審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2023-005382

充放電装置

審判番号
2023-005382
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-132631外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年04月04日
審決日
2023年12月04日
公報発行日
2024年02月22日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H02J) / P18 .575-Z (H02J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-132631「充放電装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月16日出願公開、特開2020- 10580〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年7月12日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和 4年 2月 4日付け 拒絶理由通知書 4月 8日 意見書・手続補正書 7月29日付け 拒絶理由通知書(最後) 10月12日 意見書・手続補正書 令和 5年 1月 4日付け 補正の却下の決定・拒絶査定 4月 4日 審判請求書・手続補正書 6月 9日 前置報告書 8月23日 上申書 以下では、令和5年1月4日付け拒絶査定を「原査定」といい、同年4月4日の手続補正書による補正を「本件補正」という。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 (1)本件補正前の請求項1の記載 本件補正前の令和4年4月8日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 電気自動車用充電器から充電用電力を受電する電力受電部と、 前記充電用電力により充電される電力貯蔵部と、 複数の外部機器が接続される複数の電力出力部であって、接続された前記外部機器のそれぞれに対して個別放電電力を出力する複数の電力出力部と、 前記電力貯蔵部を電力源として前記個別放電電力を生成する電力生成部と、 前記電力貯蔵部の充電制御および前記電力貯蔵部の放電制御を行う制御部と、 を備える充放電装置であって、 前記電力貯蔵部は、前記充放電装置の内部に備えられる、 充放電装置。」 (2)本件補正後の請求項1の記載 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。 「【請求項1】 電気自動車用充電器から充電用電力を受電する電力受電部と、 前記充電用電力により充電される電力貯蔵部と、 複数の外部機器が接続される複数の電力出力部であって、接続された前記外部機器のそれぞれに対して個別放電電力を出力する複数の電力出力部と、 前記電力貯蔵部を電力源として前記個別放電電力を生成する電力生成部と、 前記電力貯蔵部の充電制御および前記電力貯蔵部の放電制御を行う制御部と、 を備える充放電装置であって、 前記電力貯蔵部は、前記充放電装置の内部に備えられ、 さらに、前記電力貯蔵部は、当該充放電装置において単数備えられ、 前記電力生成部は、前記複数の電力出力部に対応して複数備えられる、 充放電装置。」 2 補正の目的 本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「電力貯蔵部」について「当該充放電装置において単数備えられ」との限定を付加し、さらに、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「電力生成部」について「前記複数の電力出力部に対応して複数備えられる」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当する。 3 補正の適否 本件補正の目的が限定的減縮に該当するので、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)に記載したとおりのものである。 なお、後の参照の便宜のため、請求項1を以下のA~Jに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。 【請求項1】 A 電気自動車用充電器から充電用電力を受電する電力受電部と、 B 前記充電用電力により充電される電力貯蔵部と、 C 複数の外部機器が接続される複数の電力出力部であって、接続された前記外部機器のそれぞれに対して個別放電電力を出力する複数の電力出力部と、 D 前記電力貯蔵部を電力源として前記個別放電電力を生成する電力生成部と、 E 前記電力貯蔵部の充電制御および前記電力貯蔵部の放電制御を行う制御部と、 F を備える充放電装置であって、 G 前記電力貯蔵部は、前記充放電装置の内部に備えられ、 H さらに、前記電力貯蔵部は、当該充放電装置において単数備えられ、 I 前記電力生成部は、前記複数の電力出力部に対応して複数備えられる、 J 充放電装置。 (2)文献の記載事項 ア 引用文献の記載事項 (ア)原査定で引用された国際公開第2018/074446号(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した(以下同様)。 a 「[0006] そこで、本発明は、大容量の蓄電池を用いた電源装置の移動を容易にすることを目的とする。」 b 「[0014] 本実施の形態の電源装置10は、台車20とインバーター30とバッテリー取付部40とバッテリー50とを有している。 [0015] 台車20は、底板23とフレーム21と車輪22とカバーとを備えている。底板23は、平板である。底板23は、たとえばステンレス鋼製である。」 c 「[0018] 台車20の左右の側面には、側板24が取り付けられている。それぞれの側板24には、スリット25が形成されている。側板24は、たとえばステンレス鋼製である。側板24の内側には、補助側板92が取り付けられていてもよい。また、台車20の前方上部の左右などには、補強板91が取り付けられていてもよい。 [0019] 台車20の前面の下部には、前板26が取り付けられている。前板26には、スリット27が形成されている。台車20の前面の上部には、斜板28が取り付けられている。前板26および斜板28は、たとえばステンレス鋼製である。前板26の下部には、LEDライト93が取り付けられている。LEDライト93は、たとえば左右に2つ設けられている。LEDライト93のそれぞれは、たとえば複数のLEDを有している。LEDライト93は、できるだけ地面に平行に、すなわち水平方向に光を照射する。これにより、地面の凹凸が視認しやすくなる。LEDライト93は、平面に照らした場合の輝度のばらつきが小さい方が好ましい。 [0020] 台車20の背面の下部には、吸入パネル70が取り付けられている。吸入パネル70には、下方に開口した吸入口71が形成されている。吸入パネル70は、たとえばステンレス鋼製である。吸入パネル70の内側面には、埃などの侵入を抑制するフィルターを設けてもよい。台車20の前面近傍には、ファンが設けられていて、吸入パネル70から台車20の前方に向かう空気の流れを形成できるようになっている。 [0021] 台車20の背面の上部には、操作パネル80が取り付けられている。操作パネル80は、メインスイッチ84とACアウトレット97とLCDディスプレイ83とを備えている。操作パネル80に、USB端子、AC入力端子、ソーラーパネルの入力部などを備えてもよい。 [0022] 台車20の上面には、上板29が取り付けられている。上板29のたとえば後方側には蝶番が取り付けられていて、上板29は開閉可能である。上板29は、たとえばステンレス鋼製である。水にぬれる心配がない場所で使う場合には、上板29を設けなくてもよい。あるいは、パンチングメタルなどを用いてもよい。 [0023] インバーター30は、底板23の上面に載置されている。インバーター30は、底板23に固定されていてもよい。インバーター30が底板23に固定されていると、移動に際してインバーター30が振動などによって動く可能性が小さくなる。 [0024] インバーター30の上方には、仕切板60が設けられている。仕切板60は、底板23に平行に配置されている。仕切板60は、台車20に直接にあるいは間接に固定されている。 [0025] 仕切板60の上面には、バッテリー取付部40が設けられている。バッテリー取付部40は、たとえば3個である。 [0026] バッテリー取付部40のそれぞれには、バッテリー50が取り付けられている。バッテリー50は、略直方体のケースに複数の蓄電池を収納したものである。バッテリー50の下部には、端子部が設けられている。バッテリー50の上部には、ハンドルが取り付けられている。バッテリー50の上面に、バッテリー50の残蓄電量を表示するインジケーターを設けてもよい。 [0027] バッテリー50は、たとえばLiイオン電池である。軽量かつ大容量の二次電池であれば、他の型式の電池を用いてもよい。Liイオン電池であれば、約22cm×約16cm×約40cmのケースとしても、電池容量を公称30,000mAh程度とすることができる。この程度の大きさの場合、バッテリー50の質量は、たとえば12kg程度である。 [0028] バッテリー50の出力電圧は、たとえば約43Vである。出力電流は、たとえば瞬間最大100A程度である。充電時の電圧は、たとえば約50Vである。充電時の電流は、たとえば24Aである。」 d 「[0036] 図8は、本実施の形態の電源装置のブロック図である。 [0037] 本実施の形態の電源装置10は、充電放電制御器89とAC/DCコンバーター81とMTTPコントローラー82とLCDディスプレイ83とメインスイッチ84とDC/DCコンバーター85と状態表示器87を有している。充電放電制御器89には、バッテリー50とインバーター30とAC/DCコンバーター81とMTTPコントローラー82とLCDディスプレイ83とメインスイッチ84とDC/DCコンバーター85とが接続されている。 [0038] インバーター30は、バッテリー50の直流電流を100Vの交流電流に変換する。インバーター30が変換した交流電流は、100VのACアウトレット97から出力される。 [0039] AC/DCコンバーター81は、たとえば商用電力系統から供給される100Vの交流電流を直流電流に変換する。AC/DCコンバーター81が変換した直流電流は、充電放電制御器89を介してバッテリー50に供給されて、バッテリー50の充電に用いられる。」 e 「[0043] DC/DCコンバーター85は、バッテリー50の直流電流の電圧を変換する。バッテリー50の出力電圧は、たとえば43Vである。DC/DCコンバーター85の出力電圧は、5Vである。DC/DCコンバーター85の出力は、たとえばUSB端子から外部機器に供給される。」 f 「[0061] 電源装置10に少なくとも1つのバッテリー50が装着された状態で、インバーター30を起動すると、ACアウトレット97から100Vの交流電流が負荷98に供給される。複数のバッテリー50がバッテリー取付部40に装着されている場合、それぞれのバッテリー50からインバーター30に電力を供給してもよいし、1つずつ電力を供給するようにしてもよい。」 g 図1 [図:0001406566000001.jpg] h 図2 [図:0001406566000002.jpg] i 図3 [図:0001406566000003.jpg] j 図4 [図:0001406566000004.jpg] k 図5 [図:0001406566000005.jpg] 図1~図5及び[0018]~[0022]によれば、台車20は、フレーム21、底板23、側板24、前板26、斜板28、上板29、吸入パネル70及び操作パネル80で外側を囲われており、バッテリー50は、台車20の内部に位置すると解される。 l 図8 [図:0001406566000006.jpg] (イ)前記(ア)の記載によれば、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をa~oに分説し(小文字「l」は、大文字「I」及び算用数字「1」と紛らわしいため、使用しない。)、「構成a」のようにして参照する。 a 移動を容易にすることを目的とした大容量の蓄電池を用いた電源装置であって、([0006]) b 電源装置10は、台車20とインバーター30とバッテリー取付部40とバッテリー50と、充電放電制御器89とAC/DCコンバーター81とDC/DCコンバーター85を有し、([0014]、[0037]) c 充電放電制御器89には、バッテリー50とインバーター30とAC/DCコンバーター81とDC/DCコンバーター85とが接続され、([0037])、 d 台車20の左右の側面には、側板24が取り付けられ、台車20の前面の下部には、前板26が取り付けられ、台車20の前面の上部には、斜板28が取り付けられ、台車20の背面の下部には、吸入パネル70が取り付けられ、台車20の背面の上部には、操作パネル80が取り付けられ、台車20の上面には、上板29が取り付けられ、([0018]~[0022]) e 台車20は、フレーム21、底板23、側板24、前板26、斜板28、上板29、吸入パネル70及び操作パネル80で外側を囲われており、バッテリー50は、台車20の内部に位置し、(図1~図5) f 操作パネル80は、ACアウトレット97、USB端子、AC入力端子を備え、([0021]) g インバーター30は、底板23の上面に載置され、インバーター30の上方には、仕切板60が設けられ、([0023]、[0024]) h 仕切板60の上面には、バッテリー取付部40が設けられ、バッテリー取付部40は、たとえば3個であり、バッテリー取付部40のそれぞれには、バッテリー50が取り付けられ、([0025]、[0026]) i バッテリー50は、Liイオン電池であり、約22cm×約16cm×約40cmのケースとして、電池容量を公称30,000mAh程度とし、質量は12kg程度であり、出力電圧は約43Vで、出力電流は瞬間最大100A程度であり、([0027]、[0028]) j AC/DCコンバーター81は、たとえば商用電力系統から供給される100Vの交流電流を直流電流に変換し、変換した直流電流は、バッテリー50の充電に用いられ、([0039]) k インバーター30は、バッテリー50の直流電流を100Vの交流電流に変換し、インバーター30が変換した交流電流は、100VのACアウトレット97から出力され、([0038]) m DC/DCコンバーター85は、バッテリー50の直流電流の電圧を変換し、DC/DCコンバーター85の出力は、USB端子から外部機器に供給され、([0043]) n 電源装置10に少なくとも1つのバッテリー50が装着された状態で、インバーター30を起動すると、ACアウトレット97から100Vの交流電流が負荷98に供給される([0061]) o 電源装置。 イ 周知文献1の記載事項 原査定で周知技術を示すために引用された特開2012-34554号公報(以下、「周知文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、電気自動車(EV)等を充電するために用いる急速充電装置に関するものである。 【背景技術】 【0002】 電気自動車の普及は、地球温暖化の解決、二酸化炭素の削減の上で、重要な課題である。 【0003】 しかし、急速に普及させるためには、充電器のインフラ整備が必須となるが、外出先で充電する場合、通常の従量電灯または低圧電力契約の電源においては、現状の一般の充電器では100V電源では約14時間、200V電源でも約7時間を要するため、ある程度の遠出に電気自動車の利用は不向きである。 【0004】 そこで、考えられたものが急速充電装置(急速充電器)であるが、これは現状の小型電気自動車でも50kWクラスの大電源容量を必要とするため、通常の従量電灯または低圧電力契約の電源では受電容量を超過し、業務用の大きな受電容量への変更が必要である。そのため、基本料金の大幅なアップとなり、また、かつ受電容量アップのためのトランス設備を増強する必要がある。 【0005】 すなわち、図11に、従来の電気自動車の充電システム(急速充電システム)の一例を示す。電気自動車10の車載蓄電池11に対して、交流100V電源または200V電源を使用した急速充電器50を用い、接触式コネクタ(電気自動車側コネクタ14と急速充電用コネクタ51)を接続して充電を行う。その際の充電制御は、電気自動車10のECU(電子制御ユニット)19と急速充電器50との間でのCAN通信によって行われる。なお、交流100Vの家庭用電源を用いる車載充電器(図示せず)によって、車載蓄電池11の充電を行うこともできるようになっている。 【0006】 上記の急速充電システムにおいては、急速充電器50を用いることにより、約30分程度の時間で、車載蓄電池11全体の約80~90%の充電を可能とするものであるが、そのためには、この急速充電器50は、交流の100Vまたは200Vの電源で受け入れて、急速充電器50の内部で直流(約400Vで100A以上)に変換して、そのまま電気自動車10に充電するために、非常に大きな電源容量が必要である。」 (イ)「【0066】 なお、上記の実施形態においては、充電対象の蓄電池として、電気自動車の車載蓄電池を例にして述べたが、本発明は、それに限定されるものではなく、それ以外の蓄電池(例えば、電動の無人搬送台車用蓄電池)を充電する場合にも同様に適用することができる。」 ウ 周知文献2の記載事項 原査定で周知技術を示すために引用された国際公開第2016/132739号(以下、「周知文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 「[0003] 電気自動車の蓄電池の充電方式としては、例えば、家庭用の商用電源等の交流電源から交流電流を直流電流に変換して充電を行う方式と、充電スタンド等の直流電源から直流電流を直接充電する方式とがある。一般に、前者は普通充電と称され、後者は急速充電と称される。急速充電は30分程度で満充電の約80%まで充電を行うものであり、普通充電は一般に急速充電と比較して低出力で、例えば、EVの場合であれば8時間以上かけて満充電を行う。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 発明特定事項A及びBについて 引用発明では、「AC/DCコンバーター81は、たとえば商用電力系統から供給される100Vの交流電流を直流電流に変換し、変換した直流電流は、バッテリー50の充電に用いられ」る(構成j)。そして、引用発明は「AC入力端子」を備えている(構成f)から、「商用電力系統から供給される100Vの交流電流」は「AC入力端子」で受電されると解される。 そうすると、引用発明の「AC入力端子」、「バッテリー50」及び「商用電力系統から供給される100Vの交流電流」は、それぞれ本件補正発明の「電力受電部」、「電力貯蔵部」及び「充電用電力」に相当し、本件補正発明と引用発明とは、「充電用電力を受電する電力受電部」を備える点で共通すると共に、「前記充電用電力により充電される電力貯蔵部」を備える点で一致するが、本件補正発明の「電力受電部」が受電する充電用電力は、「電気自動車用充電器」から受電しているのに対し、引用発明の「AC入力端子」が受電する電力は、「商用電力系統」から受電している点、及び、本件補正発明の「電力受電部」は「電気自動車用充電器」に対応するものであるに対し、引用発明の「AC入力端子」は電気自動車用充電器に対応するものはない点で相違する。 イ 発明特定事項C及びDについて (ア)引用発明は、「インバーター30が変換した交流電流」を「100VのACアウトレット97から出力」する(構成k)。ここで、「100VのACアウトレット97」には、AC100Vの電力を消費する何らかの機器(以下、「AC外部機器」という。)が外付けされると解される。 そうすると、引用発明の「ACアウトレット97」は、「AC外部機器」に対してインバーター30が変換した交流電流を出力する電力出力部といえるから、引用発明の「ACアウトレット97」、「インバーター30」、「インバーター30が変換した交流電流」及び「AC外部機器」は、それぞれ本件補正発明の「電力出力部」、「電力生成部」、「個別放電電力」及び「外部機器」に相当する。 (イ)また、引用発明は、「DC/DCコンバーター85の出力」を「USB端子から外部機器に供給」しており(構成m)、該「外部機器」を以下では「USB外部機器」という。 そうすると、引用発明の「USB端子」は、「USB外部機器」に対してDC/DCコンバーター85の出力を出力する電力出力部といえるから、引用発明の「USB端子」、「DC/DCコンバーター85」、「DC/DCコンバーター85の出力」及び「USB外部機器」は、それぞれ本件補正発明の「電力出力部」、「電力生成部」、「個別放電電力」及び「外部機器」に相当する。 (ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、本件補正発明と引用発明とは、「複数の外部機器が接続される複数の電力出力部であって、接続された前記外部機器のそれぞれに対して個別放電電力を出力する複数の電力出力部」と「前記電力貯蔵部を電力源として前記個別放電電力を生成する電力生成部」とを備える点で一致する。 ウ 発明特定事項Eについて 引用発明の「充電放電制御器89」には、「バッテリー50とインバーター30とAC/DCコンバーター81とDC/DCコンバーター85とが接続され」ている(構成c)ことから、「バッテリー50」の充電に用いる「AC/DCコンバーター81」並びに「バッテリー50」の放電に用いる「インバーター30」及び「DC/DCコンバーター85」を制御していると解されるので、本件補正発明の「前記電力貯蔵部の充電制御および前記電力貯蔵部の放電制御を行う制御部」に相当する。 エ 発明特定事項F及びJについて 引用発明の「電源装置」(構成a)は、「商用電力系統から供給される100V交流電流」を用いて「バッテリー50」を充電し(構成j)、かつ、「バッテリー50」の直流電流を「インバーター30」及び「DC/DCコンバーター85」を介して出力するから、「バッテリー50」の充放電を行う装置であるといえる。 したがって、本件補正発明と引用発明とは、「充放電装置」である点で一致する。 また、引用発明の「電源装置」(「電源装置10」)が、本件補正発明の「電力受電部」に対応する「AC入力端子」と、本件補正発明の「電力貯蔵部」に相当する「バッテリー50」と、本件補正発明の「電力出力部」に相当する「ACアウトレット97」及び「USB端子」と、本件補正発明の「電力生成部」に相当する「インバーター30」及び「DC/DCコンバーター85」と、本件補正発明の「制御部」に相当する「充電放電制御器89」とを備えることは、構成b、d及びfから明らかである。 オ 発明特定事項Gについて 引用発明の「バッテリー50」は「台車20」の内部に位置し(構成e)、「台車20」は「電源装置10」を構成する(構成b)から、「バッテリー50」は「電源装置10」の内部に備わる。 よって、本件補正発明と引用発明とは、「前記電力貯蔵部は、前記充放電装置の内部に備えられ」る点で一致する。 カ 発明特定事項Hについて 引用発明では、「バッテリー取付部40は、たとえば3個であり、バッテリー取付部40のそれぞれには、バッテリー50が取り付けられ」る(構成h)から、「電源装置10」に備わる「バッテリー50」の数は、一例として3個である。 よって、本件補正発明と引用発明とは、「さらに、前記電力貯蔵部は、当該充放電装置において備えられ」る点で共通するが、本件補正発明において備えられる「電力貯蔵部」の数は「単数」であるのに対し、引用発明において備えられる「バッテリー50」の数は、一例として3個である点で相違する。 キ 発明特定事項Iについて 前記イのとおり、引用発明の「インバーター30」は「ACアウトレット97」に対して電力を生成するものであり、他方、引用発明の「DC/DCコンバーター85」は「USB端子」に対して電力を生成するものであるから、「インバーター30」及び「DC/DCコンバーター85」は、それぞれ「ACアウトレット97」及び「USB端子」に対応して備えられている。 したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記電力生成部は、前記複数の電力出力部に対応して複数備えられる」点で一致する。 ク 一致点及び相違点 前記ア~キによれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 〈一致点〉 「充電用電力を受電する電力受電部と、 前記充電用電力により充電される電力貯蔵部と、 複数の外部機器が接続される複数の電力出力部であって、接続された前記外部機器のそれぞれに対して個別放電電力を出力する複数の電力出力部と、 前記電力貯蔵部を電力源として前記個別放電電力を生成する電力生成部と、 前記電力貯蔵部の充電制御および前記電力貯蔵部の放電制御を行う制御部と、 を備える充放電装置であって、 前記電力貯蔵部は、前記充放電装置の内部に備えられ、 さらに、前記電力貯蔵部は、当該充放電装置において備えられ、 前記電力生成部は、前記複数の電力出力部に対応して複数備えられる、 充放電装置。」である点。 〈相違点1〉 本件補正発明の「電力受電部」が受電する充電用電力は、「電気自動車用充電器」から受電しているのに対し、引用発明の「AC入力端子」が受電する電力は、「商用電力系統」から受電している点、及び、本件補正発明の「電力受電部」は「電気自動車用充電器」に対応するものであるに対し、引用発明の「AC入力端子」は電気自動車用充電器に対応するものではない点。 〈相違点2〉 本件補正発明において備えられる「電力貯蔵部」の数は「単数」であるのに対し、引用発明において備えられる「バッテリー50」の数は、一例として3個である点。 (4)相違点についての判断 ア 相違点1について (ア)周知文献1によれば、通常の従量電灯又は低圧電力契約の電源、すなわち、商用電力系統の電源を用いて電気自動車の蓄電池を充電すると、7~14時間かかるのに対し、電気自動車用の急速充電器を用いて充電すると、30分程度で済むと解される(前記(2)イ)。 さらに、上記のことは、電気自動車の蓄電池に限らず、それ以外の蓄電池の充電についても当てはまると解される(【0066】)。 また、周知文献2によれば、家庭用の商用電源、すなわち、商用電力系統の電源を用いて電気自動車の蓄電池を充電すると、8時間以上かかるのに対し、電気自動車用の充電スタンドを用いて充電すると、30分程度で済むと解される(前記(2)ウ)。 そうすると、電気自動車の蓄電池に限らず、その他の蓄電池についても、商用電力系統の電源を用いて充電するより、電気自動車用の充電器(急速充電器、充電スタンド等)を用いて充電する方が、早く充電できるということは、周知技術であったと認められる。 (イ)蓄電池の充電において充電時間を短縮することは、当然に追求されるべき課題であるから、引用発明の充電時間を短縮するために、前記(ア)の周知技術を適用し、商用電力系統からの受電に代えて電気自動車用充電器からの受電とし、それに伴い、引用発明の「AC入力端子」を電気自動車用充電器に対応するものに変更することは、当業者が容易になし得ることである。 イ 相違点2について 引用発明の「バッテリー50」の数は、一例として3個(構成h)であるに過ぎず、3個に限られるものではない。また、引用発明は「電源装置10に少なくとも1つのバッテリー50が装着された状態」で動作することが想定されている(構成n)から、引用発明に装着する「バッテリー50」の数が単数であることは、当然に想定されている。よって、引用発明の「バッテリー50」の数を単数とすることは、引用発明を具現化する上での設計的事項の範疇であり、当業者が容易になし得ることである。 (5)効果についての判断 引用発明において、充電電力を電気自動車用充電器から受電するようにし、「バッテリー50」を単数としたものは、本件補正発明と同一の構成を備えることから、本件補正発明と同じ効果を奏すると認められる。 (6)請求人の主張についての判断 ア 相違点1について (ア)請求人の主張は、概略、以下のとおりである。(上申書2頁) 周知文献1及び2は、いずれも、電気自動車の充電に関して記載されているに過ぎず、電気自動車ではない装置(バッテリを備える装置)の充電にあたり、電気自動車用充電器を用いることは記載されておらず、示唆もない。 また、引用発明は大容量の蓄電池を用いた電源装置の移動を容易にすることを目的とするものであり、引用文献には、蓄電池の充電方法として、商用電力およびソーラーパネルではない他の方法を採用することは何ら記載されておらず、示唆もない。 そして、本件補正発明が容易想到であると判断するためには、引用文献の内容の検討に当たっても、「電源装置における蓄電池の充電方法として、電気自動車用充電器を用いること」について、そのような試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく、このような試みをしたはずであるという示唆等が存在することが必要となる。 しかし、引用文献には、このような試みをしたはずであるという示唆等が存在しないことから、本願発明が容易想到であると判断することはできない。 (イ)前記(ア)の請求人の主張について検討する。 まず、周知文献1の【0066】には、電気自動車以外の蓄電池の充電に関して明記されており、請求人の主張する「周知文献1及び2は、電気自動車ではない装置の充電にあたり、電気自動車用充電器を用いることは記載されておらず、示唆もない」との点は、採用できない。 そして、前記(4)ア(イ)に示したとおり、蓄電池の充電時間を短縮することは当然に追求されるべき課題であるから、充電時間を短縮する試みをすることは当然であり、この課題を解決するために当業者は周知文献1及び2に示される周知技術を用いることを試みるはずである。 したがって、請求人の主張は採用できない。 イ 相違点2について (ア)請求人の主張は、概略、以下のとおりである。(審判請求書3~5頁) 引用発明は、「大容量の蓄電池を用いた電源装置の移動を容易にすることを目的」(段落0006)とするものであり、「大容量の蓄電池を用いた電源装置」であることを前提とするものである。つまり、引用発明は、大容量の蓄電池(換言すれば、複数の「バッテリー50」)を備えることを前提とする。 これに対して、引用発明において、複数の「バッテリー50」の個数を減らすことは、蓄電池の容量を低減することになるため、引用発明において、複数の「バッテリー50」を単数に変更することは、解決しようとする目的の前提を覆すことであり目的に反することから、阻害要因が存在する。 よって、引用発明の「バッテリー50」の数を単数とすることには阻害要因が存在するため、引用文発明に基づいて、本件補正発明と同様の構成に想到することは、当業者にとって容易なことではない。 また、引用発明において、当業者があえて、複数の「バッテリー50」を単数に変更する動機付けがない。 (イ)前記(ア)の請求人の主張について検討する。 前記(4)イのとおり、引用発明の「バッテリー50」の数は、一例として3個であるに過ぎず、単数の「バッテリー50」での動作も想定されている。 加えて、引用発明の「バッテリー50」の単品は、約22cm×16cm×40cmのケースに入った3万mAh(30Ah)の容量の43Vの電池である(構成i)から、1290Whの電力量を貯蔵し得、100Wの電力を13時間弱出力でき、1kWのような大電力であっても1時間強出力できるものであり、単数でも十分に大容量の蓄電池といえる。 そして、引用発明の「バッテリー50」は単品で12kgの質量があり(構成i)、単品でも重い。 引用発明は「移動を容易にすることを目的」としたもの(構成a)である以上、全体の質量の軽減を追求しなければならないが、質量の軽減のために「バッテリー50」の数を減らすと電池容量の総計が小さくなるため、移動容易性を担保する「バッテリー50」の個数と、電池容量の総計とはトレードオフの関係にある。よって、引用発明を具現化する際には、使用時に必要とされる移動容易性と電池容量とを具体的に想定した上で、現実的な電池容量の総計及び質量を決定して、「バッテリー50」の個数を設計しなければならないことは明らかである。そうすると、引用発明を具現化した結果として「バッテリー50」が単数となることは、当業者の通常の創作能力の発揮により達成され得ることで、格別のことではない。 以上によれば、請求人の主張は採用できない。 (7)小括 以上によれば、本件補正発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 4 本件補正についてのむすび 前記3によれば、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明 本件補正は上述のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)のとおりである。 第4 原査定の概要 原査定の概要は、以下のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1及び2に係る発明は、以下の文献1に記載された発明並びに文献2及び文献3に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 この出願の請求項3及び4に係る発明は、以下の文献1に記載された発明、文献2及び文献3に示される周知技術並びに文献4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 この出願の請求項5及び6に係る発明は、以下の文献1に記載された発明、文献2及び文献3に示される周知技術、文献4に記載された発明並びに文献5に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 この出願の請求項7~9に係る発明は、以下の文献1に記載された発明、文献2及び文献3に示される周知技術、文献4に記載された発明、文献5に示される周知技術並びに文献6に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 1.国際公開第2018/074446号 2.特開2012-34554号公報(周知技術を示す文献) 3.国際公開第2016/132739号(周知技術を示す文献) 4.国際公開第2013/001909号 5.特開2006-20438号公報(周知技術を示す文献) 6.国際公開第2015/155811号(周知技術を示す文献) 第5 文献の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された文献1(この審決における引用文献と同一)の記載事項は、前記第2[理由]3(2)に記載したとおりである。 第6 本願発明と引用発明との対比・判断 本願発明は、前記第2[理由]3で検討した本件補正発明から、その発明特定事項である「電力貯蔵部」に係る「当該充放電装置において単数備えられ」との限定事項を削除し、さらに、その発明特定事項である「電力生成部」に係る「前記複数の電力出力部に対応して複数備えられる」との限定事項を削除したものである(前記第2[理由]2を参照)。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]3に示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに周知文献1及び2に示される周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-005382

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決43件(株式会社マキタ)
  • 2024-009310拒絶査定不服審判 / 2026-03-16 / 原査定取消(特許/登録すべき)クリーナ
    同じ当事者: 株式会社マキタ
  • 2024-003713拒絶査定不服審判 / 2025-10-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)エアーコンプレッサ、エアーコンプレッサの情報表示方法
    同じ当事者: 株式会社マキタ
  • 2025-001694拒絶査定不服審判 / 2025-09-19 / 請求不成立ベーシック
    同じ当事者: 株式会社マキタ
  • 2024-012178拒絶査定不服審判 / 2025-08-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)ノズル及びクリーナ
    同じ当事者: 株式会社マキタ
  • 2023-006660拒絶査定不服審判 / 2025-02-17 / 原査定取消(特許/登録すべき)背負い式集じん機
    同じ当事者: 株式会社マキタ
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)496件(121・H02J、575・H02J)
  • 2023-020613拒絶査定不服審判 / 2024-05-16 / 請求不成立電力制御ユニット、及び分電盤システム
    共通の審決分類: 121・H02J、575・H02J
  • 2023-006703拒絶査定不服審判 / 2024-01-09 / 請求不成立空調ユニット、および空調システム
    共通の審決分類: 121・H02J、575・H02J
  • 2022-016633拒絶査定不服審判 / 2023-11-14 / 請求不成立非接触給電構造を備える駐輪施設
    共通の審決分類: 121・H02J、575・H02J
  • 2022-004329拒絶査定不服審判 / 2023-03-28 / 請求不成立高導電性ケーブル接続デバイスを備えた充電式ジャンプスタート装置
    共通の審決分類: 121・H02J、575・H02J
  • 2020-017461拒絶査定不服審判 / 2021-09-08 / 請求不成立充電装置及び電力需給システム
    共通の審決分類: 121・H02J、575・H02J

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存