特許拒絶査定不服審判
2018-005077
ファスナ部材
- 審判番号
- 2018-005077
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-128657外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年04月12日
- 審決日
- 2019年10月15日
- 公報発行日
- 2020年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
- 【請求人代理人】赤澤 太朗
- 【請求人代理人】野村 和歌子
- 【請求人代理人】佃 誠玄
- 【請求人代理人】吉野 亮平
- 分類
- P18 .121-WZ (A44B) / P18 .537-WZ (A44B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-128657「ファスナ部材」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月 8日出願公開、特開2015- 2794〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成25年6月19日に出願され、平成29年12月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年4月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
その後、当審において平成30年11月28日付けで拒絶理由を通知したところ、令和1年6月3日に意見書及び手続補正書が提出され、特許請求の範囲の手続補正がなされたものである。
第2.本願発明
本願の請求項1~3に係る発明(以下、「本願発明1~3」という。)は、令和1年6月3日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであるところ、本願発明1は次のとおりのものである。
《本願発明1》
車両内装天井に対して取り付けられる車体側の部材と機械的に結合されると共に、前記車両内装天井に固定されるファスナ部材であって、
表面を有する基部、及び前記表面上に立設された複数の係合部材を有すると共に、前記係合部材を前記車体側の部材に係合させることによって、前記車体側の部材と機械的に結合するファスナ部と、
貫通孔を有し、前記車両内装天井に対する前記ファスナ部の高さ位置を調整する高さ調整部と、を備え、
前記係合部材は、前記基部から突出する軸部、及び前記軸部の先端に形成される矢じり部を有し、
前記高さ調整部は、
前記車両内装天井に固定されるベース部と、
前記ファスナ部が設けられる頂部と、
前記ベース部から前記頂部へ向かって高さ方向に延在し、互いに対向する少なくとも一対の側壁部と、を備え、
前記頂部が前記ベース部よりも小さく、
前記ファスナ部と前記頂部と前記一対の側壁部と前記ベース部とが、接着剤を介さず一体に形成されている、ファスナ部材。
第3.平成30年11月28日付け当審拒絶理由通知の概要
平成30年11月28日付け当審拒絶理由通知における理由1の概要は以下のとおりである。
《理由1》本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用例については引用例一覧参照)
1.請求項1に係る発明について
本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)、引用例2及び3にも例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2.請求項4~6に係る発明について
本願の請求項4~6に係る発明は、引用発明、引用例2及び3にも例示される前記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
引 用 例 一 覧
1.特開2007-307955号公報
2.特開2003-210210号公報
3.特開平7-42714号公報
第4.引用例の記載事項
1.引用例1の記載事項
当審の拒絶の理由に引用した特開2007-307955号公報(引用例1)には、「天井材、その天井材に用いるスペーサ、そのスペーサの取付けに用いるスペーサ位置決め装置及び天井材に対するスペーサ取付方法」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンルーフ用開口部が形成されるとともに、裏面上に車両のルーフとの間に介在されるスペーサが接着剤によって接着された天井材であって、
前記スペーサを、接着剤によって包囲したことを特徴とする天井材。」
(2)「【技術分野】
【0001】
この発明は、サンルーフ用開口部を備え、サンルーフ付き車両のルーフに装着される天井材、その天井材に用いるスペーサ、そのスペーサの取付けに用いるスペーサ位置決め装置及び天井材に対するスペーサ取付方法に関するものである。」
(3)「【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1実施形態)
次に、この発明を具体化した第1実施形態について図1~図8を用いて説明する。
図1(a)に示すように、天井材10の天井材本体11には、車両のルーフに設けられたサンルーフに対応するサンルーフ用開口部12が形成されている。図1(b)に示すように、前記サンルーフ用開口部12の周縁部は、天井材本体11の裏面側、すなわち、ルーフ側に向かって湾曲する湾曲部11aとなっている。・・・
【0024】
また、前記湾曲部11aの周囲における天井材本体11の裏面には、スペーサ13が接着剤19により複数固定されている。スペーサ13は、合成樹脂製のブロック体からなり、その上面には、面ファスナー17が接着固定されている。この面ファスナー17は、ルーフの構造材の下面に固定されている車体側の面ファスナー(図3に図示)16と係合する。なお、両面ファスナー16,17は、各図において、模式的に簡略化して示されている。
【0025】
図2に示すように、このスペーサ13は、天井材本体11の裏面上に形成された平坦なスペーサ取付面18に対し、サンルーフ用開口部12の周縁の端面12aを基準として高さ方向において位置決めされている。すなわち、サンルーフ用開口部12の周縁の端面12aと、スペーサ取付面18との間の高さ方向の間隔S2には、ばらつきが存在する。これに対し、前記端面12aと、スペーサ13側の面ファスナー17との間の高さ方向における間隔S1のばらつきは、後述するように抑制されている。」
(4)「【0027】
次に、図5に示すように、受け治具20上の天井材本体11のスペーサ取付面18に、粘性の接着剤19を付与する。なお、図2において、スペーサ13の高さHは、前記間隔S2の予測最小値から前記間隔S1の設計値を差し引いて得られた間隔S3の値よりも小さく設定されている。」
(5)「【0031】
さて、上記のように構成された天井材10が車体のルーフ内側に固定されたとき、図3に示すように、各スペーサ13の面ファスナー17は、例えばサンシェード29のガイドレール30の下面に固定されている車体側の面ファスナー16に結合される。」
(6)「【図1】
」
(7)「【図2】
」
(8)「【図3】
」
2.引用例2の記載事項
当審の拒絶の理由に引用した特開2003-210210号公報(引用例2)には、「埋込取付式ファスナー」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、帯状の基部の裏面に設けた埋込部を介して物体に一体的に取付けられるファスナーに関する。」
(2)「【0010】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。図1~図4は、本発明の第1の実施形態によるファスナー10を示す。ファスナー10は、多方向の可撓性を有する対面係合式のファスナーであり、主表面12及びその反対側の裏面14を有する帯状の基部16と、基部16の主表面12に設けられる係合部18と、基部16の裏面14に設けられる埋込部20とを備えて構成される。
【0011】基部16は、長手方向へ互いに離間して整列配置される複数の箱状部22と・・を備える。各箱状部22は、互いに略平行に延びる平坦な上板部分26及び下板部分28と、それら上下板部分26、28を互いに接続する一対の側板部分30と、それら板部分26、28、30の間で長手方向へ延びる仕切板部分32とを備えた実質的中空構造を有する。基部16の主表面12は、複数の箱状部22の上板部分26によって形成される。また、基部16の裏面14は、複数の箱状部22の下板部分28と複数の連接部24との協働によって形成される。
【0012】係合部18は、基部16の主表面12に規則的離間配置で立設される複数の係合要素34を備える。それら係合要素34は、基部16を構成する複数の箱状部22の上板部分26に、同一個数(図では7個)ずつ同一配列で設けられる。各係合要素34は、各箱状部22の上板部分26から略直立状に突出する脚部36と、脚部36の先端近傍にて側方へ突設される複数(図では4個)の係合片38とを備える。ファスナー10は、係合部18の複数の係合要素34が各々の先端の係合片38にて、他物体に設けた対応の係合部に摩擦係合することにより、他物体に着脱可能に固着される。・・・」
(3)「【0014】・・・なお、好ましくはファスナー10は、ナイロン、ポリプロピレン等の樹脂材料から一体的に形成される。」
(4)「【図1】
」
3.引用例3の記載事項
当審の拒絶の理由に引用した特開平7-42714号公報(引用例3)には、「物体の保護や装飾用の添付部材とその製造方法」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、物体の表面に取着される添付部材に関し、特に、脚部及び該脚部の先端に連結される頭部をそれぞれに有する複数の突子を立設した物体の表面に取着される添付部材に関する。さらに本発明は、そのような添付部材の製造方法に関する。」
(2)「【0020】本体12の底面18には、長手方向両端部近傍に、係着手段として作用する対面係合ファスナー部材20がそれぞれ設置される。対面係合ファスナー部材20は、好ましくは高分子材料の一体成形品からなり、図1(c)及び図2に示すように、本体12に固定される段付板状の基部22と、基部22に所定の離間配置で立設される複数の有頭突子24とを備える。有頭突子24は、基部22の表面から略直立状に突出する脚部26と、脚部26の先端に脚部26の外面から膨出する輪郭を有して形成される頭部28とを備える。・・・」
(3)「【図1】
」
第5.引用発明
上記第4.の1.(1)~(8)に示した記載事項を整理すると、引用例1には、以下の引用発明が記載されている。
《引用発明》
天井材本体11に固定されるスペーサ13であって、
前記スペーサ13は、合成樹脂製のブロック体からなり、その上面には、ルーフ構造材の下面に固定されている車体側の面ファスナー16と係合される面ファスナー17が接着固定されている、スペーサ13。
第6.対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「天井材本体11」、「面ファスナー17」、「ルーフ構造材」、「スペーサ13」は、各々、本願発明1の「車両内装天井」、「ファスナ部」、「車体側の部材」、「ファスナ部材」に相当し、また、引用発明の「スペーサ13」は、合成樹脂製のブロック体からなり、天井材本体11に固定されることで、天井材本体11に対して、面ファスナー17の高さ位置を規定するものであるから、本願発明1における「前記車両内装天井に対する前記ファスナ部の高さ位置を調整する高さ調整部」としての機能を有することが明らかである。
さらに、引用発明の「スペーサ13」は、天井材本体11に固定されるものであって、その上面には、面ファスナー17が接着固定されているものであるから、前記「スペーサ13」の「上面」は、本願発明1の「前記ファスナ部が設けられる頂部」に相当し、また、前記「スペーサ13」は、合成樹脂製のブロック体からなるものであるところ、前記「スペーサ13」は、天井材本体11に固定される側の面及び該天井材本体11に固定される側の面から前記「上面」へ向かってその高さ方向に延在し、互いに対向する二対の側壁となる面を有することも明らかである。
してみれば、両者の一致点および相違点は以下のとおりである。
《一致点》
車両内装天井に対して取り付けられる車体側の部材と機械的に結合されると共に、前記車両内装天井に固定されるファスナ部材であって、
係合部材を有すると共に、前記係合部材を前記車体側の部材に係合させることによって、前記車体側の部材と機械的に結合するファスナ部と、
前記車両内装天井に対する前記ファスナ部の高さ位置を調整する高さ調整部と、を備え、
前記高さ調整部は、
前記車両内装天井に固定されるベース部と、
前記ファスナ部が設けられる頂部と、
前記ベース部から前記頂部へ向かって高さ方向に延在し、互いに対向する少なくとも一対の側壁部と、を備えた、ファスナ部材。
《相違点》
本願発明1の「ファスナ部材」は、「ファスナ部」が「表面を有する基部、及び前記表面上に立設され」、「前記基部から突出する軸部、及び前記軸部の先端に形成される矢じり部を有」する「複数の係合部材を有する」ものであり、「高さ調整部」が「貫通孔を有し」ており、その「頂部」が「ベース部よりも小さく」なっており、「前記ファスナ部と前記頂部と前記一対の側壁部と前記ベース部とが、接着剤を介さず一体に形成されている」ものであるのに対し、引用発明の「スペーサ13」は、「面ファスナー17」が、スペーサ13の上面に接着固定されているものであって、該「面ファスナー17」の構造の詳細が不明であり、その「上面」と天井材本体11に固定される側の面との大小関係が特定されていない点。
第7.判断
引用発明における「スペーサ13」の「上面」を、天井材本体11に固定される側の面及び互いに対向する二対の側壁となる面の寸法等は、その具体的な用途等に応じて、当業者が適宜決定すべき設計的な事項であるから、前記「上面」を、天井材本体11に固定される側の面よりも小さくすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
そして、面ファスナが設けられる部材の表面上に、突出する軸部、及び前記軸部の先端に形成される矢じり部を有する複数の係合部材を一体的に形成することで、面ファスナのオス部材を構成する技術は、例えば、引用例2(上記2.(1)から(4)を参照)や引用例3(上記3.(1)~(3)を参照)にも記載されているように、本願出願前に周知の技術であり、その採否は当業者が適宜決定し得たことである。
また、面ファスナが設けられる部材を中空構造とすること、すなわち、貫通孔を有する構造とすることや面ファスナを構成する係合部材と、同部材の面ファスナが設けられる面(頂部)と、その対向面(ベース部)と、側壁となる面とを、接着剤を介さずに、一体的に形成することも、例えば、上記引用例2にも記載されているように、本願出願前に周知の技術であり、その採否は当業者が適宜決定し得たことである。
してみると、引用発明において、面ファスナ17の構造を、「表面を有する基部、及び前記表面上に立設され」、「前記基部から突出する軸部、及び前記軸部の先端に形成される矢じり部を有」する「複数の係合部材を有する」ものとし、「貫通孔を有」するようにし、その「頂部」が「ベース部よりも小さく」なるようにし、「前記ファスナ部と前記頂部と前記一対の側壁部と前記ベース部とが、接着剤を介さず一体に形成されている」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たことというべきである。
そして、本願発明1が奏する作用効果、すなわち、本願明細書の段落【0006】の「このような形態によれば、ファスナ部材のファスナ部は、基部の表面に立設された複数の係合部材を有しており、この係合部材は、基部から突出する軸部、及び軸部の先端に形成される矢じり部を有している。従って、ファスナ部は、矢じり部を第2の部材に設けられたループ部材などの結合対象に引っ掛けることにより、第2の部材と機械的に結合することができる。また、ファスナ部材は、第1の部材に対するファスナ部の高さ位置を調整する高さ調整部を備えているため、ファスナ部に結合された第2の部材と第1の部材との間のギャップの大きさを調整できる。ここで、ファスナ部と高さ調整部とは、一体に形成されている。従って、ファスナ部と高さ調整部との間にはがたつきが生じることなく、第1の部材に対して第2の部材を確実に取り付けることができる。また、がたつきが生じないため、使用時に振動などによる異音を抑制することができる。以上により、部材間の高さ調整が可能であると共に、がたつきや異音を抑制することができる。」、【0030】の「・・・このような貫通孔43によって、ブラケット41の強度に影響が及ぼされる場合がある。」、【0032】の「・・・従って、ファスナ部11は、矢じり部19を部材110に設けられたループ部材150などの結合対象に引っ掛けることにより、部材110と機械的に結合することができる。また、ファスナ部材10は、部材100に対するファスナ部11の高さ位置を調整する高さ調整部12を備えているため、ファスナ部に結合された部材100と部材110との間のギャップの大きさを調整できる。ここで、ファスナ部11と高さ調整部12とは、一体に形成されている。従って、ファスナ部11と高さ調整部12との間にはがたつきが生じることなく、部材100と部材110とを確実に取り付けることができる。また、がたつきが生じないため、使用時に振動などによる異音を抑制することができる。以上により、部材100,110間の高さ調整が可能であると共に、がたつきや異音を抑制することができる。」といったことは、いずれも、引用発明及び引用例2及び3にも例示される周知技術に接した当業者であれば、十分予測し得たことである。
したがって、本願発明1は、引用発明、引用例2及び3にも例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第8.請求人の主張について
請求人は、令和1年6月3日付け意見書の3.(1)及び(2)において、以下A.及びB.を主張しているが、以下1.及び2.に示すように、いずれも当を得たものとはいえないから、採用できない。
A.ベース部は車両内装天井への接着面の広さを確保する観点から大きいほうが望ましく、一方、ファスナ部は矢じり形状であることにより十分な係合力を有するから大きい必要はなく、また矢じり形状のファスナ部は微細形成品であるため、コスト面からはむしろ小さいことが望ましいところ、上記補正後の請求項1に係る発明は、「高さ調整部は貫通孔を有するものであること」、「高さ調整部は、車両内装天井に固定されるベース部と、ファスナ部が設けられる頂部と、ベース部から頂部へ向かって高さ方向に延在し、互いに対向する少なくとも一対の側壁部と、を備えるものであること」、「頂部がベース部よりも小さいこと」との特徴を有することにより、ベース部による車両内装天井への接着性の向上と、矢じり形状のファスナ部を製造するためのコストの低減とを同時に実現できるという顕著な効果を奏する旨。
B.本願明細書の段落【0026】、【0036】、【0038】、【0039】の記載に示唆されるように、一体形成を実現しつつ、且つ、この一体形成品であっても金型の大きさに応じて高さ調整部の高さの変更が容易な工法の採用を重要な観点の一つとして捉えており、高さ調整部が貫通孔を備える構成とすることで、貫通孔を形成する例えばスライド金型の大きさを変更するだけで、高さ調整部の高さを容易に変更でき、これに伴ってファスナ部の高さも容易に変更できるという利点があり(本願明細書の段落【0036】参照)、例えば、スライド金型の大きさの変更により、貫通孔や高さ調整部の高さやベース部の大きさが可変する場合(本願明細書の段落【0036】参照)でも、頂部がベース部よりも小さければ、貫通孔や高さ調整部の高さやベース部の大きさを可変しても、ファスナ部については、微細形成品でありながらも矢じり形状であることにより十分な係合力を有するため、大きさを変えずにそのまま活用できる場合が多く、ファスナ部の高さが異なるファスナ部材や、大きさが異なるファスナ部材を容易に形成できるという観点や利点があるところ、このような本願発明が備える観点や利点は引用文献1~引用文献3に示唆さえなされていない旨。
1.主張A.について
本願明細書には、上記特徴を有することにより、「ベース部による車両内装天井への接着性の向上と、矢じり形状のファスナ部を製造するためのコストの低減とを同時に実現できる」という作用効果が奏される旨は、記載されていないから、上記作用効果は、上記特徴を備えた結果、自ずと奏される作用効果であると解さざるを得ない。
ゆえに、上記第6.で示したとおり、引用発明は「車両内装天井に固定されるベース部と、ファスナ部が設けられる頂部と、ベース部から頂部へ向かって高さ方向に延在し、互いに対向する少なくとも一対の側壁部と、を備える」ものであり、上記第7.で示したとおり、引用発明において、「貫通孔を有」するようにし、その「頂部」が「ベース部よりも小さく」なるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことというべきであるところ、上記作用効果は、引用発明、引用例2及び3にも例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものにおいても、自ずと奏される作用効果であるといわざるを得ないから、上記主張A.は当を得たものではない。
2.主張B.について
本願発明1は、「ファスナ部材」という物の発明であって、その材料(樹脂製、金属製、木製等)や成型方法(射出成形、研削、切削等)を、発明特定事項としていない。
そして、上記主張Bのうち、(1)高さ調整部が貫通孔を備える構成とすることで、貫通孔を形成する例えばスライド金型の大きさを変更するだけで、高さ調整部の高さを容易に変更でき、これに伴ってファスナ部の高さも容易に変更できるという利点や、(2)頂部がベース部よりも小さければ、貫通孔や高さ調整部の高さやベース部の大きさを可変しても、ファスナ部については、そのまま活用できる場合が多く、ファスナ部の高さが異なるファスナ部材や、大きさが異なるファスナ部材を容易に形成できるという利点は、いずれも、本願発明1を、樹脂を材料とし、金型を使った射出成形で製造する場合の利点であると解されるから、これらの利点は、「ファスナ部材」という物の発明であって、材料や成型方法を発明特定事項としていない本願発明1が必ず奏する作用効果であるとはいえない。
また、仮に、本願発明1は、通常は、樹脂を材料とし、金型を使った射出成形で製造されるべきものであるとしても、上記(1)及び(2)の利点は、金型を使った射出成形に精通した当業者であれば、予測し得る程度のものと解される。
したがって、上記主張B.も当を得たものとはいえない。
第8.むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願発明2及び3について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-005077