特許拒絶査定不服審判
2022-021073
プローブ及びその製造方法
- 審判番号
- 2022-021073
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-145257外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月26日
- 審決日
- 2023年12月20日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社日本マイクロニクス
- 【請求人代理人】三好 秀和
- 分類
- P18 .121-Z (G01R) / P18 .575-Z (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-145257「プローブ及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和2年 8月 6日出願公開、特開2020-118667〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年(2019年)8月7日(優先権主張 平成31年1月23日)を出願日とする特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 6月30日付け:拒絶理由通知書
同年 8月25日 :意見書、手続補正書の提出
同年10月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月18日 :原査定の謄本の送達)
同年12月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年12月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年12月26日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和4年12月26日にされた補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についての補正を含むものであって、次の(1)に示す本件補正前(令和4年8月25日にされた手続補正後をいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1及び請求項3
「【請求項1】
開口端を有する管形状のバレルと、
前記開口端から前記バレルの内部に挿入された挿入部及び前記挿入部に連結する先端部を有する棒形状のプランジャーと
を備え、
前記バレルの外壁部の一部に形成された凹状の接合領域は、前記バレルの内壁部と前記プランジャーの外壁部が接触して合金化されることにより、前記バレルと前記プランジャーが接合され、
前記接合領域を含む前記バレルの軸方向と直交する断面において、前記接合領域以外の前記バレルの内壁部と前記プランジャーの外壁部との間に隙間が形成されている
ことを特徴とするプローブ。」
「【請求項3】
前記バレルと前記プランジャーが1箇所の前記接合領域で接合されていることを特徴とする請求項1に記載のプローブ。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
開口端を有する管形状のバレルと、
前記開口端から前記バレルの内部に挿入された挿入部及び前記挿入部に連結する先端部を有する棒形状のプランジャーと
を備え、
前記バレルの外壁部の一部に形成された凹状の接合領域は、前記バレルの内壁部と前記プランジャーの外壁部が接触して合金化されることにより、前記バレルと前記プランジャーが1箇所の前記接合領域で接合され、
前記接合領域を含む前記バレルの軸方向と直交する断面において、前記接合領域以外の前記バレルの内壁部と前記プランジャーの外壁部との間に隙間が形成されている
ことを特徴とするプローブ。」
2 本件補正の目的
本件補正による請求項1についての補正は、本件補正前の「前記バレルと前記プランジャーが接合され[る]」「前記バレルの外壁部の一部に形成された凹状の接合領域」について、本件補正後の「1箇所の前記接合領域」に限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件についての当審の判断
本件補正による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討を行う。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の「本件補正後の請求項1」で示した記載により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献2の記載事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開2010-281583号公報(以下「引用文献2」という。)には、次に摘記する事項が記載されている(下線は合議体が付した。以下同様である。)。
a 【0005】-【0009】
「【背景技術】
【0005】
従来、被検査物の一実施形態である回路基板には、複数の配線が形成されている。この配線は、回路基板上に搭載される電気・電子部品が所望の機能を有するように、電力を供給したり、電気信号を流したりするために形成されている。このため、配線の不良は、回路基板の動作不良につながることが知られている。
【0006】
このような問題を解決するために、回路基板や半導体装置などの被検査物に形成される配線や電極のような対象部の良否を判定する検査装置の発明が多数提案されている。
【0007】
このような検査装置は、例えば、被検査物となる基板上に形成される配線の良否を判断するために、配線上に予め設定される複数の検査点と、夫々に接続される複数のプローブ(接触子)を備える検査用治具を用いて検査が実施される。
【0008】
この検査用治具では、接触子の一端が配線上の検査点に圧接され、その他端が検査装置と電気的に接続される電極部に圧接される。そして、この検査用治具を介して、検査装置から対象部の配線の電気的特性を測定するための電流や電圧を供給するとともに、その配線からの電気的信号を検査装置へ送信することになる。
【0009】
近年、技術の進歩により、半導体装置が小さくなったり、基板が小さくなったりすることにともない、基板上の配線もより微細に且つ複雑に形成されるようになっている。このような基板の配線の微細化及び複雑化が進むにつれて、検査用治具が備える接触子も接触子自体の細線化、接触子間の狭ピッチ化や多ピン化や簡素化が求められている。」
b 【0037】-【0043】、図1
「【0037】
[検査用治具の概略の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る検査用治具10の概略の構成を示す一部断面正面図である。検査用治具10は、ヘッド部12、保持部14、ベース部16及び電極部18を備える。ヘッド部12、保持部14及びベース部16の各々は、複数の樹脂あるいはセラミックス等の絶縁性の板状部材からなる。ヘッド部12、保持部14及びベース部16は、棒状の支持部材11及びその周囲に環装されたスペーサ11sによって保持されている。
【0038】
ヘッド部12及びベース部16は、それぞれ、2枚のプレートから構成されている。枚数及び板厚はこれに限定されない。ヘッド部12の各プレートには複数の貫通孔12hが形成されていて、それに挿入されたプローブ22の先端部22fを所定の位置に案内する。ベース部16の各プレートには複数の貫通孔16hが形成されていて、それに挿入されたプローブ22の後端部22rを電極部18へ案内する。
〔…中略…〕
【0042】
図1においては、図面の簡略化のために、一部のプローブ22を示す。
【0043】
また、図1に示すように、被検査物の検査時には、検査用治具10の下方には、検査対象の被検査物50が配置され、検査用治具10が下降してプローブ22の先端部22fを所定の検査点、例えば、50d1に接触させて、対象部の電気的特性の検査が行われる。」
「【図1】
[図:0001407412000001.jpg]
」
c 【0044】-【0056】、図2(A)、図2(C)
「【0044】
[プローブの構造]
図2(A)から図2(D)は、図1の検査用治具に用いることができるプローブのいくつかの実施形態を示す。
【0045】
図2(A)は、図1の検査用治具に用いることができる一実施形態に係るプローブ22を示す。プローブ22は、導電性の円筒状部材から構成されている。例えば、そのプローブとして、外径が、約25から300μmで、内径17が10から250μmのニッケル合金のチューブを用いてもよい。この実施形態では、各プローブの一例として、外径が、約50μm、内径が約30μm、長さが約20mmのニッケル合金のチューブを用いるが、それに限定されるものではない。なお、必要に応じて、プローブの先端部22f及び後端部22rの端面を除いて周面は絶縁被覆してもよい。
【0046】
プローブ22は、円筒形状の先端部22f、中間部22m及び後端部22rを備える。先端部22fは、図1に示すような被検査物50の所定の検査点50dnに接触し、中間部22mは、図1に示すような検査用治具10の保持部14によって保持され、後端部22rは、図1に示すような電極部18と電気的接続を図るように機能する。
【0047】
また、プローブ22は、さらに、先端部22fと中間部22mとの間に、伸縮自在な弾性部22s-1を備え、また、中間部22mと後端部22rとの間に、伸縮自在な弾性部22s-2を備える。弾性部22s-1及び22s-2は、プローブ22の円筒状部材の一部を例えばレーザを用いてらせん状に取り除くことによって、先端部22f、中間部22m及び後端部22rと一体的に形成することができる。
【0048】
図2(A)に示すように、プローブ22の先端部22f及び後端部22rのそれぞれの端面22fe,22reは、平坦に形成されている。」
「【図2】(A)
[図:0001407412000002.jpg]
」
「〔…中略…〕
【0052】
図2(C)は、図1の検査用治具に用いることができる他の実施形態に係るプローブ26を示す。プローブ26は、図2(A)のプローブ22に、導電性の部材から形成された円柱状の先端ピン30f及び後端ピン30rが組み込まれて構成されている。
【0053】
具体的には、先端部22f及び後端部22rには、それぞれ、先端ピン30f及び後端ピン30rが挿入されており、それらのピンは、例えば先端部22f及び後端部22rの位置Pcを、例えばかしめや抵抗溶接やレーザ溶接することによって固定されている。
【0054】
先端ピン30fは先鋭形状の先端部30feを有しており、その先端部30feは被検査物50の所定の検査点50dn(図1)に接触する。また、後端ピン30rは後端部30reを有しており、その後端部30reは、電極部18と電気的接続を図ることができる。
〔…後略…〕」
「【図2】(C)
[図:0001407412000003.jpg]
」
(イ) 引用文献2の記載から読み取れる事項の認定
a 認定事項1
(a) 前記(ア)で摘記した【図2】(C)における、「円筒形状の先端部22f」部分の抜粋を次に示す。なお、図中の丸枠は合議体が付したものである。
【図2】(C)の「円筒形状の先端部22f」部分の抜粋
「
[図:0001407412000004.jpg]
」
(b) ここで、次のi)及びii)に示す引用文献2の記載を踏まえると、引用文献2から後記の(c)に示す事項が読み取れる。
i) 段落【0046】の「プローブ22は、円筒形状の先端部22f、中間部22m及び後端部22rを備える」という記載
ii) 段落【0052】の「プローブ26は、図2(A)のプローブ22に、導電性の部材から形成された円柱状の先端ピン30f及び後端ピン30rが組み込まれて構成されている」という記載
(c) 【図2】(C)中にて「円筒形状の先端部22f」として表れる斜線部分は、その「円筒形状の先端部22f」の断面を示したものであること。
(d) 前記(c)を踏まえて、あらためて【図2】(C)を参照すると、段落【0053】に記載された、「かしめや抵抗溶接やレーザ溶接することによって固定されている」「先端部22f」「の位置Pc」において、「プローブ22」の「円筒形状の先端部22f」の長手方向に沿って、その円筒形状の内側に向かう凹形状が現れることが見て取れる。
(なお、請求人は、審判請求書の3.(c)において、「(…前略…)引用文献2の図2(C)を参照すると、先端部22f及び後端部22rの少なくとも上下2方向が凹んでおり、レーザ溶接する場所が1箇所ではないことが示されています。」)と主張しており、レーザ溶接により円筒形状部材の内側に向かう凹形状が現れること自体は、請求人も認めるところである。)
(e) 前記(a)-(d)をまとめると、引用文献2の記載から、かしめや抵抗溶接やレーザ溶接することによって固定されている先端部22fの位置Pcについて、次の事項(以下「認定事項1」という。)を認定することができる。
[認定事項1]
「先端部22fの位置Pcには、先端部22fの円筒形状の内側に向かう凹形状が現れること。」
b 認定事項2
前記aを踏まえると、【図2】(C)の記載から次の事項(以下「認定事項2」という。)が見て取れる。
[認定事項2]
「先端部22fの円筒形状の内径と円柱状の先端ピン30fの間には、位置Pc以外の長手方向の位置において、隙間が形成されていること。」
(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)で示した摘記事項及び前記(イ)で示した引用文献2の記載から読み取れる事項を総合すると、引用文献2には、次に示す発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「プローブ22に、導電性の部材から形成された円柱状の先端ピン30fが組み込まれて構成されている、プローブ26であって、(【0052】)」
先端ピン30fは先鋭形状の先端部30feを有しており、その先端部30feは被検査物の所定の検査に接触するものであり、(【0054】)
プローブ22は、導電性の円筒状部材から構成されており、(【0045】)
プローブ22は、円筒形状の先端部22fを備え、(【0046】)
先端部22fには、先端ピン30fが挿入されており、ピンは、先端部22fの位置Pcを、レーザ溶接することによって固定されており、(【0053】)
先端部22fの位置Pcには、先端部22fの円筒形状の内側に向かう凹形状が現れており、(前記認定事項1)
先端部22fの円筒形状の内径と円柱状の先端ピン30fの間には、位置Pc以外の長手方向の位置において、隙間が形成されており、(前記認定事項2)
先端部22fを所定の検査点に接触させて、対象部の電気的特性の検査を行う、(【0043】)
プローブ26。」
イ 引用文献5の記載事項及び引用文献技術事項の認定
(ア) 引用文献5の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開2018-111478号公報(以下「引用文献5」という。)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【0022】
図1~図3に示すように、単芯線21は、略円柱状の一本の導体で構成される。単芯線21は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金によって構成される。単芯線21の一端部は、平板状に圧潰されて圧潰部21aとなっている。この圧潰部21aは、単芯線21の圧潰部21a以外の部分とは径方向へ段差が生じるように屈曲して形成されている。また、圧潰部21aは、第1の撚り線11が接合される平らな接合面21bを有している。圧潰部21aの形成方法としては、例えば次のような方法が考えられる。すなわち、単芯線21の一端部を載置可能な受け治具に単芯線21の一端部を載置する。受け治具上には単芯線21の一端部を幅方向から挟むような一対の拘束壁が形成されている。そして、単芯線21の一端部を上方(受け治具とは反対側)から潰し治具を近接させ、単芯線21の一端部側を前記幅方向への延伸を規制した状態で受け治具と潰し治具との間で押し潰すようにして圧潰部21aを形成する。
【0023】
単芯線21の一端部側である圧潰部21aは、接合面21b上において第1の撚り線11の接合ブロック部13aと電気的に接続される。なお、接続方法は特に問わないが超音波溶着や、レーザ溶着などが挙げられる。また、溶接箇所は1箇所であっても複数箇所であってもよい。単芯線21の他端部側は、導電パイプ22と電気的に接続される。
【0024】
図1及び図2に示すように、導電パイプ22は、例えば、一端部側が開口した開口部22aを有する略有底円筒状をなすように構成される。導電パイプ22内径は単芯線21の外径よりも長い構成となっている。これによって、単芯線21を導電パイプ22内部に挿通可能となっている。」
「【図1】
[図:0001407412000005.jpg]
」
「【図2】
[図:0001407412000006.jpg]
」
「【図3】
[図:0001407412000007.jpg]
」
「【0025】
また、導電パイプ22は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金によって構成される。導電パイプ22側の底部である他端部側には他端部から連続して第2の撚り線12と接続するための接続部22bが一体形成される。接続部22bは、前記圧潰部21aと略同様の構成であり、導電パイプ22の他端部側の筒状部分を平板状に圧潰して形成されている。この接続部22bは、導電パイプ22の接続部22b以外の部分とは径方向へ段差が生じるように屈曲して形成されている。接続部22bは、第2の撚り線12が接合される平らな接合面22cを有している。この接続部22bにおいて導電パイプ22の開口が略閉塞されている。接続部22bは、接合面22c上において第2の撚り線12の接合ブロック部15aと電気的に接続される。なお、接続方法は特に問わないが超音波溶着や、レーザ溶着などが挙げられる。また、溶着箇所は1箇所であっても複数箇所であってもよい。
【0026】
単芯線21と導電パイプ22とは、単芯線21が導電パイプ22内に嵌入された(挿通された)状態でレーザ溶着されることで電気的に接続される。なお、導電パイプ22内への単芯線21の挿通量は、車種等の仕様に応じて適宜変更されて単芯線21と導電パイプ22との組み付け状態における全長が調整されるようになっている。また、溶着箇所は1箇所であっても複数箇所であってもよい。」
「【0054】
・上記実施形態では、レーザ溶着によって単芯線21と導電パイプ22とを電気的に接続する構成としたが、これに限らず、その接続方法は適宜変更してもよい。例えば、超音波溶着や圧着等で単芯線21と導電パイプ22とが電気的に接続される構成としてもよい。〔…後略…〕」
(イ) 引用文献5技術事項の認定
前記(ア)で示した摘記事項を総合すると、引用文献5には、次に示す技術事項(以下「引用文献5技術事項」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献5技術事項]
「円筒状の導電パイプと円柱状の導体を、1箇所の溶着箇所でレーザ溶着することで、電気的に接続すること。」
ウ 引用文献6の記載事項及び技術常識の認定
(ア) 引用文献6の記載事項
当審において新たに引用する特表2009-539108号公報(以下「引用文献6」という。)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【0011】
次に例示的なものであり制限的なものではない各図を参照する。各図において、同じ参照番号は同じものを表す。
詳細な説明
本明細書では、接触領域内での接触部材(たとえば、コイル状接触部材)とバレルとプランジャとの接触が連続して密着した(たとえば、物理的な)接触であるため、低く一様な抵抗を有する電気試験プローブが開示される。このような試験プローブを同軸環境における信号キャリアとして使用すると、信号は常に、接触領域において、バレルからプランジャへ、またはプランジャからバレルへと(すなわち、バレルとプランジャとの間を)送られ、その結果、予測可能で反復可能なインピーダンスを達成する。たとえば、試験プローブは、被試験体(DUT)に物理的に接触するように配置することができる。この場合、電気信号を試験プローブの底部(DUTから離れる方向の端部)からバレルを横切って接触領域に送り、さらに接触領域にあるプランジャに送り、さらに試験プローブのチップまで送り、被試験体内に送り込むことができる。次に、試験プローブのチップにおいて試験中のデバイスから戻り電気信号を受け取ることができる。この戻り信号は、チップからプランジャを通過して接触領域に入り、バレルに伝わり、試験プローブとは反対側の端部に戻る。すでに指摘したように、電気信号は常に、接触領域内でバレルとプランジャとの間を通過する。」
「【0016】
図2および3は、試験プローブの他の実施形態のそれぞれ部分側面図および部分断面図を示している。この試験プローブ52は、プランジャ延長部60の第1の端部に配置されたチップ56を含む受けプランジャ54を有している。プランジャ延長部60は、チップ56から停止突起部70までほぼ一定の直径を有してよい。バレル58は、接触領域62に結合された停止係合部68および第2の係合部72を有している。これらの係合部は、ロールクリンプなどであってよく、係合部においてバレル直径を十分に小さくして、停止突起部70が接触領域62に入るのを禁止し、接触部材10を接触領域62内に維持する。係合部は、プランジャ延長部60の直径より大きい直径を有し、係合部68、72のいずれかにおいてバレル58とプランジャ延長部60との物理的および/または電気的な連絡を禁止することが望ましい。
【0017】
接触領域62内に接触部材10が位置している。この構成では、受けプランジャ54の直径はチップから単一の停止突起部70まで一定である。プランジャ延長部60の周りの、接触領域62内に、バレル58とプランジャ延長部60との確実な電気的接点を形成する接触部材が位置している。
【0018】
試験プローブ2、52の使用時には、受けプランジャ4、54のチップ6、56が被試験体に接触し、プランジャ4、54を被試験体から離れる方向にバレルとは反対側の端部に向かって、たとえば、伝達プランジャ16に向かって作動させる。受けプランジャ4、54がこのように移動すると、プランジャ延長部24、60の一部が接触領域12、62、接触部材10を通過し、停止係合部18、72を越えて任意のバレル部30に入る。プランジャ延長部24が被試験体から離れる方向に移動すると、第2の突起部28、70が伝達プランジャ16に向かって前進し、ばね14を圧縮する。一方、電気信号が(試験プローブの底部から)伝達プランジャ16を通って試験プローブのチップまで伝わり、かつ電気信号が逆に試験プローブのチップから伝達プランジャ16に伝わり受け取られる。これらの電気信号は、開口部40に配置された接触領域12、62内で、バレル8、58と受けプランジャ4、54(たとえば、プランジャ延長部24、60)との間を伝わる。
【0019】
チップ6、56が被試験体に係合すると、電気信号がチップ6、56およびプランジャ延長部24、60を通過する。信号は、バレル8、58に入るとき、プランジャ延長部24、60から接触部材10を通ってバレル8、58まで移動する。信号は次に、バレル8、58に沿って受信器(不図示)まで伝わる。プランジャ延長部24、60の直径がほぼ一定であり、プランジャ延長部が常に同じ点、すなわち接触部材10においてバレル8、58に接触するため、信号は常に接触領域12、62内でバレルに伝えられる。その結果、電気試験プローブ2、52のインピーダンスは予測可能で反復可能なものになる。しかし、付勢ばねおよび通常のプランジャに依存する構成では、バレルへの信号の転送点は固定点ではない。その結果、そのような構成のインピーダンスは予測可能で反復可能なものではなくなる。追加として、たとえば試験プローブ52の抵抗は低下し、20ミリオーム(mOhm)以下で反復可能である。
【0020】
接触部材10は、接触領域12、62内でプランジャ延長部24、60の周りに接触領域12、62に連続して物理的に接触して配置され、プランジャ延長部24、60から接触部材10を通ってバレル8、58に至る電気経路を形成する。この物理的接触は、所望の電気的連絡を可能にし、一方摩擦を最小限に抑えるのに十分な接触であることが望ましい。接触部材10およびプランジャ延長部24、60の直径は、ある信号転送と別の信号転送との間の直径の変化(たとえば、プランジャ延長部24、60が円錐形である場合)によってインピーダンスが変化することのないようにほぼ一定である。接触部材10は、プランジャ延長部24、60に物理的に滑り可能に接触するモノリシック部材(たとえば、リング、座金など)、コイル状部材などであってよい。」
「【図1】
[図:0001407412000008.jpg]
」
「【図2】
[図:0001407412000009.jpg]
」
「【0024】
接触部材10をバレル8、58内の所望の位置に保持するために、リップ、クリンプ(たとえば、ロールクリンプ68(図2~3))、または他の小径バレル開口部40(図1)が接触部材10の一方の側に配置され、一方、停止係合部18、72が接触部材10の他方の側に配置されている。受けプランジャ4、54は、それぞれ停止係合部18、72の、接触部材10とは反対側に配置された停止突起部20、70を有している。完全に延ばされた位置では(すなわち、受けプランジャ4、54がその完全に延ばされた位置にあるときは)、停止突起部20、70は停止係合部18、72に係合することができ、それによって受けプランジャ4、54がバレル8、58の外にさらに延びるのが防止される。
【0025】
停止突起部20、70の第2の側が作動ばね14に係合することができるか、またはプランジャ部26を停止突起部20と第2の突起部28との間に配置することができる。後者の実施形態、たとえば図1では、第2の突起部28は、完全に延ばされたプランジャ位置では、一方の側で第2の係合部42に係合し、第2の側でばね14に係合することができる。(これに応じて)突起部28、70は、任意に第2の側から延びてばね14を受け入れ、プローブの容易な組み立てを可能にするアンカー部材22を有してよい。第2の側に配置され、ばねの端部を受け入れることができるボアのような、他の配置構成を使用することができる。
【0026】
適切なバレル材料には、試験プローブを利用できる条件に耐えることのできる導電および伝熱材料が含まれる。バレルのために利用可能な材料には、銅、真鍮、ニッケル、鉄鋼材などと、鋼、ステンレス鋼、超合金のような、上記の材料のうちの少なくとも1つを含む組み合わせとを含めてよい。バレルは、管引き抜き、深絞り、自動旋盤加工のような様々な技術を使用して形成することができる。
【0027】
適切なプランジャ材料には、プランジャの力に耐えるのに十分な強度を有し、試験プローブ動作条件に耐えることのできる任意の材料が含まれる。利用可能なプランジャ材料には、鉄鋼材、ベリリウム、銅、白金、コバルト、パラジウムなどと、これらの材料のうちの少なくとも1つを含む組み合わせ、たとえば、パラジウム-コバルトコーティングを有するチップを含む鋼製プランジャ延長部が含まれる。プランジャは、機械加工(たとえば、旋盤加工)、鋳造のような様々な技術を使用して形成することができる。」
(イ) 技術常識の認定
前記(ア)で示した引用文献6の記載に例示されるように、次に示す技術事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識」という。)。
[技術常識]
「互いに電気的に接続するバレルとプランジャからなる試験プローブにおいて、バレルとプランジャの各々に利用可能な金属材料は、異なる組からなるものとして様々な金属材料の組み合わせが利用可能であること。」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 「プローブ」の発明である本件補正発明と「プローブ26」の発明である引用発明は、「プローブ」の発明である点において一致する。
(イ) 引用発明の「プローブ22」が備える、「円筒形状の先端部22f」は、本件補正発明の「管形状のバレル」に相当する。また引用発明の「先端部22f」は、「円筒形状」であり「先端ピン30fが挿入され[る]」ものであるから、開口を有することは明らかである。
したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「開口端を有する管形状のバレル」を備える点。
(ウ)a 引用発明の「円柱状の先端ピン30f」は、本件補正発明の「棒形状のプランジャー」に相当する。
b 前記aを踏まえると、引用発明の「先端ピン30f」が有する、「先鋭形状の先端部30fe」は、本件補正発明の「棒形状のプランジャー」が有する「先端部」に相当する。
c 引用発明の「先端ピン30f」が「プローブ22」が備える「円筒形状の先端部22f」に「挿入され[る]」こと、及び前記(イ)の検討結果を踏まえると、「先端ピン30f」を現わす部位のうち、前記bで示した「先鋭形状の先端部30fe」以外の部位であって、「プローブ22」が備える「円筒形状の先端部22f」に「挿入され[た]」部位は、本件補正発明の「前記開口端から前記バレルの内部に挿入された挿入部」に相当する。
また、「先端ピン30f」を現わす部位である「先鋭形状の先端部30fe」及びそれ以外の部位は、互いに一体のものとして連結されていることは、明らかである。
d 前記a-cをまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記開口端から前記バレルの内部に挿入された挿入部及び前記挿入部に連結する先端部を有する棒形状のプランジャー」を備える点。
(エ)a 前記(イ)で示した検討結果を踏まえると、引用発明の「先端部22fの円筒形状の内側に向かう凹形状が現れ[る]」「先端部22fの位置Pc」は、「先端部22f」の長手方向に沿う全体の長さに比べて、長手方向においてある特定の位置として単独に存在するものであるから、本件補正発明の「前記バレルの外壁部の一部に形成された凹状の接合領域」に相当する。
b 引用発明では、「先端部22fには、先端ピン30fが挿入され」、「ピンは、先端部22fの位置Pcを、レーザ溶接することによって固定され[る]」ものである。
ここで、部材同士をレーザ溶接することの技術的意味は、レーザを照射することで発生した熱により各々の部材を溶かし、その後、冷まして接合することであるから、引用発明における「レーザ溶接」に際しても、「位置Pc」において、「円筒形状の先端部22f」の「円筒形状」「内径」を含む部分と「円柱状の先端ピン30f」の「円柱」表面を含む部分同士が接合される。
c してみると、引用発明の「ピンは、先端部22fの位置Pcを、レーザ溶接することによって固定され[る]」ことは、本件補正発明の「前記バレルの内壁部と前記プランジャーの外壁部が接触して」、「前記バレルと前記プランジャーが」「前記接合領域で接合され[る]」ことに相当する。
d 前記a-cをまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。
「前記バレルの外壁部の一部に形成された凹状の接合領域は、前記バレルの内壁部と前記プランジャーの外壁部が接触して」「、前記バレルと前記プランジャーが」「前記接合領域で接合され[る]」ものである点。
(オ) 引用発明の「先端部22fの円筒形状の内径と円柱状の先端ピン30fの間には、凹形状が現れる位置Pc以外の位置において、隙間が形成されて[いる]」ことは、本件補正発明の「前記接合領域以外の前記バレルの内壁部と前記プランジャーの外壁部との間に隙間が形成されている」ことに相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。
「前記接合領域以外の前記バレルの内壁部と前記プランジャーの外壁部との間に隙間が形成されている」ものである点。
イ 一致点及び相違点の認定
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記の(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「開口端を有する管形状のバレルと、
前記開口端から前記バレルの内部に挿入された挿入部及び前記挿入部に連結する先端部を有する棒形状のプランジャーと
を備え、
前記バレルの外壁部の一部に形成された凹状の接合領域は、前記バレルの内壁部と前記プランジャーの外壁部が接触して、前記バレルと前記プランジャーが前記接合領域で接合され、
前記接合領域以外の前記バレルの内壁部と前記プランジャーの外壁部との間に隙間が形成されている
プローブ」である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
「前記バレルの内壁部と前記プランジャーの外壁部が接触して」「接合され[る]」際に、
本件補正発明においては「前記バレルの内壁部と前記プランジャーの外壁部が接触して合金化される」ものであるのに対して、
引用発明の「プローブ22」の「先端部22f」及び「先端ピン30f」の各々の部材を構成する各々の材料の異同が不明であるから、引用発明において各々の部材が「合金化される」か明らかでない点(以下「相違点1」という。)。
b 相違点2
「接合領域」について、
本件補正発明においては「接合領域」が「1箇所」であり、
このため、「前記接合領域を含む前記バレルの軸方向と直交する断面において、前記接合領域以外の前記バレルの内壁部と前記プランジャーの外壁部との間に隙間が形成されている」のに対して、
引用発明の「先端部22fの位置Pc」における「レーザ溶接する」箇所の個数は不明であり、「前記接合領域を含む前記円筒形状の先端部22f(「バレル」に相当する。)の軸方向と直交する断面において、前記接合領域以外の前記円筒形状の先端部22fの内壁部と前記円柱状の先端ピン30f(「プランジャー」に相当する。)の外壁部との間に隙間が形成されている」ことが明示されていない点(以下「相違点2」という。)。
(4) 相違点についての判断
前記相違点1及び2について検討する。
ア 相違点1について
(ア) 前記(2)ウ(イ)の「技術常識の認定」で示したとおり、「互いに電気的に接続するバレルとプランジャからなる試験プローブにおいて、バレルとプランジャの各々に利用可能な金属材料は、異なる組からなるものとして様々な金属材料の組み合わせが利用可能であること」は、技術常識である。
(イ) そして、引用発明2の「プローブ22」の「先端部22f」及び「先端ピン30f」の各々の部材は、それぞれ次のa及びbに示すとおり、各々に求められる機械的性質(弾性・耐摩耗性等)が異なるものであるから、果たすべき目的に応じて各々に異なる金属材料を用いることは、当業者が適宜選択できる設計事項にすぎない。
a 「伸縮自在な弾性部22s-1」「と一体的に形成」される、「プローブ22」の「先端部22f」(前記(2)ア(ア)bの段落【0047】を参照)
b 「被検査物50の所定の検査点50dn」に「圧接」される、「先端ピン30f」(前記(2)ア(ア)cの段落【0008】及び【0054】を参照)
(ウ) そうすると、引用発明の「プローブ22」の「先端部22f」及び「先端ピン30f」において前記技術常識を採用して、それぞれ異なる金属材料とすることは自然なことであり、この場合、「レーザ溶接することによって」異なる金属材料同士が合金化されることとなり、相違点1に係る構成を備えることとなる。
したがって、相違点1に係る構成は、格別のものではなく、実質的な相違点とはいえない。
イ 相違点2について
(ア) 引用文献5には、次の技術事項(前記「引用文献5技術事項」を参照)が記載されている。
「円筒状の導電パイプと円柱状の導体を、1箇所の溶着箇所でレーザ溶着することで、電気的に接続すること。」
(イ) 上記(ア)で「引用文献5技術事項」を示したとおり、引用発明の「プローブ26」において、「先端部22fの位置Pc」の「レーザ溶接する」箇所を「1箇所」とすることは、当業者にとって自明の設計上の選択肢にすぎない。
(ウ) そして、引用発明において「先端部22fの位置Pc」における「レーザ溶接する」箇所を「1箇所」としたものは、「前記接合領域を含む前記バレルの軸方向と直交する断面において」も、「前記接合領域以外の前記バレルの内壁部と前記プランジャーの外壁部との間に隙間が形成されている」ものとなる。
(エ) したがって、相違点2に係る構成は、当業者にとって自明の設計上の選択肢を選択したものにすぎないから、引用発明において相違点2に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 総合評価
前記ア及びイにおいて検討したとおり相違点1及び相違点2は、いずれも格別のものではなく、引用発明において、相違点1及び相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、技術常識及び引用文献5技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、技術常識及び引用文献5技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 審判請求書における請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、それぞれ次のア(ア)及び後記イ(ア)に示す主張をしている(それぞれ以下「請求人の主張その1」及び「請求人の主張その2」という。)。当該主張に対する合議体の判断は、それぞれ次のア(イ)及び後記イ(イ)に示すとおりである。
ア 請求人の主張その1について
(ア) 請求人の主張その1の内容
引用文献2には、ピンと先端部22f及び後端部22rを固定する方法の1つの例としてレーザ溶接が記載されている。しかし、引用文献2の明細書にレーザ溶接の詳細が記載されていないところ、引用文献2の図2(C)を参照すると、先端部22f及び後端部22rの少なくとも上下2方向が凹んでおり、レーザ溶接する場所が1箇所ではないことが示されている。
引用文献2には、次に示す事項について、開示も示唆もない。
「前記バレルの外壁部の一部に形成された凹状の接合領域は、前記バレルの内壁部と前記プランジャーの外壁部が接触して合金化されることにより、前記バレルと前記プランジャーが1箇所の前記接合領域で接合される」事項
(イ) 請求人の主張その1についての当審の判断
a 引用文献2の段落【0053】には、次のとおり記載されている。
「具体的には、先端部22f及び後端部22rには、それぞれ、先端ピン30f及び後端ピン30rが挿入されており、それらのピンは、例えば先端部22f及び後端部22rの位置Pcを、例えばかしめや抵抗溶接やレーザ溶接することによって固定されている」
b 前記aに摘記した記載から明らかなとおり、引用文献2の図2(C)に現れる凹みは、レーザ溶接だけではなく、かしめによる固定手法も含めて説明するためのものであるから、レーザ溶接する場合にまで上下2方向が凹んでいることを示すものでないことは、当業者には自明である。
c また、そもそも、レーザ溶接の箇所として1箇所とすることが当業者にとって自明の設計上の選択肢にすぎないことは、前記(4)イの「相違点2について」において示したとおりである。
d 以上より、請求人の主張その1は採用できない。
イ 請求人の主張その2について
(ア) 請求人の主張その2の内容
引用文献5に記載の発明は、車両内に設置された高圧バッテリとインバータとを接続するため車両の床下等を通るように配索されるワイヤハーネスに関する発明である。
ここで、引用文献5に記載の発明は、長さの調整が容易なワイヤハーネスを提供することを目的とするものであり、一方、引用文献2に記載の発明の目的は、2箇所の弾性部を備えるプローブのそれらの弾性部を互いに独立して機能させることである。
してみると、引用文献2に記載の発明と引用文献5に記載の発明は、属する技術分野がまったく異なるものであって、かつ、配置箇所などに応じて形体を変化させて車両に配索するために可撓性を有する部材からなるワイヤハーネスの形成に使用される接合技術を、ワイヤハーネスとは用途や母材に必要とされる特性が異なり、被検査体と配線基板などの端子を接触する剛体であるプローブの部材の接合に適用することに想到するのが容易ではないことは明白である。
(イ) 請求人の主張その2についての当審の判断
a 前記(4)イの「相違点2について」において示したとおり、そもそも、レーザ溶接の箇所として、1箇所とすることは、当業者にとって自明の設計上の選択肢にすぎない。
b そして、引用発明と引用文献5技術事項は、いずれも円筒状の導電パイプと円柱状の導体のレーザ溶接に関連するものであるから、レーザ溶接という技術分野において共通するものである。確かに、引用発明はプローブに関連するものである一方、引用文献5技術事項はワイヤハーネスに関連するものであり、具体的な製品に違いはあるものの、その具体的な製品の異同がレーザ溶接箇所の個数の選択肢としての自明性に影響を与えて困難なものに変化させるような特殊な事情は認められない。
c よって、請求人の主張その2は採用できない。
(6) 本件補正についてのむすび
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1-12に係る発明は、令和4年8月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(1)に摘記した請求項1及び請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、引用文献2を主たる引用文献とした本願発明についての進歩性欠如の理由2は、次のとおりである。
理由2(進歩性欠如)
本願発明は、下記の引用文献2及び5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献2:特開2010-281583号公報
引用文献5:特開2018-111478号公報
3 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
引用文献2には、前記第2の3(2)ア(ア)で示したとおりの摘記事項が記載されており、また、前記第2の3(2)ア(ウ)で認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
引用文献5には、前記第2の3(2)イ(ア)で示したとおりの摘記事項が記載されており、また、前記第2の3(2)イ(イ)で認定したとおりの引用文献5技術事項が記載されていると認められる。
4 対比・判断
本願発明の発明特定事項と本件補正発明の発明特定事項は、互いに全て同じである(前記第2の1「本件補正の内容」参照)。
そうすると、本願発明と構成が同一である本件補正発明が、前記第2の3において検討したとおり、引用発明、技術常識及び引用文献5技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、技術常識及び引用文献5技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-021073