特許拒絶査定不服審判
2023-013738
ひずみゲージ、センサモジュール
- 審判番号
- 2023-013738
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-246871
- 請求日
- 2023年08月15日
- 審決日
- 2024年08月21日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ミネベアミツミ株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 濱野 隆
- 審判官 田辺 正樹
- 分類
- P18 .537-ZB (G01B) / P18 .575-ZB (G01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第17条の2第5項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-246871号「ひずみゲージ、センサモジュール」拒絶査定不服審判事件〔令和元年7月11日出願公開、特開2019-113411号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年12月22日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年1月12日付け:拒絶理由通知書
同年5月24日 :意見書、手続補正書の提出
同年9月29日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和5年2月 6日 :意見書、手続補正書の提出
同年5月 2日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月16日 :原査定の謄本の送達)
同年8月15日 :審判請求書の提出
以下、令和5年2月6日に提出された手続補正書による補正を「本件補正」といい、令和5年5月2日付け補正の却下の決定を「本件補正の却下の決定」という。
第2 本件補正の却下の決定について
請求人は、審判請求書において、本件補正の却下の決定は不当であり取り消されるべきであると主張している。
そこで、本件審判事件に係る争点を明確にするため、本審決においては、まず本件補正の却下の決定の理由の概要を示し、後記第3において、請求人の主張を示すこととする。
1 本件補正の却下の決定の理由の概要
本件補正による特許請求の範囲の請求項1~6についての補正は限定的減縮を目的としているところ、補正後の請求項1~6に係る発明は、以下の2に示す令和4年9月29日付け拒絶理由通知書に記載した理由1及び理由2により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正による明細書及び特許請求の範囲についての補正は、却下する。
2 令和4年9月29日付け拒絶理由通知書の理由1及び理由2の概要
理由1(サポート要件)
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由2(実施可能要件)
本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
請求項1~8
(1) <「基材」が[0013]に記載の絶縁樹脂フィルムからなるものの場合>
請求項1に係る発明における「機能層」は「金属、合金、又は、金属の化合物から形成された」ものであり、当初明細書等には[0018]にその例が挙げられている。ここで、[0018]には、例えば「Cu(銅)」、「Ag(銀)」、「Au(金)」、「Al(アルミニウム)」のように、配線などにも使用されるほどの導電率のよいもの、言い換えれば、抵抗率が非常に低いのもの、が含まれている。このことに注意すると、これらが請求項1の「機能層」のように、基材の一方の面に直接形成され、さらにその一方の面に直接、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体が形成された場合、電流は抵抗率の低い方を優先的に流れるのが技術常識であるから、抵抗率が高いCr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体には電流はほとんど流れず、それに直接接して形成されている上述のような抵抗率の非常に低いものからなる層の方を流れることになる。この場合、回路がショートした状態となるから、ひずみの測定を行うことができない。あるいは、抵抗体にはほとんど又は全く電流が流れないから、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体はひずみゲージの感知部としての役割を果たさない、ということもできる。ゆえに、発明を実施できない(理由2)。
そして、このような場合、実施例のように、絶縁性の基材であるポリイミド樹脂からなる基材の一方の面に直接、Ti層が機能層として形成され、当該Ti層の一方の面に直接、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体を有する場合とは電流の流れ方が異なるのであり(少なくともTi層は抵抗率がCrより4倍ほど高いから、上記技術常識から考えて、Ti層の方のみをほとんど電流が流れるということはない)、当該実施例を単純に拡張した発明とはいえない。よって、このようなものにまで発明を拡張することはできない(理由1)。
また、[0018]には、上記のような抵抗率が非常に低いものの他にも、Crより抵抗率が低いか、又は、Crと同程度の抵抗率のものも多く含まれている。そしてもし基材の一方の面に直接これらからなる層が形成され、その一方の面に直接、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された層が形成された場合は、上記技術常識より、電流はこれらその抵抗率に応じた配分で両方の層を流れることになると考えられる。そうすると、実際はこれら2層からなる部分が抵抗体になるから、これら2層からなるものがある程度高いゲージ率を有していなければ、ひずみゲージとして用いることができない。しかしながら、本願の当初明細書等には実施例の1例を除き、機能層の上に、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された層が形成された場合のゲージ率を示したものはない。また、実施例の1例のみから、それとは電流の流れ方が異なるものにまで発明を拡張することはできない(理由1)。
(2) <「基材」が[0013]に記載の絶縁樹脂フィルムからなるものでない場合>
この場合、「基材」も、例えば、金属、合金、又は、金属の化合物から形成されたものであり得る。つまり、「Cu(銅)」や、「Ag(銀)」等のように抵抗率が非常に低いか、Crより抵抗率が低い又は同程度のものであり得る。
よって、本願の請求項1に係る発明には少なくとも以下の場合が含まれていることになる。
ア)基材も、機能層も、ともに抵抗率が非常に低いものからなる場合
イ)基材は抵抗率が非常に低いものからなり、機能層はCrより抵抗率が低いか又は同程度のものからなる場合
ウ)基材はCrより抵抗率が低いか又は同程度のものからなり、機能層は抵抗率が非常に低いものからなる場合
エ)基材も、機能層も、ともにCrより抵抗率が低いか又は同程度のものからなる場合
ア)の場合、上記技術常識から考えて、電流は、ほとんど、基材及び機能層のみを流れ、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体には流れない(回路はショートした状態となる)。よって、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体はひずみゲージの感知部としての役割を果たさない。ゆえに、発明を実施できない(理由2)。また、このようなものを含むものにまで発明を拡張することはできない(理由1)。
イ)の場合、上記技術常識から考えて、電流は、ほとんど、機能層のみを流れ(当審注:「ほとんど、機能層のみを流れ」は、「ほとんど、基材のみを流れ」の明らかな誤記であると認められる。)、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体には流れない(回路はショートした状態となる)。よって、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体はひずみゲージの感知部としての役割を果たさない。ゆえに、発明を実施できない(理由2)。また、このようなものを含むものにまで発明を拡張することはできない(理由1)。
ウ)の場合、上記技術常識から考えて、電流は、ほとんど基材のみを流れ、機能層のみを流れ(当審注:「ほとんど基材のみを流れ、機能層のみを流れ」は、「ほとんど機能層のみを流れ」の明らかな誤記であると認められる。)、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体には流れない(回路はショートした状態となる)。よって、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体はひずみゲージの感知部としての役割を果たさない。ゆえに、発明を実施できない(理由2)。また、このようなものを含むものにまで発明を拡張することはできない(理由1)。
エ)の場合、上記技術常識より、電流は、基材、機能層、及び、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜の3層を流れ、当該3層からなる部分が抵抗体として振る舞うことになると考えられる。よって、当該3層からなる部分がある程度以上のゲージ率を有しなければならない。しかしながら、本願の当初明細書等には、実施例の1例を除き、製造もされていなければ、そのゲージ率を調べられたものもない。そして、当該実施例の1例では少なくとも基材が絶縁性であるのに対し、エ)の場合はそうでなく、ゆえにこれらは電流の流れ方が異なると考えられるから、実施例の場合を単純に拡張して考えることができるものではない(理由1)。
第3 請求人の主張
請求人は、理由1のサポート要件違反及び理由2の実施可能要件違反の拒絶の理由の通知に対して、審判請求書において、次に示す主張をするとともに、令和5年5月2日付け補正の却下の決定は不当であり取り消されるべきであると主張している。
<請求人の主張>
(1) 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、「可撓性を有する基材と、前記基材の一方の面に直接、金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層と、前記機能層の一方の面に直接、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体と、前記抵抗体を被覆する絶縁樹脂層と、を有し、前記抵抗体の膜厚が0.05μm以上0.5μm以下であり、前記抵抗体の線幅が5μm以上40μm以下であり、前記抵抗体は、α-Crを主成分とし、前記機能層は、前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能を有するひずみゲージ。」である。
(2) 理由1(サポート要件)、理由2(実施可能要件)
(A) <「基材」が[0013]に記載の絶縁樹脂フィルムからなるものの場合>について
拒絶理由通知書において、審査官は「電流は抵抗率の低い方を優先的に流れるのが技術常識」と認定しているが、電流は抵抗率の低い方を優先的に流れるのではなく、抵抗の低い方を優先的に流れる、が正しいと思料する。
仮に、抵抗体と機能層の幅と長さが同じであれば、抵抗体と機能層を構成する材料の抵抗率と、抵抗体と機能層の厚さにより、抵抗体と機能層の抵抗値の関係が決まる。ここで、抵抗体の膜厚は、例えば、0.05μm以上0.5μm以下である(請求項1等)。一方、機能層の厚さは、例えば、1nm~100nm程度である(段落[0015]等)。例えば、抵抗体の膜厚を0.05μm(50nm)、機能層の厚さを1nmとすれば、機能層の厚さは抵抗体の膜厚の1/50となる。つまり、仮に抵抗体と機能層を構成する材料の抵抗率が同じであっても、抵抗体と機能層の抵抗値は同じにはならない。また、抵抗体の膜厚を0.5μm(500nm)、機能層の厚さを1nmとすれば、機能層の厚さは抵抗体の膜厚の1/500となり、抵抗体と機能層を構成する材料の抵抗率が同じであっても、抵抗体と機能層の抵抗値に大きな差を付けることができる。
以上の検討から、抵抗体と機能層の厚さを調整することにより、ひずみゲージとして用いる場合に機能層の影響を抑制し抵抗体の影響を支配的にすることが可能である。よって、機能層上に抵抗体が形成されてもひずみゲージとして機能できる。機能層の材料に応じて機能層の厚さを変えることも可能であるし、機能層の材料がTiに限定される理由はない。
このように、審査官の認定は妥当でないものと思料する。
(B) <「基材」が[0013]に記載の絶縁樹脂フィルムからなるものでない場合>について
機能層の材料については、段落[0018]、[0019]等に例示されており、目的に応じて適宜選択できることが記載されている。例示された材料の中には、金属のみではなく、金属の酸化物や窒化物も含まれている。「基材」が、例えば、金属、合金、又は、金属の化合物から形成されたものであれば、機能層として絶縁性の高い材料を選択することで、ひずみゲージを実現できる。例示された材料の中から絶縁性の高い材料を選択することは、当業者であれば当然に可能である。また、例示された材料の中から絶縁性の高い材料を選択することに関し、当業者は、程度を超える試行錯誤や、複雑高度な実験等を行う必要はない。
このように、審査官の認定は妥当でないものと思料する。
(C) 以上より、本願の請求項1に係る発明は、特許法36条6項1号及び同条4項1号に規定する要件を満足しているものと思料する。
第4 本件補正の却下の決定についての当審の判断について
1 本件補正の内容
本件補正は、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
可撓性を有する基材と、
前記基材の一方の面に直接、金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層と、
前記機能層の一方の面に直接、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体と、
前記抵抗体を被覆する絶縁樹脂層と、を有し、
前記抵抗体は、α-Crを主成分とし、
前記機能層は、前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能を有するひずみゲージ。」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
可撓性を有する基材と、
前記基材の一方の面に直接、金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層と、
前記機能層の一方の面に直接、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体と、
前記抵抗体を被覆する絶縁樹脂層と、を有し、
前記抵抗体の膜厚が0.05μm以上0.5μm以下であり、
前記抵抗体の線幅が5μm以上40μm以下であり、
前記抵抗体は、α-Crを主成分とし、
前記機能層は、前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能を有するひずみゲージ。」
2 本件補正の目的
(1) 本件補正のうち請求項1の補正は、本件補正前の請求項1の「抵抗体」について、「膜厚が0.05μm以上0.5μm以下であり」、「線幅が5μm以上40μm以下であり」とするものであり、抵抗体の膜厚及び線幅のとり得る範囲を数値として限定するものである。
(2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3) よって、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件違反について
前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) サポート要件の判断基準と当審の判断の概要
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かについては、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高判平成17年11月11日(平成17年(行ケ)10042号)「偏光フィルムの製造法」大合議判決参照)。
イ サポート要件違反についての当審の判断の概要
上記(1)のサポート要件の判断基準に基づいて検討したところ、以下に詳細に検討するように、本件補正発明の「可撓性を有する基材」について、本件補正発明の課題の前提とする材料以外のもの、例えば金属やガラスを材料とするものにまで拡張することは、当業者は認識できないというべきであり、また、請求項1は、課題の解決を検討する以前の問題としてひずみゲージとして機能するための構成の特定が不足しており、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された範囲にまで拡張ないし一般化できない。
したがって、いずれにしても、本件補正発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
(2) 明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載
サポート要件について検討するために必要な本件補正後の明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載を抜粋すると、次の記載がある。ここで、下線は合議体が付与したものである。
なお、本件補正により、明細書の段落【0006】の記載が補正されている。
「【発明の名称】ひずみゲージ、センサモジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみゲージ、センサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物に貼り付けて、測定対象物のひずみを検出するひずみゲージが知られている。ひずみゲージは、ひずみを検出する抵抗体を備えており、抵抗体の材料としては、例えば、Cr(クロム)やNi(ニッケル)を含む材料が用いられている。又、抵抗体は、例えば、絶縁樹脂からなる基材上に形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-74934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ひずみゲージを高抵抗化することが求められており、抵抗体の材料等の検討が行われている。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、可撓性を有する基材上に形成された抵抗体を有するひずみゲージにおいて、抵抗体を高抵抗化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本ひずみゲージは、可撓性を有する基材と、前記基材の一方の面に直接、金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層と、前記機能層の一方の面に直接、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体と、前記抵抗体を被覆する絶縁樹脂層と、を有し、前記抵抗体の膜厚が0.05μm以上0.5μm以下であり、前記抵抗体の線幅が5μm以上40μm以下であり、前記抵抗体は、α-Crを主成分とし、前記機能層は、前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能を有する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、可撓性を有する基材上に形成された抵抗体を有するひずみゲージにおいて、抵抗体を高抵抗化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
【図2】第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【図3】第1の実施の形態に係るひずみゲージの製造工程を例示する図である。
【図4】第1の実施の形態の変形例1に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【図5】第2の実施の形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
【図6】第2の実施の形態に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【図7】第2の実施の形態に係るひずみゲージの製造工程を例示する図(その1)である。
【図8】第2の実施の形態に係るひずみゲージの製造工程を例示する図(その2)である。
【図9】第2の実施の形態の変形例1に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【図10】第2の実施の形態の変形例2に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【図11】第3の実施の形態に係るセンサモジュールを例示する断面図である。
【図12】機能層の蛍光X線分析の結果を示す図である。
【図13】抵抗体のX線回折の結果を示す図である。
【図14】基材の膨張係数と抵抗体の内部応力との関係を示す図である。
【図15】基材の表面凹凸と抵抗体のピンホール数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。図2は、第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する断面図であり、図1のA-A線に沿う断面を示している。図1及び図2を参照するに、ひずみゲージ1は、基材10と、機能層20と、抵抗体30と、端子部41と、カバー層60とを有している。なお、図1では、抵抗体30を図示するために、便宜上、カバー層60は外縁のみを破線で示している。」
「【図1】
[図:0001416078000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001416078000002.jpg]
」
「【0011】
なお、本実施の形態では、便宜上、ひずみゲージ1において、基材10の抵抗体30が設けられている側を上側又は一方の側、抵抗体30が設けられていない側を下側又は他方の側とする。又、各部位の抵抗体30が設けられている側の面を一方の面又は上面、抵抗体30が設けられていない側の面を他方の面又は下面とする。但し、ひずみゲージ1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、平面視とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0012】
基材10は、抵抗体30等を形成するためのベース層となる部材であり、可撓性を有する。基材10の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材10の厚さが5μm~200μmであると、接着層等を介して基材10の下面に接合される起歪体表面からの歪の伝達性、環境に対する寸法安定性の点で好ましく、10μm以上であると絶縁性の点で更に好ましい。
【0013】
基材10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成することができる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0014】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材10が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材10は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0015】
機能層20は、基材10の上面10aに抵抗体30の下層として形成されている。すなわち、機能層20の平面形状は、図1に示す抵抗体30の平面形状と略同一である。機能層20の厚さは、例えば、1nm~100nm程度とすることができる。
【0016】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗体30の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層20は、更に、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗体30の酸化を防止する機能や、基材10と抵抗体30との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層20は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0017】
基材10を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗体30がCr(クロム)を含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層20が抵抗体30の酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0018】
機能層20の材料は、少なくとも上層である抵抗体30の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0019】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si3N4、TiO2、Ta2O5、SiO2等が挙げられる。
【0020】
抵抗体30は、機能層20の上面に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。なお、図1では、便宜上、抵抗体30を梨地模様で示している。
【0021】
抵抗体30は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体30は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Ni-Cu(ニッケル銅)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。言い換えれば、抵抗体30としてCr混相膜を用いてもよいし、Ni-CuやNi-Cr等のCr混相膜以外の材料を用いてもよい。
【0022】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、Cr2N等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。又、Cr混相膜に、機能層20を構成する材料の一部が拡散されてもよい。この場合、機能層20を構成する材料と窒素とが化合物を形成する場合もある。例えば、機能層20がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0023】
抵抗体30の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体30の厚さが0.1μm以上であると抵抗体30を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましく、1μm以下であると抵抗体30を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材10からの反りを低減できる点で更に好ましい。
【0024】
抵抗体30の線幅は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~40μm程度とすることができる。
【0025】
特に、抵抗体30を高抵抗化する観点からは、抵抗体30の厚さは0.05μm~0.25μm程度とすることが好ましく、抵抗体30の線幅は5μm~20μm程度とすることが好ましい。
【0026】
機能層20上に抵抗体30を形成することで、安定な結晶相により抵抗体30を形成できるため、ゲージ特性(ゲージ率、ゲージ率温度係数TCS、及び抵抗温度係数TCR)の安定性を向上することができる。
【0027】
例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、機能層20を設けることで、α-Cr(アルファクロム)を主成分とする抵抗体30を形成することができる。α-Crは安定な結晶相であるため、ゲージ特性の安定性を向上することができる。
【0028】
ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50質量%以上を占めることを意味する。抵抗体30がCr混相膜である場合、ゲージ特性を向上する観点から、抵抗体30はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0029】
又、機能層20を構成する金属(例えば、Ti)がCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性を向上することができる。具体的には、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。
【0030】
抵抗体30は、例えば、L1×L2が3mm×3mmの範囲に形成することができる。この場合、抵抗体30としてCr混相膜を用いたときの膜厚T及び線幅Wと抵抗体30の抵抗値との関係は、例えば、表1のようになる。なお、ここでは、一例として、隣接する線間隔を線幅と同一としている。
【0031】
【表1】
[図:0001416078000003.jpg]
表1に示すように、L1×L2が3mm×3mmで膜厚Tが0.5μmの場合、線幅Wが40μmで抵抗値が2.9kΩ、線幅Wが20μmで抵抗値が11.8kΩ、線幅Wが10μmで抵抗値が49.1kΩ、線幅Wが5μmで抵抗値が198.9kΩとなる。
【0032】
又、L1×L2が3mm×3mmで膜厚Tが0.1μmの場合、線幅Wが40μmで抵抗値が14.5kΩ、線幅Wが20μmで抵抗値が59.0kΩ、線幅Wが10μmで抵抗値が245.5kΩ、線幅Wが5μmで抵抗値が994.5kΩとなる。
【0033】
又、L1×L2が3mm×3mmで膜厚Tが0.05μmの場合、線幅Wが40μmで抵抗値が29.0kΩ、線幅Wが20μmで抵抗値が118.0kΩ、線幅Wが10μmで抵抗値が491.0kΩ、線幅Wが5μmで抵抗値が1989.0kΩとなる。
【0034】
又、抵抗体30は、例えば、L1×L2が0.3mm×0.3mmの範囲に形成することができる。この場合、抵抗体30としてCr混相膜を用いたときの膜厚T及び線幅Wと抵抗体30の抵抗値との関係は、例えば、表2のようになる。なお、ここでは、一例として、隣接する線間隔を線幅と同一としている。
【0035】
【表2】
[図:0001416078000004.jpg]
表2に示すように、L1×L2が0.3mm×0.3mmで膜厚Tが0.5μmの場合、線幅Wが40μmで抵抗値が20Ω、線幅Wが20μmで抵抗値が100Ω、線幅Wが10μmで抵抗値が410Ω、線幅Wが5μmで抵抗値が1.88kΩとなる。
【0036】
又、L1×L2が0.3mm×0.3mmで膜厚Tが0.1μmの場合、線幅Wが40μmで抵抗値が100Ω、線幅Wが20μmで抵抗値が500Ω、線幅Wが10μmで抵抗値が2.1kΩ、線幅Wが5μmで抵抗値が9.4kΩとなる。
【0037】
又、L1×L2が0.3mm×0.3mmで膜厚Tが0.05μmの場合、線幅Wが40μmで抵抗値が200Ω、線幅Wが20μmで抵抗値が1.0kΩ、線幅Wが10μmで抵抗値が4.2kΩ、線幅Wが5μmで抵抗値が18.8kΩとなる。
【0038】
又、表1及び表2の抵抗体をホイートストンブリッジ回路で構成した場合、1Vの印加電圧時の消費電力は表3及び表4に示すようになる。表3及び表4に示すように、抵抗体30の膜厚Tを薄くすると共に線幅Wを細くして高抵抗化することにより、抵抗体30の消費電力を低減することができる。
【0039】
【表3】
[図:0001416078000005.jpg]
【0040】
【表4】
[図:0001416078000006.jpg]
なお、上記の説明中でL1×L2を3mm×3mm、又はL1×L2を0.3mm×0.3mmとしたのは一例であり、この大きさには限定されない。又、L1とL2を異なる値にしても構わない。
【0041】
このように、可撓性を有する基材10上に抵抗体30としてCr混相膜を形成することにより、抵抗体30の膜厚Tを薄くすると共に線幅Wを細くして高抵抗化することができる。又、抵抗体30の高抵抗化に伴って、抵抗体30の消費電力を低減することができる。又、抵抗体30の線幅Wを細くすることにより、ひずみゲージ1を小型化できる。」
「【0052】
図3は、第1の実施の形態に係るひずみゲージの製造工程を例示する図であり、図2に対応する断面を示している。ひずみゲージ1を製造するためには、まず、図3(a)に示す工程では、基材10を準備し、基材10の上面10aに機能層20を形成する。基材10及び機能層20の材料や厚さは、前述の通りである。」
「【図3】
[図:0001416078000007.jpg]
」
「【0053】
機能層20は、例えば、機能層20を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜することができる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材10の上面10aをArでエッチングしながら機能層20が成膜されるため、機能層20の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0054】
但し、これは、機能層20の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層20を成膜してもよい。例えば、機能層20の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材10の上面10aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層20を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0055】
次に、図3(b)に示す工程では、機能層20の上面全体に抵抗体30及び端子部41を形成後、フォトリソグラフィによって機能層20並びに抵抗体30及び端子部41を図1に示す平面形状にパターニングする。抵抗体30及び端子部41の材料や厚さは、前述の通りである。抵抗体30と端子部41とは、同一材料により一体に形成することができる。抵抗体30及び端子部41は、例えば、抵抗体30及び端子部41を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜することができる。抵抗体30及び端子部41は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0056】
機能層20の材料と抵抗体30及び端子部41の材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、機能層20としてTiを用い、抵抗体30及び端子部41としてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜することが可能である。
【0057】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、抵抗体30及び端子部41を成膜することができる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、抵抗体30及び端子部41を成膜してもよい。
【0058】
これらの方法では、Tiからなる機能層20がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層20を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。
【0059】
なお、抵抗体30がCr混相膜である場合、Tiからなる機能層20は、抵抗体30の結晶成長を促進する機能、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗体30の酸化を防止する機能、及び基材10と抵抗体30との密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層20として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0060】
次に、図3(c)に示す工程では、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し端子部41を露出するカバー層60を形成する。カバー層60の材料や厚さは、前述の通りである。カバー層60は、例えば、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し端子部41を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製することができる。カバー層60は、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し端子部41を露出するように液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。以上の工程により、ひずみゲージ1が完成する。
【0061】
このように、抵抗体30の下層に機能層20を設けることにより、抵抗体30の結晶成長を促進することが可能となり、安定な結晶相からなる抵抗体30を作製できる。その結果、ひずみゲージ1において、ゲージ特性の安定性を向上することができる。又、機能層20を構成する材料が抵抗体30に拡散することにより、ひずみゲージ1において、ゲージ特性を向上することができる。」
「【0107】
[実施例1]
まず、事前実験として、厚さ25μmのポリイミド樹脂からなる基材10の上面10aに、コンベンショナルスパッタ法により機能層20としてTiを真空成膜した。この際、複数の膜厚を狙ってTiを成膜した5個のサンプルを作製した。
【0108】
次に、作製した5個のサンプルについて蛍光X線(XRF:X‐ray Fluorescence)分析を行い、図12に示す結果を得た。図12のX線ピークよりTiの存在が確認され、X線ピークにおける各々のサンプルのX線強度より、1nm~100nmの範囲でTi膜の膜厚が制御できることが確認された。」
「【図12】
[図:0001416078000008.jpg]
」
「【0109】
次に、実施例1として、厚さ25μmのポリイミド樹脂からなる基材10の上面10aに、コンベンショナルスパッタ法により機能層20として膜厚が3nmのTiを真空成膜した。
【0110】
続いて、機能層20の上面全体にマグネトロンスパッタ法により抵抗体30及び端子部41としてCr混相膜を成膜後、機能層20並びに抵抗体30及び端子部41をフォトリソグラフィによって図1のようにパターニングした。
【0111】
又、比較例1として、厚さ25μmのポリイミド樹脂からなる基材10の上面10aに、機能層20を形成せずに、マグネトロンスパッタ法により抵抗体30及び端子部41としてCr混相膜を成膜し、フォトリソグラフィによって図1のようにパターニングした。なお、実施例1のサンプルと比較例1のサンプルにおいて、抵抗体30及び端子部41の成膜条件は全て同一である。
【0112】
次に、実施例1のサンプルと比較例1のサンプルについて、X線回折(XRD:X‐ray diffraction)評価を行い、図13に示す結果を得た。図13は、2θの回折角度が36~48度の範囲におけるX線回折パターンであり、実施例1の回折ピークは比較例1の回折ピークよりも右側にシフトしている。又、実施例1の回折ピークは比較例1の回折ピークよりも高くなっている。」
「【図13】
[図:0001416078000009.jpg]
」
「【0113】
実施例1の回折ピークは、α-Cr(110)の回折線の近傍に位置しており、Tiからなる機能層20を設けたことにより、α-Crの結晶成長が促進されてα-Crを主成分とするCr混相膜が形成されたものと考えられる。
【0114】
次に、実施例1のサンプルと比較例1のサンプルを複数個作製し、ゲージ特性を測定した。その結果、実施例1の各サンプルのゲージ率は14~16であったのに対し、比較例1の各サンプルのゲージ率は10未満であった。
【0115】
又、実施例1の各サンプルのゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRが-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内であったのに対し、比較例1の各サンプルのゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRは-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内には入らなかった。
【0116】
このように、Tiからなる機能層20を設けたことにより、α-Crの結晶成長が促進されてα-Crを主成分とするCr混相膜が形成され、ゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とするひずみゲージが作製された。なお、Cr混相膜へのTiの拡散効果がゲージ特性の向上に寄与していると考えられる。」
(3) 本件補正発明が解決しようとする課題について
まず、本件補正発明の課題をどのように認定すべきかについて検討する。
ア 【発明が解決しようとする課題】の欄の記載について
(ア) 本件補正発明が解決しようとする課題について、明細書の【発明が解決しようとする課題】の欄には次の記載がある。
「【0004】
近年、ひずみゲージを高抵抗化することが求められており、抵抗体の材料等の検討が行われている。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、可撓性を有する基材上に形成された抵抗体を有するひずみゲージにおいて、抵抗体を高抵抗化することを目的とする。」
(イ) 前記(ア)において摘記した記載によれば、【発明が解決しようとする課題】の欄に記載された課題は、次のとおりであると認められる。以下、当該課題を「課題1」という。
<課題1>
「可撓性を有する基材上に形成された抵抗体を有するひずみゲージにおいて、抵抗体を高抵抗化すること。」
イ 本件補正発明の構成からみた課題について
前記(1)アにおいて摘記した【発明が解決しようとする課題】の欄は、本件補正発明の構成に忠実に対応するように記載されたものであるとはいえないため、本件補正発明の構成に対応するように本件補正発明の課題を認定する必要があることを、以下詳細に検討する。
(ア) 本件補正発明の構成
請求項1の記載を、便宜上次のように構成A~Iに分説する。
A 可撓性を有する基材と、
B 前記基材の一方の面に直接、金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層と、
C 前記機能層の一方の面に直接、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体と、
D 前記抵抗体を被覆する絶縁樹脂層と、を有し、
E 前記抵抗体の膜厚が0.05μm以上0.5μm以下であり、
F 前記抵抗体の線幅が5μm以上40μm以下であり、
G 前記抵抗体は、α-Crを主成分とし、
H 前記機能層は、前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能を有する
I ひずみゲージ。
(イ) 各構成からみた検討
本件補正発明の各構成が、【発明が解決しようとする課題】の欄の記載とどのように関連しているかについて検討する。
a 構成C、E、F、Gについて
(a) 構成C及び構成Gは、「抵抗体」の材料を規定したものである。
ここで、段落【0041】の「このように、可撓性を有する基材10上に抵抗体30としてCr混相膜を形成することにより、抵抗体30の膜厚Tを薄くすると共に線幅Wを細くして高抵抗化することができる。」と記載されており、「抵抗体」の材料は、抵抗体の高抵抗化に関連するものであるといえる。
(b) 構成Eは、「抵抗体」の「膜厚」を規定したものであり、構成Fは、「抵抗体」の「線幅」を規定したものである。
ここで、段落【0025】には、「特に、抵抗体30を高抵抗化する観点からは、抵抗体30の厚さは0.05μm~0.25μm程度とすることが好ましく、抵抗体30の線幅は5μm~20μm程度とすることが好ましい。」と記載されており、「抵抗体」の「膜厚」と「線幅」は、抵抗体の高抵抗化に関連するものであるといえる。
(c) 前記(a)及び(b)より、構成C、E、F、Gは、抵抗体を高抵抗化するための構成であるといえるから、前記課題1を解決するための技術手段であると認められる。
b 構成A、B、Hについて
(a) 構成Aは、「基材」が「可撓性を有する」ことを規定したものであるが、基材の属性がどのようなものであるかということは、抵抗体を高抵抗化することと直接関連することではないから、構成Aは、前記課題1を解決するための技術手段ではない。
(b) 構成Bは、「機能層」が「金属、合金、又は、金属の化合物から形成された」ものであり、構成Hは、「機能層」が「前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能」を有するとしており、これらの構成は、「機能層」の材料及び機能を規定したものである。
ここで、段落【0026】には、「機能層20上に抵抗体30を形成することで、安定な結晶相により抵抗体30を形成できるため、ゲージ特性(ゲージ率、ゲージ率温度係数TCS、及び抵抗温度係数TCR)の安定性を向上することができる。」と記載されており、機能層は抵抗体を安定な結晶相にして、ゲージ特性の安定性の向上に貢献するものではあるものの、抵抗体の高抵抗化に寄与しているとまでは認められないから、構成B及びHの機能層の材料及び機能は、抵抗体を高抵抗化することと直接関連することではなく、構成B及びHは、前記課題1を解決するための技術手段ではない。
(c) 構成A、B、Hに関して、明細書の段落【0013】~【0014】、【0016】~【0017】には、次の記載がある。
「【0013】
基材10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成することができる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0014】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材10が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材10は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。」
「【0016】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗体30の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層20は、更に、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗体30の酸化を防止する機能や、基材10と抵抗体30との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層20は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0017】
基材10を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗体30がCr(クロム)を含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層20が抵抗体30の酸化を防止する機能を備えることは有効である。」
(d) 前記(c)に摘記した明細書の記載を踏まえると、基材としては絶縁樹脂フィルムしか開示されておらず、明細書の開示に接した当業者は、「基材が絶縁樹脂フィルムであることを前提として、抵抗体の結晶成長を促進すること」を解決しようとしたものであると認められる。
(e) したがって、本件補正発明については、前記課題1だけでなく、次の課題(以下「課題2」という。)も発明が解決しようとする課題であると認定すべきである。
<課題2>
「可撓性を有する基材が絶縁樹脂フィルムであり、抵抗体がCrを含むひずみゲージにおいて、抵抗体の結晶成長を促進すること。」
ウ 本件補正発明が解決しようとする課題について
前記ア及びイの検討結果をまとめると、本件補正発明が解決しようとする課題は、次のとおり、少なくとも課題1及び課題2の二つがあると認定すべきである。
<本件補正発明が解決しようとする課題>
<課題1>
可撓性を有する基材上に形成された抵抗体を有するひずみゲージにおいて、抵抗体を高抵抗化すること。
<課題2>
可撓性を有する基材が絶縁樹脂フィルムであり、抵抗体がCrを含むひずみゲージにおいて、抵抗体の結晶成長を促進すること。
(4) サポート要件の適合性についての当審の判断
ア 請求項1における基材の材料が樹脂以外も含むことについて
(ア) 本願の特許請求の範囲の請求項1においては、「可撓性を有する基材」と特定されているのみであって、基材の材料の限定はない。
(イ) ここで、例えば、「基材」が、金属やガラスを材料としたものであっても、その厚みを薄くすることにより、「可撓性を有する」ように構成することは可能であるから、本件補正発明の「可撓性を有する基材」には、例えば金属やガラスを材料としたものも含まれる。
(ウ) なお、請求人は、令和4年5月24日に提出された意見書において、次のとおり主張しているから、本件補正発明の「可撓性を有する基材」に金属やガラスを材料としたものも含まれることについては、請求人も認めるところである。
「(1-1)基材について
本願明細書の段落[0013]には『基材10は、例えば、・・・』と記載されており、この記載が基材10の材料を例示するものであることは明らかです。また、基材を段落[0013]に記載された樹脂に限定するような記載は明細書中にありません。
さらに、ひずみゲージの基材として樹脂以外も使用できることは良く知られた技術です。例えば、特開平6-300649号公報には、基材がステンレス鋼ダイヤフラムであることが示されています(請求項6、図1等)。
また、本願では機能層上に抵抗体を形成するので、抵抗体の有する性能は基材の影響を受けないため、樹脂以外の基材も使用できることは自明です。」
イ 請求項1の範囲にまで拡張一般化できないことについて
(ア) 前記アにおいて検討したとおり、本件補正発明の「可撓性を有する基材」には金属やガラスを材料としたものも含まれるところ、前記2において検討したとおり、本件補正発明の課題のうち課題2は、「可撓性を有する基材が絶縁樹脂フィルムであり、抵抗体がCrを含むひずみゲージ」であることを大前提にするものであるから、そもそも、基材の材料が、このような大前提となる材料以外のもの、例えば金属やガラスを材料とするものにまで拡張されることは、当業者は認識できないと考えるのが相当である。
(イ) 前記(ア)の点を措(お)くとしても、以下のa及びbにおいて検討するとおり、本件補正の却下の決定の理由(令和4年9月29日付け拒絶理由通知書の理由1及び理由2)が示すように、請求項1は、課題の解決を検討する以前の問題として、ひずみゲージとして機能するための構成の特定が不足しており、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された範囲にまで拡張ないし一般化できないから、本件補正発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
a 基材が絶縁性の樹脂の場合
(a) 請求人は、審判請求書において次のとおり主張している(前記第3(2)を参照)。
「仮に、抵抗体と機能層の幅と長さが同じであれば、抵抗体と機能層を構成する材料の抵抗率と、抵抗体と機能層の厚さにより、抵抗体と機能層の抵抗値の関係が決まります。ここで、抵抗体の膜厚は、例えば、0.05μm以上0.5μm以下です(請求項1等)。一方、機能層の厚さは、例えば、1nm~100nm程度です(段落[0015]等)。例えば、抵抗体の膜厚を0.05μm(50nm)、機能層の厚さを1nmとすれば、機能層の厚さは抵抗体の膜厚の1/50となります。つまり、仮に抵抗体と機能層を構成する材料の抵抗率が同じであっても、抵抗体と機能層の抵抗値は同じにはなりません。また、抵抗体の膜厚を0.5μm(500nm)、機能層の厚さを1nmとすれば、機能層の厚さは抵抗体の膜厚の1/500となり、抵抗体と機能層を構成する材料の抵抗率が同じであっても、抵抗体と機能層の抵抗値に大きな差を付けることができます。」
(b) 請求人の上記主張について本願の明細書の発明の詳細な説明を参照すると、本願の明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
「【0015】
機能層20は、基材10の上面10aに抵抗体30の下層として形成されている。すなわち、機能層20の平面形状は、図1に示す抵抗体30の平面形状と略同一である。機能層20の厚さは、例えば、1nm~100nm程度とすることができる。」
「【0023】
抵抗体30の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体30の厚さが0.1μm以上であると抵抗体30を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましく、1μm以下であると抵抗体30を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材10からの反りを低減できる点で更に好ましい。
【0024】
抵抗体30の線幅は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~40μm程度とすることができる。
【0025】
特に、抵抗体30を高抵抗化する観点からは、抵抗体30の厚さは0.05μm~0.25μm程度とすることが好ましく、抵抗体30の線幅は5μm~20μm程度とすることが好ましい。」
(c)i 抵抗体の膜厚及び線幅は、請求項1に特定されているものの、機能層の厚さは、請求項1には特定されていないから、本件補正発明の「機能層」は、前記bに摘記した厚さ以外の厚さのものを含むことは明らかである。
ii 他方、請求項1においては、「金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層」、及び、「前記機能層は、前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能を有[する]」との特定があるだけであり、本件補正発明においては、機能層が金属等の導電性の材料から形成されることも含まれている。
iii ここで、抵抗体の厚さに比較して機能層の厚さが同程度又は大きい場合であって、抵抗体の抵抗率に比較して機能層の抵抗率が低い場合には、機能層の方により大きな電流が流れてしまうから、ひずみゲージとしての機能を果たすことができなくなる。
iv そうすると、本件補正発明は、上記iiiの場合も含むものとなっているから、ひずみゲージとしての機能を果たすための構成の特定が不十分であり、前記(b)に摘記した明細書の発明の詳細な説明の開示があるとはいえ、請求項1の範囲にまで拡張一般化できないことは、明らかである。
b 基材が金属の場合
(a) 請求人は、審判請求書において、次のとおり主張している。
「機能層の材料については、段落[0018]、[0019]等に例示されており、目的に応じて適宜選択できることが記載されています。例示された材料の中には、金属のみではなく、金属の酸化物や窒化物も含まれています。「基材」が、例えば、金属、合金、又は、金属の化合物から形成されたものであれば、機能層として絶縁性の高い材料を選択することで、ひずみゲージを実現できます。例示された材料の中から絶縁性の高い材料を選択することは、当業者であれば当然に可能です。また、例示された材料の中から絶縁性の高い材料を選択することに関し、当業者は、程度を超える試行錯誤や、複雑高度な実験等を行う必要はありません。」
(b)i しかしながら、請求項1においては、基材が金属の場合に「機能層として絶縁性の高い材料を選択すること」は特定されておらず、前記a(c)iiにおいて検討したとおり、機能層が導電性の材料から形成されることも含まれており、この場合、基材及び機能層に電流が流れてしまうことは明らかであるから、本件補正発明は、ひずみゲージとしての機能を果たすための構成の特定が不十分である。
ii また、機能層が絶縁材料で形成されていても、機能層の厚みが例えば1nm程度の場合、電流がトンネル伝導することが考えられ、絶縁性が不十分であると考えられ得るから、例えば機能層と基材の間に絶縁層を形成することなどの限定のない本件補正発明は、ひずみゲージとしての機能を果たすための構成の特定が不十分であることに変わりない。
iii したがって、前記a(b)に摘記した明細書の発明の詳細な説明の開示があるとはいえ、請求項1の範囲にまで拡張一般化できないことは、明らかである。
ウ 小括
以上ア及びイに検討したとおり、本件補正発明は、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないから、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の却下の決定についての当審の判断のまとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するところ、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、令和5年5月2日付け補正の却下の決定は、適法なものであって、取り消されるべきものではない。
第5 本願発明について
1 本願発明について
本件補正の却下の決定は適法なものであり、本件補正は却下されたものとして取り扱われることになるから、本願の請求項1~6に係る発明は、令和4年5月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第4の1(1)に摘記した事項により特定されるとおりである。
2 拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明について、サポート要件違反及び実施可能要件違反の理由は、前記第2の2に示したとおりである。
3 当審の判断
本願発明は、本件補正発明の構成A、B、Hを含むから、本願発明が解決しようとする課題については、前記第5の2における議論が同様に当てはまり、前記第5の2(3)に示した少なくとも課題1及び課題2の二つがあると認定すべきである。
そうすると、前記第5の3において説示したサポート要件の適合性についての当審の判断は、本願発明についても同様に当てはまることになる。
したがって、本願発明は、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないから、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
第6 むすび
以上検討のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないから、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-013738