特許拒絶査定不服審判
2023-003997
成人及び青年における低ホスファターゼ症(HPP)を治療する方法
- 審判番号
- 2023-003997
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-553247
- 請求日
- 2023年03月08日
- 審決日
- 2025年02月26日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人平木国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 松波 由美子
- 審判官 岡山 太一郎
- 審判官 吉田 佳代子
- 分類
- P18 .575-Z (A61K) / P18 .121-Z (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-553247「成人及び青年における低ホスファターゼ症(HPP)を治療する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月 4日国際公開、WO2018/183720、令和2年4月23日国内公表、特表2020-512363〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)3月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年3月31日、2017年5月5日、及び2018年3月16日、いずれも米国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和3年 3月24日 手続補正書の提出
令和4年 4月12日付け 拒絶理由通知書
同年 7月20日 意見書及び手続補正書の提出
同年10月28日付け 拒絶査定
令和5年 3月 8日 審判請求書及び手続補正書の提出
第2 令和5年3月8日提出の手続補正書による手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年3月8日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正前(令和4年7月20日提出の手続補正書)の特許請求の範囲の記載
本件補正前の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
成人低ホスファターゼ症(HPP)の少なくとも1つの症状を有する約18歳以上の治療未経験の小児発症低ホスファターゼ症(HPP)対象の低ホスファターゼ症(HPP)を治療するための、可溶性アルカリホスファターゼ(sALP)を含む組成物であって、前記組成物が、少なくとも5年間の治療期間にわたり、約1mg/kg/週~約9mg/kg/週の用量のsALPを前記対象に提供する治療計画に使用するためのものであり、sALPは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記使用は、以下:
(i)前記対象由来の血液中の無機ピロリン酸(PPi)濃度を決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象の血液中のPPi濃度の、約18歳以上の未治療小児発症HPP対象の血液中のPPi濃度と比較した少なくと も約1μMの、持続された統計学的に有意な減少がもたらされる、ステップ;
(ii)前記対象由来の血液中のピリドキサール5'-リン酸(PLP)濃度を決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象の血液中のPLP濃度の、約18歳以上の未治療小児発症HPP対象の血液中のPLP濃度と比較した少なくとも約100ng/mlの、持続された統計学的に有意な減少がもたらされる、ステップ;及び
(iii)前記対象の6分間歩行試験(6MWT)のスコアを決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記6MWTによって評価される前記対象の歩行距離の、少なくとも50メートルの、持続された統計学的に有意な増加がもたらされる、ステップ
のうち1つ以上を含む、組成物。
【請求項2】
前記治療期間は、少なくとも6年、少なくとも7年、少なくとも8年、少なくとも9年若しくは少なくとも10年、又は前記対象の生涯である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記使用は、以下の(a)~(f):
(a)前記対象のPPi濃度の前記減少が、少なくとも約2μMである;
(b)前記対象が、前記治療期間前に、約6μMの血液中のPPi濃度を有する;
(c)前記対象が、前記治療期間後に、約2μM~約5μMの血液中のPPi濃度を有する;
(d)前記対象のPLP濃度の前記減少が、少なくとも約200ng/mlの減少である;
(e)前記対象が、前記治療期間前に、1300ng/mlまでの血液中のPLP濃度を有する;
(f)前記対象が、前記治療期間後に、約2ng/ml~約150ng/mlの血液中のPLP濃度を有する;
のうち少なくとも1つにより特徴付けられる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記使用は、以下の(a)~(e):
(a)少なくとも1年の治療期間後に、前記対象の6分間の前記歩行距離を、少なくとも100メートル以上増加させる;
(b)約350メートル以下の6分間の歩行距離を有するとして特徴付けられる前記対象を治療する;
(c)前記対象の6分間の前記歩行距離を約420メートル以上に増加させる;
(d)移動支援器具への前記対象の依存度を低下させる;
(e)前記対象における骨折の発生率を減少させる;
のうち少なくとも1つのためのものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
移動支援器具は、歩行器、車椅子、ブレース、松葉づえ及び装具からなる群から選択される少なくとも1つの器具である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
約13歳以上の対象の低ホスファターゼ症(HPP)を治療するための、可溶性アルカリホスファターゼ(sALP)を含む組成物であって、前記組成物が、少なくとも5年間の治療期間にわたり、約1mg/kg/週~約9mg/kg/週のsALPを前記対象に提供する治療計画に使用するためのものであり、sALPは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記使用は、以下:
(i)前記対象のハンドヘルドダイナモメトリー(HHD)スコアを決定するステップ であって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象のパーセント(%)予測HHDスコアの、前記組成物の投与を受けていない前記対象の前記%予測HHDス コアと比較した約5%以上の、持続された変化がもたらされる、ステップ;
(ii)前記対象の下肢機能スケール(LEFS)スコアを決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象のLEFSスコアの、前記組成物の投与を受けていない前記対象のLEFSスコアと比較した約3以上の、持続された変化がもたらされる、ステップ;
(iii)前記対象の簡易痛み質問紙票(BPI-SF)スコアを決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象のBPI-SFスコアの、前記組成物の投与を受けていない前記対象のBPI-SFスコアと比較した約-2以上の、持続された変化がもたらされる、ステップ;
(iv)前記対象由来の血液中のPPi濃度を決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象の血液中のPPi濃度の、前記組成物の投与を受けていない前記対象の血液中のPPi濃度と比較した約25%以上の、持続された減少がもたらされる、ステップ;
(v)前記対象由来の血液中のPLP濃度を決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象の血液中のPLP濃度の、前記組成物の投与を受けていない前記対象の血液中のPLP濃度と比較した約50%以上の、持続された減少がもたらされる、ステップ;及び
(vi)前記対象の6MWT値を決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPにより、前記対象の6MWT値の、前記組成物の投与を受けていない前記対象の6MWT値と比較した、前記対象の予測6MWT値の約80%又は約80%超への、持続された増加がもたらされる、ステップ
のうち1つ以上を含む、組成物。
【請求項7】
前記組成物が、前記治療期間に、約6mg/kg/週のsALPの用量で使用するためのものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
以下の(a)~(e):
(a)1日、1週間又は1ヶ月に1回以上の投与;
(b)週に2日、週に3日、週に4日、週に5日、週に6日又は週に7日の反復投与;
(c)約2.1mg/kg/週~約3.5mg/kg/週の初期用量、且つその後、約6mg/kg/週の用量への増加での投与;
(d)約1.3mg/kg/週、約2.7mg/kg/週又は約6mg/kg/週の用量での投与;
(e)約2mg/kgを週3回、約3mg/kgを週2回、約3mg/kgを週3回、又は約1mg/kgを週6回の用量での投与;
のうち少なくとも1つの投与に使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
以下の(a)~(d):
(a)週2回、週3回、週4回、週5回、週6回又は週7回の投与;
(b)約0.3mg/kg/日~約0.5mg/kg/日のsALPの初期用量での投与;
(c)少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年又は少なくとも4年以上の治療期間後に増加した用量での投与;
(d)連日又は隔日で1日1回の投与;
のうち少なくとも1つの投与に使用するための、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記sALPは、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はそのアミノ酸配列からなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、以下の(a)~(c):
(a)前記組成物は、成人HPPの少なくとも1つの症状を治療するのに治療上有効な量での投与に使用するためのものである;
(b)前記組成物は、前記対象における異所性石灰化を促進しない;及び
(c)前記組成物は、前記対象にとって忍容性である量での投与に使用するためのものである;
のうち少なくとも1つにより特徴付けられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、以下の(a)~(b):
(a)前記成人HPPの少なくとも1つの症状は、ホスホエタノールアミン(PEA)の上昇した血中及び/又は尿中濃度、低石灰化、高カルシウム尿症、骨格変形、動揺歩行、骨痛、骨折、ピロリン酸カルシウム二水和物結晶沈着、関節炎、ピロリン酸塩関節症、軟骨石灰化症、石灰化関節周囲炎並びに偽骨折のうち1つ以上を含む;
(b)前記忍容性は、注射部位紅斑、ヘモグロビンの減少、発熱、肺炎、上気道感染、中耳炎、嘔吐、便秘、下痢、歯の喪失、鼻咽頭炎、発疹、虫歯及び易刺激性からなる群から選択される少なくとも1つの有害事象の欠如又は減少した発生率を含む、
のうち少なくとも1つにより特徴付けられる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、以下の(a)~(e):
(a)前記組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と共に製剤化される、
(b)前記組成物は、皮下、筋肉内、静脈内、経口、経鼻、舌下、髄腔内及び皮内から選択される経路による投与用に製剤化される、
(c)前記sALPは、PEA、PPi及びPLPに対して生理学的に活性である、
(d)前記sALPは、骨における骨格石灰化を改善するのに触媒として適格である、
(e)前記sALPは、アルカリホスファターゼの可溶性細胞外ドメインである、
のうち少なくとも1つにより特徴付けられる、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤は、塩化ナトリウム及びリン酸ナトリウムを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤は、約150mMの塩化ナトリウム及び約25mMのリン酸ナトリウムを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は、以下の(i)~(v):
(i)前記対象の血液中のPPi濃度のベースラインからの最小二乗平均における統計学的に有意な変化;
(ii)前記対象の血液中のPLP濃度のベースラインからの最小二乗平均における統計学的に有意な変化;
(iii)約2,000U×日/L~約7,000U×日/LのAUClast、ここで前記AUClastは、時間ゼロから、投与間隔における最後に観察された濃度の時間までの濃度-時間曲線下の面積に等しい;
(iv)約4,000U×日/L~約10,000U×日/LのAUCinf、ここで前記AUCinfは、時間ゼロから無限大までの濃度-時間曲線下の面積に等しい;
(v)前記対象の血液における、約3日~約8日のsALPのt1/2;
のうち少なくとも1つをもたらすためのものである、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。」
(2)本件補正後(令和5年3月8日提出の手続補正書)の特許請求の範囲の記載
上記(1)の本件補正前の特許請求の範囲の記載は、以下のとおり、本件補正後の特許請求の範囲の記載に補正された。なお、下線は補正箇所を示す。
「【請求項1】
成人低ホスファターゼ症(HPP)の少なくとも1つの症状を有する約18歳以上の治療未経験の小児発症低ホスファターゼ症(HPP)対象の低ホスファターゼ症(HPP)を治療するための、可溶性アルカリホスファターゼ(sALP)を含む組成物であって、前記組成物が、少なくとも5年間の治療期間にわたり、約1mg/kg/週~約9mg/kg/週の用量のsALPを前記対象に提供する治療計画に使用するためのものであり、sALPは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する アミノ酸配列を含み、前記使用は、
前記対象の簡易痛み質問紙票(BPI-SF)スコアを決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象のBPI-SFスコアの、前記組成物の投与を受けていない前記対象のBPI-SFスコアと比較した約-2以上の、持続された変化がもたらされる、ステップを含み、かつ、
以下:
(i)前記対象由来の血液中の無機ピロリン酸(PPi)濃度を決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象の血液中のPPi濃度の、約18歳以上の未治療小児発症HPP対象の血液中のPPi濃度と比較した少なくとも約1μMの、持続された統計学的に有意な減少がもたらされる、ステップ;
(ii)前記対象由来の血液中のピリドキサール5'-リン酸(PLP)濃度を決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象の血液中のPLP濃度の、約18歳以上の未治療小児発症HPP対象の血液中のPLP濃度と比較した少なくとも約100ng/mlの、持続された統計学的に有意な減少がもたらされる、ステップ;及び
(iii)前記対象の6分間歩行試験(6MWT)のスコアを決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記6MWTによって評価される前記対象の歩行距離の、少なくとも50メートルの、持続された統計学的に有意な増加がもたらされる、ステップ
のうち1つ以上を含む、組成物。
【請求項2】
前記治療期間は、少なくとも6年、少なくとも7年、少なくとも8年、少なくとも9年若しくは少なくとも10年、又は前記対象の生涯である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記使用は、以下の(a)~(f):
(a)前記対象のPPi濃度の前記減少が、少なくとも約2μMである;
(b)前記対象が、前記治療期間前に、約6μMの血液中のPPi濃度を有する;
(c)前記対象が、前記治療期間後に、約2μM~約5μMの血液中のPPi濃度を有する;
(d)前記対象のPLP濃度の前記減少が、少なくとも約200ng/mlの減少である;
(e)前記対象が、前記治療期間前に、1300ng/mlまでの血液中のPLP濃度を有する;
(f)前記対象が、前記治療期間後に、約2ng/ml~約150ng/mlの血液中のPLP濃度を有する;
のうち少なくとも1つにより特徴付けられる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記使用は、以下の(a)~(e):
(a)少なくとも1年の治療期間後に、前記対象の6分間の前記歩行距離を、少なくとも100メートル以上増加させる;
(b)約350メートル以下の6分間の歩行距離を有するとして特徴付けられる前記対象を治療する;
(c)前記対象の6分間の前記歩行距離を約420メートル以上に増加させる;
(d)移動支援器具への前記対象の依存度を低下させる;
(e)前記対象における骨折の発生率を減少させる;
のうち少なくとも1つのためのものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
移動支援器具は、歩行器、車椅子、ブレース、松葉づえ及び装具からなる群から選択される少なくとも1つの器具である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
約13歳以上の対象の低ホスファターゼ症(HPP)を治療するための、可溶性アルカリホスファターゼ(sALP)を含む組成物であって、前記組成物が、少なくとも5年間の治療期間にわたり、約1mg/kg/週~約9mg/kg/週のsALPを前記対象に提供する治療計画に使用するためのものであり、sALPは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記使用は、
前記対象の簡易痛み質問紙票(BPI-SF)スコアを決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象のBPI-SFスコアの、前記組成物の投与を受けていない前記対象のBPI-SFスコアと比較した約-2以上の、持続された変化がもたらされる、ステップを含み、かつ、
以下:
(i)前記対象のハンドヘルドダイナモメトリー(HHD)スコアを決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象のパーセント(%)予測HHDスコアの、前記組成物の投与を受けていない前記対象の前記%予測HHDスコアと比較した約5%以上の、持続された変化がもたらされる、ステップ;
(ii)前記対象の下肢機能スケール(LEFS)スコアを決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象のLEFSスコアの、前記組成物の投与を受けていない前記対象のLEFSスコアと比較した約3以上の、持続された変化がもたらされる、ステップ;
(iii)前記対象由来の血液中のPPi濃度を決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象の血液中のPPi濃度の、前記組成物の投与を受けていない前記対象の血液中のPPi濃度と比較した約25%以上の、持続された減少がもたらされる、ステップ;
(iv)前記対象由来の血液中のPLP濃度を決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象の血液中のPLP濃度の、前記組成物の投与を受けていない前記対象の血液中のPLP濃度と比較した約50%以上の、持続された減少がもたらされる、ステップ;及び
(v)前記対象の6MWT値を決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPにより、前記対象の6MWT値の、前記組成物の投与を受けていない前記対象の6MWT値と比較した、前記対象の予測6MWT値の約80%又は約80%超への、持続された増加がもたらされる、ステップ
のうち1つ以上を含む、組成物。
【請求項7】
前記組成物が、前記治療期間に、約6mg/kg/週のsALPの用量で使用するためのものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
以下の(a)~(e):
(a)1日、1週間又は1ヶ月に1回以上の投与;
(b)週に2日、週に3日、週に4日、週に5日、週に6日又は週に7日の反復投与;
(c)約2.1mg/kg/週~約3.5mg/kg/週の初期用量、且つその後、約6mg/kg/週の用量への増加での投与;
(d)約1.3mg/kg/週、約2.7mg/kg/週又は約6mg/kg/週の用量での投与;
(e)約2mg/kgを週3回、約3mg/kgを週2回、約3mg/kgを週3回、又は約1mg/kgを週6回の用量での投与;
のうち少なくとも1つの投与に使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
以下の(a)~(d):
(a)週2回、週3回、週4回、週5回、週6回又は週7回の投与;
(b)約0.3mg/kg/日~約0.5mg/kg/日のsALPの初期用量での投与;
(c)少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年又は少なくとも4年以上の治療期間後に増加した用量での投与;
(d)連日又は隔日で1日1回の投与;
のうち少なくとも1つの投与に使用するための、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記sALPは、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はそのアミノ酸配列からなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、以下の(a)~(c):
(a)前記組成物は、成人HPPの少なくとも1つの症状を治療するのに治療上有効な量での投与に使用するためのものである;
(b)前記組成物は、前記対象における異所性石灰化を促進しない;及び
(c)前記組成物は、前記対象にとって忍容性である量での投与に使用するためのものである;
のうち少なくとも1つにより特徴付けられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、以下の(a)~(b):
(a)前記成人HPPの少なくとも1つの症状は、ホスホエタノールアミン(PEA)の上昇した血中及び/又は尿中濃度、低石灰化、高カルシウム尿症、骨格変形、動揺歩行、骨痛、骨折、ピロリン酸カルシウム二水和物結晶沈着、関節炎、ピロリン酸塩関節症、軟骨石灰化症、石灰化関節周囲炎並びに偽骨折のうち1つ以上を含む;
(b)前記忍容性は、注射部位紅斑、ヘモグロビンの減少、発熱、肺炎、上気道感染、中耳炎、嘔吐、便秘、下痢、歯の喪失、鼻咽頭炎、発疹、虫歯及び易刺激性からなる群から選択される少なくとも1つの有害事象の欠如又は減少した発生率を含む、
のうち少なくとも1つにより特徴付けられる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、以下の(a)~(e):
(a)前記組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と共に製剤化される、
(b)前記組成物は、皮下、筋肉内、静脈内、経口、経鼻、舌下、髄腔内及び皮内から選択される経路による投与用に製剤化される、
(c)前記sALPは、PEA、PPi及びPLPに対して生理学的に活性である、
(d)前記sALPは、骨における骨格石灰化を改善するのに触媒として適格である、
(e)前記sALPは、アルカリホスファターゼの可溶性細胞外ドメインである、
のうち少なくとも1つにより特徴付けられる、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤は、塩化ナトリウム及びリン酸ナトリウムを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤は、約150mMの塩化ナトリウム及び約25mMのリン酸ナトリウムを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は、以下の(i)~(v):
(i)前記対象の血液中のPPi濃度のベースラインからの最小二乗平均における統計学的に有意な変化;
(ii)前記対象の血液中のPLP濃度のベースラインからの最小二乗平均における統計学的に有意な変化;
(iii)約2,000U×日/L~約7,000U×日/LのAUClast、ここで前記AUClastは、時間ゼロから、投与間隔における最後に観察された濃度の時間までの濃度-時間曲線下の面積に等しい;
(iv)約4,000U×日/L~約10,000U×日/LのAUCinf、ここで前記AUCinfは、時間ゼロから無限大までの濃度-時間曲線下の面積に等しい;
(v)前記対象の血液における、約3日~約8日のsALPのt1/2;
のうち少なくとも1つをもたらすためのものである、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。」
2 補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1において、本件補正前の請求項6の(iii)のステップ及び本願明細書の実施例12の記載等に基づき、「前記対象の簡易痛み質問紙票(BPI-SF)スコアを決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象のBPI-SFスコアの、前記組成物の投与を受けていない前記対象のBPI-SFスコアと比較した約-2以上の、持続された変化がもたらされる、ステップを含み、かつ、」を追加する補正事項(1)、及び本件補正前の請求項6において、選択肢の1つとして記載されていた(iii)のステップを必須のステップとして特定し、補正前のステップ(iv)~(vi)の選択肢をステップ(iii)~(v)に繰り上げる補正事項(2)を含むものである。
上記補正事項(1)及び(2)は、いずれも本件補正前の請求項1及び6における「少なくとも5年間の治療期間にわたり、約1mg/kg/週~約9mg/kg/週の用量のsALPを前記対象に提供する治療計画に使用するため」という特定事項の「使用」について、新たに必須のステップを追加する補正であるから、補正前の請求項1及び6の組成物の用法・用量を更に限定するものである。
したがって、上記補正事項(1)及び(2)は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載した、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
成人低ホスファターゼ症(HPP)の少なくとも1つの症状を有する約18歳以上の治療未経験の小児発症低ホスファターゼ症(HPP)対象の低ホスファターゼ症(HPP)を治療するための、可溶性アルカリホスファターゼ(sALP)を含む組成物であって、前記組成物が、少なくとも5年間の治療期間にわたり、約1mg/kg/週~約9mg/kg/週の用量のsALPを前記対象に提供する治療計画に使用するためのものであり、sALPは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記使用は、
前記対象の簡易痛み質問紙票(BPI-SF)スコアを決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象のBPI-SFスコアの、前記組成物の投与を受けていない前記対象のBPI-SFスコアと比較した約-2以上の、持続された変化がもたらされる、ステップを含み、かつ、
以下:
(i)前記対象由来の血液中の無機ピロリン酸(PPi)濃度を決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象の血液中のPPi濃度の、約18歳以上の未治療小児発症HPP対象の血液中のPPi濃度と比較した少なくとも約1μMの、持続された統計学的に有意な減少がもたらされる、ステップ;
(ii)前記対象由来の血液中のピリドキサール5'-リン酸(PLP)濃度を決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象の血液中のPLP濃度の、約18歳以上の未治療小児発症HPP対象の血液中のPLP濃度と比較した少なくとも約100ng/mlの、持続された統計学的に有意な減少がもたらされる、ステップ;及び
(iii)前記対象の6分間歩行試験(6MWT)のスコアを決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記6MWTによって評価される前記対象の歩行距離の、少なくとも50メートルの、持続された統計学的に有意な増加がもたらされる、ステップ
のうち1つ以上を含む、組成物。」
(2)引用文献
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶理由で引用された、本願優先日前に発行された独立行政法人医薬品医療機器総合機構、審議結果報告書/審査報告書、2015年、p.1-63(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審により付したものである(以下、他の文献の摘記事項における下線についても同様である。)。
(摘記1-1)(1頁7行~2頁)
「[販 売 名] ストレンジック皮下注12mg/0.3mL、同皮下注18mg/045mL、同皮下注28
mg/0.7mL、同皮下注40mg/mL、同皮下注80mg/0.8mL
[一 般 名] アスフォターゼ アルファ(遺伝子組換え)
・・・
[本 質]
(日本名) アスホターゼ アルファは、遺伝子組換え融合糖タンパク質であり、1~485番目はヒト組織非特異型アルカリホスファターゼの触媒ドメイン、488~714番目はヒトIgG1のFcドメインに相当し、C末端に10個のアスパラギン酸残基が結合している。アスホターゼ アルファは、チャイニーズハムスター卵巣細胞から産生される。アスホターゼ アルファは、726個のアミノ酸残基からなるサブユニット2個から構成される糖タンパク質(分子量:約180,000)である。
・・・
[構 造] 別紙のとおり
・・・
[図:0001424916000001.jpg]
」
(摘記1-2)(4頁15~18行)
「[効能・効果] 低アスファターゼ症
[用法・用量] 通常、アスホターゼ アルファ(遁伝子組換え)として、1回1mg/kgを週6回、又は1回2mg/kgを週3回皮下投与する。なお、患者の状態に応じて、適宜減量する。」
(摘記1-3)(5頁22~30行)
「低ホスファターゼ症は、組織非特異型アルカリホスファターゼ(以下、「TNSALP」)の遺伝子の不活性化変異に起因した遺伝子疾患であり1、無機ピロリン酸(以下、「PPi」)及びピリドキサール-5'-リン酸塩(PLP)などのTNSALP基質の濃度が上昇することによって、骨石灰化障害、リン酸やカルシウムの調節障害を来たし、主な臨床所見として、骨の変形や破懐、疼痛、顕著な筋力低下、呼吸不全、痙攣発作、腎機能障害、歯の異常等の複数の臓器の進行性障害に至る。低ホスファターゼ症の一般的な病型は、発症時期によって周産期型、乳児型、小児型及び成人型等に分類される。未成年患者の主な死亡原因は呼吸不全2であり、最も重症な未成年患者における死亡率は50~100%とされる3。
海外における低ホスファターゼ症は10万人出生あたり1人と推定されており4、本邦における低ホスファターゼ症の罹病患者数は、100~200人と推定されている5。」
(摘記1-4)(44頁5行~45頁下から5行目)
「(5)外国人乳児型、小児型及び成人型低ホスファターゼ症患者を対象とした臨床試験(5.3.5.1.2:
ENB-009-10試験<2010年6月~継続中(20■年■月データカットオフ)>)
外国人の13歳以上65歳以下の乳児型、小児型及び成人型低ホスファターゼ症患者93(目標被験者数19例)を対象として、本剤の有効性及び安全性を検討するため、非投与対照無作為化非盲検比較試験が実施され、現在継続中94である。
用法・用量は、本剤0.3mg/kg又は0.5mg/kgを1日1回24週間皮下投与とされ、本剤非投与例が対照群として設定された。その後、投与24~48週までは全例に本剤0.5mg/kgを1日1回皮下投与とされ、投与48週以降は本剤1mg/kgを週6回皮下投与とされた95。3ヵ月ごとに体重変化に応じて用量調節を行うことが可能とされ、最大1日量は80mgまでとされた。
総投与例数19例(対照群6例(乳児型l例、小児型5例)、0.3mg/kg/日群7例(乳児型l例、小児型3例、成人型2例、発症年齢不明l例)、0.5mg/kg/日群6例(乳児型2例、小児型4例))が安全性解析対象集団及びFASとされ、FASが有効性解析対象集団とされた。
有効性について、主要評価項目はベースラインから投与24週までの血漿中のPPi濃度及びPLP濃度の変化量とされ、これらはCo-primaryエントポイントとされた。対照群及び本剤全投与群(0.3mg/kg/日群と0.5mg/kg/日群を併合した群)のベースラインから投与24週までの血漿中PLP濃度の変化量(中央値(最小値、最大値))は、11.00(-374.0, 346.O)及び-254.5(-1467.0, -17.2)ng/mLであり、統計学的な有意差が認められた(p=O.0285、有意水準両側5%、LOCF、Wilcoxon rank sum test)が、ベースラインから投与24週までの血漿中PPi濃度の変化量(中央値、(最小値、最大値))は、-0.18(-6.84,1.07)及び-2.19(-440, 0.32)μMであり統計学的な有意差が認められなかった(p=O.0715、有意水準両側5%、LOCF、Wilcoxon rank sum test)ことから、本剤の非投与に対する有効性は検証されなかった。・・・
ベースライン及び投与24週の6分間歩行距離(平均値±標準偏差)は、対照群で217.8±218.9及び327.8±220.9m、0.3mg/kg/日群で380.3±158.3及び445.0±131.3m、0.5mg/kg/日群で444.5±118.3及び488.0±116.6mであり、ベースラインからの変化量はそれぞれ13.5±69.8、64.7±73.0及び43.5±43.2mであった。
・・・
死亡例及び投与中止に至った有害事象は認められなかった。重篤な有害事象は、対照群で2例4件(ブドウ球菌感染、上腕骨骨折、大腿骨骨折、胃腸炎)、本剤群98で4例6件(0.3mg/kg/日投与時:痙攣、0.5mg/kg/日投与時:ブトウ球菌感染/医療機器位置異常、四肢痛/筋力低下、副腎腺腫)認められたが、副作用とは判断されなかった。」
(摘記1-5)(46頁26行~47頁7行)
「臨床試験では、症状が出現した時期の分類として、大きく乳児型(周産期型を含む)、小児型及び成人型の低ホスファターゼ症を対象に検討を行った。一般に、最も重症とされるのは乳児型であり、病型によって症状も異なるが、同じ病型であっても症状は多岐にわたり、また、異なる病型であっても症状が同様なこともあるとされる。いずれの分類においても、根本的な病因は、TNSALP基質の濃度が上昇することによる骨石灰化障害であることから、すべての病型を一つの疾患として捉えることが可能と考える。
本邦には低ホスファターゼ症を効能・効果として承認された薬剤はなく、現在の治療法は対症療法であり6、気管挿管による人工呼吸療法、カルシウム制限食事療法又はカルシウム排泄のための利尿薬の投与、痙攣発作に対してビタミンB6製剤の投与、頭蓋骨縫合早期癒合症に対して外科的手術等が行われている。なお、成人患者を対象に、副甲状腺ホルモン(PTH)製剤の投与が試みられ、骨痛、骨折治癒、歩行の部分的な改善が示唆されていることが報告されているが101、骨石灰化の改善に関する明確な情報は得られていない。
本剤は、ヒト遺伝子組換えTNSALP-Fc-デカアスパラギン酸融合タンパク質製剤であり、欠損しているTNSALPを補充することによって、骨石灰化を阻害するTNSALP基質のPPiが分解され、生成した無機リン酸(Pi)がカルシウムと結合することで、HA結晶の生成と骨石灰化が促進され、正常な骨格形成を促すとされる酵素製剤である。低ホスファターゼ症の治療法として有効な治療薬は承認されていないことから、本剤は低ホスファターゼ症の重要な治療薬になると考える。」
(摘記1-6)(58頁29~35行)
「低ホスファターゼ症は、TNSALPの活性低下又は活性の欠失によって骨石灰化が障害される疾患であり、成人型低ホスファターゼ症では、成長軟骨板が消失していることから骨の成長は見られず、身長の改善にはつながらないと考えるが、本剤の投与により骨石灰化が改善することで、易骨折性・骨痛の改善などの骨恒常性維持がもたらされ、効果が期待できると考える。このように、成人型低ホスファターゼ症における本剤の申請用法・用量における投与経験は限られているものの、これまでに安全性に大きな問題は報告されておらず、有効性は期待できるものと考える。」
イ 引用文献2
(ア)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶理由で引用された、本願優先日前に発行されたENDO 2016、OR-26-3、2016年04月03日(以下「引用文献2」という。)は、「アスフォターゼ アルファを最長4年間投与した青年及び成人低ホスファターゼ症における生化学的及び身体機能的転帰:第II相試験の中間結果」と題する学会発表講演要旨であって、以下の事項が記載されている。なお、引用文献2は英語の文献であるため、当審による翻訳文で摘記する。
(摘記2-1)(本文)
「低ホスファターゼ症(HPP)は、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNSALP)をコードする遺伝子の機能喪失変異によって引き起こされるまれな遺伝性疾患であり、結果としてALP活性の低下と細胞外無機ピロリン酸(PPi)及びピロドキサール5’-リン酸塩(PLP)の増加を生じる。青年/成人にみられる症状には、疼痛、骨折、運動障害などがある。アスフォターゼ アルファは、HPPに対するクラス初の骨を標的とするTNSALP酵素補充剤である。
本試験は、青年/成人HPP患者を対象としたアスフォターゼ アルファの第II相無作為化、用量設定、非盲検、多施設共同試験(NCT01163149)であり、現在も継続中である。13-65歳の患者(pts)を、対照群(ctrl;n=6)、0.3(n=7)又は0.5(n=6)mg/kg/日のアスファターゼ アルファを6ヵ月間投与する治療群(tx)に無作為に割り付け、その後全ての患者は0.5mg/kg/日の投与を受け、6-12月後にプロトコール修正により1mg/kgを週6回に増量された。主要評価項目は、6ヵ月後の血漿PPiとPLPの対照群に対する変化であった(データ補完を適用した)。;他の評価項目は機能(6分間歩行試験[6MWT]、Brininks-Oseretsky運動能力試験第2版[BOT-2;合計スコアを報告]及び安全性であった。治療群のデータはプールされ、中央値(最小値、最大値)で報告された。
19人の患者(12-18歳、n=6;18歳以上、n=13)が登録され、無作為化された。発症年数は2年(0, 36;n=18)であった。17人の患者が3年以上、10人が4年以上の治療を受けた(患者3人は中止;2人は2年及び3.5年で、注射部位反応[ISRs]のため。1人は2.5年でコンプライアンス不良のため。)。ベースライン(BL)ではPLPレベルは上昇していたが(治療群;267[29, 1590]ng/mL;対照群237[106, 906]ng/mL)、6月後に、対照群に対して治療群では有意に減少した(-255[-1467, -17]ng/mL対11[-374, 346]、p=0.029)。PPiレベルは6月後に、治療群において有意ではない減少を示した(BL 5.1[2.2, 8.2]μM;減少-2.2[-4.4, 0.3]μM)対 対照群(BL 6.2[4.2, 12.1]μM;減少-0.2[-6.8, 1.1], p=0.072)。減少は4年間にわたって維持された(PLP -362[-1577, -25]ng/mL, n=8;PPi -3.0[-7.0, 0.7]μM, n=9)。6MWTでは、患者は治療開始時の355m(10, 620;n=19)から治療6月後の450m(193, 640;n=17)に臨床的に改善し、予測の76%(42, 101;n=15)から予測の85%(29, 109;n=16)への増加を示した。この増加は4年間にわたって維持された。患者はBOT-2走行速度と機敏性が、治療開始時の6.5(0, 39;n=16)から6月後の3(-1, 12;n=13)に増加し、4年後に維持した(3.5[-2, 9];n=8)。BOT-2強度は治療開始時の13.5(0, 33;n=18)から6月後の2(-3, 8;n=14)及び4年後の1(-9, 5;n=7)に増加した。注射部位反応は治療に起因する有害事象(AEs)の中で最も多いものであった(18/19人)。安全有害事象による死亡/中止はなかった。
これは、HPPの青年/成人に対する長期(最長4年)のアスフォターゼ アルファ治療の最初の報告である。意図された生物学的作用と一致するように、TNSALP基質は治療された患者で減少した。身体機能の改善は、一部の患者では臨床的意味のある改善がみられたが、様々であり、治療開始時の罹病期間や重症度が異なっていたためと思われる。治療の忍容性は概して良好であった。」
(イ)引用文献2に記載された発明
前記(ア)の(摘記2-1)に基づけば、引用文献2には、「アスフォターゼ アルファは、HPPに対するクラス初の骨を標的とするTNSALP酵素補充剤であ」り、「青年/成人HPP」の「19人の患者(12-18歳、n=6;18歳以上、n=13)」に対し、「0.3(n=7)又は0.5(n=6)mg/kg/日のアスファターゼ アルファを6ヵ月間投与」し、「その後全ての患者は0.5mg/kg/日の投与を受け、6-12月後にプロトコール修正により1mg/kgを週6回に増量」して、「長期(最長4年)」にわたり治療し、「主要評価項目」として、「6ヵ月後の血漿PPiとPLPの対照群に対する変化」を評価したところ、「ベースライン(BL)で」「上昇していた」「PLPレベル」が、「6月後に、対照群に対して治療群では有意に減少」し、「PPiレベルは6月後に、治療群において有意ではない減少を示し」、「減少は4年間にわたって維持された(PLP -362[-1577, -25]ng/mL, n=8;PPi -3.0[-7.0, 0.7]μM, n=9)」こと、「6分間歩行試験[6MWT]」は、「治療開始時の355m(10, 620;n=19)から治療6月後の450m(193, 640;n=17)に臨床的に改善し」、「この増加は4年間にわたって維持された」こと及び「治療の忍容性は概して良好であった」ことが記載されている。また、引用文献2には、「治療に起因する有害事象」として、「注射部位反応」が記載されているから、引用文献2に記載された「アスファターゼ アルファ」は、注射用に製剤化された「組成物」として投与されていたことは自明である。
そうすると、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「青年及び成人低ホスファターゼ症(HPP)の患者を治療するための、アスファターゼ アルファを含む組成物であって、前記組成物は、アスファターゼ アルファの用量が、最初の6ヶ月間、0.3又は0.5mg/kg/日で、その後0.5mg/kg/日の用量で投与され、6-12月後に1mg/kgを週6回に増量して、最長4年の長期にわたり投与され、血漿PPiとPLPの対照群に対する変化及び6分間歩行試験[6MWT]により評価され、前記治療により、血漿PPi及びPLPのレベルは、治療開始6ヶ月後に、対照群に対して減少し、4年間維持された減少がもたらされ、6分間歩行試験[6MWT]は6月後に臨床的に改善し、4年間にわたって増加が維持される、組成物。」
ウ 引用文献3に記載された事項
当審において新たに引用する、本願優先日前に発行されたCenter For Drug Evaluation and Research、Application Number 125513Orig1s000、Medical Review(s)、は、2015年12月3にホームページURL:https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/nda/2015/125513Orig1s000TOC.cfmに掲載された、アスフォターゼ アルファ(商品名STRENSIQ(登録商標))のアメリカ食品医薬局承認申請書類であって、以下の事項が記載されている。
(摘記3-1)(参照ID3836304;50頁3段落)
「○簡易痛み質問紙票(BPI-SF)
簡易痛み質問紙票(BPI-SF)は、疼痛の重症度と疼痛が機能をどの程度妨げているかについての情報を提供する。各サブテストの尺度は0から10までで、得点が高いほど痛みが強いことを示す。」
(摘記3-2)(参照ID3836304;94頁1行~96頁下から2行目)
「5.3.6 その他のアスフォターゼ アルファ臨床試験
ENB-009-10(混合HPP集団フェーズ2臨床試験)
ENB-009-10試験は、乳児期、青年期、成人期発症の13~65歳のHPP患者を対象に、アスフォターゼ アルファの有効性、安全性、薬理作用を評価する進行中の第2相多施設共同非盲検試験である。カナダ(1施設)及び米国(2施設)の3施設に19人の患者が登録され、その中にはENB-001-08に登録され終了した4人の患者も含まれている。試験は2010年6月に開始された。ENB-009-10の臨床試験中間報告の解析カットオフデータは2014年11月5日であった。申請者は、120日間の安全性アップデートの一部として有効性を追加提出した。
・・・
本試験の主要解析は、PPiとPLPのベースラインからの変化である。その他の有効性解析は、DEXAスキャンによる骨密度の変化と6MWTによる歩行能力の変化である。
・・・
治療
投与
対照群に割り付けられた患者は延長期間まで治療を受けなかった。24週間の一次治療期間中、治療群に割り付けられた患者は0.3mg/kg/または0.5mg/kgを週7回投与された(2.1mg/kg/週又は3.5mg/kg/週)を投与した。延長期間中、全例に3.5mg/kg/週を約24~48週間投与した。その後、投与量は6mg/kg/週(1mg/kgを週6回投与)に変更され、1日の最大投与量は80mgとなった。投与量の調節は体重により可能であった。24週間の一次治療期間中の減量は安全上の理由によってのみ可能であり、投与量や投与レジメンの変更は延長期間中に可能であった。
・・・
評価
ENB-009-10の有効性評価には、骨格X線写真(18歳未満の患者)、DEXA骨スキャン、6MWT、BOT-2、LEFS、HHD、BPI-SF、PFT、及び機能障害(HOST)が含まれた。歯科的評価と栄養評価も行われたが、正式な解析には含まれなかった。
・・・
結果
人口統計
試験参加時の平均年齢は41歳(範囲は12歳から66歳)であった。試験集団には、周産期/小児期発症HPP患者4人、青年発症HPP患者12人、成人発症HPP患者2人、表現型不明患者1人が含まれた。19例中6例が青年期であった(周産期/乳児期発症HPPと青年発症HPPが各3例)。2人の青年のタナー病期は不明で、1人はタナー病期1、3人はタナー病期4であった。全例が遺伝学的にHPPと確定診断された。」
(摘記3-3)(参照ID3836304;153頁4行~155頁4行)
「H. 疼痛と障害
ENB-006-08/ENB-008-10及びENB-009-10では、探索的評価項目として疼痛と障害を評価した。評価では、アスフォターゼ アルファ投与によりベースラインからの改善が概ね示された。
・・・
疼痛(BPI-SF)
すべての治療群において、ベースラインから最終評価まで、疼痛干渉スコアと疼痛重症度スコアの減少はほとんど認められなかった(表44参照)。
[図:0001424916000002.jpg]
査読者のコメント
ベースライン時の痛みの程度が軽度でありこと(特に対照群)、サンプル数が少ないことに、また、痛みのデータを評価するのは困難である。加えて、HPP集団では、痛みにおける臨床的に最小限の重要な差は確立されていない。」
エ 引用文献4に記載された事項
当審において周知技術を示す参考文献として新たに引用する、本願優先日前に発行されたJournal of Pain and Symptom Management、1998年、Vol.16、No.6、p.364-373は、「日本語の簡単な癌性疼痛評価ツール:日本語版簡易疼痛評価ツール-BPI-Jの有用性」と題する学術文献であって、以下の事項が記載されている。
(摘記4-1)(364頁左欄1行~365頁左欄)
「はじめに
簡易疼痛検査(Brief Pain Inventory) (BPI)は、がんに関連した痛みの強さと、痛みによる患者の生活への支障の程度を把握するための、短時間で実施できる評価ツールである。最初に英語で開発されたBPIは、そのシンプルな書式と限られた比較的普遍的な機能に焦点を当てているため、翻訳が容易である。いくつかの研究により、異なる文化背景を持ち、異なる言語を話す患者が、同様の方法で項目を評価するという証拠が得られている1,2。
BPIの英語版とスペイン語版は、米国におけるがん性疼痛とその治療に関する多施設共同研究で使用されており3、フランス語版はフランスにおける同様の多施設共同研究で使用されている4。
BPIは元来、がん患者のために設計されたもので、がん患者の持久力は限られているため、関連する項目はごくわずかであったが、BPIや他の言語版は、米国におけるAIDS関連の疼痛とその治療に関する多施設共同研究でも使用されている5。BPIから導き出された推定値である疼痛管理指数3は、鎮痛薬処方のためのガイドラインの使用と疼痛の重症度を比較することで、医師のがん疼痛管理の適切さを推定するものとして使用されている6。」
(摘記4-2)(365頁右欄第3段落~366頁左欄第1段落)
「痛みの測定-BPI-Jの開発
簡易疼痛検査(Brief Pain Inventory) (BPI-J)の日本語版は、最初の翻訳者(J.U.)によって翻訳され、正確な表現を保証するために、英語版又は日本語版のBPIを知らない専門家のバイリンガル翻訳者によって再翻訳された。英語版と日本語版のBPI(Short Form)を付録IとIIとして示す(370-373ページ参照)。BPIでは、過去24時間の最も痛みがひどかったときの痛みを0から10までの10段階で評価するよう患者に求める。また、最低、平均、調査時の痛みについても、0から10までの3つの尺度で評価する。それぞれの尺度は、0から10までの等距離の数字を横一列に並べたもので、0の端は「痛みなし」、もう一方の端は「想像できる限りの痛み」という言葉で区切られている。同じように0から10までの尺度を用いて、患者は、痛みが、生活の楽しみ、活動、歩行、気分、睡眠、仕事、他人との関係など、いくつかの生活領域にどのような支障を与えているかを個別に評価するよう求められる。これらの尺度は、0の端が「支障がない」、もう一方の端が「完全に支障がある」である。患者はまた、疼痛治療による痛みの軽減の割合を推定すること、痛みの部位を人体模型上で見つけること、痛みの原因(がん、がん治療、がん以外)を推定することを求められた。」
(摘記4-3)(372~373頁)
「
[図:0001424916000003.jpg]
[図:0001424916000004.jpg]
」
(3) 対比・判断
ア 対比
(ア)本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「アスフォターゼ アルファ」は、引用文献1(前記(2)ア(摘記1-1))に記載されるように、ストレンジックという商品名で販売されるヒト組織非特異型アルカリホスファターゼであり、その別紙に記載されるアミノ酸配列は、本件補正発明の「配列番号1のアミノ酸配列」と完全に一致するものであるから、本件補正発明における「可溶性アルカリホスファターゼ(sALP)」に相当する。
(イ)引用発明における「青年及び成人HPPの患者」には、「12-18歳、n=6;18歳以上、n=13」が含まれている(前記(2)イ(ア))。
ここで、本願明細書【0039】には、「「小児発症低ホスファターゼ症」及び「小児発症HPP」という用語は、対象が約18歳前にHPPを発症することを指す。」と定義されていることから、引用発明における「12-18歳」の「青年」「HPPの患者」及び「18歳以上」の「成人HPPの患者」は、それぞれ、本件補正発明における「小児発症低ホスファターゼ症(HPP)対象」及び「成人低ホスファターゼ症(HPP)の少なくとも1つの症状を有する」「低ホスファターゼ(HPP)対象」に相当する。
また、本件補正発明における「治療未経験」とは、本願明細書【0008】に「好ましくは、成人患者は、sALPによる治療に関して未経験(すなわち治療未経験)である。」と説明されるように、「sALPによる治療に関して未経験である」ことを意味するところ、引用文献2には「アスフォターゼ アルファは、HPPに対するクラス初の骨を標的とするTNSALP酵素補充剤である」及び「HPPの青年/成人に対する長期(最長4年)のアスフォターゼ アルファ治療の最初の報告である」(前記(2)イ(ア))と記載され、引用文献1にも「本邦には低ホスファターゼ症を効能・効果として承認された薬剤はなく、現在の治療法は対症療法である」(前記(2)ア(摘記1-5))と記載されるように、引用文献2に記載されるアスフォターゼ アルファを用いた臨床試験以前には、HPPには対症療法しかなく、承認された有効な治療法は存在していなかったのであるから、アスフォターゼ アルファ以外にsALPによる治療を受けることは不可能であったものと認められる。
そうすると、引用発明における「青年及び成人低ホスファターゼ症(HPP)の患者」は、「治療未経験」の「低ホスファターゼ(HPP)対象」といえる。
(ウ)引用発明における「最初の6ヶ月間、0.3又は0.5mg/kg/日で、その後0.5mg/kg/日の用量で投与し、6-12月後に1mg/kgを週6回に増量して、最長4年の長期にわたり投与され」た「アスファターゼ アルファの用量」について、「0.3又は0.5mg/kg/日」及び「1mg/kgを週6回」を1週間(7日間)に換算すると、それぞれ「2.1又は3.5mg/kg/週」及び「6mg/kg/週」となることから、引用発明における上記「アスファターゼ アルファの用量」が「長期にわたり投与され」ることは、本件補正発明における「治療期間にわたり、約1mg/kg/週~約9mg/kg/週の用量のsALPを前記対象に提供する治療計画に使用する」ことに相当する。
(エ)引用発明における「血漿PPiとPLPの対照群に対する変化及び6分間歩行試験[6MWT]により評価され」は、本件補正発明における「(i)前記対象由来の血液中の無機ピロリン酸(PPi)濃度を決定するステップ」「;」「(ii)前記対象由来の血液中のピリドキサール5'-リン酸(PLP)濃度を決定するステップ」「;及び」「(iii)前記対象の6分間歩行試験(6MWT)のスコアを決定するステップ」「のうち1つ以上を含む」に相当する。
(オ)そうすると、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
<一致点>
「治療未経験の低ホスファターゼ症(HPP)対象の低ホスファターゼ症(HPP)を治療するための、可溶性アルカリホスファターゼ(sALP)を含む組成物であって、前記組成物が、治療期間にわたり、約1mg/kg/週~約9mg/kg/週の用量のsALPを前記対象に提供する治療計画に使用するためのものであり、sALPは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記使用は、
以下:
(i)前記対象由来の血液中の無機ピロリン酸(PPi)濃度を決定するステップ;
(ii)前記対象由来の血液中のピリドキサール5'-リン酸(PLP)濃度を決定するステップ;及び
(iii)前記対象の6分間歩行試験(6MWT)のスコアを決定するステップ
のうち1つ以上を含む、組成物。」
<相違点1>
本件補正発明では、対象が「成人低ホスファターゼ症(HPP)の少なくとも1つの症状を有する約18歳以上の小児発症低ホスファターゼ症(HPP)対象」に特定されているのに対し、引用発明では、対象となる「青年及び成人HPPの患者」に、小児発症型の成人HPP患者が含まれているか否かが不明である点。
<相違点2>
本件補正発明では、「少なくとも5年間の治療期間にわたり」使用されるのに対し、引用発明では「最長4年の長期にわたり」使用されている点。
<相違点3>
本件補正発明では、「前記対象の簡易痛み質問紙票(BPI-SF)スコアを決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象のBPI-SFスコアの、前記組成物の投与を受けていない前記対象のBPI-SFスコアと比較した約-2以上の、持続された変化がもたらされる、ステップを含」む使用であることが特定されているのに対し、引用発明ではそのように特定されていない点。
<相違点4>
本件補正発明では、「少なくとも5年間にわたるsALPの投与により」、「前記対象の血液中のPPi濃度の、約18歳以上の未治療小児発症HPP対象の血液中のPPi濃度と比較した少なくとも約1μMの、持続された統計学的に有意な減少がもたらされる」、「前記対象の血液中のPLP濃度の、約18歳以上の未治療小児発症HPP対象の血液中のPLP濃度と比較した少なくとも約100ng/mlの、持続された統計学的に有意な減少がもたらされる」又は「前記6MWTによって評価される前記対象の歩行距離の、少なくとも50メートルの、持続された統計学的に有意な増加がもたらされる」こと「のうち1つ以上を含む」ことが特定されているのに対し、引用発明ではそのように特定されていない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
引用文献2に記載される「18歳以上、n=13」の患者の発症時期は明らかではない。
一方、引用文献2の発表者には、Alexion Phamaceuticals社員が含まれるところ、同じAlexion社により作成された承認申請書類である引用文献3(前記(2)ウ(摘記3-2))に記載される臨床試験ENB-009-10は、治療計画(用法・用量等)及び13~65歳の19人という登録患者数からみて、引用文献2に記載される臨床試験と同一の試験であると認められるところ、登録患者の19人には、「周産期/小児期発症HPP患者4人、青年発症HPP患者12人、成人発症HPP患者2人、表現型不明患者1人が含まれた。19例中6例が青年期であった(周産期/乳児期発症HPPと青年発症HPPが各3例)。」ことが記載されている。そうすると、19人中13人の成人HPP患者の発症時期は、青年HPP患者6名の「周産期/乳児期発症HPPと青年発症HPPが各3例」を除いた、周産期/小児期発症HPP患者1人、青年発症HPP患者9人、成人発症HPP患者2人、表現型不明患者1人であったものと認められる。
そうすると、引用発明の「成人HPP患者」には「小児発症低ホスファターゼ症(HPP)対象」が含まれていたものと認められるから、上記相違点1は実質的な相違点ではない。
また、仮に上記相違点1が実質的な相違点であったとしても、引用文献1には、「青年HPP患者」及び「成人HPP患者」の両者に対して、アスフォターゼ アルファを長期にわたって使用することが記載されているのであるから、18歳未満で発症したHPP患者に対し、18歳以降もアスファターゼ アルファによる治療を継続することは適宜なし得ることに過ぎない。
したがって、引用発明において、本件補正発明との相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。
(イ)相違点2について
引用文献2は、「HPPに対するクラス初の骨を標的とするTNSALP酵素補充剤」である「アスフォターゼ アルファを最長4年間投与した」「第II相試験の中間結果」を報告するものであり、当該試験は「現在も継続中である」ことが記載されている(前記(2)イ(ア))。
一方、引用文献1(前記(2)ア)に記載されるように、「低フォスファターゼ症」は、「組織非特異型アルカリホスファターゼ(以下、「TNSALP」)の遺伝子の不活性化変異に起因した遺伝子疾患であり、無機ピロリン酸(以下、「PPi」)及びピリドキサール-5'-リン酸塩(PLP)などのTNSALP基質の濃度が上昇することによって、骨石灰化障害、リン酸やカルシウムの調節障害を来たし、主な臨床所見として、骨の変形や破懐、疼痛、顕著な筋力低下、呼吸不全、痙攣発作、腎機能障害、歯の異常等の複数の臓器の進行性障害に至る。」という疾患であり、生涯にわたって治癒し得ない進行性の疾患であること、及び「発症時期によって周産期型、乳児型、小児型及び成人型等に分類され」(摘記1-3)、「一般に、最も重症とされるのは乳児型であり、病型によって症状も異なるが、同じ病型であっても症状は多岐にわたり、また、異なる病型であっても症状が同様なこともあるとされる」が、「いずれの分類においても、根本的な病因は、TNSALP基質の濃度が上昇することによる骨石灰化障害である」(摘記1-5)ことは、本願優先日当時のHPPに関する技術常識であった。
また、前記ア(イ)において説示したとおり、引用文献2に記載されるアスフォターゼ アルファを用いた臨床試験以前には、HPPには対症療法しかなく、承認された有効な治療法は存在していなかった。
このような生涯にわたって障害が進行するというHPPの病態と、いずれの発症時期のHPPであっても根本的な病因は同じTNSALP基質の濃度の上昇にあるという本願優先日当時のHPPに関する技術常識、並びに他の有効な治療法が存在しないという当時の技術水準を踏まえれば、引用文献2の「第II相試験の中間結果」の時点では、治療期間が「最長4年間」までであったとしても、重篤な有害事象が起きるといった特段の事情さえなければ、「現在も継続中である」と記載されるとおり、いずれの年齢層のHPP患者であってもアスフォターゼ アルファによる治療を継続するのは当然のことといえる。
そして、引用文献2(前記(2)イ(ア))には、「注射部位反応は治療に起因する有害事象(AEs)の中で最も多いものであった(18/19人)。安全有害事象による死亡/中止はなかった。」及び「治療の忍容性は概して良好であった。」と記載されるとおり、引用発明において、5年以上の治療継続を阻害する特段の事情は見当たらない。
そうすると、引用発明において、治療期間を5年以上継続するものとし、本件補正発明との相違点2に係る構成に至ることは、当業者が容易になし得たものといえる。
(ウ)相違点3について
引用文献2には、「青年/成人にみられる症状には、疼痛、骨折、運動障害などがある」ことが記載されている。
一方、引用文献4(前記(2)エ)に記載されるように、「簡易痛み質問票(BPI-SF)」を用いて患者の疼痛管理を行うことは周知技術であるところ、前記(ア)において指摘したとおり、引用文献2と同じ臨床試験ENB-009-10について記載する引用文献3にも、「簡易痛み質問票(BPI-SF)」を用いて疼痛を評価したこと及び「評価では、アスフォターゼ アルファ投与によりベースラインからの改善が概ね示された」ことが記載され、具体的なデータが表44として示されている(前記(2)ウ(摘記3-1)及び(摘記3-3))。
そうすると、引用発明において、HPP患者の症状の1つである疼痛について、引用文献3にも記載される周知の「簡易痛み質問票(BPI-SF)」を用いた管理を行うことは、当業者が容易になし得たものである。
次に、相違点3における「少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象のBPI-SFスコアの、前記組成物の投与を受けていない前記対象のBPI-SFスコアと比較した約-2以上の、持続された変化がもたらされる」との特定事項についてみると、「少なくとも5年間にわたるsALPの投与により」「もたらされる」との記載からみて明らかなように、5年間にわたる治療により得られる結果を記載したものであって、簡易痛み質問紙票(BPI-SF)スコアを決定するステップ自体を限定する記載ではない。
そして、引用発明において治療を5年以上継続すれば、上記結果は必然的にもたらされるものといえる。
したがって、引用発明において、引用文献3の記載及び上記周知技術に基づき、本件補正発明との相違点3に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たものである。
(エ)相違点4について
相違点4については、相違点3における「少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、・・・約-2以上の、持続された変化がもたらされる」との特定事項と同様に、5年間にわたる治療により得られる結果を記載したものであって、「(i)前記対象由来の血液中の無機ピロリン酸(PPi)濃度を決定するステップ」、「(ii)前記対象由来の血液中のピリドキサール5'-リン酸(PLP)濃度を決定するステップ」及び「(iii)前記対象の6分間歩行試験(6MWT)のスコアを決定するステップ」の各ステップ自体を限定する記載ではなく、引用発明において治療を5年以上継続すれば、相違点4に係る治療により得られる結果は必然的にもたらされるものといえる。
したがって、引用発明において、治療期間を5年以上継続するものとし、本件補正発明との相違点4に係る構成に至ることは、当業者が容易になし得たものといえる。
(オ)本件補正発明の効果について
a 本願明細書の実施例6には、治療計画(用法/用量)及び13~65歳の19人という登録患者数からみて、引用文献1~3に記載される臨床試験と同一のものと認められる臨床試験計画が説明されている。
そして、実施例7には、その臨床試験の結果として、「青年及び成人HPP患者のPPi(-2.2μm)及びPLP(-254.5ng/ml)血漿濃度の両方において、6ヶ月後に対照群と比較してより大きい変化があった(それぞれ図9A及び9B)。群間の差は、血漿PLPの変化で統計学的に有意(P=0.0285)であったが、血漿PPiの変化について有意ではなかった(P=0.0715)」、「青年及び成人HPP患者の血漿PPi及びPLP濃度の中央値の減少は、5年のアスフォターゼアルファ治療中に維持された(それぞれ図10A及び10B)。」と記載され、実施例8には、「治療の6ヶ月後に治療開始時の355メートル(最小距離10メートル;最大距離620メートル)から450メートル(最小距離280メートル;最大距離707メートル)に改善した(図11A)。同様に、%予測6MWT歩行距離の中央値は、ベースラインで予測された76%(最小42%、最大101%)から、アスフォターゼアルファによる治療の6ヶ月後に85%(最小29%、最大109%)まで増加した(図11B)。6MWT歩行距離及び%予測6MWT歩行距離の改善は、アスフォターゼアルファによる治療の5年にわたって持続した。」(下線は合議体が付したものである。以下同様である。)と記載されている。
b さらに、明細書の実施例12には、実施例6の臨床試験において、簡易痛み質問紙票(BPI-SF)を使用して痛みを評価した結果が記載されているが、「ベースラインから24週目までのBPI-SFスコアの平均及び中央値の変化は、アスフォターゼアルファで治療したHPP青年及び成人と対照群との間で類似であった。」、「アスフォターゼアルファによる5年の治療中、HPP青年及び成人並びに対照患者のBPI-SFスコアは、最初の24週間の治療期間中に観察されたものと一致した。・・・治療の96週(合議体注(約1年8月))(N=19)及び144週(合議体注:約2年8月)(N=17)までに、アスフォターゼアルファで治療されたHPP青年及び成人並びに対照群患者の中央値の改善は、それぞれ-4.0(範囲:-13、11)及び-4.0(範囲:-24、9)であった。治療の192週(合議体注:約3年半)時点(N=15)及び240週(合議体注:約4年半)時点(N=16)では、HPP青年及び成人並びに対照患者の中央値の改善は、それぞれ-3.0(範囲:-20、8)及び-3.5(範囲-20、5)であった。従って、HPPの青年及び成人は、アスフォターゼアルファによる治療後、約5年にわたって痛みの増加を示さなかった。」と記載されている。
c しかしながら、前記(イ)で指摘したとおり、生涯にわたって障害が進行するというHPPの病態や、他の有効な治療法が存在しないという技術水準を踏まえれば、引用発明には、特段の事情がない限り治療を継続する必要があるという強い動機づけがあり、引用発明においても治療を5年以上継続すれば自ずと明らかになる治療効果を単に確認したことをもって、本件補正発明の進歩性を認めることはできない。
加えて、本願明細書の実施例7に記載される5年目の血中PPi及びPPL濃度、6MWTの結果は、引用文献2(前記(2)イ(ア))に記載される4年間の結果と同等のものであり、本願明細書の実施例12に記載されるBPI-SFスコアの結果についても、治療期間を5年以上に延長することによって、4年目までの治療よりも痛みの抑制効果が高まるというものではない。
そして、前記(イ)において指摘したように、HPPの根本的な病因は、TNSALP遺伝子の不活性化変異に起因してTNSALP基質の濃度が上昇することによる骨石灰化障害であるという技術常識を踏まえれば、アスフォターゼ アルファの投与を持続して、TNSALP酵素を補充し続ければ、5年以上の治療期間であっても、血中のPPi及びPPL濃度を低く維持できることは予測し得るものであり、TNSALP基質濃度の上昇を抑制できれば、骨石灰化障害の進行やそれに伴う痛みが増加しないことも、当業者が予測し得るものといえる。
d そうすると、本件補正発明が、引用発明、引用文献1~3の記載並びに本願優先日当時の技術常識から予測し得ない顕著な効果を奏するものとは認められない。
(カ)審判請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「本開示以前には、本願発明において特定された用量でのsALP治療が、本願発明において特定された対象において少なくとも5年の期間にわたって持続的な改善をもたらすかどうかは不明であり、BPI-SFスコア等の本願発明において特定された測定基準が、それらの対象においてこの期間にわたって治療効果を支持し又は確認するのに十分であるかどうかは不明で」あったことを述べ、本件補正発明の進歩性を主張している。
しかしながら、アスフォターゼ アルファの持続的投与により、5年以上の期間にわたって持続的な治療効果が予測できる点については、前記(オ)で説示したとおりである。
また、BPF-SFスコアを用いて治療効果を評価し確認することは、前記(ウ)で説示したとおりであり、本願優先日前に公知であった。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。
(キ)小括
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用文献2に記載された発明、引用文献1~3に記載された事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件補正発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明1
上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年7月20日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
成人低ホスファターゼ症(HPP)の少なくとも1つの症状を有する約18歳以上の治療未経験の小児発症低ホスファターゼ症(HPP)対象の低ホスファターゼ症(HPP)を治療するための、可溶性アルカリホスファターゼ(sALP)を含む組成物であって、
前記組成物が、少なくとも5年間の治療期間にわたり、約1mg/kg/週~約9mg/kg/週の用量のsALPを前記対象に提供する治療計画に使用するためのものであり、
sALPは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記使用は、以下:
(i)前記対象由来の血液中の無機ピロリン酸(PPi)濃度を決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象の血液中のPPi濃度の、約18歳以上の未治療小児発症HPP対象の血液中のPPi濃度と比較した少なくとも約1μMの、持続された統計学的に有意な減少がもたらされる、ステップ;
(ii)前記対象由来の血液中のピリドキサール5'-リン酸(PLP)濃度を決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象の血液中のPLP濃度の、約18歳以上の未治療小児発症HPP対象の血液中のPLP濃度と比較した少なくとも約100ng/mlの、持続された統計学的に有意な減少がもたらされる、ステップ;及び
(iii)前記対象の6分間歩行試験(6MWT)のスコアを決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記6MWTによって評価される前記対象の歩行距離の、少なくとも50メートルの、持続された統計学的に有意な増加がもたらされる、ステップ
のうち1つ以上を含む、組成物。」
2 原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用文献の記載事項及び引用発明
引用文献1及び2の記載事項は、前記第2の3(2)ア及びイ(ア)に記したとおりである。また、引用発明についても、前記第2の3(2)イ(イ)に記したとおりである。
4 本願発明と引用発明との対比・判断
前記第2の2で検討したとおり、本件補正発明は、本願発明において、「前記対象の簡易痛み質問紙票(BPI-SF)スコアを決定するステップであって、少なくとも5年間にわたるsALPの投与により、前記対象のBPI-SFスコアの、前記組成物の投与を受けていない前記対象のBPI-SFスコアと比較した約-2以上の、持続された変化がもたらされる、ステップ」を追加したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、前記第2の3(3)ア(オ)において示した相違点1、2及び4においてのみ相違するものである。
したがって、前記第2の3(3)イにおいて、本件補正発明について説示したものと同様の理由により、本願発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1及び2に記載された事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1及び2に記載された事項、並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-003997