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特許拒絶査定不服審判

2023-001729

レジスト組成物及びレジストパターン形成方法

審判番号
2023-001729
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-101878
請求日
2023年02月01日
審決日
2023年12月18日
公報発行日
2024年03月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】東京応化工業株式会社
  • 【請求人代理人】田▲崎▼ 聡
  • 【請求人代理人】宮本 龍
  • 【請求人代理人】服部 映美
  • 【請求人代理人】白石 卓也
審判長/審判官
  • 審判長 神谷 健一
  • 審判官 本田 博幸
  • 審判官 宮澤 浩
分類
P18 .121-Z (G03F) / P18 .572-Z (G03F) / P18 .575-Z (G03F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-101878「レジスト組成物及びレジストパターン形成方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年12月 5日出願公開、特開2019-207300〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年) 5月28日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 3年11月 5日付け:拒絶理由通知書 令和 4年 1月 7日 :意見書、手続補正書の提出 令和 4年 5月 6日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 令和 4年 7月15日 :意見書の提出 令和 4年10月19日付け:拒絶査定 令和 5年 2月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和 5年 2月 1日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和 5年 2月 1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、 酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)と、 下記一般式(bd1)で表される、アニオン部とカチオン部とからなる化合物(BD1)と、 露光により前記化合物(BD1)から発生する酸の拡散を制御する塩基成分(D)と、 を含有し、 前記化合物(BD1)と前記塩基成分(D)との総含有量は、前記基材成分(A)100質量部に対して25.4~70質量部であり、 前記化合物(BD1)の含有量は、前記基材成分(A)100質量部に対して21.4~60質量部であり、 前記塩基成分(D)の含有量に対する、前記化合物(BD1)の含有量の比率(モル比)が、1を超える、レジスト組成物。 【化1】 [図:0001407483000001.jpg] [式中、Rx1~Rx4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基もしくは水素原子を表すか、又は2個以上が相互に結合して環構造を形成していてもよい。Ry1~Ry2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基もしくは水素原子を表すか、又は相互に結合して環構造を形成していてもよい。 【化2】 [図:0001407483000002.jpg] は二重結合又は単結合である。Rz1~Rz4は、それぞれ独立に、原子価が許容する場合、置換基を有してもよい炭化水素基もしくは水素原子を表すか、又は2個以上が相互に結合して環構造を形成していてもよい。但し、Rx1~Rx4、Ry1~Ry2及びRz1~Rz4のうち少なくとも1個はアニオン基を有し、アニオン部全体でn価のアニオンとなる。nは1以上の整数である。mは1以上の整数であって、Mm+は、m価の有機カチオンを表す。]」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和 4年 1月 7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、 酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)と、塩基成分(D)と、を含有し、 前記酸発生剤成分(B)及び前記塩基成分(D)のうち少なくとも前記酸発生剤成分(B)は、下記一般式(bd1)で表される、アニオン部とカチオン部とからなる化合物(BD1)を含み、 前記酸発生剤成分(B)と前記塩基成分(D)との総含有量は、前記基材成分(A)100質量部に対して25.4~70質量部であり、 前記酸発生剤成分(B)が含む前記化合物(BD1)の含有量は、前記基材成分(A)100質量部に対して21.4~60質量部である、レジスト組成物。 【化1】 [図:0001407483000003.jpg] [式中、Rx1~Rx4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基もしくは水素原子を表すか、又は2個以上が相互に結合して環構造を形成していてもよい。Ry1~Ry2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基もしくは水素原子を表すか、又は相互に結合して環構造を形成していてもよい。 【化2】 [図:0001407483000004.jpg] は二重結合又は単結合である。Rz1~Rz4は、それぞれ独立に、原子価が許容する場合、置換基を有してもよい炭化水素基もしくは水素原子を表すか、又は2個以上が相互に結合して環構造を形成していてもよい。但し、Rx1~Rx4、Ry1~Ry2及びRz1~Rz4のうち少なくとも1個はアニオン基を有し、アニオン部全体でn価のアニオンとなる。nは1以上の整数である。mは1以上の整数であって、Mm+は、m価の有機カチオンを表す。] 【請求項2】 前記塩基成分(D)の含有量に対する、前記酸発生剤成分(B)が含む前記化合物(BD1)の含有量の比率(モル比)が、1を超える、請求項1に記載のレジスト組成物。」 2 補正の適否 本件補正前の請求項2に係る発明の「露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)」は、「前記酸発生剤成分(B)は、下記一般式(bd1)で表される、アニオン部とカチオン部とからなる化合物(BD1)を含み、」とされていたところ、本件補正は、この補正前の請求項2に係る発明の発明特定事項である「露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)」について、「下記一般式(bd1)で表される、アニオン部とカチオン部とからなる化合物(BD1)」に変更する補正事項と、補正前の請求項2に係る発明特定事項である「塩基成分(D)」について、「露光により前記化合物(BD1)から発生する酸の拡散を制御する」との限定を加える補正事項を含んでいる。 本件補正は、補正前の請求項2に係る発明特定事項である「塩基成分(D)」について、限定を加える補正事項を含んでおり、本件補正前の請求項2に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるといえるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献2 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2017-102267号公報(平成29年 6月 8日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 「【0001】本発明は、感放射線性樹脂組成物、レジストパターン形成方法、感放射線性酸発生剤及び化合物に関する。」 「【0006】本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、LWR性能、解像性、焦点深度、PEB温度依存性及び欠陥抑制性に優れる感放射線性樹脂組成物を提供することにある。」 「【課題を解決するための手段】【0007】上記課題を解決するためになされた発明は、酸解離性基を含む第1構造単位(以下、「構造単位(I)」ともいう)を有する重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)、及び感放射線性酸発生剤(以下、「[B]酸発生剤」ともいう)を含有し、上記感放射線性酸発生剤が下記式(I)で表されるアニオン(以下、「アニオン(I)」ともいう)を有する感放射線性樹脂組成物である。 【化1】 [図:0001407483000005.jpg] (式(I)中、R1は、有橋環状構造を含む炭素数5~40の2価の有機基である。R2は、単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のフッ素化アルキル基である。nは、1~4の整数である。nが2以上の場合、複数のR3は同一でも異なっていてもよく、複数のR4は同一でも異なっていてもよい。)」 「【0014】<[A]重合体> [A]重合体は、構造単位(I)を有する重合体である。当該感放射線性樹脂組成物によれば、放射線の照射により[B]酸発生剤等から生じる酸により露光部の[A]重合体の酸解離性基が解離して、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差異が生じ、その結果、レジストパターンを形成することができる。」 「【0088】<[B]酸発生剤> [B]酸発生剤は、アニオン(I)を有する感放射線性酸発生剤である。[B]酸発生剤は、露光により酸を発生する。この発生した酸により、[A]重合体等が有する酸解離性基が解離してカルボキシ基、ヒドロキシ基等が生じ、[A]重合体の現像液への溶解性が変化するため、当該感放射線性樹脂組成物によりレジストパターンを形成することができる。当該感放射線性樹脂組成物における[B]酸発生剤の含有形態としては、低分子化合物の形態でも、カチオン部が[A]重合体等の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。」 「【0123】[B]酸発生剤においてアニオン(I)と共に存在する感放射線性カチオンから、露光により生じるプロトンが生じ、アニオン(I)の-SO3-が-SO3Hとなり、[B]酸発生剤より酸を生じる。」 「【0159】[B]酸発生剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましく、5質量部が特に好ましく、10質量部がさらに特に好ましく、15質量部が最も好ましい。上記含有量の上限としては、50質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、30質量部がさらに好ましく、25質量部が特に好ましい。[B]酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の感度及び現像性が向上し、その結果、LWR性能等をより向上させることができる。特に、露光光が電子線又はEUVの場合、当該感放射線性樹脂組成物の感度をより高める観点から、[B]酸発生剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、10質量部が好ましく、15質量部がより好ましく、18質量部がさらに好ましい。当該感放射線性樹脂組成物は、[B]酸発生剤を1種又は2種以上含有していてもよい。」 「【0160】<[C]酸拡散制御体> 当該感放射線性樹脂組成物は、必要に応じて、[C]酸拡散制御体を含有してもよい。[C]酸拡散制御体は、露光により[B]酸発生剤等から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏する。」 「【0179】当該感放射線性樹脂組成物が[C]酸拡散制御体として[C]酸拡散制御剤を含有する場合、[C]酸拡散制御剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.3質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、20質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、5質量部がさらに好ましい。」 「【0262】<化合物の合成> 各スキームに従い、下記式(B-1)~(B-11)で表される化合物を合成した。 【0263】【化37】 [図:0001407483000006.jpg] 」 「【0270】[実施例4](化合物(B-4)の合成) 下記化合物(b-5)5.89g(20mmol)、ジメチルホルムアミド0.03g(0.4mmol)及び塩化メチレン50mLを反応容器に入れ、二塩化オキサリル6.34g(50mmol)を滴下した。3時間撹拌した後、減圧下で溶媒を除去した。塩化メチレンを加え、0℃に冷却し、下記化合物(b-6)10.52g(44mmol)及びピリジン6.33g(80mmol)を加え、室温に昇温して3時間撹拌した。希塩酸を加えて反応を停止させて分液を行い、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、下記化合物(b-7)を得た(収量11.47g、収率75%)。 【0271】上記得られた化合物(b-7)11.47g(15.0mmol)及びアセトニトリル75mLを反応容器に入れ、70℃に加熱して撹拌した。ここに、炭酸水素ナトリウム7.56g(90.0mmol)、亜ジチオン酸ナトリウム10.45g(60.0mmol)、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド6.13g(33.0mmol)及び水50mLの溶液を加え、70℃で3時間加熱した。室温に冷却した後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液100mLを加え、有機層を洗浄した。有機層に、30質量%過酸化水素水溶液10.20g(90.0mmol)及びタングステン酸ナトリウム二水和物0.69g(2.1mmol)を加え、60℃に加熱し6時間撹拌した。室温に冷却した後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液100mLを加えて分液を行い、酢酸エチル50mLで2回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を留去した。次いで、下記化合物(b-8)10.65g(30.0mmol)、塩化メチレン75mL及び水38mLを加え、2時間撹拌した。反応終了後、塩化メチレンと水で分液を行い、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、下記化合物(B-4)を得た(収量16.00g、収率76%)。 【0272】【化40】 [図:0001407483000007.jpg] 」 「【0277】<重合体の合成> [A]重合体及び[D]重合体の合成に用いた単量体を以下に示す。 【0278】【化42】 [図:0001407483000008.jpg] 」 「【0281】[合成例8](重合体(A-8)の合成) 上記化合物(M-15)45.24g(50モル%)、化合物(M-1)54.76g(50モル%)、ラジカル重合開始剤としてのAIBN4.58g(全単量体に対して5モル%)及びt-ドデシルメルカプタン1、14gをプロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解させた後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合反応を行った。重合反応終了後、重合反応液を1,000gのn-ヘキサン中に滴下して凝固精製した後、得られた固体に、プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加え、さらにメタノール150g、トリエチルアミン34g及び水6gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応終了後、溶媒及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた固体をアセトン150gに溶解させた後、2,000gの水中に滴下して凝固させ、生成した固体をろ過し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A-8)を得た(収量63.8g、収率72.3%)。重合体(A-8)のMwは6,400、Mw/Mnは1.72であった。13C-NMR分析の結果、p-ヒドロキシスチレンに由来する構造単位及び(M-1)に由来する構造単位の含有割合は、それぞれ51.2モル%及び48.8モル%であった。 【0282】【表1】 [図:0001407483000009.jpg] 」 「【0284】<感放射線性樹脂組成物の調製> 感放射線性樹脂組成物の調製に用いた[B]酸発生剤、[C]酸拡散制御剤及び[E]溶媒について以下に示す。 【0285】[[B]酸発生剤] 実施例で用いるB-1~B-11:上記合成した化合物(B-1)~(B-11)」 「【0287】[[C]酸拡散制御剤] C-1~C-6:下記式(C-1)~(C-6)で表される化合物 【0288】【化44】 [図:0001407483000010.jpg] 【0289】[[E]溶媒] E-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート E-2:シクロヘキサノン E-3:γ-ブチロラクトン」 「【0302】[電子線露光用感放射線性樹脂組成物の調製] [実施例35] [A]重合体としての(A-8)100質量部、[B]酸発生剤としての(B-1)20質量部、[C]酸拡散制御剤としての(C-1)2.5質量部、並びに[E]溶媒としての(E-1)4,280質量部及び(E-2)1,830質量部を混合し、得られた混合溶液を孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過することにより感放射線性樹脂組成物(J-24)を調製した。 【0303】[実施例36~38並びに比較例4及び5] 下記表4に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は、実施例35と同様に操作して、感放射線性樹脂組成物(J-25)~(J-27)並びに(CJ-4)及び(CJ-5)を調製した。 【0304】【表4】 [図:0001407483000011.jpg] 【0305】<レジストパターンの形成(3)> 8インチのシリコンウエハ表面に、スピンコーター(東京エレクトロン社の「CLEAN TRACK ACT8」)を使用して、下記表5に示す各感放射線性樹脂組成物を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後、23℃で30秒間冷却し、平均厚み50nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に、簡易型の電子線描画装置(日立製作所社の「HL800D」、出力:50KeV、電流密度:5.0A/cm2)を用いて電子線を照射した。照射後、120℃で60秒間PEBを行った。その後、アルカリ現像液としての2.38質量%TMAH水溶液を用いて23℃で30秒間現像し、水で洗浄し、乾燥してポジ型のレジストパターンを形成した。 【0306】<レジストパターンの形成(4)> 上記TMAH水溶液の代わりに酢酸n-ブチルを用いて有機溶媒現像し、かつ水での洗浄を行わなかった以外は、上記レジストパターンの形成(3)と同様に操作して、ネガ型のレジストパターンを形成した。 【0307】<評価> 上記電子線露光により形成したレジストパターンについて、上記ArF露光の場合と同様の手法で、LWR性能、解像性、焦点深度、PEB温度依存性及び欠陥抑制性の評価を実施した。PEB温度依存性は、PEB温度が120℃及び125℃の場合におけるレジストパターンの線幅を測定し、上記ArF露光の場合と同様の数式により算出した。評価結果を下記表5に示す。なお、電子線露光の場合、LWR性能は5.2nm以下の場合は良好と、5.2nmを超える場合は不良と評価できる。 【0308】【表5】 [図:0001407483000012.jpg] 【0309】表3及び表5の結果から明らかなように、実施例の感放射線性樹脂組成物はArF露光及び電子線露光の場合、かつアルカリ現像及び有機溶媒現像の場合とも、LWR性能、解像性、焦点深度、PEB温度依存性及び保存安定性に優れている。比較例では、これらの各特性が実施例に比べて劣っていた。一般的に、電子線露光によれば、EUV露光の場合と同様の傾向を示すことが知られており、従って、実施例の感放射線性樹脂組成物によれば、EUV露光の場合においても、LWR性能等に優れると推測される。」 (イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 引用文献2に記載された技術は、感放射線性樹脂組成物に関するものであり(【0001】)、LWR性能、解像性、焦点深度、PEB温度依存性及び欠陥抑制性に優れる感放射線性樹脂組成物を提供することを課題としたものである(【0006】)。 b 感放射線性樹脂組成物は、放射線の照射により[B]酸発生剤等から生じる酸により露光部の[A]重合体の酸解離性基が解離して、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差異が生じる(【0014】)。 c [B]酸発生剤は、アニオン(I)及び感放射線性カチオンを有する(【0088】、【0123】)。 d [B]酸発生剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、15質量部が最も好ましく、上記含有量の上限としては、50質量部が好ましく、25質量部が特に好ましい(【0159】)。 e [C]酸拡散制御体は、露光により[B]酸発生剤等から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御する(【0160】)。 f [C]酸拡散制御剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、1質量部がさらに好ましく、上記含有量の上限としては、5質量部がさらに好ましい(【0179】)。 g [A]重合体としての(A-8)100質量部(【0277】、【0278】、【0281】、【0282】、【0302】~【0304】)、[B]酸発生剤としての下記(B-4)20質量部(【0262】、【0263】、【0270】~【0272】、【0284】、【0285】、【0302】~【0304】)、[C]酸拡散制御剤としての下記(C-1)2.5質量部(【0284】、【0287】、【0288】、【0302】~【0304】)、並びに[E]溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである(E-1)4,280質量部及びシクロヘキサノンである(E-2)1,830質量部(【0284】、【0289】、【0302】~【0304】)を混合し、得られた混合溶液を孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過することにより感放射線性樹脂組成物(J-25)が調製されている(【0302】~【0304】)。 [図:0001407483000013.jpg] [図:0001407483000014.jpg] h 実施例の感放射線性樹脂組成物は電子線露光の場合、かつアルカリ現像及び有機溶媒現像の場合とも、LWR性能、解像性、焦点深度、PEB温度依存性及び保存安定性に優れている(【0302】~【0309】)。 (ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「放射線の照射により[B]酸発生剤等から生じる酸により露光部の[A]重合体の酸解離性基が解離して、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差異が生じる感放射線性樹脂組成物(J-25)であって、 [B]酸発生剤等から生じる酸により露光部の酸解離性基が解離して、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差異が生じる[A]重合体としての(A-8)100質量部と、 アニオン(I)及び感放射線性カチオンを有する[B]酸発生剤としての下記(B-4)20質量部と、 露光により[B]酸発生剤等から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御する[C]酸拡散制御体としての下記(C-1)2.5質量部と、 を含有する、感放射線性樹脂組成物(J-25)。 [図:0001407483000015.jpg] [図:0001407483000016.jpg] 」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。(下線は、当合議体で付した。) (ア)引用発明は、LWR性能、解像性、焦点深度、PEB温度依存性及び欠陥抑制性に優れる感放射線性樹脂組成物を提供することを課題とした感放射性樹脂組成物に係る技術であり、本件補正発明と、技術分野が共通し、「ラフネス低減等のリソグラフィー特性がより向上するレジスト組成物を提供する」点で課題が共通する。 (イ)引用発明の「感放射線性樹脂組成物(J-25)」は、放射線の照射により[B]酸発生剤等から生じる酸により露光部の[A]重合体の酸解離性基が解離して、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差異が生じるものであるから、本件補正発明の「露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物」に相当する。 (ウ)引用発明の「[A]重合体としての(A-8)」は、[B]酸発生剤等から生じる酸により露光部の酸解離性基が解離して、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差異が生じるものであるから、本件補正発明の「酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)」に相当する。 (エ)引用発明の「[B]酸発生剤としての下記(B-4) [図:0001407483000017.jpg] 」は、アニオン(I)及び感放射線性カチオンを有するものであり、また、本件補正発明の「下記一般式(bd1)」の式中、Rx1、Rx2の一方とRx3、Rx4の一方は、相互に結合して環構造を形成しており、Rx1、Rx2の他方とRx3、Rx4の他方は水素原子であり、Ry1とRy2は、相互に結合して環構造を形成しており、 [図:0001407483000018.jpg] は二重結合又は単結合であり、Rz1、Rz2の一方とRz3、Rz4の一方は、相互に結合して環構造を形成しており、Rz1、Rz2の他方とRz3、Rz4の他方は水素原子であり、Rx1、Rx2の一方とRx3、Rx4の一方はアニオン基を有し、アニオン部全体で2価のアニオンとなり、Mm+は、2価の有機カチオンを表すものであるから、本件補正発明の「下記一般式(bd1)で表される、アニオン部とカチオン部とからなる化合物(BD) 【化1】 [図:0001407483000019.jpg] [式中、Rx1~Rx4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基もしくは水素原子を表すか、又は2個以上が相互に結合して環構造を形成していてもよい。Ry1~Ry2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基もしくは水素原子を表すか、又は相互に結合して環構造を形成していてもよい。 【化2】 [図:0001407483000020.jpg] は二重結合又は単結合である。Rz1~Rz4は、それぞれ独立に、原子価が許容する場合、置換基を有してもよい炭化水素基もしくは水素原子を表すか、又は2個以上が相互に結合して環構造を形成していてもよい。但し、Rx1~Rx4、Ry1~Ry2及びRz1~Rz4のうち少なくとも1個はアニオン基を有し、アニオン部全体でn価のアニオンとなる。nは1以上の整数である。mは1以上の整数であって、Mm+は、m価の有機カチオンを表す。]」に相当する。 (オ)引用発明の「[C]酸拡散制御体としての下記(C-1) [図:0001407483000021.jpg] 」は、露光により[B]酸発生剤等から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御するから、本件補正発明の「露光により前記化合物(BD1)から発生する酸の拡散を制御する塩基成分(D)」に相当する。 (カ)引用発明の[C]酸拡散制御体としての下記(C-1) [図:0001407483000022.jpg] の含有量に対する、[B]酸発生剤としての下記(B-4) [図:0001407483000023.jpg] の含有量の比率(質量比)は、20/2.5=8であり、上記(C-1)の分子量が約215、上記(B-4)の分子量が約1402であることを考慮すると、上記(C-1)の含有量に対する、上記(B-4)の含有量の比率(モル比)が1を超えるから、「塩基成分(D)の含有量に対する、化合物(BD1)の含有量の比率(モル比)が、1を超える」点で、本件補正発明と一致する。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、 酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)と、 下記一般式(bd1)で表される、アニオン部とカチオン部とからなる化合物(BD1)と、 露光により前記化合物(BD1)から発生する酸の拡散を制御する塩基成分(D)と、 を含有し、 前記塩基成分(D)の含有量に対する、前記化合物(BD1)の含有量の比率(モル比)が、1を超える、レジスト組成物。 【化1】 [図:0001407483000024.jpg] [式中、Rx1~Rx4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基もしくは水素原子を表すか、又は2個以上が相互に結合して環構造を形成していてもよい。Ry1~Ry2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基もしくは水素原子を表すか、又は相互に結合して環構造を形成していてもよい。 【化2】 [図:0001407483000025.jpg] は二重結合又は単結合である。Rz1~Rz4は、それぞれ独立に、原子価が許容する場合、置換基を有してもよい炭化水素基もしくは水素原子を表すか、又は2個以上が相互に結合して環構造を形成していてもよい。但し、Rx1~Rx4、Ry1~Ry2及びRz1~Rz4のうち少なくとも1個はアニオン基を有し、アニオン部全体でn価のアニオンとなる。nは1以上の整数である。mは1以上の整数であって、Mm+は、m価の有機カチオンを表す。]」 【相違点1】 「化合物(BD1)と塩基成分(D)との総含有量」について、本件補正発明は、「基材成分(A)100質量部に対して25.4~70質量部であ」るのに対し、引用発明は、基材成分(A)100質量部に対して22.5質量部である点。 【相違点2】 「化合物(BD1)の含有量」について、本件補正発明は、「基材成分(A)100質量部に対して21.4~60質量部であ」るのに対し、引用発明は、基材成分(A)100質量部に対して20質量部である点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点1について 引用文献2には、上記(2)ア(イ)d、fのとおり、[B]酸発生剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、15質量部が最も好ましく、上記含有量の上限としては、50質量部が好ましく、25質量部が特に好ましいこと、及び、[C]酸拡散制御剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、1質量部がさらに好ましく、上記含有量の上限としては、5質量部がさらに好ましいことが記載されている。 引用発明は、「レジスト組成物」であり、LWR性能等を優れたものとするために、レジスト組成物に含まれる各材料の含有量を調整することは、当業者が適宜なし得る数値範囲の最適化又は好適化にすぎないから、引用発明の「化合物(BD1)と塩基成分(D)との総含有量」について、上記の好ましい含有量の範囲内で適宜調整し、基材成分(A)100質量部に対して25.4~70質量部の範囲内の値とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願明細書の段落【0395】に、(B)成分と(D)成分との総含有量の下限値が(A)成分100質量部に対して、「20質量部」であること、及び、「(B)成分と(D)成分との総含有量が、前記範囲の下限値以上であれば、レジストパターン形成において、感度、ラフネス低減及び形状等のリソグラフィー特性がより向上する」ことが記載されているが、化合物(BD1)と塩基成分(D)との総含有量の閾値「25.4」の前後で臨界的な効果の差異が生じることについての記載がなく、効果上の臨界的意義も見いだせない。 イ 相違点2について 引用発明は、「レジスト組成物」であり、LWR性能等を優れたものとするために、レジスト組成物に含まれる各材料の含有量を調整することは、当業者が適宜なし得る数値範囲の最適化又は好適化にすぎないから、引用発明の「化合物(BD1)の含有量」について、上記の好ましい含有量の範囲内で適宜調整し、基材成分(A)100質量部に対して21.4~60質量部の範囲内の値とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願明細書の段落【0396】に、(BD1)成分、すなわち、(B1)成分の含有量の下限値が(A)成分100質量部に対して、「20質量部」であること、及び、「(B1)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、レジストパターン形成において、感度、解像性能、LWR(ラインワイズラフネス)低減、形状等のリソグラフィー特性がより向上する」ことが記載されているが、閾値「21.4」の前後で臨界的な効果の差異が生じることについての記載がなく、効果上の臨界的意義も見いだせない。 ウ 請求人の主張について 請求人は審判請求書において、以下のとおり主張している(審判請求書10~14頁参照)。 「(3-4)本願発明と引用発明との対比 (3-4-1)本願発明1と引用発明との対比について 上記(3-1)のように、本願発明1のレジスト組成物は、 酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)と、上記一般式(bd1)で表される化合物(BD1)と、露光により前記化合物(BD1)から発生する酸の拡散を制御する塩基成分(D)と、を含有し、 前記化合物(BD1)と前記塩基成分(D)との総含有量は、前記基材成分(A)100質量部に対して25.4~70質量部であり、 前記化合物(BD1)の含有量は、前記基材成分(A)100質量部に対して21.4~60質量部であり、 前記塩基成分(D)の含有量に対する、前記化合物(BD1)の含有量の比率(モル比)が、1を超える、 というものです。 これに対し、引用文献1に開示される実施例41の感放射線性樹脂組成物、及び引用文献2に開示される実施例36の各感放射線性樹脂組成物において、酸発生剤と酸拡散制御剤との総含有量、及び酸発生剤の含有量は、いずれも、本願発明1で規定する範囲から外れています。 引用文献1及び引用文献2には、いずれも、塩基成分(D)の含有量に対する、化合物(BD1)の含有量のモル比が1を超える条件下で「化合物(BD1)と塩基成分(D)との総含有量」及び「化合物(BD1)の含有量」の数値限定を採用すること、並びにこの優位性については開示も示唆もされていません。 引用発明1及び引用発明2では、いずれも、酸発生剤におけるアニオン部の構造の違いについての検討がされており、酸発生剤と酸拡散制御剤との含有量の変化によるリソグラフィー特性への影響については考えられていません。加えて、アニオン部が主として炭化水素からなる基本骨格のシクロヘキセン構造(嵩高い構造)を持つ酸発生剤の、特に高濃度に含有する場合のリソグラフィー特性への影響について全く考えられていません。 したがって、課題の解決手段として、酸発生剤におけるアニオン部の構造を選択するという目的を意識して創作している引用発明1及び引用発明2を、「化合物(BD1)と塩基成分(D)との総含有量」及び「化合物(BD1)の含有量」を規定する構成へ変更することは、技術的思想が全く異なることになり、そのような動機付けは存在しません。 また、このような引用文献1及び引用文献2の記載から、「化合物(BD1)と塩基成分(D)との総含有量」及び「化合物(BD1)の含有量」の数値限定を採用することにより奏する有利な効果を予測することも困難です。 (3-4-2)本願発明1の構成及び有利な効果について 本願発明1の構成においては、「化合物(BD1)と塩基成分(D)との総含有量」及び「化合物(BD1)の含有量」がそれぞれ、(A)成分100質量部に対して規定されていますが、これは同時に、塩基成分(D)の含有量も規定されていることになっています。 すなわち、本願発明1は、塩基成分(D)の含有量に対する、化合物(BD1)の含有量のモル比が1を超える条件で、かつ、化合物(BD1)と塩基成分(D)との総含有量が特定される中で、化合物(BD1)の含有量、及び塩基成分(D)の含有量を発明特定事項として有しています。 そして、本願発明1の構成である、塩基成分(D)の含有量に対する、化合物(BD1)の含有量のモル比が1を超える条件下での「化合物(BD1)と塩基成分(D)との総含有量」及び「化合物(BD1)の含有量」についての数値限定にはそれぞれ臨界的意義があります。 つまり、本願発明1による効果は、 化合物(BD1)が塩基成分(D)よりも過剰なモル量で、 化合物(BD1)と塩基成分(D)との総含有量が、(A)成分100質量部に対して25.4~70質量部であり、かつ、 化合物(BD1)の含有量が、(A)成分100質量部に対して21.4~60質量部であること、 によってはじめて奏する有利な効果であり、顕著性を有していると言えます。 審査官殿は、本願発明1について以下のように指摘されました。 ・指摘事項(3): “令和4年7月15日付け意見書にて出願人は・・・採用できない。引用文献1又は2に記載された発明と、本願発明は、数値範囲の点で相違するが、前記の通り数値範囲の最適化、好適化は、当業者による通常の創作能力の発揮であり、特に、引用文献2の[0159]には、酸発生剤の上限値は、重合体100質量部に対して、50質量部(最も小さい値でも25質量部)が好ましいと記載されており、酸発生剤の含有量を上記範囲内で調整することで、感放射線性樹脂組成物の感度及び現像性が向上し、その結果、LWR性能等をより向上させることができる旨が記載されていることから、含有量を調整することに動機づけが存在しないとの出願人の主張を採用することはできない。” ・指摘事項(4): “そして、出願人は・・・と主張するが、請求項1に記載された「一般式(bd1)」は、シクロヘキセンを基本骨格として、アニオンの数も限定されておらず、置換基は疎水性のものから、親水性(アルカリ可溶性)のものまで、数の限定もなく自由に選択することができるため、「本願発明1が採用する(BD1)成分については、アニオン部が主として炭化水素からなる特定の構造(嵩高い構造)を持つことで、比較的に疎水性が高められています。」と主張する点は、請求項1に基づく主張ではない。<付記>部分を含む。” かかる指摘事項(3)について、 本願発明1は、「従来のオニウム塩系酸発生剤を含有するレジスト組成物においては、EUV等の露光光源に対して高感度化を試みると、所望のレジストパターン形状等が得られにくくなるという問題があり、これらのリソグラフィー特性をいずれも満足させることが困難であった。これに対し、酸発生剤成分の配合量を増加させることで、リソグラフィー特性の改善が図れるものの、一方でパターンの膜減りが生じやすくなるという不具合があった。」という課題を解決するものです(本願明細書の段落0007)。 引用文献2の[0159]には、酸発生剤の含有量とLWR性能との関係のみが記載されているにすぎず、パターンの膜減りとの関係(含有量上限側の境界;含有量が多すぎると、膜減りを生じること;本願の図1~4参照)についての記載はありません。 加えて、引用文献2には、[B]酸発生剤の含有量及び[C]酸拡散制御剤の含有量について、いずれも、[A]重合体100質量部に対して好適な範囲が記載されているだけであり(段落0159、段落0179)、[C]酸拡散制御剤の含有量に対する[B]酸発生剤の含有量のモル比が1を超える条件とすること、及び、[B]酸発生剤と[C]酸拡散制御剤との総含有量についての記載はありません。 かかる指摘事項(4)について、 本願請求項1に記載された「一般式(bd1)」は、シクロヘキセン構造を基本骨格としています。シクロヘキセン構造自体は、炭化水素からなり、かつ、シクロヘキサンと異なり「半いす形配座」が最安定であって嵩高い構造を有しています(出願時の技術常識)。 ・「一般式(bd1)」の基本骨格が炭化水素からなる点は、(BD1)成分と基材成分(A)との相溶性が高くなり、レジスト膜内での(BD1)成分の分布の均一性が高められて、リソグラフィー特性の向上に寄与します。また、「一般式(bd1)」の基本骨格が炭化水素からなる点は、例えばTMAH水溶液によるアルカリ現像の場合、レジスト膜の未露光部の難溶化に効果的であり、パターンの膜減り抑制に寄与します。 ・「一般式(bd1)」の基本骨格が嵩高い構造を有している点は、露光により発生する酸の拡散抑制にも効果的であり、パターンのラフネス低減に寄与します。 本願発明1のレジスト組成物においては、前述のようなシクロヘキセン構造を基本骨格としているアニオン部をもつ酸発生剤、を採用しているため、含有量の数値限定に臨界的意義をもつようになります。 加えて、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できると思料します。」 請求人の上記主張について検討する。 (ア)(3-4-1)本願発明1と引用発明との対比について 上記(4)ア、イのとおり、引用発明の「化合物(BD1)と塩基成分(D)との総含有量」、及び、「化合物(BD1)の含有量」について、本件補正発明において規定された数値範囲内の値とする動機付けは存在する。 (イ)(3-4-2)本願発明1の構成及び有利な効果について 本件補正発明と引用発明との相違が数値限定の有無のみで、課題が共通する場合は、いわゆる数値限定の臨界的意義として、有利な効果の顕著性が認められるためには、その数値限定の内と外のそれぞれの効果について、量的に顕著な差異がなければならない。 そして、本件補正発明と引用発明は、「ラフネス低減等のリソグラフィー特性がより向上するレジスト組成物を提供する」点で課題が共通するところ、本願明細書には、「化合物(BD1)と塩基成分(D)との総含有量」の閾値「25.4」の前後、及び、「化合物(BD1)の含有量」の閾値「21.4」の前後で臨界的な効果の差異が生じることについての記載がない。 また、令和 4年 1月 7日に提出された意見書、令和4年 7月15日に提出された意見書及び審判請求書における請求人の主張を考慮しても、本願の図2からは、「化合物(BD1)と塩基成分(D)との総含有量」について、「25.4」を境にして効果が異なることが読み取れず、図4からは「化合物(BD1)の含有量」について、「21.4」を境にして効果が異なることが読み取れない。さらに、本願明細書における「実施例15~18」と「参考例8~11」のLWRに関する評価結果等を考慮しても、本願明細書における実施例及び試験例において使用された「化合物(B1-1)」以外の化合物(例えば、本願明細書における「化合物(B1-2)~(B1-9)」や、「上記1(1)に記載した一般式(bd1)で表される化合物(BD1)であって、Rx1~Rx4、Ry1~Ry2及びRz1~Rz4における置換基の構造が「化合物(B1-1)」とは異なる化合物」)についても、「塩基成分(D)の含有量に対する、化合物(BD1)の含有量のモル比が1を超える条件下での「化合物(BD1)と塩基成分(D)との総含有量」及び「化合物(BD1)の含有量」についての数値限定の内と外のそれぞれの効果について、LWR(ラインワイズラフネス)の評価結果に量的に顕著な差異があるという、合理的な根拠を見いだすことができないから、請求人の上記主張を採用することはできない。 また、請求人の「引用文献2の[0159]には、酸発生剤の含有量とLWR性能との関係のみが記載されているにすぎず、パターンの膜減りとの関係(含有量上限側の境界;含有量が多すぎると、膜減りを生じること;本願の図1~4参照)についての記載はありません。」との主張について、分子量が小さく、基材成分と化学的に結合していない酸発生剤の含有量が多すぎると、パターンの現像時に酸発生剤がパターン表面から溶出し、パターンの膜減りが生じることは、当業者の技術常識であり、また、引用文献2の【0159】に記載されているように、引用発明において、[B]酸発生剤の含有量の上限は、[A]重合体100質量部に対して、「50質量部」であり、本件補正発明における上限値「60質量部」より少ないため、パターンの膜減りについて、本件補正発明と同様の効果を奏すると推認できるから、本件補正発明に進歩性を認めることはできず、請求人の上記主張を採用することはできない。 そして、請求人が審判請求書において主張した、本件補正発明において、「一般式(bd1)」の基本骨格が炭化水素からなることにより、(BD1)成分と基材成分(A)との相溶性が高くなり、レジスト膜内での(BD1)成分の分布の均一性が高められて、リソグラフィー特性の向上に寄与する点や、TMAH水溶液によるアルカリ現像の場合、レジスト膜の未露光部の難溶化に効果的であり、パターンの膜減り抑制に寄与する点、基本骨格が嵩高い構造を有していることにより、露光により発生する酸の拡散抑制に効果的であり、パターンのラフネス低減に寄与する点については、本願明細書に記載も示唆もされておらず、また、当業者にとって自明であるとも認められないので、採用することはできない。 よって、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ 小括 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和 5年 2月 1日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和 4年 1月 7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~13に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明又は引用文献2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2018-028574号公報 引用文献2:特開2017-102267号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「化合物(BD1)を含」む「酸発生剤成分(B)」、及び、「塩基成分(D)」に係る限定事項等を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-001729

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同じ論点・分野の審決(審決分類)408件(121・G03F、572・G03F、575・G03F)
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    共通の審決分類: 121・G03F、572・G03F、575・G03F
  • 2020-011211拒絶査定不服審判 / 2021-05-27 / 請求不成立感光性樹脂積層体
    共通の審決分類: 121・G03F、572・G03F、575・G03F
  • 2024-014947拒絶査定不服審判 / 2026-03-05 / 請求不成立ペリクル、露光原版、露光装置、ペリクルの製造方法及び半導体装置の製造方法
    共通の審決分類: 121・G03F、575・G03F
  • 2024-001835拒絶査定不服審判 / 2026-01-27 / 請求不成立装置、方法、プログラム、感光性樹脂組成物の製造方法および感光性樹脂積層体の製造方…
    共通の審決分類: 121・G03F、575・G03F
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    共通の審決分類: 121・G03F、575・G03F

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