特許拒絶査定不服審判
2023-019808
電気的接触子及び電気的接続装置
- 審判番号
- 2023-019808
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-147760外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年11月22日
- 審決日
- 2024年11月06日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社日本マイクロニクス
- 【請求人代理人】吉田 倫太郎
- 【請求人代理人】若林 裕介
- 分類
- P18 .121-Z (G01R) / P18 .575-Z (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-147760「電気的接触子及び電気的接続装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 2月25日出願公開、特開2021- 28603〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年8月9日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 3月27日付け:拒絶理由通知書
同年 6月 2日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 8月17日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月22日 :原査定の謄本の送達)
同年11月22日 :審判請求書及び手続補正書の提出
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年11月22日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和5年11月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書について補正するものであって、次の(1)に示す本件補正前(令和5年6月2日にされた手続補正後をいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
配線基板の基板電極と、被検査体の電極端子との間を電気的に接触するカンチレバー型の電気的接触子において、
前記配線基板の前記基板電極と電気的に接触する取付部と、
前記取付部から前記被検査体側に連なって延びる基端部と、
前記基端部から当該電気的接触子の長手方向に延びる、少なくとも3本以上のアーム部と、
それぞれの前記アーム部の先端部と連結する連結部と、
前記連結部から前記被検査体側に設けられた台座部と、
前記台座部の前記被検査体側に前記被検査体の前記電極端子と接触する接触部と
を備え、
それぞれの前記アーム部は、前記基端部と前記台座部との間に設けられ、一方の端部が支持され、他方の端部が前記台座部と連結して、前記接触部を弾性的に支持するものであり、
前記被検査体の前記電極端子に対する前記接触部の移動量及び圧力量の調整について、それぞれの前記アーム部の寸法を調整し、
前記アーム部全体の抵抗値の調整について、1本又は2本のアーム部とした場合と比較して、前記アーム部全体の抵抗値が小さくなるように、少なくとも3本以上の前記アーム部の断面積の合計を調整する
ことを特徴とする電気的接触子。」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
配線基板の基板電極と、被検査体の電極端子との間を電気的に接触するカンチレバー型の電気的接触子において、
前記配線基板の前記基板電極と電気的に接触する取付部と、
前記取付部から前記被検査体側に連なって延びる基端部と、
前記基端部から当該電気的接触子の長手方向に延びる、少なくとも3本以上のアーム部と、
それぞれの前記アーム部の先端部と連結する連結部と、
前記連結部から前記被検査体側に設けられた台座部と、
前記台座部の前記被検査体側に前記被検査体の前記電極端子と接触する接触部と
を備え、
それぞれの前記アーム部は、前記基端部と前記台座部との間に設けられ、一方の端部が支持され、他方の端部が前記台座部と連結して、前記接触部を弾性的に支持するものであり、
前記被検査体の前記電極端子に対する前記接触部の移動量及び圧力量の調整について、それぞれの前記アーム部の寸法を調整し、
前記アーム部全体の抵抗値の調整について、板厚が同じ1本又は2本のアーム部とした場合と比較して、それぞれの前記アーム部の断面積を前記1本又は2本のアーム部の各断面積よりも小さくし、前記アーム部全体の抵抗値が前記1本又は2本のアーム部とした場合の抵抗値よりも小さくなるように、少なくとも3本以上の前記アーム部の断面積の合計を調整する
ことを特徴とする電気的接触子。」
2 本件補正の目的について
(1) 本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1について、次のア~イに示す限定をするものである。
ア 本件補正前の発明を特定するために必要な事項である、「前記アーム部全体の抵抗値が小さくなるように、少なくとも3本以上の前記アーム部の断面積の合計を調整する」際の比較対象である「1本又は2本のアーム部とした場合」について、「板厚が同じ」1本又は2本のアーム部とした場合に限定すること。
イ 本件補正前の発明を特定するために必要な事項である「1本又は2本のアーム部とした場合と比較して、前記アーム部全体の抵抗値が小さくなるように、少なくとも3本以上の前記アーム部の断面積の合計を調整する」ことについて、「それぞれの前記アーム部の断面積を前記1本又は2本のアーム部の各断面積よりも小さく[する]」ものに限定すること。
(2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3) したがって、本件補正のうち請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件について
本件補正後の請求項1に係る補正は、特許法17条の2第5項2号を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明について
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に示した、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
ここで、本件補正発明の構成を便宜上次のように構成Xと構成Aから構成Iまでに分説するとともに、参考図として本願の図3及び図4に部材名を加筆したものを示す。
<本件補正発明の分説>
【請求項1】
X 配線基板の基板電極と、被検査体の電極端子との間を電気的に接触するカンチレバー型の電気的接触子において、
A 前記配線基板の前記基板電極と電気的に接触する取付部と、
B 前記取付部から前記被検査体側に連なって延びる基端部と、
C 前記基端部から当該電気的接触子の長手方向に延びる、少なくとも3本以上のアーム部と、
D それぞれの前記アーム部の先端部と連結する連結部と、
E 前記連結部から前記被検査体側に設けられた台座部と、
F 前記台座部の前記被検査体側に前記被検査体の前記電極端子と接触する接触部と
を備え、
G それぞれの前記アーム部は、前記基端部と前記台座部との間に設けられ、一方の端部が支持され、他方の端部が前記台座部と連結して、前記接触部を弾性的に支持するものであり、
H 前記被検査体の前記電極端子に対する前記接触部の移動量及び圧力量の調整について、それぞれの前記アーム部の寸法を調整し、
I 前記アーム部全体の抵抗値の調整について、板厚が同じ1本又は2本のアーム部とした場合と比較して、それぞれの前記アーム部の断面積を前記1本又は2本のアーム部の各断面積よりも小さくし、前記アーム部全体の抵抗値が前記1本又は2本のアーム部とした場合の抵抗値よりも小さくなるように、少なくとも3本以上の前記アーム部の断面積の合計を調整する
X ことを特徴とする電気的接触子。
<参考図>
【図3】
[図:0001418956000001.jpg]
【図4】
[図:0001418956000002.jpg]
イ 課題・作用効果に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本件補正発明の技術上の意義の概略を理解するために、本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果に関連する記載等を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は当合議体による。
「【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ上に形成された各半導体集積回路(被検査体)の電気的検査では、複数のプローブ(以下では、「電気的接触子」とも呼ぶ。)を有するプローブカード等の電気的接続装置を、テストヘッダに取り付けた検査装置(テスタ)が用いられる。
【0003】
プローブカードには、当該プローブカードの下面から各プローブの先端部が突出するように、複数のプローブが装着されており、被検査体がプローブカードに押圧されると、各プローブの先端部と、被検査体の対応する電極端子とが電気的に接触する。そして、検査の際、検査装置からの電気信号が各プローブを介して各被検査体に供給され、また各被検査体からの信号が各プローブを介して検査装置側に取り込まれることで、各被検査体の電気的検査が行なわれる。
【0004】
近年、半導体集積回路の高密度化、高集積化等に伴い、半導体集積回路の電極端子の小径化や、電極端子間の間隔の狭ピッチ化が進んでいる。これに対して、小径化及び狭ピッチ化した電極端子に対して確実に電気的に接触させるために、カンチレバー型プローブが用いられる。
【0005】
例えば、特許文献1には、取付部と、その取付部から左右方向に延びる2本のアーム部と、2本のアーム部の先端側で2本のアームを連結する台座部とを備え、台座部の下端に、電極端子と電気的に接触する接触部を有するカンチレバー型プローブが開示されている。2本のアーム部の後端部は取付部に支持されており、プローブの接触部と被検査体の電極端子とが電気的に接触する際、2本のアーム部は、接触部を弾性的に支持する部分として機能する。
【0006】
プローブの接触部と被検査体の電極端子とを電気的に接続させる際、各アーム部が弾性的に接触部を支持するので、プローブの接触部の位置が、取付部を中心として円弧状に移動してしまう。したがって、接触部の移動量を調整することが必要となる。また、電極端子の表面の欠損等を少なくするため、電極端子に対する接触部の針圧(接触時の圧力)を適切に調整することが必要となる。
【0007】
したがって、従来、プローブの2本のアームのそれぞれの太さ(以下「アーム幅」とも呼ぶ。)などを微調整することで、上述したようなプローブの接触部の移動量や、電極端子に対する接触部の針圧が目標値となるように調整している。
…(中略)…
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、被検査体の電気的検査を良好とし、被検査体を精度良く検査するためには、プローブを流れる電気信号の導通特性を良好とすることが求められる。そのためには、2本のアーム部の抵抗値を低くすることが要求される。
【0010】
しかしながら、従来は、アーム部全体の抵抗値を低下させる観点から、プローブのアーム部を設計することは難しかった。なぜなら、上述したように、目標針圧や電極端子に対する接触部の移動量等を調整するために、2本のアーム部のアーム幅を微調整するが、アーム幅を大きくすると、アーム部の弾性が低下するので、目標針圧や接触部の移動量等に影響してしまうからである。
【0011】
また、従来の各アーム部の抵抗値は高いため、被検査体の電気的検査の際に、プローブに電気信号が流れると、ジュール熱により各アーム部が塑性変形してしまうことがあるという課題もある。
【0012】
そのため、電気的接触子に流れる電気信号の導通特性を良好として、被検査体の電気的検査を良好とすることができる電気的接触子及び電気的接続装置が求められている。
…(中略)…
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電気的接触子に流れる電気信号の導通特性を良好として、被検査体の電気的検査を良好とすることができる。」
「【0054】
従来、アーム部を有するカンチレバー型の電気的接触子は、被検査体2の電極端子51に対する針圧を目標値とすることや、接触部と電極端子51との接触時に、アーム部に支持される接触部の移動量等を小さくするように設計される。例えば、2本のアーム部を有する従来の電気的接触子の例では、2本のアーム部材のアーム幅(上下方向の長さ)を微調整して、針圧や接触部の移動量等を調整している。
【0055】
しかし、アーム部の本数が少ないため、抵抗値を低下させるために、アーム部のアーム幅などを調整しようとしても、調整できるアーム幅には限界があり、アーム部の調整が容易ではなかった。
【0056】
これに対して、この実施形態の電気的接触子3では、アーム部33のアーム部材の本数を、従来のアーム部の本数よりも増加させている。したがって、図4に例示するように、接触部37と電極端子51とが接触したときに、荷重は第1のアーム部61~第6のアーム部66に作用するので、アーム部33における応力は、第1のアーム部61~第6のアーム部66に分散される。
【0057】
そのため、1本のアーム部材に作用する応力は小さくなくなるので、アーム部33(第1のアーム部61~第6のアーム部66)の耐久性は、従来の電気的接触子のアーム部のそれより良好となる。
【0058】
また、アーム部33における応力が分散され、1本のアーム部材(第1のアーム部61~第6のアーム部66)の応力が小さくなるので、1本のアーム部材のアーム幅を、従来の電気的接触子のアーム部のアーム幅よりも小さくすることができる。
【0059】
さらに、1本のアーム部材(第1のアーム部61~第6のアーム部66)のアーム幅の従来のそれよりも小さくできるので、電気的接触子3の板厚が従来の電気的接触子の板厚と同じであれば、1本あたりのアーム部材の断面積は、従来のアーム部材の1本あたりの断面積よりも小さくなる。
【0060】
しかし、電気的接触子3のアーム部33は、従来よりも多くのアーム部材(第1のアーム部61~第6のアーム部66)を有しているので、アーム部33の全体の断面積、すなわち第1のアーム部61~第6のアーム部66の断面積を合計した全体断面積は、従来の電気的接触子のアーム部の全体断面積よりも大きくなる。換言すると、アーム部33の全体断面積が増加するので、従来の電気的接触子のアーム部のアーム長(左右方向の長さ)が同じであれば、アーム部33の抵抗値は、従来の電気的接触子のアーム部の抵抗値よりも小さくすることができる。すなわち、アーム部33の抵抗値を低下させることができる。
【0061】
このように、電気的接触子3のアーム部33の抵抗値を従来の電気的接触子のアーム部の抵抗値よりも小さくできるので、電気的接触子3に電気信号を流したとき、電気信号の導電性は従来よりも良好となり、その結果、検査精度を向上させることができる。
【0062】
また、電気的接触子3に電気信号を流したとき、電気信号は、第1のアーム部61~第6のアーム部66のいずれかを流れることになる。つまり、電気的接触子3において、電気信号は、被検査体2の電極端子(第1の接触対象)と、プローブ基板43の配線端子433(第2の接触対象)との間で、第1のアーム部61~第6のアーム部66のいずれか経路を経由することになる。このように、電気的接触子3における、電気信号の導電経路を分散することができるので、ジュール熱による第1のアーム部61~第6のアーム部66の塑性変形を抑止することができる。」
(2) 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2014-1924号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は、当合議体が付したもので、後記(ウ)の引用発明の認定に直接用いる記載に付した。
a 【0001】~【0012】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の特性検査や液晶パネルの検査に用いられるカンチレバー型プローブと、それを備えるプローブカード又はプローブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハ上に形成された各種半導体素子の特性検査や液晶パネルの検査には、従来から、例えば特許文献1~3に見られるように、カンチレバー型プローブを組み込んだプローブカードやプローブユニットが用いられており、近年では、検査対象素子における電極ピッチの狭小化に対応して、MEMS(Micro Electro Mechanical System)を用いて、カンチレバー型プローブを製造する方法も種々提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。
【0003】
電極ピッチの狭小化に対応してカンチレバー型プローブを狭ピッチで配置するには、一つの方策として、個々のプローブの幅を狭くすることが考えられる。しかし、カンチレバー型プローブの幅を狭くして幅方向の厚みを薄くすると、針先部が片持ち梁状態で支持されている構造上、横方向からの力に対するプローブの抵抗力が弱くなってしまうという問題点がある。横方向からの力に対するカンチレバー型プローブの抵抗力が十分でない場合には、例えば、プローブへの電圧印加時に働くクーロン力や、コンタクト時に発生する横方向荷重によって、カンチレバー型プローブの針先部が変位し、場合によっては、隣接するプローブ同士が接触してショートしてしまうという不都合が発生する可能性がある。このため、従来は、カンチレバー型プローブの幅を狭くするには限界があり、狭ピッチ化にも限界があると考えられていた。
…(中略)…
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来のカンチレバー型プローブが有する欠点を解消するために為されたもので、横方向からの力に対する十分な抵抗力を有し、幅を狭くして、かつ狭ピッチで配置しても、クーロン力などによって隣接するプローブ同士が接触する恐れのないカンチレバー型プローブと、そのようなカンチレバー型プローブを複数配置してなるプローブ集合体、及び、そのようなカンチレバー型プローブ又はプローブ集合体を備えるプローブカード又はプローブユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、カンチレバー型プローブにおいて、針先部を片持ち梁状態に支持する連結部材を水平方向に膨らんだ経路をとおって針先部と本体部とを連結する形状の連結部材とし、その各経路における膨らみの方向を複数存在する連結部材間で互いに反対方向とすることによって、幅を狭くして幅方向の厚みを薄くしても横方向からの力に対する十分な抵抗力を有するカンチレバー型プローブが得られることを見出して、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、検査対象である半導体素子の電極と接触する接触針を有する針先部と、本体部と、前記針先部と前記本体部とを連結する少なくとも2本の連結部材とを有し、前記接触針の向きを下向きとしたときに、少なくとも2本の前記連結部材は上下方向に配置され、かつ、少なくとも2本の前記連結部材はそれぞれが水平方向に膨らんだ経路をとおって前記針先部と前記本体部とを連結しており、少なくとも2本の前記連結部材のうちの一方の前記経路における膨らみの方向と他方の前記経路における膨らみの方向とが反対方向であるカンチレバー型プローブを提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0008】
本発明のカンチレバー型プローブは、針先部を片持ち梁状態に支持する少なくとも2本の連結部材のそれぞれが水平方向に膨らんだ経路をとおって針先部と本体部とを連結する形状を有しており、しかも、その経路における膨らみの方向が互いに反対方向であるので、同じ幅の直線状の連結部材で針先部を支持する場合に比べて横方向からの力に対する抵抗力が増し、カンチレバー型プローブの幅を狭くして狭ピッチで配置しても、クーロン力などによって隣接するプローブ同士が接触する可能性が著しく低減される。
【0009】
なお、水平方向に膨らんだ経路をとおって針先部と本体部とを連結するとは、針先部と本体部とを最短距離の直線経路で連結するのではなく、前記直線経路を迂回する水平方向に膨らんだ経路をとおって、いわば弓なりに、前記針先部と本体部とを連結することをいう。斯かる水平方向に膨らんだ経路は、円弧や楕円弧などの曲線だけで構成されていても良いし、2本の直線を山形に組み合わせるなどした直線だけで構成されていても良く、さらには、曲線と直線の両方で構成されていても良い。また、前記水平方向に膨らんだ経路は、水平方向への膨らみを少なくとも1つ有していれば良く、1つの経路における膨らみの数は2以上であっても良い。
…(中略)…
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カンチレバー型プローブの幅を狭くして幅方向の厚みを薄くしても、横方向荷重に対する抵抗力を確保することができるので、狭ピッチで配置しても、クーロン力などによって隣接するプローブ同士が接触する可能性が著しく低減されるという利点が得られる。また、本発明によれば、幅を狭くした複数のカンチレバー型プローブを、その連結部材における膨らみの位置と方向を一致させて狭ピッチで隣接配置することができるので、検査対象素子における電極の狭ピッチ化に対応したプローブ集合体、プローブカード、又はプローブユニットを実現することができるという利点が得られる。」
b 【0014】~【0019】、【図1】~【図4】
「【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0015】
図1は、本発明のカンチレバー型プローブの一例を示す正面図である。図1において、1はカンチレバー型プローブ(以下、単に「プローブ」という。)、2はその針先部、3は本体部、4は針先部2と本体部3とを連結する連結部、5は針先部2に設けられた接触針である。プローブ1は、通常、本体部3においてプローブカード又はプローブユニットなどの基板6に取り付けられ、針先部2は、連結部4によって片持ち梁状態に支持されることになる。」
「【図1】
[図:0001418956000003.jpg]
」
「【0016】
本例において、連結部4は上下に間隔をあけて配置された3本の連結部材4a、4b、4cで構成されている。なお、本明細書において上下とは、図1に示すように、接触針5が下向きになるようにプローブ1を配置したときの上下の方向をいい、水平方向とは前記上下の方向に対して水平の方向、すなわち、接触針5の向きと直交する方向をいうものとする。また、横方向とは、連結部材4a、4b、4cの長手方向と直交する水平方向(図1においては紙面に垂直な方向)をいい、鉛直面とは水平方向と直交する面をいうものとする。
【0017】
図2は図1のX-X’断面図、図3は図1のY-Y’断面図である。図2及び図3において、4aは上段の連結部材、4bは中段の連結部材、4cは下段の連結部材、Aは針先部2と本体部3とを最短距離で結ぶ水平な直線を示している。通常、針先部2と本体部3とは同一直線上に位置しているので、直線Aは、通常、針先部2の水平断面における長手方向の中心と、本体部3の水平断面における長手方向の中心とを結ぶ直線となり、直線Aを含む鉛直面上には、接触針5の先端部と、符号Cで示す各連結部材4a、4b、4cの支点が位置することになる。」
「【図2】
[図:0001418956000004.jpg]
」
「【図3】
[図:0001418956000005.jpg]
」
「【0018】
図2及び図3に示すとおり、連結部材4a、4b、4cは、いずれも針先部2と本体部3とを直線Aに沿った最短距離の直線の経路で連結するのではなく、直線Aを左右に迂回する水平方向に膨らんだ経路α、β、又はγをとおって、いわば弓なりに、針先部2と本体部3とを連結している。すなわち、連結部材4a、4b、4cは、いずれも、針先部2から本体部3へと伸びる円弧状の曲線で構成されており、その中央部7a、7b、7cにおいて連結部材4a、4b、4cの長手方向と直交する水平方向に最も膨らんだ経路α、β、γをとおって針先部2と本体部3とを連結している。ただし、上段の連結部材4aの経路αと下段の連結部材4cの経路γとは、その膨らみの方向が同じであるが、中段の連結部材4bの経路βは、その膨らみの方向が上段及び下段の連結部材4a、4cの経路α及びγにおける膨らみの方向とは反対である。
【0019】
図4は図1の左側面図である。図4に示すとおり、上段及び下段の連結部材4a、4cは水平方向左向きに膨らんでいるが、中段の連結部材4bは、それとは反対の水平方向右向きに膨らんでいる。このように、本例のプローブ1においては、3本存在する連結部材4a、4b、4cは、水平方向に膨らむ経路α、β、γをとおって針先部2と本体部3とを連結しており、そのうちの連結部材4a、4cの経路α及びγにおける膨らみの方向と連結部材4bの経路βにおける膨らみの方向とが反対方向であるので、プローブ1における力の作用点である接触針5の位置に横方向の力が作用しても、プローブ1はこれらの力に対してよく抵抗し、支点Cを中心とするプローブ1の左右方向への変位量は極めて小さい。」
「【図4】
[図:0001418956000006.jpg]
」
c 【0031】~【0032】
「【0031】
なお、以上説明した例においては、連結部材4a等の経路α、β、γにおける水平方向への膨らみの数は1つであるが、各経路における膨らみの数は1つに限られず、2つであっても良く、3つ以上であっても良い。また、膨らみの位置も、最も膨らんだ位置が連結部材4a等における中央部から外れた位置にあっても良い。さらに、以上説明した例においては、連結部材4a等の経路α、β、γは曲線又は直線で構成されているが、曲線と直線とを組み合わせて経路α、β、γを構成しても良い。また、以上説明した例においては、連結部材の本数は3本又は2本であるが、連結部材の本数を4本以上としても良いことは勿論である。
【0032】
以上説明したような本発明のプローブ1は、適宜の方法で製造することができるが、好適には、例えば、特許文献4、5に見られるような、半導体製造技術を応用した微細加工技術によって製造することができる。」
(イ) 引用文献1の記載から認定した事項
a 認定事項1
引用文献1の【0015】の「4は針先部2と本体部3とを連結する連結部」、「プローブ1は、通常、本体部3においてプローブカード又はプローブユニットなどの基板6に取り付けられ」との記載、及び、【図1】から、
引用文献1には、次の事項(以下「認定事項1」という。)が記載されていると認められる。
<認定事項1>
「本体部3は、プローブカード又はプローブユニットなどの基板6に取り付けられる上部と、連結部4に接続される下部とが一体的に構成されてなること。」
b 認定事項2
引用文献1の【0015】の「4は針先部2と本体部3とを連結する連結部、5は針先部2に設けられた接触針である」との記載、及び、【図1】から、引用文献1には、次の事項(以下「認定事項2」という。)が記載されていると認められる。
<認定事項2>
「針先部2は、連結部4に接続される上部と、接触針5が設けられた下部とが一体的に構成されてなること。」
c 認定事項3
引用文献1の【図1】から、当業者は、次の事項(以下「認定事項3」という。)を認識することができる。
<認定事項3>
「3本の連結部材4a、4b、4cは、本体部3からカンチレバー型プローブ1の長手方向に延びること。」
(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した事項及び前記(イ)において認定した事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「半導体素子の特性検査に用いられるカンチレバー型プローブ1であって、(【0015】、【0001】)
針先部2と、(【0015】)
本体部3と、(【0015】)
針先部2と本体部3とを連結する連結部4と、(【0015】)
針先部2に設けられ、検査対象である半導体素子の電極と接触する接触針5と、を有し、(【0015】、【0007】)
カンチレバー型プローブ1は、本体部3においてプローブカード又はプローブユニットなどの基板6に取り付けられ、(【0015】)
針先部2は、連結部4によって片持ち梁状態に支持され、(【0015】)
連結部4は、本体部3からカンチレバー型プローブ1の長手方向に延びる、上下に間隔をあけて配置された3本の連結部材4a、4b、4cで構成されており、(【0016】、認定事項3)
連結部材の本数を4本以上としても良く、(【0031】)
本体部3は、プローブカード又はプローブユニットなどの基板6に取り付けられる上部と、連結部4に接続される下部とが一体的に構成されてなり、(認定事項1)
針先部2は、連結部4に接続される上部と、接触針5が設けられた下部とが一体的に構成されてなる、(認定事項2)
カンチレバー型プローブ1。(【0015】)」
イ 引用文献8~9に記載された事項及び周知技術1の認定
(ア) 引用文献8の記載事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2011-112517号公報(以下「引用文献8」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体において付したものである。
a 【0001】
「【0001】
本発明は、プローブカード及びその製造方法に係り、さらに詳しくは、コンタクトプローブが形成されたプローブ基板と配線基板とが固定されるプローブカード及びその製造方法に関する。」
b 【0021】~【0024】、【図2】、【図4】
「【0021】
<プローブタイル>
図2は、図1のプローブカード100の要部における構成例を示した平面図であり、ST基板20上のプローブタイル10が示されている。プローブタイル10は、複数のコンタクトプローブ11と、これらのコンタクトプローブ11が固定されたプローブ基板12とからなり、ST基板20上に固定される。」
「【図2】
[図:0001418956000007.jpg]
」
「【0022】
プローブ基板12は、コンタクトプローブ11が固定される薄い平板状の保持部材であり、シリコンなどの半導体からなる半導体基板、セラミックなどの絶縁体からなる絶縁基板が用いられる。プローブ基板12の第1面には、コンタクトプローブ11を接合するためのプローブ電極13と、配線パターンを介してプローブ電極13と導通する端子電極14が形成されている。コンタクトプローブ11は、例えば、検査対象物に接触させるコンタクト部11aが先端部に形成されたカンチレバー(片持ち梁)型のプローブである。
【0023】
この例では、プローブ基板12の長辺に沿って5つのコンタクトプローブ11が配列されている。各コンタクトプローブ11は、互いに平行に一定間隔で配置されている。この様なコンタクトプローブ11の配列は、プローブ基板12の左右の長辺にそれぞれ形成されている。
【0024】
プローブ電極13及び端子電極14は、コンタクトプローブ11ごとに形成され、端子電極14は、ST基板20上に形成された端子電極21と接続ワイヤ15によりボンディングされている。端子電極21は、プローブ基板12に対向する領域の外に形成され、接続ワイヤ15を介して端子電極14と導通している。この端子電極21は、図示しない配線パターンを介してメイン基板30の外部端子31と導通している。」
「【図4】
[図:0001418956000008.jpg]
」
(イ) 引用文献9の記載事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2016-206105号公報(以下「引用文献9」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体において付したものである。
a 【0001】
「【0001】
本発明は、プローブカードに係り、更に詳しくは、配線基板に固定される支持板が2以上のカンチレバー型のプローブを支持し、各プローブが支持板の背中合わせの2つの端面を貫通するプローブカードの改良に関する。」
b 【0020】~【0025】、【図1】、【図2】
「【0020】
<プローブカード1>
図1は、本発明の実施の形態によるプローブカード1の一構成例を示した図であり、カンチレバー型のプローブカード1が示されている。図中の(a)には、プローブカード1の下面が示され、(b)には、プローブカード1を水平方向から見た場合が示されている。図2は、図1のプローブカード1をA-A切断線により切断した場合の切断面を示した断面図である。」
「【図1】
[図:0001418956000009.jpg]
【図2】
[図:0001418956000010.jpg]
」
「【0021】
このプローブカード1は、2以上のプローブ2と、セラミック板3、支持板4、台座板5、補強板6及び配線基板10とにより構成され、アライメント用の開口部7を有する。開口部7は、プローブカード1の位置を検査対象物の位置に合わせる際に、プローブ先端の位置を確認するのに用いられる略矩形状の貫通孔であり、プローブカード1の中央部に形成される。
【0022】
また、プローブカード1には、2つのプローブ列20が形成されている。プローブ列20は、プローブ先端が直線上に位置するように配列された2以上のプローブ2により構成される。一方のプローブ列20は、紙面に関し、開口部7の中央よりも右側に配置され、他方のプローブ列20は、開口部7の中央よりも左側に配置される。
【0023】
配線基板10は、プローブ2が配設されるプローブ基板であり、プローブ2に接続するための2以上の電極パッド12が下面10aに設けられる。電極パッド12は、プローブ2ごとに設けられる。
【0024】
この配線基板10は、後述するプローバに保持される円形のプリント基板であり、テスター装置(不図示)に接続するための2以上の外部端子11が上面10bに設けられている。外部端子11は、配線基板10の外周縁部に配置される。外部端子11と電極パッド12とは、配線用のパターン、スルーホール等を介して導通する。配線基板10には、台座板5を配置するための貫通孔13が設けられる。貫通孔13は、略矩形状である。
【0025】
プローブ2は、金属製の線材により構成されるカンチレバー型プローブであり、針元部21、中間部22、屈曲部23及び針先部24を備える。針元部21は、配線基板10の電極パッド12に接続される固定部である。中間部22は、針元部21と屈曲部23とを連結するビーム部である。屈曲部23は、配線基板10から離れる方向へ屈曲して針先部24に連結する。針先部24は、検査対象物に接触させるコンタクト部である。」
(ウ) 周知技術1の認定
前記(ア)及び(イ)において示した摘記事項に例示されるように、次の技術事項は、本願の出願前に周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。
<周知技術1>
「カンチレバー型のプローブにおいて、プローブをプローブカードのプローブ基板に接続する際に、プローブをプローブ基板上の電極に対して接合すること。」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点(「カンチレバー型の電気的接触子」)
a 引用発明の「検査対象である半導体素子の電極」は本件補正発明の「被検査体の電極端子」に相当する。
b 引用発明の「カンチレバー型プローブ1」は、「半導体素子の特性検査に用いられる」ものであるから、「カンチレバー型プローブ1」と検査装置のプローブカードが電気的に接続(接触)していることは明らかである。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、「プローブカードと電気的に接触している」点において共通する。
c また、引用発明の「カンチレバー型プローブ1」は、「針先部2に設けられ、検査対象である半導体素子の電極と接触する接触針5」を有するから、前記bの検討事項も踏まえると、本件補正発明の「カンチレバー型の電気的接触子」に相当する。
d 前記a~cより、本件補正発明と引用発明は、次の(a)に示す構成Xの観点での一致点において一致し、(b)に示す構成Xの観点での相違点において相違する。
(a) 構成Xの観点での一致点
「プローブカードと、被検査体の電極端子との間を電気的に接触するカンチレバー型の電気的接触子」の発明である点。
(b) 構成Xの観点での相違点
「カンチレバー型の電気的接触子」により「被検査体の電極端子との間を電気的に接触する」とされている対象が、本件補正発明においては、「配線基板の基板電極」であるのに対して、引用発明においては、「配線基板の基板電極」であるか明らかでない点。
(イ) 構成Aの観点(「取付部」)
引用発明の「プローブカード又はプローブユニットなどの基板6」は本件補正発明の「配線基板」と「基板」である点で共通する。
また、引用発明の「本体部3」の「上部」は、「プローブカード又はプローブユニットなどの基板6に取り付けられる」ものであるから、本件補正発明の「取付部」に対応する。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、次のaに示す構成Aの観点での一致点において一致し、bに示す構成Aの観点での相違点において相違する。
a 構成Aの観点での一致点
「基板に接触する取付部」を備える点。
b 構成Aの観点での相違点
引用発明においては「基板6」を介した電気的な接触がなされているかどうかが不明であるため、「取付部」が「電気的に接触する」とされる対象が、本件補正発明においては、「前記配線基板の前記基板電極」であるのに対して、引用発明においては、「前記配線基板の前記基板電極」であるか明らかでない点。
(ウ) 構成Bの観点(「基端部」)
引用発明の「本体部3」の「下部」は、「プローブカード又はプローブユニットなどの基板6に取り付けられる上部」と「一体的に構成されてな[る]」ものであるから、該「上部」から「プローブカード又はプローブユニットなどの基板6」とは反対側、すなわち、「検査対象である半導体素子」の側に連なって延びているといえる。
そうすると、前記(イ)の対比検討を踏まえると、引用発明の「本体部3」の「下部」は、本件補正発明の「基端部」に相当し、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記取付部から前記被検査体側に連なって延びる基端部」を備える点。
(エ) 構成Cの観点(「アーム部」)
引用発明において、「連結部4は、本体部3からカンチレバー型プローブ1の長手方向に延びる、上下に間隔をあけて配置された3本の連結部材4a、4b、4cで構成されており」、「本体部3」は「連結部4に接続される下部」を含むから、引用発明の「3本の連結部材4a、4b、4c」は、本体部3の下部からカンチレバー型プローブ1の長手方向に延びるものといえる。
そうすると、前記(ア)及び(ウ)の対比検討を踏まえると、引用発明の「3本の連結部材4a、4b、4c」は、本件補正発明の「少なくとも3本以上のアーム部」に相当し、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記基端部から当該電気的接触子の長手方向に延びる、少なくとも3本以上のアーム部」を備える点。
(オ) 構成Dの観点(「連結部」)
引用発明は、「針先部2と本体部3とを連結する連結部4」を含み、引用発明の「針先部2」は、「連結部4に接続される上部」を含むものである。
そして、引用発明において、「連結部4は、本体部3からカンチレバー型プローブ1の長手方向に延びる、上下に間隔をあけて配置された3本の連結部材4a、4b、4cで構成されて[いる]」から、「3本の連結部材4a、4b、4c」は、それぞれ「針先部2」の「上部」と連結しているといえ、当該連結部位は、「本体部3」側からみれば先端部ということができる。
そうすると、引用発明の「針先部2」の「上部」は、本件補正発明の「連結部」に相当し、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「それぞれの前記アーム部の先端部と連結する連結部」を備える点。
(カ) 構成Eの観点(「台座部」)
引用発明において、「針先部2は、連結部4に接続される上部と、接触針5が設けられた下部とが一体的に構成されてなる」ところ、「接触針5」は、「検査対象である半導体素子の電極と接触する」ものであるから、「針先部2」の「下部」が同「上部」よりも「検査対象である半導体素子」側に設けられていることは明らかである。
そうすると、前記(オ)の対比検討を踏まえると、引用発明の「針先部2」の「下部」は、本件補正発明の「台座部」に相当し、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記連結部から前記被検査体側に設けられた台座部」を備える点。
(キ) 構成Fの観点(「接触部」)
引用発明の「針先部2に設けられ、検査対象である半導体素子の電極と接触する接触針5」は、「検査対象である半導体素子の電極と接触する」から、「針先部2」の「検査対象である半導体素子」側に設けられていることは明らかである。
そうすると、前記(ア)及び(カ)の対比検討を踏まえると、引用発明の「接触針5」は、本件補正発明の「接触部」に相当し、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記台座部の前記被検査体側に前記被検査体の前記電極端子と接触する接触部」を備える点。
(ク) 構成Gの観点(「アーム部による接触部の弾性的支持」)
a まず構成Gにおける「それぞれの前記アーム部は、前記基端部と前記台座部との間に設けられ、…(中略)…他方の端部が前記台座部と連結して」の解釈について検討する。
(a) 本願明細書には、関連する記載として次の記載がある。なお、下線は、当合議体において付したものである。
「【0036】
[基端部]
基端部32は、取付部31の下方部から下方向に延びた部分である。基端部32は、アーム部33の後端部(図1ではアーム部33の右側端部)と連結して、弾性変形するアーム部33を支持する部分である。(後略)」
「【0046】
[連結部]
連結部34は、第1のアーム部61~第6のアーム部66のそれぞれの先端部と一体的に連結する部分である。連結部34は、上下方向に延びた部材であり、略矩形形状に形成された部分である。
【0047】
[位置決め部]
位置決め部35は、連結部34の下方部から一体的に連結されて基端部32側に向けて(右方向)に延びた部分である。位置決め部35の下面部351は、左右方向に直線状の形成されている。位置決め部35は、被検査体2の電極端子51に対する接触部37の位置決めするための部分である。特に、位置決め部35の下面部351が、左右方向に直線状に形成されているため、接触部37の位置決めを確実に行なうことができる。
…(中略)…
【0049】
[台座部、接触部]
台座部36は、位置決め部35の下方部から下方向に延びた部分である。接触部37は、台座部36の下部に設けられており、被検査体2の電極端子51と電気的に接触する部分である。」
(b) 前記(a)に摘記したとおり、本願明細書には、それぞれのアーム部(第1のアーム部61~第6のアーム部66)の先端部が連結部34と位置決め部35を介して台座部36と連結した構成が記載されている。そして、本願明細書には、それぞれのアーム部の先端部が直接に台座部36と連結する構成は、発明の実施の形態として具体的には示されていない。
そうすると、構成Gにおける「それぞれの前記アーム部は、前記基端部と前記台座部との間に設けられ、…(中略)…他方の端部が前記台座部と連結して」には、それぞれのアーム部の他方の端部が、例えば連結部などの他の部位を間に介して台座部に連結され、その結果として、それぞれのアーム部が基端部と台座部との間に設けられる構成も排除されていないと解するのが相当である。
b 引用発明において、「連結部4は、本体部3からカンチレバー型プローブ1の長手方向に延びる、上下に間隔をあけて配置された3本の連結部材4a、4b、4cで構成されて[いる]」ところ、「連結部4」は「針先部2と本体部3とを連結する」ものであり、「本体部3」は、「連結部4に接続される下部」を含み、「針先部2」は、「連結部4に接続される上部と、接触針5が設けられた下部とが一体的に構成されてなる」ものである。
そうすると、引用発明において、「3本の連結部材4a、4b、4c」は、「本体部3」側の端部が「本体部3」の「下部」(本件補正発明の「連結部」に相当する。)により支持され、「針先部2」側の端部が「針先部2」の「上部」を介して同「下部」(本件補正発明の「台座部」に相当する。)に連結しているといえるから、前記(ウ)~(カ)の対比検討を踏まえると、引用発明は、本件補正発明の「それぞれの前記アーム部は、前記基端部と前記台座部との間に設けられ、一方の端部が支持され、他方の端部が前記台座部と連結[する]」ことに相当する構成を有する。
c また、引用発明の「3本の連結部材4a、4b、4c」が「本体部3からカンチレバー型プローブ1の長手方向に延びる、上下に間隔をあけて配置された」構成であること、及び、接触針5を検査対象である半導体素子の電極と接触させる際に、電気的な導通を確実にするために弾性力が働くように接触させることが技術常識であることを考慮すると、引用発明の「3本の連結部材4a、4b、4c」が「接触針5」を弾性的に支持するものであることは、当業者にとって自明である。
d 前記a~cより、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「それぞれの前記アーム部は、前記基端部と前記台座部との間に設けられ、一方の端部が支持され、他方の端部が前記台座部と連結して、前記接触部を弾性的に支持するものであ[る]」点。
(ケ) 構成Hの観点(「アーム部の寸法の調整」)
本件補正発明においては、「前記被検査体の前記電極端子に対する前記接触部の移動量及び圧力量の調整について、それぞれの前記アーム部の寸法を調整[する]」ものであるのに対して、
引用発明においては、3本の連結部材4a、4b、4cの寸法をどのように調整するものか明らかでない点で相違する。
(コ) 構成Iの観点(「アーム部の断面積の合計の調整」)
本件補正発明においては、「前記アーム部全体の抵抗値の調整について、板厚が同じ1本又は2本のアーム部とした場合と比較して、それぞれの前記アーム部の断面積を前記1本又は2本のアーム部の各断面積よりも小さくし、前記アーム部全体の抵抗値が前記1本又は2本のアーム部とした場合の抵抗値よりも小さくなるように、少なくとも3本以上の前記アーム部の断面積の合計を調整する」ものであるのに対して、
引用発明においては、3本の連結部材4a、4b、4cの断面積の合計をどのように調整するものか明らかでない点で相違する。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違する。
(ア) 一致点
「プローブカードと、被検査体の電極端子との間を電気的に接触するカンチレバー型の電気的接触子において、
基板に接触する取付部と、
前記取付部から前記被検査体側に連なって延びる基端部と、
前記基端部から当該電気的接触子の長手方向に延びる、少なくとも3本以上のアーム部と、
それぞれの前記アーム部の先端部と連結する連結部と、
前記連結部から前記被検査体側に設けられた台座部と、
前記台座部の前記被検査体側に前記被検査体の前記電極端子と接触する接触部と
を備え、
それぞれの前記アーム部は、前記基端部と前記台座部との間に設けられ、一方の端部が支持され、他方の端部が前記台座部と連結して、前記接触部を弾性的に支持するものである
電気的接触子」である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
「カンチレバー型の電気的接触子」により「被検査体の電極端子との間を電気的に接触[され]」、また「取付部」が「電気的に接触する」とされる対象が、本件補正発明においては、「配線基板の基板電極」であるのに対して、引用発明においては、「配線基板の基板電極」であるか明らかでない点。
b 相違点2
本件補正発明においては、「前記被検査体の前記電極端子に対する前記接触部の移動量及び圧力量の調整について、それぞれの前記アーム部の寸法を調整[する]」ものであるのに対して、引用発明においては、3本の連結部材4a、4b、4cの寸法をどのように調整するものか明らかでない点。
c 相違点3
本件補正発明においては、「前記アーム部全体の抵抗値の調整について、板厚が同じ1本又は2本のアーム部とした場合と比較して、それぞれの前記アーム部の断面積を前記1本又は2本のアーム部の各断面積よりも小さくし、前記アーム部全体の抵抗値が前記1本又は2本のアーム部とした場合の抵抗値よりも小さくなるように、少なくとも3本以上の前記アーム部の断面積の合計を調整する」ものであるのに対して、引用発明においては、3本の連結部材4a、4b、4cの断面積の合計をどのように調整するものか明らかでない点。
(4) 相違点についての判断
前記相違点1~3について検討する。
ア 相違点1について
(ア) 前記(2)イ(ウ)において周知技術1として認定したとおり、次の技術事項は、本願の出願前に周知の技術であった。
「カンチレバー型のプローブにおいて、プローブをプローブカードのプローブ基板に接続する際に、プローブをプローブ基板上の電極に対して接合すること。」
(イ) そうすると、引用発明の「カンチレバー型プローブ1」を、プローブカードと電気的に接続する場合、その具体化を図るにあたって周知技術1を採用して、プローブカードのプローブ基板上の電極に対して接合するように構成し、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
イ 相違点2及び3について
(ア) アーム部の寸法の調整(構成H)について
a 本件補正発明は、「電気的接触子」という物の発明であるから、本件補正発明における「前記被検査体の前記電極端子に対する前記接触部の移動量及び圧力量の調整について、それぞれの前記アーム部の寸法を調整し」との特定は、アーム部の寸法を調整すること自体(調整方法)を特定している訳ではなく、アーム部がその寸法を調整した結果得られる構成を有することが特定されていると解される。
また、本件補正発明においては、具体的なアーム部の寸法や、接触部の移動量及び圧力量の値は特定されていない。
b そうすると、引用発明の「カンチレバー型プローブ1」においても、その「3本の連結部材4a、4b、4c」(アーム部)の寸法は、それぞれ何らかの調整を経て決定されたものであり、その結果、検査対象である半導体素子(被検査体の電極端子)に対する接触針5(接触部)の移動量及び圧力量が調整されているといえるから、引用発明は、本件補正発明の構成Hにおいて、「電気的接触子」という物の発明において本件補正発明と変わるところはなく、この点において実質的に相違するということはできない。
c なお、仮に実質的な相違点であるとしても、そもそもカンチレバー型の電気的接触子の技術分野において、接触部の移動量や圧力量を適切に調整することは、当業者にとって自明の課題であって、接触部の移動量や圧力量がアーム部の寸法により変わることも明らかであるから、引用発明において、それぞれのアーム部の寸法を調整することにより、接触部の移動量及び圧力量を調整することは、当業者であれば通常実施すべき設計事項にすぎない。
(イ) アーム部の断面積の合計の調整(構成I)について
a 本件補正発明は、「電気的接触子」という物の発明であるから、本件補正発明における「前記アーム部全体の抵抗値の調整について、板厚が同じ1本又は2本のアーム部とした場合と比較して、それぞれの前記アーム部の断面積を前記1本又は2本のアーム部の各断面積よりも小さくし、前記アーム部全体の抵抗値が前記1本又は2本のアーム部とした場合の抵抗値よりも小さくなるように、少なくとも3本以上の前記アーム部の断面積の合計を調整する」との特定は、アーム部の断面積の合計を調整すること自体(調整方法)を特定している訳ではなく、アーム部がその断面積の合計を調整した結果得られる構成を有することが特定されていると解される。
また、本件補正発明においては、具体的なアーム部の断面積の合計やそれぞれのアーム部の断面積、アーム部全体の抵抗値は特定されておらず、比較対象である「板厚が同じ1本又は2本のアーム部とした場合」の「アーム部全体の抵抗値」や「1本又は2本のアーム部の各断面積」についても特定されていない。
そうすると、本件補正発明における構成Iの特定事項は、板厚が同じで何らかの断面積を有する任意の1本又は2本のアーム部とした場合と比較して、それぞれのアーム部の断面積やアーム部全体の抵抗値が前記の関係を有するような値となっていれば足りるというべきである。
b 前記aの解釈に基づいて検討すると、引用発明の「カンチレバー型プローブ1」においては、例えば、比較対象の前記「板厚が同じ1本又は2本のアーム部とした場合」として、3本の連結部材4a、4b、4cのうち、連結部材4a、4bの2本分を1本の連結部材とし、かつ、全体としてもその1本の連結部材のみで構成されるカンチレバー型プローブの場合を想定すると、3本の連結部材4a、4b、4cのそれぞれの断面積は、連結部材4a、4bの2本分を1本の連結部材とした断面積よりも小さいことは明らかであり、前記連結部材全体の抵抗値も、連結部材4a、4bの2本分を1本の連結部材とした場合の抵抗値よりも小さいことは明らかである。そして、アーム部の断面積に応じて抵抗値が変化することは自明であるから、そのような「3本の連結部材4a、4b、4c」を採用することにより、アーム部全体の抵抗値が調整されていることも明らかである。
また、他にも引用発明と比べて、それぞれのアーム部の断面積やアーム部全体の抵抗値が同様の関係を有する「板厚が同じ1本又は2本のアーム部とした場合」は、多数想定し得る。
してみると、引用発明は、本件補正発明の構成Iにおいて、「電気的接触子」という物の発明において本件補正発明と変わるところはなく、この点において実質的に相違するということはできない。
(ウ) 小括
前記(ア)及び(イ)において検討したとおり、アーム部の形状・寸法等に係る相違点2及び3は、実質的な相違点ではない。
ウ 総合評価
前記ア~イにおいて検討したとおり、相違点1は、格別のものではなく、引用発明において、相違点1に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。また、相違点2及び3は実質的な相違点ではない。
そして、相違点1~3を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 審判請求書等における請求人の主張について
ア 審判請求書の主張内容
請求人は、審判請求書において、概略次の主張をしている。
引用文献1には、連結部材4a、4b、4cを備える構成のプローブが開示されているが、連結部材4a、4b、4cの合計の断面積を調整して、連結部材4a、4b、4cを流れる電流の導通性を良好とするためにトータルの抵抗値を調整することについては何ら開示も示唆もない。
例えば、半導体集積回路の電極端子のピッチ間の長さが数十μm~数百μm等であるとすると、その電気的検査等に利用される電気的接触子の板厚はピッチ間の長さよりも更に小さく、電気的接触子のアーム部の上下方向の寸法も非常にスケールが小さい。このようなスケール感において、例えば、電極端子に対する目標針圧を小さくするためにはアーム部の寸法(上下方向の長さ)を大きくし、その逆であれば小さくすることが要求される。他方、例えば高度な半導体集積回路の検査のために比較的大きな電流を流す場合、導通路としてのアーム部の抵抗値を小さくすることが要求されるが、目標針圧にするためにはアーム部の寸法が設計されてしまうので、抵抗値の調整が非常に難しい。拒絶査定において断面積を調整して抵抗値を調整することは設計的事項であると認定は、上述したような技術背景においては不当である。
イ 請求人の主張についての検討
前記アの請求人の主張について検討する。
前記(4)イ(イ)で説示したとおり、引用発明は、本件補正発明の構成Iにおいて、「電気的接触子」という物の発明において本件補正発明と変わるところはなく、この点において実質的に相違するということはできない。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
(6) 独立特許要件についての判断のまとめ
前記(4)において検討したとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否についてのまとめ
前記3において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2において示したとおり却下したので、本願の請求項1~3に係る発明は、令和5年6月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(1)に示した、本件補正前の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
本願発明について、原査定において示された、引用文献1を主たる引用文献とする進歩性欠如の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性の欠如)本願発明は、引用文献1(特開2014-1924号公報)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用文献に記載された発明等
引用文献1の記載事項及び引用発明の認定は、前記第2の3(2)アにおいて示したとおりである。
また、引用文献8~9の記載事項及び周知技術1の認定は、前記第2の3(2)イにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明のうち、前記第2の2(1)に示した限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、当該構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3において検討したとおり、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-019808