特許拒絶査定不服審判
2023-014566
ストレージデバイス、及び情報処理システム
- 審判番号
- 2023-014566
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-161074
- 請求日
- 2023年08月29日
- 審決日
- 2024年05月28日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社バッファロー
- 【請求人代理人】竹居 信利
- 審判長/審判官
- 審判長 須田 勝巳
- 審判官 山崎 慎一
- 審判官 吉田 美彦
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .537-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第164条、特許法第29条、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-161074「ストレージデバイス、及び情報処理システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年 4月17日出願公開、特開2024- 54677、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和4年10月5日の出願であって、令和5年2月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月26日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年6月9日付けで拒絶査定(謄本送達日同年6月19日。以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して同年8月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、同年11月15日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ、令和6年2月20日付けで当審より拒絶理由が通知され(以下、「当審拒絶理由通知」という。)、同年4月18日に意見書とともに手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願請求項1~4に係る発明(以下、「本願発明1」~「本願発明4」という。)は、令和6年4月18日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
情報処理装置に接続されるストレージデバイスであって、
前記情報処理装置との間で、予め定められた複数のデータ転送速度のいずれかのデータ転送速度でデータ転送を行うコントローラを有し、
前記コントローラは、前記情報処理装置との間での転送速度の上限が、高速な機能上限である第1のモードでの動作を不能とし、前記情報処理装置との間での転送速度の上限が前記第1のモードよりも低速な第2のモードで動作するよう初期設定において制御され、 前記コントローラを内蔵する筐体内の温度を計測する手段をさらに備え、
前記コントローラは、前記計測された温度が、所定の条件を満足するときに、前記情報処理装置との間のデータ転送速度を、前記第2のモードの転送速度の上限以下のデータ転送速度で制御するストレージデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のストレージデバイスであって
初期設定時に前記情報処理装置に対して第2モードで接続する旨の情報を送信するストレージデバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載のストレージデバイスであって、
前記情報処理装置に対してUSBにより接続され、
前記第1のモードと前記第2のモードとは、USBの規格が互いに異なるモードであるストレージデバイス。
【請求項4】
情報処理装置と、当該情報処理装置に接続されるストレージデバイスとを含む情報処理システムであって、
前記ストレージデバイスが、
前記情報処理装置との間で、予め定められた複数のデータ転送速度のいずれかのデータ転送速度でデータ転送を行うコントローラを有し、
前記コントローラは、前記情報処理装置との間での転送速度の上限が、比較的高速な機能上限である第1のモードでの動作を不能とし、前記情報処理装置との間での転送速度の上限が前記第1のモードよりも比較的低速な第2のモードで動作するよう初期設定において制御され、
前記コントローラを内蔵する筐体内の温度を計測する手段をさらに備え、
前記コントローラは、前記計測された温度が、所定の条件を満足するときに、前記情報処理装置との間のデータ転送速度を、前記第2のモードの転送速度の設定上限以下のデータ転送速度で制御する情報処理システム。」
第3 引用例、引用発明等
1 引用例1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2020-144589号公報(令和2年9月10日公開。以下、これを「引用例1」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)
(1)「【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかるメモリシステムの構成を示す図である。メモリシステム1は、ホスト2と接続可能である。メモリシステム1とホスト2との間の通信路の規格は、特定の規格に限定されない。一例では、SAS(Serial Attached SCSI)が採用され得る。
…中略…
【0010】
メモリシステム1は、メモリコントローラ10と、NAND型のフラッシュメモリ(NANDメモリ)20と、電源回路30と、を備えている。」
(2)「【0017】
メモリコントローラ10は、内部に備える各構成要素の協働によって、メモリシステム1全体の制御を実行する。
【0018】
例えば、メモリコントローラ10は、ホスト2とNANDメモリ20との間のデータ転送を実行する。メモリコントローラ10は、ホスト2からリードコマンドを受信した場合、当該リードコマンドによって要求されたデータを保持するメモリチップ21から当該データを読み出す。そして、メモリコントローラ10は、当該読み出されたデータをホスト2に送信する。また、メモリコントローラ10は、ホスト2からライトコマンドを受信した場合、ライトコマンドによって要求されたデータの書き込み先のメモリチップ21を決定して、決定されたメモリチップ21に当該データを書き込む。
【0019】
ここで、各メモリチップ21は、正常に動作する温度範囲が仕様で定められている。この温度範囲を、動作保証温度範囲(guaranteed range of operating temperature)と表記する。メモリコントローラ10は、何れのメモリチップ21も動作保証温度範囲の上限を超えないように、メモリシステム1の性能を制御する。
【0020】
メモリチップ21へのアクセスの頻度が高いほど、メモリチップ21での消費電力量が大きいため、メモリチップ21での発熱量が増加する。つまり、メモリチップ21での発熱量は、メモリチップ21へのアクセス頻度と正の相関がある。また、メモリチップ21へのアクセスの頻度は、ホスト2とメモリシステム1との間のデータの転送速度(rate of transferring data)と正の相関がある。
【0021】
ここでは一例として、メモリシステム1は、ホスト2とメモリシステム1との間のデータの転送速度を制御する。つまり、制御される性能は、ホスト2とメモリシステム1との間のデータの転送速度である。以降、特に断りが無い限り、データの転送速度は、ホスト2とメモリシステム1との間のデータの転送速度を意味する。
【0022】
データの転送速度の制御方法は、特定の方法に限定されない。例えば、メモリコントローラ10は、ホスト2からのアクセスコマンドに対する応答の送信のタイミングを調整することで、データの転送速度の制御を実現してもよい。別の例では、メモリコントローラ10は、各メモリチップ21に対するリードおよびライトの実行の間隔を調整することで、データの転送速度の制御を実現してもよい。さらに別の例では、メモリコントローラ10は、NANDメモリ20またはメモリコントローラ10自身を駆動するクロック周波数を調整することで、データの転送速度の制御を実現してもよい。
【0023】
メモリコントローラ10は、性能に上限値を設定する。つまり、メモリコントローラ10は、データの転送速度が上限値を越えないように、ホスト2とメモリシステム1とのデータ転送を実行する。そして、メモリコントローラ10は、メモリシステム1内に設けられた温度センサを用いて温度を検出し、検出温度に応じて上限値を設定する。
【0024】
図2は、第1の実施形態にかかるデータの転送速度の上限値の設定方法の一例を説明するための図である。本図では、横軸は検出温度を示し、縦軸はデータの転送速度の上限値を示す。
【0025】
図2の例によれば、温度に応じた4つのステートが定義されている。4つのステートは、しきい値T0より低い温度範囲に対応する第1ステートと、しきい値T0からしきい値T1までの温度範囲に対応する第2ステートと、しきい値T1からしきい値T2までの温度範囲に対応する第3ステートと、しきい値T2より高い温度範囲に対応する第4ステートと、を含む。
【0026】
各ステートには、データの転送速度に関する上限値が対応付けられている。具体的には、第1ステートにはP1が上限値として対応付けられており、第2ステートにはP2が上限値として対応付けられており、第3ステートにはP3が上限値として対応付けられており、第4ステートにはP4が上限値として対応付けられている。ただし、P1~P4は、P1>P2>P3>P4の関係を満たす。つまり、この例によれば、メモリシステム1は、温度の上昇に応じてデータの転送速度の上限値が段階的に引き下げられる。」
(3)「図1
[図:0001411132000001.jpg]
」
(4)「図2
[図:0001411132000002.jpg]
」
2 引用発明
上記1(1)~(4)の記載事項(特に下線部。)から、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「メモリコントローラ10と、NAND型のフラッシュメモリ(NANDメモリ)20と、電源回路30と、を備えるメモリシステム1であって(【0008】、【0010】、図1)、
メモリコントローラ10はメモリシステム1全体の制御を実行し(【0017】)、
メモリコントローラ10は、ホスト2とNANDメモリ20との間のデータ転送を実行し(【0018】)、
メモリチップ21へのアクセスの頻度が高いほど、メモリチップ21での消費電力量が大きいため、メモリチップ21での発熱量が増加し、メモリチップ21へのアクセスの頻度は、ホスト2とメモリシステム1との間のデータの転送速度と正の相関があり(【0020】)、
メモリシステム1は、ホスト2とメモリシステム1との間のデータの転送速度を制御し(【0021】)、
メモリコントローラ10は、データの転送速度が上限値を越えないように、ホスト2とメモリシステム1とのデータ転送を実行し、メモリコントローラ10は、メモリシステム1内に設けられた温度センサを用いて温度を検出し、検出温度に応じて上限値を設定し(【0023】)、
温度に応じた4つのステートが定義され、4つのステートは、しきい値T0より低い温度範囲に対応する第1ステートと、しきい値T0からしきい値T1までの温度範囲に対応する第2ステートと、しきい値T1からしきい値T2までの温度範囲に対応する第3ステートと、しきい値T2より高い温度範囲に対応する第4ステートと、を含み(【0025】、図2)、
各ステートには、データの転送速度に関する上限値が対応付けられていて、第1ステートにはP1が上限値として対応付けられており、第2ステートにはP2が上限値として対応付けられており、第3ステートにはP3が上限値として対応付けられており、第4ステートにはP4が上限値として対応付けられていて、P1~P4は、P1>P2>P3>P4の関係を満たし、メモリシステム1は、温度の上昇に応じてデータの転送速度の上限値が段階的に引き下げられる(【0026】)
メモリシステム1。」
3 引用例2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2013-201475号公報(平成25年10月3日公開。以下、これを「引用例2」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。
(1)「【0014】
<一の実施形態の説明>
図1は、一の実施形態における電子機器(電子カメラ)の構成例を示すブロック図である。一の実施形態での電子カメラ100は、USB3.0に準拠したシリアル通信機能を有しており、例えばパーソナルコンピュータ、プリンタ等の外部の電子機器(外部機器200)との間で画像のデータの送受を行うことができる。」
(2)「【0030】
次に、一の実施形態の電子カメラ100と外部機器200とがUSB3.0のケーブルで接続された場合を説明する。上記の場合、画像処理エンジン12は図2に示すシーケンスによって、外部I/F17の転送モードや動作状態を変化させる。なお、図2の処理は、電子カメラ100と外部機器200との間でデータの転送が開始されるときに、画像処理エンジン12によって実行される。
【0031】
ステップ#101:画像処理エンジン12は、外部機器200との通信に要求されるデータ転送速度が第1閾値Th1より小さいか否かを判定する。ここで、第1閾値Th1は、USB2.0のHigh-speedでのデータの転送が可能なデータ転送速度であって、例えば20~30MB/s程度である。一例として、#101での画像処理エンジン12は、単位時間当たりのデータ転送量が大きな画像データ(動画像のデータや連写撮影で取得された一連の画像データ群など)を外部機器200と通信する場合に、データ転送速度が第1閾値Th1以上であると判定してもよい。
【0032】
上記要件を満たす場合(YES側)には、#102に処理が移行する。一方、上記要件を満たさない場合(NO側)には、#103に処理が移行する。
【0033】
ステップ#102:この場合、画像処理エンジン12は、USB2.0の規格で外部機器200と通信を行う。まず、#102での画像処理エンジン12は、制御信号線CNTを介してブリッジ部22の動作を停止させる。これにより、高い周波数で駆動するブリッジ部22での消費電力がなくなるとともに、第3伝送路25の周辺回路での消費電力が小さくなるので、電子カメラ100の消費電力の効率が改善される。そして、画像処理エンジン12は、接続端子21および第1伝送路23を介して、USB2.0の規格により外部機器200とデータを送受する。その後、画像処理エンジン12は、上記の通信終了後に図2の処理を終了する。
【0034】
ステップ#103:画像処理エンジン12は、外部機器200との通信に要求されるデータ転送速度が第2閾値Th2より小さいか否かを判定する。ここで、第2閾値Th2は、第3伝送路25での通信速度が1.5Gbpsであるときにデータの転送が可能なデータ転送速度であって、例えば80MB/s程度である。一例として、#103での画像処理エンジン12は、上記の動画像のデータ等を送信するときに、1フレームの画像サイズとフレームレートとを積算した単位時間当たりのデータ転送量と、第2閾値Th2とを比較して判定すればよい。
【0035】
上記要件を満たす場合(YES側)には、#104に処理が移行する。一方、上記要件を満たさない場合(NO側)には、#105に処理が移行する。
【0036】
ステップ#104:この場合、画像処理エンジン12は、USB3.0の規格で外部機器200と通信を行うとともに、第3伝送路25での通信速度を1.5Gbpsにする。まず、#104での画像処理エンジン12は、制御信号線CNTを介してブリッジ部22の動作を一旦リセットする。そして、画像処理エンジン12は、ブリッジ部22の再起動時に第3伝送路25での通信速度を1.5Gbpsに切り替える。これにより、第3伝送路25の周辺回路での消費電力が小さくなるので、電子カメラ100の消費電力の効率が改善される。そして、画像処理エンジン12は、接続端子21、第2伝送路24、ブリッジ部22および第3伝送路25を介して、USB3.0の規格により外部機器200とデータを送受する。その後、画像処理エンジン12は、上記の通信終了後に図2の処理を終了する。
【0037】
ステップ#105:この場合、画像処理エンジン12は、USB3.0の規格で外部機器200と通信を行うとともに、第3伝送路25での通信速度を3.0Gbpsにする。まず、#105での画像処理エンジン12は、制御信号線CNTを介してブリッジ部22の動作を一旦リセットする。そして、画像処理エンジン12は、ブリッジ部22の再起動時に第3伝送路25での通信速度を3.0Gbpsに切り替える。そして、画像処理エンジン12は、接続端子21、第2伝送路24、ブリッジ部22および第3伝送路25を介して、USB3.0の規格により外部機器200とデータを送受する。その後、画像処理エンジン12は、上記の通信終了後に図2の処理を終了する。以上で、図2の流れ図の説明を終了する。
【0038】
一の実施形態において、電子カメラ100と外部機器200とがUSB3.0のケーブルで接続された場合、画像処理エンジン12は、必要となるデータ転送速度に応じてUSB2.0での転送とUSB3.0での転送とを選択する。そして、USB2.0での転送が選択された場合、画像処理エンジン12は、ブリッジ部22の動作を停止させる(#102)。また、USB3.0の転送で必要となるデータ転送速度が低い場合、画像処理エンジン12は、第3伝送路25での通信速度を低くする(#104)。また、USB3.0の転送で必要となるデータ転送速度が高い場合、画像処理エンジン12は、第3伝送路25での通信速度を高くする(#105)。」
(3)「図1
[図:0001411132000003.jpg]
」
(4)「図2
[図:0001411132000004.jpg]
」
上記(1)~(4)の記載事項(特に下線部。)から、引用例2には次の事項が記載されているといえる。
「電子カメラ100は、USB3.0に準拠したシリアル通信機能を有しており、例えばパーソナルコンピュータ、プリンタ等の外部の電子機器(外部機器200)との間で画像のデータの送受を行うことができ(【0014】、図1)、
電子カメラ100と外部機器200とがUSB3.0のケーブルで接続された場合、電子カメラ100と外部機器200との間でデータの転送が開始されるとき、画像処理エンジン12は、外部I/F17の転送モードや動作状態を変化させ(【0030】、図2)、
画像処理エンジン12は、外部機器200との通信に要求されるデータ転送速度が第1閾値Th1より小さいか否かを判定し、第1閾値Th1は、USB2.0のHigh-speedでのデータの転送が可能なデータ転送速度であり、画像処理エンジン12は、単位時間当たりのデータ転送量が大きな画像データを外部機器200と通信する場合に、データ転送速度が第1閾値Th1以上であると判定してもよく(【0031】)、
上記要件を満たす場合、画像処理エンジン12は、USB2.0の規格で外部機器200と通信を行い(【0032】、【0033】、図2(ステップ#102))、
上記要件を満たさない場合、画像処理エンジン12は、外部機器200との通信に要求されるデータ転送速度が第2閾値Th2より小さいか否かを判定し、第2閾値Th2は、第3伝送路25での通信速度が1.5Gbpsであるときにデータの転送が可能なデータ転送速度であって、例えば80MB/s程度であり(【0032】、【0034】、図2(ステップ#103))、
上記要件を満たす場合(外部機器200との通信に要求されるデータ転送速度が第2閾値Th2より小さい場合)、画像処理エンジン12は、USB3.0の規格で外部機器200と通信を行うとともに、第3伝送路25での通信速度を1.5Gbpsにし(【0035】、【0036】、図2(ステップ#104))、
上記要件を満たさない場合、画像処理エンジン12は、USB3.0の規格で外部機器200と通信を行うとともに、第3伝送路25での通信速度を3.0Gbpsにし(【0035】、【0037】、図2(ステップ#105))、
電子カメラ100と外部機器200とがUSB3.0のケーブルで接続された場合、画像処理エンジン12は、必要となるデータ転送速度に応じてUSB2.0での転送とUSB3.0での転送とを選択する(【0038】)こと。」
第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「ホスト2」は、本願発明1の「情報処理装置」に相当する。
引用発明の「メモリコントローラ10と、NAND型のフラッシュメモリ(NANDメモリ)20と、電源回路30と、を備えるメモリシステム1」は、「ホスト2」と「NANDメモリ20」との間で「データ転送を実行」するものであるから、“ストレージデバイス”といえ、引用発明と本願発明1とは、“情報処理装置に接続されるストレージデバイス”である点で一致する。
イ 引用発明の「メモリコントローラ10」は、「メモリシステム1全体の制御を実行」するとともに、「ホスト2とNANDメモリ20との間のデータ転送を実行」するところ、本願発明1の「コントローラ」に相当する。
引用発明は、「温度に応じた4つのステートが定義され、4つのステートは、しきい値T0より低い温度範囲に対応する第1ステートと、しきい値T0からしきい値T1までの温度範囲に対応する第2ステートと、しきい値T1からしきい値T2までの温度範囲に対応する第3ステートと、しきい値T2より高い温度範囲に対応する第4ステートと、を含」み、これら「第1ステート」から「第4ステート」は、「データの転送速度に関する上限値」がそれぞれ対応付けられ、「第1ステートにはP1が上限値として対応付けられており、第2ステートにはP2が上限値として対応付けられており、第3ステートにはP3が上限値として対応付けられており、第4ステートにはP4が上限値として対応付けられていて、P1~P4は、P1>P2>P3>P4の関係を満た」すものである。
当該「P1~P4」の「データの転送速度に関する上限値」は、本願発明1の「予め定められた複数のデータ転送速度」に相当するものといえる。
そして、引用発明の「メモリコントローラ10」は、「データの転送速度が上限値を越えないように、ホスト2とメモリシステム1とのデータ転送を実行し、メモリコントローラ10は、メモリシステム1内に設けられた温度センサを用いて温度を検出し、検出温度に応じて上限値を設定」するものであって、当該「データの転送速度」の「上限値」は、本願発明1の「複数のデータ転送速度のいずれかのデータ転送速度」に相当し、引用発明の「メモリコントローラ10」は、「P1~P4」の「データの転送速度に関する上限値」に応じてデータ転送を行うものといえるから、引用発明と本願発明1とは、“前記情報処理装置との間で、予め定められた複数のデータ転送速度のいずれかのデータ転送速度でデータ転送を行うコントローラを有”する点で一致する。
ウ 引用発明の「データの転送速度に関する上限値」である「P1~P4」は、「P1>P2>P3>P4の関係を満た」すものであって、例えばそのうちの「P1」は、「第1ステート」の「上限値として対応付けられて」いて、これを“高速な機能上限である第1のモード”と称することは任意である。
また、「P4」は、「第4ステート」の「上限値として対応付けられて」いて、これを、“第1のモードよりも低速な第2のモード”と称することも任意であるから、“情報処理装置との間での転送速度の上限が第1のモードよりも低速な第2のモードで動作するよう制御され”ているといえる。
そして、引用発明の「メモリコントローラ10」は、「データの転送速度が上限値を越えないように、ホスト2とメモリシステム1とのデータ転送を実行」するものであるところ、上記イの「メモリコントローラ10」に関する認定を踏まえると、引用発明と本願発明1とは、下記の点(相違点)で相違するものの、“前記コントローラは、前記情報処理装置との間での転送速度の上限が第1のモードよりも低速な第2のモードで動作するよう制御され”る点で一致する。
エ 引用発明の「メモリシステム1内に設けられた温度センサ」は、本願発明1の「コントローラを内蔵する筐体内の温度を計測する手段」に相当するから、引用発明と本願発明1とは、“前記コントローラを内蔵する筐体内の温度を計測する手段をさらに備え”る点で一致する。
オ 引用発明の「メモリコントローラ10」は、「メモリシステム1内に設けられた温度センサを用いて温度を検出し、検出温度に応じて上限値を設定」するものであって、引用発明は、「メモリチップ21へのアクセスの頻度が高いほど、メモリチップ21での消費電力量が大きいため、メモリチップ21での発熱量が増加し、メモリチップ21へのアクセスの頻度は、ホスト2とメモリシステム1との間のデータの転送速度と正の相関があ」るとともに、「温度の上昇に応じてデータの転送速度の上限値が段階的に引き下げられる」ものであることから、当該「温度の上昇に応じてデータの転送速度の上限値」を「段階的に引き下げ」ることは、上記ウの第1のモード及び第2のモードに関する認定を踏まえると、本願発明1の「前記計測された温度が、所定の条件を満足するときに、前記情報処理装置との間のデータ転送速度を、前記第2のモードの転送速度の上限以下のデータ転送速度で制御する」ことに相当する。
上記イの「メモリコントローラ10」に関する認定、及び上記エの「温度センサ」に関する認定を踏まえると、引用発明と本願発明1とは、“前記コントローラは、前記計測された温度が、所定の条件を満足するときに、前記情報処理装置との間のデータ転送速度を、前記第2のモードの転送速度の上限以下のデータ転送速度で制御する”点で一致する。
カ 以上、ア~オの検討から、引用発明と本願発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
情報処理装置に接続されるストレージデバイスであって、
前記情報処理装置との間で、予め定められた複数のデータ転送速度のいずれかのデータ転送速度でデータ転送を行うコントローラを有し、
前記コントローラは、前記情報処理装置との間での転送速度の上限が第1のモードよりも低速な第2のモードで動作するよう制御され、
前記コントローラを内蔵する筐体内の温度を計測する手段をさらに備え、
前記コントローラは、前記計測された温度が、所定の条件を満足するときに、前記情報処理装置との間のデータ転送速度を、前記第2のモードの転送速度の上限以下のデータ転送速度で制御するストレージデバイス。
〈相違点〉
本願発明1の「コントローラ」は、「前記情報処理装置との間での転送速度の上限が、高速な機能上限である第1のモードでの動作を不能」とすることを、「初期設定において制御され」るものであるのに対し、引用発明は、「メモリコントローラ10は、データの転送速度が上限値を越えないように、ホスト2とメモリシステム1とのデータ転送を実行し、メモリコントローラ10は、メモリシステム1内に設けられた温度センサを用いて温度を検出し、検出温度に応じて上限値を設定」するものではあるが、初期設定時に所定の動作モードを不能とするものではない点。
(2)相違点についての判断
本願発明は、SSD等のストレージデバイスにおいて、ホストとなるパーソナルコンピュータ(PC)との間のデータ転送を行うホストコントローラ(以下、単にコントローラと称する)は、USB等の規格に従って設計され、近年では、コントローラのデータ転送速度はますます高速化していて、複数のデータ転送速度に対応する規格も存在し(【0002】)、一方、機器を小型化するため、例えばチップ・オン・ボード実装技術を利用したストレージデバイス等も存在し、こうした小型のストレージデバイスでは、放熱対策が複雑となるので、内部で用いる回路等の発熱を抑えたい要望があることを課題とし(【0004】)、発熱を抑えることのできるストレージデバイス、及びそれを含む情報処理システムを提供することを、その目的の一つとするものである(【0005】)。
一方引用発明は、従来、不揮発性メモリのメモリチップを備えるメモリシステムが知られていて、メモリチップは、正常に動作する温度範囲が仕様で定められており、メモリシステムは、メモリチップの温度が上記の温度範囲の上限値を超えないように、性能の制御を実行し、例えば、メモリチップの温度が上記の温度範囲の上限値を超えそうな場合には、メモリシステムは、自身の性能を抑制することによってメモリチップの発熱量を低減させ(【0002】)、効率的に性能を制御すること(【0004】)を課題とするものと認められるところ、初期設定時に、予めデータ転送速度の上限を高速な機能上限である、例えば「しきい値T0より低い温度範囲に対応する第1ステート」の上限値「P1」で動作することを不能とすることまでは、引用例1に記載されておらず、また、引用発明は、「温度センサ」を用いて「検出」された温度が「しきい値T0より低」ければ、必ず上限値が最大の「P1」に設定されるものであるから、相違点のような構成、すなわち、「前記情報処理装置との間での転送速度の上限が、高速な機能上限である第1のモードでの動作を不能」とすることを、「初期設定において制御され」るような構成を引用発明において採用することは当業者といえども容易には想到し得ないというべきである。
また、引用例2においても、上記相違点に係る構成は開示されていないこと、さらに相違点に係る構成が本願出願前において周知技術であったともいえないことから、本願発明1は、当業者であっても、引用例1に記載された引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2~4について
本願発明2~4は、本願発明1を直接または間接的に引用するものであって、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用例1に記載された引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1~4について上記引用例1、2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、上記第4の1(2)で示したとおり、本願発明1~4は、「コントローラ」が、「前記情報処理装置との間での転送速度の上限が、高速な機能上限である第1のモードでの動作を不能」とすることを、「初期設定において制御され」るという事項を有するものであり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1及び2(上記第3の引用例1及び2)に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由について
<特許法第36条第6項第2号について>
当審では、請求項3は、他の請求項を引用するものではなく、「前記情報処理装置」、「前記第1のモード」及び「前記第2のモード」は前記されておらず不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、令和6年4月18日付けの手続補正書による手続補正において、「請求項1または2に記載のストレージデバイスであって」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-014566