特許拒絶査定不服審判
2023-018087
情報処理装置、情報処理方法、及び、プログラム
- 審判番号
- 2023-018087
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-150156
- 請求日
- 2023年10月25日
- 審決日
- 2024年05月27日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本電気株式会社
- 【請求人代理人】机 昌彦
- 【請求人代理人】北嶋 啓至
- 審判長/審判官
- 審判長 山澤 宏
- 審判官 篠塚 隆
- 審判官 村松 貴士
- 分類
- P18 .561-Z (G06F) / P18 .121-Z (G06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-150156「情報処理装置、情報処理方法、及び、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月23日出願公開、特開2021-193604〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月24日の出願である特願2016-60516号の一部を、令和2年5月21日に新たな特許出願(特願2020-88620号)とし、その一部を、令和3年9月15日に新たな特許出願(特願2021-150156号)としたものであって、その後の手続の概要は以下のとおりである。
令和 4年10月19日付け:拒絶理由通知書
令和 4年12月23日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 3月24日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和 5年 5月24日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 7月19日付け:令和5年5月24日の手続補正につい
ての補正の却下の決定、拒絶査定
令和 5年10月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年10月25日付けの手続補正についての補正の却下の決定
1 結論
令和5年10月25日付けの手続補正を却下する。
2 理由
(1)補正の内容
令和5年10月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、審判請求と同時にされた補正であり、令和4年12月23日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1、請求項5及び請求項6について、(下線は補正箇所である。)
「 【請求項1】
利用者が操作を行う操作手段と、
前記利用者を撮像するカメラと、
前記利用者の視覚を介して情報を通知する複数のディスプレイと、
前記利用者に操作を促す第1の情報を、前記複数のディスプレイのうちの一つである第1のディスプレイに通知させ、前記利用者の操作が検出された後に、前記利用者の操作に応じた情報であって前記カメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を、前記複数のディスプレイのうちの前記第1のディスプレイとは別のディスプレイである第2のディスプレイに通知させる制御手段と、
前記利用者の顔に関する画像を基に前記利用者を認証する認証手段と、
を備える情報処理装置。」
「 【請求項5】
利用者が操作する操作手段を備える情報処理装置の情報処理方法であって、
前記利用者に操作を促す第1の情報を、第1のディスプレイに通知させ、前記利用者の操作が検出された後に、前記利用者の操作に応じた情報であって前記利用者を撮像するカメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を、前記第1のディスプレイとは異なる第2のディスプレイに通知させ、
前記利用者の顔に関する画像を基に前記利用者を認証する情報処理方法。
【請求項6】
利用者の操作を取得する処理と、
前記利用者に操作を促す第1の情報を、第1のディスプレイに通知させ、前記利用者の操作が検出された後に、前記利用者の操作に応じた情報であって前記利用者を撮像するカメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を、前記第1のディスプレイとは異なる第2のディスプレイに通知させる処理と、
前記利用者の顔に関する画像を基に前記利用者を認証する処理と
をコンピュータに実行させるプログラム。」
とする、補正を含むものである。
(2)本件補正の適否について
上記(1)のとおり、本件補正の請求項1には、「前記利用者に操作を促す第1の情報を、前記複数のディスプレイのうちの一つである第1のディスプレイに通知させ、」「前記利用者の操作に応じた情報であって前記カメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を、前記複数のディスプレイのうちの前記第1のディスプレイとは別のディスプレイである第2のディスプレイに通知させる」との事項、本件補正の請求項5及び6には「前記利用者に操作を促す第1の情報を、第1のディスプレイに通知させ、」「前記利用者の操作に応じた情報であって前記利用者を撮像するカメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を、前記第1のディスプレイとは異なる第2のディスプレイに通知させ」るとの事項が、それぞれ記載されている。
そして、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)には、【0041】に「情報処理装置10が、図示しない複数の表示機器を含み、情報を表示する表示機器が変更となる場合、制御部100は、情報を表示する表示機器の位置に応じて、通知部300の通知範囲の方向又は位置を変更してもよい。」と記載されている。
してみると、当初明細書等には、「複数の表示機器」を備えることについて記載されているものの、「前記利用者に操作を促す第1の情報を、」「第1のディスプレイに通知させ、」「前記利用者の操作に応じた情報であって前記カメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を、」「前記第1のディスプレイとは別のディスプレイである第2のディスプレイに通知させる」こと、及び、「前記利用者に操作を促す第1の情報を、第1のディスプレイに通知させ、」「前記利用者の操作に応じた情報であって前記利用者を撮像するカメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を、前記第1のディスプレイとは異なる第2のディスプレイに通知させ」ることについては記載されていない。
したがって、当初明細書等の上記の他の記載事項を検討しても、もとの出願時にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば、もとの出願時の技術常識に照らして、「前記利用者に操作を促す第1の情報を、前記複数のディスプレイのうちの一つである第1のディスプレイに通知させ、」「前記利用者の操作に応じた情報であって前記カメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を、前記複数のディスプレイのうちの前記第1のディスプレイとは別のディスプレイである第2のディスプレイに通知させる」との事項、「前記利用者に操作を促す第1の情報を、第1のディスプレイに通知させ、」「前記利用者の操作に応じた情報であって前記利用者を撮像するカメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を、前記第1のディスプレイとは異なる第2のディスプレイに通知させ」るとの事項が、当初明細書等に記載されていると同然であると理解することもできない。
そうすると、本件補正後の請求項1に記載された「前記利用者に操作を促す第1の情報を、前記複数のディスプレイのうちの一つである第1のディスプレイに通知させ、」「前記利用者の操作に応じた情報であって前記カメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を、前記複数のディスプレイのうちの前記第1のディスプレイとは別のディスプレイである第2のディスプレイに通知させる」との事項、本件補正後の請求項5及び6に記載された「前記利用者に操作を促す第1の情報を、第1のディスプレイに通知させ、」「前記利用者の操作に応じた情報であって前記利用者を撮像するカメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を、前記第1のディスプレイとは異なる第2のディスプレイに通知させ」るとの事項が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとする根拠は見いだせない。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。
ここで、本件請求人は、令和5年10月25日提出の審判請求書において、
「上述しました補正後の請求項1,5,6(補正前の請求項1,8,9)の補正は、補正前の請求項4に記載されている技術内容を組み込む(換言すれば、補正前の請求項4の技術内容に限定する)と共に、補正の却下の決定の通知に記載されている指摘事項を考慮して出願時における明細書の主に段落[0024]、[0031]、[0036]、[0041]、[0050]、[0056]-[0058]の記載に基づき明瞭でない記載を書き改める不明瞭な記載の釈明の補正です。また、補正後の請求項2,3,4(補正前の請求項2,5,6)の補正は、補正後の請求項1に記載されている用語の名称と整合させるために用語の名称を変更する補正です。さらに、補正前の請求項3,7についての補正は、請求項の削除です。このような審判請求時手続補正書による特許請求の範囲における補正は、出願当初における特許請求の範囲、明細書および図面に記載した事項の範囲内で行われたものであり、新規事項の追加ではありません。また、審判請求時手続補正書における特許請求の範囲の補正は、発明の特別な技術的特徴を変更するものではなく、さらに、目的外補正ではありません。よって、審判請求時手続補正書における特許請求の範囲の補正は、特許法第17条の2第3項、第4項及び第5項の規定を満たすものです。」と主張している。
そこで、検討するに、当初明細書の【0024】、【0031】、【0036】、【0041】、【0050】、【0056】-【0058】には、通知部300は、指向性スピーカーに限られず、視野角が所定角度範囲となっている液晶ディスプレイ装置でもよいことが記載され、制御部100は、操作部200における操作に関する情報の通知時と、認証部400における利用者の情報の取得時とにおいて、通知範囲を変更してもよいことが記載されているが、通知範囲とは、【図3】に示されるように、指向性スピーカーの指向方向範囲、液晶ディスプレイ装置の視野角範囲などであって、複数のディスプレイの中から、情報を通知するディスプレイを選択するその範囲のことではない。
よって、これらの段落の記載は、「前記利用者に操作を促す第1の情報を、」「第1のディスプレイに通知させ、」「前記利用者の操作に応じた情報であって前記カメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を、」「前記第1のディスプレイとは別のディスプレイである第2のディスプレイに通知させる」とする補正、及び、「前記利用者に操作を促す第1の情報を、第1のディスプレイに通知させ、」「前記利用者の操作に応じた情報であって前記利用者を撮像するカメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を、前記第1のディスプレイとは異なる第2のディスプレイに通知させ」るとする補正の根拠にならない。
(3)本件補正についてのむすび
以上とおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 原査定の概要
原査定(令和5年7月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
理由1.(進歩性)この出願の請求項1、2、5、6、8、9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2005-149370号公報
引用文献2:特開2004-295695号公報(周知技術を示す文献)
理由2.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
請求項3には、「前記ディスプレイが通知する通知範囲として複数の範囲が設定されており」、「前記ディスプレイによる前記通知範囲を変更する」ことが記載されている。しかし、発明の詳細な説明(特に段落[0057]-[0060])には、音声による通知において通知範囲を変更することが記載されているのみであり、通知範囲を変更できるディスプレイについては記載されておらず、ディスプレイによる通知範囲を変更する具体的な方法は、出願時の技術常識を考慮しても、当業者が実施できる程度に十分に記載されているとはいえない。
また、請求項7においても同様に、「前記ディスプレイが情報を通知する位置を変更する」ことが記載されているが、発明の詳細な説明においてディスプレイによる通知位置を変更することについて十分に記載されているとはいえない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項3、7及び当該請求項を引用する請求項4-6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
第4 本願発明
本件補正は、上記「第2 令和5年10月25日付けの手続補正についての補正の却下の決定」のとおり、却下された。
したがって、本願の請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、令和4年12月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
利用者が操作を行う操作手段と、
前記利用者を撮像するカメラと、
前記利用者の視覚を介して情報を通知するディスプレイと、
前記利用者に操作を促す第1の情報を、前記ディスプレイにおける第1の位置に通知させ、前記利用者の操作が検出されると、前記利用者の操作に応じた情報であって前記カメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を前記ディスプレイにおける第2の位置に通知させる制御手段と、
前記利用者の顔に関する画像を基に前記利用者を認証する認証手段と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記認証手段が前記カメラによる前記利用者の顔に関する情報を取得するとき、前記カメラが前記利用者の顔を取得可能な位置に前記利用者の顔を位置させるべく前記ディスプレイによる情報の通知位置を制御する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ディスプレイが通知する通知範囲として複数の範囲が設定されており、
前記認証手段が、前記利用者の人数を把握し、
前記制御手段が、前記人数を基に前記ディスプレイによる前記通知範囲を変更する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
複数のディスプレイをさらに備え、
前記制御手段は、前記複数のディスプレイについて、情報を通知する位置を変更する、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記操作手段が検出した操作内容を基に、前記ディスプレイを用いて情報を通知する、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記認証手段による認証処理が可能な顔情報を取得できない場合に、顔の向きの変更に関する情報を通知するよう前記ディスプレイを制御する、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記利用者の位置に応じて、前記ディスプレイが情報を通知する位置を変更する、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
利用者が操作する操作手段を備える情報処理装置の情報処理方法であって、
前記利用者に操作を促す第1の情報をディスプレイにおける第1の位置に通知させ、前記利用者の操作が検出されると、前記利用者の操作に応じた情報であって前記利用者を撮像するカメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を前記ディスプレイにおける第2の位置に通知させ、
前記利用者の顔に関する画像を基に前記利用者を認証する情報処理方法。
【請求項9】
利用者の操作を取得する処理と、
前記利用者に操作を促す第1の情報をディスプレイにおける第1の位置に通知させ、前記利用者の操作が検出されると、前記利用者の操作に応じた情報であって前記利用者を撮像するカメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を前記ディスプレイにおける第2の位置に通知させる処理と、
前記利用者の顔に関する画像を基に前記利用者を認証する処理と
をコンピュータに実行させるプログラム。」
第5 引用文献、引用発明
1 引用文献1について
引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由1に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審付与。以下同様。)。
ア 「【0006】
本発明は、上記問題を解決し、常に正常な認識動作範囲又はユーザが所望した状態において被写体を撮影する画像撮影装置と、前記画像撮影装置を用いて認証を行う個人認証装置を提供することを目的とする。」
イ 「【0018】
図1において、カメラ102は、被写体101を撮影するものであり、インターフェース部103は、ユーザからの指示を受け付け、認証結果やユーザへの指示を表示するものであり、検出部104は、カメラ102で撮影された被写体画像から顔の位置情報や、目、鼻、口などの特徴的な部位の位置情報である特徴情報を抽出するものであり、判定部105は、カメラ102で撮影された被写体画像と検出部104で抽出された特徴情報とから撮影状態を判断し、被写体画像が予め定めた撮影条件を満たしているかを判断するものであり、閾値格納部106は、判定部105で行う判定の基準値を格納するものであり、学習部107は、カメラ102で撮影された被写体画像および検出部104で検出された人物状態から被写体固有の生体情報を抽出し、認証用の登録情報を作成する登録処理を行うものであり、生体情報蓄積部108は、学習部107で抽出された被写体101の生体情報および登録情報を格納するものであり、認証部109は、カメラ102で撮影された被写体画像および検出部104で検出された人物状態から被写体固有の生体情報を抽出し、これと生体情報蓄積部108に格納されたユーザの登録情報とを比較して認証を行うものである。」
ウ 「【0041】
まず、S701にて、カメラ102が、被写体101の顔をキャプチャする。キャプチャされた被写体画像は検出部104に送られる。
【0042】
次に、S702にて、検出部104は、被写体画像中から人物の目、鼻、口、眉、耳、頬の位置情報を顔部品データとして抽出し、被写体画像と共に判定部105に送る。抽出した顔部品データの例を図3に示す。
【0043】
次に、S703にて、判定部105は、被写体画像および顔部品データから、人物の顔の向き、顔領域における明度、顔領域における光の向きおよび強さのコントラスト、画像中における人物の顔の大きさ、顔領域内における遮蔽物の有無および大きさといった顔状態データを計算する。
【0044】
次に、S704にて、判定部105は、閾値格納部106から性能限界閾値を読み出す。
【0045】
次に、S705にて、判定部105は性能限界閾値と顔状態データとを比較して、顔状態が閾値を超える場合は、S706に移行し、顔状態が閾値を超えない場合は、S707に移行する。
【0046】
次に、S706にて、判定部105は、閾値を超えた項目と超えた値から被写体101に与える修正内容を決定し、インターフェース部103を通じて被写体101に通知する。例えば、被写体101が右を大きく向いているため、性能限界閾値を超えた場合は、インターフェース部103からもう少し左を向くように指示を送る。照明が暗すぎて画面中の顔も暗く写っている場合はもう少し明るい場所で撮影を行うように指示を送る、などである。指示はインターフェース部103の画面で行っても良いし、被写体101が個人認証装置111から離れている場合を想定して音声や光などで指示をしてもよい。そして再び被写体画像のキャプチャを行い、顔状態データが性能限界閾値の範囲内におさまるまで、S701からS706までを繰り返す。ここで、顔状態データは、視覚的に判断しやすいため、ユーザは容易に修正することが可能となる。
【0047】
次に、S707にて、顔状態データが性能限界閾値の範囲に納まった場合、判定部105は、判定成功フラグと顔状態データを検出部104に送り、検出部104は、被写体画像、顔部品データ、顔状態データを認証部109に送る。認証部109は被写体画像、顔部品データ、顔状態データから被写体101の特徴を表す生体情報を抽出し、これと、登録ステップにおいて生体情報蓄積部108へ格納された登録情報と比較することで認証を行う。」
エ 【図1】「
[図:0001413179000001.jpg]
」
オ 【図7】「
[図:0001413179000002.jpg]
」
2 引用発明
したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「インターフェース部103は、ユーザからの指示を受け付け、ユーザへの指示を表示するものであり、
S701にて、カメラ102が、被写体101の顔をキャプチャし、
S703にて、判定部105は、被写体画像から、人物の顔の向きといった顔状態データを計算し、
S705にて、判定部105は性能限界閾値と顔状態データとを比較して、顔状態が閾値を超える場合は、S706に移行し、
S706にて、判定部105は、被写体101が右を大きく向いているため、性能限界閾値を超えた場合は、インターフェース部103からもう少し左を向くように指示を送り、指示はインターフェース部103の画面で行っても良く、
そして再び被写体画像のキャプチャを行い、顔状態データが性能限界閾値の範囲内におさまるまで、S701からS706までを繰り返し、
S707にて、顔状態データが性能限界閾値の範囲に納まった場合、認証部109は被写体画像、顔部品データ、顔状態データから被写体101の特徴を表す生体情報を抽出し、これと、登録ステップにおいて生体情報蓄積部108へ格納された登録情報と比較することで認証を行う、個人認証装置。」
3 引用文献A
特開2002-116496号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、デジタルスチールカメラを用いて証明写真を作成する証明写真作成装置及び証明写真作成システムに関するものである。」
イ 「【0073】ディスプレイ103には待機状態において初期メニュー画面として、証明写真メニュー画面が表示されている(S300)。同画面に表示された「今ここで証明写真作成」の部分がタッチされることによって選択されると、証明写真の基本料金(例えば500円)の投入を促す画面が表示される(S301)。利用者が表示された料金をコイン投入口107又は紙幣投入口108から投入すると、「MMKの前に立ってフットスイッチを踏んで下さい」のように表示されるとともに、その旨の音声ガイダンスがスピーカ118から出力される(S302)。
【0074】それらの指示に従って被写体である利用者がマット型シャッター112を踏むと(S303)、つまり、被写体がマット型シャッター112上に位置すると、デジタルカメラ101は制御部114によって制御されて、そのマット型シャッター112上に位置した被写体を撮像する(S304)。デジタルカメラ101は、予め設定された回数だけ自動的に撮影を行う(S305)。例えば、予め4回の撮影を10秒間隔で行うように設定することが考えられる。予め設定された回数のデータは、記憶部117に格納されている。」
ウ 【図4】「
[図:0001413179000003.jpg]
」
4 引用文献B
特開2004-207813号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0002】
本発明は、パスポート用や自動車運転免許用等の各種証明写真を撮影するに好適な撮像装置及び撮像制御プログラムに関する。」
イ 「【0042】
以上の構成にかかる本実施の形態において、ユーザがキー入力部8でモード設定キーを操作することにより、撮影モードとして証明写真モードを選択すると、CPU5はROM10に記憶されているプログラムに基づき、図2に示すフローチャートに従って制御を実行する。すなわち、先ず証明写真の種類を選択する処理を実行する(ステップS101)。このステップS101での処理に際しては、図3(a)に示すように、表示部14に「1.ビザ用」~「4.自動車運転免許用」の証明写真選択メニューを表示し、ユーザがキー入力部8の操作によりこの証明写真選択メニューの中からいずれか一つを選択すると、この選択した証明写真の種類に決定してRAM11に記憶する。」
ウ 「【0049】
次に、シャッターボタンが押下されるまで待機し(ステップS104)、その間撮影者は、表示部14を見ながら枠F内に被撮影者の上半身が適正な範囲で収まるように、デジタルスチルカメラ1の向き、あるいは被撮影者からの距離等を調整する。そして、枠F内に適正な範囲で被撮影者の上半身が収まった状態で撮影者がシャッターボタンを操作すると(ステップS104;YES)、前述した撮影処理を実行し(ステップS105)、スルー画像上に枠が配置された撮影画像の画像データをメモリカード12に記録するとともに、この画像データと関連付けてステップS102で選択されたプリントサイズ情報もメモリカード12に記録する(ステップS106)。」
エ 【図2】「
[図:0001413179000004.jpg]
」
オ 【図3】「
[図:0001413179000005.jpg]
」
第6 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明では、「インターフェース部103は、ユーザからの指示を受け付け、ユーザへの指示を表示するものであ」るから、「利用者が操作を行う操作手段」を備えているといえる。
イ 引用発明では、「S701にて、カメラ102が、被写体101の顔をキャプチャ」するから、利用者を撮像するカメラを備えている。
ウ 引用発明では、「インターフェース部103は、ユーザからの指示を受け付け、ユーザへの指示を表示するものであり、」「インターフェース部103からもう少し左を向くように指示を送り、指示はインターフェース部103の画面で行っても良」いから、利用者の視覚を介して情報を通知するディスプレイを備えていることは明らかである。
エ 引用発明では、「S706にて、判定部105は、被写体101が右を大きく向いているため、性能限界閾値を超えた場合は、インターフェース部103からもう少し左を向くように指示を送り、指示はインターフェース部103の画面で行っても良い」ものである。インターフェース部103の画面で行う「もう少し左を向くように指示」は、インターフェース部103内のいずれかの位置に表示され、そのように表示させる制御手段を有することは明らかであるから、本願発明1と引用発明とは、「前記カメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を前記ディスプレイにおける第2の位置に通知させる制御手段」を備える点で共通する。
オ 引用発明では、「認証部109は被写体画像、顔部品データ、顔状態データから被写体101の特徴を表す生体情報を抽出し、これと、登録ステップにおいて生体情報蓄積部108へ格納された登録情報と比較することで認証を行」うから、本願発明1と引用発明とは、「前記利用者の顔に関する画像を基に前記利用者を認証する認証手段」を備える点で共通する。
カ 引用発明では、「S703にて、判定部105は、被写体画像から、人物の顔の向きといった顔状態データを計算し、S705にて、判定部105は性能限界閾値と顔状態データとを比較して」いるから、情報処理装置といえる。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「利用者が操作を行う操作手段と、
前記利用者を撮像するカメラと、
前記利用者の視覚を介して情報を通知するディスプレイと、
前記カメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を前記ディスプレイにおける第2の位置に通知させる制御手段と、
前記利用者の顔に関する画像を基に前記利用者を認証する認証手段と、
を備える情報処理装置。」
(相違点)
本願発明1では、「前記利用者に操作を促す第1の情報を、前記ディスプレイにおける第1の位置に通知させ、前記利用者の操作が検出されると、前記利用者の操作に応じた情報であって前記カメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を前記ディスプレイにおける第2の位置に通知させる」のに対し、引用発明では、「前記カメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を前記ディスプレイにおける第2の位置に通知させる」ものの、当該通知の動作の前に、どのような動作が行われるものであるのか特定されていない点。
第7 判断
1 上記相違点について検討する。
上記第5の3、4から、「ディスプレイに証明写真のメニュー画面が表示され、ユーザの操作によって証明写真の種類が選択され、その後、ユーザのシャッター操作によって、ユーザを撮像する、証明写真の撮像装置」は周知の技術であったと認められる。
よって、引用発明に周知技術を適用し、引用発明において、カメラ102が、被写体101の顔をキャプチャ(撮像)する前に、ユーザに証明写真の種類を選択させるメニュー画面を、ディスプレイ内のいずれかの位置に表示し、これに応じてユーザが操作をすること、すなわち、利用者に操作を促す第1の情報を、前記ディスプレイにおける第1の位置に通知させ、前記利用者の操作が検出されると、前記利用者の操作に応じた情報であって前記カメラが前記利用者の顔を取得できる範囲に前記利用者の顔を移動させる第2の情報を前記ディスプレイにおける第2の位置に通知させるように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 効果について
本願発明1の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
3 請求人の主張について
ア 請求人は、令和4年12月23日提出の意見書において、
「 特許法第29条第2項に基づく拒絶理由について
(i)本願発明の説明
手続補正書により補正された補正後の請求項1-9に係る発明(以下、本願発明とも記します)は、次のような技術事項を備えています。すなわち、本願発明では、利用者の視覚を介して情報を通知するディスプレイの通知制御について、利用者に操作を促す第1の情報をディスプレイにおける第1の位置に通知させ、利用者の操作が検出されると、利用者の操作に応じた情報であって利用者を撮像するカメラが利用者の顔を取得できる範囲に利用者の顔を移動させる第2の情報をディスプレイにおける第2の位置に通知させるというような制御が行われます。つまり、本願発明では、利用者に操作を促す場合には、利用者に操作を促す第1の情報をディスプレイにおける第1の位置に通知させます。また、利用者の操作が検出されると、利用者の認証を行うための利用者の顔を取得すべく、利用者の操作に応じた情報であってカメラが利用者の顔を取得できる範囲に利用者の顔を移動させる第2の情報をディスプレイにおける第2の位置に通知させます。
本願発明は、上述しましたような技術事項を備えていることから、利用者に操作を促すことができるという効果を奏することができます。さらに、本願発明は、利用者の認証を行うための顔画像を取得するのに適切な位置に向けて利用者の顔の向きを移動させることができ、これにより、適切に利用者の顔画像を取得できて顔認証を実行できるという効果を奏することができます。
(ii)本願発明と引用文献との対比
本願発明と、引用文献1-3とを対比しますと、上述しましたような本願発明における技術事項、つまり、利用者に操作を促す場合には、利用者に操作を促す第1の情報をディスプレイにおける第1の位置に通知させ、利用者の操作が検出されると、第1の情報とは異なる顔画像取得に関わる第2の情報をディスプレイにおける第2の位置に通知させるという技術事項(以下、本願発明の技術事項とも記します)は、引用文献1-3には全く示されておりませんし、その示唆さえも見受けられません。
すなわち、引用文献1(特開2000-82162号公報)には、視覚障害者であっても正確かつ容易に所望の情報を入力できるように、接客操作部にパラメトリックスピーカを設置し、このパラメトリックスピーカを用いて取引の進行状況に合わせた音声案内を行う技術事項は示されています。しかしながら、引用文献1には、顔認証に係る事項は示されておらず、本願発明の技術事項、つまり、利用者に操作を促す第1の情報をディスプレイにおける第1の位置に通知させ、利用者の操作が検出されると、第1の情報とは異なる顔画像取得に関わる第2の情報をディスプレイにおける第2の位置に通知させるという技術事項は全く示されておりませんし、その示唆さえも見受けられません。
引用文献2(特開2013-178702号公報)には、認証対象者の顔を所定の向きに向けさせる事項が示されておりますが、認証対象者の顔の向きを変更させる手段として平面鏡が用いられているにすぎず、本願発明における技術事項である、利用者に操作を促す第1の情報をディスプレイにおける第1の位置に通知させる技術事項も全く示されておりませんし、顔画像取得に関わる第2の情報をディスプレイにおける第2の位置に通知させる技術事項も全く示されておらず、それらの示唆さえも見受けられません。
引用文献3(特開平3-13109号公報)には、駅のプラットフォームに設置されている拡声器の音量を拡声器の周囲の人数に応じて調整する技術が示されているにすぎず、ディスプレイおよびその制御については引用文献3には全く示されておらず、それらの示唆さえも見受けられません。
上述しましたように、引用文献1-3には、本願発明の技術事項は全く示されておりませんし、その示唆も全く見受けられないことから、引用文献1-3単独ではもちろんのこと、引用文献1-3を如何様に組み合わせても、本願発明の技術事項を当業者が容易に導き出すことは困難であり、当該技術事項を備える本願発明を引用文献1-3に基づいて当業者が容易に想到し得るとは到底考えられず、本願発明は特許法第29条第2項の規定に該当しないと本出願人は思量します。」と主張する。
以下、上記主張について検討する。
イ 「本願発明における技術事項、つまり、利用者に操作を促す場合には、利用者に操作を促す第1の情報をディスプレイにおける第1の位置に通知させ、利用者の操作が検出されると、第1の情報とは異なる顔画像取得に関わる第2の情報をディスプレイにおける第2の位置に通知させるという技術事項は、特開2000-82162号公報、特開2013-178702号公報、特開平3-13109号公報には全く示されておりませんし、その示唆さえも見受けられません」との主張については、上記第7の1に説示したとおりであるから、当該主張を採用することはできない。
ウ そして、「本願発明は、利用者に操作を促すことができるという効果を奏することができます。さらに、本願発明は、利用者の認証を行うための顔画像を取得するのに適切な位置に向けて利用者の顔の向きを移動させることができ、これにより、適切に利用者の顔画像を取得できて顔認証を実行できるという効果を奏することができます」については、上記第7の2に説示したとおり、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできないから、当該主張を採用することはできない。
エ 上記のとおり、請求人の主張を採用することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明1は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-018087