上の整数であるとする。)個の端末装置21-1~21-nと、n個のロボット31-1~31-nと、n個のロボット制御装置41-1~41-nと、ネットワーク51と、を備える。ネットワーク51は、例えば、インターネットであるが、他の任意のネットワークであってもよい。ネットワーク51は、例えば、有線のネットワークが用いられてもよく、無線のネットワークが用いられてもよく、又は、有線と無線の両方を含むネットワークが用いられてもよい。」
「[0032] [端末装置の概要]
図2は、本発明の一実施形態に係る端末装置21-1の概略的な構成を示すブロック図である。端末装置21-1は、ユーザ11-1の状態を検出するとともに、ユーザ11-1に対して各種の感覚を付与する感覚付与装置として機能する。端末装置21-1がユーザ11-1に付与する感覚は任意であるが、例えば視覚、聴覚、触覚、又は力覚である。端末装置21-1は、ロボット制御装置41-1を介して取得したロボット31-1の状態に基づく感覚をユーザ11-1に付与する。
[0033] 端末装置21-1は、検出部111と、バッファ112と、通信部113と、感覚付与部114と、制御部115を備える。通信部113は、送信部131と、受信部132を備える。制御部115は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む記憶部151を備える。
・・・(中略)・・・
[0039] 通信部113は、端末装置21-1に対応するロボット制御装置41-1との間で通信する。通信部113は、ネットワーク51を介してロボット制御装置41-1との間で通信する。また、通信部113は、WebRTCにより通信する。通信部113は、WebRTCにより、例えば、低遅延で、ハイフレームレートで通信することが可能である。
・・・(中略)・・・
[0044] 制御部115は、端末装置21-1における各種の制御を行う。制御部115は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、及びデータを記憶する記憶部151を備える。制御部115は、例えば、記憶部151に記憶されたパラメーターを使用して、記憶部151に記憶されたプログラムを実行することで、各種の制御を行う。」
「[0047] [ロボット制御装置の概要]
図3は、本発明の一実施形態に係るロボット制御装置41-1の概略的な構成を示すブロック図である。ロボット制御装置41-1は、通信部211と、バッファ212と、ロボット駆動部213と、検出部214と、制御部215と、を備える。通信部211は、受信部231と、送信部232と、を備える。制御部215は、CPUと、ROM及びRAMを含む記憶部251と、を備える。
[0048] 通信部211は、ロボット制御装置41-1に対応する端末装置21-1との間で通信する。本実施形態では、通信部211はネットワーク51を介して通信する。通信部211は、例えばWebRTCにより通信する。受信部231は、端末装置21-1から送信された操作者状態情報等のデータを受信する。送信部232は、送信対象のロボット状態情報等のデータを端末装置21-1に送信する。」
「[0056] [端末装置及びロボット制御装置における動作の概要]
端末装置21-1は、ユーザ11-1の状態を検出部111により検出し、検出されたデータを含む操作者状態情報を、ネットワーク51を介してロボット制御装置41-1に送信する。ロボット制御装置41-1は、端末装置21-1から送信された操作者状態情報をネットワーク51を介して受信し、受信された操作者状態情報に基づいてロボット駆動部213によりロボット31-1を駆動させる。ロボット31-1は、ロボット制御装置41-1のロボット駆動部213により駆動されて動作する。
[0057] ロボット制御装置41-1は、ロボット31-1の状態を検出部214により検出し、検出されたデータを含むロボット状態情報を、ネットワーク51を介して端末装置21-1に送信する。端末装置21-1は、ロボット制御装置41-1から送信されたロボット状態情報をネットワーク51を介して受信し、受信されたロボット状態情報に基づいて感覚付与部114によりユーザ11-1に対して感覚を付与する。
[0058] ここで、本実施形態では、ユーザ11-1により使用される前に、又はユーザ11-1により使用される際に、端末装置21-1とロボット制御装置41-1とが対応付けられる。端末装置21-1には自装置(当該端末装置21-1)に対応するロボット制御装置41-1のアドレスの情報が記憶され、ロボット制御装置41-1には自装置(当該ロボット制御装置41-1)に対応する端末装置21-1のアドレスの情報が記憶される。そして、互いに対応する端末装置21-1とロボット制御装置41-1が、記憶されたアドレスの情報を使用して、例えば当該アドレスの情報を送信対象の信号に含めることで、互いを通信相手として通信する。
[0059] [端末装置及びロボット制御装置におけるバッファによる遅延時間の調整]
図4は、本発明の一実施形態に係る端末装置21-1及びロボット制御装置41-1におけるバッファによる遅延時間の調整方法を説明するための図である。図4は、ユーザ11-1と、端末装置21-1の構成部である頭部機器311、指部機器312-1~312-2、胴部機器313-1~313-2と、端末装置21-1の構成部であるバッファ112を示している。また、図4は、ロボット31-1と、ロボット制御装置41-1の構成部である視覚機器411、音響機器412-1~412-2、指部機器413-1~413-2と、ロボット制御装置41-1の構成部であるバッファ212を示している。
[0060] ユーザ11-1は、頭部に頭部機器311を装着しており、右手の指に指部機器312-1を装着しており、左手の指に指部機器312-2を装着しており、右の胴部に胴部機器313-1を装着しており、左の胴部に胴部機器313-2を装着している。頭部機器311は、ユーザ11-1の両目に対応する位置に視覚部331を備えており、ユーザ11-1の右耳に対応する位置に音響部332-1を備えており、ユーザ11-1の左耳に対応する位置に音響部332-2を備えている。頭部機器311は、例えばヘッドマウントディスプレイである。視覚部331は、右目と左目のそれぞれごとにデータを処理する。
[0061] ここで、頭部機器311、指部機器312-1~312-2、及び胴部機器313-1~313-2は、端末装置21-1の検出部111の機能を有している。頭部機器311は、頭部の動きを検出する。指部機器312-1~312-2は、左右それぞれの指の動きを検出する。胴部機器313-1~313-2は、胴部の動きを検出する。端末装置21-1は、頭部機器311、指部機器312-1~312-2、及び胴部機器313-1~313-2が検出した各部の動きに基づいて、ユーザ11-1の動き(姿勢の変化)を検出するモーションキャプチャの機能を実現する。
[0062] なお、図4の例では、ユーザ11-1が左右の胴部機器313-1~313-2を別々に備えるが、ユーザ11-1が左右の胴部機器313-1~313-2の代わりに、1個の胴部機器を備えてもよい。また、図4は一例であり、検出部111としては、ユーザの状態を検出する他の任意の機器が用いられてもよく、例えば、人の指などを用いた操作内容を検出するタッチパネルが用いられてもよい。
[0063] 指部機器312-1~312-2、胴部機器313-1~313-2、視覚部331、及び音響部332-1~332-2は、端末装置21-1の感覚付与部114の機能を有している。指部機器312-1~312-2は、それぞれの指に触覚を与える機能を有している。胴部機器313-1~313-2は、胴部に触覚を与える機能を有している。視覚部331は、ユーザ11-1の両目(左右それぞれの目)に視覚を与える機能を有しており、例えば映像を表示する。音響部332-1~332-2は、ユーザ11-1の両耳(左右それぞれの耳)に聴覚を与える機能を有しており、例えば音響を出力する。図4は一例であり、感覚付与部114は、ユーザに他の感覚を付与する任意の機器であってもよい。
[0064] ロボット31-1は、人における両目に対応する位置に視覚機器411が装着されており、人における右耳に対応する位置に音響機器412-1が装着されており、人における左耳に対応する位置に音響機器412-2が装着されており、人における右手の指に対応する位置に指部機器413-1が装着されており、人における左手の指に対応する位置に指部機器413-2が装着されている。
[0065] ここで、視覚機器411、音響機器412-1~412-2、及び指部機器413-1~413-2は、ロボット制御装置41-1の検出部214の機能を有している。視覚機器411は、例えば、撮像装置を有しており、視覚に関するデータとして、映像データを生成する。本実施形態では、視覚機器411は、右目と左目のそれぞれごとに映像のデータを処理する。音響機器412-1~412-2は、聴覚に関するデータとして音響データを生成する。
[0066] 指部機器413-1~413-2は、それぞれの指の触覚に関するデータを生成する。触覚に関するデータは、指部機器413-1~413-2が触れた場所の硬さ及び凹凸の程度を示すデータである。検出部214は、ロボット31-1と着脱可能な機器を含んでもよい。また、他の構成例として、検出部214は、ロボット31-1と一体化されて着脱できない機器を含んでもよい。この場合、当該機器はロボット31-1の一部であると捉えられてもよい。
・・・(中略)・・・
[0071] 図4に示されるように、本実施形態では、端末装置21-1とロボット制御装置41-1との間における双方向のデータ通信として、主に2つのセッションがある。第1のセッションは、端末装置21-1からロボット制御装置41-1に向かう伝送セッションP1~P3を含むセッションである。第1のセッションにおいては、例えば、ユーザ11-1の状態を示す操作者状態情報が伝送される。操作者状態情報は、例えば、ユーザの目の動き、指の動き、又は胴の動きを示すデータを含む情報である。
[0072] 第2のセッションは、ロボット制御装置41-1から端末装置21-1に向かう伝送セッションP11~P13を含むセッションである。第2のセッションにおいては、例えば、ロボット31-1の状態を示す映像データ、音響データ、及び触覚データを含むロボット状態情報が伝送される。
[0073] ロボット31-1はユーザ11-1の動きに合わせて動作する。ユーザ11-1はロボット31-1の位置における映像を見て音響を聞いて触覚を感じて動作を行う。ロボット31-1及びユーザ11-1は、これらの動作を繰り返す。」
「
[図:0001419956000001.jpg]
」
「
[図:0001419956000002.jpg]
」
「
[図:0001419956000003.jpg]
」
「
[図:0001419956000004.jpg]
」
(イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ロボットシステム1は、n(nは2以上の整数であるとする。)個の端末装置21-1~21-nと、n個のロボット31-1~31-nと、n個のロボット制御装置41-1~41-nと、ネットワーク51と、を備え、([0028])
端末装置21-1は、検出部111と、バッファ112と、通信部113と、感覚付与部114と、制御部115を備え、([0033])
通信部113は、ネットワーク51を介してロボット制御装置41-1との間で、WebRTCにより通信し、([0039])
制御部115は、端末装置21-1における各種の制御を行い、CPU(Central Processing Unit)を備え、([0044])
ロボット制御装置41-1は、通信部211と、バッファ212と、ロボット駆動部213と、検出部214と、制御部215と、を備え、([0047])
通信部211は、ロボット制御装置41-1に対応する端末装置21-1との間で、ネットワーク51を介して、WebRTCにより通信し、([0048])
端末装置21-1は、ユーザ11-1の状態を検出部111により検出し、検出されたデータを含む操作者状態情報を、ネットワーク51を介してロボット制御装置41-1に送信し、([0056])
ロボット制御装置41-1は、端末装置21-1から送信された操作者状態情報をネットワーク51を介して受信し、受信された操作者状態情報に基づいてロボット駆動部213によりロボット31-1を駆動させ、([0056])
ロボット31-1は、ロボット制御装置41-1のロボット駆動部213により駆動されて動作し、([0056])
ロボット制御装置41-1は、ロボット31-1の状態を検出部214により検出し、検出されたデータを含むロボット状態情報を、ネットワーク51を介して端末装置21-1に送信し、([0057])
端末装置21-1は、ロボット制御装置41-1から送信されたロボット状態情報をネットワーク51を介して受信し、受信されたロボット状態情報に基づいて感覚付与部114によりユーザ11-1に対して感覚を付与し、([0057])
ユーザ11-1は、右手の指に指部機器312-1を装着しており、左手の指に指部機器312-2を装着しており、([0060])
指部機器312-1~312-2は、端末装置21-1の検出部111の機能を有し、左右それぞれの指の動きを検出し、([0061])
指部機器312-1~312-2は、端末装置21-1の感覚付与部114の機能を有し、それぞれの指に触覚を与え、([0063])
ロボット31-1は、人における右手の指に対応する位置に指部機器413-1が装着されており、人における左手の指に対応する位置に指部機器413-2が装着されており、([0064])
指部機器413-1~413-2は、ロボット制御装置41-1の検出部214の機能を有し、それぞれの指の触覚に関するデータを生成し、([0065],[0066])
触覚に関するデータは、指部機器413-1~413-2が触れた場所の硬さ及び凹凸の程度を示すデータであり、([0066])
端末装置21-1とロボット制御装置41-1との間における双方向のデータ通信として、主に2つのセッションがあり、第1のセッションは、端末装置21-1からロボット制御装置41-1に向かう伝送セッションであり、([0071])
第1のセッションにおいては、ユーザ11-1の状態を示す操作者状態情報が伝送され、([0071])
操作者状態情報は、指の動きを示すデータを含む情報であり、([0071])
第2のセッションは、ロボット制御装置41-1から端末装置21-1に向かう伝送セッションであり、([0072])
第2のセッションにおいては、ロボット31-1の状態を示す触覚データを含むロボット状態情報が伝送され、([0072])
ロボット31-1はユーザ11-1の動きに合わせて動作し、ユーザ11-1はロボット31-1の位置における触覚を感じて動作を行う、([0073])
ロボットシステム1の動作。」
イ 引用文献2
(ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2018/042799号(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「[0034] 触覚刺激部30は、後述する情報処理装置10からの制御に基づき、自身を保持するユーザに対して触覚をフィードックする。具体的な一例として、触覚刺激部30は、振動アクチュエータ等のような振動デバイスを含み、当該振動デバイスを振動させることで触覚を模擬してもよい。また、他の一例として、触覚刺激部30は、電気刺激装置を含み、当該電気刺激装置により皮膚に対して電気的刺激を加え、神経の発火を誘発することで触覚をフィードバックしてもよい。」
ウ 引用文献3
(ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった米国特許出願公開第2018/0081439号明細書(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「[0122] The haptic sensory cue can be a vibration applied to the predetermined finger. The vibration can have an intensity corresponding to an audio volume and/or pitch, and/or to a visual color and/or intensity. The haptic sensory cue can be an electrical impulse applied to a nerve or muscle corresponding to predetermined muscles and nerves being targeted for response. The visual indication can be displayed on a display comprising at least one of a pair of reality augmentation/virtual reality eyeglasses or goggles, a computer monitor, a television, a smart phone display or a personal information device display. The visual indication may comprise at least one of a color image, light intensity or light position displayed on a display. The visual information may comprise any image viewed by the user.」
(当審訳)
「[0122] 触覚的感覚キューは、所定の指に加えられる振動とすることができる。振動は、音声の音量および/またはピッチ、ならびに/または視覚的な色および/または強度に対応する強度を有することができる。触覚的感覚キューは、応答の対象となる所定の筋肉および神経に対応する神経または筋肉に印加される電気インパルスとすることができる。視覚的表示は、一対の現実拡張/仮想現実眼鏡またはゴーグル、コンピュータモニタ、テレビ、スマートフォンディスプレイ、または個人情報デバイスディスプレイのうちの少なくとも1つからなるディスプレイ上に表示され得る。視覚的表示は、ディスプレイ上に表示されるカラー画像、光強度または光位置のうちの少なくとも1つから構成されてもよい。視覚情報は、ユーザが見る任意の画像で構成されてもよい。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「ロボットシステム1の動作」は、システム全体からみた動作手順といえるから、これを「方法」と称することは任意である。
(イ)引用発明の「指部機器312-1~312-2」は、「端末装置21-1」の「検出部111」の機能を有し、左右それぞれの指の動きを検出する。
(ウ)引用発明においては、「端末装置21-1」と「ロボット制御装置41-1」との間における双方向のデータ通信のうち、「端末21-1」から「ロボット制御装置41-1」に向かう「第1のセッション」においては、指の動きを示すデータを含む「操作者状態情報」が伝送される。
(エ)上記(ウ)の「操作者状態情報」はユーザの動きに関連するデータであるといえるから、本件補正発明の「動きに関連する生理学的データ」に相当する。
(なお、「生理学的データ」については、本願明細書段落【0032】に、「生理学的データは、例えば1つ又は複数の電極(例えば、表面電極、植込み型電極など)によって記録されたデータ(例えば、筋肉に関するデータ、神経に関するデータなど)、入力デバイス(例えば、ボタンの押下、キーストローク、音声信号など)によって収集されたデータであってもよい。」と記載されており、「指部機器312-1~312-2」は「入力デバイス」に他ならない。)
(オ)引用発明における「端末装置21-1」の「制御部115」は、「端末装置21-1」における各種の制御を行い、CPUを備えるものであるから、「端末装置21-1」は、本件補正発明の「プロセッサを含むコントローラ」に相当するものといえる。
(カ)上記(イ)-(オ)を踏まえると、引用発明と本件補正発明は、「プロセッサを含むコントローラによってユーザから動きに関連する生理学的データを受信すること」を含む点で一致する。
(キ)引用発明における「端末装置21-1」の「通信部113」は、ネットワーク51を介して「ロボット制御装置41-1」との間で、WebRTCにより通信するものである。
WebRTCはネットワークを介したデータ通信の標準規格であるから、「端末装置21-1」が「操作者状態情報」を「ネットワークを介して送信される伝送可能な信号に翻訳する」ことは明らかであり、「端末装置21-1」に、当該翻訳機能を有する構成が存在することは、技術常識に照らして自明のことである。
(ク)上記(キ)の翻訳機能を有する構成を「汎用翻訳層」と称することは任意であるから、引用発明と本件補正発明は、「動きに関連する生理学的データから伝送可能な信号に翻訳する汎用翻訳層を含む前記コントローラによって、前記動きに関連する生理学的データを、ネットワークを介して送信される前記伝送可能な信号に翻訳すること」を含む点で一致する。
(ケ)引用発明の「ロボット制御装置41-1」と「ロボット31-1」のペアは「少なくとも1つのデバイス」といえるから、上記(ウ)、(キ)を踏まえると、引用発明と本件補正発明は、「前記コントローラによって伝送可能な信号を前記ネットワークを介して前記ネットワークに接続される少なくとも1つのデバイスに送信すること」を含む点で一致する。
(コ)引用発明の「ロボット制御装置41-1」は、「端末装置21-1」から送信された「操作者状態情報」をネットワーク51を介して受信し、受信された「操作者状態情報」に基づいてロボット駆動部213により「ロボット31-1」を駆動させ、「ロボット31-1」は、「ロボット制御装置41-1」の「ロボット駆動部213」により駆動されて動作するものであり、当該「動作」は、「少なくとも1つのデバイス」の「コンポーネント」における「アクション」といえる。
(サ)引用発明における「ロボット制御装置41-1」の「通信部211」は、ロボット制御装置41-1に対応する「端末装置21-1」との間で、ネットワーク51を介して、WebRTCにより通信するものである。
WebRTCはネットワークを介したデータ通信の標準規格であるから、「ロボット制御装置41-1」が、ネットワークを介して送信される「伝送可能な信号の少なくとも一部」を「ロボット31-1」によって使用され得る形式に翻訳することは明らかであり、「ロボット制御装置41-1」に、当該翻訳機能を有する構成が存在することは、技術常識に照らして自明のことである。
(シ)上記(エ)、(キ)、(ケ)-(サ)を踏まえると、上記(サ)の翻訳機能を有する構成を「別の汎用翻訳層」と称することは任意であるから、引用発明と本件補正発明は、「前記少なくとも1つのデバイスは、動きに関連する生理学的データに基づいてアクションを実行するために、伝送可能な信号の少なくとも一部を、前記少なくとも1つのデバイスのコンポーネントによって使用され得る形式に翻訳する別の汎用翻訳層」を含む点で一致する。
(ス)引用発明においては、「端末装置21-1」と「ロボット制御装置41-1」との間における双方向のデータ通信のうち、「ロボット制御装置41-1」から「端末21-1」に向かう「第2のセッション」においては、「ロボット31-1」の状態を示す触覚データを含む「ロボット状態情報」が伝送される。そして、ここでいう「触覚データ」は、「デバイスで実行されたアクションに関連する」ものといえる。
(セ)引用発明の「端末装置21-1」は、「ロボット制御装置41-1」から送信された「ロボット状態情報」をネットワーク51を介して受信し、受信された「ロボット状態情報」に基づいて「感覚付与部114」によりユーザ11-1に対して感覚を付与する。そして、ここでいう、「ロボット状態情報」は「端末21-1」への「フィードバック信号」であるといえる。
(ソ)引用発明において、ユーザ11-1が装着する「指部機器312-1~312-2」は、「端末装置21-1」の「感覚付与部114」の機能を有し、それぞれの指に触覚を与える。
(タ)上記(ス)-(ソ)の手順を実行するため、「端末装置21-1」の「通信部113」は、ネットワーク51を介して「ロボット制御装置41-1」との間で、(標準規格の)WebRTCにより通信するのであるから、「端末装置21-1」において、WebRTCに準ずる「ロボット状態情報」を「指部機器312-1~312-2」がユーザ11-1の指に触覚を与えることができるように翻訳することは明らかであり、双方向通信を前提とするネットワークにおいて、上記(キ)の翻訳機能を有する構成(汎用翻訳層)が当該翻訳機能(反対方向の翻訳機能)も実施できることは、技術常識に照らして自明のことである。
(チ)上記(ス)-(タ)を踏まえると、引用発明と本件補正発明は、「前記少なくとも1つのデバイスが前記コントローラの汎用翻訳層へのフィードバック信号を送信し、且つ前記フィードバック信号が前記コントローラによってユーザが伝送可能なフォーマットに翻訳されることにより、前記コントローラは、前記少なくとも1つのデバイスによって実行されたアクションに関連する触覚を前記ユーザに経験させるための」信号を生成する点で共通する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「 方法であって、
プロセッサを含むコントローラによってユーザから動きに関連する生理学的データを受信することと、
動きに関連する生理学的データから伝送可能な信号に翻訳する汎用翻訳層を含む前記コントローラによって、前記動きに関連する生理学的データを、ネットワークを介して送信される前記伝送可能な信号に翻訳することと、
前記コントローラによって伝送可能な信号を前記ネットワークを介して前記ネットワークに接続される少なくとも1つのデバイスに送信することとを含み、
前記少なくとも1つのデバイスは、動きに関連する生理学的データに基づいてアクションを実行するために、伝送可能な信号の少なくとも一部を、前記少なくとも1つのデバイスのコンポーネントによって使用され得る形式に翻訳する別の汎用翻訳層を含み、
前記少なくとも1つのデバイスが前記コントローラの汎用翻訳層へのフィードバック信号を送信し、且つ前記フィードバック信号が前記コントローラによってユーザが伝送可能なフォーマットに翻訳されることにより、前記コントローラは、前記少なくとも1つのデバイスによって実行されたアクションに関連する触覚を前記ユーザに経験させるための信号を生成することを特徴とする方法。」
【相違点】
「前記少なくとも1つのデバイスによって実行されたアクションに関連する触覚を前記ユーザに経験させるための信号」について、本件補正発明は、「前記ユーザの神経系の神経入力としての電気刺激信号」であるのに対し、引用発明は、「感覚付与部114(指部機器312-1~312-2)」がユーザ11-1に触覚を与えるための信号である点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
引用文献2、3に記載されるように、マンマシンインターフェースの技術分野においては、ユーザの神経系に電気刺激信号を直接印加することによって、ユーザに対して触覚によるフィードバックを与えることが、本願の優先日前から既に周知の技術であったから、引用発明においても、「前記少なくとも1つのデバイスによって実行されたアクションに関連する触覚を前記ユーザに経験させるための信号」として、上記周知技術を用い、本件補正発明とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年12月1日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年4月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定(令和5年7月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-19に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.国際公開第2018/212225号
2.国際公開第2018/042799号
3.米国特許出願公開第2018/0081439号明細書
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「コントローラ」、「少なくとも1つのデバイス」、及び「フィードバック信号」によりユーザに経験させる「神経的感覚」の内容とその伝達手段に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-020511