特許拒絶査定不服審判
2023-013336
センサモジュール
- 審判番号
- 2023-013336
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-117747
- 請求日
- 2023年08月08日
- 審決日
- 2024年08月21日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ミネベアミツミ株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 濱野 隆
- 審判官 田辺 正樹
- 分類
- P18 .537-ZB (G01B) / P18 .575-ZB (G01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第36条、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-117747号「センサモジュール」拒絶査定不服審判事件〔令和元年12月26日出願公開、特開2019-219313号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年6月21日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 5月30日付け:拒絶理由通知書
同年 8月 3日 :意見書、手続補正書の提出
同年11月11日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和5年 1月20日 :意見書、手続補正書の提出
同年 4月26日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 5月 9日 :原査定の謄本の送達)
同年 8月 8日 :審判請求書の提出
以下、令和5年1月20日に提出された手続補正書による補正を「本件補正」といい、令和5年4月26日付け補正の却下の決定を「本件補正の却下の決定」という。
第2 本件補正の却下の決定について
請求人は、審判請求書において、本件補正の却下の決定は不当であり取り消されるべきであると主張している。
そこで、本件審判事件に係る争点を明確にするため、本審決においては、まず本件補正の却下の決定の理由の概要を示し、後記第3において、請求人の主張を示すこととする。
1 本件補正の却下の決定の理由の概要
本件補正による特許請求の範囲の請求項1~4についての補正は限定的減縮を目的としているところ、補正後の請求項1~4に係る発明は、以下の2に示す令和4年11月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由1及び理由2により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正による明細書及び特許請求の範囲についての補正は、却下する。
2 令和4年11月11日付け拒絶理由通知書の理由1及び理由2の概要
令和4年11月11日付け拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由における理由1及び理由2の概要は、次のとおりである。
なお、請求項の番号は、本件補正前の請求項の番号である。
理由1(サポート要件)
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由2(実施可能要件)
本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
請求項3~6
(1) <「基材」が[0014]に記載の絶縁樹脂フィルムからなるものの場合>
請求項3に係る発明における「機能層」は「金属、合金、又は、金属の化合物から形成された」ものであり、当初明細書等には[0032]にその例が挙げられている。ここで、[0032]には、例えば「Cu(銅)」、「Ag(銀)」、「Au(金)」、「Al(アルミニウム)」のように、配線などにも使用されるほどの導電率のよいもの、言い換えれば、抵抗率が非常に低いのもの、が含まれている。このことに注意すると、これらが請求項3の「機能層」のように、基材の一方の面に直接形成され、さらにその一方の面に直接、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体が形成された場合、電流は抵抗率の低い方を優先的に流れるのが技術常識であるから、抵抗率が高いCr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体には電流はほとんど流れず、それに直接接して形成されている上述のような抵抗率の非常に低いものからなる層の方を流れることになる。この場合、回路がショートした状態となるから、ひずみの測定を行うことができない。あるいは、抵抗体にはほとんど又は全く電流が流れないから、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体はひずみゲージの感知部としての役割を果たさない、ということもできる。ゆえに、発明を実施できない(理由2)。
そして、このような場合、実施例のように、絶縁性の基材であるポリイミド樹脂からなる基材の一方の面に直接、Ti層が機能層として形成され、当該Ti層の一方の面に直接、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体を有する場合とは電流の流れ方が異なるのであり(少なくともTi層は抵抗率がCrより4倍ほど高いから、上記技術常識から考えて、Ti層の方のみをほとんど電流が流れるということはない)、当該実施例を単純に拡張した発明とはいえない。よって、このようなものにまで発明を拡張することはできない(理由1)。
また、[0032]には、上記のような抵抗率が非常に低いものの他にも、Crより抵抗率が低いか、又は、Crと同程度の抵抗率のものも多く含まれている。そしてもし基材の一方の面に直接これらからなる層が形成され、その一方の面に直接、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された層が形成された場合は、上記技術常識より、電流はこれらその抵抗率に応じた配分で両方の層を流れることになると考えられる。そうすると、実際はこれら2層からなる部分が抵抗体になるから、これら2層からなるものがある程度高いゲージ率を有していなければ、ひずみゲージとして用いることができない。しかしながら、本願の当初明細書等には実施例の1例を除き、機能層の上に、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された層が形成された場合のゲージ率を示したものはない。また、実施例の1例のみから、それとは電流の流れ方が異なるものにまで発明を拡張することはできない(理由1)。
(2) <「基材」が[0014]に記載の絶縁樹脂フィルムからなるものでない場合>
この場合、「基材」も、例えば、金属、合金、又は、金属の化合物から形成されたものであり得る。つまり、「Cu(銅)」や、「Ag(銀)」等のように抵抗率が非常に低いか、Crより抵抗率が低い又は同程度のものであり得る。
よって、本願の請求項3に係る発明には少なくとも以下の場合が含まれていることになる。
ア)基材も、機能層も、ともに抵抗率が非常に低いものからなる場合
イ)基材は抵抗率が非常に低いものからなり、機能層はCrより抵抗率が低いか又は同程度のものからなる場合
ウ)基材はCrより抵抗率が低いか又は同程度のものからなり、機能層は抵抗率が非常に低いものからなる場合
エ)基材も、機能層も、ともにCrより抵抗率が低いか又は同程度のものからなる場合
ア)の場合、上記技術常識から考えて、電流は、ほとんど、基材及び機能層のみを流れ、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体には流れない(回路はショートした状態となる)。よって、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体はひずみゲージの感知部としての役割を果たさない。ゆえに、発明を実施できない(理由2)。また、このようなものを含むものにまで発明を拡張することはできない(理由1)。
イ)の場合、上記技術常識から考えて、電流は、ほとんど、機能層のみを流れ(当審注:「ほとんど、機能層のみを流れ」は、「ほとんど、基材のみを流れ」の明らかな誤記であると認められる。)、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体には流れない(回路はショートした状態となる)。よって、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体はひずみゲージの感知部としての役割を果たさない。ゆえに、発明を実施できない(理由2)。また、このようなものを含むものにまで発明を拡張することはできない(理由1)。
ウ)の場合、上記技術常識から考えて、電流は、ほとんど基材のみを流れ、機能層のみを流れ(当審注:「ほとんど基材のみを流れ、機能層のみを流れ」は、「ほとんど機能層のみを流れ」の明らかな誤記であると認められる。)、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体には流れない(回路はショートした状態となる)。よって、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体はひずみゲージの感知部としての役割を果たさない。ゆえに、発明を実施できない(理由2)。また、このようなものを含むものにまで発明を拡張することはできない(理由1)。
エ)の場合、上記技術常識より、電流は、基材、機能層、及び、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜の3層を流れ、当該3層からなる部分が抵抗体として振る舞うことになると考えられる。よって、当該3層からなる部分がある程度以上のゲージ率を有しなければならない。しかしながら、本願の当初明細書等には、実施例の1例を除き、製造もされていなければ、そのゲージ率を調べられたものもない。そして、当該実施例の1例では少なくとも基材が絶縁性であるのに対し、エ)の場合はそうでなく、ゆえにこれらは電流の流れ方が異なると考えられるから、実施例の場合を単純に拡張して考えることができるものではない(理由1)。
第3 請求人の主張
請求人は、理由1のサポート要件違反及び理由2の実施可能要件違反の拒絶の理由の通知に対して、審判請求書において、次に示す主張をするとともに、令和5年4月26日付け補正の却下の決定は不当であり取り消されるべきであると主張している。
<請求人の主張>
(1) 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、「可撓性を有する基材、前記基材の一方の面に直接、金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層、及び前記機能層の一方の面に直接Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体を備えたひずみゲージと、前記ひずみゲージにひずみを伝達する起歪体と、を有し、前記抵抗体は、α-Crを主成分とし、前記機能層は、前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能を有し、前記ひずみゲージは、前記抵抗体を前記起歪体側に向けて前記起歪体に接着され、前記ひずみゲージは、前記抵抗体と電気的に接続された一対の電極を備え、前記一対の電極の前記起歪体とは反対側の面の一部又は全部は、前記基材に設けられた開口部内に露出しているセンサモジュール。」である。
(2) 理由1(サポート要件)、理由2(実施可能要件)
(A) <「基材」が[0014]に記載の絶縁樹脂フィルムからなるものの場合>について
拒絶理由通知書において、審査官は「電流は抵抗率の低い方を優先的に流れるのが技術常識」と認定しているが、電流は抵抗率の低い方を優先的に流れるのではなく、抵抗の低い方を優先的に流れる、が正しいと思料する。
仮に、抵抗体と機能層の幅と長さが同じであれば、抵抗体と機能層を構成する材料の抵抗率と、抵抗体と機能層の厚さにより、抵抗体と機能層の抵抗値の関係が決まる。ここで、抵抗体の膜厚は、例えば、0.05μm~2μm程度である(段落[0019]等)。一方、機能層の厚さは、例えば、1nm~100nm程度である(段落[0029]等)。例えば、抵抗体の厚さを0.05μm(50nm)、機能層の厚さを1nmとすれば、機能層の厚さは抵抗体の厚さの1/50となる。つまり、仮に抵抗体と機能層を構成する材料の抵抗率が同じであっても、抵抗体と機能層の抵抗値は同じにはならない。また、抵抗体の厚さを2μm(2000nm)、機能層の厚さを1nmとすれば、機能層の厚さは抵抗体の厚さの1/2000となり、抵抗体と機能層を構成する材料の抵抗率が同じであっても、抵抗体と機能層の抵抗値に大きな差を付けることができる。
以上の検討から、抵抗体と機能層の厚さを調整することにより、ひずみゲージとして用いる場合に機能層の影響を抑制し抵抗体の影響を支配的にすることが可能である。よって、機能層上に抵抗体が形成されてもひずみゲージとして機能できる。機能層の材料に応じて機能層の厚さを変えることも可能であるし、機能層の材料がTiに限定される理由はない。
このように、審査官の認定は妥当でないものと思料する。
(B) <「基材」が[0014]に記載の絶縁樹脂フィルムからなるものでない場合>について
機能層の材料については、段落[0032]、[0033]等に例示されており、目的に応じて適宜選択できることが記載されている。例示された材料の中には、金属のみではなく、金属の酸化物や窒化物も含まれている。「基材」が、例えば、金属、合金、又は、金属の化合物から形成されたものであれば、機能層として絶縁性の高い材料を選択することで、ひずみゲージを実現できる。例示された材料の中から絶縁性の高い材料を選択することは、当業者であれば当然に可能である。また、例示された材料の中から絶縁性の高い材料を選択することに関し、当業者は、程度を超える試行錯誤や、複雑高度な実験等を行う必要はない。
このように、審査官の認定は妥当でないものと思料する。
(C) 以上より、本願の請求項1に係る発明は、特許法36条6項1号及び同条4項1号に規定する要件を満足しているものと思料する。
第4 本件補正の却下の決定についての当審の判断について
1 本件補正の内容
本件補正は、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
可撓性を有する基材、及び前記基材上にクロムとニッケルの少なくとも一方を含む材料から形成された抵抗体を備えたひずみゲージと、
前記ひずみゲージにひずみを伝達する起歪体と、を有し、
前記ひずみゲージは、前記抵抗体を前記起歪体側に向けて前記起歪体に接着され、
前記ひずみゲージは、前記抵抗体と電気的に接続された一対の電極を備え、
前記一対の電極の前記起歪体とは反対側の面の一部又は全部は、前記基材に設けられた開口部内に露出しているセンサモジュール。」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
可撓性を有する基材、前記基材の一方の面に直接、金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層、及び前記機能層の一方の面に直接Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体を備えたひずみゲージと、
前記ひずみゲージにひずみを伝達する起歪体と、を有し、
前記抵抗体は、α-Crを主成分とし、
前記機能層は、前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能を有し、
前記ひずみゲージは、前記抵抗体を前記起歪体側に向けて前記起歪体に接着され、
前記ひずみゲージは、前記抵抗体と電気的に接続された一対の電極を備え、
前記一対の電極の前記起歪体とは反対側の面の一部又は全部は、前記基材に設けられた開口部内に露出しているセンサモジュール。」
2 本件補正の目的
本件補正の目的について、請求人は、審判請求書と令和5年1月20日付けの意見書のいずれにおいても説明していないので、本件補正の目的についてまず検討する必要があるところ、次の(1)及び(2)において検討するように、本件補正の目的は、外形上、限定的減縮及び請求項の削除のいずれにも該当すると考えることが可能である。
(1) 限定的減縮の該当性の検討
ア 本件補正のうち請求項1の補正は、次の(ア)及び(イ)に示す、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定する補正事項からなる。
(ア) 本件補正前の請求項1における「ひずみゲージ」が、「前記基材の一方の面に直接、金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層」であって、「前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能を有[する]」「機能層」を備えることを限定すること。
(イ) 本件補正前の請求項1における「抵抗体」が、「α-Crを主成分とし」、「前記機能層の一方の面に直接Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された」ものであるとして、抵抗体の材料を限定すること。
イ そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
ウ したがって、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当すると考えることができる。
(2) 請求項の削除の該当性の検討
ア 本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1及び請求項2を削除するとともに、本件補正前の請求項3を独立請求項の形式に書き改めて新たな請求項1としたものであると考えることもできる。
イ ここで、本件補正前の請求項2及び請求項3の記載は次のとおりである。
「【請求項2】
前記抵抗体は、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成されている請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項3】
前記基材の一方の面に直接、金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層と、
前記機能層の一方の面に直接形成された前記抵抗体と、を有し、
前記抵抗体は、α-Crを主成分とし、
前記機能層は、前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能を有する請求項2に記載のセンサモジュール。」
ウ 前記アのように考えた場合には、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項1号に規定する請求項の削除を目的とするものに該当することになる。
(3) 本件補正の目的についての当審の判断
ア 請求項1についての補正の目的を前記(1)のように限定的減縮と考えるか、前記(2)のように請求項の削除と考えるかによって、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明について、いわゆる独立特許要件が課されるか否かが定まることになるから、本件補正の却下の決定の適法性も、補正の目的の判断の結果に左右されることになる。
イ ここで、前記のとおり、請求人は本件補正の目的を明らかにしていないところ、このような場合であって、かつ、ある請求項についての一の補正が、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものとも、それ以外の事項を目的としたものとも判断される場合には、「特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものであっても、それ以外の事項のいずれを目的としたものであっても、結果として、拒絶査定すべきと判断されるときは、審査官は、その補正が特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものであるとして審査を進める」というのが、審査段階における確立した実務慣行である(「特許・実用新案審査ハンドブック」の「1215 最後の拒絶理由通知後の特許請求の範囲についてする補正が、第17条の2第5項各号に掲げる二以上の事項を目的としたものと判断される場合の取扱い」の2.の説明箇所を参照)。
ウ そして、後記3において詳述するとおり、請求項1についての補正の目的が限定的減縮であるとして検討しても、請求項の削除であるとして検討しても、本件補正後の請求項1について、サポート要件違反の拒絶理由があることに変わりはない。
エ そこで、当審においては、前記イの実務慣行に倣って、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして取り扱った上での判断を示すこととする。
3 独立特許要件違反について
前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するので、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) サポート要件の判断基準と当審の判断の概要
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かについては、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高判平成17年11月11日(平成17年(行ケ)10042号)「偏光フィルムの製造法」大合議判決参照)。
イ サポート要件違反についての当審の判断の概要
上記(1)のサポート要件の判断基準に基づいて検討したところ、以下に詳細に検討するように、本件補正発明の「可撓性を有する基材」について、本件補正発明の課題の前提とする材料以外のもの、例えば金属やガラスを材料とするものにまで拡張することは、当業者は認識できないというべきであり、また、請求項1は、課題の解決を検討する以前の問題としてひずみゲージとして機能するための構成の特定が不足しており、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された範囲にまで拡張ないし一般化できない。
したがって、いずれにしても、本件補正発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
(2) 明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載
本件補正後の明細書の発明の詳細な説明及び図面には、次の記載がある。ここで、下線は合議体が付与したものである。
なお、本件補正により、明細書の段落【0007】の記載が補正されている。
「【発明の名称】センサモジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物に貼り付けて、測定対象物のひずみを検出するひずみゲージが知られている。ひずみゲージは、ひずみを検出する抵抗体を備えており、抵抗体の材料としては、例えば、Cr(クロム)やNi(ニッケル)を含む材料が用いられている。又、抵抗体は、例えば、絶縁樹脂からなる基材上に形成され、保護フィルムにより被覆されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このひずみゲージは、例えば、基材側を接着層を介して起歪体に接着されてセンサモジュールとして用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-74934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のひずみゲージでは、抵抗体を湿気等から保護するために保護フィルムを設けているため、基材に抵抗体を成膜する工程に加え、抵抗体を保護フィルムで被覆する工程が必要になる。そのため、上記のひずみゲージをセンサモジュールに用いると、センサモジュール全体としてのコストが上昇するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、センサモジュールのコスト上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本ひずみゲージは、可撓性を有する基材、前記基材の一方の面に直接、金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層、及び前記機能層の一方の面に直接Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体を備えたひずみゲージと、前記ひずみゲージにひずみを伝達する起歪体と、を有し、前記抵抗体は、α-Crを主成分とし、前記機能層は、前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能を有し、前記ひずみゲージは、前記抵抗体を前記起歪体側に向けて前記起歪体に接着され、前記ひずみゲージは、前記抵抗体と電気的に接続された一対の電極を備え、前記一対の電極の前記起歪体とは反対側の面の一部又は全部は、前記基材に設けられた開口部内に露出している。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、センサモジュールのコスト上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態に係るセンサモジュールを例示する平面図である。
【図2】第1の実施の形態に係るセンサモジュールを例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係るセンサモジュールを例示する平面図である。図2は、第1の実施の形態に係るセンサモジュールを例示する断面図であり、図1のA-A線に沿う断面を示している。図1及び図2を参照するに、センサモジュール5は、ひずみゲージ1と、起歪体110と、接着層120とを有している。ひずみゲージ1は、基材10と、抵抗体30と、端子部41とを有している。」
「【図1】
[図:0001416068000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001416068000002.jpg]
」
「【0012】
なお、本実施の形態では、便宜上、センサモジュール5において、基材10側を上側又は一方の側、起歪体110側を下側又は他方の側とする。又、各部位の基材10側の面を一方の面又は上面、起歪体110側の面を他方の面又は下面とする。但し、センサモジュール5は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、平面視とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0013】
ひずみゲージ1において、基材10は、抵抗体30等を形成するためのベース層となる部材であり、可撓性を有する。基材10は、上面10a及び下面10bを備えている。基材10の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材10の厚さが5μm~200μmであると、接着層120を介して基材10の下面10bに接合される起歪体110の表面からのひずみの伝達性、環境に対する寸法安定性の点で好ましく、10μm以上であると絶縁性の点で更に好ましい。
【0014】
基材10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成することができる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0015】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材10が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材10は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0016】
抵抗体30は、基材10の下面10bに所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体30は、基材10の下面10bに直接形成されてもよいし、基材10の下面10bに他の層を介して形成されてもよい。なお、図1では、便宜上、抵抗体30を梨地模様で示している。
【0017】
抵抗体30は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体30は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Ni-Cu(ニッケル銅)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0018】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、Cr2N等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。
【0019】
抵抗体30の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体30の厚さが0.1μm以上であると抵抗体30を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましく、1μm以下であると抵抗体30を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材10からの反りを低減できる点で更に好ましい。
【0020】
例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上することができる。又、抵抗体30がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50質量%以上を占めることを意味するが、ゲージ特性を向上する観点から、抵抗体30はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0021】
端子部41は、抵抗体30の両端部から延在しており、平面視において、抵抗体30よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部41は、ひずみにより生じる抵抗体30の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極である。
【0022】
例えば、各々の端子部41の側面の一部がひずみゲージ1の外部に露出しており、露出する部分に外部接続用のリード線等が接合される。但し、各々の端子部41の一部がひずみゲージ1の外部に露出していれば、露出する部分は各々の端子部41の側面でなくてもよい。例えば、基材10に貫通孔や切り欠きを設け、各々の端子部41の上面の一部又は全部を露出させてもよい。
【0023】
抵抗体30は、例えば、端子部41の一方からジグザグに折り返しながら延在して他方の端子部41に接続されている。端子部41の上面や側面を、端子部41よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗体30と端子部41とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。
【0024】
センサモジュール5において、基材10の下面10b側は、接着層120を介して、起歪体110の上面110aと接着されている。すなわち、ひずみゲージ1は、抵抗体30を起歪体110側に向けて起歪体110に接着されている。
【0025】
起歪体110は、例えば、Fe、SUS(ステンレス鋼)、Al等の金属やPEEK等の樹脂から形成され、印加される力に応じて変形し、生じたひずみをひずみゲージ1に伝達する物体である。ひずみゲージ1は、起歪体110に生じるひずみを抵抗体30の抵抗値変化として検出することができる。
【0026】
接着層120は、ひずみゲージ1と起歪体110とに挟持されており、抵抗体30を被覆している。接着層120は、ひずみゲージ1と起歪体110とを接着する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、変性ウレタン樹脂等を用いることができる。又、ボンディングシート等の材料を用いても良い。但し、起歪体110が導電体である場合には、接着層120として絶縁性の材料を選択する必要がある。接着層120の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.1μm~50μm程度とすることができる。
【0027】
ひずみゲージ1を製造するためには、まず、基材10を準備し、基材10の下面10bに図1に示す平面形状の抵抗体30及び端子部41を形成する。抵抗体30及び端子部41の材料や厚さは、前述の通りである。抵抗体30と端子部41とは、同一材料により一体に形成することができる。
【0028】
抵抗体30及び端子部41は、例えば、抵抗体30及び端子部41を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィによってパターニングすることで形成できる。抵抗体30及び端子部41は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0029】
ゲージ特性を安定化する観点から、抵抗体30及び端子部41を成膜する前に、下地層として、基材10の下面10bに、例えば、コンベンショナルスパッタ法により膜厚が1nm~100nm程度の機能層を真空成膜することが好ましい。なお、機能層は、機能層の下面全体に抵抗体30及び端子部41を形成後、フォトリソグラフィによって抵抗体30及び端子部41と共に図1に示す平面形状にパターニングされる。
【0030】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗体30の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗体30の酸化を防止する機能や、基材10と抵抗体30との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0031】
基材10を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗体30がCrを含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層が抵抗体30の酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0032】
機能層の材料は、少なくとも上層である抵抗体30の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0033】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si3N4、TiO2、Ta2O5、SiO2等が挙げられる。
【0034】
機能層は、例えば、機能層を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜することができる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材10の下面10bをArでエッチングしながら機能層が成膜されるため、機能層の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0035】
但し、これは、機能層の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層を成膜してもよい。例えば、機能層の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材10の下面10bを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0036】
機能層の材料と抵抗体30及び端子部41の材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、機能層としてTiを用い、抵抗体30及び端子部41としてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜することが可能である。
【0037】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、抵抗体30及び端子部41を成膜することができる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、抵抗体30及び端子部41を成膜してもよい。
【0038】
これらの方法では、Tiからなる機能層がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。なお、機能層がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0039】
なお、抵抗体30がCr混相膜である場合、Tiからなる機能層は、抵抗体30の結晶成長を促進する機能、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗体30の酸化を防止する機能、及び基材10と抵抗体30との密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0040】
このように、抵抗体30の下層に機能層を設けることにより、抵抗体30の結晶成長を促進することが可能となり、安定な結晶相からなる抵抗体30を作製できる。その結果、ひずみゲージ1において、ゲージ特性の安定性を向上することができる。又、機能層を構成する材料が抵抗体30に拡散することにより、ひずみゲージ1において、ゲージ特性を向上することができる。
【0041】
センサモジュール5を製造するには、ひずみゲージ1を作製後、基材10の下面10b及び/又は起歪体110の上面110aに、例えば、接着層120となる上記の何れかの材料を塗布する。そして、基材10の下面10bを起歪体110の上面110aと対向させ、塗布した材料を挟んで起歪体110上にひずみゲージ1を配置する。又は、ボンディングシートを起歪体110と基材10との間に挟み込むようにしても良い。
【0042】
次に、ひずみゲージ1を起歪体110側に押圧しながら所定温度に加熱し、塗布等した材料を硬化させて接着層120を形成する。これにより、接着層120を介して起歪体110の上面110aと基材10の下面10bとが接着され、センサモジュール5が完成する。センサモジュール5は、例えば、荷重、圧力、トルク、加速度等の測定に適用することができる。
【0043】
このように、センサモジュール5では、ひずみゲージ1は、抵抗体30を起歪体110側に向けて起歪体110に接着されている。言い換えれば、抵抗体30の上面側は基材10により被覆されている。抵抗体30の上面側を基材10により被覆することで、抵抗体30に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、抵抗体30の上面側を基材10により被覆することで、抵抗体30を湿気等から保護することができる。
【0044】
ところで、前述のように、従来のセンサモジュールは、基材上に抵抗体及び保護フィルムが形成されたひずみゲージを作製し、ひずみゲージの基材側を接着層を介して起歪体に接着した構造である。この場合、基材に抵抗体を成膜する工程に加え、抵抗体を保護フィルムで被覆する工程が必要になるため、ひずみゲージを用いたセンサモジュールのコストが上昇するという問題があった。
【0045】
これに対して、センサモジュール5では、ひずみゲージ1は、抵抗体30を起歪体110側に向けて起歪体110に接着されており、抵抗体30の上面側は基材10により被覆されている。すなわち、センサモジュール5では、基材10が従来のセンサモジュールにおける保護フィルムの役割を兼ねているため、抵抗体を保護フィルムで被覆する工程が不要になり、製造に必要な時間が短縮される。これにより、センサモジュール5のコスト上昇を抑制することができる。
【0046】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ひずみゲージ、5 センサモジュール、10 基材、10a 上面、10b 下面、30 抵抗体、41 端子部、110 起歪体、110a 上面、120 接着層」
(3) 本件補正発明が解決しようとする課題について
まず、本件補正発明の課題をどのように認定すべきかについて検討する。
ア 【発明が解決しようとする課題】の欄の記載について
(ア) 本件補正発明が解決しようとする課題について、明細書の【発明が解決しようとする課題】の欄には次の記載がある。
「【0005】
しかしながら、上記のひずみゲージでは、抵抗体を湿気等から保護するために保護フィルムを設けているため、基材に抵抗体を成膜する工程に加え、抵抗体を保護フィルムで被覆する工程が必要になる。そのため、上記のひずみゲージをセンサモジュールに用いると、センサモジュール全体としてのコストが上昇するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、センサモジュールのコスト上昇を抑制することを目的とする。」
(イ) 前記(ア)において摘記した記載によれば、【発明が解決しようとする課題】の欄に記載された課題は、次のとおりであると認められる。以下、当該課題を「課題1」という。
<課題1>
「抵抗体を湿気等から保護するための保護フィルムを設けているひずみゲージでは、基材に抵抗体を成膜する工程に加え、抵抗体を保護フィルムで被覆する工程が必要になるため、上記のひずみゲージをセンサモジュールに用いると、センサモジュール全体としてのコストが上昇するという問題があった点に鑑みて、センサモジュールのコスト上昇を抑制すること。」
イ 本件補正発明の構成からみた課題について
前記(1)アにおいて摘記した【発明が解決しようとする課題】の欄は、本件補正発明の構成に忠実に対応するように記載されたものであるとはいえないため、本件補正発明の構成に対応するように本件補正発明の課題を認定する必要があることを、以下詳細に検討する。
(ア) 本件補正発明の構成
請求項1の記載を、便宜上次のように構成A1~Hに分説する。
A1 可撓性を有する基材、
A2 前記基材の一方の面に直接、金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層、
A3 及び前記機能層の一方の面に直接Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成された抵抗体
A4 を備えたひずみゲージと、
B 前記ひずみゲージにひずみを伝達する起歪体と、を有し、
C 前記抵抗体は、α-Crを主成分とし、
D 前記機能層は、前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能を有し、
E 前記ひずみゲージは、前記抵抗体を前記起歪体側に向けて前記起歪体に接着され、
F 前記ひずみゲージは、前記抵抗体と電気的に接続された一対の電極を備え、
G 前記一対の電極の前記起歪体とは反対側の面の一部又は全部は、前記基材に設けられた開口部内に露出している
H センサモジュール。
(イ) 各構成からみた検討
本件補正発明の各構成が、【発明が解決しようとする課題】の欄の記載とどのように関連しているかについて検討する。
a 構成A1、A3~A4、B、E~Gについて
(a) 構成A1、A3~A4、B、Eは、「可撓性を有する基材」及び「前記機能層の一方の面に…形成された抵抗体を備えたひずみゲージ」と、「前記ひずみゲージにひずみを伝達する起歪体」との位置関係について、「前記抵抗体を前記起歪体側に向けて前記起歪体に接着され[る]」としており、最表面側からみて、基材、抵抗体、(接着層)、起歪体という順の配置であることを規定したものである。
ここで、段落【0045】の「これに対して、センサモジュール5では、ひずみゲージ1は、抵抗体30を起歪体110側に向けて起歪体110に接着されており、抵抗体30の上面側は基材10により被覆されている。すなわち、センサモジュール5では、基材10が従来のセンサモジュールにおける保護フィルムの役割を兼ねているため、抵抗体を保護フィルムで被覆する工程が不要になり、製造に必要な時間が短縮される。これにより、センサモジュール5のコスト上昇を抑制することができる。」という記載を踏まえると、最表面側に基材を配置することは、基材を保護フィルム代わりにすることを意味するから、構成A1、A3~A4、B、Eは、センサモジュールのコスト上昇の抑制に関連するものであるといえる。
(b) 構成F、Gは、「ひずみゲージ」が備える「抵抗体と電気的に接続された一対の電極」について、「起歪体とは反対側の面の一部又は全部」が、「基材に設けられた開口部内に露出している」と規定している。
これは、ひずみゲージの電極についても、開口部内の露出部分を除いて、基材を保護フィルム代わりとしていることを意味するから、構成F、Gは、センサモジュールのコスト上昇の抑制に関連するものであるといえる。
(c) 前記(a)及び(b)より、構成A1、A3~A4、B、E~Gは、センサモジュールのコスト上昇を抑制するための構成であるといえるから、前記課題1を解決するための技術手段であると認められる。
b 構成A2、C、Dについて
(a) 構成A2は、「前記基材の一方の面に直接、金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層」を備えることを規定したものである。
構成Cは、「抵抗体」が「α-Crを主成分と[する]」ものであるとしており、「抵抗体」の材料を規定したものである。
また、構成Dは、「機能層」が「前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能」を有するとしており、「機能層」の「抵抗体」に関する機能を規定したものである。
ここで、段落【0038】には、「これらの方法では、Tiからなる機能層がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。」と記載されており、機能層は抵抗体を安定な結晶構造にして、ゲージ特性の向上に貢献するものではあるものの、保護フィルムで被覆する工程が存在することに起因するセンサモジュールのコスト上昇の抑制に関係しているとまでは認められないから、構成A2、C、Dは、センサモジュールのコスト上昇を抑制することと直接関連することではなく、前記課題1を解決するための技術手段ではない。
(b) 構成A2、C、Dと構成A1の関係に関して、明細書の段落【0014】~【0015】、【0030】~【0031】には、次の記載がある。
「【0014】
基材10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成することができる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0015】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材10が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材10は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。」
「【0030】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗体30の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗体30の酸化を防止する機能や、基材10と抵抗体30との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0031】
基材10を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗体30がCrを含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層が抵抗体30の酸化を防止する機能を備えることは有効である。」
(c) 前記(b)に摘記した明細書の記載を踏まえると、基材としては絶縁樹脂フィルムしか開示されておらず、明細書の開示に接した当業者は、「基材が絶縁樹脂フィルムであることを前提として、抵抗体の結晶成長を促進すること」を解決しようとしたものであると認められる。
(d) したがって、本件補正発明については、前記課題1だけでなく、次の課題(以下「課題2」という。)も発明が解決しようとする課題であると認定すべきである。
<課題2>
「可撓性を有する基材が絶縁樹脂フィルムであり、抵抗体がCrを含むひずみゲージにおいて、抵抗体の結晶成長を促進すること。」
ウ 本件補正発明が解決しようとする課題について
前記ア及びイの検討結果をまとめると、本件補正発明が解決しようとする課題は、次のとおり、少なくとも課題1及び課題2の二つがあると認定すべきである。
<本件補正発明が解決しようとする課題>
<課題1>
抵抗体を湿気等から保護するための保護フィルムを設けているひずみゲージでは、基材に抵抗体を成膜する工程に加え、抵抗体を保護フィルムで被覆する工程が必要になるため、上記のひずみゲージをセンサモジュールに用いると、センサモジュール全体としてのコストが上昇するという問題があった点に鑑みて、センサモジュールのコスト上昇を抑制すること。
<課題2>
可撓性を有する基材が絶縁樹脂フィルムであり、抵抗体がCrを含むひずみゲージにおいて、抵抗体の結晶成長を促進すること。
(4) サポート要件の適合性についての当審の判断
ア 請求項1における基材の材料が樹脂以外も含むことについて
(ア) 本願の特許請求の範囲の請求項1においては、「可撓性を有する基材」と特定されているのみであって、基材の材料の限定はない。
(イ) ここで、例えば、「基材」が、金属やガラスを材料としたものであっても、その厚みを薄くすることにより、「可撓性を有する」ように構成することは可能であるから、本件補正発明の「可撓性を有する基材」には、例えば金属やガラスを材料としたものも含まれる。
(ウ) なお、請求人は、令和4年8月3日に提出された意見書において、次のとおり主張しているから、本件補正発明の「可撓性を有する基材」に金属やガラスを材料としたものも含まれることについては、請求人も認めるところである。
「(1-1)基材について
本願明細書の段落[0014]には『基材10は、例えば、・・・』と記載されており、この記載が基材10の材料を例示するものであることは明らかです。また、基材を段落[0014]に記載された樹脂に限定するような記載は明細書中にありません。
さらに、ひずみゲージの基材として樹脂以外も使用できることは良く知られた技術です。例えば、特開平6-300649号公報には、基材がステンレス鋼ダイヤフラムであることが示されています(請求項6、図1等)。
また、本願では機能層上に抵抗体を形成するので、抵抗体の有する性能は基材の影響を受けないため、樹脂以外の基材も使用できることは自明です。」
イ 請求項1の範囲にまで拡張一般化できないことについて
(ア) 前記アにおいて検討したとおり、本件補正発明の「可撓性を有する基材」には金属やガラスを材料としたものも含まれるところ、前記2において検討したとおり、本件補正発明の課題のうち課題2は、「可撓性を有する基材が絶縁樹脂フィルムであり、抵抗体がCrを含むひずみゲージ」であることを大前提にするものであるから、そもそも、基材の材料が、このような大前提となる材料以外のもの、例えば金属やガラスを材料とするものにまで拡張されることは、当業者は認識できないと考えるのが相当である。
(イ) 前記(ア)の点を措(お)くとしても、以下のa及びbにおいて検討するとおり、本件補正の却下の決定の理由(令和4年11月11日付け拒絶理由通知書の理由1及び理由2)が示すように、請求項1は、課題の解決を検討する以前の問題として、ひずみゲージとして機能するための構成の特定が不足しており、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された範囲にまで拡張ないし一般化できないから、本件補正発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
a 基材が絶縁性の樹脂の場合
(a) 請求人は、審判請求書において次のとおり主張している(前記第3(2)を参照)。
「仮に、抵抗体と機能層の幅と長さが同じであれば、抵抗体と機能層を構成する材料の抵抗率と、抵抗体と機能層の厚さにより、抵抗体と機能層の抵抗値の関係が決まります。ここで、抵抗体の厚さは、例えば、0.05μm~2μm程度です(段落[0019]等)。一方、機能層の厚さは、例えば、1nm~100nm程度です(段落[0029]等)。例えば、抵抗体の厚さを0.05μm(50nm)、機能層の厚さを1nmとすれば、機能層の厚さは抵抗体の厚さの1/50となります。つまり、仮に抵抗体と機能層を構成する材料の抵抗率が同じであっても、抵抗体と機能層の抵抗値は同じにはなりません。また、抵抗体の厚さを2μm(2000nm)、機能層の厚さを1nmとすれば、機能層の厚さは抵抗体の厚さの1/2000となり、抵抗体と機能層を構成する材料の抵抗率が同じであっても、抵抗体と機能層の抵抗値に大きな差を付けることができます。」
(b) 請求人の上記主張について本願の明細書の発明の詳細な説明を参照すると、本願の明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
「【0019】
抵抗体30の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体30の厚さが0.1μm以上であると抵抗体30を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましく、1μm以下であると抵抗体30を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材10からの反りを低減できる点で更に好ましい。」
「【0029】
ゲージ特性を安定化する観点から、抵抗体30及び端子部41を成膜する前に、下地層として、基材10の下面10bに、例えば、コンベンショナルスパッタ法により膜厚が1nm~100nm程度の機能層を真空成膜することが好ましい。」
(c)i 抵抗体及び機能層の厚さは、請求項1には特定されていないから、本件補正発明の「抵抗体」及び「機能層」は、前記(b)に摘記した厚さ以外の厚さのものを含むことは明らかである。
ii 他方、請求項1においては、「金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層」、及び、「前記機能層は、前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を成膜する機能を有[する]」との特定があるだけであり、本件補正発明においては、機能層が金属等の導電性の材料から形成されることも含まれている。
iii ここで、抵抗体の厚さに比較して機能層の厚さが同程度又は大きい場合であって、抵抗体の抵抗率に比較して機能層の抵抗率が低い場合には、機能層の方により大きな電流が流れてしまうから、ひずみゲージとしての機能を果たすことができなくなる。
iv そうすると、本件補正発明は、上記iiiの場合も含むものとなっているから、ひずみゲージとしての機能を果たすための構成の特定が不十分であり、前記(b)に摘記した明細書の発明の詳細な説明の開示があるとはいえ、請求項1の範囲にまで拡張一般化できないことは、明らかである。
b 基材が金属の場合
(a) 請求人は、審判請求書において、次のとおり主張している。
「機能層の材料については、段落[0032]、[0033]等に例示されており、目的に応じて適宜選択できることが記載されています。例示された材料の中には、金属のみではなく、金属の酸化物や窒化物も含まれています。「基材」が、例えば、金属、合金、又は、金属の化合物から形成されたものであれば、機能層として絶縁性の高い材料を選択することで、ひずみゲージを実現できます。例示された材料の中から絶縁性の高い材料を選択することは、当業者であれば当然に可能です。また、例示された材料の中から絶縁性の高い材料を選択することに関し、当業者は、程度を超える試行錯誤や、複雑高度な実験等を行う必要はありません。」
(b)i しかしながら、請求項1においては、基材が金属の場合に「機能層として絶縁性の高い材料を選択すること」は特定されておらず、前記a(c)iiにおいて検討したとおり、機能層が導電性の材料から形成されることも含まれており、この場合、基材及び機能層に電流が流れてしまうことは明らかであるから、本件補正発明は、ひずみゲージとしての機能を果たすための構成の特定が不十分である。
ii また、機能層が絶縁材料で形成されていても、機能層の厚みが例えば1nm程度の場合、電流がトンネル伝導することが考えられ、絶縁性が不十分であると考えられ得るから、例えば機能層と基材の間に絶縁層を形成することなどの限定のない本件補正発明は、ひずみゲージとしての機能を果たすための構成の特定が不十分であることに変わりない。
iii したがって、前記a(b)に摘記した明細書の発明の詳細な説明の開示があるとはいえ、請求項1の範囲にまで拡張一般化できないことは、明らかである。
ウ 小括
以上ア及びイに検討したとおり、本件補正発明は、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないから、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の却下の決定についての当審の判断のまとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するものとして扱うべきところ、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、令和5年4月26日付け補正の却下の決定は、適法なものであって、取り消されるべきものではない。
第5 本願発明について
1 本願発明について
本件補正の却下の決定は適法なものであり、本件補正は却下されたものとして取り扱われることになるから、本願の請求項1~6に係る発明は、令和4年8月3日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものである。
ここで、前記第4の2(2)において検討したとおり、請求項3は、他の請求項の記載を引用して記載しているという形式的な点を除き本件補正後の請求項1と同じであるから、請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正発明と同一である。
2 拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についてのサポート要件違反の理由は、前記第2の2に示したとおりである。
3 当審の判断
本願発明は、本件補正発明と同一であるから、本件補正発明についてのサポート要件違反に係る前記第4の3における議論がそのまま当てはまる。
そうすると、本願発明は、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないから、本願の特許請求の範囲の請求項3の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
第6 むすび
以上検討のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項3の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないから、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-013336