特許拒絶査定不服審判
2023-017048
薬剤調合システムの入力装置のための空気力学的に流線形化されたエンクロージャ
- 審判番号
- 2023-017048
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-082983
- 請求日
- 2023年10月06日
- 審決日
- 2024年12月24日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
- 【請求人代理人】弁理士法人谷・阿部特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 哲男
- 審判官 平瀬 知明
- 審判官 小河 了一
- 分類
- P18 .113-Z (A61J) / P18 .121-Z (A61J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第50条の2、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 82983「薬剤調合システムの入力装置のための空気力学的に流線形化されたエンクロージャ」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 7月20日出願公開、特開2022-107051〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)9月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年9月8日(US)アメリカ合衆国、2014年10月29日(US)アメリカ合衆国、2014年10月29日(US)アメリカ合衆国、2014年11月11日(US)アメリカ合衆国、2014年11月11日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2017-513187号の一部を平成30年12月28日に新たな特許出願とした特願2018-247638号の一部を令和4年5月20日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 4年11月15日付け:拒絶理由通知書
(特許法50条の2の通知を伴う)
令和 5年 2月22日 :意見書、手続補正書の提出
同年 5月29日付け:拒絶査定(送達日:令和5年6月6日)
同年 同月 同日付け:補正の却下の決定
同年10月 6日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出
令和 6年 1月19日 :上申書の提出
第2 令和5年10月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年10月6日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
令和5年10月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正であり、本件補正により、請求項1は、次のとおり補正された。
(1)本件補正後の請求項1
「 【請求項1】
医薬品を調合するシステムであって、
物体をその上に配置するように構成されたプラテンを有するスケール、
前記スケールの一部分に結合された第1の端部、及び前記スケールの前記プラテンの上方の位置にまで延びる第2の端部を備える支持アーム、及び
第1のエンクロージャハウジング端部および第2のエンクロージャハウジング端部を備え、少なくとも1つの入力装置を収容するように構成されるエンクロージャハウジングであって、前記第1のエンクロージャハウジング端部は、前記支持アームの前記第2の端部に取り付けられ、前記支持アームの前記第2の端部から延在するエンクロージャハウジングを備え、
前記第2のエンクロージャハウジング端部は、前記システムが流れフード内に配置されたとき、流れの乱れを最小にするために、湾曲した前面輪郭と、前記湾曲した前面輪郭に連接される上方に湾曲凸形状とを有し、前記第1のエンクロージャハウジング端部は、第2のエンクロージャハウジング端部の高さより低い高さを有し、
前記第1のエンクロージャハウジング端部は、上方平坦形状を有することを特徴とするシステム。 」(下線部は、補正箇所を示す。)
(2)本件補正前の請求項1(本願出願当初のもの)
「 【請求項1】
医薬品を調合するシステムであって、
物体をその上に配置するように構成されたプラテンを有するスケール、
前記スケールの一部分に結合された第1の端部、及び前記スケールの前記プラテンの上方の位置にまで延びる第2の端部を備える支持アーム、及び
前記支持アームの前記第2の端部から延在し、且つ少なくとも1つの入力装置を収容するように構成されたエンクロージャハウジングを備え、
前記エンクロージャハウジングは、前記システムが流れフード内に配置されたとき、流れの乱れを最小にする湾曲した前面輪郭を有することを特徴とするシステム。 」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「エンクロージャハウジング」について、「第1のエンクロージャハウジング端部および第2のエンクロージャハウジング端部を備え、少なくとも1つの入力装置を収容するように構成される」かつ「前記第1のエンクロージャハウジング端部は、前記支持アームの前記第2の端部に取り付けられ」ることを限定するとともに、同じく「湾曲した前面輪郭」について、「第2のエンクロージャハウジング端部」が有するものであることを限定し、更に、前記限定事項にある「第2のエンクロージャハウジング端部」について、「前記湾曲した前面輪郭に連接される上方に湾曲凸形状」を有し、同じく前記限定事項にある「第1のエンクロージャハウジング端部」について、「第2のエンクロージャハウジング端部の高さより低い高さを有し」かつ「上方平坦形状を有する」ことを特定するものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正により追加された前記限定事項は、願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲には、明記されていないものの、図14(「本発明の一実施形態による、スケール及びハウジングエンクロージャの側面図」)から看取できる事項であるから、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2014/065872号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、日本語訳は、当審で作成した。
(記載事項)
ア 請求項1
「1. A work station (40) for use in a system (10) for medical dose preparation management, the work station (40) comprising:
a base (90) and a medication preparation staging region (86) disposed relative thereto;
an imaging device (80) having an imaging field (84) encompassing at least a portion of the medication preparation staging region (86), the imaging device (80) being located at least partially within a housing (210);
at least one light source (230) disposed in the housing (210), wherein the at least one light source (230) is operable to emit light from the housing (210) in a direction toward the medication preparation staging region (86); and
a support member (92) extending between the base (90) and the housing (210) for supportably disposing the imaging device (80) relative to the base (90).」
(1. 医療用投与準備管理システム(10)において使用する作業ステーション(40)であって、
ベース(90)及びそれに相対して配置された投薬準備ステージング領域(86)と、
前記投薬準備ステージング領域(86)の少なくとも一部を包含する撮像領域(84)を有する撮像装置(80)であって、少なくとも部分的にハウジング(210)内に配置されている、撮像装置(80)と、
前記ハウジング(210)内に配置された少なくとも1つの光源(230)であって、前記少なくとも1つの光源(230)は、前記ハウジング(210)から前記投薬準備ステージング領域(86)に向かう方向に光を放出するように動作可能である、少なくとも1つの光源(230);及び
前記ベース(90)と前記ハウジング(210)との間に延在し、前記ベース(90)に対して前記撮像装置(80)を支持可能に配置するための支持部材(92)と、を備える、作業ステーション(40)。)
イ 1ページ13~20行
「Some medical doses to be prepared may include compounded sterile products (CSPs) that may be prepared in specially constructed and controlled environment (e.g., an "IV Room") in the pharmacy. The process of preparing medical doses may be carried out in accordance with local policy, governmental regulations, industry organizations (e.g., Chapter <797> of the United States Pharmacopoeia), or other applicable policies. For example, the preparation of medications may generally occur in a laminar airflow hood, isolator, or biological safety cabinet, by an operator (typically a pharmacy technician) who is tasked with preparing the medical doses.」
(調製される医療用量の中には、薬局内の特別に構築され制御された環境(例えば、「IV室」)で調製される配合無菌製剤(CSP)が含まれる場合がある。医療用投与量を調製するプロセスは、地域の方針、政府の規制、業界団体(例えば、米国薬局方の<797>章)、又は他の適用可能な方針に従って実施される場合がある。例えば、医薬品の調製は、一般に、層流フード、アイソレータ、又は生物学的安全キャビネット内で、医療用量の調製を任務とするオペレーター(典型的には薬剤師)によって行われる。)
ウ 6ページ26~31行
「In one embodiment, the support member may extend from the base adjacent to an edge of the base extending along the width. The work station may be disposed in a laminar flow hood or the like. Accordingly, a flow of air from the laminar flow hood may be parallel to a direction corresponding to the width of the base. That is, the support may be positioned relative to the base so as not to obstruct the laminar flow of air across the base (e.g., substantially the entire base may be exposed to laminar air flow).」
(一実施形態では、支持部材は、幅に沿って延びる基部の端部に隣接して、基部から延在する。作業ステーションは、層流フード等の中に配置されてもよい。したがって、層流フードからの空気の流れは、ベースの幅に対応する方向に平行であってもよい。すなわち、支持体は、ベースを横切る空気の層流を妨げないように(例えば、実質的に基部全体が層流にさらされるように)、ベースに対して配置されてもよい。)
エ 17ページ2~9行
「For example, the work station 40 may allow for recording of documentation regarding the preparation of the medical dose such as, for example, acquiring barcode scans of products, capturing medical dose preparation images of medical dose order receptacles during or after use in the preparation of the dose, or obtaining other information related to the preparation of the dose. In an embodiment, one or more of the types of data described above in relation to the medication dose metadata may be acquired in connection with the preparation of the medical dose order at the work station 40.」
(例えば、作業ステーション40は、例えば、製品のバーコードスキャンを取得する、投薬量の調製中又は使用後の投薬量注文容器の投薬量調製画像をキャプチャする、又は投薬量の調製に関連する他の情報を取得するなど、投薬量の調製に関する文書を記録し得る。一実施形態では、投薬量メタデータに関連して上述された1つ以上のタイプのデータが、作業ステーション40における投薬注文の準備に関連して取得され得る。)
オ 21ページ7~15行
「With further reference to Fig. 3, an embodiment of a camera stand 200 is depicted. As described above, the camera stand 200 may include an imaging device 80, a support 92, and a base 90. With respect to the imaging device 80, an imaging device housing 210 may contain a camera 212 (as shown in Fig. 5). With additional reference to Figs. 4 and 5, the housing 210 may define an opening 214. The opening 214 may be disposed relative to the housing 210 such that the camera 212 may be directed through the opening 214 toward the medical dose preparation staging region 86. A transparent shield 216 may be disposed within the opening 214. For example, the transparent shield 216 may be secured to the housing 210.」
(図3を更に参照すると、カメラスタンド200の一実施形態が示されている。上述したように、カメラスタンド200は、撮像装置80、支持体92、及びベース90を含むことができる。撮像装置80に関して、撮像装置ハウジング210は、カメラ212を含むことができる(図5に示すように)。図4及び図5を更に参照すると、ハウジング210は、開口部214を画定することができる。開口部214は、カメラ212が開口部214を通して医療用量調製ステージング領域86に向けられるように、ハウジング210に対して配置され得る。透明シールド216は、開口部214内に配置されてもよい。例えば、透明シールド216は、ハウジング210に固定されてもよい。)
カ 21ページ16~24行
「The transparent shield 216 may extend across at least a portion of the opening 214 (e.g., in corresponding relation to the lens 226). In an embodiment, the transparent shield 216 may extend across substantially the entire opening 214. In this regard, the housing 210 and the transparent shield 216 may collectively define an enclosed volume 218 (best seen in Fig. 5) in which the camera 212 may be disposed. In this regard, the transparent shield 216 and housing 210 may also define a continuous outer surface 220 that extends about the enclosed volume 218. Accordingly, the continuous outer surface 220 may allow for easy cleaning of the housing 210 and the transparent shield 216. For example, the continuous outer surface 220 may be wipeable by an operator to facilitate cleaning.」
(透明シールド216は、開口部214の少なくとも一部を横切って(例えば、レンズ226に対応して)延びていてもよい。一実施形態では、透明シールド216は、開口部214の実質的に全体にわたって延びていてもよい。この点に関して、ハウジング210及び透明シールド216は、共同で、カメラ212が配置され得る密閉容積218(図5に最もよく見られる)を画定し得る。この点に関して、透明シールド216及びハウジング210は、また、密閉容積218の周りに延びる連続的な外面220を画定してもよい。したがって、連続した外面220は、ハウジング210及び透明シールド216の容易な洗浄を可能にすることができる。例えば、連続した外面220は、洗浄を容易にするために操作者が拭き取り可能であってもよい。)
キ 25ページ24~27行
「In this regard, the support arm 92 may include a first portion 234 and a second portion 236. The first portion 234 may be supportably engaged with the housing 210 and the second portion 236 may be supportably engaged with the base 90. The first portion 234 may be positionably attached to the second portion 236 at a connection 238. 」
(この点に関して、支持アーム92は、第1の部分234および第2の部分236を含み得る。第1の部分234はハウジング210に支持可能に係合し、第2の部分236はベース90に支持可能に係合することができる。第1の部分234は、接続部238において第2の部分236に位置決め可能に取り付けられてもよい。)
ク 29ページ29~31行
「With further reference to Fig. 12, the base 90 of the camera stand 200 may include a platform base 254 and a support platform 256 that is removably disposable relative to the platform base 254.」
(図12を更に参照すると、カメラスタンド200のベース90は、台座254と、台座254に対して取り外し可能に配置可能な支持台256とを含むことができる。)
ケ 30ページ4~8行
「The support platform 256 may have a length 272 and a width 274. In this regard, when the support platform 256 is disposed on the platform base 254, the length 272 and width 274 may define dimensions of the base 90. The length 272 and the width 274 may also correspond to a medical preparation staging region 86 at least partially defined by the support platform 256.」
(支持台256は、長さ272及び幅274を有することができる。これに関して、支持台256が台座254上に配置されるとき、長さ272及び幅274はベース90の寸法を規定することができる。長さ272及び幅274は、支持台256によって少なくとも部分的に画定される医療準備ステージング領域86に対応することができる。)
コ 30ページ19~23行
「The platform base 254 may include a scale such that an item disposed on the support platform 256 when disposed on the platform base 254 may be weighed. For example, the weight measured by the scale may be captured substantially simultaneously as the capture of a medical dose preparation image by the imaging device 80. Accordingly, the weight obtained by the scale may be appended to the dose order metadata.」
(台座254は、台座254上に配置されたときに支持台256上に配置された物品が計量され得るような秤を含み得る。例えば、秤によって測定された重量は、撮像装置80による医療用量準備画像の撮像と実質的に同時に取り込まれてもよい。したがって、秤によって取得された重量は、用量注文メタデータに付加されてもよい。)
サ 図3
「
[図:0001423002000001.jpg]
」
シ 図4
「
[図:0001423002000002.jpg]
」
ス 図5
「
[図:0001423002000003.jpg]
」
セ 図8
「
[図:0001423002000004.jpg]
」
ソ 図9
「
[図:0001423002000005.jpg]
」
タ 図11
「
[図:0001423002000006.jpg]
」
チ 記載事項アの「医療用投与準備管理システム(10)において使用する作業ステーション(40)」は、記載事項イ~エに照らせば、医薬品の調製を行うものであって、「層流フードの中に配置」される。
ツ 記載事項アの「支持部材(92)」は、記載事項キ及び記載事項サ~タの図示内容に照らせば、「第2の部分(236)がベース(90)に係合するとともに、第1の部分(234)がハウジング(210)に係合」し、「上下方向に延在」する。
また、記載事項ウ及びオの「支持体」は、記載事項アの記載に沿って「支持部材」と表現することができる。
テ 記載事項アの「ハウジング(210)」は、記載事項カによれば、「透明シールド216」と「共同で」「カメラ212が配置され得る密閉容積218」「を画定し得る」ところ、記載事項シ及びスの図示内容に照らせば、当該密閉容積(218)を画定する構成(以下「密閉容積画定構成」という。)は、カメラ(212)が配置される部分(以下「ドーム形状部」という。)と、ドーム形状部から支持部材(92)側に延びる部分(以下「四角柱状部」という。)を備える。
ト 記載事項テの「ドーム形状部」の上部は、記載事項ス及びソの図示内容に照らせば、正面視及び側面視で上方凸状に湾曲する形状を呈し、かかる形状は、記載事項カの「連続的な外面(220)」の形状である。また、記載事項テの「四角柱状部」の上部は、記載事項サ、ス、セ及びタの図示内容に照らせば、平坦形状を呈することが看取できる。
前記記載事項ア~トを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「医療用投与準備管理システム(10)において使用する作業ステーション(40)であって、
ベース(90)と、
前記ベース(90)と前記ハウジング(210)との間に上下方向に延在して、前記撮像装置(80)を支持する支持部材(92)と、を備え、
前記ベース(90)は、台座(254)と、前記台座(254)上に配置された支持台(256)を含み、前記台座(254)は、前記支持台(256)上に配置された物品を計量する秤を含むものであって、
前記支持部材(92)は、第2の部分(236)が前記ベース(90)に係合するとともに、第1の部分(234)が前記ハウジング(210)に係合しており、
密閉容積画定構成は、前記撮像装置(80)のカメラ(212)を配置するドーム形状部と、前記ドーム形状部から前記支持部材(92)側に延びる四角柱状部を備えるとともに、前記ドーム形状部の上部は、正面視及び側面視で上方凸状に湾曲する連続的な外面(220)を有し、前記四角柱状部の上部は、平坦形状であり、
前記作業ステーション(40)は、層流フードの中に配置され、前記層流フードからの空気の流れは、前記ベース(90)の幅(274)に対応する方向に平行であって、前記支持部材(92)は、前記ベース(90)を横切る空気の層流を妨げないように、前記ベース(90)に対して配置された、作業ステーション(40)。」
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の各構成は、それぞれ、次の本件補正発明の構成に相当する。
<引用発明> <本件補正発明>
医療用投与準備管理システム(10)
において使用する作業ステーション(40) 医薬品を調合するシステム
物品 物体
支持台(256) プラテン
物品を計量する秤を含むベース(90) スケール
支持部材(92) 支持アーム
第2の部分(236) 第1の端部
第1の部分(234) 第2の端部
撮像装置(80) 入力装置
密閉容積画定構成 エンクロージャハウジング
層流フード 流れフード
イ 引用発明の「台座(254)と、前記台座(254)上に配置された支持台(256)を含み、前記台座(254)は、前記支持台(256)上に配置された物品を計量する秤を含む」「ベース(90)」は、その機能及び構造からみて、本件補正発明の「物体をその上に配置するように構成されたプラテンを有するスケール」に相当する。
ウ 引用発明の「前記ベース(90)と前記ハウジング(210)との間に上下方向に延在し」「第2の部分(236)が前記ベース(90)に係合するとともに、第1の部分(234)が前記ハウジング(210)に係合」する「支持部材(92)」は、その機能及び構造からみて、本件補正発明の「前記スケールの一部分に結合された第1の端部、及び前記スケールの前記プラテンの上方の位置にまで延びる第2の端部を備える支持アーム」に相当する。
エ 引用発明の「前記撮像装置(80)のカメラ(212)を配置するドーム形状部」を備える「密閉容積画定構成」は、撮像装置(80)のカメラ(212)が入力装置といえるので、本件補正発明の「少なくとも1つの入力装置を収容するように構成されるエンクロージャハウジング」に相当する。
オ 引用発明の「密閉容積画定構成」は、「ドーム形状部と、前記ドーム形状部から前記支持部材(92)側に延びる四角柱状部を備える」ものであって、その形態からみて、支持部材(92)の第1の部分(234)に係合する側(図5の左側)とその反対側(図5の右側)には、それぞれ端部を備えるとともに、前者の側には四角柱状部を、後者の側にはドーム形状部を、それぞれ配置するものである。
そうすると、引用発明の「密閉容積画定構成」が「ドーム形状部と、前記ドーム形状部から前記支持部材(92)側に延びる四角柱状部を備える」ことは、本件補正発明の「エンクロージャハウジング」が「第1のエンクロージャハウジング端部および第2のエンクロージャハウジング端部を備え」、「前記支持アームの前記第2の端部から延在する」ことに相当する。
また、引用発明の「支持部材(92)」の「第1の部分(234)が前記ベース(90)上で前記ハウジング(210)に係合」することは、本件補正発明の「前記第1のエンクロージャハウジング端部は、前記支持アームの前記第2の端部に取り付けられ」ることに相当する。
カ 引用発明の「密閉容積画定構成」の「ドーム形状部」の「正面視及び側面視で上方凸状に湾曲する連続的な外面(220)」は、ハウジング(210)の配置及び形態からみて、本件補正発明の「湾曲した前面輪郭と、前記湾曲した前面輪郭に連接される上方に湾曲凸形状とを有」する構成に相当する。
そして、前記オで説示した、密閉容積画定構成におけるドーム形状部の配置及び両発明の相当関係に照らすと、引用発明の「前記ドーム形状部の上部は、正面視及び側面視で上方凸状に湾曲する連続的な外面(220)を有」することは、本件補正発明の「前記第2のエンクロージャハウジング端部は」「湾曲した前面輪郭と、前記湾曲した前面輪郭に連接される上方に湾曲凸形状とを有」することに相当する。
キ 引用発明の「前記四角柱状部の上部は、平坦形状であ」るところ、引用発明の「四角柱状部」は、「ドーム形状部」の高さより低い高さを有することは、ハウジング(210)の形態及び前記(2)記載事項ス(図5)の図示内容に照らして、明らかである。
そして、前記オで説示した、密閉容積画定構成における四角柱状部の配置及び両発明の相当関係に照らすと、引用発明の「前記ドーム形状部の上部は、正面視及び側面視で上方凸状に湾曲する連続的な外面(220)を有し、前記四角柱状部の上部は、平坦形状であり」は、本件補正発明の「前記第1のエンクロージャハウジング端部は、第2のエンクロージャハウジング端部の高さより低い高さを有し、前記第1のエンクロージャハウジング端部は、上方平坦形状を有すること」に相当する。
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び一応の相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「医薬品を調合するシステムであって、
物体をその上に配置するように構成されたプラテンを有するスケール、
前記スケールの一部分に結合された第1の端部、及び前記スケールの前記プラテンの上方の位置にまで延びる第2の端部を備える支持アーム、及び
第1のエンクロージャハウジング端部および第2のエンクロージャハウジング端部を備え、少なくとも1つの入力装置を収容するように構成されるエンクロージャハウジングであって、前記第1のエンクロージャハウジング端部は、前記支持アームの前記第2の端部に取り付けられ、前記支持アームの前記第2の端部から延在するエンクロージャハウジングを備え、
前記第2のエンクロージャハウジング端部は、湾曲した前面輪郭と、前記湾曲した前面輪郭に連接される上方に湾曲凸形状とを有し、前記第1のエンクロージャハウジング端部は、第2のエンクロージャハウジング端部の高さより低い高さを有し、
前記第1のエンクロージャハウジング端部は、上方平坦形状を有するシステム。」
(一応の相違点)
「湾曲した前面輪郭と、前記湾曲した前面輪郭に連接される上方に湾曲凸形状とを有」する「第2のエンクロージャハウジング端部」について、
本件補正発明は、「前記システムが流れフード内に配置されたとき、流れの乱れを最小にするため」のものであるのに対して、
引用発明は、「前記作業ステーション(40)は、層流フードの中に配置され」るものの、作業ステーション(40)が層流フードの中に配置されたとき、ハウジング(210)が「流れの乱れを最小にするため」のものと特定されていない点。
(4)相違点についての判断
引用発明の「医療用投与準備管理システム(10)において使用する作業ステーション(40)」は、医薬品の調製を行うために、層流フードの中に配置されるところ(前記(2)記載事項チ)、技術常識に照らせば、引用発明において、医薬品の調製における秤の計量に影響を与えないように、層流フードからの空気流の乱れをできるだけ小さくする工夫がされることは、当業者が当然に理解し得ることである。この点、引用発明においてかかる工夫がされることは、支持部材(92)が「前記ベース(90)を横切る空気の層流を妨げないように」配置された構成からも裏付けられる。
そうすると、引用発明の「正面視及び側面視で上方凸状に湾曲する連続的な外面(220)」は、作業ステーション(40)が層流フードの中に配置されたとき、「流れの乱れを最小にするため」のものと表現できる。
また、引用発明の作用効果についてみても、「前記ベース(90)の幅(274)に対応する方向に平行」な「前記層流フードからの空気の流れ」は、「連続的な外面(220)」の「湾曲」した面に向かうことから、技術常識に照らせば、その乱れが小さくなるのは当然である。
してみれば、前記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項は、技術常識に照らして、引用発明が当然に備える事項にすぎないから、当該相違点は、実質的な相違点ではない。
よって、本件補正発明は、引用発明である。
また、前記相違点が実質的なものであるとしても、その構成は容易想到である。すなわち、層流フードの中に配置される秤量計においては、フード内の気流が秤量に影響を与えないようにすることは、自明かつ周知の課題であり、かかる課題を解決するために、秤量計を備える装置のハウジングにつき、気流の乱れを小さくするように滑らかな形状とすることは、周知の事項である。
してみれば、引用発明が前記課題を解決するために、前記周知の事項を採用して、ハウジング(210)について、層流フードからの空気流の乱れを小さくすることは、当業者であれば、容易に想到し得たことである。
よって、本件補正発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明であり、又は、引用発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正却下の決定におけるむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~20に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2 の [理由]1(2)のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
理由1:本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2:本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
3 引用文献の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「エンクロージャハウジング」について、「第1のエンクロージャハウジング端部および第2のエンクロージャハウジング端部を備え、少なくとも1つの入力装置を収容するように構成される」かつ「前記第1のエンクロージャハウジング端部は、前記支持アームの前記第2の端部に取り付けられ」るとの限定事項、及び、「湾曲した前面輪郭」について、「第2のエンクロージャハウジング端部」が有するとの限定事項を削除するとともに、「第2のエンクロージャハウジング端部」について、「前記湾曲した前面輪郭に連接される上方に湾曲凸形状」を有し、「第1のエンクロージャハウジング端部」について、「第2のエンクロージャハウジング端部の高さより低い高さを有し」かつ「上方平坦形状を有する」という事項を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に前記の限定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の「理由」2(3)に記載のとおり、引用発明であり、又は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明であり、又は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 上申書の補正案について
請求人は、令和6年1月19日に提出した上申書において、請求項1(本件補正発明)の「前記第1のエンクロージャハウジング端部は、上方平坦形状を有する」を「前記第1のエンクロージャハウジング端部の上面は、側面投影において直線を有する」に修正する補正案を提示している。
しかしながら、補正案の請求項1に係る発明であっても、引用発明との間に実質的な相違点は見いだせず、又は、実質的な相違点があるとしても容易想到であり、依然として、引用発明であり、又は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
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2023-017048