特許拒絶査定不服審判
2023-006776
袋及び袋の製造方法
- 審判番号
- 2023-006776
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-049129外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年04月24日
- 審決日
- 2025年04月17日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-WZ (B65D) / P18 .121-WZ (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-49129号「袋及び袋の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和4年5月18日出願公開、特開2022-75970号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年3月20日に出願した特願2018-53336号の一部を令和4年3月24日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 9月 1日付け:拒絶理由通知書
令和4年11月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 2月 1日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和5年 2月 7日 :原査定の謄本の送達)
令和5年 4月24日 :審判請求書の提出、同時に手続補正書の提出
令和7年 1月 9日付け:拒絶理由通知書
令和7年 3月 7日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明について
本願の請求項に係る発明は、令和7年3月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1の記載は次のとおりである。
以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。
「【請求項1】
収容部を有する袋であって、
前記袋の内面に位置するシーラントフィルムと、前記シーラントフィルムよりも外面側に位置する少なくとも1つのプラスチックフィルムと、を含む積層体と、
一対の前記積層体の内面同士を接合するシール部と、を備え、
前記シーラントフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体を70質量%以上含む単層のフィルムであり、
前記シール部は、前記袋の外縁に位置する外縁シール部と、前記外縁シール部よりも前記収容部の中心点側に位置し、前記収容部の圧力の増加により剥離する蒸気抜きシール部と、を有し、
25℃のときの前記シール部のシール強度が40N以上55N以下であり、
100℃のときの前記シール部のシール強度が23N以下であり、
流れ方向における前記シーラントフィルムの引張弾性率(MPa)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、35000以上である、袋。」
第3 当審で通知した拒絶理由
当審で通知した拒絶理由は、以下の内容を含むものである。
(進歩性)この出願の請求項1~3に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
<引用文献等一覧>
1.特開2017-105502号公報
2.井上保(外2名)、「レトルトパウチにおけるヒートシール条件の最適化」、東洋食品工業短期大学紀要、第4号、p7-10、2017年(技術常識を示す文献)
3.寺西正芳(外1名)、「東レフィルム加工の高機能フィルム」、一般社団法人 日本食品包装協会、153号、2017年1月(技術常識を示す文献)
4.東レフィルム加工株式会社、「トレファン〇R(当審注:〇の中にR。以下同じ。)NO 無延伸ポリプロピレンフィルム」、2022年12月1日(技術常識を示す文献)
5.特開2017-57008号公報
以下、これらの文献を「引用文献1」等という。
第4 当審の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
ア 当審で通知した拒絶理由通知書において引用した引用文献1には、図面とともに以下の記載がある(下線は当審において付与し、・・・は省略を示す。以下同様。)。
・「【請求項1】
スタンディングパウチであって、
このスタンディングパウチは、矩形の前側胴部、および矩形の後ろ側胴部、及び底部のパーツから構成されて内容物の収納が可能で、
これらのパーツはプラスチックフィルムを基材として、少なくとも一方の面にはヒートシール可能な層が設けられた積層体からなり、
矩形の前側胴部と矩形の後ろ側胴部は、左右両側縁辺部のサイドシール部で互いにヒートシールされて接着されており、
内容物を収納した際には、底部はガセット方式で底部の幅が広がるように、底部と各胴部が互いにヒートシールされて接着されており、
また矩形の胴部の上辺中央部は、内容物加熱時の通蒸機構を備えて、前側胴部と後ろ側胴部が互いにヒートシールされて接着されており、
左右両側縁辺部のサイドシール部の、少なくとも一方には中空のエアバッグを設けてあることを特徴とする、スタンディングパウチ。」
・「【0023】
通蒸機構(3)は、矩形の上辺(2)中央部に設けられた、ヒートシール部が矩形の外側から内側に向けて凹む、凹み部分を有する部分である。電子レンジ内でパウチを自立させて内容物を加熱調理する際に、内部で発生した蒸気の内圧によってパウチが膨張する。このとき、膨らみ方が内部の膨張中心から外側に向けて放射状に膨らむために、図1における通蒸機構(3)の凹み部分、とくにヒートシールのV字形の先端部(15)には応力集中が起こり、この部分でヒートシールが剥離して破壊され、加熱によって発生した内部の蒸気をパウチ外部へ排出することができる。」
・「【0030】
(積層体)
本発明によるスタンディングパウチは、プラスチックフィルムを基材として、一方の面にシーラント層を有する積層体からなるが、図3は本発明に係る、スタンディングパウチを構成する積層体の一実施形態を説明するための部分断面模式図である。
【0031】
スタンディングパウチ(20)はプラスチックフィルムを基材として、積層体の一方の面にシーラント層(14)を設けてある。図3に示した実施形態例においては、パウチ内側になる面にシーラント層(14)を配置してある。したがって、このシーラント層(14)を用いてパウチを製袋した場合には、内容物はシーラント層(14)に接してパウチに充填、収納される。
また、パウチ外側になる面にはガスバリアフィルム(11)を設けてあり、このガスバリアフィルム(11)はプラスチックフィルム(8)に無機化合物によるガスバリア層(9)を設けたものである。」
・「【実施例】
【0054】
<実施例>
スタンディングパウチを構成する積層体の構成は、以下のとおりとした。図3は本発明に係る、スタンディングパウチを構成する積層体の実施例の層構成を説明するための、部分断面模式図である。
ここではガスバリアフィルム(11)には(当審注:原文記載のまま)プラスチックフィルム層(8)にはポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、またガスバリア層(9)として無機化合物の蒸着層、無機化合物のコーティング層を、プラスチックフィルム層(8)側から順次積層したものを用いた。ガスバリアフィルム(11)はプラスチックフィルム層(8)側をパウチ外側にして接着剤層(13)を介して積層して用いた。
また中間プラスチックフィルム層(12)としては、延伸ポリアミドフィルムを用いた。シーラント層(14)には、東レフィルム加工株式会社製、無延伸ポリプロピレンフィルム、ZK207を用いた。
【0055】
積層体(20)の層構成およびその厚さは下記のとおりである。
パウチ外側から、
ガスバリアフィルム(厚さ12μm)/接着剤層(厚さ5μm)/延伸ポリアミドフィルム層(厚さ15μ)/接着剤層(厚さ5μm)/シーラント層(フィルム厚さ60μm)である。」
・「【図1】
[図:0001423898000001.jpg]
」
・「【図3】
[図:0001423898000002.jpg]
」
イ 引用発明
以上より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「スタンディングパウチ(10)であって、
このスタンディングパウチ(10)は、矩形の前側胴部(4)、および矩形の後ろ側胴部(5)、及び底部(6)のパーツから構成されて内容物の収納が可能で、
これらのパーツはプラスチックフィルムを基材として、少なくとも一方の面にはヒートシール可能なヒートシール層(14)が設けられた積層体からなり、
矩形の前側胴部(4)と矩形の後ろ側胴部(5)は、左右両側縁辺部のサイドシール部(1)で互いにヒートシールされて接着されており、
内容物を収納した際には、底部(6)はガセット方式で底部の幅が広がるように、底部(6)と各胴部が互いにヒートシールされて接着されており、
また矩形の胴部の上辺中央部は、内容物加熱時の通蒸機構(3)を備えて、前側胴部(4)と後ろ側胴部(5)が互いにヒートシールされて接着されており、
左右両側縁辺部のサイドシール部(1)の、少なくとも一方には中空のエアバッグ(7)を設けてあり、
通蒸機構(3)は、矩形の上辺(2)中央部に設けられた、ヒートシール部が矩形の外側から内側に向けて凹む、凹み部分を有する部分であり、電子レンジ内でパウチを自立させて内容物を加熱調理する際に、内部で発生した蒸気の内圧によってパウチが膨張し、膨らみ方が内部の膨張中心から外側に向けて放射状に膨らむために、通蒸機構(3)の凹み部分、とくにヒートシールのV字形の先端部(15)には応力集中が起こり、この部分でヒートシールが剥離して破壊され、加熱によって発生した内部の蒸気をパウチ外部へ排出することができ、
スタンディングパウチ(20)はプラスチックフィルムを基材として、積層体の一方の面にシーラント層(14)を設けてあり、パウチ内側になる面にシーラント層(14)を配置してあり、このシーラント層(14)を用いてパウチを製袋した場合には、内容物はシーラント層(14)に接してパウチに充填、収納され、
パウチ外側になる面にはガスバリアフィルム(11)を設けてあり、このガスバリアフィルム(11)はプラスチックフィルム(8)に無機化合物によるガスバリア層(9)を設けたものであり、
積層体として、プラスチックフィルム層(8)にはポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、またガスバリア層(9)として無機化合物の蒸着層、無機化合物のコーティング層を、プラスチックフィルム層(8)側から順次積層したものを用い、ガスバリアフィルム(11)はプラスチックフィルム層(8)側をパウチ外側にして接着剤層(13)を介して積層して用い、
中間プラスチックフィルム層(12)としては、延伸ポリアミドフィルムを用い、シーラント層(14)には、東レフィルム加工株式会社製、無延伸ポリプロピレンフィルム、ZK207を用い、
シーラント層(14)のフィルム厚さは60μmである、
スタンディングパウチ。」
(2)引用文献2の記載事項
ア 引用文献2には、次の記載がある。
・「
[図:0001423898000003.jpg]
」(第7ページ右欄)
イ 技術常識
引用文献2の記載からみて、次の事項は技術常識(以下、「技術常識1」という。)である。
「製品名:“トレファン”NO ZK207,東レフィルム加工(株)は、エチレン・プロピレンコポリマー,エチレン・αオレフィンコポリマー,ポリエチレンをブレンドして構成されていること。」
(3)引用文献3の記載事項
ア 引用文献3には、次の記載がある。
・「
[図:0001423898000004.jpg]
」
イ 技術常識
以上の記載から看取するに、次の事項は技術常識として理解できる(以下、それぞれ「技術常識2」、「技術常識3」という。)。
(ア)「ZK207は、25℃でのシール強度は50~60N/15mmの間であり、100℃でのシール強度は10~20N/15mmの間であること。」
(イ)「ZK207のヒートシール強度はシール温度により変化すること。」
(4)引用文献4の記載事項
ア 引用文献4には、次の記載がある。
・「
[図:0001423898000005.jpg]
」
イ 技術常識
トレファン○R NO ZK207は、引用文献2に記載されているとおり、少なくとも2017年にはトレファンとして市販されていたものである。そうすると、引用文献4は、2022年12月1日の刊行物ではあるが、その記載からみて、トレファン○R NO ZK207は当時から以下の物性を持つことが強く推認される(以下「技術常識4」という。)。
「トレファン○R NO ZK207のMD方向のヤング率は630MPaであること。」
2 引用発明との対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明と引用発明を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・引用発明の「ヒートシール層(14)」は、本願発明の「シーラントフィルム」に相当し、以下同様に、
「プラスチックフィルム層(8)」は、「プラスチックフィルム」に、
「積層体」は、「積層体」にそれぞれ相当する。
・引用発明の「スタンディングパウチ」は「内容物の収納が可能で」あることから、本願発明の「収容部を有する袋」に相当する。
・引用発明の「積層体」は、「パウチ内側になる面にヒートシール層(14)を配置してあり」、「パウチ外側になる面」に「ガスバリアフィルム(11)」として「プラスチックフィルム層(8)」が設けられていることから、本願発明の「前記袋の内面に位置するシーラントフィルムと、前記シーラントフィルムよりも外面側に位置する少なくとも1つのプラスチックフィルムと、を含む積層体」の態様を備えるものである。
・引用発明の「積層体」は、「左右両側縁辺部のサイドシール部(1)で互いにヒートシールされて接着されて」いることから、本願発明の「一対の前記積層体の内面同士を接合するシール部」を備えている。
・引用発明の「通蒸機構(3)」は、上辺(2)付近のシール部と、V字形の先端部(15)付近のシール部が存在し、内部の蒸気によって先端部(15)付近のヒートシールが剥離することから、その形状ないし剥離の態様からみて、本願発明の「前記シール部は、前記袋の外縁に位置する外縁シール部と、前記外縁シール部よりも前記収容部の中心点側に位置し、前記収容部の圧力の増加により剥離する蒸気抜きシール部と、を有し」という態様を備えるものである。
(2)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「収容部を有する袋であって、
前記袋の内面に位置するシーラントフィルムと、前記シーラントフィルムよりも外面側に位置する少なくとも1つのプラスチックフィルムと、を含む積層体と、
一対の前記積層体の内面同士を接合するシール部と、を備え、
前記シール部は、前記袋の外縁に位置する外縁シール部と、前記外縁シール部よりも前記収容部の中心点側に位置し、前記収容部の圧力の増加により剥離する蒸気抜きシール部と、を有する、袋。」
[相違点]
シーラントフィルムに関し、本願発明は、「前記シーラントフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体を70質量%以上含む単層のフィルムであり、
25℃のときの前記シール部のシール強度が40N以上55N以下であり、
100℃のときの前記シール部のシール強度が23N以下であり、
流れ方向における前記シーラントフィルムの引張弾性率(MPa)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、35000以上である」のに対し、引用発明のヒートシール層(14)は「東レフィルム加工株式会社製、無延伸ポリプロピレンフィルム、ZK207」を用いているが、組成や特性について当該事項を満たすものであるか不明な点。
3 判断
以下、上記相違点について検討する。
(1)本願発明のシーラントフィルムについて
本願明細書では、実施例A1~A4、B1~B13において、シーラントフィルム70として、「東レフィルム加工株式会社製の未延伸ポリプロピレンフィルム ZK207」を用いている(段落【0145】)。これは、製造会社やその商品名を踏まえると、引用発明における「東レフィルム加工株式会社製、無延伸ポリプロピレンフィルム、ZK207」(以下「ZK207」という。)と同じものといえる。
(2)ZK207の特性
ア ZK207は、技術常識1に示すように、エチレン・プロピレンコポリマーを含むもの、すなわち「プロピレン・エチレンブロック共重合体」を含む単層のフィルムとして継続して市販されたものである。そして、本願発明の実施例としてZK207を用いているところ、引用発明もこれを用いているのであるから、そのプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有量は、70質量%以上含む蓋然性が高い。
イ 技術常識2に示すように、ある条件におけるZK207の25℃におけるシール強度は50~60N/15mm程度であり、100℃におけるシール強度は10~20N/15mm程度である。
また、技術常識3に示すように、ZK207のシール強度はシール温度によって変化する。さらに、ヒートシール層のシール強度は、ヒートシール層の厚みによっても変化することも本願の原出願時において当業者に知られていた。
そして、引用発明において、シーラント層(14)のシール強度をどのようにするかは、内容物や性能・品質・コスト等に応じて、当業者が適宜設計すべき値であり、技術常識2、3からすれば、25℃におけるシール強度を40N以上55N以下とし、100℃におけるシール強度を23N以下とすることに、格別な困難性は認められない。
ウ 技術常識4に示されているように、商品としてZK207のMD方向のヤング率は、630MPaとして継続して市販されていたことが強く推認される。そして、引用発明では、シーラント層(14)の厚みとして60μmの積層体を用いており、その場合、シーラント層(14)のヤング率と厚みの積は37800となる。
(3)相違点についてのまとめ
上記相違点を総合的に勘案すれば、当該相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たものである。そして、当該相違点によって本願発明が奏する作用効果は、引用発明及び技術常識から予測される範囲内のものであり、格別顕著なものということはできない。
4 請求人の主張について
請求人は令和7年3月7日提出の意見書(以下「意見書」という。)において、以下の主張をしている。
「引用文献3の図9には、25℃におけるZK207のシール強度が約58N/15mmであることが示されています。また、引用文献3の図8には、上板シール温度が180℃~240℃の場合の、ZK207のヒートシール強度が示されています。引用文献3の図8によると、上板シール温度が180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃及び240℃のときのZK207のヒートシール強度がそれぞれ、約3N/15mm、約10N/15mm、約37N/15mm、約51N/15mm、約55N/15mm、約58N/15mm、及び約56N/15mmとなっています。このことから、引用文献3の図9において25℃におけるZK207のシール強度として示されている約58N/15mmという数値は、上板シール温度を180℃~240℃の範囲で変化させた場合のシール強度の最大値であることが分かります。すなわち、引用文献3においては、上板シール温度を最適化することによって得られるシール強度の最大値が、ZK207などのCPPフィルムのシール強度として扱われていると言えます。
・・・
また、引用文献3には、「ZK207はZK100の知見を活かし、ヒートシール強度や落袋強度などを改良し、総合的に性能のバランスを取ったグレードで、現在、当社の主力グレードになっている。」と記載されています。すなわち、ZK207は、ヒートシール強度が改良されていることを特徴の1つとしています。
これらの点に鑑みると、引用文献1に記載の、ZK207を用いる発明において、当業者が25℃のときのシール強度を、引用文献3に記載の約58N/15mmという数値をあえて低下させて55N以下にしようとする動機は存在しないと考えます。従って、本願発明は、引用文献1~5に基づいて当業者が容易に発明することができたものではないと考えます。
拒絶理由通知書は、本願発明の進歩性を否定するにあたって、「前記シーラントフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体を70質量%以上含む単層のフィルムである」、「流れ方向における前記シーラントフィルムの引張弾性率(MPa)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、35000以上である」などの特徴を、ZK207という特定のCPPフィルムに依拠して否定しています。ZK207という特定のCPPフィルムに依拠し、更に引用文献3に依拠する限り、25℃のときのシール強度として55N以下という数値を当業者が採用しようとする動機が客観的に認められない」。(意見書の第2ページ第32行~第4ページ第6行)
しかしながら、技術常識3のとおり、ZK207はシール温度でシール強度が変化するものであるところ、従来品よりも高いシール強度を得られる商品であるとしても、常にシール強度の最大値で利用しなければならないというものではない。また、当業者であれば、シール強度以外の物性も含め、適したフィルムを選択するものである。そして、上記3(2)イで述べたように、シール強度は、内容物や性能・品質・コスト等に応じて、当業者が適宜設計すべき値にすぎない。また、本願明細書を参酌しても、25℃のときのシール強度として55N以下という値に臨界適意義は確認できない。
また、引用文献3は、ZK207のシール強度という技術常識2を示すために提示した一例であり、引用文献3に25℃のときのシール強度として約58N/15mmという値が記載されていることと、引用発明において25℃のときのシール強度として55N以下の値を採用することとの間に直接的な関係はなく、阻害要因となるべき事項も見いだせない。
よって、請求人の主張を採用することはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-006776