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特許拒絶査定不服審判

2022-014655

コイニングされた縫合糸通しドリル

審判番号
2022-014655
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-562116
請求日
2022年09月16日
審決日
2025年02月05日
公報発行日
2025年08月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】コンメッド コーポレーション
  • 【請求人代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 佐々木 正章
  • 審判官 村上 哲
  • 審判官 栗山 卓也
分類
P18 .121-WZ (A61B) / P18 .537-WZ (A61B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条6項1号特許法36条6項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-562116「コイニングされた縫合糸通しドリル」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年11月14日国際公開、WO2019/217345、令和 3年 8月26日国内公表、特表2021-520953〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(令和 1年) 5月 7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年 5月 9日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、その後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和 3年 9月22日付け:拒絶理由通知書 令和 3年12月24日提出:手続補正書、意見書 令和 4年 5月13日付け:拒絶査定 令和 4年 9月16日提出:審判請求書、手続補正書 令和 4年11月 4日提出:手続補正書(方式) 令和 5年 2月24日提出:上申書 令和 6年 2月21日付け:拒絶理由通知書(当審) 令和 6年 6月24日提出:手続補正書、意見書 第2 本願発明 本願の請求項1ないし10に係る発明は、令和 6年 6月24日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「縫合糸通しドリルであって、 近位端および遠位端の間を延在する細長いシャフトと、 前記細長いシャフトの前記近位端から延在するワイヤループと、 前記細長いシャフトの前記遠位端にあるテーパ状のドリル先端と、 を含み、 前記細長いシャフトは、第一の直径及び第一の形状を有する第一の部分及び第二の部分と、前記第一の部分と前記第二の部分との間に延在し第二の形状を有する狭い部分と、を有し 前記第一の部分は前記狭い部分から最も近位端に近位方向に延在し、前記第一の直径及び前記第一の形状を有し、 前記狭い部分は近位端よりも遠位端に近い位置にあり、 前記狭い部分の前記第二の形状は直方体であり、前記第一の形状は前記第二の形状とは異なり、前記狭い部分の一方向における寸法は前記第一の直径よりも小さく、 前記狭い部分が前記ドリル先端に対して近位に隣接する、縫合糸通しドリル。」 第3 当審において通知した拒絶理由の概要 当審において令和 6年 2月21日付けで通知した拒絶理由通知は以下の理由を含むものである。 理由1.(サポート要件)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題が明記されていない。また、背景技術の説明(段落【0003】-【0007】参照)を含む発明の詳細な説明の全体及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいても、本願発明が解決しようとする課題及びその解決手段を把握できない。 そうすると、本願発明は、発明の詳細な説明及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、どのような課題をどのように解決するのかについて把握できないから、本願発明の記載はサポート要件を満たしていない。 請求人は、令和 4年11月 4日提出の審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書の3.ア(1)欄において「本願発明では、細長いシャフトにおいて、ドリル先端のサイズが大きく、遠位端側にありかつドリル先端に対して近位に隣接する狭い部分はドリル先端よりもサイズが小さいため、ドリル先端を用いて骨などに穴を穿孔して縫合糸通しドリルの遠位端側の一部分を穴に挿入している間、ドリル先端以外の残りの部分が骨に対して外傷を引き起こすことなく通過可能にします。このように、細長いシャフトにおいて、狭い部分がドリル先端に近い位置にあることで、細長いシャフトを穴に完全に押し込む必要がなく、骨の遠位側の組織の損傷を最小限に抑えることができます。」と説明し、令和 5年 2月24日提出の上申書において「本願発明によれば、ドリル先端が骨などに穴を穿孔している間、ドリル先端の近位に隣接する狭い部分は骨に対して外傷を引き起こすことなく縫合糸を通すことを可能にするため、狭い部分がドリル先端に近い位置にあることで、骨の組織の損傷を最小限に抑えることができます。」と説明する。 しかしながら、コイニングにより、一方向において第二の直径d2の狭い部分26を形成(図1A、図2A参照)しても、当該部分は、別の方向において径が増加している(図1B、図2B参照)。そうすると、別の方向における径の増加(図1B、図2B参照)のため、狭い部分26におけるドリルの回転径は、第一の直径d1よりむしろ増加し、当該部分が骨にぶつかってしまい、外傷を引き起こすことが明らかである。そのため、「ドリル先端以外の残りの部分が、骨に対して外傷を引き起こすことなく」、「骨の組織の損傷を最小限に抑える」という課題を解決できない。 よって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 理由2.(明確性)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 請求項1の「前記細長いシャフトは、第一の直径を有する第一の部分と、前記第一の部分よりも狭く前記第一の直径よりも小さい第二の直径を有する前記遠位端側の狭い部分と、を含み」は、どのような構造、形状を特定しているのかが、明確でない。 (1)「狭い部分」が「第一の部分よりも狭」いとは、「第一の部分」の何と「狭い部分」の何をどのように比較したものであるのかが不明確である。 よって、本願発明は明確でない。 理由3.(進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1.米国特許出願公開第2013/0090658号明細書 引用文献2.米国特許出願公開第2010/0217315号明細書 第4 理由1(サポート要件)についての当審の判断 (1)発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題が明記されていない。 また、背景技術の説明(段落【0003】-【0007】参照)を含む発明の詳細な説明の全体及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいても、本願発明が解決しようとする課題及びその解決手段を把握できない。 そうすると、請求項1-10に係る発明は、発明の詳細な説明及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、どのような課題をどのように解決するのかについて把握できない。 (2)発明の詳細な説明には、「本発明は一般に、外科手術ドリルに関し、より具体的には、縫合糸を骨に通すためのドリルに関する。」(【0002】)と記載されており、本願発明は、縫合糸を骨に通すことのできる縫合糸通しドリルである。そして、具体的には、「アンカー本体112に取り付けられたある長さの縫合糸114を、図1Aの縫合糸通しドリル10のループ28に通す。次いで、縫合糸通しドリル10を使用して、第一のボディ118を通る単一孔118-1および第二のボディ120に単一孔120-1を作出する。縫合糸通しドリル10は、遠位に前進するにつれて、前述の長さの縫合糸114を、骨穴118-1、120-1を通して、そして全縫合ボタン112を通して引っ張り、骨穴120-1、118-1を通して後方に前進して、図4~5に示す部分的または配備されていない構成を形成する」(【0023】)ものであるから、縫合糸通しドリルの細長いシャフトは、遠位端のドリル先端で骨に孔を作出した後、近位端まで作出した孔を通すことで当該孔内に縫合糸を通すものである。 しかし、本願発明は、図2Bから把握されるように、狭い部分26を「第1の直径及び第1の形状」と比較して直方体の対角線方向において、径が増加している(下記参考図を、矢印間の距離に着目して参照されたい)ものを含んでおり、そのようなものは、狭い部分26におけるドリルの回転径が、第一の直径d1より増加しているから、当該部分が骨にぶつかり、骨を通過することはできない。 そうすると、発明の詳細な説明には、遠位端のドリル先端で骨に孔を作出した後、近位端まで当該孔を通すことで当該孔内に縫合糸を通すものが記載されていない。 よって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 (3)請求人は、令和 4年11月 4日提出の審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書の3.ア(1)欄において「本願発明では、細長いシャフトにおいて、ドリル先端のサイズが大きく、遠位端側にありかつドリル先端に対して近位に隣接する狭い部分はドリル先端よりもサイズが小さいため、ドリル先端を用いて骨などに穴を穿孔して縫合糸通しドリルの遠位端側の一部分を穴に挿入している間、ドリル先端以外の残りの部分が骨に対して外傷を引き起こすことなく通過可能にします。このように、細長いシャフトにおいて、狭い部分がドリル先端に近い位置にあることで、細長いシャフトを穴に完全に押し込む必要がなく、骨の遠位側の組織の損傷を最小限に抑えることができます。」と説明し、令和 5年 2月24日提出の上申書において「本願発明によれば、ドリル先端が骨などに穴を穿孔している間、ドリル先端の近位に隣接する狭い部分は骨に対して外傷を引き起こすことなく縫合糸を通すことを可能にするため、狭い部分がドリル先端に近い位置にあることで、骨の組織の損傷を最小限に抑えることができます。」と説明し、令和 6年 6月24日提出の意見書において「本願発明では、細長いシャフトにおいて、ドリル先端のサイズが大きく、遠位端側にある狭い部分はドリル先端よりもサイズが小さいため、ドリル先端を用いて骨などに穴を穿孔して縫合糸通しドリルの遠位端側の一部分を穴に挿入している間、ドリル先端以外の残りの部分が骨に対して外傷を引き起こすことなく通過可能にします。このように、細長いシャフトにおいて、狭い部分がドリル先端に近い遠位端側の位置にあることで、細長いシャフトを穴に完全に押し込む必要がなく、骨の遠位側の組織の損傷を最小限に抑えることができます。」と主張する。 さらに、請求人は、令和 6年 6月24日提出の意見書の「3.理由1(サポート要件)」において、「図1Bにおいて、狭い部分の寸法は第一の部分、第二の部分の第一の直径よりも大きいものではなく、ほぼ同じとして表されています。つまり、狭い部分の寸法は、ほぼ全ての方向において第一の直径とほぼ同じか小さいものです。仮に図1Bにおいて、狭い部分の寸法は第一の部分、第二の部分の第一の直径よりも大きくなっていた場合であっても、非常にわずかなものにすぎません。このため、審判官殿が述べておられるように、狭い部分が骨にぶつかり、外傷を引き起こすものではなく、狭い部分の機能を阻害するようなものではありません。」と主張する。 しかし、本願発明は、「前記狭い部分の一方向における寸法は前記第一の直径よりも小さく」として特定した当該一方向以外の方向における「狭い部分」の回転中心からの外形寸法を、具体的に特定されていない。 そのため、本願発明は、「前記狭い部分の一方向における寸法は前記第一の直径よりも小さく」として特定した当該一方向以外の方向における「狭い部分」の外形寸法が、第二の部分の第一の直径よりも大きいものを含んでいる(図2B参照。)から、上述した「ドリル先端以外の残りの部分が、骨に対して外傷を引き起こすことなく通過可能にする」という課題は解決できない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 参考図 下図の矢印は、当審で付加した。 [図:0001424857000001.jpg] (4)さらに、請求項1の「前記細長いシャフトは、第一の直径及び第一の形状を有する第一の部分及び第二の部分」の「第一の直径及び第一の形状を有する第一の部分及び第二の部分」は、発明の詳細な説明や図面に記載された第一の直径の断面円形の形状の他に、例えば、第一の直径の断面半円の形状など様々な形状を含むものである。 しかし、発明の詳細な説明や図面には、第一の部分及び第二の部分の第一の形状を、断面半円の形状等各種形状とすることは、記載されていない。 よって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 (5)小括 したがって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 第5 理由2(明確性)についての当審の判断 請求項1の「第一の直径及び第一の形状を有する第一の部分及び第二の部分」及び「前記第一の部分は前記狭い部分から最も近位端に近位方向に延在し、前記第一の直径及び前記第一の形状を有し」における「第一の形状」とはどのような形状であるのかが明確でなく、その「第一の直径」とは、例えば、楕円形等の場合、どの部分からどの部分まで(長径と短径がある。)を第一の直径としているかが不明である。 そして、上記のとおり「第一の直径」が不明確であるから、「前記狭い部分の一方向における寸法は前記第一の直径よりも小さく」は不明確である。 したがって、本願発明は明確でない。 第6 理由3(進歩性)についての当審の判断 1 引用文献の記載、引用発明、周知技術を示す文献 (1)引用文献1の記載 ア 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助として当審が付した。和訳は当審による。)。 「[0003]Orthopedic surgeons utilize guide pins for a variety of common procedures, most involving a repair of a joint. For example, when securing a graft in the knee to replace anterior crucial ligament, a guide pin is often used to help create precisely located tunnels for the passage of a graft and/or suture material.」([0003]整形外科医は、関節の修復を伴う一般的な様々な処置にガイドピンを利用している。例えば、前十字靭帯を置換するために膝に移植片を固定する場合、ガイドピンは、移植片及び/又は縫合糸材料を通すための正確な位置のトンネルを形成するためにしばしば使用される。) 「[0022]Referring to FIGS. 1, 2, 3, 4, and 5 together, a guide pin gauge 1 of the present invention includes a distal cutting head 10, a proximal shank 20 and a reduced diameter portion 30 located extending a distance 31 between the distal cutting head 10 and the proximal shank 20. 」([0022]図1、図2、図3、図4及び図5を一緒に参照すると、本発明のガイドピンゲージ1は、遠位切削ヘッド10、近位シャンク20、及び遠位切削ヘッド10と近位シャンク20の間の距離31延在する縮径部30とを有している。) 「[0023]・・・at a distal tip 12 of the distal cutting head 10・・・」([0023]・・・切断ヘッド10の遠位端12において・・・) 「[0025]An important feature of the present invention lies in the fact that an outside diameter 14 the distal cutting head 10 and an outside diameter 24 of the proximal shank 20 are equivalent, with the term “equivalent” being used in the specification and claims as being the same except for typical manufacturing tolerances causing slightly different diameters, and outside diameters 14,24 being sufficiently larger than an outside diameter 34 of the reduced diameter portion 30 to produce a sufficient height 48 for the proximal facing shoulder 40. 」 ([0025]本発明の重要な特徴は、遠位切断ヘッド10の外径14と近位シャンク20の外径24とが同等であるという事実にあり、ここで「同等」という用語は、わずかなに異なる直径を生じる典型的な製造公差を除いて、同じであるとして、本明細書及び特許請求の範囲において使用されるものであり、そして、外径14、24は、縮径部30の外径34より十分に大きく、近位向き肩部40の十分な高さ48を生成する。) 「[0026]・・・Further, the cutting surfaces 26 may include flutes extending a length 28 that is shorter than an overall length 29 of the distal cutting head 10 to provide a more consistent shoulder 40, the more consistent proximal facing shoulder 40 functioning more reliably than if flutes extended through the shoulder 40 causing voids in the shoulder 40.」([0026]・・・さらに、切削面26は、より一貫性のある肩部40を提供するために、遠位切削ヘッド10の全長29よりも短い長さ28を延びる切削溝を含むことができ、より一貫性のある近位向きの肩部40は、切削溝が肩部40を通って延びて肩部40に欠けを生じさせる場合よりも、より信頼性高く機能する。) 「[0030]In a preferred embodiment, the diameter 34 of the reduced diameter portion 30 is 0.075″ while the diameter 14 of the distal cutting head 10 and the diameter 24 of the proximal shank 20 are preferably 0.093″.」([0030]好ましい実施形態では、縮径部30の直径34は、0.075インチであり、遠位切削ヘッド10の直径14と近位シャンク20の直径24は0.093インチである。) 「図1、図2 [図:0001424857000002.jpg] 」 イ 上記アから以下の事項が理解できる。 段落[0003]には、ガイドピンが、縫合糸材料を通すためのトンネルの形成に使用されることが記載されている。 図1及び図2より、ガイドピンゲージ1が、近位端および遠位端の間を延在する細長い軸部を有することが看取される。 段落[0023]、図1及び図2より、前記細長い軸部の遠位端側の遠位切削ヘッド10は、先細形状の遠位端12を有することが看取される。 段落[0022]、図1及び図2より、前記細長い軸部は、遠位切削ヘッド10、近位シャンク20、及び遠位切削ヘッド10と近位シャンク20の間に延在する縮径部30とを有し、近位シャンク20は、縮径部30から近位側に延在することが看取される。 段落[0022]、[0025]、図1及び図2より、前記細長い軸部において、遠位切削ヘッド10の外径14と近位シャンク20の外径24は同等であり、外径14、24は、縮径部30の外径34よりも大きいことが把握できる。 段落[0026]、図1及び図2により、遠位切削ヘッド10の切削溝は、図1における長さ28の範囲に存在し、長さ28の範囲外の切削肩部40側の遠位切削ヘッド10の全長29の範囲に存在しないので、図2における全長29の範囲から図1の長さ28の範囲を除いた遠位切削ヘッド10の部分(以下「肩部40付近の部分」という。)の外形は、円筒形であることが明らかである。 段落[0025]、図1及び図2より、近位シャンク20の外形は、円筒形であることが明らかである。 そうすると、遠位切削ヘッド10のうち肩部40付近の部分の外形と、近位シャンク20の外形とは、ともに、円筒形である。 図1、図2より、縮径部30から近位端の距離よりも縮径部30から遠位端12の距離は短いことが看取される。 段落[0022]、図1及び図2より、前記縮径部30が、前記遠位切削ヘッド10に対して近位側で隣接することが看守できる。 (2)引用発明 上記(1)ア及びイの事項を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「縫合糸材料を通すためのトンネルの形成に使用されるガイドピンゲージ1であって、 近位端および遠位端の間を延在する細長い軸部と、 前記細長い軸部の遠位端側の遠位切削ヘッド10が有する先細形状の遠位端12と、 を含み、 前記細長い軸部は、遠位切削ヘッド10、近位シャンク20、及び遠位切削ヘッド10と近位シャンク20の間に延在する縮径部30とを有し、 近位シャンク20は、縮径部30から近位側に延在し、 遠位切削ヘッド10の肩部40付近の部分の外径と前記細長い軸部の近位端側の近位シャンク20の外径24は同等であり、外径14、24は、縮径部30の外径34よりも大きく、 遠位切削ヘッド10のうち肩部40付近の部分の外形と、近位シャンク20の外形は、円筒形であり、 縮径部30から近位端の距離よりも縮径部30から遠位端12の距離は短く、 縮径部30が、前記遠位切削ヘッド10に対して近位側で隣接する、 ガイドピンゲージ1。」 (3)引用文献2の記載 ア 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 「DRILL PIN FOR SUTURE PASSING」(縫合糸を通すためのガイドピン) 「[0004] ・・・. A guide pin is placed through the incision and driven into the bone. A drill is then placed over and guided by the guide pin during the drilling of the graft tunnel trough the bone.」(・・・。ガイドピンを切開部から挿入し、骨に打ち込む。その後、ドリルがガイドピンの上に置かれ、骨に移植トンネルを掘削する際、ガイドピンに導かれる。) 「[0007]・・・ The suture passing mechanism may include a loop (for example, a wire loop or suture loop) securely attached to the pin (for example, a drill pin). 」(・・・縫合糸通し機構は、ピン(例えば、ドリルピン)に固定して取り付けられるループ(例えば、ワイヤループまたは縫合糸ループ)を含むことができる。) 「[0038]In a first exemplary embodiment, and as illustrated in FIGS. 2-4, suture passing construct 100 of the present invention comprises a pin 110 with a loop 120 attached thereto. The pin 110 may be, for example, a drill pin, a guide pin or a beath pin, among others.」 ([0038]第1の実施例において、および図2-4に示されるように、本発明の縫合糸を通す構成体100は、ループ120が取り付けられたピン110を含む。ピン110は、例えば、ドリルピン、ガイドピン、またはビースピンなどであってもよい。) 「[0039]The loop 120 may be a suture loop 120 or a wire loop 120that is attached to proximal end 112 of the pin 110.」([0039]ループ120は、ピン110の近位端112に取り付けられる縫合糸ループ120またはワイヤループ120であってよい。) 「[0041]Loop 120 may be attached directly or indirectly to the shaft 110a of pin 110 ・・・」([0041]ループ120は、ピン110の軸部110aに直接又は間接的に取り付けることができる・・・) 「[0042]Loop 120 of the pin 110 may be securely fitted within cutout section 22 of the shaft 110a of pin 110 (as shown in detail in FIG. 4, for example).」([0042]ピン110のループ120は、(例えば図4に詳細に示すように)ピン110の軸部110aの切り欠き部22内にしっかりと嵌め込まれてもよい。 「[0051]In an exemplary embodiment, a method of suture passing according to the present invention comprises inter alia the steps of: (i) providing a suture passing construct 100, 200, 300, 400 of the present invention (comprising a pin (such as a drill pin) provided with a suture passing mechanism such as a wire loop 120 or a side slot 220, 320, 420) in the vicinity of a bone; (ii) attaching at least one flexible strand (optionally with attached tissue such as ligament, tendon, or graft) to the suture passing mechanism of the suture passing construct 100, 200, 300, 400; (iii) forming a socket or bone tunnel with the suture passing construct 100, 200, 300, 400 of the present invention; and (iv) simultaneously, passing the at least one flexible strand (attached to the suture passing construct 100, 200, 300, 400) through at least a portion of the bone socket or tunnel.」([0051]例示的な実施形態において、本発明による縫合糸通過方法は、特に以下のステップを含む: (i)骨の近傍に本発明の縫合糸通過構成体100、200、300、400(ワイヤループ120またはサイドスロット220、320、420などの縫合糸通過機構を備えたピン(ドリルピンなど)を含む)を提供するステップ;(ii)縫合糸通過構成体100、200、300、400の縫合糸通過機構に少なくとも1本の可撓性ストランド(任意選択で、靭帯、腱、移植片などの付着組織を有する)を取り付けるステップ; (iii)本発明の縫合糸通過構造体100、200、300、400を用いてソケットまたは骨トンネルを形成する工程;および(iv)同時に、(縫合糸通過構造体100、200、300、400に取り付けられた)少なくとも1本の可撓性ストランドを骨ソケットまたはトンネルの少なくとも一部を通して通過させる工程。) 「図2 [図:0001424857000003.jpg] 」 「図4 [図:0001424857000004.jpg] 」 (4) 周知技術を示す文献 ア 特開昭64-2638号公報(以下「引用文献3」という。) (ア) 「本体部の背面において、第5d図に示すように、完全なI-ビーム形状が達成される。この地点において、その四角いコーナーを備えたI-ビーム形状はこの構断面形状の完全な強度特性を与える。」(明細書第4ページ左上欄第16-19行) (イ) 「このように短い形状の変転を排除する本発明の一実施態様が第3a図-第3c図中に示されている。ここに示されている縫合針は尖端部12、胴部14および中間本体部16を備えている。この本体部は三つの異なって形成された領域、すなわち前部テーパー域42、中間I-ビーム域44、後部テーパー域46を示している。第3b図および第3c図中に示されているように、前部テーパー域42は尖端部と本体部との接合個所からスタートし、そこでは縫合針は円形状を有し、かつX1=Tである。テーパーは縫合針の中央に向がって延びているけれども、T寸法は一定のままであり、x寸法は、I-ビーム形状がX2で示された第一地点において達成されるまで、X1からX2まで減少する。本体部の中央域44は一定の寸法特性を有するI-ビーム形状を呈する。I-ビーム域44の背面において、縫合針について逆テーパーおよびI-ビームから円形直径への形状における変化が開始される。後部テーパー域46に沿って、x寸法はX2からX1へと増大し、そしてT寸法は一定のままである。本体部が終結する後部テーパー域の後端においては、X1はTに等しく、そして縫合針は再びその丸い形状を示し、それは胴部14に沿って連続している。」(明細書第4ページ右下欄第6行-第5ページ左上欄第10行) (ウ) 図3a-3c 「 [図:0001424857000005.jpg] 」 エ 図5 「 [図:0001424857000006.jpg] 」 イ 特開平7-204207号公報(以下「引用文献4」という。) 「【0014】この針の直径は、微細外科で満足される使用を可能にするに有効な直径である。典型的には、この直径は約60ミル(1インチの1000分の1)未満、好適には約15ミル未満であり、約1ミル、好適には約1.4から約12ミルまでである。この針は通常の円形断面を有していてもよいが、この針の断面はその代わりとして、円形でない断面形状、例えば三角形、台形、長方形、六角形または楕円形であるか、或は長方形の向かい合う短い辺が丸くて半円形になっている長方形などであってもよいことは認識されるであろう。本明細書において「直径」は(4A/π)の平方根を意味しており、ここで、Aは断面積である。この針に、「リボン」形状または長方形または「I-ビーム」形状を与えてもよいか、或は米国特許第4,799,484号に記述されているような、先端部から円形断面そして丸くなっている長方形断面に続いてより鋭角な隅へと滑らかに移行している断面を与えてもよい。」 2 本願発明と引用発明の対比 (1)本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「縫合糸材料を通すためのトンネルの形成に使用されるガイドピンゲージ1」と、本願発明の「縫合糸通しドリル」とは、縫合糸を通すためのトンネルの形成に使用されるドリルの限りで一致する。 引用発明の「近位端および遠位端の間を延在する細長い軸部」は、本願発明の「近位端および遠位端の間を延在する細長いシャフト」に、 引用発明の「前記細長い軸部の遠位端側の遠位切削ヘッド10が有する先細形状の遠位端12」は、本願発明の「前記細長いシャフトの前記遠位端にあるテーパ状のドリル先端」に、それぞれ相当する。 引用発明の「近位シャンク20」は、「縮径部30から近位側に延在し」ているから、本願発明の「第一の部分」であって、「前記狭い部分から最も近位端に近位方向に延在」する「第一の部分」に、 引用発明の「遠位切削ヘッド10のうち肩部40付近の部分」は、本願発明の「第二の部分」に、 引用発明の「縮径部30」は、「遠位切削ヘッド10と近位シャンク20の間に延在する」から、本願発明の「前記第一の部分と前記第二の部分との間に延在」する「狭い部分」に、それぞれ相当し、 引用発明の「前記細長い軸部は、遠位切削ヘッド10、近位シャンク20、及び遠位切削ヘッド10と近位シャンク20の間に延在する縮径部30とを有し、 近位シャンク20は、縮径部30から近位側に延在し、 遠位切削ヘッド10の肩部40付近の部分の外径14と近位シャンク20の外径24は同等であり、外径14、24は、縮径部30の外径34よりも大きく、 遠位切削ヘッド10のうち肩部40付近の部分の外形と、近位シャンク20の外形は、円筒形であり、 縮径部30から近位端の距離よりも縮径部30から遠位端12の距離は短く」と、 本願発明の「前記細長いシャフトは、第一の直径及び第一の形状を有する第一の部分及び第二の部分と、前記第一の部分と前記第二の部分との間に延在し第二の形状を有する狭い部分と、を有し 前記第一の部分は前記狭い部分から最も近位端に近位方向に延在し、前記第一の直径及び前記第一の形状を有し、 前記狭い部分は近位端よりも遠位端に近い位置にあり、 前記狭い部分の前記第二の形状は直方体であり、前記第一の形状は前記第二の形状とは異なり、前記狭い部分の一方向における寸法は前記第一の直径よりも小さく」とは、 前記細長いシャフトは、第一の直径及び第一の形状を有する第一の部分及び第二の部分と、前記第一の部分と前記第二の部分との間に延在し第二の形状を有する狭い部分と、を有し 前記第一の部分は前記狭い部分から最も近位端に近位方向に延在し、前記第一の直径及び前記第一の形状を有し、 前記狭い部分の一方向における寸法は前記第一の直径よりも小さくの限りで一致する。 引用発明の「前記縮径部30が、前記遠位切削ヘッド10に対して近位側で隣接する」ことは、本願発明の「前記狭い部分が前記ドリル先端に対して近位に隣接する」ことに、相当する。 (2)一致点、相違点 本願発明と引用発明は 「縫合糸を通すためのトンネルの形成に使用されるドリルであって、 近位端および遠位端の間を延在する細長いシャフトと、 前記細長いシャフトの前記遠位端にあるテーパ状のドリル先端と、 を含み、 前記細長いシャフトは、第一の直径及び第一の形状を有する第一の部分及び第二の部分と、前記第一の部分と前記第二の部分との間に延在し第二の形状を有する狭い部分と、を有し 前記第一の部分は前記狭い部分から最も近位端に近位方向に延在し、前記第一の直径及び前記第一の形状を有し、 前記狭い部分の一方向における寸法は前記第一の直径よりも小さく、 前記狭い部分が前記ドリル先端に対して近位に隣接する、ドリル。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本願発明は、「縫合糸通しドリルであって、」「細長いシャフトの近位端から延在するワイヤループ」「を含」むのに対して、引用発明は、「縫合糸材料を通すためのトンネルの形成に使用されるガイドピンゲージ1」である点。 <相違点2> 本願発明は、「前記狭い部分の前記第二の形状は直方体であり、前記第一の形状は前記第二の形状とは異な」るのに対して、引用発明は、「遠位切削ヘッド10のうち肩部40付近の部分の外形と、近位シャンク20の外形が、円筒形であ」る点。 <相違点3> 本願発明は、「前記狭い部分は近位端よりも遠位端に近い位置にあ」るのに対して、引用発明は「縮径部30から近位端の距離よりも縮径部30から遠位端12の距離は短」い点。 3 判断 (1)相違点1について 引用文献2(上記1(3)参照)には、骨トンネルを形成する縫合糸通し構成体100において、ドリルピン又はガイドピン110の軸部110aの近位端にワイヤループ120を取り付ける点が記載されている。 引用発明は、縫合糸材料を通すためのトンネルを形成するものであるから、引用発明において、穴開けと併せて糸通しを行うものとするために、引用文献2記載の事項を適用して上記相違点1に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (2)相違点2について 工具のシャフトの一部の断面形状を、長方形形状とすることは、引用文献3(明細書第4ページ左上欄第16-19行、第4ページ右下欄第6行-第5ページ左上欄第10行、図3a―c、図5b参照)、引用文献4(【0014】)に示されるように周知技術である。 引用発明に当該周知技術を適用して、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (3)相違点3について 引用発明の「縮径部30から近位端の距離よりも縮径部30から遠位端12の距離は短」いことは、縮径部30は近位端よりも遠位端に近い位置にあるということができるから、実質的な相違点ではない。 仮に、本願発明の「前記狭い部分は近位端よりも遠位端に近い位置にあ」るを、前記狭い部分の全ての箇所が近位端よりも遠位端に近い位置にあることと限定解釈するとしても、引用発明において、縮径部30の長さ、位置を使用形態、材質、工具として要求される性能等に合わせて適宜決定することで、相違点3に係る本願発明の事項とすることは、当業者が適宜になし得た程度の事項に過ぎない。 (4)本願発明を全体として検討しても、本願発明の奏する効果は、引用文献1、引用文献2に記載された事項、及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものに過ぎず、格別顕著ということはできない。 4 小括 したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 また、本願発明は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 また、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきである。 よって結論のとおり審決する。

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2022-014655

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