商標拒絶査定不服審判
2023-009695
ヒトテマ
- 審判番号
- 2023-009695
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2022-018087
- 請求日
- 2023年06月12日
- 審決日
- 2024年04月04日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社エレファントストーン
- 【請求人代理人】弁理士法人秀和特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 和行
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 石塚 利恵
- 分類
- T18 .261-Z (W41) / T18 .262-Z (W41) / T18 .263-Z (W41) / T18 .264-Z (W41)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2022-18087拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和4年2月17日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 7月21日付け:拒絶理由通知書
令和4年 9月30日 :意見書の提出
令和4年10月 3日 :手続補足書の提出
令和5年 3月 7日付け:拒絶査定
令和5年 6月12日 :審判請求書の提出
令和5年 9月15日 :手続補正書、手続補足書の提出
2 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第41類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として登録出願され、その後、本願の指定役務については、前記1の手続補正書により、第41類「動画・映像・静止画・音楽又は音声の制作及びそれに関する情報の提供,人工知能(AI)を利用した動画・映像・静止画・音楽又は音声の制作及びそれに関する情報の提供,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオ又はDVDの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,音響用又は映像用のスタジオの提供,映画機械器具の貸与,映画上映用データの貸与,映写フィルムの貸与,写真の撮影,カメラの貸与,光学機械器具の貸与,動画の電子画像処理,イベントのためのビデオの編集,ビデオテープの編集,録音又は録画済み記録媒体の複製,動画制作に関するセミナーの企画・運営又は開催及びそれに関する情報の提供,セミナーの企画・運営又は開催」に補正されたものである。
3 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録第6385832号商標(以下「引用商標」という。)は、「hitotema」の文字を標準文字で表してなり、令和元年12月9日に登録出願、第41類「電子出版物の提供及びこれに関する情報の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,電子出版物の制作・書籍の制作及びこれらに関する情報の提供,電子出版物の企画・編集及びこれらに関する情報の提供,電気通信回線を通じて行う静止画像・動画像・音声付き静止画像・音声付き動画像・映像の提供及びこれらに関する情報の提供,技芸・スポーツ又は知識の教授及びこれらに関する情報の提供,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)並びにこれらに関する情報の提供,レクリエーションの提供,写真の撮影及びこれに関する情報の提供」のほか、第43類及び第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同3年5月7日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
4 当審の判断
(1)本願商標
本願商標は、別掲1のとおり、水色の隅丸長方形内に、一部黒色を有してなる白抜きで表された略三角形(各構成要素は黒色で縁取られている。以下、これらをまとめて「図形部分」という。)と、その下に、角ばった書体で表された「ヒトテマ」の文字(以下「文字部分」という場合がある。)が配された構成からなるものである。
そして、図形部分と文字部分とは、重なり合うことなく上下に分かれており、図形部分が文字部分の背景となったり、文字部分が意匠化されて図形部分と組み合わされていたりするものではないから、両者を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない。また、図形部分と文字部分との間には観念的なつながりもなく、全体として、特定の観念を生じるものでもない。さらに、図形部分の高さは、文字部分の2倍程度の高さがあるものの、文字部分の横幅は、図形部分の横幅よりも若干広く、文字部分が図形部分に比べて目立たないということもない。
上記したことを踏まえれば、本願商標は、その構成中の図形部分と文字部分とが分離して看取され、それぞれが自他役務の識別標識としての機能を有するものというべきである。
そこで検討すると、本願商標の構成中の図形部分は、特定の観念及び称呼を生じさせるような具体的な図形とは認められない。一方、本願商標の構成中の文字部分は、「よりよくするために予定外に加える手間。」の意味を有する「一手間」の語(「広辞苑 第七版」岩波書店)を片仮名で表したものと認識されるといえ、その構成文字に相応し「ヒトテマ」の称呼が生じる。
そうすると、本願商標は、その構成中の文字部分に相応し「ヒトテマ」の称呼を生じ、「よりよくするために予定外に加える手間。」の観念を生じる。
(2)引用商標
引用商標は、前記3のとおり、「hitotema」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、「よりよくするために予定外に加える手間。」の意味を有する「一手間」の語(前掲書)を欧文字で表したものと認識されるといえ、その構成文字に相応し「ヒトテマ」の称呼が生じる。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応し「ヒトテマ」の称呼を生じ、「よりよくするために予定外に加える手間。」の観念を生じる。
(3)本願商標と引用商標との類否
本願商標と引用商標との類否について検討すると、両者は、全体の外観は異なるものであるが、本願商標の構成中の「ヒトテマ」の文字と、引用商標とを比較すると、片仮名と欧文字であって文字種を異にするものの、商標の使用においては、商標の構成文字を同一の称呼が生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記したり、デザイン化したりすることが一般的に行われている取引の実情があることに鑑みれば、両者における文字種の相違が、看者に対し、出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとまではいえない。
そして、両商標は、「ヒトテマ」の称呼及び「よりよくするために予定外に加える手間。」の観念を同一とするものである。
そうすると、本願商標と引用商標とは、外観において全体の構成は異なるものの、構成中の文字部分において顕著な差異として強い印象を与えるとまではいえず、称呼及び観念を同一とするものであるから、外観、称呼、観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、全体的に考察すれば、両者は互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
(4)本願の指定役務と引用商標の指定役務との類否
ア 指定商品又は指定役務が類似のものであるかどうかは、商品又は役務が、通常、同一営業主により製造若しくは販売又は提供されている等の事情により、それらの商品又は役務に同一又は類似の商標を使用する場合には、同一営業主の製造若しくは販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるか否かによって判断すべきである(最高裁昭和33年(オ)第1104号、知財高裁平成27年(行ケ)第10096号参照)旨判示されている。
イ 本願の指定役務中、第41類「動画・映像・静止画・音楽又は音声の制作及びそれに関する情報の提供,人工知能(AI)を利用した動画・映像・静止画・音楽又は音声の制作及びそれに関する情報の提供」は、主として、動画や映像などを制作し、それに関する情報を提供するサービスであるから、動画や映像などをコンテンツとして取り扱う役務であり、その需要者は、動画・映像等の業界に携わる者に限定されず、広く一般消費者を含むものである。
また、引用商標の指定役務中、第41類「電気通信回線を通じて行う静止画像・動画像・音声付き静止画像・音声付き動画像・映像の提供及びこれらに関する情報の提供」は、主として、動画や映像などを提供し、それに関する情報を提供するサービスであるから、動画や映像などをコンテンツとして取り扱う役務であり、その需要者は、動画・映像等の業界に携わる者に限定されず、広く一般消費者を含むものである。
そして、本願の上記指定役務と引用商標の上記指定役務を比較すると、いずれも動画や映像などをコンテンツとして取り扱う役務であって、その需要者層を共通にするもので、これらの役務は同一の事業者によって提供されることがある(別掲2参照)ことからすれば、役務の内容において重複し、これらの指定役務に同一又は類似する商標が使用された場合、同一営業主の提供に係る役務と誤認されるおそれがあるため、本願の指定役務と引用商標の上記指定役務とは同一又は類似する役務というべきである。
また、引用商標の指定役務中、第41類「レクリエーションの提供」は、あらゆる形態のレクリエーションを提供するサービスであるから、本願の指定役務中、第41類「動画・映像・静止画・音楽又は音声の制作及びそれに関する情報の提供,人工知能(AI)を利用した動画・映像・静止画・音楽又は音声の制作及びそれに関する情報の提供,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオ又はDVDの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」をも包含するサービスであり、両者は類似する役務と認められる。
ウ 本願の指定役務中、第41類「写真の撮影」は、引用商標の指定役務中、第41類「写真の撮影及びこれに関する情報の提供」と同一又は類似の役務である。
(5)小括
以上より、本願商標は、引用商標と類似する商標であり、かつ、その指定役務も引用商標の指定役務と同一又は類似の役務について使用する役務を含むものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(6)請求人の主張について
ア 請求人は、原査定が、本願商標から図形部分を捨象したうえで、あたかも文字部分のみを「要部」とするかのような認定をしている点は、明らかに失当である旨述べ、本願商標中の図形部分は、全体の半分以上の面積を占めるほどの大きな特徴があり、当該部分が指定役務との関係で何ら記述的な意味を持たない以上、需要者がこの部分を識別標識として認識し記憶に留めることは明らかであり、本願商標中の文字部分は、常に、図形部分と共にあり、称呼としての「ヒトテマ」だけが一人歩きすることはない旨主張する。
しかしながら、原査定では、「上部の図形部分と、下部の「ヒトテマ」の各文字部分とは、外観上、観念上の一体性は認められず、いずれも独立して自他役務の識別機能を果たすものと見られます・・・本願商標について、「ヒトテマ」の文字をもって取引する場合も決して少なくないものといえます。」と記載されているように、本願商標と引用商標との類否を判断するにあたり、本願商標の構成中の図形部分を捨象して、文字部分のみが自他役務の識別標識としての機能を果たすと判断したものではなく、本願商標の構成中の図形部分と文字部分とが、それぞれ独立して自他役務の識別標識としての機能を果たす部分(要部)となり得るものと判断し、その上で、本願商標の構成中の文字部分を要部の一として抽出したものであって、その判断は、本審決においても同様である。
そして、本願商標は、視覚上、図形部分と文字部分とに分離して認識される上、両者の観念上のつながりもなく、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているとは認められないことは、上記(1)のとおりである。
イ 請求人は、たとえ、本願商標の文字部分と引用商標を比較したとしても、本願商標の文字部分は、需要者に力強い印象を与えるが、標準文字で書された引用商標は、そのような力強さとはおよそ関係がなく、しかも、本願商標中の文字部分は、それぞれの文字線の「止め」部分が丸みを帯びた独自性が高いデザインを用いて書されていることから、単に一般的な書体で書された引用商標とは、片仮名と欧文字との文字種の違いも相まって、外観上明白に区別できる旨主張する。
しかしながら、役務の出所を識別するに際して、商標の外観を見て役務の出所を判断するだけではなく、その名称、称呼の果たす役割も大きく、重要な要素となるというべきである。そして、我が国において、商標の構成文字を同一の称呼が生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記したり、デザイン化したりすることが一般的に行われている取引の実情があることに鑑みれば、文字種及びデザイン化が異なることは、本願商標と引用商標が別異のものであることを認識させるほどの強い印象を与えるものではないといえる。また、本願の指定役務の需要者には、一般消費者が含まれるところ、当該需要者は、高度の注意力をもって役務の提供を受けるとは限らないことも併せ考慮すると、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念を総合して全体的に考察すれば、役務の出所につき誤認混同を生じるおそれのある類似の商標と言わざるを得ない。
ウ 請求人は、「ヒトテマ」という発音からは、たしかに「よりよくするために予定外に加える手間。」を示す「一手間」の意味合いが生じるが、「人手間」や「火と手間」と表現される場合もあり、それぞれ「「人」による手間」、「「火」を使うことによる手間」という異なる観念が生じるため、いずれの観念が生じるか一義的には特定できない旨主張する。
しかしながら、請求人が挙げる「人手間」や「火と手間」の語は、辞書類に載録された既成の語ではなく、特定の意味合いを有する語として知られているものでもないから、「ヒトテマ」の称呼からは、辞書類に載録されており、一般に親しまれた語である「一手間」を想起し、「よりよくするために予定外に加える手間。」の観念を認識するとみるのが自然である。
エ 請求人は、本願の指定役務中の「動画・映像・静止画・音楽又は音声の制作及びそれに関する情報の提供、人工知能(AI)を利用した動画・映像・静止画・音楽又は音声の制作及びそれに関する情報の提供,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオ又はDVDの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」における「制作」という表現から一般的・恒常的に想定される業務内容は、映像等の需要者から注文を受けて、動画・映像等を制作し発注元に納品することであり、一般需要者に向けた映像等の「提供」ではないのに対し、引用商標の指定役務中の「電気通信回線を通じて行う静止画像・動画像・音声付き静止画像・音声付き動画像・映像の提供及びこれらに関する情報の提供」において、映像の「提供」という言葉から一般的・恒常的に想定される業務内容は、インターネットを利用して一般需要者向けに娯楽や情報提供を内容とする映像を提供することと解されるから、両者の一般的・恒常的に想定される業務内容は一致せず、本願商標を使用した指定役務と、引用商標を使用した指定役務との間に一般的な出所の混同は生じないと解すべきである旨主張する。
しかしながら、「動画や映像などの制作」と「動画や映像などの提供」は、いずれも動画や映像などをコンテンツとして取り扱う役務であって、その需要者層を共通にするもので、これらの役務は同一の事業者によって提供されることがあることからすれば、役務の内容において重複することは上記(4)イのとおりであり、そうとすると、これらの指定役務に同一又は類似する商標が使用された場合、同一営業主の提供に係る役務と誤認されるおそれがあることは、上記(4)アで判示されているとおりである。
オ 請求人は、注文により映像を制作する映像制作事業者であり、当該事業の需要者は、発注元である企業や法人である一方、引用商標の商標権者は、引用商標を用いて、同商標権者が運用するサイトにおいて料理等の情報提供を行っており、当該情報提供サービスの主な需要者は、食に関する情報を欲する一般消費者であることからすると、両者が提供しているサービスの間には直接的な関係性がないため、両者が提供する役務間では一般的に出所混同を生ずる可能性は無いと考えられる旨主張する。
しかしながら、商標の類否判断に当たり考慮することのできる取引の実情とは、その指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指すものであって、単に該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的、限定的なそれを指すものではない(最高裁昭和47年(行ツ)第33号参照)旨判示されている。
そして、請求人の主張に係る取引の実情は、取引における一場面を抽出した特殊的、限定的なものというべきであり、商標の類否判断に考慮すべき一般的、恒常的な実情ということはできないから、本願商標についての上記判断が左右されるものではない。
カ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
(7)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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