特許拒絶査定不服審判
2023-008124
シート、およびシート用キット
- 審判番号
- 2023-008124
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-160656外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年05月18日
- 審決日
- 2025年06月12日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
- 【請求人代理人】佃 誠玄
- 【請求人代理人】藤井 憲
- 【請求人代理人】野村 和歌子
- 【請求人代理人】浅村 敬一
- 分類
- P18 .121-WZ (A44B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-160656号「シート、およびシート用キット」拒絶査定不服審判事件〔令和元年6月27日出願公開、特開2019-103778号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年8月29日(優先権主張 平成29年12月11日)の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 7月28日付け:拒絶理由通知書
令和4年11月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 3月 2日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和5年 3月 7日 :原査定の謄本の送達)
令和5年 5月18日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年 2月 6日付け:拒絶理由通知書
令和7年 4月 1日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~14に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は、それぞれ令和7年4月1日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。
「グラフィックパターンが印刷される印刷面としての表面と、裏面と、を有するフィルム層と、
前記フィルム層の前記裏面の全体に取り付けられたファスナ層と
を備え、
前記ファスナ層がループ材からなる第1の面ファスナ部材を備え、
前記ループ材が、厚みが600μm以下であるフック材と係合し得る不織布またはニットを含む、
シート。」
第3 当審拒絶理由の概要
令和7年2月6日付けで、当審が通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
(進歩性)本願の請求項1~14に係る発明は、下記引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
引用文献1 特開平11-338398号公報(平成11年12月10日公開)
引用文献2 特開2002-123198号公報(平成14年4月26日公開)
第4 当審の判断
1 引用文献の記載、引用発明等
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、○印の中に算用数字を含む符号は、「○1」等として表記した。(下線は当審が付した。・・・は省略を示す。以下同様。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、広告宣伝用、展示装飾用として、屋内外の適宜部所、物品に貼付される表示媒体シートに関する。」
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】・・・
【0004】本発明は、かかる従来の問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、引張強度が十分に高く、貼付されている間に変形、破損等し難く、屋外でも長期に渡って貼付することができ、被貼付物の材質を問わず、容易に貼付することができ、貼付されている間に簡単に剥離せず、しかも、剥離する際には変形、破損等することなく容易に剥離することができ、複数回使用することができる表示媒体シートを提供することにある。」
「【0013】
【発明の実施の形態】本発明の表示媒体シートの実施形態について、以下、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】本発明の表示媒体シート1は、画像等表示シート2及び係着部材3,4から構成される。
【0015】画像等表示シート2は、図1及び図2に示すように、軽量で、引張強度、直角引裂強度が高く、耐水性、耐久性に優れたプラスチック製シートからなる。
・・・
【0017】プラスチック製シートとしては、無機微細粉末又は有機充填剤を含有する熱可塑性樹脂フィルムを延伸することにより、フィルム内部に微細なボイド(空孔)を多数形成した微多孔性樹脂延伸フィルム層を有するシートを使用することもできる。このようなシートとしては、例えば、○1~○8に示すものが挙げられる。」
「【0038】そして、図1に示すように、画像等表示シート2の表面の適宜位置には、語句、文章等からなる文字表示5、人物画、グラフ等からなる画像表示6を印刷してある。一方、図2に示すように、画像等表示シート2の裏面の四隅部には、係着部材3,4を配設してある。
【0039】係着部材3は、図3に示すように、プラスチック製シート7の表面に微小なループ状プラスチック繊維を密生させてなる係着材8を固着し、裏面に接着剤9を塗布してある。接着剤9としては、プラスチック同士を強固に接着できるものであればよいが、特には、ポリオレフィン系、合成ゴム系、ポリエステル系等の熱溶融型(ホットメルト型)接着剤を使用するのが好ましい。
【0040】係着部材4は、図3に示すように、プラスチック製シート10の表面に微小なフック状プラスチック繊維を密生させてなる係着材11を固着し、裏面に粘着剤12を塗布し、その上に剥離紙13を貼付してある。粘着剤12としては、加圧するだけで接着できるとともに、痕跡を残すことなく剥離できるものであればよく、ゴム系、アクリル系、シリコーン系等の感圧型接着剤を使用するのが好ましい。
【0041】そして、図2に示すように、画像等表示シート2の裏面の四隅部にプラスチック製シート7の裏面を当圧させ、予め係着部材3を画像等表示シート2に強固に接着してある。一方、ループ状プラスチック繊維を密生させてなる係着材8とフック状プラスチック繊維を密生させてなる係着材11とを係合させ、係着部材4を係着部材3に係止してある。」
「【図1】
[図:0001428436000001.jpg]
【図2】
[図:0001428436000002.jpg]
【図3】
[図:0001428436000003.jpg]
」
イ 引用文献1に記載された発明
上記アから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「画像等表示シート2及び係着部材3、4から構成される表示媒体シート1であって、
画像等表示シート2は、微多孔性樹脂延伸フィルム層を有するプラスチック製シートからなり、
画像等表示シート2の表面の適宜位置には、文字表示5、画像表示6を印刷してあり、
画像等表示シート2の裏面の四隅部には、係着部材3、4を配設し、係着部材3を画像等表示シート2に強固に接着してあり、
係着部材3は、プラスチック製シート7の表面に微小なループ状プラスチック繊維を密生させてなる係着材8を固着し、裏面に接着剤9を塗布してあり、
係着部材4は、プラスチック製シート10の表面に微小なフック状プラスチック繊維を密生させてなる係着材11を固着し、裏面に粘着剤12を塗布し、その上に剥離紙13を貼付してあり、
ループ状プラスチック繊維を密生させてなる係着材8とフック状プラスチック繊維を密生させてなる係着材11とを係合させる、表示媒体シート1。」
(2)引用文献2
引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基体(看板の基板やガードレール等)と、その基体に着脱自在に固定可能な再帰反射積層体とを含んでなる、再帰反射性物品及び再帰反射性表示体に関する。」
「【0016】
【発明が解決しようとする課題】・・・
【0021】すなわち、本発明の目的は、使用中に簡単には剥がれないレベルの接合強度で再帰反射層が基体に固定され、基体から剥離する時には比較的弱い力で剥離でき、再帰反射層を破損することなく再剥離-再固定可能で、再帰反射層を、それを含む積層体の形で再使用することが可能な、再帰反射性物品、及び再帰反射性表示体を提供することにある。」
「【0077】再帰反射性表示体において、ファスナー部材は、再帰反射積層体の補強用ポリマーシート裏面、及び基体表面の、所定の位置に所定の占有面積で固定されていれば良い。補強用ポリマーシート裏面及び基体表面のほぼ全面を占有していても良いし、どちらか一方の面の一部分を占有する様にすることもできる。たとえば、図6に示される例では、第1ファスナー部材は、補強用ポリマーシート裏面の実質的に全面に置されている。一方、第2ファスナー部材は、基体表面の、ピース配置位置に相当する部分の実質的に全面に配置されている。通常、1つのイメージ形成ピースの面積は小さいので、2つのファスナー部材の接合面積は比較的小さく、剥離する際には比較的簡単な操作でイメージ形成ピースを基体から剥離できる。」
「【図6】
[図:0001428436000004.jpg]
」
(3)引用文献3
新たに引用する特表2013-529974号公報(平成25年7月25日公表、以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0087】
本開示に従う吸収性物品のいくつかの実施形態において(例えば、おむつ又は他の失禁用衣類)、物品は、本明細書に開示される構造化表面と係合するループ状の材料を更に含む。ループ状の材料は、例えば、吸収性物品のバックシートとして提供され得るか、又はループ状のパッチを、前側腰部区域又は後側腰部区域のいずれかにおいて、ランディング領域として提供することができる。ループは、対応するフック締結要素と連動する、任意の好適な材料から作製することができる。いくつかの実施形態において、ループ状の材料は、ニット繊維、織布繊維、又は不織布繊維である。例えば、繊維ループは、ニット、織布、又は不織布裏材から突出し得るか、又は押出し結合、接着剤結合、及び/又は音波結合された繊維ループであってもよい。好適な市販のループ材料は、3M Company(St.Paul,Minn)のニット及び押出し結合されたループ状の材料を含む。いくつかの実施形態において、本開示に従う吸収性物品は、押出し結合されたループを含む。いくつかの実施形態において、本開示に従う吸収性物品は、不織布ループを含む。」
(4)引用文献4
新たに引用する特表2010-524573号公報(平成22年7月22日公表、以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0004】
一般に、フック・ループ式のファスナーはフック構成要素とループ構成要素とを備える。フック構成要素はベース材料に固定された複数のフック状部材を含む。ループ構成要素は基材(裏あて材)から外方向に突出している複数の直立したループ部材を含む。このフック状部材はループ部材と係合するように設計されており、それらの間に強い機械的な結合がもたらされる。フック部材及びループ部材は、一般に、係合および係合解除を繰り返し行うことが可能である。
・・・
【0006】
種々のループ材料が利用可能である。一般的なループ材料は、支持用のフィルム層に積層されたニット布又は不織布を含む。これらのループ材料は一般に、ロールからループ材料をほぐし、ループ材料の裏のフィルム側に接着剤を貼り付け、真空吸引によりループ材料を適所に保持する穿孔付き金属シリンダ上にループ材料を供給し、この円筒に対してループ材料が保持されるようにループ材料をストリップに切断し、おむつ製造ラインに亘って並行して供給されるおむつのバックシート材料にそのストリップを貼り付けることによって、おむつライン上で加工される。」
(5)周知技術
引用文献3、4(上記(3)、(4))に示されるように、フック材と係合可能な係着材として不織布またはニットを用いることは周知技術である。
2 本願発明について
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「微多孔性樹脂延伸フィルム層を有するプラスチック製シートからな」る「画像等表示シート2」は、本願発明の「フィルム層」に相当する。
引用発明の「ループ状プラスチック繊維」は、本願発明の「ループ材」に相当する。
引用発明の「ループ状プラスチック繊維を密生させてなる」「係着材8」は、本願発明の「ループ材からなる第1の面ファスナ部材」に相当する。
引用発明の「表示媒体シート1」は、本願発明の「シート」に相当する。
引用発明の「係着部材3」は、「プラスチック製シート7の表面に微小なループ状プラスチック繊維を密生させてなる係着材8を固着し」たものであるから、本願発明の「ループ材からなる第1の面ファスナ部材を備え」る「ファスナ層」に相当する。
引用発明において、「画像等表示シート2の表面の適宜位置には、文字表示5、画像表示6を印刷してあり、画像等表示シート2の裏面の四隅部には、係着部材3、4を配設し」ていることは、本願発明において、「フィルム層」が「グラフィックパターンが印刷される印刷面としての表面と、裏面と、を有する」ことに相当する。
引用発明における「画像等表示シート2の裏面の四隅部に」「配設」され、「画像等表示シート2に強固に接着してあ」る「係着部材3」と、本願発明における「前記フィルム層の前記裏面の全体に取り付けられたファスナ層」とは、フィルム層の裏面に取り付けられたファスナ層の限りで一致する。
引用発明において、「ループ状プラスチック繊維を密生させてなる係着材8とフック状プラスチック繊維を密生させてなる係着材11とを係合させる」ことと、本願発明において、「前記ループ材が、厚みが600μm以下であるフック材 と係合し得る不織布またはニットを含む」こととは、ループ材が、フック材と係合し得る部材を含む限りで一致する。
そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「グラフィックパターンが印刷される印刷面としての表面と、裏面と、を有するフィルム層と、
前記フィルム層の前記裏面に取り付けられたファスナ層と
を備え、
前記ファスナ層がループ材からなる第1の面ファスナ部材を備え、
前記ループ材が、フック材と係合し得る部材を含む、
シート。」
[相違点1]
ファスナ層がフィルム層の裏面に取り付けられたことに関して、本願発明は、「ファスナ層」が「前記フィルム層の前記裏面の全体に取り付けられた」のに対して、引用発明は、「画像等表示シート2の裏面の四隅部には、係着部材3、4を配設し、係着部材3を画像等表示シート2に強固に接着してあ」る点。
[相違点2]
ループ材が、フック材と係合し得る部材を含むことに関して、本願発明は、「前記ループ材が、厚みが600μm以下であるフック材と係合し得る不織布またはニットを含む」のに対して、引用発明は、「ループ状プラスチック繊維を密生させてなる係着材8とフック状プラスチック繊維を密生させてなる係着材11とを係合させる」点。
(2)判断
ア 相違点1について
引用発明における「係着部材3」を「画像等表示シート2の裏面」におけるどの箇所に設けるかは、画像等表示シート2の大きさ、重さや係着部材3の係合力、剥離に要する力等を考慮して適宜決め得ることであり、引用発明において「係着部材3」を「画像等表示シート2の裏面」の全体に設けることは当業者が適宜なし得たことである(引用文献2の【0077】を参照)。
イ 相違点2について
上記1(5)に示したとおり、フック材と係合可能な係着材として不織布またはニットを用いることは周知技術であるところ、引用発明の係着材8について、当該周知技術を参考にして、不織布またはニットを含むものとすることに格別の困難性はない。
また、シートのループ材が係合するフック材をどのようなものとするかは、被係着シートの大きさ、重さや係着部材の係合力、剥離に要する力等を考慮して適宜決め得ることであり、引用発明の係着材11の厚さを600μm以下のものとすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
ウ 効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(3)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和7年4月1日提出の意見書において、本願発明は、裏面の全体に取り付けられたファスナ層を備えることにより、フィルム層の表面にグラフィックパターンを印刷する際、当該ファスナ層によってシートに適度なコシをもたせることが可能となり、結果、シートの破損及びシートのよれを防止して、フィルム層の表面へのグラフィックパターンの印刷を確実且つ容易にしているところ、このような構成は、引用文献1及び2のいずれにも何ら開示も示唆もされていない旨主張する。
しかしながら、引用発明において「係着部材3」を「画像等表示シート2の裏面」の全体に備えることで、「画像等表示シート2」単体よりも、「係着部材3」を備えた分、コシが増加することは当業者が予測し得ることである。
したがって、審判請求人の上記主張は採用できない。
なお、審判請求人の上記主張は本願明細書の記載に基づくものではない。
(4)小括
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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