特許拒絶査定不服審判
2023-004232
外科用ステープラ及び関連する方法
- 審判番号
- 2023-004232
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-535713外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年03月13日
- 審決日
- 2024年06月25日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-WZ (A61B) / P18 .537-WZ (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-535713「外科用ステープラ及び関連する方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月25日国際公開、WO2020/131846、令和 4年 2月10日国内公表、特表2022-514399〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和 元年)12月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年12月18日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 3年 8月12日 :手続補正書の提出
令和 4年 7月25日付け:拒絶理由通知書
令和 4年11月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年11月10日付け:拒絶査定
令和 5年 3月13日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年10月16日 :上申書の提出
令和 5年11月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 6年 2月21日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1、2に係る発明は、令和 6年 2月21日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
外科用ステープルであって、
組織を突き刺すための一対のステープル脚部と、
一対の前記ステープル脚部の間のバックスパンであって、前記外科用ステープルが組織をステープル留めするために使用される前に、各前記ステープル脚部は前記バックスパンに対して角度をなす、バックスパンと、
前記バックスパンと一方の前記ステープル脚部との間の接続部における屈曲部であって、前記屈曲部は、凹部を備え、前記凹部は、ワイヤの一部が除去されたこと、又は、印圧加工によるものであり、前記凹部は、組織のステープル留めの間に、前記バックスパンへ向けて一方の前記ステープル脚部を曲げるために必要とされる力を低下させるように構成された、屈曲部とを備える、外科用ステープル。」
第3 当審の拒絶理由
当審が通知した令和 5年11月 2日付け拒絶理由通知書に係る拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
1 理由1(明確性)
この出願の請求項1係る発明は、「外科用ステープル」(物の発明)であるが、当該請求項には、「前記バックスパン及び一対の前記ステープル脚部は、ワイヤを曲げることによって形成されている」という、その物の製造方法が記載されているものと認められる。
ここで、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するときに限られると解するのが相当である(最二小判平成27年6月5日 平成24年(受)1204号、同2658号)。
しかしながら、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書等に記載がなく、また、出願人から主張・立証がされていないため、その存在を認める理由は見いだせない。
よって、特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2 理由2(進歩性)
この出願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:国際公開第94/20030号
第4 理由1(明確性)についての当審の判断
令和 6年 2月21日にされた手続補正により、補正前の「前記バックスパン及び一対の前記ステープル脚部は、ワイヤを曲げることによって形成されている」との記載が削除され、新たに「前記凹部は、ワイヤの一部が除去されたこと、又は、印圧加工によるものであり」との記載が加入された。
しかし、補正で新たに加入された上記記載は、物の製造方法として記載されている。
そして、この製造方法により製造された外科用ステープルの凹部のどのような構造又は特性を特定しているのか不明であり、物の発明の構成として明確でない。
また、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書等に記載がなく、また、出願人から主張・立証がされていないため、その存在を認める理由は見いだせない。
したがって、本願発明は、依然として明確でないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
第5 理由2(進歩性)についての当審の判断
1 引用文献1の記載事項、認定事項及び引用発明
(1)記載事項
引用文献1には、次の記載がある(日本語訳は当審で作成し、下線は当審で付した。)。
ア 「Technical Field
This invention relates to stapling and, more particularly, to improved staples for use in surgery and in other fields.」(明細書第1ページ第2-4行)
(技術分野
本発明は、ステープリングに関し、より詳細には、外科および他の分野で使用するための改良されたステープルに関する。)
イ 「Background of the Invention
Staples have a variety of uses. For example, surgeons use thin wire staples to join the cut ends of hollow organs or ducts (anastomosis) and to achieve hemostasis. Thin wire staples are made by deforming a length of thin wire with uniform cross section and material properties to a U-shape.」(明細書第1ページ第5-10行)
(発明の背景
ステープルには様々な用途がある。例えば、外科医は、中空の臓器または管の切断端部を接合し(吻合)、止血を達成するために、細いワイヤステープルを使用する。細いワイヤステープルは、均一な断面および材料特性を有する細いワイヤの長さをU字形に変形させることによって作られる。)
ウ 「FIG. 1 shows a common prior art thin wire staple 100, including a crown 101 and two legs 102.」(明細書第1ページ第10-11行)
(図1は、クラウン101および2つの脚部102を含む一般的な先行技術の細いワイヤステープル100を示す。)
エ 「FIG. 2 shows the staple of FIG. 1 deformed to a B-shape during installation due to its legs having been forced against an anvil with channels to direct the legs as they bend and deform.」(明細書第1ページ第21-23行)
(図2は、図1のステープルが、脚部が曲げられ変形する際に脚部を方向付ける溝を有するアンビルに脚部が押しつけられたために、設置中にB字形に変形した状態を示す。)
オ 「FIG. 3 shows an exemplary staple 300 in accordance with the present invention. The staple 300 includes a crown 301 and two legs 302. Each leg 302 has a deformation zone 305 with weakened resistance to bending into direction 304 as compared to the resistance of leg regions 306 and 307 which lie outside of the deformation zone 305. When the staple 300 is subjected to stresses arising from forces acting in the direction 304, the legs will bend into that direction, and bending and deformation will take place preferentially in deformation zone 305.」(明細書第6ページ第2-10行)
(図3は、本発明による例示的なステープル300を示す。ステープル300は、クラウン301および2つの脚部302を含む。各脚部302は、変形ゾーン305の外側に位置する脚部領域306および307の抵抗と比較して、方向304への曲げに対する抵抗が弱められた変形ゾーン305を有する。ステープル300が方向304に作用する力から生じる応力を受けると、脚部はその方向に曲がり、曲げ変形は変形ゾーン305で優先的に起こる。)
カ 「In FIG. 4, the staple of FIG. 3 is shown deformed into a rectangular shape. Material stapled with the staple of FIG. 3 will be under more uniform compression than is the case with the B-shaped staple of FIG. 2. FIG. 4 reveals that the location and length of deformation zone 305 and the length of the staple leg 302 are important leg parameters in obtaining a desired compression for stapled material of a particular thickness and in bringing the staple leg ends into close proximity. Ideally, the tips of the staple legs should just about touch one another. The length of leg region 306 between the crown 301 and the deformation zone 305 should be matched to the requirements set by the combination of the thickness of the material being stapled and the compression of this material that is desired. The length of leg region 307 between the deformation zone 305 and the leg end 308 should be selected such that the separation of the leg ends 308 of the deformed staple is minimized without interference between the leg ends 308 occurring as the staple is deformed during installation.」(明細書第6ページ第11-27行)
(図4では、図3のステープルが長方形に変形して示されている。図3のステープルを用いてステープル留めされた物は、図2のB形ステープルを用いた場合よりも均一な圧縮下に置かれる。図4から、変形ゾーン305の位置と長さ、およびステープル脚部302の長さは、特定の厚さのステープル留めされた物に対して所望の圧縮を得る上で、またステープルの脚部端を近接させる上で、重要な脚部のパラメータであることがわかる。理想的には、ステープル脚部の先端は、互いにほぼ接するべきである。クラウン301と変形ゾーン305との間の脚部領域306の長さは、ステープル留めされる物の厚さと、この物の所望の圧縮との組み合わせによって設定される要件に適合されるべきである。変形ゾーン305と脚部端308との間の脚部領域307の長さは、ステープルが設置中に変形する際に生じる脚部端308間の干渉なしに、変形ステープルの脚部端308の間隔が最小になるように選択されるべきである。)
キ 「FIG. 13 shows a side view in cross section of another embodiment, including staple 10 as installed into tissue 12. The legs 26 of the staple 10 each include an upper deformation zone 18 surrounded by a first section 16 and a second section 20, and a lower deformation zone 24 surrounded by a third section 22 and the second section 20. The staple 10 includes a crown 14.
During staple 10 insertion by a stapler (not shown), the tips 23 of the legs 26 penetrate through the tissue 12 being stapled and encounter the stapler anvil (not shown), which causes third sections 22 to rotate inwardly as the legs 26 bend and deform at the lower deformation zones 24.」(明細書第10ページ第14-24行)
(図13は、組織12に取り付けられたステープル10を含む別の実施形態の断面の側面図である。ステープル10の脚部26はそれぞれ、第1の部分16および第2の部分20によって囲まれた上部変形ゾーン18と、第3の部分22および第2の部分20によって囲まれた下部変形ゾーン24とを含む。ステープル10は、クラウン14を含む。
ステープラ(図示せず)によるステープル10の挿入中、脚部26の先端23は、ステープル留めされる組織12を貫通し、ステープラアンビル(図示せず)に接触し、これにより、脚部26が下側変形ゾーン24で曲がって変形するにつれて、第3の部分22が内側に回転する。)
ク 「FIG. 14 shows the inventive staple 10 prior to installation into tissue 12.」(明細書第11ページ第15-16行)
(図14は、組織12に取り付ける前の本発明ステープル10を示している。)
ケ 「17. A surgical staple comprising:
a crown; and
at least two legs, at least one leg of said at least two legs including an inside and an outside, said at least one leg also including at least one deformation zone, said at least one deformation zone being formed by a notch with a fillet with a minimum radius of 3/1000 of an inch.」(請求項17)
(17.以下を備える外科用ステープル:
クラウン;および
少なくとも2つの脚部であって、該少なくとも2つの脚部のうちの少なくとも1つの脚部は、内側および外側を含み、該少なくとも1つの脚部はまた、少なくとも1つの変形ゾーンを含み、該少なくとも1つの変形ゾーンは、最小半径が1000分の3インチの隅肉部を有する切欠きによって形成される、脚部。)
引用文献1には、次の図がある。
コ 「
[図:0001417085000001.jpg]
」(図1)
サ 「
[図:0001417085000002.jpg]
」(図2)
シ 「
[図:0001417085000003.jpg]
」(図3)
ス 「
[図:0001417085000004.jpg]
」(図4)
セ 「
[図:0001417085000005.jpg]
」(図13)
ソ 「
[図:0001417085000006.jpg]
」(図14)
(2)認定事項
ア 図13及び14を説明する上記(1)キ及びクの記載からみて、同様に、図3は組織12に取り付ける前のステープル300の形状であり、図4は組織12に取り付けた後のステープル300の形状である。
イ 上記(1)キに、脚部26の先端23は組織12を貫通するとあるから、同様に、脚部302の先端は組織12を貫通する。
ウ 図3から、2つの脚部302の間にクラウン301があること、脚部302はクラウン301に対して角度をなすこと、クラウン301と脚部302との間は屈曲部で接続されていること、が看取できる。
(3)引用発明
上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「外科分野で使用するステープルであって、
ステープル300は、クラウン301および2つの脚部302を含み、
脚部302の先端は組織12を貫通し、
2つの脚部302の間にクラウン301があり、脚部302は、クラウン301に対して角度をなし、
クラウン301と脚部302との間には屈曲部があり、
各脚部302は、方向304への曲げに対する抵抗が弱められた変形ゾーン305を有する、
ステープル300。」
2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「外科分野で使用する」「ステープル300」は、その構造及び機能から、本願発明の「外科用ステープル」に相当し、以下同様に、
(2)「先端は組織12を貫通」する「2つの脚部302」は、「組織を突き刺すための一対のステープル脚部」に、
(3)「2つの脚部302の間に」ある「クラウン301」は、「一対の前記ステープル脚部の間のバックスパン」に、
(4)「脚部302は、クラウン301に対して角度をな」すことは、当該「ステープル300」が組織12に取り付ける前の状態であることが明らかであるから、「前記外科用ステープルが組織をステープル留めするために使用される前に、各前記ステープル脚部は前記バックスパンに対して角度をなす」ことに、
(5)「クラウン301と脚部302との間に」ある「屈曲部」は、その機能から「接続部」とも表現できるものであるから、「前記バックスパンと一方の前記ステープル脚部との間の接続部における屈曲部」に、
(6)「方向304への曲げに対する抵抗が弱められた変形ゾーン305」は、ステープル300を組織12に取り付ける間に、方向304に向けて脚部302を曲げるために必要とされる力を低下させる変形ゾーン305であって、方向304に向けて脚部302を曲げることは、クラウン301に向けて曲げることであり、変形ゾーン305は、図3を参照すると凹部といえるから、「組織のステープル留めの間に、前記バックスパンへ向けて一方の前記ステープル脚部を曲げるために必要とされる力を低下させるように構成された」「凹部」に、
それぞれ相当する。
そうすると、両者は、
「外科用ステープルであって、
組織を突き刺すための一対のステープル脚部と、
一対の前記ステープル脚部の間のバックスパンであって、前記外科用ステープルが組織をステープル留めするために使用される前に、各前記ステープル脚部は前記バックスパンに対して角度をなす、バックスパンと、
前記バックスパンと一方の前記ステープル脚部との間の接続部における屈曲部と、
凹部とを備え、
前記凹部は、組織のステープル留めの間に、前記バックスパンへ向けて一方の前記ステープル脚部を曲げるために必要とされる力を低下させるように構成された、外科用ステープル。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本願発明は、「前記屈曲部は、凹部を備え」るのに対し、引用発明は、脚部302が変形ゾーン305を備える点。
[相違点2]
本願発明は、「前記凹部は、ワイヤの一部が除去されたこと、又は、印圧加工によるものであ」るのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
3 判断
(1)相違点1
引用文献1には、クラウン301と変形ゾーン305との間の長さは、ステープル留めされる物の厚さと所望の圧縮の要件に応じて定められる旨が記載されている(前記1(1)カ)。
また、例えば引用文献1において背景技術を説明する図1及び2にみられるように、クラウンと脚部との間の屈曲部から脚部を折り曲げてステープル留めすることは、通常のことである(前記1(1)ウ、エ、コ及びサ)。
そうすると、引用発明において、対象の組織の厚さが薄い場合、脚部302を屈曲部で折り曲げるために、屈曲部に変形ゾーン305を設けることは、当業者が格別の創意を要することなく容易になし得た程度のことである。
(2)相違点2
前記第4で指摘したとおり、相違点2に係る本願発明の事項は物の発明の構成として明確でないが、外科用ステープルという物の発明が備える「凹部」自体として、本願発明と引用発明との間に差異はない。よって、相違点2は実質的な相違点ではない。
仮に実質的な相違点であったとしても、例えば引用文献1の背景技術の欄に見られるように、外科用ステープルをワイヤから製造することは、通常のことであり(前記1(1)イ)、また、引用文献1には、変形ゾーンは切欠きによって形成されることも記載されている(前記1(1)ケ)。
そして、切欠きの加工として、除去や印圧加工は、例を挙げるまでもなく周知であるから、引用発明において、相違点2に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易になし得た程度のことである。
(3)効果
本願発明の奏する効果も、引用発明及び引用文献1の記載事項から当業者が予測し得た範囲内のものであり、各別顕著なものでない。
(4)小括
よって、本願発明は、引用発明及び引用文献1の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-004232