特許拒絶査定不服審判
2022-003548
プラスチックボトル
- 審判番号
- 2022-003548
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-017658外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年03月08日
- 審決日
- 2023年02月28日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-Z (B65D) / P18 .121-Z (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-17658号「プラスチックボトル」拒絶査定不服審判事件〔令和元年8月8日出願公開、特開2019-131280号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月2日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年11月22日付け:拒絶理由通知書
令和4年 1月18日 :意見書、手続補正書の提出
同年 2月24日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
同年 3月 8日 :審判請求書の提出
第2 本願発明について
本願の請求項1~11に係る発明は、令和4年1月18日に提出された手続補正書により補正された請求項1~11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。
以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。
「【請求項1】
炭酸飲料を充填するためのプラスチックボトルであって、
二つの端点を結ぶ線状溝が表面に形成され、
前記線状溝は、外観上において線をなす、
プラスチックボトル。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由の概要は、次のとおりである。
1.(新規性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1~3のいずれかに記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
<引用文献等一覧>
1.意匠登録第1529580号公報
2.意匠登録第1494143号公報
3.特開2009-35266号公報
第4 当審の判断
1 引用文献等
(1) 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用した引用文献3(特開2009-35266号公報)には、以下の記載がある(下線は当審において付与した。「・・・」は、文の省略を意味する。以下同様。)。
ア「【0011】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。本実施形態に係るボトル10は、図1に示されるように、口部11、肩部12、胴部13および底部14を備え、これら11、12、13、14が、それぞれの中心軸線を共通軸上に位置させられた状態で、この共通軸方向の一方から他方に向けてこの順に連設された概略構成とされている。
【0012】
なお、このボトル10は、例えばブロー成形等によりポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂で一体に形成されている。また、口部11の外周面には雄ねじ部11aが形成されており、この雄ねじ部11aに図示されないキャップが着脱可能に螺着されるようになっている。さらに、このボトル10は、透明若しくは半透明の合成樹脂で形成されている。また、このボトル10は、密封された状態でボトル内圧を上昇させる内容物、例えば炭酸飲料等が充填されて用いられる。」
イ「【0014】
そして、本実施形態では、肩部12の外周面に、一方向に沿って延在する第1凹溝17と前記一方向に交差する他方向に沿って延びる第2凹溝18とがそれぞれ複数ずつ形成され、これらの両凹溝17、18により当該ボトル10の側面視で矩形状を呈する単位構成面部19が複数区画されている。
図示の例では、第1凹溝17および第2凹溝18はそれぞれ、肩部12の外周面に沿った方向において、前記中心軸線O方向およびこのボトル10の周方向の双方に対して傾斜する方向に沿って延在し、この延在する方向と直交する方向に間隔をあけて複数ずつ配置されて、肩部12のほぼ全域に配置されている。
【0015】
なお、第1凹溝17および第2凹溝18それぞれの深さは、互いに同等とされて例えば約0.7mmとなっている。また、図示の例では、第1凹溝17は、肩部12の側面視で左斜め下方に凸の曲線をなして前述のように延在し、第2凹溝18は、肩部12の側面視で右斜め下方に凸の曲線をなして前述のように延在している。そして、これらの第1凹溝17および第2凹溝18がそれぞれ前記側面視で呈する曲率半径R1、R2は互いに同等とされるとともに肩部12の前述した凹曲面状がなす曲率半径R3と同等になっている。
【0016】
また、図示の例では、各単位構成面部19は、前記側面視で前記中心軸線O方向に長い菱形状を呈している。なお、各単位構成面部19が有する4つの角部19a、19b、19c、19dは、第1凹溝17と第2凹溝18との交差部分で画成されている。
さらに、前述の4つの角部19a~19dのうち、角度の小さい2つの鋭角部19a、19bはそれぞれ、単位構成面部19における前記中心軸線O方向の両端部を各別に構成し、角度の大きい2つの鈍角部19c、19dはそれぞれ、単位構成面部19における前記周方向の両端部を各別に構成している。
・・・
【0019】
以上より、肩部12に形成された複数の面部列A~Cのうち、前記中心軸線O方向で隣り合う面部列がそれぞれ有する各単位構成面部19は、前記周方向における位置が互いに異ならされて配置され、肩部12に網目模様が施された構成となっている。
なお、両凹溝17、18の各上端は互いに交差して連通し、各下端は互いに前記周方向に離れて独立している。また、両凹溝17、18の各下端部は、その下端に向かうに従い漸次前記径方向の内方に向けた凹み量が浅くなっている。」
ウ「【0023】
また、このようにボトル10に優れた光輝性を発揮させるために、ボトル自体とは別の新たな部材を用いなくても単に第1凹溝17および第2凹溝18を肩部12の外周面に形成すればよいので、例えばブロー成形等の現行と同じ製法を適用することが可能になり、このボトル10の製造コストが増大するのを防ぐことができる。
さらに、単位構成面部19が第1凹溝17および第2凹溝18で区画されているので、ボトル内圧の上昇時に単位構成面部19が前記径方向の外方に向けて膨出変形しようとしても、この変形に対して第1凹溝17および第2凹溝18をリブとして作用させることが可能になる。したがって、ボトル内圧の上昇によって単位構成面部19が前述のように膨出変形するのを抑えることが可能になり、ボトル内圧の上昇時に前述の光輝性が低下するのを抑制することができる。
さらにまた、本実施形態では、単位構成面部19に稜線部20が形成されているので、前述の光輝性をより一層高めることができる。」
エ「【図1】
[図:0001396845000001.jpg]
」
オ 上記イ、エから、「第1凹溝17及び第2凹溝18は、それぞれの上端と下端を結ぶ溝」であることが記載されているといえる。
(2) 引用発明
上記(1)において摘記した事項を総合すると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「炭酸飲料が充填されて用いられるポリエチレンテレフタレートの合成樹脂で形成されるボトル10であって、
ボトル10の肩部12の外周面に、一方向に沿って延在する第1凹溝17と前記一方向に交差する他方向に沿って延びる第2凹溝18とがそれぞれ複数ずつ形成され、これらの両凹溝17、18により当該ボトル10の側面視で矩形状を呈する単位構成面部19が複数区画されており、
第1凹溝17及び第2凹溝18は、それぞれの上端と下端を結ぶ溝である、
ボトル10。」
2 対比・判断について
(1)対比
本願発明と引用発明とをその機能、構造及び技術的意義を考慮して対比する。
引用発明の「炭酸飲料が充填されて用いられるポリエチレンテレフタレートの合成樹脂で形成されるボトル10」は、本願発明の「炭酸飲料を充填するためのプラスチックボトル」に相当し、引用発明の「肩部12の外周面」は、本願発明の「表面」に相当する。
そうすると、引用発明の「ボトル10の肩部12の外周面に、」「形成され」ることは、本願発明の「プラスチックボトル」の「表面に形成され」ることに相当する。
引用発明の「一方向に沿って延在する第1凹溝17と前記一方向に交差する他方向に沿って延びる第2凹溝18」であって「それぞれの上端と下端を結ぶ溝」と、本願発明の「二つの端点を結ぶ線状溝」とは、「二つの端点を結ぶ溝」である限りで一致する。
そうすると、本願発明と引用発明は、以下の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。
[一致点]
「炭酸飲料を充填するためのプラスチックボトルであって、
二つの端点を結ぶ溝が表面に形成される、
プラスチックボトル。」
[相違点]
二つの端点を結ぶ溝について、本願発明は、「外観上において線をなす」「線状溝」であるのに対して、引用発明は、「一方向に沿って延在する第1凹溝17と前記一方向に交差する他方向に沿って延びる第2凹溝18」であるものの、「外観上において線をなす」「線状溝」であることが特定されていない点。
(2)判断
上記相違点について以下検討する。
ア 本願発明は、「外観上において線をなす」ことにおける、「線」について、具体的な線の長さや線の幅について特定していない。
そこで、本願発明の各用語の文言上の意味を検討するに、「線状」という用語は、一般に「細長い、線の形をしていること。」(広辞苑第六版)を意味し、また、「線」という用語が、一般に「糸のように細く長いもの。すじ。」(広辞苑第六版)を意味し、「外観」という用語が、一般に「外部から見た様子。表面に現れた姿。見かけ。うわべ。」(広辞苑第六版)を意味しているから、本願発明の「前記線状溝は、外観上において線をなす」とは、細長い、線の形をした溝が、外部から見て、糸のように細く長いものか、すじをなしていることを意味している。
また、本願発明の「外観上において線をなす」「線状溝」について、本願明細書には、以下の事項が記載されている。
「【0041】
図5は、線状溝5の断面形状を示すものである。
この線状溝5の断面形状は、以下にて定義される。
容器表面Sから最大深さの距離は深さHで定義される。
深さHにある部位は溝底Bで定義される。
容器表面Sでの線状溝5の開口幅は溝幅Wで定義される。
溝底Bと容器表面Sを結ぶ面は溝表面Mで定義される。
溝底Bで交差する溝表面M同士がなす角度は開口角度Kで定義される。
溝底Bの断面形状は曲率半径Rで定義される。
【0042】
以上の構成により、線状溝5は断面略V字状の溝として構成されることができ、溝の断面形状を定義する数値は以下の範囲とされる。
【0043】
深さH:0.05mm以上0.5mm以下
溝幅W:0.119mm以上2.144mm
開口角度K:100°以上130°以下
曲率半径R:0.1mm以上0.5mm以下」
以上の事項を踏まえると、本願発明の「外観上において線をなす」「線状溝」は、細長い、線の形をした溝が、外部から見て、糸のように細く長いものか、すじをなすものを意味し、その具体的な線の幅までは特定されていないものの、本願明細書によると、線状溝の溝幅は、2mm程度のものまでが含まれることが想定されているといえ、溝幅が2mm程度の溝は、外観上、溝のエッジの部分と、底の部分が目視で確認できる程度の幅を有しているといえる。
イ 他方、引用発明の「第1凹溝17」、「第2凹溝18」の溝幅について、引用文献3には、具体的な記載はないものの、図1をみると、外部から見て、少なくともすじのように見えると言わざるをえない。また、一般に糸の幅には種々のものがあることから、引用発明の「第1凹溝17」、「第2凹溝18」も、外部から見て幅のある糸のように細長く見えるといいえるものである。
ウ そうすると、本願発明における「外観上において線をなす」「線状溝」は、溝のエッジの部分と、底の部分が目視で確認できる程度の幅を有する溝を含むといえるから、引用発明の第1凹溝17および第2凹溝18が、引用文献3の図1に図示されるように、溝のエッジの部分と、底の部分が目視で確認できる程度の幅を有するものだとしても、「外観上において線をなす」「線状溝」であるといえる。
エ 以上を踏まえると、上記相違点は、実質的な相違点ではない。
また、相違するところが仮に存在するとしても、当該事項は、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本願発明は、引用発明であるか、または引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 請求人の主張について
請求人は審判請求書において、以下の主張をしている。
「(8)
同様に、引用文献3においては、段落0023において、「単位構成面部19が第1凹溝17および第2凹溝18で区画されているので、ボトル内圧の上昇時に単位構成面部19が前記径方向の外方に向けて膨出変形しようとしても、この変形に対して第1凹溝17および第2凹溝18をリブとして作用させることが可能になる。したがって、ボトル内圧の上昇によって単位構成面部19が前述のように膨出変形するのを抑えることが可能になり、ボトル内圧の上昇時に前述の光輝性が低下するのを抑制することができる。」と記載されております。
ここで、「リブ」というのは、当業者において周知なように、補強をするための有意な幅のある凹溝であり、本願で定義するとこころの線状溝とはかけ離れたものであることは言うまでも有りません。
したがって、引用文献3においては、この「リブ」の記載が本願発明を想起することの阻害要因となって、より一層本願発明に想到することが困難となるものであります。つまり、引用文献3においては、「光輝性が低下するのを抑制する」という効果を果たすために幅の広い凹溝からなる「リブ」が必須の構成であるところ、この「リブ」を使用せずに本願構成とすることの動機付けは到底働くものでは有りません。」(審判請求書の第5ページ第8~24行)
「(10)
また、審査官による拒絶理由通知や拒絶査定では、引用文献1乃至3に開示される溝を「幅広溝」と認定せずに、“外観上において線をなしている”というだけで、本願の「線状溝」との対比を厳密に行っておりません。
改めて記載をいたしますが、引用文献1乃至引用文献3に開示されるような「幅広溝」の場合、その幅の広さがあるが故に、幅広溝の“エッジ”の部分と、“底”の部分が目視で確認できるような状態となっております。このエッジは溝でなく、当然に線状溝ではありません。また、二本のエッジの間に底が現れるものであって、本願のような一本の線状溝が現れる外観とは明らかに見え方が異なるものであります。
[図:0001396845000002.jpg]
(11)
そして、このような幅広い底の部分があることによって、「内圧を受ける面積が大きくなり、溝部分が外側に押出されて溝を形成しなくってしまう」、といった不具合が生じてしまうのであります。
したがって、引用文献1乃至3に開示される溝が「幅広溝」であることを厳密に認定することが非常に重要なものではありますが、この点については、審査官においては何ら考慮されず、単に“外観上は線に見えるので”といったいわば個人的な感覚によって、新規性や進歩性が否定されており、極めて雑な判断が行われていると見受けられます。」(審判請求書の第6ページ第9行~第7ページ第8行)
しかしながら、本願発明は、「線状溝」や「線」の長さや幅について具体的な特定をするものではなく、幅広溝の“エッジ”の部分や、“底”の部分について特定するものでもなく、上記2(2)で示したとおり、「外観上において線をなす」「線状溝」とは、溝のエッジの部分と、底の部分が目視で確認できる程度の幅を有する溝を含むといえるから、引用発明の第1凹溝17および第2凹溝18も、「外観上において線をなす」「線状溝」であるといえる。
よって、請求人の主張を採用することはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定及び同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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