特許拒絶査定不服審判
2023-010256
荷重センサ素子及び荷重センサ素子の製造方法
- 審判番号
- 2023-010256
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-155589
- 請求日
- 2023年06月21日
- 審決日
- 2024年08月15日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】KOA株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人後藤特許事務所
- 【請求人】NTN株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人後藤特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 中塚 直樹
- 審判官 素川 慎司
- 審判官 小島 寛史
- 分類
- P18 .121-Z (G01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-155589「荷重センサ素子及び荷重センサ素子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月 1日出願公開、特開2021- 32805〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)8月28日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年12月20日付け:拒絶理由通知書
令和5年 2月20日 :意見書、手続補正書の提出
同年 3月13日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月22日 :原査定の謄本の送達)
同年 5月23日 :面接記録の作成(同日面接)
同年 6月21日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 7月19日付け:前置報告書
同年11月 6日 :上申書の提出
第2 令和5年6月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年6月21日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和5年6月21日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載が、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
荷重を検出する荷重センサ素子であって、
セラミック材料又は表面に絶縁層を有する金属材料からなる基板と、
荷重を受ける受圧面を有し、前記基板の片面の一部を被覆するように設けられる無機層と、
前記無機層が受ける荷重に応じて抵抗値が変化する抵抗体であって、前記基板と前記無機層との間に挟まれる本体部と、前記無機層により被覆されていない前記基板の露出部に載置される両端部と、を有する薄膜抵抗体と、
前記無機層から離間して前記薄膜抵抗体の両端部と電気的に接続され、前記基板の一方の側に設けられる一対の電極と、を備え、
前記受圧面は、前記無機層の前記基板に対向する面の背面である、
荷重センサ素子。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
荷重を検出する荷重センサ素子であって、
セラミック基板からなり、荷重を受ける受圧面を有する受圧部としての無機層と、
セラミック材料又は表面に絶縁層を有する金属材料からなる基板であって、平面視において前記受圧部により被覆される被覆部と、平面視において前記受圧部から露出する非受圧部としての露出部と、を有する基板と、
前記受圧部が受ける荷重に応じて抵抗値が変化する抵抗体であって、前記被覆部と前記受圧部との間に挟まれる本体部と、前記露出部に載置される両端部と、を有する薄膜抵抗体と、
前記薄膜抵抗体の両端部と電気的に接続されるように前記薄膜抵抗体の両端部に載置される一対の電極と、を備え、
前記受圧面は、前記受圧部の前記基板に対向する面の背面であり、
平面視において、一対の前記電極は、前記受圧部から離間して前記薄膜抵抗体の両端部を介して前記露出部上に設けられる、
荷重センサ素子。」
(3) 請求項1についての補正内容
本件補正のうち請求項1についてする補正は、次のア~カに示す補正事項1から補正事項6までの補正事項からなる。
ア 補正事項1
本件補正前の「無機層」が、「セラミック基板からな[る]」点を限定する補正。
イ 補正事項2
本件補正前の「無機層」が、「受圧部」である点を限定する補正。
ウ 補正事項3
本件補正前の「無機層」が、「基板の片面の一部を被覆するように設けられる」点に関して、前記補正事項2も踏まえて、「基板」が、「平面視において前記受圧部により被覆される被覆部と、平面視において前記受圧部から露出する非受圧部としての露出部と、を有する」点を特定する記載に書き改める補正。
エ 補正事項4
「薄膜抵抗体」に関する、本件補正前の「前記基板と前記無機層との間に挟まれる本体部と、前記無機層により被覆されていない前記基板の露出部に載置される両端部と、を有する」という記載を、前記補正事項2及び3を踏まえて、「前記被覆部と前記受圧部との間に挟まれる本体部と、前記露出部に載置される両端部と、を有する」という記載に書き改める補正。
オ 補正事項5
「一対の電極」に関して、本件補正前は、「前記無機層から離間して前記薄膜抵抗体の両端部と電気的に接続され、前記基板の一方の側に設けられる」点が特定されていたところ、前記補正事項2も踏まえて、「前記薄膜抵抗体の両端部と電気的に接続されるように前記薄膜抵抗体の両端部に載置される」点及び「平面視において…(中略)…前記受圧部から離間して前記薄膜抵抗体の両端部を介して前記露出部上に設けられる」点を特定するように変更する補正。
カ 補正事項6
本件補正前の「受圧面は、前記無機層の前記基板に対向する面の背面である」という記載を、前記補正事項2を踏まえて、「受圧面は、前記受圧部の前記基板に対向する面の背面であ[る]」という記載に書き改める補正。
2 本件補正の適否
(1) 特許請求の範囲の減縮に該当しないことについて
ア 本件補正前の請求項1では、「一対の電極」に関して、「前記無機層から離間して前記薄膜抵抗体の両端部と電気的に接続され、前記基板の一方の側に設けられる」点が特定されている。
イ ここで、前記「基板の一方の側」という用語の解釈について検討する。
(ア) 本願明細書の【0038】には、「すなわち、基板2の表面エリアは、無機層3と露出部22とにより二分割され、電極5a,5bは、いずれも露出部22とした基板2の一方の側に集約して設けられる。電極5a,5bは、薄膜抵抗体4を形成した同一の面である基板2の一方の面に形成される。このため、加圧部材が無機層3に対して荷重を加えるときに、電極5との接触を回避することができ、電極5a,5bと加圧部材との接触による荷重センサ素子1の短絡や破損が回避される。」と記載されている。
(イ) そうすると、前記「基板の一方の側」とは、基板の厚み方向における一方の側を意味するのではなく、基板の長手方向又は幅方向における一方の側を意味する用語であると解される。
ウ これに対し、本件補正後の請求項1では、「一対の電極」に関して、「薄膜抵抗体の両端部に載置される」点及び「平面視において…(中略)…前記受圧部から離間して前記薄膜抵抗体の両端部を介して前記露出部上に設けられる」点が特定されている。
エ ここで、本件補正後の請求項1では、「薄膜抵抗体の両端部」に関して、「平面視において前記受圧部により被覆される被覆部と、平面視において前記受圧部から露出する非受圧部としての露出部と、を有する基板」における「前記露出部に載置される」ことは特定されているものの、当該「露出部」の配置に関しては特定がないところから、「薄膜抵抗体の両端部」を基板の一方の側に集約させる点が特定されているとは認められない。つまり、本件補正後の請求項1は、「薄膜抵抗体の両端部」を基板の一方の側に設ける構成のみならず、例えば基板の一方の側と他方の側に各々設けてなる構成も包含していると認められる。
オ したがって、本件補正後の請求項1は、「一対の電極」が「基板の一方の側に設けられる」構成のみならず、基板の一方の側と他方の側に各々設けられてなる構成等も包含するものに拡張されていると認められるから、本件補正による請求項1についての補正は、特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの)に該当しない。
(2) その他の補正の目的要件にも該当しないことについて
また、本件補正による請求項1についての補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものではないことは明らかである。
(3) 目的外補正の違法性についてのまとめ
以上検討のとおりであるから、本件補正による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
3 独立特許要件の判断
前記2で説示したとおり、本件補正は目的外補正であることを理由として却下すべきものであるが、仮に本件補正が特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか否かについて、以下念のため検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
また、参考図として、本願の【図1】を掲載する。
<参考図>
[図:0001415995000001.jpg]
イ 課題・作用効果に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、本件補正発明の技術上の意義の概略を理解するために、発明が解決しようとする課題及び作用効果に関連する記載等を抜粋すると、次の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の荷重センサ素子では、感圧部は、一定の厚みを有し、セラミック材料と圧力抵抗材料とを混合して得られた混合粉末をプレスして得られた成形体を焼結してなる焼結体であるので、この感圧部において、圧力抵抗材料を均一にセラミック材料に分散させることが困難である。このため、圧力抵抗材料の分散のばらつきによる荷重センサ素子の検出精度が低下してしまうおそれがあるという問題点があった。
【0005】
また、特許文献1に記載の荷重センサ素子では、一対の電極は、感圧部の両側面に設けられるので、荷重センサ素子に荷重を加える加圧部材と接触しやすくなる。そして、加圧部材が金属材料である場合、電極と金属材料の加圧部材との接触による荷重センサ素子の短絡が生じやすくなるという問題点もあった。
【0006】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、短絡を回避して荷重を安定かつ精度よく検出することができる荷重センサ素子及び荷重センサ素子の製造方法を提供することを目的とする。」
「【発明の効果】
【0009】
これらによれば、短絡を回避して荷重を安定かつ精度よく検出することができる。」
「【0059】
以上述べたように、本実施形態に係る荷重センサ素子1は、荷重を検出するものであり、セラミック材料からなる基板2と、荷重を受ける受圧面31を有し、基板2の上面の被覆部21を被覆するように設けられる無機層3と、無機層3が受ける荷重に応じて抵抗値が変化する抵抗体であって、基板2と無機層3との間に挟まれる本体部41と、無機層3により被覆されていない基板2の露出部22に載置される両端部42(42a,42b)と、を有する薄膜抵抗体4と、無機層3から離間して薄膜抵抗体4の両端部42(42a,42b)と電気的に接続され、基板2の一方の側に設けられる一対の電極5と、を備える。
【0060】
これによれば、基板2は、セラミック材料からなるので、大きな荷重が荷重センサ素子1に加えられた場合であっても、基板2は、樹脂材料基板のように沈み込んだり撓んだり変形しない。その結果、基板2の変形による検出精度の低下が抑制され、荷重センサ素子1は、このような大きな荷重を精度よく検出することができる。
【0061】
さらに、無機層3は、基板2の上面の全域ではなく、基板2の上面の被覆部21を被覆するように設けられるので、ユーザは、基板2と無機層3とを容易に見分けることができ、無機層3の受圧面31を加圧部材に向けるように荷重センサ素子1を組み込むことができる。
【0062】
無機層3が受ける荷重に応じて抵抗値が変化する抵抗体としては、蒸着、スパッタリング等の真空処理により形成される均一の薄膜抵抗体4が用いられるので、抵抗体の分散のばらつきが抑制される。これにより、荷重センサ素子1は、荷重を精度よく検出することができる。
【0063】
薄膜抵抗体4は、基板2と無機層3との間に挟まれるように基板2の片面の被覆部21に載置される本体部41と、無機層3により被覆されていない基板2の片面の露出部22に載置される両端部42(42a,42b)と、を有する。すなわち、無機層3は、薄膜抵抗体4の両端部42(42a,42b)が設けられた基板2の露出部22を被覆せずに、薄膜抵抗体4の本体部41が設けられた基板2の被覆部21のみを被覆する。これにより、電極等を被覆する受圧部を備える荷重センサ素子に比べ、荷重センサ素子1は、不要な信号を拾うことなく、荷重を精度よく検出することができる。
【0064】
一対の電極5は、無機層3から離間して薄膜抵抗体4の両端部42(42a,42b)と電気的に接続されるように設けられるので、電極5(5a,5b)と無機層3に荷重を加える加圧部材との接触を確実に回避し、電極5(5a,5b)と加圧部材との接触による荷重センサ素子1の短絡が回避される。
【0065】
このように、本実施形態に係る荷重センサ素子1によれば、短絡を回避して荷重を安定かつ精度よく検出することができる。」
(2) 引用発明及び周知技術の認定
ア 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された、本願の出願前に発行された特開昭62-220822号公報には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(ウ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
a 第2頁左下欄第16行目~右下欄第3行目
「イ.産業上の利用分野
本発明は、少なくても2つの力導入プレートの間に、圧力に応じて比電導率の変化する少なくても1つの電気導体を設け、該力導入プレートによって力を該導体の向きに対し実質的に垂直な方向に伝達する如く構成されるピエゾ抵抗型力測定要素に関する。本発明はまた、そのような力測定要素の、時間に対する、加えられる力の変化または最高力を決定するための使用方法に関する。」
b 第4頁左上欄第17行目~左下欄第3行目、第1図
「適当な抵抗材料は典型的にはマンガニン(12%Mn、2%Ni、86%Cu)、ゼラニン(12%Mn、2%Ni、0.5%Ge、85.5%Cu)またはクロムニッケル合金である。これらは全て、抵抗の非常に低い温度係数と実質的なピエゾ抵抗係数を有する。それら抵抗材料はまた、フオイルからエツチング、スパツタリング、また蒸着された層として使用されよう。
第1図は2つの力導入プレート1とこれらの間で塑性変形された導体2を示す。第1図はまた、本発明に従って、導入される力(K)によつて作られた力線が機械的分岐なしに導体2を通り、これによつて測定範囲が非常に拡大され、また力導入地点の独立と力の分配が得られることを示している。これは、例えばセラミツクで構成される機械的に剛性の力導入プレートを使用することによって達せられる。前記ドイツ公報第1 932899号に記載のような弾性の力導入プレートでは力分岐があり、この結果使用測定範囲が狭くなり、また不都合なヒステリシス効果と零変移が生じる。第1図に示されるように、導体2として使用される抵抗ワイヤを好適には直径の10%から40%平らにすることにより、そのワイヤは力導入プレート1の細孔内に係留され、これにより、一次元加圧力による導体2の荷重が本質的に流体静力学的荷重に変換される。これによつて、使用できる測定範囲が非常に拡げられる。」
「
[図:0001415995000002.jpg]
」
c 第5頁右上欄第16行目~左下欄第1行目、第7a図、第7b図
「第7a図と第7b図は本発明のまた別の実施例を示す。この実施例においては、ワイヤの代りに、蒸着、スパツタリング、またはエツチングによつて形成される電気導体層3が用いられる。これも溝7内に係留してもよい。」
「
[図:0001415995000003.jpg]
」
d 特許請求の範囲
「(1)少なくても2つの力導入プレートの間に、圧力に応じ変化する比電導率を有する少なくても1つの電気導体を設置し、それら力導入プレートによって力を該電気導体に、これの主指向に対し実質的に直角方向に伝達するごとく構成されたピエゾ抵抗型力測定要素において、該電気導体(2)が両該力導入プレート(1)の間で予荷重力により予塑性変形を受け、そして測定すべき力の作用線が本質的に機械的分岐無しに入っていくことを特徴とする力測定要素。
…(中略)…
(18)特許請求の範囲前記任意1項のピエゾ抵抗型力測定要素の、電気導体の不可逆変形を行わせる最高力を測定するための使用方法において、力が加えられている間該力測定要素を測定器械に接続して、またはしないで、該最高力が作用する前及び後の任意の時に該電気導体(2)の抵抗を測定し、そして該不可逆変形による抵抗の変化から該最高力を決定することを特徴とする方法。」
(イ) 引用文献1の記載からの認定事項
a 認定事項A
前記(ア)bに摘記した「力導入プレート1」に関する以下の事項(以下「認定事項A」という。)は、発明の詳細な説明中に、ほかの力導入プレートの構成に関する記載が無いことから、第7a図及び第7b図において同一の符号「1」で示された部材においても共通する事項であることは明らかである。
[認定事項A]
「力導入プレート1は、セラミツクで構成されること。」
b 認定事項B
前記aを踏まえ、前記(ア)cに摘記した記載事項並びに第7a図及び第7b図を参照すると、第7a図及び第7b図の「力測定要素」の実施例について、次の事項(以下「認定事項B」という。)が読み取れる。
[認定事項B]
「2つの力導入プレート1は、蒸着やスパツタリングによって形成された電気導体層3を上面に有する力導入プレート1(以下「力導入プレートA」という。)と、電気導体層3を力導入プレートAとの間で挟むように配置された力導入プレート1(以下「力導入プレートB」という。)からなること。」
c 認定事項C
前記a、bを踏まえ、前記(ア)bに摘記した第1図を参照すると、以下の事項(以下「認定事項C」という。)が読み取れる。
[認定事項C]
「力導入プレートBは、導入される力(K)を受ける面を有しており、当該面は、力導入プレートAと対向する面の背面であること。」
(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)に摘記した引用文献1の記載事項及び前記(イ)の認定事項から、引用文献1には、第7a図及び第7b図に示された実施例に係る発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「2つの力導入プレート1の間に、圧力に応じて比電導率の変化する少なくても1つの電気導体を設け、該力導入プレート1によって力を該導体の向きに対し実質的に垂直な方向に伝達する如く構成されるピエゾ抵抗型力測定要素であって、(第2頁左下欄第16行目~右下欄第1行目、第4頁左上欄第17行目~左下欄第3行、請求項1)
ピエゾ抵抗型力測定要素は、
電気導体の抵抗を測定するものであって、(請求項18)
力導入プレート1は、セラミツクで構成され、(認定事項A)
2つの力導入プレート1は、蒸着やスパツタリングによって形成された電気導体層3を上面に有する力導入プレートAと、電気導体層3を力導入プレートAとの間で挟むように配置された力導入プレートBからなり、(認定事項B)
力導入プレートBは、導入される力(K)を受ける面を有しており、当該面は、力導入プレートAと対向する面の背面である、(認定事項C)
ピエゾ抵抗型力測定要素。」
イ 周知技術の認定
(ア) 引用文献2、5~6に記載された事項
a 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である国際公開第2019/151345号(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。(なお、下線は合議体が付したもので、以下同様である。)
(a) [0011]~[0013]
「[0011]
図1、図2、図3A~図3Cを参照するに、ひずみゲージ1は、同一の基材10上に形成された、ひずみ検出部1Sと、湿度検出部1Hと、温度検出部1Tとを備えている。ひずみ検出部1Sと、湿度検出部1Hと、温度検出部1Tとは、互いに独立して配置されており、電気的に接続されていない。
[0012]
なお、図1及び図2では、紙面上側から湿度検出部1H、ひずみ検出部1S、温度検出部1Tを配置しているが、これには限定されず、湿度検出部1H、ひずみ検出部1S、温度検出部1Tは任意の配置とすることができる。
[0013]
ひずみ検出部1Sは、基材10上に形成された、抵抗体301と、電極40Aと、金属層431とを有している。」
(b) [0023]~[0025]
「[0023]
電極40Aは、抵抗体301の両端部から延在しており、平面視において、抵抗体301よりも拡幅して略矩形状に形成されている。電極40Aは、ひずみにより生じる抵抗体301の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のリード線等が接合される。抵抗体301は、例えば、電極40Aの一方からジグザグに折り返しながら延在して他方の電極40Aに電気的に接続されている。
[0024]
電極40Aは、複数の金属層が積層された積層構造とすることができる。具体的には、電極40Aは、抵抗体301の両端部から延在する端子部411と、端子部411の上面に形成された金属層421とを有している。なお、抵抗体301と端子部411とは便宜上別符号としているが、同一工程において同一材料により一体に形成することができる。
[0025]
金属層421の材料としては、端子部411よりもはんだ濡れ性の良好な材料を選択することができる。例えば、抵抗体301がCr混相膜である場合、金属層421の材料として、Cu、Ni、Al、Ag、Au、Pt等、又は、これら何れかの金属の合金、これら何れかの金属の化合物、或いは、これら何れかの金属、合金、化合物を適宜積層した積層膜が挙げられる。金属層421の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.01μm~30μm程度とすることができる。はんだ食われを考慮すると、金属層421の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上である。なお、金属層421を電解めっきにより形成する場合には、電解めっきの容易性から、金属層421の厚さは30μm以下であることが好ましい。」
(c) [0032]~[0033]
「[0032]
抵抗体301及び金属層431を被覆し電極40Aを露出するように基材10の上面10aにカバー層601(絶縁樹脂層)を設けても構わない。カバー層601を設けることで、抵抗体301及び金属層431に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層601を設けることで、抵抗体301及び金属層431を湿気等から保護することができる。なお、カバー層601は、電極40Aを除くより広い領域を覆うように設けてもよい。
[0033]
カバー層601は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成することができる。カバー層601は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層601の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。」
(d) [図1]
「
[図:0001415995000004.jpg]
」
(e) [図3B]
「
[図:0001415995000005.jpg]
」
b 引用文献5に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された特開2016-205992号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
(a) 【0034】~【0043】
「【0034】
図1,2に示されるように、半導体基板2は、主面2Sにp型不純物が導入された配線22,24,26,28を有する。配線22,24,26,28の不純物濃度は、約1×1018~1×1021cm-3である。配線22,24,26,28は、メサ型ゲージ12,14,16,18のゲージ部12a,14a,16a,18aと同一の工程で形成される。
【0035】
メサ型ゲージ12,14,16,18は、検知部10内にフルブリッジ回路を構成する。電源配線28は、第4接続領域48の狭窄部48aに接続している。基準配線24は、第2接続領域44の狭窄部44aに接続している。第1抵抗体112と第2抵抗体114は、電源配線28と基準配線24の間に、第1接続領域42の狭窄部42aを介して直列に接続されている。第4抵抗体118と第3抵抗体116は、電源配線28と基準配線24の間に、第3接続領域46の狭窄部46aを介して直列に接続されている。第1抵抗体112と第2抵抗体114の組と第4抵抗体118と第3抵抗体116の組は、電源配線28と基準配線24の間に並列に接続されている。
【0036】
第1出力配線26は、第4抵抗体118と第3抵抗体116の間の第3接続領域46の狭窄部46aに接続している。第2出力配線22は、第1抵抗体112と第2抵抗体114の間の第1接続領域42の狭窄部42aに接続している。
【0037】
基準配線24は、基準電極34に電気的に接続する。第1出力配線26は、第1出力電極36に電気的に接続する。電源配線28は、電源電極38に電気的に接続する。第2出力配線22は、第2出力電極32に電気的に接続する。これらの電極32,34,36,38は、半導体基板2の主面2S上に設けられており、力伝達ブロック4で覆われる範囲外に配置されている。基準配線24及び電源配線28は幅広に構成されており、それらの電気抵抗値は、抵抗体112,114,116,118の電気抵抗値に対して無視できるほどに小さい。第1出力配線26の電気抵抗値と第2出力配線22の電気抵抗値は、等しくなるように構成されている。
【0038】
図1,3,4に示されるように、力伝達ブロック4は、直方体形状を有しており、シリコン層4aと酸化シリコン層4bを有する。半導体基板2と力伝達ブロック4は、常温個相接合技術を利用して接合される。具体的には、アルゴンイオンを用いて半導体基板2の主面2S及び力伝達ブロック4の酸化シリコン層4bの表面を活性化させた後に、超高真空中で半導体基板2の主面2Sと力伝達ブロック4の酸化シリコン層4bの表面を接触させ、両者を接合させる。
【0039】
図3,4,5に示されるように、力伝達ブロック4の酸化シリコン層4bの一部が除去されており、力伝達ブロック4の半導体基板2と接合する側の面に溝4cが形成されている。溝4cが形成されていることにより、力伝達ブロック4の酸化シリコン層4bは、封止部分40aと押圧部分40bに区画されている。また、このような溝4cが形成されていることにより、半導体基板2と力伝達ブロック4の間には、外部から隔てられた封止空間6が構成される。
【0040】
力伝達ブロック4の封止部分40aは、メサ型ゲージ12,14,16,18の周囲を一巡するように、半導体基板2の主面2Sに接合する。半導体基板2のうちの力伝達ブロック4の封止部分40aが接合する部分を封止部20という。力伝達ブロック4の封止部分40aが矩形状に構成されているので、半導体基板2の封止部20は、高感度メサ型ゲージ14,18の長手方向と平行な部分と低感度メサ型ゲージ12,16の長手方向と平行な部分で構成される。半導体基板2の主面2Sにおける封止部20の内側の領域は正方形形状となっている。半導体基板2の封止部20と力伝達ブロック4の封止部分40aは、気密に接合する。
【0041】
図1,2に示されるように、高感度メサ型ゲージ14,18は、半導体基板2の<100>方向において封止空間6を3等分した位置(即ち、封止部20の内側の領域を3等分した位置)に配置されている。低感度メサ型ゲージ12,16は、半導体基板2の<110>方向において封止空間6を3等分した位置(即ち、封止部20の内側の領域を3等分した位置)に配置されている。
【0042】
図3,4に示されるように、力伝達ブロック4の押圧部分40bは、メサ型ゲージ12,14,16,18の頂面に接合する一方で、固定抵抗体13,15,17,19の頂面には接合していない。このため、固定抵抗体15,19は、圧縮応力に対して電気抵抗値が大きく変化する半導体基板2の<110>方向に沿って延びているものの、それらの電気抵抗値の値は、力伝達ブロック4の受圧時においても実質的に変化しない。押圧部分40bと高感度メサ型ゲージ14、18の各々の頂面との接触面積は等しい。押圧部分40bと低感度メサ型ゲージ12、16の各々の頂面との接触面積は等しい。
【0043】
次に、力検知装置1の動作を説明する。まず、力検知装置1は、電源電極38に定電流源が接続され、基準電極34が接地され、第1出力電極36と第2出力電極32の間に電圧測定器が接続して用いられる。力検知装置1では、力伝達ブロック4に加わる容器内圧が変化すると、力伝達ブロック4を介してメサ型ゲージ12,14,16,18のゲージ部12a,14a,16a,18aに加わる圧縮応力も変化する。ピエゾ抵抗効果が現われる高感度メサ型ゲージ14,18のゲージ部14a,18aの電気抵抗値は、圧縮応力に応じて変化する。ゲージ部14aの電気抵抗値が変化すると、第2抵抗体114の合成抵抗値が変化する。ゲージ部18aの電気抵抗値が変化すると、第4抵抗体118の合成抵抗値が変化する。このため、第1出力電極36と第2出力電極32の電位差は、ゲージ部14a,18aに加わる圧縮応力に依存する。これにより、電圧測定器で計測される電圧変化から力伝達ブロック4に加わる容器内圧が検知される。」
(b) 【図1】
「
[図:0001415995000006.jpg]
」
(c) 【図3】
「
[図:0001415995000007.jpg]
」
c 引用文献6に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された特開2004-132811号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。
(a) 【0015】~【0019】
「【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る力検知素子は、図1(A)及び(B)、図2(A)及び(B)に示すように、矩形状のn型シリコン単結晶基板10と、ガラス製の力伝達ブロック12と、が接合されて構成されている。シリコン単結晶基板10の接合面側の主面には、基板長手方向の両側に配置された1対の電極配置部14、両電極配置部を橋渡しするように長手方向に沿って形成された直線状のゲージ部16、電極配置部14とゲージ部16とを結び付けるリード部15、及びゲージ部16を取り囲む塵埃侵入防止部18が設けられている。塵埃侵入防止部18は、ゲージ部16に平行な1対の平行部と、ゲージ部16に垂直な1対の垂直部と、を四角形の辺に沿って連続させることにより形成されている。
【0016】
これら電極配置部14、リード部15、ゲージ部16、及び塵埃侵入防止部18の各々は、n型シリコン単結晶基板10の表面にボロンを拡散させる等してp型半導体層を形成し、所定パターンで所定深さ(通常は2~3μm程度)までエッチングすることで、メサ状に形成される。これにより、メサの表面近傍にはp型半導体が配置される。
【0017】
ゲージ部16等が形成されたシリコン単結晶基板10の表面は、酸化シリコン(SiO2)膜等の絶縁膜20で被覆されている。また、電極配置部14の表面には、絶縁膜20を介してアルミニウム等の金属電極24が形成され、電極配置部14上の絶縁膜20には、電極配置部14と金属電極24とをコンタクトさせるためのコンタクトホール22が設けられている。
【0018】
力伝達ブロック12は、その頂面に加えられた力をゲージ部16に垂直に伝達するようにゲージ部16上に配置されると共に、その外周が塵埃侵入防止部18の平行部及び垂直部上面の略中央部分に位置するように塵埃侵入防止部18上に配置されている。このように配置することで、ゲージ部16及びその周辺が、力伝達ブロック12と塵埃侵入防止部18とが接合されて形成された密閉空間内に封止され、シリコン単結晶基板10と力伝達ブロック12との間に塵埃が入り込むことが無い。
【0019】
この力検知素子では、力伝達ブロック12の頂面に力が加えられると、力伝達ブロック12はその力をゲージ部16に垂直に伝達する。これにより、ゲージ部16のピエゾ抵抗係数が変化し、電極間に印加される電圧が変化する。この電圧変化により力伝達ブロック12に作用する力を検知することができる。」
(b) 【図1】
「【図1】
[図:0001415995000008.jpg]
」
(イ) 周知技術1の認定
前記a~cに摘記した引用文献2、5~6の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、本願の出願前に当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術1」という。)
[周知技術1]
「基板上に形成された抵抗体の抵抗値の変化に基づいて物理量を測定するセンサにおいて、前記抵抗体の抵抗値の変化を外部に出力するために前記抵抗体の両端部に外部接続用の一対の端子部を設けるとともに、少なくとも当該端子部の上方の空間には部材を設けず、当該端子部を露出させること。」
(ウ) 周知技術2の認定
前記(ア)a、cに摘記した引用文献2、6の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、本願の出願前に当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術2」という。)。
[周知技術2]
「基板上に形成された抵抗体の抵抗値の変化に基づいて物理量を測定するセンサにおいて、前記抵抗体の抵抗値の変化を外部に出力するために前記抵抗体の両端部に外部接続用の一対の端子部を設けるとともに、当該端子部を、当該両端部とその上面に形成された金属層で構成すること。」
(3) 本件補正発明と引用発明の対比、判断
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 荷重センサ素子の観点
「荷重センサ素子」の発明である本件補正発明と「ピエゾ抵抗型力測定要素」の発明である引用発明は、いずれも素子に加わる力(荷重)を測定するためのものであるから、「荷重を検出する荷重センサ素子」の発明である点において一致する。
(イ) 無機層及び基板の観点
a 引用発明の「力導入プレートA」は、「力導入プレートB」との間で電気導体層3を「挟むように配置され」るものであるから、平面視において「力導入プレートB」により被覆される領域を有していることは明らかである。
b また、「力導入プレートA」は、導入される力(K)を受ける面を有しており、当該面は、「力導入プレートB」と対向する面の背面である。
c さらに、「力導入プレートA」と「力導入プレートB」は、いずれもセラミックで構成されている。
d そうすると、引用発明の「力導入プレートB」は、本件補正発明の「受圧部としての無機層」に相当し、引用発明の「力導入プレートA」は、本件補正発明の「基板」に対応するといえ、本件補正発明と引用発明は、次の(a)の点において一致し、後記(b)の点において相違する。
(a) 「セラミック基板からなり、荷重を受ける受圧面を有する受圧部としての無機層と、
セラミック材料からなる基板であって、平面視において前記受圧部により被覆される被覆部を有する基板と、を備え、
前記受圧面は、前記受圧部の前記基板に対向する面の背面である」点。
(b) 本件補正発明においては、
「基板」が、「平面視において前記受圧部から露出する非受圧部としての露出部」を有するのに対して、
引用発明においては、
「力導入プレートA」が、平面視において力導入プレートBから露出する非受圧部としての露出部を有しない点。
(ウ) 薄膜抵抗体の観点
a 引用発明の「ピエゾ抵抗型力測定要素」は、2つの力導入プレートの間に設けられた少なくても1つの電気導体の抵抗を測定する「力測定要素」であるから、引用発明の「電気導体層3」は、力導入プレートが受ける力に応じて抵抗値が変化する抵抗体であって、2つの力導入プレートの間に挟まれる領域を有していることが明らかである。
b また、引用発明の「電気導体層3」は、蒸着やスパツタリングによって形成される層であるから、「薄膜」として形成されていることは自明である。
c そうすると、引用発明の「電気導体層3」は、本件補正発明の「薄膜抵抗体」に対応するといえ、本件補正発明と引用発明は、次の(a)の点において一致し、後記(b)の点において相違する。
(a) 「前記受圧部が受ける荷重に応じて抵抗値が変化する抵抗体であって、前記被覆部と前記受圧部との間に挟まれる本体部を有する薄膜抵抗体」を備える点。
(b) 本件補正発明においては、
「薄膜抵抗体」が、「前記露出部に載置される両端部」を有するのに対して、
引用発明においては、
「電気導体層3」が、前記露出部に載置される両端部を有しない点。
(エ) 一対の電極の観点
本件補正発明と引用発明は、次の点において相違する。
本件補正発明においては、
「一対の電極」が、「前記薄膜抵抗体の両端部と電気的に接続されるように前記薄膜抵抗体の両端部に載置され[る]」とともに、「平面視において」「前記受圧部から離間して前記薄膜抵抗体の両端部を介して前記露出部上に設けられる」のに対して、
引用発明においては、
「一対の電極」に相当する構成を備えることについて明示されていない点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「荷重を検出する荷重センサ素子であって、
セラミック基板からなり、荷重を受ける受圧面を有する受圧部としての無機層と、
セラミック材料からなる基板であって、平面視において前記受圧部により被覆される被覆部を有する基板と、
前記受圧部が受ける荷重に応じて抵抗値が変化する抵抗体であって、前記被覆部と前記受圧部との間に挟まれる本体部を有する薄膜抵抗体と、を備え、
前記受圧面は、前記受圧部の前記基板に対向する面の背面である、
荷重センサ素子。」である点。
(イ) 相違点
本件補正発明においては、
「基板」が、「平面視において前記受圧部から露出する非受圧部としての露出部」を有し、
「薄膜抵抗体」が、「前記露出部に載置される両端部」を有し、
「一対の電極」が、「前記薄膜抵抗体の両端部と電気的に接続されるように前記薄膜抵抗体の両端部に載置され」るとともに、「平面視において」「受圧部から離間して前記薄膜抵抗体の両端部を介して前記露出部上に設けられる」のに対して、
引用発明においては、
「力導入プレートA」が、平面視において力導入プレートBから露出する非受圧部としての露出部を有し、
「電気導体層3」が、前記露出部に載置される両端部を有し、
「一対の電極」に相当する構成を備えるものではない点。
ウ 判断
(ア) 相違点について
a 力導入プレートAが露出部を有する点について
(a) 基板上に形成された抵抗体の抵抗値の変化に基づいて物理量を測定するセンサにおいて、前記抵抗体の抵抗値の変化を外部に出力するために前記抵抗体の両端部に外部接続用の一対の端子部を設けるとともに、少なくとも当該端子部の上方の空間には部材を設けず、露出するように構成することは周知技術である(前記周知技術1を参照)。
(b) そうすると、例えば電気的接続を容易とするために、引用発明において、前記周知技術1を参照して、引用発明の「力導入プレートA」上面に形成される「電気導体層3」の両端部を外部接続用の一対の端子部とするとともに、少なくとも当該端子部の上方の空間には「力導入プレートB」を設けず、当該端子部が露出するように構成することは、当業者が容易に想到することができたものである。
(c) その際、「力導入プレートA」は、平面視において力導入プレートBにより被覆される被覆部と、平面視において力導入プレートBから露出する非受圧部としての露出部と、を有し、「電気導体層3」は、前記被覆部と力導入プレートBとの間に挟まれる本体部と、前記露出部に載置される両端部と、を有し、「外部接続用の一対の端子部」は、前記両端部の位置において、力導入プレートBから離間して形成されたものとなることは当然である。
b 一対の電極が、電気導体層3の両端部に載置される点について
(a) 基板上に形成された抵抗体の抵抗値の変化に基づいて物理量を測定するセンサにおいて、前記抵抗体の抵抗値の変化を外部に出力するために前記抵抗体の両端部に設けた外部接続用の一対の端子部を、当該両端部とその上面に形成された金属層で構成することは周知技術である(前記周知技術2参照)。
(b) そうすると、引用発明において、前記周知技術2を参照して、「外部接続用の一対の端子部」を、電気導体層3の両端部とその上面に形成された金属層、すなわち電極から構成することは、当業者が容易に想到することができたものである。
(イ) 小括
前記(ア)a~bにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1~2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 請求人の主張について
(ア) 審判請求書の主張内容
請求人は、審判請求書において、本件補正発明が、引用発明から容易に想到できるものではない理由として、概略次のa~bの点を挙げている。
a 引用文献1のピエゾ抵抗型力測定要素と、引用文献2のひずみゲージとは、検出メカニズムが全く異なるため、素子の構成に相違がある。
b 引用文献2のカバー層60は、抵抗体30及び金属層43に機械的な損傷が生じることを防止することを目的としているため、引用文献1の力導入プレート1とは機能が全く逆である。
(イ) 請求人の主張に対する当審の判断
前記(2)イ(イ)で認定した周知技術1は、その対象を、機械的な損傷の防止を目的とするひずみゲージに限定するものではないから(少なくとも、周知技術1の認定に用いた引用文献5、6に記載されている技術事項は、ひずみゲージに関するものではない。)、請求人の主張は採用できない。
(ウ) 上申書において提示された補正案について
a 補正案の請求項1
審判請求人は令和5年11月6日付けの上申書において補正案を提示しているので、これについても念のため検討する。当該補正案の請求項1は、以下のとおりのものである。なお下線は、本件補正発明から補正される箇所を示す。
「[請求項1]
荷重を検出する荷重センサ素子であって、
セラミック基板からなり、荷重を受ける受圧面を有する受圧部としての無機層と、
セラミック材料又は表面に絶縁層を有する金属材料からなる基板であって、平面視において前記受圧部により被覆される被覆部と、平面視において前記受圧部から露出する非受圧部としての露出部と、を有する基板と、
前記受圧部が受ける荷重に応じて抵抗値が変化する抵抗体であって、前記被覆部と前記受圧部との間に挟まれる本体部と、前記本体部と連結されるように前記露出部に載置される両端部と、を有する薄膜抵抗体と、
前記薄膜抵抗体の両端部と電気的に接続されるように前記薄膜抵抗体の両端部に載置される一対の電極と、を備え、
前記受圧面は、前記受圧部の前記基板に対向する面の背面であり、
平面視において、一対の前記電極は、前記受圧部から離間して前記薄膜抵抗体の両端部を介して前記露出部上に設けられ、
前記本体部が載置される前記被覆部の平坦の第1載置面と、前記両端部が載置される前記露出部の平坦の第2載置面とは、面一であり、
前記受圧部は、接着層を介して前記被覆部の前記第1載置面上と前記第1載置面に載置される前記本体部上とに設けられる、
荷重センサ素子。」
b 検討
(a) 補正案の請求項1に係る発明と引用発明は、次のi~iiiに示す相違点において相違し、その余の点において一致すると認められる。
i 相違点A
補正案の請求項1においては、
「基板」が、「平面視において前記受圧部から露出する非受圧部としての露出部」を有し、
「薄膜抵抗体」が、「前記本体部と連結されるように前記露出部に載置される両端部」を有し、
「一対の電極」が、「前記薄膜抵抗体の両端部と電気的に接続されるように前記薄膜抵抗体の両端部に載置され」るとともに、「平面視において」「受圧部から離間して前記薄膜抵抗体の両端部を介して前記露出部上に設けられる」のに対して、
引用発明においては、
「力導入プレートA」が、平面視において力導入プレートBから露出する非受圧部としての露出部を有しておらず、
「電気導体層3」の両端部が、前記露出部に載置されておらず、
前記「一対の電極」に相当する構成を備えるものではない点。
ii 相違点B
補正案の請求項1に係る発明においては、
「前記本体部が載置される前記被覆部の平坦の第1載置面と、前記両端部が載置される前記露出部の平坦の第2載置面とは、面一であ[る]」のに対して、引用発明においては、そのような構成について明示されていない点。
iii 相違点C
補正案の請求項1に係る発明においては、
「前記受圧部は、接着層を介して前記被覆部の前記第1載置面上と前記第1載置面に載置される前記本体部上とに設けられる」のに対して、引用発明においては、そのような構成について明示されていない点。
(b) 前記各相違点について検討する。
i 相違点Aについて
(ア) 前記ウ(ア)で説示した事項を踏まえると、引用発明の「力導入プレートA」上面に形成される「電気導体層3」の両端部を外部接続用の一対の端子部とするとともに、少なくとも当該端子部の上方の空間には「力導入プレートB」を設けず、当該端子部が露出するように構成すること、及び、「外部接続用の一対の端子部」を、電気導体層3の両端部とその上面に形成された金属層、すなわち電極から構成することは、当業者が容易に想到することができたものである。
(イ) その際、「力導入プレートA」は、平面視において力導入プレートBにより被覆される被覆部と、平面視において力導入プレートBから露出する非受圧部としての露出部と、を有し、「電気導体層3」は、前記被覆部と力導入プレートBとの間に挟まれる本体部と、前記本体部と連結されるように前記露出部に載置される両端部と、を有し、「外部接続用の一対の端子部」は、前記両端部の位置において、力導入プレートBから離間して形成されたものとなることは当然である。
ii 相違点Bについて
(i) 前記(2)ア(ア)cにおいて摘記した、前記引用文献1の第5頁右上欄第16行目~左下欄第1行目には、以下のとおり記載されている。
「第7a図と第7b図は本発明のまた別の実施例を示す。この実施例においては、ワイヤの代りに、蒸着、スパツタリング、またはエツチングによつて形成される電気導体層3が用いられる。これも溝7内に係留してもよい。」
(ii) そうすると、引用発明の「電気導体層3」について、力導入プレートAの上面に形成された「溝7」の中に設置された「ワイヤ」に代えて、溝7が形成されない力導入プレートAの上面に「蒸着、スパッタリング」によって形成してなるものが記載されていると認められる。仮にそうでないとしても、前記「これも溝7内に係留してもよい。」の記載は、溝を設けない構成を採用することを示唆するものである。
(iii) したがって、引用発明を上記相違点Bに係る構成とすることは当業者が容易に想到しうるものである。
iii 相違点Cについて
(i) 複数の基板を固定する手法として接着剤を介在させる手法は、例示するまでもなく周知技術(以下「周知技術3」という。)である。
(ii) そうすると、前記周知技術3を踏まえて、引用発明を上記相違点Cに係る構成とすることは当業者が容易に想到しうるものである。
(c) したがって、補正案の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術1~3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
c 請求人の主張
請求人は上申書において、補正案の請求項1に係る発明によれば、「接着層」が「受圧部と本体部及び被覆部の平坦の第1載置面との間に存在する凹凸領域に入り込む」ため、「大きな荷重を精度よく検出することができる」及び「押圧される受圧部の外縁による被覆部と露出部との境界部分への応力集中を緩和することで、被覆部と露出部との境界部分における薄膜抵抗体の破損を抑制することができる」という優れた効果が得られるのに対して、引用文献1~6には、「受圧部の外縁による被覆部と露出部との境界部分への応力集中を緩和する」という技術的思想が存在していないところ、前記相違点A~Cに係る構成が記載又は示唆されているとは認められない旨主張している。
しかしながら、前記b(b)において検討したとおり、相違点A~Cに係る構成は引用発明及び周知技術1~3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求人が主張する前記効果も、引用発明及び周知技術1~3から当業者が予測し得た程度のものでもある。
なお、前記効果は本願明細書等において具体的に記載されている効果ではないし、前記補正案においては単に「受圧部」が「接着層を介して」設けられることが特定されているのみであって、請求人が主張する前記効果を奏する「接着層」であることが特定されているとも認められない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(4) 独立特許要件についてのまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
4 まとめ
以上に検討したところによれば、本件補正は、前記2で検討したとおり、特許法17条の2第5項各号に掲げる目的に該当しないから、本件補正は同項の規定に違反し、又は、本件補正発明は、前記3で検討したとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~13に係る発明は、令和5年2月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるとおりである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由1(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由1(進歩性の欠如) 本願発明は、その出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開昭62-220822号公報(主たる引用文献)
引用文献2.国際公開第2019/151345号
3 引用文献に記載された事項
(1) 引用文献1に記載された事項及び引用発明並びに引用文献2、5~6に記載された事項及び周知技術1~2の認定は、前記第2の3(2)ア及びイにおいて示したとおりである。
(2) さらに、前記第2の3(2)イ(ア)a、bに摘記した引用文献2、5の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術4」という。)。
[周知技術4]
「基板上に形成された抵抗体の抵抗値の変化に基づいて物理量を測定するセンサにおいて、前記抵抗体の抵抗値の変化を外部に出力するために、前記抵抗体の両端部に電気的に接続される外部接続用の端子部を基板の一方の側に配置すること。」
4 対比・判断
(1) 前記第2の3(3)ア及びイでの検討を踏まえると、本願発明と引用発明は次の相違点において相違し、その余の点において一致する。
[相違点]
本願発明においては、
「無機層」が、「基板の片面の一部を被覆するように設けられ」ており、
「薄膜抵抗体」が、「前記無機層により被覆されていない前記基板の露出部に載置される両端部と、を有」し、
「一対の電極」が「前記無機層から離間して前記薄膜抵抗体の両端部と電気的に接続され、前記基板の一方の側に設けられる」のに対して、
引用発明においては、
「力導入プレートA」が、力導入プレートBの片面の全部を被覆し、
「電気導体層3」の両端部が、力導入プレートBにより被覆されていない力導入プレートAの露出部に載置されておらず、
前記「一対の電極」に相当する構成を備えるものではない点。
(2) 前記相違点について検討する。
ア 前記第2の3(3)ウ(ア)aでの検討を踏まえると、引用発明の「力導入プレートA」上面に形成される「電気導体層3」の両端部を外部接続用の一対の端子部とするとともに、少なくとも当該端子部の上方の空間には「力導入プレートB」を設けず、当該端子部が露出するように構成することは、当業者が容易に想到することができたものである。
イ その際、「力導入プレートA」は、力導入プレートBの片面の一部を被覆し、「電気導体層3」は、力導入プレートBにより被覆されていない力導入プレートAの露出部に載置される両端部を有し、「外部接続用の一対の端子部」は、前記両端部の位置において、力導入プレートBから離間して形成されたものとなることは当然である。
ウ また、基板上に形成された抵抗体の抵抗値の変化に基づいて物理量を測定するセンサにおいて、前記抵抗体の抵抗値の変化を外部に出力するために、前記抵抗体の両端部に電気的に接続される外部接続用の端子部を基板の一方の側に配置することは周知技術であるところ(前記周知技術4を参照)、上記構成において、前記周知技術4を参照し、「外部接続用の一対の端子部」を力導入プレートAの一方の側に集約して設けることは、当業者が通常有する創作能力の発揮にすぎない。
エ さらに、前記第2の3(3)ウ(ア)bでの検討を踏まえると、「外部接続用の一対の端子部」を、電気導体層3の両端部と当該両端部にそれぞれ電気的に接続される一対の電極から構成することも、当業者が通常有する創作能力の発揮にすぎない。
(3) したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1~2及び4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-010256