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特許拒絶査定不服審判

2023-005208

GaAsにほぼ合致する格子パラメータを有する基板上に希薄窒化物層を有する光電子検出器

審判番号
2023-005208
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-077688外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年03月31日
審決日
2024年03月25日
公報発行日
2024年09月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .572-Z (H01L) / P18 .113-Z (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第17条の2第5項、特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021- 77688「GaAsにほぼ合致する格子パラメータを有する基板上に希薄窒化物層を有する光電子検出器」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 7月29日出願公開、特開2021-108403〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)6月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年6月22日 米国、2016年6月21日 米国)を国際出願日とする出願である特願2017-566819号の一部を令和3年4月30日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和4年 3月 3日付け:拒絶理由通知書 同年 5月31日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正書 でした補正を「第1次補正」という。)の提 出 同年 7月 7日付け:拒絶理由通知書(最後) 同年10月11日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正書 でした補正を「第2次補正」という。)の提 出 同年11月30日付け:第2次補正の却下の決定、拒絶査定(以下「 原査定」という。) 令和5年 3月31日 :審判請求書、手続補正書(以下、この手続補 正書でした補正を「本件補正」という。)の 提出 第2 本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年3月31日にされた手続補正(本件補正)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正されることになる(下線部は、補正箇所である。)。 「半導体であって、 GaAsに合致またはほぼ合致する格子パラメータを有する基板と、 前記基板を覆う第1のドープされたIII-V層と、 前記第1のドープされたIII-V層を覆う吸収体層であって、前記吸収体層は、 InxGa1-xNyAs1-y-zSbz(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦z≦1)を備える希薄窒化物と、 0.7eV~0.90eVの間のバンドギャップと、 室温で1×1013cm-3~5×1015cm-3の間のキャリア濃度と、 1マイクロメートル~10マイクロメートルの間の厚さと を有する、吸収体層と、 前記吸収体層を覆う第2のドープされたIII-V層と を備える、半導体。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、第1次補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「半導体であって、 GaAsに合致またはほぼ合致する格子パラメータを有する基板と、 前記基板を覆う第1のドープされたIII-V層と、 前記第1のドープされたIII-V層を覆う吸収体層であって、前記吸収体層は、InxGa1-xNyAs1-y-zSbz(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦z≦1)を備える希薄窒化物と、 約0.7eV~0.95eVの間のバンドギャップと、 室温で約1×1015cm-3未満のキャリア濃度と を有する、吸収体層と、 前記吸収体層を覆う第2のドープされたIII-V層と を備える、半導体。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「吸収体層」の「キャリア濃度」について、本件補正前の「約1×1015cm-3未満」を「1×1013cm-3~5×1015cm-3の間」にする補正を含むところ、当該補正は、数値範囲の上限を「1×1015cm-3」から「5×1015cm-3」に拡大するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。また、当該補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでないことも明らかである。 このように、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号から第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものではない。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反しているから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明の認定 本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、第1次補正後の特許請求の範囲の請求項1~24に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 <本願発明> 「半導体であって、 GaAsに合致またはほぼ合致する格子パラメータを有する基板と、 前記基板を覆う第1のドープされたIII-V層と、 前記第1のドープされたIII-V層を覆う吸収体層であって、前記吸収体層は、 InxGa1-xNyAs1-y-zSbz(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦z≦1 )を備える希薄窒化物と、 約0.7eV~0.95eVの間のバンドギャップと、 室温で約1×1015cm-3未満のキャリア濃度と を有する、吸収体層と、 前記吸収体層を覆う第2のドープされたIII-V層と を備える、半導体。」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。 本願発明は、その最先の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 David Jackrel et al.,"GaInNAsSb Solar Cells Grown by Molecular Beam Epitaxy",Proc. of 2006 IEEE 4th World Conference on Photovoltaic Energy Conference,2006年05月07日,pp.783-786,DOI: 10.1109/WCPEC.2006.279573(以下「引用文献」という。) 3 判断 (1)引用文献に記載された発明の認定 ア 引用文献には、図面とともに、次の記載がある(下線及び日本語訳は、当審によるものである。)。 (ア)「GaInNAs and GaInNAsSb PIN diodes (Figure 1) were grown at The Solid State Electronics Laboratory at Stanford University on (100) GaAs substrates using a load-locked Varian Mod. Gen II solid-source molecular beam epitaxy (MBE) system with nitrogen supplied by an SVT Associates Model 4.5 RF-plasma cell. Deflection plates were used at the output of the plasma cell to protect the growing film from ion damage [9, 15, 16]. The system and growth details have been reported previously [7]. The unintentionally doped n-type GaInNAs(Sb) materials are all 1 μm thick, composed of approximately 1 to 2% N, approximately 5 to 7% In, and approximately 2 to 6% Sb for the GaInNAsSb samples. The p-type emitter and n-type buffer layer are GaAs with dopant densities equal to roughly 1018 cm-3. After growth, annealing was performed on the dilute nitride materials in a similar manner as that required to achieve low threshold current lasers, using a rapid thermal anneal with arsenic outdiffusion limited by a GaAs proximity cap [7]. Solar cell devices were fabricated at The National Renewable Energy Laboratory (NREL), using Au front contacts and annealed Au/Sn/Au back contacts. Internal quantum efficiency spectra were quantified by dividing the external quantum efficiency by (1-R), where R is the measured specular reflectivity. Light current-voltage photovoltaic measurements were performed as described below.」(783頁右欄下から2行目~784頁左欄25行) (日本語訳: GaInNAsおよびGaInNAsSb PINダイオード(図1)は、スタンフォード大学固体エレクトロニクス研究所で、load-locked Varian Mod.GenII固体ソース分子線エピタキシー(MBE)システムを用い、SVT Associates Model 4.5 RFプラズマセルから窒素を供給して、(100)GaAs基板上に成長された。プラズマセルの出力には、成長膜をイオンダメージから保護するための偏向板が使用された[9,15,16]。装置と成長の詳細は、以前に報告されている[7]。非意図的にドープされたn型GaInNAs(Sb)材料はすべて厚さ1μmで、GaInNAsSb試料は約1~2%のN、約5~7%のIn、約2~6%のSbから構成されている。p型エミッタ層とn型バッファ層はGaAsで、ドーパント密度はおよそ1018cm-3に等しい。成長後、低しきい値電流レーザーを実現するために必要なのと同様の方法で、GaAs近接キャップ[7]によってヒ素の拡散を制限した急速熱アニールを用いて、希薄窒化物材料のアニールを行った。太陽電池デバイスは、国立再生可能エネルギー研究所(NREL)で、Auフロントコンタクトとアニール処理したAu/Sn/Auバックコンタクトを用いて作製した。内部量子効率スペクトルは、外部量子効率を(1-R)で割って定量化した(Rは測定された鏡面反射率)。光電流-電圧光起電力測定は、以下に述べる方法で行った。) (イ)「Figure 2 plots the internal quantum efficiency (IQE) of the GaInNAs and GaInNAsSb solar cells. The bandgap is about 1.03 eV for the GaInNAs material, and about 0.92 eV for the GaInNAsSb material, due to both the incorporation of Sb, and the increased incorporation of N for the same growth conditions. The IQE of the dilute nitride antimonide device is higher than that of the GaInNAs cell, 79% at maximum. The GaInNAsSb device represents one of the smallest bandgaps achieved (0.92 eV) in a dilute nitride solar cell with high collection efficiency, as shown in Table 1, which compares the devices in this study with other devices in the literature.」(784頁左欄27~38行) (日本語訳: 図2は、GaInNAsとGaInNAsSb太陽電池の内部量子効率(IQE)をプロットしたものである。バンドギャップはGaInNAs材料で約1.03eV、GaInNAsSb材料で約0.92eVであり、これはSbの取り込みと、同じ成長条件でのNの取り込みの増加の両方によるものである。希薄窒化アンチモンデバイスのIQEはGaInNAsセルよりも高く、最大で79%であった。GaInNAsSbデバイスは、高い収集効率を持つ希薄窒化物太陽電池で達成された最小のバンドギャップ(0.92eV)の一つであり、本研究のデバイスを文献の他のデバイスと比較した表1に示されている。) (ウ)「The GaInNAsSb sub-cell would produce a short-circuit current density of 14.8 mA/cm2, if it were underneath a GaAs sub-cell in a multijunction structure, determined using the quantum efficiency and the low-AOD spectrum truncated at 880 nm [4]. The GaInNAs devices would have a short-circuit current density of 9.0 mA/cm2 under the same conditions. Reflection losses were not included in the calculation, although these losses are expected to be less than a few percent with a well-designed antireflection coating. This difference in photocurrent reflects both the increased photoresponse as well as the lower bandgap of the Sb-containing sample. The current world record 39% efficient (at 236-suns) triple junction device composed of GaInP/InGaAs/Ge, has a short-circuit current density of 3.377 A/cm2, or 14.3 mA/cm2 at 1-sun [1]. This indicates that the narrow bandgap GaInNAsSb cells have enough photoresponse to current match the other sub-cells in state of the art multijunction solar cells with high theoretical efficiencies, near or beyond 40% under concentration.」(784頁左欄39行~右欄15行) (日本語訳: GaInNAsSbサブセルが多接合構造のGaAsサブセルの下にある場合、量子効率と880nmで切り捨てた低AODスペクトルを用いて決定された[4]14.8mA/cm2の短絡電流密度を生成する。GaInNAsデバイスの短絡電流密度は、同じ条件で9.0mA/cm2となる。反射損失は計算に含まれていないが、適切に設計された反射防止コーティングを施せば、これらの損失は数%未満になると予想される。この光電流の差は、光応答の増大とSb含有サンプルの低いバンドギャップの両方を反映している。現在世界記録となっているGaInP/InGaAs/Geからなる39%効率(236sunで)の三重接合デバイスの短絡電流密度は3.377A/cm2、1sunで14.3mA/cm2である[1]。これは、ナローバンドギャップGaInNAsSbセルが、集光下で40%近辺かそれ以上の高い理論効率を持つ最先端の多接合太陽電池の他のサブセルと電流を一致させるのに十分な光応答を持つことを示している。) (エ)「 [図:0001413838000001.jpg] 」(784頁右欄16~21行、表1) (日本語訳: 表1.バンドギャップ、内部量子効率(バンドギャップの0.2eV上)、及びデバイスのスペクトル応答を880nmまで積分することによって求められた短絡電流(低AODスペクトル[4]の場合)、これにより、モノリシック多接合デバイスのGaAsサブセルの下の状態をシミュレートする。) (オ)「The background doping density of the GaInNAsSb films is significantly lower than the background in the GaInNAs material. Figure 5 shows the background doping density as a function of the depletion width from capacitance-voltage measurements of both devices. The short-circuit depletion width for the GaInNAs sample is 0.28 mm, while it is 0.44 mm for the GaInNAsSb sample. The wider depletion width partially explains the improved collection efficiency in the GaInNAsSb devices. It is possible that the surfactant properties of antimony are directly responsible for the lower doping density, and therefore the wider depletion widths, by inhibiting the incorporation of impurities from the environment, or by creating new compensating defects. However, the wider depletion region also adversely affects both the Voc and the fillfactor, by increasing the amount of SRH recombination and dark current, as seen in Fig. 4.」(785頁右欄1~17行) (日本語訳: GaInNAsSb膜のバックグラウンド・ドーピング密度は、GaInNAs材料のバックグラウンドよりも著しく低い。図5は、両デバイスの容量電圧測定から得られた空乏幅の関数としてのバックグラウンド・ドーピング密度を示している。GaInNAs試料の短絡空乏幅は0.28mmであるのに対し、GaInNAsSb試料では0.44mmである。この空乏幅の広さは、GaInNAsSbデバイスにおける収集効率の向上を部分的に説明している。アンチモンの界面活性剤特性が、環境からの不純物の取り込みを抑制するか、あるいは新たな補償欠陥を生成することによって、ドーピング密度を低くし、したがって空乏幅を広くする直接的な原因となっている可能性がある。しかし、空乏領域が広くなると、図4に見られるように、SRH再結合と暗電流の量が増加するため、Vocとフィルファクターの両方に悪影響を及ぼす。) (カ)「図1 [図:0001413838000002.jpg] Fig. 1. Schematic of MBE-grown GaInNAs(Sb) devices. 」 (日本語訳: 図1.MBE成長GaInNAs(Sb)デバイスの模式図。) 「図5 [図:0001413838000003.jpg] 」 (日本語訳: 図5.バックグラウンド・ドーピング密度対空乏幅) イ 前記アより、図1に係るGaInNAsSbデバイスについて、以下の技術的事項が記載されていることが認められる。 (ア)図1及び前記(ア)より、当該デバイスは、n型GaAs基板上に成長された、n型GaAs層、非意図的にドープされたn型GaInNAsSb層及びp型GaAs層をこの順に備えるGaINAsSb PINダイオードである。 (イ)図5より、当該デバイスのn型GaInNAsSb層のバックグラウンド・ドーピング密度は、電圧(いわゆる逆バイアス電圧であると解される。)が0Vのときに、1×1015cm-3未満である。 (ウ)表1より、当該デバイスにおけるGaINAsSb層のバンドギャップは、約0.92eVである。 ウ 前記ア及びイより、引用文献には、図1に係るGaINAsSb PINダイオードについて、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある。 <引用発明> 「n型GaAs基板上に成長された、n型GaAs層、非意図的にドープされたn型GaInNAsSb層及びp型GaAs層をこの順に備える、GaINAsSb PINダイオードであって、(前記イ(ア)) 前記n型GaInNAsSb層は、約1~2%のN、約5~7%のIn、約2~6%のSbから構成されており、(前記ア(ア)) 前記n型GaInNAsSb層のバンドギャップは、約0.92eVであり、(前記イ(ウ)) 前記n型GaInNAsSb層のバックグラウンド・ドーピング密度は、逆バイアス電圧が0Vのときに、1×1015cm-3未満であり、(前記イ(イ)) 前記バックグラウンド・ドーピング密度は、容量電圧測定から得られた空乏幅の関数としてのバックグラウンド・ドーピング密度である、(前記ア(オ)) GaINAsSb PINダイオード。」 (2)本願発明と引用発明の対比・判断 ア 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。 (ア)本願発明の「半導体であって、GaAsに合致またはほぼ合致する格子パラメータを有する基板と、前記基板を覆う第1のドープされたIII-V層と、吸収体層と、前記吸収体層を覆う第2のドープされたIII-V層とを備える、半導体」との特定事項について 引用発明の「n型GaAs基板」、「n型GaAs層」、「p型GaAs層」及び「GaINAsSb PINダイオード」は、それぞれ本願発明の「基板」、「第1のドープされたIII-V層」、「第2のドープされたIII-V層」及び「半導体」に相当する。引用発明の「非意図的にドープされたn型GaInNAsSb層」は、引用発明に係るダイオードが「GaINAsSb PINダイオード」と称されることからも明らかなとおり、PIN構造における「I」に相当するものと理解できるから、本願発明の「吸収体層」に相当する。引用発明の「n型GaAs基板」は、本願発明でいう「GaAsに合致またはほぼ合致する格子パラメータを有する」といえるし、同じく「n型GaAs層」は、本願発明でいう「前記基板を覆う」といえるし、同じく「p型GaAs層」は、本願発明でいう「前記吸収体層を覆う」といえる。 よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしている。 (イ)本願発明の「前記第1のドープされたIII-V層を覆う吸収体層であって、前記吸収体層は、InxGa1-xNyAs1-y-zSbz(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦z≦1)を備える希薄窒化物と、約0.7eV~0.95eVの間のバンドギャップと、室温で約1×1015cm-3未満のキャリア濃度とを有する」との特定事項について a 引用発明の「n型GaInNAsSb層」は、本願発明でいう「前記第1のドープされたIII-V層を覆う」といえる。 b 引用発明の「n型GaInNAsSb層」は、「約1~2%のN、約5~7%のIn、約2~6%のSbから構成されて」いるから、本願発明でいう「InxGa1-xNyAs1-y-zSbz(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦z≦1)を備える希薄窒化物」を有するものといえる。 c 引用発明の「n型GaInNAsSb層」の「バンドギャップ」は、「約0.92eV」であるから、本願発明でいう「約0.7eV~0.95eVの間のバンドギャップ」を有するものといえる。 d 引用発明の「n型GaInNAsSb層」は、「バックグラウンド・ドーピング密度」が「1×1015cm-3未満」であるところ、本願発明でいう「室温で約1×1015cm-3未満のキャリア濃度」を有するものといえるか不明である。 (ウ)以上によれば、本願発明と引用発明の一致点及び一応の相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「半導体であって、 GaAsに合致またはほぼ合致する格子パラメータを有する基板と、 前記基板を覆う第1のドープされたIII-V層と、 前記第1のドープされたIII-V層を覆う吸収体層であって、前記吸収体層は、 InxGa1-xNyAs1-y-zSbz(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦z≦1)を備える希薄窒化物と、 約0.7eV~0.95eVの間のバンドギャップと、 を有する、吸収体層と、 前記吸収体層を覆う第2のドープされたIII-V層と を備える、半導体。」 <一応の相違点> 「吸収体層」について、本願発明は、「室温で約1×1015cm-3未満のキャリア濃度」を有するのに対し、引用発明は、「バックグラウンド・ドーピング密度」が「1×1015cm-3未満」である点。 イ 判断 前記ア(ウ)の一応の相違点について、引用発明の「バックグラウンド・ドーピング密度」は、「容量電圧測定から得られた空乏幅の関数としてのバックグラウンド・ドーピング密度」であり、その値は、逆バイアス電圧が0Vのときのものである。そして、空乏層の幅(容量)は電荷(キャリア濃度)及び電圧に依存するところ、引用発明の「n型GaInNAsSb層」において、逆バイアス電圧が0Vのときに形成される空乏層の幅は、当該「n型GaInNAsSb層」のキャリア濃度によって定まると解されるから、引用発明の「n型GaInNAsSb層」における本願発明でいうところの「キャリア濃度」は、引用発明の逆バイアス電圧が0Vのときの「バックグラウンド・ドーピング密度」と一致するものと理解できる。 また、引用発明の当該「バックグラウンド・ドーピング密度」は、上記のとおり「容量電圧測定から得られた」ものであるところ、特にその測定条件の記載がないことから、その測定温度は、室温によるものと解するのが自然といえる。この理解は、引用文献に記載された種々の測定が太陽光を前提としたもの、すなわち、太陽電池として使用する環境での性能を調べているものと理解できることからも首肯できるものである。 以上より、前記一応の相違点は、実質的なものではない。 ウ 小括 したがって、本願発明は、引用発明である。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-005208

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