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特許拒絶査定不服審判

2023-017506

成分間線形モデルパラメータの計算の堅牢性を強化するためのエンコーダ、デコーダ、および方法

審判番号
2023-017506
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-532159
請求日
2023年10月16日
審決日
2025年01月10日
公報発行日
2025年08月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
  • 【請求人代理人】弁理士法人鷲田国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 畑中 高行
  • 審判官 伊藤 隆夫
  • 審判官 坂本 聡生
分類
P18 .537-WZ (H04N) / P18 .113-WZ (H04N) / P18 .121-WZ (H04N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法36条6項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-532159「成分間線形モデルパラメータの計算の堅牢性を強化するためのエンコーダ、デコーダ、および方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月11日国際公開、WO2020/115282、令和 4年 2月16日特許出願公表、特表2022-514824〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(令和元年)12月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年12月7日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 4年10月 3日付け: 拒絶理由通知書 令和 5年 3月 8日 : 意見書、手続補正書の提出 令和 5年 6月12日付け: 拒絶査定 令和 5年10月16日 : 審判請求書、手続補正書の提出 令和 6年 7月29日付け: 拒絶理由通知書(当審:最後) 令和 6年10月29日 : 意見書、手続補正書の提出 第2 令和6年10月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年10月29日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「 【請求項1】 ピクチャ(12’)のピクチャデータのブロックベース復号のためのデコーダ(20)であって、前記デコーダ(20)は、 現在のブロック(80、82、84)の近傍の最小値を有する少なくとも2つの最小ルマサンプルをルマサンプルの第1のセットとして選択し、前記現在のブロック(80、82、84)の前記近傍の最大値を有する少なくとも2つの最大ルマサンプルをルマサンプルの第2のセットとして選択することであって、前記少なくとも2つの最小ルマサンプルは、前記少なくとも2つの最大ルマサンプルよりも小さいルマ値を有する、選択することと、 前記選択されたルマサンプルのそれぞれについて、前記現在のブロックの前記近傍の対応するクロマサンプルを決定することであって、前記選択されたルマサンプルおよびその対応するクロマサンプルのそれぞれは、ルマ-クロマサンプル(A、A’、B、B’)である、決定することと、 最小ルマ値を有する少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)および最大ルマ値を有する少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)を通る一次関数を有する直線(43)を適合させることであって、前記直線(43)が、前記直線(43)の一次関数を導出するために前記少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)の平均(53)および前記少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)の平均(54)を通って延在する、適用させることと、 前記現在のブロック(80、82、84)のルマサンプルおよび前記一次関数を使用して前記現在のブロック(80、82、84)のクロマサンプルを予測することと、によって前記ピクチャ(12’)の前記現在のブロック(80、82、84)を復号するように構成されており、 前記直線(43)を適合させることは、前記少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)間の第1の平均(53)および前記少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)間の第2の平均(54)を取得することと、前記直線(43)を前記第1の平均(53)および前記第2の平均(54)を通って延在させることと、を含む、デコーダ(20)。 【請求項2】 イントラ予測および/またはインター予測によって前記現在のブロック(80、82、84)の前記ルマサンプルを再構築するように構成されている、 請求項1に記載のデコーダ(20)。 【請求項3】 データストリーム(14)から前記現在のブロック(80、82、84)のルマサンプル残差を復号し、 予測されたルマサンプルを取得するためにイントラ予測および/またはインター予測によって前記現在のブロック(80、82、84)の前記ルマサンプルを再構築し、前記ルマサンプル残差を使用して前記予測されたルマサンプルを補正する、 ように構成されている、請求項1または2に記載のデコーダ(20)。 【請求項4】 前記一次関数は式y=α・x+βによって与えられ、αは前記直線(43)の勾配を表す第1の成分間線形モデルパラメータであり、βは前記直線(43)のオフセットを表す第2の成分間線形モデルパラメータであり、 前記デコーダ(20)は、 前記一次関数を使用して、前記現在のブロック(80、82、84)の1つ以上のルマサンプルxのために前記現在のブロック(80、82、84)の1つ以上の対応するクロマサンプルyを予測する、 ようにさらに構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のデコーダ(20)。 【請求項5】 ピクチャ(12)のピクチャデータのデータストリーム(14)へのブロックベース符号化のためのエンコーダ(10)であって、前記エンコーダ(10)は、 現在のブロック(80、82、84)の近傍の最小値を有する少なくとも2つの最小ルマサンプルをルマサンプルの第1のセットとして選択し、前記現在のブロック(80、82、84)の前記近傍の最大値を有する少なくとも2つの最大ルマサンプルをルマサンプルの第2のセットとして選択することであって、前記少なくとも2つの最小ルマサンプルは、前記少なくとも2つの最大ルマサンプルよりも小さいルマ値を有する、選択することと、 前記選択されたルマサンプルのそれぞれについて、前記現在のブロックの前記近傍の対応するクロマサンプルを決定することであって、前記選択されたルマサンプルおよびその対応するクロマサンプルのそれぞれは、ルマ-クロマサンプル(A、A’、B、B’)である、決定することと、 前記少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)間の第1の平均(53)および前記少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)間の第2の平均(54)を取得することと、 最小ルマ値を有する少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)および最大ルマ値を有する少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)を通る一次関数を有する直線(43)を適合させることであって、前記直線(43)が、前記直線(43)の一次関数を導出するために前記少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)の前記第1の平均(53)および前記少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)の前記第2の平均(54)を通って延在する、適用させることと、 前記現在のブロック(80、82、84)のルマサンプルおよび前記一次関数を使用して前記現在のブロック(80、82、84)のクロマサンプルを予測することと、によって前記ピクチャ(12)の前記現在のブロック(80、82、84)を符号化するように構成されている、エンコーダ(10)。 【請求項6】 前記現在のブロック(80、82、84)の前記ルマサンプルが予測されたルマサンプルを取得するためにイントラ予測および/またはインター予測によって再構築可能となるように、前記現在のブロック(80、82、84)のルマサンプル残差を前記データストリーム(14)に符号化し、前記予測されたルマサンプルは、前記ルマサンプル残差を使用して補正可能である、 ように構成されている、請求項5に記載のエンコーダ(10)。 【請求項7】 前記一次関数は式y=α・x+βによって与えられ、αは前記直線(43)の勾配を表す第1の成分間線形モデルパラメータであり、βは前記直線(43)のオフセットを表す第2の成分間線形モデルパラメータであり、 前記エンコーダ(10)は、 前記一次関数を使用して、前記現在のブロック(80、82、84)の1つ以上のルマサンプルxのために前記現在のブロック(80、82、84)の1つ以上の対応するクロマサンプルyを予測する、 ようにさらに構成されている、請求項5または6に記載のエンコーダ(10)。 【請求項8】 ピクチャ(12’)のピクチャデータのブロックベース復号の方法であって、前記ピクチャ(12’)の現在のブロック(80、82、84)を復号するステップは、 現在のブロック(80、82、84)の近傍の最小値を有する少なくとも2つの最小ルマサンプルをルマサンプルの第1のセットとして選択し、前記現在のブロック(80、82、84)の前記近傍の最大値を有する少なくとも2つの最大ルマサンプルをルマサンプルの第2のセットとして選択するステップであって、前記少なくとも2つの最小ルマサンプルは、前記少なくとも2つの最大ルマサンプルよりも小さいルマ値を有する、選択するステップと、 前記選択されたルマサンプルのそれぞれについて、前記現在のブロックの前記近傍の対応するクロマサンプルを決定するステップであって、前記選択されたルマサンプルおよびその対応するクロマサンプルのそれぞれは、ルマ-クロマサンプル(A、A’、B、B’)である、決定するステップと、 最小ルマ値を有する少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)および最大ルマ値を有する少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)を通る一次関数を有する直線(43)を適合させるステップであって、前記直線(43)が、前記直線(43)の一次関数を導出するために前記少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)の平均(53)および前記少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)の平均(54)を通って延在する、適用させるステップと、 前記現在のブロック(80、82、84)のルマサンプルおよび前記一次関数を使用して前記現在のブロックのクロマサンプルを予測するステップと、を含み、 前記直線(43)を適合させるステップは、前記少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)間の第1の平均(53)および前記少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)間の第2の平均(54)を取得することと、前記直線(43)を前記第1の平均(53)および前記第2の平均(54)を通って延在させることと、を含む、方法。 【請求項9】 ピクチャ(12)のピクチャデータのブロックベース符号化の方法であって、前記ピクチャ(12)の現在のブロック(80、82、84)を符号化するステップは、 現在のブロック(80、82、84)の近傍の最小値を有する少なくとも2つの最小ルマサンプルをルマサンプルの第1のセットとして選択し、前記現在のブロック(80、82、84)の前記近傍の最大値を有する少なくとも2つの最大ルマサンプルをルマサンプルの第2のセットとして選択するステップであって、前記2つの最小ルマサンプルは、前記2つの最大ルマサンプルよりも小さいルマ値を有する、選択するステップと、 前記選択されたルマサンプルのそれぞれについて、前記現在のブロックの前記近傍の対応するクロマサンプルを決定するステップであって、前記選択されたルマサンプルおよびその対応するクロマサンプルのそれぞれは、ルマ-クロマサンプル(A、A’、B、B’)である、決定するステップと、 前記少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)間の第1の平均(53)および前記少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)間の第2の平均(54)を取得することと、 最小ルマ値を有する少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)および最大ルマ値を有する少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)を通る一次関数を有する直線(43)を適合させるステップであって、前記直線(43)が、前記直線(43)の一次関数を導出するために前記少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)の前記第1の平均(53)および前記少なくとも2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)の前記第2の平均(54)を通って延在する、適用させるステップと、 前記現在のブロック(80、82、84)のルマサンプルおよび前記一次関数を使用して前記現在のブロック(80、82、84)のクロマサンプルを予測するステップと、 を含む、方法。 【請求項10】 コンピュータ上で実行されると、請求項8に記載の方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムが記憶された、コンピュータ可読デジタル記憶媒体。 【請求項11】 コンピュータ上で実行されると、請求項9に記載の方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムが記憶された、コンピュータ可読デジタル記憶媒体。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和5年10月16日に手続補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 ピクチャ(12’)のピクチャデータのブロックベース復号のためのデコーダ(20)であって、前記デコーダ(20)は、 現在のブロック(80、82、84)の近傍の4つのルマサンプルを等距離で決定することと、 前記4つのルマサンプルの間の最小ルマ値を有する2つの最小ルマサンプルを選択し、前記4つのルマサンプルの間の最大ルマ値を有する2つの最大ルマサンプルを選択することと、 前記4つのルマサンプルのそれぞれについて、前記現在のブロックの前記近傍の対応するクロマサンプルを決定することであって、前記4つのルマサンプルおよびその対応するクロマサンプルのそれぞれは、ルマ-クロマサンプル(A、A’、B、B’)である、決定することと、 前記4つのルマサンプルの間の前記最小ルマ値を有する2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)および前記4つのルマサンプルの間の前記最大ルマ値を有する2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)を通る一次関数を有する直線(43)を適合させることであって、前記直線(43)が、前記直線(43)の一次関数を導出するために前記2つのルマ -クロマサンプル(A、A’)の平均(53)および前記2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)の平均(54)を通って延在する、適用させることと、 前記現在のブロック(80、82、84)のルマサンプルおよび前記一次関数を使用して前記現在のブロック(80、82、84)のクロマサンプルを予測することと、によって前記ピクチャ(12’)の前記現在のブロック(80、82、84)を復号するように構成されている、デコーダ(20)。 【請求項2】 イントラ予測および/またはインター予測によって前記現在のブロック(80、82、84)の前記ルマサンプルを再構築するように構成されている、 請求項1に記載のデコーダ(20)。 【請求項3】 データストリーム(14)から前記現在のブロック(80、82、84)のルマサンプル残差を復号し、 予測されたルマサンプルを取得するためにイントラ予測および/またはインター予測によって前記現在のブロック(80、82、84)の前記ルマサンプルを再構築し、前記ルマサンプル残差を使用して前記予測されたルマサンプルを補正する ように構成されている、請求項1または2に記載のデコーダ(20)。 【請求項4】 前記一次関数は式y=α・x+βによって与えられ、αは前記直線(43)の勾配を表す第1の成分間線形モデルパラメータであり、βは前記直線(43)のオフセットを表す第2の成分間線形モデルパラメータであり、 前記デコーダ(20)は、 前記一次関数を使用して、前記現在のブロック(80、82、84)の1つ以上のルマサンプルxのために前記現在のブロック(80、82、84)の1つ以上の対応するクロマサンプルyを予測する ようにさらに構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のデコーダ(20)。 【請求項5】 ピクチャ(12)のピクチャデータのデータストリーム(14)へのブロックベース符号化のためのエンコーダ(10)であって、前記エンコーダ(10)は、 現在のブロック(80、82、84)の近傍の4つのルマサンプルを等距離で決定することと、 前記4つのルマサンプルの間の最小ルマ値を有する2つの最小ルマサンプルを選択し、前記4つのルマサンプルの間の最大ルマ値を有する2つの最大ルマサンプルを選択することと、 前記4つのルマサンプルのそれぞれについて、前記現在のブロックの前記近傍の対応するクロマサンプルを決定することであって、前記4つのルマサンプルおよびその対応するクロマサンプルのそれぞれは、ルマ-クロマサンプル(A、A’、B、B’)である、決定することと、 前記4つのルマサンプルの間の前記最小ルマ値を有する2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)および前記4つのルマサンプルの間の前記最大ルマ値を有する2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)を通る一次関数を有する直線(43)を適合させることであって、前記直線(43)が、前記直線(43)の一次関数を導出するために前記2つのルマ -クロマサンプル(A、A’)の平均(53)および前記2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)の平均(54)を通って延在する、適用させることと、 前記現在のブロック(80、82、84)のルマサンプルおよび前記一次関数を使用して前記現在のブロック(80、82、84)のクロマサンプルを予測することと、によって前記ピクチャ(12)の前記現在のブロック(80、82、84)を符号化するように構成されている、エンコーダ(10)。 【請求項6】 前記現在のブロック(80、82、84)の前記ルマサンプルが予測されたルマサンプルを取得するためにイントラ予測および/またはインター予測によって再構築可能となるように、前記現在のブロック(80、82、84)のルマサンプル残差を前記データストリーム(14)に符号化し、前記予測されたルマサンプルは、前記ルマサンプル残差を使用して補正可能である ように構成されている、請求項5に記載のエンコーダ(10)。 【請求項7】 前記一次関数は式y=α・x+βによって与えられ、αは前記直線(43)の勾配を表す第1の成分間線形モデルパラメータであり、βは前記直線(43)のオフセットを表す第2の成分間線形モデルパラメータであり、 前記エンコーダ(10)は、 前記一次関数を使用して、前記現在のブロック(80、82、84)の1つ以上のルマサンプルxのために前記現在のブロック(80、82、84)の1つ以上の対応するクロマサンプルyを予測する ようにさらに構成されている、請求項5または6に記載のエンコーダ(10)。 【請求項8】 ピクチャ(12’)のピクチャデータのブロックベース復号の方法であって、前記ピクチャ(12’)の現在のブロック(80、82、84)を復号するステップは、 前記現在のブロック(80、82、84)の近傍の4つのルマサンプルを等距離で決定するステップと、 前記4つのルマサンプルの間の最小ルマ値を有する2つの最小ルマサンプルを選択し、前記4つのルマサンプルの間の最大ルマ値を有する2つの最大ルマサンプルを選択するステップと、 前記4つのルマサンプルのそれぞれについて、前記現在のブロックの前記近傍の対応するクロマサンプルを決定するステップであって、前記4つのルマサンプルおよびその対応するクロマサンプルのそれぞれは、ルマ-クロマサンプル(A、A’、B、B’)である、決定するステップと、 前記4つのルマサンプルの間の前記最小ルマ値を有する2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)および前記4つのルマサンプルの間の前記最大ルマ値を有する2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)を通る一次関数を有する直線(43)を適合させるステップであって、前記直線(43)が、前記直線(43)の一次関数を導出するために前記2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)の平均(53)および前記2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)の平均(54)を通って延在する、適用させるステップと、 前記現在のブロック(80、82、84)のルマサンプルおよび前記一次関数を使用して前記現在のブロックのクロマサンプルを予測するステップと、 を含む方法。 【請求項9】 ピクチャ(12)のピクチャデータのブロックベース符号化の方法であって、前記ピクチャ(12)の現在のブロック(80、82、84)を符号化するステップは、 前記現在のブロック(80、82、84)の近傍の4つのルマサンプルを等距離で決定するステップと、 前記4つのルマサンプルの間の最小ルマ値を有する2つの最小ルマサンプルを選択し、前記4つのルマサンプルの間の最大ルマ値を有する2つの最大ルマサンプルを選択するステップであって、前記2つの最小ルマサンプルは、前記2つの最大ルマサンプルよりも小さいルマ値を有する、選択するステップと、 前記4つのルマサンプルのそれぞれについて、前記現在のブロックの前記近傍の対応するクロマサンプルを決定するステップであって、前記4つのルマサンプルおよびその対応するクロマサンプルのそれぞれは、ルマ-クロマサンプル(A、A’、B、B’)である、決定するステップと、 前記4つのルマサンプルの間の前記最小ルマ値を有する2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)および前記4つのルマサンプルの間の前記最大ルマ値を有する2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)を通る一次関数を有する直線(43)を適合させるステップであって、前記直線(43)が、前記直線(43)の一次関数を導出するために前記2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)の平均(53)および前記2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)の平均(54)を通って延在する、適用させるステップと、 前記現在のブロック(80、82、84)のルマサンプルおよび前記一次関数を使用して前記現在のブロック(80、82、84)のクロマサンプルを予測するステップと を含む方法。 【請求項10】 コンピュータ上で実行されると、請求項8に記載の方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムが記憶された、コンピュータ可読デジタル記憶媒体。 【請求項11】 コンピュータ上で実行されると、請求項9に記載の方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムが記憶された、コンピュータ可読デジタル記憶媒体。」 2 補正の適否 (1)補正の目的について ア 請求項1に係る補正について 本件補正は、「最小ルマサンプル」及び「最大ルマサンプル」の選択に関して、補正前に「現在のブロック(80、82、84)の近傍の4つのルマサンプルを等距離で決定することと、前記4つのルマサンプルの間の最小ルマ値を有する2つの最小ルマサンプルを選択し、前記4つのルマサンプルの間の最大ルマ値を有する2つの最大ルマサンプルを選択すること」としていたものを、「現在のブロック(80、82、84)の近傍の最小値を有する少なくとも2つの最小ルマサンプルをルマサンプルの第1のセットとして選択し、前記現在のブロック(80、82、84)の前記近傍の最大値を有する少なくとも2つの最大ルマサンプルをルマサンプルの第2のセットとして選択することであって、前記少なくとも2つの最小ルマサンプルは、前記少なくとも2つの最大ルマサンプルよりも小さいルマ値を有する、選択すること」とする事項を含むものである。 ここで、本件補正は、補正前に「4つのルマサンプルの間の」「2つの最小ルマサンプル」及び「2つの最大ルマサンプル」を選択することとして限定されていた各サンプルの選択について、「4つのルマサンプルの間の」という限定を削除し、さらに「少なくとも2つの最小ルマサンプル」及び「少なくとも2つの最大ルマサンプル」を選択することとして、その条件を変更したものといえる。 そうすると、本件補正は、補正前には「最小ルマサンプル」及び「最大ルマサンプル」の選択について、「4つのルマサンプル」の間のものに限定していた条件を、4つ以上の「ルマサンプル」を選択することをも含むものとして拡張したことになるから、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定したものとは認められない。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当しない。また、上記補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。 したがって、本件補正のうち請求項1に係る補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれを目的としたものにも該当せず、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしていない。 イ 請求項5、8、9に係る補正について 上記アで述べた補正と同様の補正事項を含むから、請求項1に係る補正と同様に、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれを目的としたものにも該当せず、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしていない。 3 本件補正についてのむすび 本件補正は、少なくとも上記2(1)ア、イで指摘した補正事項を含むから、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれを目的としたものに該当せず、同法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 令和6年10月29日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年10月16日に手続補正された請求項1-11に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項9に記載された事項により特定される上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものと認める。 第4 当審の拒絶理由の概要 当審が令和6年7月29日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりである。 1 理由1 理由1は、「(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」というものであり、その具体的理由は次のとおりである。 請求項1、5、8、9における「現在のブロック(80、82、84)の近傍の4つのルマサンプルを等距離で決定することと、」との記載について、「4つのルマサンプル」の何が「等距離で」決定されるものなのか特定されていないから、上記記載がどのようなことを意味するのか不明確である。 また、「前記4つのルマサンプルの間の最小ルマ値を有する2つの最小ルマサンプルを選択し、」との記載について、「最小ルマ値」とは、最も小さいルマ値のことと解釈されるから、「最小ルマ値」を有する2つの最小ルマサンプルを選択するとは、最も小さい値を有するサンプルを2つ選択することなり、日本語として不明である。 同様に、「前記4つのルマサンプルの間の最大ルマ値を有する2つの最大ルマサンプルを選択する」との記載についても、「最大ルマ値」とは、最も大きいルマ値のことと解釈されるから、「最大ルマ値」を有する2つの最大ルマサンプルを選択するとは、最も大きい値を有するサンプルを2つ選択することなり、日本語として不明である。 2 理由2、3 理由2、3は、「(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」、「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、本件補正前の請求項1-11に係る発明に対して、引用文献1に記載の発明と同一であり、また、引用文献1に記載の発明から容易に発明をすることができたとするものである。 <引用文献等一覧> 1.Meng Wang et al., "CE3-related: Modified linear model derivation for CCLM modes", Joint Video Experts Team (JVET), 2019-01-03, [JVET-M0274] (version 1) 第5 当審の判断 1 当審拒絶理由の理由1(明確性)について (1)本願発明について ア 「現在のブロック(80、82、84)の近傍の4つのルマサンプルを等距離で決定することと、」との記載について 「4つのルマサンプルを等距離で決定する」とは、4つの「ルマサンプル」の何が「等距離で」決定されるものなのか特定されていないから、当該記載の意味するところが不明確である。特に、いずれの空間における距離であるのか特定されていないため、例えば、「ピクチャ」空間上の距離を意図したものなのか、「ルマ-クロマ」空間上の距離を意図したものなのか明確でないから、本願発明は明確でない。 イ 「前記4つのルマサンプルの間の最小ルマ値を有する2つの最小ルマサンプルを選択し、」との記載について 「最小ルマ値」とは、最も小さいルマ値のことと解釈されるから、通常、「最小ルマ値」を有するサンプルは1つであるが、「最小ルマ値を有する2つの最小ルマサンプルを選択する」とは、最も小さい値を有するサンプルを2つ選択することなり、日本語として不明である。 仮に、同一の「最小ルマ値」を有する「ルマ-クロマサンプル」が、たまたま2つあるケースを意図していたとしても、上記アで説示した明確でない記載とも相まって、「4つのルマサンプル」との関係が不明であるから、本願発明は明確でない。 ウ 「前記4つのルマサンプルの間の最大ルマ値を有する2つの最大ルマサンプルを選択する」との記載について 「最大ルマ値」とは、最も大きいルマ値のことと解釈されるから、通常、「最大ルマ値」を有するサンプルは1つであるが、「最大ルマ値を有する2つの最大ルマサンプルを選択する」とは、最も大きい値を有するサンプルを2つ選択することなり、日本語として不明である。 仮に、同一の「最大ルマ値」を有する「ルマ-クロマサンプル」が、たまたま2つあるケースを意図していたとしても、上記アで説示した明確でない記載とも相まって、「4つのルマサンプル」との関係が不明であるから、本願発明は明確でない。 (2)請求人の主張について 請求人は、令和6年10月29日提出の意見書において、本件補正により、請求項1の「現在のブロック(80、82、84)の近傍の4つのルマサンプルを等距離で決定すること」を削除したので、上記理由1は解消した旨主張しているが、本件補正は上記のとおり却下されたので、当該主張は採用しない。 (3)明確性についてのむすび 以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項9の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 2 当審拒絶理由通知の理由2,3(新規性、進歩性)について 上記1で説示したとおり、本願発明は明確でないが、明細書の記載に基づき、「4つのルマサンプル」は、現在のブロックの空間的な上および/または左の境界に沿って等距離で選択され(段落【0075】)、該「4つのルマサンプル」から、最小ルマ値を有する最小ルマサンプルの「第1のペア」を選択し、最大ルマ値を有する最大ルマサンプルの「第2のペア」を選択する(段落【0050】-【0056】、【図5】)ものと仮定して、以下、新規性、進歩性について検討する。 <本願の優先権について> 本願は、欧州特許出願第18211107.0(2018年12月7日出願)(以下、「優先基礎出願」という。)に基づく優先権を主張している。 しかしながら、本願発明の「現在のブロック(80、82、84)の近傍の4つのルマサンプルを等距離で決定することと」という事項は、上記優先基礎出願の明細書等には記載されていない。 よって、本願発明に対して、特許法第29条を適用する際の判断の基準となる日は、本願の出願日(国際出願日)である2019年12月6日とする。 (1)引用発明 ア 引用文献1の記載事項 当審拒絶理由で引用された「Meng Wang et al., "CE3-related: Modified linear model derivation for CCLM modes", Joint Video Experts Team (JVET), 2019-01-03, [JVET-M0274] (version 1)」(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。) (ア)「1 Introduction In VTM-3.0, the linear model for CCLM modes are derived by a max-min method. With LM mode, the minimum and maximum down-sampled neighbouring luma samples denoted as xA and xBare found by performing (W+H-1) comparisons on all down-sampled neighbouring luma samples. Suppose their corresponding chroma sample values are yA and yB, then the linear model parameters α and β are obtained according to the following equation: [図:0001425141000001.jpg] A lookup table with 2K bytes are stored on ROM to mimic the division operation. With LM-A or LM-L modes, xA and xB are found by performing 2W or 2H comparisons on all extended above or left down-sampled neighbouring luma samples.」 (当審訳) 1 イントロダクション VTM-3.0 では、CCLM モードの線形モデルが max-min 法によって導出される。LM モードでは、xAと xBで示されるダウンサンプリングされた近傍のルマサンプルの最小値と最大値は、すべてのダウンサンプリングされた近傍のルマサンプルを(W + H - 1) 回比較することによって求められる。対応するクロマサンプル値をyAとyBとすると、線形モデルパラメータαとβは以下の式に従って求められる: [図:0001425141000002.jpg] 2K バイトのルックアップテーブルが ROM 上に格納され、除算を模倣する。 LM-AまたはLM-Lモードでは、xA とxBは2Wまたは2Hの比較を、拡張された上または左のダウンサンプリングされた近傍のルマサンプルすべてに対して実行することで求められる。 (イ)「2 Proposed methods It is proposed that only 4 neighbouring luma samples are down-sampled and searched to find smaller two values denoted as x0A and x1A, and larger two values denoted as x0B and x1B.Their corresponding chroma sample values are denoted as y0A, y1A, y0B and y1B.Then xA, xB, yA and yB are derived as: xA=(x0A+x1A+1)>>1; xB=(x0B+x1B+1)>>1; yA=(y0A+y1A+1)>>1; yB=(y0B+y1B+1)>>1; Then α and β are obtained according to the same equation as in VTM-3.0. Since we do not need to further compare x0A and x1A, or x0B and x1B, at most three comparisons are required. Selection of down-sampled samples are defined as follows: - If it is normal LM mode, and both left and above neighboring blocks are available,the four down-sampled luma samples are fetched from locations [-1, 0], [-1, H - max(1, H/W)], [0, -1] and [W - max(1, W/H), -1]. - Otherwise, four samples with equal distance are chosen, such as [0, -1], [0, X/4], [0, 2X/4], [0, 3X/4] (当審注:「[0, -1], [0, X/4], [0, 2X/4], [0, 3X/4]」は「[0, -1], [X/4, -1], [2X/4, -1], [3X/4, -1]」の誤記と認める。詳細は、下記(2)ア(ウ)で後述する。)wherein X indicates the maximumly allowed number of accessed samples (W, or 2W); or [-1, 0], [-1, Y/4], [-1, 2Y/4], [-1, 3Y/4]. Besides, the lookup table size is reduced to be with 128 bytes.」 (当審訳) 2 提案方法 近傍の4つのルマサンプルのみがダウンサンプリングされ、x0A,x1Aと表記される小さい2つの値と、x0B,x1Bと表記される大きい2つの値を見つけるために検索されることが提案されている。対応するクロマサンプル値をy0A, y1A, y0B, y1Bとする。そして、xA, xB, yA, yB は次のように導かれる: xA=(x0A+x1A+1)>>1; xB=(x0B+x1B+1)>>1; yA=(y0A+y1A+1)>>1; yB=(y0B+y1B+1)>>1; そしてαとβはVTM-3.0と同じ式に従って求められる。x0Aとx1A、x0Bとx1Bをさらに比較する必要はないので、最大でも3回の比較が必要である。 ダウンサンプリングサンプルの選択は以下のように定義される: - 通常のLMモードであり、左隣接ブロックと上隣接ブロックの両方が利用可能な場合は、4つのダウンサンプリングされたルマサンプルは、 [-1, 0], [-1, H - max(1, H/W)], [0, -1] and [W - max(1, W/H), -1] の位置から取得される。 - そうでない場合は、[0, -1], [X/4, -1], [2X/4, -1], [3X/4, -1](または[-1, 0], [-1, Y/4], [-1, 2Y/4], [-1, 3Y/4])のように、等しい距離を持つ4つのサンプルが選択される。ここで、Xはアクセスされたサンプルの最大許容数(W、または2W)を示す。 また、ルックアップテーブルのサイズは128バイトに縮小される。 イ 引用発明 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「VTM-3.0 では、CCLM モードの線形モデルが max-min 法によって導出され、xAとxBで示される近傍のルマサンプルの最小値と最大値に対応するクロマサンプル値をyAとyBとすると、線形モデルパラメータαとβは以下の式に従って求められるが、 [図:0001425141000003.jpg] 提案方法においては、近傍の4つのルマサンプルのみが、x0A,x1Aと表記される小さい2つの値と、x0B,x1Bと表記される大きい2つの値を見つけるために検索され、対応するクロマサンプル値をy0A, y1A, y0B, y1Bとすると、xA, xB, yA, yB は次のように導かれ、 xA=(x0A+x1A+1)>>1; xB=(x0B+x1B+1)>>1; yA=(y0A+y1A+1)>>1; yB=(y0B+y1B+1)>>1; そしてαとβはVTM-3.0と同じ式に従って求められ、 - 左隣接ブロックと上隣接ブロックの両方が利用可能な場合は、4つのルマサンプルは、 [-1, 0], [-1, H - max(1, H/W)], [0, -1] and [W - max(1, W/H), -1] の位置から取得され、 - そうでない場合は、[0, -1], [X/4, -1], [2X/4, -1], [3X/4, -1](または[-1, 0], [-1, Y/4], [-1, 2Y/4], [-1, 3Y/4])のように、等しい距離を持つ4つのサンプルが選択される提案方法。」 (2)対比・判断 ア 本願発明と引用発明との対比 (ア)引用文献1は、次世代映像符号化方式であるVVC(Versatile Video Coding)を議論した「Joint Video Experts Team (JVET)」の国際会合における寄書であるが、上記(1)ア(ア)に記載されるように、VVCのテストモデルである「VTM(VVC Test Model)-3.0」おいても採用されていた「CCLMモードの線形モデル」が「ピクチャのピクチャデータのブロックベース符号化」の方法に用いられる技術であることは、本願出願当時の技術常識である。 してみれば、該「CCLMモードの線形モデル」を改善する提案方法である引用発明と、本願発明は、「ピクチャのピクチャデータのブロックベース符号化の方法」である点で一致する。 (イ)上記(ア)で述べたとおり、引用発明は、所謂「ブロックベース符号化」を行う方法であるから、引用発明は、「ピクチャの現在ブロックを符号化するステップ」を含むといえる。 (ウ)引用発明の「近傍の4つのルマサンプル」は、「左隣接ブロックと上隣接ブロックの両方が利用可能な場合は、4つのルマサンプルは、 [-1, 0], [-1, H - max(1, H/W)], [0, -1] and [W - max(1, W/H), -1] の位置から取得」され、「そうでない場合は、[0, -1], [X/4, -1], [2X/4, -1], [3X/4, -1](または[-1, 0], [-1, Y/4], [-1, 2Y/4], [-1, 3Y/4])のように、等しい距離を持つ4つのサンプルが選択」されるものである。 ここで、X座標が「-1」のサンプルは、「左隣接ブロック」に含まれ「現在ブロック」の空間的な左の境界のサンプルであること、Y座標が「-1」のサンプルは「上隣接ブロック」に含まれ「現在ブロック」の空間的な上の境界のサンプルを表すことは、当該技術分野の常識である。 なお、引用文献1の「2 Proposed methods」中、「- Otherwise,・・・」以降に記載の「[0, -1], [0, X/4], [0, 2X/4], [0, 3X/4]」は、「左隣接ブロック」や「上隣接ブロック」内の座標ではないため、それまでの説明内容と辻褄があわない。さらに、Y座標の位置に「X/4」等の表記があるため、当審においては、これら「X/4」等の表記は、本来、X座標の位置に表記すべきであった誤記と認める。そして、上述の技術常識に照らし、対として記載されている「[-1, 0], [-1, Y/4], [-1, 2Y/4], [-1, 3Y/4]」とも整合させ、上記(1)ア(イ)で上述のとおり、上記記載は「[0, -1], [X/4, -1], [2X/4, -1], [3X/4, -1]」の誤記とした。 そうすると、引用発明の「近傍の4つルマサンプル」は、「現在のブロック」の(隣接ブロックに位置する)空間的な上および/または左の境界に沿って」決定されるものといえる。 (エ)上記(イ)(ウ)を踏まえると、引用発明の提案方法は、「現在ブロック」の空間的な上または左の境界に沿って「等しい距離を持つ4つのサンプルが選択され」、その「4つのルマサンプルのみが、x0A,x1Aと表記される小さい2つの値と、x0B,x1Bと表記される大きい2つの値を見つけるために検索され」ることを含むから、引用発明と本願発明は、「前記現在のブロックの近傍の4つのルマサンプルを等距離で決定するステップ」と、「前記4つのルマサンプルの間の最小ルマ値を有する2つの最小ルマサンプルを選択し、前記4つのルマサンプルの間の最大ルマ値を有する2つの最大ルマサンプルを選択するステップ」を含む点で一致する。 (オ)この時、「x0A,x1Aと表記される小さい2つの値」と「x0B,x1Bと表記される大きい2つの値」とは、「x0A,x1Aと表記される小さい2つの値」の方が小さい値を有することは自明のことであるから、引用発明と本願発明は、「前記2つの最小ルマサンプルは、前記2つの最大ルマサンプルよりも小さいルマ値を有する」点で一致する。 (カ)引用発明は、「近傍の4つのルマサンプル」に対応する「クロマサンプル値」を「y0A, y1A, y0B, y1B」として、「xA, xB, yA, yB 」を次式により導くから、 「xA=(x0A+x1A+1)>>1; xB=(x0B+x1B+1)>>1; yA=(y0A+y1A+1)>>1; yB=(y0B+y1B+1)>>1;」 本願発明と同様に、「前記4つのルマサンプルのそれぞれについて、前記現在のブロックの前記近傍の対応するクロマサンプルを決定するステップであって、前記4つのルマサンプルおよびその対応するクロマサンプルのそれぞれは、ルマ-クロマサンプルである、決定するステップ」を含む点で一致する。 (キ)上記(ア)で述べた引用発明の前提となっている「CCLM モードの線形モデル」では、「ルマ-クロマ」の相関を直線(一次関数)で近似することにより、「現在ブロック」の「ルマサンプル」と該一次関数を使用して、対応する「クロマサンプル」を予測することが技術常識として知られているから、引用発明と本願発明は、「前記現在のブロックのルマサンプルおよび一次関数を使用して前記現在のブロックのクロマサンプルを予測するステップ」を含む点で共通する。 したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 【一致点】 「ピクチャのピクチャデータのブロックベース符号化の方法であって、前記ピクチャの現在のブロックを符号化するステップは、 前記現在のブロックの近傍の4つのルマサンプルを等距離で決定するステップと、 前記4つのルマサンプルの間の最小ルマ値を有する2つの最小ルマサンプルを選択し、前記4つのルマサンプルの間の最大ルマ値を有する2つの最大ルマサンプルを選択するステップであって、前記2つの最小ルマサンプルは、前記2つの最大ルマサンプルよりも小さいルマ値を有する、選択するステップと、 前記4つのルマサンプルのそれぞれについて、前記現在のブロックの前記近傍の対応するクロマサンプルを決定するステップであって、前記4つのルマサンプルおよびその対応するクロマサンプルのそれぞれは、ルマ-クロマサンプルである、決定するステップと、 前記現在のブロックのルマサンプルおよび一次関数を使用して前記現在のブロックのクロマサンプルを予測するステップと を含む方法。」 【相違点】 本願発明は、「前記4つのルマサンプルの間の前記最小ルマ値を有する2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)および前記4つのルマサンプルの間の前記最大ルマ値を有する2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)を通る一次関数を有する直線(43)を適合させるステップであって、前記直線(43)が、前記直線(43)の一次関数を導出するために前記2つのルマ-クロマサンプル(A、A’)の平均(53)および前記2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)の平均(54)を通って延在する、適用させるステップ」を含むのに対し、引用発明においては、「CCLMモードの線形モデル」の「パラメータαとβ」を求めるための「xA, xB, yA, yB」を「 xA=(x0A+x1A+1)>>1; xB=(x0B+x1B+1)>>1; yA=(y0A+y1A+1)>>1; yB=(y0B+y1B+1)>>1;」 により導く点で一応相違する。 イ.判断 (ア)相違点について 引用発明でいう「xA, xB, yA, yB」は、ビット演算式「xA=(x0A+x1A+1)>>1; xB=(x0B+x1B+1)>>1; yA=(y0A+y1A+1)>>1; yB=(y0B+y1B+1)>>1;」により得られるものであるが、これらの式は数学的にみて、「最小ルマ値を有する2つのルマ-クロマサンプル(ペア)」((x0A,y0A),(x1A,y1A))と、「最大ルマ値を有する2つのルマ-クロマサンプル(ペア)」((x0B,y0B),(x1B,y1B))について、それぞれ平均を求めていることにほかならない。 そして、平均として得られた「xA, xB, yA, yB」は、一次関数である直線式y=α・x+βで表される「CCLMモードの線形モデルパラメータαとβ」を求めるために用いるのであるから、引用発明も本願発明と同様に「前記4つのルマサンプルの間の前記最小ルマ値を有する2つのルマ-クロマサンプルおよび前記4つのルマサンプルの間の前記最大ルマ値を有する2つのルマ-クロマサンプルを通る一次関数を有する直線を適合させるステップであって、前記直線が、前記直線の一次関数を導出するために前記2つのルマ-クロマサンプルの平均および前記2つのルマ-クロマサンプル(B、B’)の平均を通って延在する、適用させるステップ」と、数学的に等価な処理を行うものといえる。 よって、上記相違点は実質的なものではない。 仮に実質的なものであったとしても、上記相違点は、数学的に等価なものであるから、引用発明に基づき、当業者であれば容易に想到し得たことといえる。 したがって、本願発明は引用発明と実質的な相違点がないから同一であり、また、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)新規性、進歩性についてのむすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明と同一であり、また、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項9の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本願発明は、特許を受けることができない。 また、本願の請求項9に係る発明は、引用文献1に記載された発明と同一であり、また、引用文献1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-017506

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