特許拒絶査定不服審判
2023-020395
認証装置、方法、プログラム、及び車両
- 審判番号
- 2023-020395
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-029057
- 請求日
- 2023年12月01日
- 審決日
- 2024年08月22日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】トヨタ自動車株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人小笠原特許事務所
- 【請求人】株式会社東海理化電機製作所
- 【請求人代理人】弁理士法人小笠原特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 吉田 美彦
- 審判官 須田 勝巳
- 審判官 山崎 慎一
- 分類
- P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 29057「認証装置、方法、プログラム、及び車両」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 9月 6日出願公開、特開2022-130087、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年2月25日の出願であって、令和5年6月16日付けで拒絶理由が通知され、令和5年8月2日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、令和5年8月29日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和5年12月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和5年8月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.本願請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献1、2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2011-058334号公報
2.特開2003-034235号公報
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって、補正前の請求項1に「前記第1認証部によって認証が失敗した場合に、」との事項(以下、「補正事項1」という。)を追加する補正は、補正前の第2認証部が、「前記ユーザーが所持する携帯機から取得した識別情報と前記車両に予め登録された識別情報とに基づいて、第2認証を行う」条件を、「前記第1認証部によって認証が失敗した場合」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、補正前の請求項5及び6に「前記第1認証が失敗した場合に、」との事項(以下、「補正事項2」という。)を追加する補正も、上記請求項1と同様、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記補正事項1及び補正事項2は、本願図面の図5及び本願明細書の段落0056~0059において、第1認証が失敗した場合(S502でいいえ)のときに、S505において第2認証が実行されることが記載されているから、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-7に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、令和5年12月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
車両に搭載される認証装置であって、
ユーザーから取得した生体情報と前記車両に予め登録された生体情報とに基づいて、第1認証を行う第1認証部と、
前記第1認証部によって認証が失敗した場合に、前記ユーザーが所持する携帯機から取得した識別情報と前記車両に予め登録された識別情報とに基づいて、第2認証を行う第2認証部と、
前記第1認証部及び前記第2認証部のいずれかによって認証が成功した場合に、前記車両の始動を許可する制御部と、
前記第1認証部の認証機能を有効又は無効に設定する設定部と、を備え、
前記設定部は、前記第1認証部の認証機能を無効にする指示があった場合、前記第2認証部による認証が成功していれば、前記第1認証部の認証機能を無効に設定する、
認証装置。」
なお、本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明である。
また、本願発明5は、本願発明1を「認証方法」の発明として記載したものであり、本願発明6は、本願発明1を「制御プログラム」の発明として記載したものであり、ともに本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
また、本願発明7は、本願発明1-4に記載の認証装置を搭載した「車両」の発明である。
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2011-058334号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加したものである。以下同様。)
ア 「【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両には、セキュリティシステム1が適用されている。セキュリティシステム1は、車両ユーザが所持する電子キー2と、車両側に設けられるセキュリティ装置3とを備えるとともに、両者間で双方向通信が可能となっている。尚、前記電子キー2は、その所持態様から一般的に携帯機と称されている。
・・・
【0024】
セキュリティ装置3は、無線通信による送信機能及び無線通信による受信機能を有するとともに、送信回路31、送信アンテナ32、受信アンテナ33、受信回路34、セキュリティ制御装置35を備えている。
・・・
【0027】
図1に戻って、受信アンテナ33は、リクエスト信号に対する応答信号として電子キー2から送信されてくるIDコード信号を受信するための媒体である。受信回路34は、受信アンテナ33で受信されたIDコード信号を復調して受信信号を生成するとともに、その受信信号をセキュリティ制御装置35に出力する。
【0028】
セキュリティ制御装置35は、不揮発性のメモリ35aを備えるとともに、そのメモリ35aには、当該セキュリティ装置3が搭載されている車両に適合する電子キー2(=正規の電子キー2)のIDコードと同一のIDコード(基準IDコード)が記憶されている。
・・・
【0030】
セキュリティ制御装置35は、車内スマート通信制御を実行したことに伴って、受信回路34からIDコード信号に関する受信信号が入力されたとき、その受信信号に含まれているIDコードと基準IDコードとが一致しているか否かを判断する。つまり、この場合、セキュリティ制御装置35は、IDコード照合(電気的なキー認証)を実行する。そして、セキュリティ制御装置35は、このIDコード照合により両IDコードが一致したとき、正規の電子キー2が車内スマート通信領域A32に存在している旨を認識する。その結果、このように正規の電子キー2が利用されたものと肯定判断されたとき、エンジンの始動が許可されるために必要な条件の1つが満たされる。
・・・
【0032】
前記セキュリティ制御装置35には、パワースイッチ40が電気的に接続されるとともに、このパワースイッチ40には、これを操作する者の指に関する生体情報(本実施形態では指静脈パターン)を検出するための指静脈センサ45が設けられている。尚、パワースイッチ40は、外部から押圧操作可能なボタンを備えたモーメンタリ式のプッシュスイッチよりなり、車両の電源をオフ位置からアクセサリ位置やイグニッションオン位置、さらにはエンジン始動位置に遷移させるために操作されるものである。そして、これに設けられる指静脈センサ45は、当該パワースイッチ40が押圧操作されることに伴って、それを行う者、つまりエンジンの始動が許可されるよう指静脈認証を受ける者(被験者)の指静脈パターンを検出し、この検出指静脈パターンデータをセキュリティ制御装置35に出力する。
【0033】
前記メモリ35aには、正規ユーザの指静脈パターンデータ(基準指静脈パターンデータ)が記憶され、セキュリティ制御装置35は、指静脈センサ45から入力された検出指静脈パターンデータを基準指静脈パターンデータと照合し、両データが一致したとき、被験者が正規ユーザであると判定する。
【0034】
そして、セキュリティ制御装置35は、電気的なキー認証により正規の電子キー2が利用されたものと肯定判断し、且つ生体認証により被験者が正規ユーザであると肯定判断し、それらのAND条件が成立したとき、ブレーキ操作が行われていることを条件として、エンジンを始動する。
【0035】
次に、本実施形態の特徴点について説明する。
上記したように、エンジンの始動が許可されるためには、キー認証及び生体認証といった2つの条件が満たされる必要があるところ、何らかの理由により正規ユーザが生体認証をパスできないといった不測の事態が発生しないとも限らず、もし仮に、そうした事態が発生してしまうと、正規ユーザでありながらエンジン始動が許可されなくなる。例えば、正規ユーザが指静脈認証を受ける指を負傷する等すると、その者が指静脈認証を受けても正規ユーザとは認められず、本来許可される筈のエンジン始動が許可されなくなる虞がある。
【0036】
そこで、本実施形態のセキュリティシステム1では、こうした例のような不測の事態に備えて、正規ユーザ自らの意志で生体認証の機能を選択的に解除できるよう配慮されている。即ち、図1に示すように、正規ユーザが車両キーとして所持する前記電子キー2には、生体認証解除スイッチ26が備えられ、これを操作することで、当該電子キー2を状況に応じて、生体認証の機能が有効とされる通常モードと、生体認証の機能が解除される生体認証解除モードとに選択的に切り替えることができるようになっている。
・・・
【0038】
ここで、上記したように、本実施形態の車両では、電子キー2とセキュリティ装置3との間において、キー認証に関する双方向通信が行われる。その中で電子キー2のマイコン23は、セキュリティ装置3からのリクエスト信号に応答してIDコード信号を生成する訳であるが、ここに電子キー2が生体認証解除モードへ遷移されている状態でリクエスト信号を受信した場合、当該電子キー2が生体認証解除モードへ遷移されていることを示すモード状態コードをIDコード信号に付加する。その一方でマイコン23は、電子キー2が通常モードへ遷移されている状態でリクエスト信号を受信した場合、当該電子キー2が通常モードへ遷移されていることを示すモード状態コードをIDコード信号に付加する。
【0039】
そして、こうしたIDコード信号がセキュリティ装置3の側で受信され、これに関する受信信号が受信回路34からセキュリティ制御装置35へ入力されると、同セキュリティ制御装置35は、既に説明したようにIDコード照合を行う訳であるが、さらに、モード状態コードを指標として、電子キー2のモードがいずれのモードであるのか解析する。
【0040】
そして、セキュリティ制御装置35は、その解析の結果、電子キー2のモードが通常モードである場合、当該セキュリティ装置3を通常モードへ遷移させる。尚、このセキュリティ装置3の側での通常モードでは、電気的なキー認証により正規の電子キー2が利用されたものと肯定判断され、且つ生体認証により被験者が正規ユーザであると肯定判断され、それらのAND条件が成立したとき、エンジンの始動が許可される。従って、セキュリティ装置3の側での通常モードとは、生体認証の機能が解除されていないモードを指す。
【0041】
その一方でセキュリティ制御装置35は、受信回路34から入力されたIDコード信号に関する受信信号を解析した結果、電子キー2のモードが生体認証解除モードである場合、当該セキュリティ装置3をゲストモードへ遷移させる。尚、このセキュリティ装置3の側でのゲストモードでは、電気的なキー認証により正規の電子キー2が利用されたものと肯定判断され、その単独条件が成立したとき、エンジンの始動が許可される。従って、セキュリティ装置3の側でのゲストモードとは、生体認証の機能が解除されているモードを指す。
イ 「図1
[図:0001414062000001.jpg]
」
(2)引用発明
引用文献1の上記記載について検討する。
ア 上記(1)アの段落0019及び図1の記載から、引用文献1には、“車両ユーザが所持する電子キー2と、車両側に設けられるセキュリティ装置3とを備えるセキュリティシステム1におけるセキュリティ装置3”が記載されていると認められる。
イ 上記(1)アの段落0024、0027、0028、0030の記載及び図1の記載から、引用文献1には、“セキュリティ装置3はセキュリティ制御装置35を備え、前記セキュリティ制御装置35は、電子キー2から送信されてくるIDコード信号を受信し、受信されたIDコード信号と、セキュリティ制御装置35が備える不揮発性のメモリ35aに記憶されている基準IDコードとが一致しているか否かを判断する、つまり、IDコード照合(電気的なキー認証)を実行”することが記載されていると認められる。
ウ 上記(1)アの段落0032~0033の記載から、引用文献1には、“セキュリティ制御装置35は、指静脈センサ45から入力された被験者の検出指静脈パターンデータを前記メモリ35aに記憶された正規ユーザの指静脈パターンデータ(基準指静脈パターンデータ)と照合し、両データが一致したとき、被験者が正規ユーザであると判定”することが記載されていると認められる。
エ 上記(1)アの段落0034の記載から、引用文献1には、“セキュリティ制御装置35は、電気的なキー認証により正規の電子キー2が利用されたものと肯定判断し、且つ生体認証により被験者が正規ユーザであると肯定判断し、それらのAND条件が成立したとき、エンジンを始動”することが記載されていると認められる。
オ 上記(1)アの段落0036の記載から、引用文献1には、“前記電子キー2には、正規ユーザ自らの意志で生体認証の機能を選択的に解除できる生体認証解除スイッチ26が備えられており、これを操作することで、当該電子キー2を、生体認証の機能が有効とされる通常モードと、生体認証の機能が解除される生体認証解除モードとに選択的に切り替えることができ”ることが記載されていると認められる。
カ 上記(1)アの段落0038~0041の記載から、引用文献1には、“セキュリティ制御装置35は、電子キー2からモード状態コードが付加されたIDコード信号を受信し、受信したIDコード信号に付加されたモード状態コードを指標として、電子キー2のモードがいずれのモードであるのか解析し、電子キー2のモードが通常モードである場合、当該セキュリティ装置3を通常モード(生体認証の機能が解除されていないモード)へ遷移させ、電子キー2のモードが生体認証解除モードである場合、当該セキュリティ装置3をゲストモード(生体認証の機能が解除されているモード)へ遷移させる”ことが記載されていると認められる。
キ 上記ア~カの検討から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「車両ユーザが所持する電子キー2と、車両側に設けられるセキュリティ装置3とを備えるセキュリティシステム1におけるセキュリティ装置3であって、
前記セキュリティ装置3はセキュリティ制御装置35を備え、前記セキュリティ制御装置35は、電子キー2から送信されてくるIDコード信号を受信し、受信されたIDコード信号と、セキュリティ制御装置35が備える不揮発性のメモリ35aに記憶されている基準IDコードとが一致しているか否かを判断する、つまり、IDコード照合(電気的なキー認証)を実行し、
前記セキュリティ制御装置35は、指静脈センサ45から入力された被験者の検出指静脈パターンデータを前記メモリ35aに記憶された正規ユーザの指静脈パターンデータ(基準指静脈パターンデータ)と照合し、両データが一致したとき、被験者が正規ユーザであると判定し、
前記セキュリティ制御装置35は、電気的なキー認証により正規の電子キー2が利用されたものと肯定判断し、且つ生体認証により被験者が正規ユーザであると肯定判断し、それらのAND条件が成立したとき、エンジンを始動し、
前記電子キー2には、正規ユーザ自らの意志で生体認証の機能を選択的に解除できる生体認証解除スイッチ26が備えられており、これを操作することで、当該電子キー2を、生体認証の機能が有効とされる通常モードと、生体認証の機能が解除される生体認証解除モードとに選択的に切り替えることができ、
前記セキュリティ制御装置35は、電子キー2からモード状態コードが付加されたIDコード信号を受信し、受信したIDコード信号に付加されたモード状態コードを指標として、電子キー2のモードがいずれのモードであるのか解析し、電子キー2のモードが通常モードである場合、当該セキュリティ装置3を通常モード(生体認証の機能が解除されていないモード)へ遷移させ、電子キー2のモードが生体認証解除モードである場合、当該セキュリティ装置3をゲストモード(生体認証の機能が解除されているモード)へ遷移させる
セキュリティ装置3。」
2.引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2003-034235号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、使用者の生物学的特徴により使用者の識別を行う車両盗難防止装置に関する。
イ 「【0036】エンジンを停止後、車両盗難防止装置10は指紋認証モードのままである。車両盗難防止装置10が指紋認証モードである状態で再びエンジンを始動する時は、保安モード切替装置14及び制御マイコン13は車両盗難防止装置10は指紋認証モードであることを認識しており、制御マイコン13は乗員に対して指紋認証を行うように音声案内し、上記の作動で指紋認証を行う。
【0037】指紋認証モードの解除、つまり通常モードへの移行の操作手順と車両盗難防止装置10の作動を以下に述べる。
【0038】指紋認証モードでかつ、エンジンが停止している場合には、乗員は認証パネル25にある解除ボタン27を押すことにより、モードの切り替えが可能である。解除ボタン27が押されると、保安モード切替装置14は制御マイコン13に指紋認証モードから通常モードへ移行するようモード指示を送信する。これにより、制御マイコン13は車内スピーカによる音声案内に行い、乗員にカードキー21の静電容量センサ22に指を置くよう示唆する。カードキー21と指紋認証装置12は上記と同じ作動で指紋認証を行う(図5のP2)。乗員の指紋のデータが登録された指紋のデータと照合の結果一致した場合、車両盗難防止装置10の指紋認証モードは解除されて通常モードになる。指紋認証モードが解除されたことは乗員に音声案内される。」
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「セキュリティ装置3」は、「車両側に設けられる」ものであって、以下のイ~カで検討するように、本願発明1の「第1認証部」、「第2認証部」、「制御部」及び「設定部」の機能に対応する機能を有する「セキュリティ制御装置35」を備えるものであるから、本願発明1の「車両に搭載される認証装置」に対応するものである。
イ 引用発明の「被験者」、「検出指静脈パターンデータ」はそれぞれ本願発明1の「ユーザ」、「生体情報」に相当するから、引用発明の「指静脈センサ45から入力された被験者の検出指静脈パターンデータ」は、本願発明1の「ユーザーから取得した生体情報」に相当する。また、引用発明の「メモリ35a」はセキュリティ制御装置35が備えるものであり、当該セキュリティ制御装置35は車両側に設けられるセキュリティ装置3が備えるものであるから、引用発明の「前記メモリ35aに記憶された正規ユーザの指静脈パターンデータ(基準指静脈パターンデータ)」は本願発明1の「前記車両に予め登録された生体情報」に相当するといえる。
そうすると、引用発明の「指静脈センサ45から入力された被験者の検出指静脈パターンデータを前記メモリ35aに記憶された正規ユーザの指静脈パターンデータ(基準指静脈パターンデータ)と照合し、両データが一致したとき、被験者が正規ユーザであると判定」することは、本願発明1の「ユーザーから取得した生体情報と前記車両に予め登録された生体情報とに基づいて、第1認証を行う」ことに相当する。
してみれば、引用発明の「セキュリティ制御装置35」と本願発明1の「第1認証部」とは、「ユーザーから取得した生体情報と前記車両に予め登録された生体情報とに基づいて、第1認証を行う第1認証部」である点で一致する。
ウ 引用発明の「電子キー2」は、ユーザが携帯する“携帯機”といえるから、引用発明の「車両ユーザが所持する電子キー2」は本願発明1の「前記ユーザーが所持する携帯機」に相当し、引用発明の「電子キー2から送信されてくるIDコード信号」は、本願発明1の「前記ユーザーが所持する携帯機から取得した識別情報」に相当する。
また、上記イの「メモリ35a」の認定を踏まえると、引用発明の「不揮発性のメモリ35aに記憶されている基準IDコード」は本願発明1の「前記車両に予め登録された識別情報」に相当する。
そうすると、引用発明の「電子キー2から送信されてくる・・・IDコード信号と、・・・不揮発性のメモリ35aに記憶されている基準IDコードとが一致しているか否かを判断する」ことは、本願発明1の「前記ユーザーが所持する携帯機から取得した識別情報と前記車両に予め登録された識別情報とに基づいて、第2認証を行う」ことに相当する。
してみれば、引用発明の「セキュリティ制御装置35」と本願発明1の「前記第1認証部によって認証が失敗した場合に、前記ユーザーが所持する携帯機から取得した識別情報と前記車両に予め登録された識別情報とに基づいて、第2認証を行う第2認証部」とは、後記する点で相違するものの、“前記ユーザーが所持する携帯機から取得した識別情報と前記車両に予め登録された識別情報とに基づいて、第2認証を行う第2認証部”である点で一致する。
エ 上記ウの検討から、引用発明の「電気的なキー認証により正規の電子キー2が利用されたものと肯定判断」することは、本願発明1の「前記第2認証部」「によって認証が成功した場合」に相当し、また、上記イの検討から、引用発明の「生体認証により被験者が正規ユーザであると肯定判断」することは、本願発明1の「前記第1認証部」「によって認証が成功した場合」に相当するから、引用発明の「電気的なキー認証により正規の電子キー2が利用されたものと肯定判断し、且つ生体認証により被験者が正規ユーザであると肯定判断し、それらのAND条件が成立したとき、エンジンを始動」する「セキュリティ制御装置35」と、本願発明1の「前記第1認証部及び前記第2認証部のいずれかによって認証が成功した場合に、前記車両の始動を許可する制御部」とは、後記する点で相違するものの、“前記第1認証部及び前記第2認証部の認証の成功に基づいて、前記車両の始動を許可する制御部”である点で一致する。
オ 引用発明の「セキュリティ制御装置35」は、電子キー2のモードが通常モードである場合、セキュリティ装置3を通常モード(生体認証の機能が解除されていないモード)へ遷移させる一方、電子キー2のモードが生体認証解除モードである場合、当該セキュリティ装置3をゲストモード(生体認証の機能が解除されているモード)へ遷移させるものである。
ここで、「生体認証の機能が解除されていないモード」へ遷移させることは、“生体認証の機能を有効に設定する”ことであり、また、「生体認証の機能が解除されているモード」へ遷移させることは、“生体認証の機能を無効に設定する”ことであるといえるから、上記イの検討を踏まえると、引用発明の「セキュリティ制御装置35」と本願発明1の「設定部」とは、「前記第1認証部の認証機能を有効又は無効に設定する設定部」である点で一致する。
カ 引用発明の「前記電子キー2」には、正規ユーザ自らの意志で生体認証の機能を選択的に解除できる生体認証解除スイッチ26が備えられており、これを操作することで、当該電子キー2を生体認証解除モードに切り替えることができるものであるから、引用発明において、“正規ユーザが電子キー2に備えられる生体認証解除スイッチ26を操作して、電子キー2を生体認証解除モードに切り替えること”は、上記イの検討を踏まえると、本願発明1の「前記第1認証部の認証機能を無効にする指示」をすることに相当する。
そして、上記オの検討を踏まえると、引用発明の「セキュリティ制御装置35」は、電子キー2のモードが生体認証解除モードである場合、セキュリティ装置3をゲストモード(生体認証の機能が解除されているモード)へ遷移させる、すなわち、“生体認証の機能を無効に設定する”ものである。
してみれば、引用発明の「セキュリティ制御装置35」と本願発明1の「設定部」とは、後記する点で相違するものの、“前記設定部は、前記第1認証部の認証機能を無効にする指示があった場合、前記第1認証部の認証機能を無効に設定する”点で一致する。
キ 上記ア~カの検討から、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
車両に搭載される認証装置であって、
ユーザーから取得した生体情報と前記車両に予め登録された生体情報とに基づいて、第1認証を行う第1認証部と、
前記ユーザーが所持する携帯機から取得した識別情報と前記車両に予め登録された識別情報とに基づいて、第2認証を行う第2認証部と、
前記第1認証部及び前記第2認証部の認証の成功に基づいて、前記車両の始動を許可する制御部と、
前記第1認証部の認証機能を有効又は無効に設定する設定部と、を備え、
前記設定部は、前記第1認証部の認証機能を無効にする指示があった場合、前記第1認証部の認証機能を無効に設定する、
認証装置。
(相違点1)
本願発明1の「第2認証部」は、「前記第1認証部によって認証が失敗した場合に」、前記ユーザーが所持する携帯機から取得した識別情報と前記車両に予め登録された識別情報とに基づいて、第2認証を行う」ものであるのに対して、引用発明の「セキュリティ制御装置35」は、生体認証が失敗した場合に、電気的なキー認証を行う、というものではない点。
(相違点2)
本願発明1の「制御部」は、第1認証部及び第2認証部の「いずれかによって」認証が成功した場合に、車両の始動を許可するのに対して、引用発明のセキュリティ制御装置35は、電気的なキー認証により正規の電子キー2が利用されたものと肯定判断し、且つ生体認証により被験者が正規ユーザであると肯定判断し、それらのAND条件が成立したとき、エンジンを始動するものである点。
(相違点3)
本願発明1の「設定部」は、第1認証部の認証機能を無効にする指示があった場合、「第2認証部による認証が成功していれば」、前記第1認証部の認証機能を無効に設定するのに対して、引用発明の「セキュリティ制御装置35」は、電子キー2のモードが生体認証解除モードである場合、当該セキュリティ装置3をゲストモード(生体認証の機能が解除されているモード)へ遷移させるものの、その際、電気的なキー認証の成功を条件としてゲストモードへ遷移させるものではない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点1及び相違点3について合わせて検討する。
本願発明1の第2認証は、第1認証部によって認証が失敗した場合に実行される認証であり(相違点1)、また、本願発明1では、第1認証部の認証機能を無効にする指示があった場合、第2認証部による認証が成功していれば、第1認証部の認証機能を無効に設定するものである(相違点3)から、これらを合わせると、本願発明1は、第1認証部の認証機能を無効にする指示があった場合、まず、第1認証部による認証を実行し、この第1認証部による認証が失敗すると、次に、第1認証部によって認証が失敗した場合に実行される第2認証を実行し、この第2認証が成功していれば、第1認証部の認証機能を無効に設定するというものである。
これに対して、引用発明は、ユーザが電子キー2の生体認証解除スイッチ26を操作すれば、電子キー2が生体認証解除モードに切り替えられ、セキュリティ制御装置35は電子キー2のモードに基づいてセキュリティ装置3をゲストモード(生体認証の機能が解除されているモード)へ遷移させるというものではあるものの、当該遷移をさせる際に、まず生体認証を実行するものではなく、また、生体認証に失敗すると、次に、生体認証が失敗した場合に実行される電気的なキー認証を実行し、これに成功していれば、生体認証の機能を解除するというものでもない。
また、引用文献2には、指紋認証モードを解除する解除ボタン27が押されると指紋認証を実行し、指紋認証が成功すると指紋認証モードが解除されることが記載されているものの、引用発明と引用文献2記載事項を組み合わせても、生体認証解除スイッチ26が操作されると生体認証を実行し、この生体認証に成功すると、生体認証の機能が解除されるという構成となるに留まり、上記相違点1、3に係る構成、すなわち、第1認証部の認証機能を無効にする指示があった場合、まず、第1認証部による認証を実行し、この第1認証部による認証が失敗すると、次に、第1認証部によって認証が失敗した場合に実行される第2認証を実行し、この第2認証が成功していれば、第1認証部の認証機能を無効に設定するという構成とはならない。
また、第1認証部の認証機能を無効にする指示があった場合、まず、第1認証部による認証を実行し、この第1認証部による認証が失敗すると、次に、第1認証部によって認証が失敗した場合に実行される第2認証を実行し、この第2認証が成功していれば、第1認証部の認証機能を無効に設定することが、本願出願前に当該技術分野における周知技術であったともいえない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2-7について
本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明7は、本願発明1-4に記載の認証装置を搭載した「車両」の発明であって、本願発明1の上記相違点1~3に係る構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また、本願発明5は、本願発明1を「認証方法」の発明として記載したものであり、本願発明6は、本願発明1を「制御プログラム」の発明として記載したものであり、ともに本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であるから、本願発明1の上記相違点1~3に係る構成と同様の構成を備えるものであり、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定について
<理由1(特許法第29条第2項)について>
令和5年12月1日付けの手続補正で補正された請求項1-7は、上記相違点1~3に係る構成を有するものであり、上記のとおり、本願発明1-7は、上記引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-020395