特許拒絶査定不服審判
2023-007722
新構造半導体集積回路
- 審判番号
- 2023-007722
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-219993
- 請求日
- 2023年03月19日
- 審決日
- 2024年06月05日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】小田 基博
- 審判長/審判官
- 審判長 河本 充雄
- 審判官 棚田 一也
- 審判官 松永 稔
- 分類
- P18 .571-Z (H01L) / P18 .572-Z (H01L) / P18 .573-Z (H01L) / P18 .574-Z (H01L) / P18 .113-Z (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第37条、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第36条第5項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第17条の2第5項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-219993「新構造半導体集積回路」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月24日出願公開、特開2022- 94263〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年12月14日の出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
令和 3年 3月19日付け :手続補正指令(方式)
令和 3年 4月20日 :手続補正書の提出
令和 4年 3月14日付け :拒絶理由通知
令和 4年 7月 4日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 8月23日付け :手続補正指令
令和 4年10月14日 :手続補正書の提出
令和 4年12月19日付け :拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 5年 3月19日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和 5年 3月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 5年 3月19日提出の手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1~6の記載は、次のとおり補正された。(当審注:下線部は、補正箇所を示すため、当審にて付した。)
「 【請求項1】
バイポーラICの形成において、シリコンウエハの表面上に形成した分離領域で囲まれた所定の深さおよび不純物濃度のN型基板上、または負電源用途でのP型基板上にて、NPNトランジスタまたはPNPトランジスタのコレクタ領域内にベース領域を形成しそのベース領域内にエミッタ領域を形成し、エミッタ領域により基板表面に形成されたベースにおける全部又は一部のパターンの幅(ベース幅)を1μm以下に形成し、電流がエミッタからベースを通過してコレクタまで基板に対して水平方向に流れることを特徴とする方法。エミッタのパターンとベースのパターンとコレクタのパターンとエミッタの深さとベースの深さとコレクタの深さはベース幅の長さより長くする深さはコレクタが最も深く次にベースが深く次にエミッタが深い。
【請求項2】
半導体は不純物濃度によりオーミック接続が形成可能な高濃度領域とショットキー・バリア・ダイオードが形成可能な低濃度領域が存在し、請求項1による構造のバイポーラトランジスタの形成において、低濃度領域上にショットキー・バリア・ダイオードをコレクタとベースの間に形成し、バイポーラトランジスタの更なる高速化を実現する方法。
【請求項3】
請求項1による構造のバイポーラトランジスタの形成において、低濃度領域上にショットキー・バリア・ダイオードを形成し、ショットキー・バリア・ダイオードの電極周辺の下をバイポーラトランジスタを形成する基板がP型ならN型その基板がN型ならP型の領域を作り基板と異なる型の領域で周辺を覆い、PNダイオードをショットキー・バリア・ダイオードと並列に接続し、信頼性を向上させることを特徴とする方法。
【請求項4】
P型またはN型のシリコンウエハ上またはバイポーラICのシリコンウエハ上にて、MOSICの形成において、シリコンウエハ上で所定の深さの所定の不純物濃度のP型シリコンウエハ上のN型基板およびN型のシリコンウエハ上のP型基板を表面から形成し、N型のソース・ドレイン領域、P型のソース・ドレイン領域、ゲート領域をそれぞれのレイアウトパターンを使用して、MOSトランジスタのソース・ドレインをN型不純物領域またはP型不純物領域またはショットキー・バリア・ダイオードで形成し、ゲートのパターンとソースとドレインのパターンとをゲート電極の下における基板とソースおよびドレインとの空乏層の長さ以内で離すことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4による構造のMOSトランジスタにおいて、ショットキー・バリア・ダイオードの電極周辺の下にMOSトランジスタを形成する基板がP型ならN型その基板がN型ならP型の領域を作り基板と異なる型の領域で周辺を覆い、PNダイオードをショットキー・バリア・ダイオードと並列に接続し、信頼性を向上させることを特徴とする方法。
【請求項6】
シリコンまたはGaAs等の化合物半導体または他の半導体を使用し、前記の請求項1または請求項2または請求項3または請求項4または請求項5の内の少なくとも二つで述べた形成方法の併用で、アナログバイポーラIC、デジタルバイポーラIC、NチャネルMOSIC,CMOSIC、BiCMOSIC等のモノリシックICおよびタイオード、トを形成することを特徴とする方法。ランジスタ、高周波高出力トランジスタ、大電力トランジスタ等の個別半導体素子を形」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1~6の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
バイポーラICの形成において、シリコンウエハの表面上に形成した分離領域で囲まれた所定の深さおよび不純物濃度のN型基板上、または負電源用途でのP型基板上にて、NPNトランジスタまたはPNPトランジスタのコレクタ領域内にベース領域を形成しそのベース領域内にエミッタ領域を形成し、エミッタ領域により基板表面に形成されたベースにおける一部のパターンの幅を1μm以下に形成し、電流がエミッタからベースを通過してコレクタまで基板に対して水平方向に流れることを特徴とする方法。
【請求項2】
半導体は不純物濃度によりオーミック接続が形成可能な高濃度領域とショットキー・バリア・ダイオードが形成可能な低濃度領域が存在し、請求項1による構造のバイポーラトランジスタの形成において、低濃度領域上にショットキー・バリア・ダイオードを形成し、バイポーラトランジスタの更なる高速化を実現する方法。
【請求項3】
請求項1による構造のバイポーラトランジスタの形成において、低濃度領域上にショットキー・バリア・ダイオードを形成し、ショットキー・バリア・ダイオードの電極周辺の下をバイポーラトランジスタを形成する基板がP型ならN型その基板がN型ならP型の領域を作り基板と異なる型の領域で周辺を覆い、PNダイオードをショットキー・バリア・ダイオードと並列に接続し、信頼性を向上させることを特徴とする方法。
【請求項4】
P型またはN型のシリコンウエハ上またはバイポーラICのシリコンウエハ上にて、MOSICの形成において、シリコンウエハ上で所定の深さの所定の不純物濃度のP型シリコンウエハ上のN型基板およびN型のシリコンウエハ上のP型基板を表面から形成し、N型のソース・ドレイン領域、P型のソース・ドレイン領域、ゲート領域をそれぞれのレイアウトパターンを使用して、MOSトランジスタのソース・ドレインをN型不純物領域またはP型不純物領域またはショットキー・バリア・ダイオードで形成し、ゲートのパターンとソースとドレインのパターンとをゲート電極の下における基板とソースおよびドレインとの空乏層の長さ以内で離すことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4による構造のMOSトランジスタにおいて、ショットキー・バリア・ダイオードの電極周辺の下をMOSトランジスタを形成する基板がP型ならN型その基板がN型ならP型の領域を作り基板と異なる型の領域で周辺を覆い、PNダイオードをショットキー・バリア・ダイオードと並列に接続し、信頼性を向上させることを特徴とする方法。
【請求項6】
シリコンまたはGaAs等の化合物半導体または他の半導体を使用し、前記の請求項1または請求項2または請求項3または請求項4または請求項5の内の少なくとも二つで述べた形成方法の併用で、アナログバイポーラIC、デジタルバイポーラIC、NチャネルMOSIC,CMOSIC、BiCMOSIC等のモノリシックICおよびタイオード、トランジスタ、高周波高出力トランジスタ、大電力トランジスタ等の個別半導体素子を形成することを特徴とする方法。」
2 補正の適否について
(1)補正事項
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、以下に挙げる補正事項を含むものである。
<補正事項>
本件補正前の請求項1の「一部のパターンの幅」を、「全部又は一部のパターンの幅」とする。
(2)補正の目的について
ア 上記(1)の補正事項に関し、本件補正前の請求項1の「一部のパターンの幅」を、「全部又は一部のパターンの幅」とすることは、「一部のパターンの幅」に「全部」「のパターンの幅」を選択肢として加えるものであり、択一的記載の要素を付加する補正に該当するから、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく、特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものではない。
イ また、本件補正前の請求項1の「一部のパターンの幅」との記載は明瞭であって、特段不明瞭なものではないから、上記(1)の補正事項に関し、本件補正前の請求項1の「一部のパターンの幅」を、「全部又は一部のパターンの幅」とすることが、特許法第17条の2第5項第4号の「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものともいえない。
ウ さらに、上記(1)の補正事項が、特許法第17条の2第5項第1号の「請求項の削除」あるいは特許法第17条の2第5項第3号の「誤記の訂正」を目的とするものでないことは明らかである。
エ 上記ア~ウによれば、上記(1)の補正事項は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもないから、上記(1)の補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしていない。
3 補正却下についてのむすび
上記2(2)エのとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~6に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1~6に係る発明(以下、「本願発明1~6」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
理由1(発明の単一性)この出願は、本願発明1と、本願発明4との間に、同一の又は対応する特別な技術的特徴が存在しないから、特許法第37条に規定する要件を満たしていない。
理由2(新規性)本願発明1~3、6は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3(進歩性)本願発明1~3、6は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1. 特開2014-99575号公報(以下、「引用文献1」という。)
第5 当審の判断
1 理由1(発明の単一性)について
(1)特許法第37条には、「二以上の発明については、経済産業省令で定める技術的関係を有することにより発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するときは、一の願書で特許出願をすることができる。」と規定されており、上記経済産業省令に相当する特許法施行規則第25条の8には、「特許法第37条の経済産業省令で定める技術的関係とは、二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有していることにより、これらの発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関している技術的関係をいう。」(第1項)、「前項に規定する特別な技術的特徴とは、発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう。」(第2項)と規定されている。
そうしてみると、一の願書で特許出願された一群の発明が、同一の又は対応する「特別な技術的特徴」、すなわち、同一の又は対応する「発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴」を有さない場合、特許法第37条に規定する要件を満たさないことになる。
(2)請求項1に記載された「バイポーラICの形成において、シリコンウエハの表面上に形成した分離領域で囲まれた所定の深さおよび不純物濃度のN型基板上、または負電源用途でのP型基板上にて、NPNトランジスタまたはPNPトランジスタのコレクタ領域内にベース領域を形成しそのベース領域内にエミッタ領域を形成し、エミッタ領域により基板表面に形成されたベースにおける一部のパターンの幅を1μm以下に形成し、電流がエミッタからベースを通過してコレクタまで基板に対して水平方向に流れることを特徴とする方法」と、請求項4に記載された「P型またはN型のシリコンウエハ上またはバイポーラICのシリコンウエハ上にて、MOSICの形成において、シリコンウエハ上で所定の深さの所定の不純物濃度のP型シリコンウエハ上のN型基板およびN型のシリコンウエハ上のP型基板を表面から形成し、N型のソース・ドレイン領域、P型のソース・ドレイン領域、ゲート領域をそれぞれのレイアウトパターンを使用して、MOSトランジスタのソース・ドレインをN型不純物領域またはP型不純物領域またはショットキー・バリア・ダイオードで形成し、ゲートのパターンとソースとドレインのパターンとをゲート電極の下における基板とソースおよびドレインとの空乏層の長さ以内で離すことを特徴とする方法」とは、「シリコンウェハ」が用いられる点で共通する構成を有するといえる。
しかし、半導体集積回路の技術分野においてシリコンウエハを用いること自体は、本願出願前において周知慣用技術であったから、上記(1)で挙げた「発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴」であるとはいえない。
そうすると、本願発明1と、本願発明4との間に、同一の又は対応する「特別な技術的特徴」が存在するとはいえない。
(3)以上のとおり、本願発明1及び本願発明4は、「同一の又は対応する特別な技術的特徴」を有さないから、この出願は、特許法第37条に規定する要件を満たさないものである。
2 理由2(新規性)及び理由3(進歩性)について
(1)引用文献1の記載、引用発明
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、引用文献1(特開2014-99575号公報)には、特に、提出日「平成25年8月26日」の手続補正書、及び、提出日「平成25年12月13日」の手続補正書に、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイポーラICの形成において、シリコンウエハの表面上に形成した分離領域で囲まれた所定の深さおよび不純物濃度のN型基板上、または負電源用途でのP型基板上にて、NPNトランジスタまたはPNPトランジスタのコレクタ領域内にベース領域を形成しそのベース領域内にエミッタ領域を形成し、エミッタ領域により基板表面に形成されたベースにおける一部のパターンの幅を1μm以下に形成し、電流がエミッタからベースを通過してコレクタまで基板に対して水平方向に流れることを特徴とする方法。」(第117頁第10行~第17行)
「【0005】
・・・(中略)・・・これに対して本発明のバイポーラトランジスタの拡散領域は縦方向に広がった形状をしている。・・・(中略)・・・
本発明ではキャリアがエミッタ領域からベース領域を経由してコレクタ領域に移動する距離が従来のバイポーラトランジスタと比較すると著しく短い。このため、動作速度が著しく速くなる。また、バイポーラ集積回路内の各トランジスタのベース幅をレイアウトで自由に変えてhFE値を変えることができる。
本発明ではバイポーラトランジスタの構造が簡素で縦長であるため、面積当たりのデバイスの密度が高くなる。バイポーラ集積回路における配線の長さが短くなり、配線の抵抗や電気容量も減少し動作速度が向上する。
・・・(中略)・・・」(第121頁第2行~第122頁第14行)
「【0007】
・・・(中略)・・・
本発明のバイポーラ集積回路ではエミッタからのキャリアは電界に引かれてベース領域を通り抜けてほとんどコレクタに届き、ベースには僅かに流れることになる。(図4)
・・・(中略)・・・」(第127頁第6行~第7行)
「【図4】
[図:0001412925000001.jpg]
」(第91頁)
イ 上記アの「【特許請求の範囲】【請求項1】」の記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
<引用発明>
「バイポーラICの形成において、シリ コンウエハの表面上に形成した分離領域で囲まれた所定の深さおよび不純物濃度のN型基板上、または負電源用途でのP型基板上にて、NPNトランジスタまたはPNPトランジスタのコレクタ領域内にベース領域を形成しそのベース領域内にエミッタ領域を形成し、エミッタ領域により基板表面に形成されたベースにおける一部のパターンの幅を1μm以下に形成し、電流がエミッタからベースを通過してコレクタまで基板に対して水平方向に流れる、方法。」
(2)対比、判断
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「方法」は、「バイポーラICの形成」における方法である点で、本願発明1の「方法」に相当する。
イ 引用発明の「バイポーラICの形成において、シリコンウエハの表面上に形成した分離領域で囲まれた所定の深さおよび不純物濃度のN型基板上、または負電源用途でのP型基板上にて、NPNトランジスタまたはPNPトランジスタのコレクタ領域内にベース領域を形成しそのベース領域内にエミッタ領域を形成し、エミッタ領域により基板表面に形成されたベースにおける一部のパターンの幅を1μm以下に形成し、電流がエミッタからベースを通過してコレクタまで基板に対して水平方向に流れ」ることは、本願発明1の「バイポーラICの形成において、シリコンウエハの表面上に形成した分離領域で囲まれた所定の深さおよび不純物濃度のN型基板上、または負電源用途でのP型基板上にて、NPNトランジスタまたはPNPトランジスタのコレクタ領域内にベース領域を形成しそのベース領域内にエミッタ領域を形成し、エミッタ領域により基板表面に形成されたベースにおける一部のパターンの幅を1μm以下に形成し、電流がエミッタからベースを通過してコレクタまで基板に対して水平方向に流れること」に相当する。
ウ 上記ア及びイによれば、本願発明1と引用発明との間に相違するところはない。
したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明である。仮に、そうでないとしても、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)小括
以上のとおり、本願発明1は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。仮に、そうでないとしても、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(4)なお、上記第2のとおり、本件補正は却下されるべきものであるが、仮に、本件補正が適法であったとしても、以下のとおり、本件補正により補正された特許請求の範囲に記載された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、仮に、そうでないとしても、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
ア 本願補正発明1
本願補正発明1は、上記第2[理由]1(1)の請求項1に記載したとおりのものである。
イ 対比、判断
(ア)本願補正発明1と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「バイポーラICの形成において、シリコンウエハの表面上に形成した分離領域で囲まれた所定の深さおよび不純物濃度のN型基板上、または負電源用途でのP型基板上にて、NPNトランジスタまたはPNPトランジスタのコレクタ領域内にベース領域を形成しそのベース領域内にエミッタ領域を形成」することは、本願補正発明1の「バイポーラICの形成において、シリコンウエハの表面上に形成した分離領域で囲まれた所定の深さおよび不純物濃度のN型基板上、または負電源用途でのP型基板上にて、NPNトランジスタまたはPNPトランジスタのコレクタ領域内にベース領域を形成しそのベース領域内にエミッタ領域を形成」することに相当する。
b 本願補正発明1の「(ベース幅)」は、「エミッタ領域により基板表面に形成されたベースにおける全部又は一部のパターンの幅」を言い換えているものといえる。
そして、引用発明の「エミッタ領域により基板表面に形成されたベースにおける一部のパターンの幅」は、本願補正発明1の「エミッタ領域により基板表面に形成されたベースにおける」「一部のパターンの幅」と共通している。
そうすると、引用発明の「エミッタ領域により基板表面に形成されたベースにおける一部のパターンの幅」も、ベース幅であるといえる。
したがって、引用発明の「エミッタ領域により基板表面に形成されたベースにおける一部のパターンの幅を1μm以下に形成」することは、本願補正発明1の「エミッタ領域により基板表面に形成されたベースにおける」「一部のパターンの幅(ベース幅)を1μm以下に形成」することに相当する。
c 引用発明の「電流がエミッタからベースを通過してコレクタまで基板に対して水平方向に流れ」ることは、本願補正発明1の「電流がエミッタからベースを通過してコレクタまで基板に対して水平方向に流れる」ことに相当する。
d 上記a~cによれば、本願補正発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「バイポーラICの形成において、シリコンウエハの表面上に形成した分離領域で囲まれた所定の深さおよび不純物濃度のN型基板上、または負電源用途でのP型基板上にて、NPNトランジスタまたはPNPトランジスタのコレクタ領域内にベース領域を形成しそのベース領域内にエミッタ領域を形成し、エミッタ領域により基板表面に形成されたベースにおける一部のパターンの幅(ベース幅)を1μm以下に形成し、電流がエミッタからベースを通過してコレクタまで基板に対して水平方向に流れる、方法。」
<相違点>
本願補正発明1は、「エミッタのパターンとベースのパターンとコレクタのパターンとエミッタの深さとベースの深さとコレクタの深さはベース幅の長さより長くする深さはコレクタが最も深く次にベースが深く次にエミッタが深い。」のに対し、引用発明はそのような特定がされていない点。
(イ)相違点についての検討
a 本願補正発明1において、「エミッタのパターンとベースのパターンとコレクタのパターンとエミッタの深さとベースの深さとコレクタの深さはベース幅の長さより長くする深さはコレクタが最も深く次にベースが深く次にエミッタが深い。」は、
a-1 「エミッタのパターン」の長さは、「ベース幅の長さより長くする」こと、
a-2 「ベースのパターン」の長さは、「ベース幅の長さより長くする」こと、
a-3 「コレクタのパターン」の長さは、「ベース幅の長さより長くする」こと、
a-4 「エミッタの深さとベースの深さとコレクタの深さ」は、「ベース幅の長さより長くする」こと、
a-5 「コレクタ」と「ベース」と「エミッタ」の「深さ」は、「コレクタが最も深く次にベースが深く次にエミッタが深い」こと、
を意味しているといえる。
以下、順に検討する。
b 上記a-1について
(a)上記(1)アによれば、引用文献1の段落0007には、「本発明のバイポーラ集積回路ではエミッタからのキャリアは電界に引かれてベース領域を通り抜けてほとんどコレクタに届き、ベースには僅かに流れることになる。(図4)」と記載され、また、段落0005には、「拡散領域は縦方向に広がった形状」であり、「ベース領域を経由して」「移動する距離が」「著しく短」く、「バイポーラトランジスタの構造が」「縦長である」旨記載されることを参照すると、「本発明」の参照図である図4から、エミッタの基板表面に沿った長さは、ベース幅より長く、エミッタの深さとベースの深さとコレクタの深さはベース幅の長さより長いことが見て取れる。
よって、引用発明において、エミッタの基板表面に沿った長さは、ベース幅より長く、エミッタの深さとベースの深さとコレクタの深さはベース幅の長さより長いといえる。
(b)上記(a)によれば、引用発明において、「エミッタの基板表面に沿った長さは、ベース幅より長」いものであるから、エミッタのパターンの長さは、ベース幅の長さより長くしているとえる。
したがって、引用発明において「エミッタの基板表面に沿った長さは、ベース幅より長」いことは、本願補正発明1の「エミッタのパターン」の長さは「ベース幅の長さより長くする」ことに相当する。
c 上記a-2について
引用発明は、「ベース領域内にエミッタ領域を形成し」ているから、「エミッタ領域」は「ベース領域内」に形成されるものであるところ、上記(ア)bで検討したとおり、引用発明の「エミッタ領域により基板表面に形成されたベースにおける一部のパターンの幅」は、ベース幅である。
そうすると、引用発明において、ベース幅の長さは、ベースのパターンの長さの一部であるといえるから、ベースのパターンの長さは、ベースの幅の長さより長くしているといえる。
したがって、引用発明の「ベース領域内にエミッタ領域を形成」することは、本願補正発明1の「ベースのパターン」の長さは、「ベース幅の長さより長くする」ことに相当する。
d 上記a-3について
引用発明は、「コレクタ領域内にベース領域を形成し」ているから、「ベース領域」は「コレクタ領域内」に形成されるものであるところ、コレクタのパターンの長さは、ベースのパターンの長さより長いといえる。
また、上記cで検討したとおり、引用発明において、ベースのパターンの長さは、ベース幅の長さより長くしているといえる。
そうすると、引用発明において、コレクタのパターンの長さは、ベース幅の長さより長くしていることは明らかである。
したがって、引用発明の「コレクタ領域内にベース領域を形成」することは、本願補正発明1の「コレクタのパターン」の長さは、「ベース幅の長さより長くする」ことに相当する。
e 上記a-4について
上記b(a)で検討した、引用発明において、「エミッタの深さとベースの深さとコレクタの深さはベース幅の長さより長い」いことは、エミッタのパターンの長さは、ベース幅の長さより長くしているとえる。
そして、引用発明において、「エミッタの深さとベースの深さとコレクタの深さはベース幅の長さより長い」ことは、本件補正発明1の「エミッタの深さとベースの深さとコレクタの深さ」は「ベース幅の長さより長くする」ことに相当する。
f 上記a-5について
引用発明は、「コレクタ領域内にベース領域を形成しそのベース領域内にエミッタ領域を形成し」ているから、コレクタとベースとエミッタの深さは、コレクタの深さが最も深く、次にベースが深く、次にエミッタが深いといえる。
したがって、引用発明の「コレクタ領域内にベース領域を形成しそのベース領域内にエミッタ領域を形成」することは、本願補正発明1の「コレクタ」と「ベース」と「エミッタ」の「深さ」は、「深さはコレクタが最も深く次にベースが深く次にエミッタが深い」ことに相当する。
g 相違点についてのまとめ
上記a~fのとおりであるから、上記相違点は実質的なものではない。
したがって、本願補正発明1は、引用文献1に記載された発明である。仮に、そうでないとしても、本願補正発明1は、引用文献1に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 小括
以上のとおり、本願補正発明1は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。仮に、そうでないとしても、本願補正発明1は、引用文献1に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の拒絶理由及び他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-007722