特許拒絶査定不服審判
2023-001554
建設作業機械における測定対象部材の回転中心取得方法
- 審判番号
- 2023-001554
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-042207
- 請求日
- 2023年01月30日
- 審決日
- 2023年12月27日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社トプコン
- 【請求人代理人】木村 高明
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 中塚 直樹
- 審判官 田辺 正樹
- 分類
- P18 .113-Z (G01C) / P18 .121-Z (G01C) / P18 .537-Z (G01C) / P18 .57 -Z (G01C)
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- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2017- 42207「建設作業機械における測定対象部材の回転中心取得方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月20日出願公開、特開2018-146407〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月6日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年 1月22日付け :拒絶理由通知書
同年 5月19日 :意見書及び手続補正書の提出
同年11月15日付け :拒絶理由通知書(最後)
令和4年 3月15日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 4月19日付け :拒絶理由通知書(最後)
同年 8月25日 :意見書及び手続補正書の提出
同年10月26日付け :補正却下
同日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月28日 :原査定の謄本の送達)
令和5年 1月30日 :審判請求書及び手続補正書の提出
第2 令和5年1月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年1月30日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和5年1月30日にされた特許請求の範囲及び明細書についての補正(以下「本件補正」という。)は、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲(令和4年3月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲)の請求項1~4の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~3の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「 【請求項1】
建設作業機械に回転可能に配置された測定対象部材の回転中心の位置を取得する方法であって、
前記建築作業機械は、上部旋回体、腕部材、及びバケットを備えた油圧ショベルであり、
前記バケットの施工端部に一つの測定点を設定し、
前記測定対象部材に選定した前記上部旋回体を、前記回転中心を中心として回転し、少なくとも3つの異なる測定位置に前記バケットを配置し、
前記バケットの各測定位置において、前記測定点の座標を測量装置で測定し、
測定した少なくとも3つの座標から前記上部旋回体の前記回転中心を計算し、
前記測量装置は、自己の位置、測定箇所の方位角、前記測定箇所の俯角又は仰角、及び前記測定箇所までの距離を測定し、デジタル出力するトータルステーションであることを特徴とする建築作業機械における測定対象部材の回転中心取得方法。
【請求項2】
建設作業機械に回転可能に配置された測定対象部材の回転中心の位置を取得する方法であって、
前記建築作業機械は、上部旋回体、腕部材、及びバケットを備えた油圧ショベルであり、
前記バケットの施工端部に一つの測定点を設定し、
前記測定対象部材に選定した前記腕部材を、前記回転中心を中心として回転し、少なくとも3つの異なる測定位置に前記バケットを配置し、
前記バケットの各測定位置において、前記測定点の座標を測量装置で測定し、
測定した少なくとも3つの座標から前記腕部材の前記回転中心を計算し、
前記測量装置は、自己の位置、測定箇所の方位角、前記測定箇所の俯角又は仰角、及び前記測定箇所までの距離を測定し、デジタル出力するトータルステーションであることを特徴とする建築作業機械における測定対象部材の回転中心取得方法。
【請求項3】
前記測量装置での測定は前記測定点からの反射光を受信するノンプリズムモードで行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建築作業機械における測定対象部材の回転中心取得方法。
【請求項4】
計算機に測定結果を入力し、前記計算機が前記測定結果から前記測定対象部材の前記回転中心の座標を演算することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建築作業機械における測定対象部材の回転中心取得方法。」
(2) 本件補正後
「 【請求項1】
建設作業機械に回転可能に配置された測定対象部材の回転中心の位置を取得する方法であって、
前記建設作業機械は、上部旋回体、腕部材、及びバケットを備えた油圧ショベルであり、
前記バケットの施工端部又は前記腕部材に一つの測定点を設定し、
前記測定対象部材に選定した前記上部旋回体又は前記腕部材を、前記回転中心を中心として回転し、少なくとも3つの異なる測定位置に前記バケット又は前記腕部材を配置し、
前記バケット又は前記腕部材の前記各測定位置において、前記測定点の座標を測量装置で測定し、
測定した少なくとも3つの前記座標から前記上部旋回体又は前記腕部材の前記回転中心を計算し、
前記測量装置は、自己の位置、測定箇所の方位角、前記測定箇所の俯角又は仰角、及び前記測定箇所までの距離を測定し、デジタル出力するトータルステーションであって、
前記3つの異なる前記側定位置における前記座標から2つの弦を特定し、前記回転中心を前記弦の垂直二等分線の交点に求めることを特徴とする建設作業機械における測定対象部材の回転中心取得方法。
【請求項2】
前記測量装置での測定は前記測定位置からの反射光を受信するノンプリズムモードで行うことを特徴とする請求項1に記載の建設作業機械における測定対象部材の回転中心取得方法。
【請求項3】
計算機に測定結果を入力し、前記計算機が前記測定結果から前記測定対象部材の前記回転中心の座標を演算することを特徴とする請求項1に記載の建設作業機械における測定対象部材の回転中心取得方法。」
2 本件補正の目的について
(1) 本件補正による請求項1についての補正の内容
本件補正による請求項1についての補正は、次のアからエまでに示す補正事項アから補正事項エを含むものである。
ア 補正事項ア
(ア) 「一つの測定点を設定」する対象を、本件補正前の「前記バケットの施工端部」から「前記バケットの施工端部又は前記腕部材」に変更するとともに、
(イ) 「少なくとも3つの異なる測定位置に」「配置」する対象を、本件補正前の「前記バケット」から「前記バケット又は前記腕部材」に変更し、
さらに
(ウ) 「前記測定点の座標を測量装置で測定」する「各測定位置」を本件補正前の「前記バケットの各測定位置」から「前記バケット又は前記腕部材の前記各測定位置」に変更すること。
イ 補正事項イ
「回転中心を中心として回転」する対象及び「回転中心を計算」する対象を、本件補正前の「前記上部旋回体」から「前記上部旋回体又は前記腕部材」に変更すること。
ウ 補正事項ウ
「回転中心の位置」を求める工程を「前記3つの異なる前記側定位置における前記座標から2つの弦を特定し、前記回転中心を前記弦の垂直二等分線の交点に求める」ものに限定すること。
エ 補正事項エ
本件補正前に2箇所ある「建築作業機械」との用語を冒頭の「建設作業機械」という用語に合わせて「建設作業機械」に変更すること。
(2) 補正の目的要件の充足性についての当審の判断
ア 前記(1)の補正事項アについて検討すると、当該補正事項は「測定点」又は「測定位置」を置く対象が本件補正前においては「バケット」に限定されていたものに、「測定点」又は「測定位置」を置く対象として「腕部材」を追加して対象の範囲を拡大するものである。
イ よって、本件補正による請求項1についての補正のうち前記補正事項アは、特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)には該当しない。
ウ 前記補正事項アが、請求項の削除、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。
エ(ア) 審判請求人は、本件補正による請求項1についての補正に関し、審判請求書において「ii-b:請求項1に「腕部材」を追加する補正」として、次のとおり説明している。
「「バケット」の並列的概念を付加する補正ではありますが、「バケット」の発明特定事項は、前回補正請求範囲においては請求項2に記載されていた事項であり、旧請求項2の削除に伴い、新請求項1へ加入したものであります。」
(イ)a しかしながら、並列的概念を付加する補正が特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)に該当しないことは明らかである。
b しかも、本件補正前の請求項2には、「腕部材」が「回転中心を中心として回転」する対象及び「回転中心を計算」する対象であること(前記(1)の補正事項イに該当する。)は記載されているものの、補正事項ア((ア)「一つの測定点を設定」する対象、(イ)「少なくとも3つの異なる測定位置に」「配置」する対象、及び、(ウ)「前記測定点の座標を測量装置で測定」する「各測定位置」の設定対象が「腕部材」であること)は、請求項2には記載されていないから、「旧請求項2の削除に伴い、新請求項1へ加入した」との請求人の主張は失当である。
オ したがって、本件補正による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項各号において列挙するいずれをも目的とするものに該当せず、同項の規定に適合しない。
(3) 本件補正の適否のまとめ
前記(2)において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に適合しないから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2において説示したとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明は、令和4年3月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)の本件補正前の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に係る拒絶の理由2(進歩性の欠如)の概略は、次のとおりである。
本願の請求項1に係る発明は、特開2001-159518号公報(以下「引用文献1」という。)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用発明及び周知技術の認定
(1) 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された前記引用文献1には、次の事項が記載されている。
下線は当審において付した。以下同様である。
(ア) 【0028】~【0030】、【図1】
「【0028】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明に係る実施形態について詳細に説明する。なお、以下においては、建設機械として油圧ショベルを例にとって説明するが、クレーン等の建設機械に適用することも可能である。図1は、本発明を適用する油圧ショベルの側面図である。油圧ショベル1は、車体2と、車体2の前部に設けられた作業機5と、車体2の下方に設けられた下部走行体3とを有している。
【0029】作業機5は、リンク部材として車体2前部に基端部を回動自在に装着されたブーム6と、ブーム6の先端部に基端部を回動自在に装着されたアーム7とを有しており、作業用のツールとしてバケット8がその基端部をアーム7の先端部に回動自在に装着されている。作業機5はさらに、車体2とブーム6との間に装着されたブームシリンダ16と、ブーム6とアーム7との間に装着されたアームシリンダ17と、アーム7とバケット8との間に装着されたバケットシリンダ18とを有しており、これら油圧シリンダ16,17,18の伸縮駆動により作業機5は駆動される。
【0030】車体2は、下部走行体3に対して旋回自在に装着されており、旋回油圧モータ12により旋回駆動される。下部走行体3は、左右一対のクローラ4を有しており、走行油圧モータ13の駆動によりクローラ4を回転させて進行し、左右のクローラの回転速度差により進行方向を変えることが可能である。アーム7の基端部上面には、GPS測量機のアンテナ49が装着されている。」
「【図1】
[図:0001407477000001.jpg]
」
(イ) 【0068】~【0074】、【図6】、【図7】
「【0068】つぎに、図6,7を参照しながら、位置計測装置を他の機械に取り付けた際などに必要となるリンク角度センサ26,27,28の校正方法について説明する。
【0069】前出と同じものについては、同じ符号をつけ説明を省略する。作業機5を例えば図6のように、バケット8、アーム7、ブーム6の順に単独で駆動させることにする。単独に駆動すれば、駆動順は任意で良い。また、GPSアンテナ49はバケット8先端に取り付ける。
…(中略)…
【0074】つぎに、同様にしてバケット8、アーム7、ブーム6を共に動かさずに、車体2のみを旋回させることによって、図7(d)に示すようにC0を中心とする円弧状の3点P01,P02,P03の位置データより、回転中心C0及び旋回軸であるZ1を求めることができる。」
「【図6】
[図:0001407477000002.jpg]
」
「【図7】
[図:0001407477000003.jpg]
」
(ウ) 【0079】
「【0079】なお、本実施形態では、GPSアンテナ49をアーム7に取り付けた場合を示したが、ブーム6にあるいは、バケット8に取り付けても同様である。また、角度センサは重力を利用した傾斜センサでもよい。この場合、リンク相互の角度は、前後のリンクの傾斜角センサ信号の差分より求めることが出来る。また、油圧シリンダのストロークを検出する長さセンサでもよい。さらに、また、GPSの代わりにロボティックトータルステーションまたは、その他の3次元位置計測装置を用いてもよい。」
イ 引用発明の認定
前記アにおいて摘記した事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「建設機械としての油圧ショベルの車体2のみを旋回させることによって、C0を中心とする円弧状の3点P01,P02,P03の位置データより、回転中心C0を求める方法であって、(【0028】、【0074】)
油圧ショベル1は、車体2と、車体2の前部に設けられた作業機5と、車体2の下方に設けられた下部走行体3とを有し、(【0028】)
作業機5は、リンク部材として車体2前部に基端部を回動自在に装着されたブーム6と、ブーム6の先端部に基端部を回動自在に装着されたアーム7とを有しており、作業用のツールとしてバケット8がその基端部をアーム7の先端部に回動自在に装着され、(【0029】)
車体2は、下部走行体3に対して旋回自在に装着されており、(【0030】)
GPSアンテナ49がバケット8先端に取り付けられ、(【0069】)
GPSの代わりにロボティックトータルステーションを用いる、(【0079】)
回転中心C0を求める方法。」
(2) 引用文献2に記載された事項と周知技術1の認定
ア 引用文献2の記載事項
当審において、周知例として引用する特開2010-85311号公報(原査定の拒絶の理由において、請求項3に係る発明に対して引用された引用文献2と同一の文献であるので、以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア) 【0001】~【0004】
「【0001】
本発明は、測量システムによってインバート部を測量しながら、工事車両によってインバート部の掘削を行うインバート部の掘削管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばNATM工法においては、アーチ部分の掘削直後のトンネル地山にコンクリートを吹き付けて覆工しているが、地質が不安定な場合には、特許文献1に記載のようにインバート部を掘削し、このインバート部に別途にコンクリートを打設して施工している。
また、このようにインバート部を掘削する際は、例えば、インバート部の断面方向に沿って水糸を水平に張り、この水糸からの掘削深度をスタッフ等によって測量しながら行っている。この時、インバート部の測量点を水糸に沿って細分化することによって、インバート部を精度良く掘削できるようになっている。
【特許文献1】特開平10-115187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来のようにスタッフ等による測量点を細分化するとなると、手間や時間がかかるため、測量点を少なくする場合があるが、その分、インバート部の掘削精度が低下してしまうという問題がある。そして、このように掘削精度が低下すると、インバート部を必要以上に深く掘削する過掘り部が形成されてしまう場合があり、これによって、インバート部に打設するコンクリートの量が多くなり、好ましくない。
そこで、例えばトータルステーション等の測量機器を用いて、インバート部を精度良く測量しながら、掘削を行いたいという要望がある。しかしながら、測量を行うトータルステーションが、光波を反射するターゲットであるプリズムを必要とするものであった場合、精度良く測量を行うためには、このプリズムを多数の測量点にいちいち設置したり、作業者がプリズムを持って測量点間を移動したりしなければならず、手間である。また、これによって、測量の際は、掘削作業を長時間にわたって中断しなければならないという問題があった。
【0004】
本発明の課題は、インバート部を容易かつ精度良く測量しながら、インバート部を必要以上に深く掘削する過掘り部が形成されてしまうことを極力防ぐことが可能なインバート部の掘削管理方法を提供することを目的とする。」
(イ) 【0010】~【0014】、【図1】~【図3】
「【0010】
図1~図3は本発明を適用した一実施形態の構成を示すもので、1はトンネル、2はインバート部、3は工事車両であり、10はトータルステーション、20は演算装置、30は携帯情報端末である。
そして、本実施の形態における測量システムは、前記トータルステーション10と、演算装置20と、携帯情報端末30と、を互いにデータの送受信が可能な状態で接続してなるものである。なお、これらトータルステーション10と、演算装置20と、携帯情報端末30との接続は有線通信または無線通信である。
【0011】
なお、本実施の形態のトンネル1は、例えばNATM工法によって形成されるものであり、アーチ部分の掘削直後のトンネル地山にコンクリートを吹き付けて覆工している。
また、前記インバート部2は、前記トンネル1の底部を指すものであり、前記トンネル1の側壁基部間を結ぶ逆アーチ型のものである。このようなインバート部2を備えることによって前記トンネル1は、覆工コンクリートを閉合断面として耐力を増加させ、沈下・変状を防止することができる。
そして、本実施の形態において、前記インバート部2は、トンネル1の坑口から切羽へと向かう方向に沿って掘削とコンクリート覆工とを繰り返して施工されてなり、コンクリートを覆工した既設コンクリート部2bと、掘削対象部2aと、未掘削部2cとを備えている。また、このインバート部2は、油圧ショベル等の工事車両3によって掘削される。
【0012】
前記トータルステーション10は、例えば、少なくとも、視準用望遠鏡から視準点に向けて出射した測距光(レーザー光)とその戻り光により器械点から視準点までの距離を測距する測距手段と、視準用望遠鏡の視準軸に対する前記視準点の水平角と鉛直角を測角する測角手段と、これら測距・測角手段によって得られた測量データを記憶する記憶手段と、視準用望遠鏡を水平方向および鉛直方向に旋回駆動させる旋回駆動手段と、前記演算装置20および携帯情報端末30とデータの送受信を行う通信手段と、これら測距手段、測角手段、記憶手段、旋回駆動手段、通信手段をマイコン制御する制御手段等を備えている
ものである。
特に、このトータルステーション10は、視準点に前記レーザー光を照射し、戻ってくる僅かな乱反射光を使って視準点までの距離を測定することで、従来のような測距光を反射するターゲットであるプリズムを必要としないノンプリズム型のものである。
また、このトータルステーション10は、上述のように旋回駆動手段を備えているので、レーザー光を、図4に示すように、順々に照射したり、往復させて照射したり、水平方向および鉛直方向との組み合わせによる斜め方向や円方向へと照射したりすることができる。
【0013】
なお、このトータルステーション10は、ターゲットであるプリズムを用いるプリズム方式によっても測量可能である。
これにより、前記トータルステーション10の設置場所は、図1および図3に示すように、前記トンネル1内において予め座標が既知とされる少なくとも2点にプリズム11を設置するとともに、これら2点のプリズム11を視準可能な位置に前記トータルステーション10を据え付け、前記2点のプリズム11を視準して得た測距・測角データを前記演算装置20に伝送し、後方交会法により前記トータルステーション10の設置点の3次元座標を求めることにより設定される。
また、このトータルステーション10の設置場所は、後方交会法によって得られた前記設置点であるだけでなく、前記工事車両3の作業範囲外であるとともに前記インバート部2を測量可能な位置であるように設定されている。
【0014】
なお、本実施の形態のトータルステーション10は、図2および図3に示すように、前記インバート部2の上方に位置するトンネル1の天端1aに固定された設置台12に設置されるようにして、このトンネル1の天端1a近傍に据え付けられている。その他、前記既設コンクリート部2bに架台(図示せず)を設置し、この架台上に前記トータルステーション10を据え付けるようにしてもよい。」
「【図1】
[図:0001407477000004.jpg]
」
「【図2】
[図:0001407477000005.jpg]
」
「【図3】
[図:0001407477000006.jpg]
」
なお、前記測量システムは、前記トータルステーション10と、演算装置20と、携帯情報端末30と、を互いにデータの送受信が可能な状態で接続してなるものであることから、一般技術常識を踏まえると、前記トータルステーション10がデジタル出力可能なものであることは明らかといえる。
イ 周知技術1の認定
前記アに摘記した事項に例示されるように、次の事項は当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という)。
[周知技術1]
「自身の設置点の3次元座標及び測定対象までの距離と水平角及び鉛直角を測定してデジタル出力するトータルステーション」
4 対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 次の引用発明の欄に記載した引用発明の各構成は、それぞれ、対応する本願発明の欄に記載した次の本願発明の構成に相当する。
<引用発明1> <本願発明>
建設機械 建設作業機械(建築作業機械)
油圧ショベル1 油圧ショベル
車体2 上部旋回体
ブーム6 腕部材
バケット8 バケット
ロボティックトータルステーション トータルステーション
以下、前記相当関係を踏まえて対比検討を行う。
イ(ア) 引用発明においては「車体2は、下部走行体3に対して旋回自在に装着されて[いる]」ものであり、また引用発明は「車体2を旋回させることによって、…回転中心C0を求める方法」であるから、引用発明の「車体2」は本願発明の「建設作業機械に回転可能に配置された測定対象部材」に相当する。
(イ) 前記(ア)を踏まえると、引用発明において「建設機械としての油圧ショベルの車体2を旋回させることによって、」「回転中心C0を求める」ことは、本願発明において「建設作業機械に回転可能に配置された測定対象部材の回転中心の位置を取得する」ことに相当する。
(ウ) そうすると、本願発明と引用発明は、「建設作業機械に回転可能に配置された測定対象部材の回転中心の位置を取得する方法」の発明である点において一致する。
ウ 引用発明において「建設機械としての油圧ショベル」が「車体2と、車体2の前部に設けられた作業機5と、車体2の下方に設けられた下部走行体3とを有し、作業機5は、リンク部材として車体2前部に基端部を回動自在に装着されたブーム6と、ブーム6の先端部に基端部を回動自在に装着された、アーム7とを有しており、作業用のツールとしてバケット8がその基端部をアーム7の先端部に回動自在に装着され」ていることは、本願発明において「前記建築作業機械は、上部旋回体、腕部材、及びバケットを備えた油圧ショベルであ[る]」ことに相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記建築作業機械は、上部旋回体、腕部材、及びバケットを備えた油圧ショベルであ[る]」点。
エ(ア) 引用発明においては、「GPSアンテナ49がバケット8先端に取り付けられ」、「GPSの代わりにロボティックトータルステーションを用いる」ものである。「GPSの代わりにロボティックトータルステーションを用い[る]」とは、GPSアンテナが配置されるべき測定点の位置をロボティックトータルステーションを用いて測定するということであるから、引用発明は「バケット8先端の測定点の位置をロボティックトータルステーションを用いて測定する」ものであるといえる。
(イ) 引用発明の「バケット8先端」は、本願発明の「バケットの施工端部」に相当するから、前記(ア)の検討を踏まえると、本願発明と引用発明は、次の点a及びbの点において一致する。
a 「前記バケットの施工端部に一つの測定点を設定[する]」ものである点。
b 「前記測量装置は、トータルステーションである」点。
オ(ア) 引用発明は「車体2を旋回させることによって、C0を中心とする円弧状の3点P01,P02,P03の位置データより、回転中心C0を求める」ものであるから、前記エを踏まえると、引用発明が「車体2」を「回転中心C0」を中心として旋回させ、3点の位置に「バケット8先端」を位置させるものであることは明らかであり、このことは本願発明の「前記測定対象部材に選定した前記上部旋回体を、前記回転中心を中心として回転し、少なくとも3つの異なる測定位置に前記バケットを配置[する]」ことに相当する。
(イ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記測定対象部材に選定した前記上部旋回体を、前記回転中心を中心として回転し、少なくとも3つの異なる測定位置に前記バケットを配置[する]」ものである点。
カ(ア) 引用発明において「3点P01,P02,P03の位置データより、回転中心C0を求める」際に、3点の位置データより回転中心を求めるための計算が行われることは明らかである。
(イ) 前記エ、オ、(ア)を踏まえると、引用発明において「車体2を旋回させることによって、C0を中心とする円弧状の3点P01,P02,P03の位置データより、回転中心C0を求める」ことは、本願発明において「前記バケットの各測定位置において、前記測定点の座標を測量装置で測定し、測定した少なくとも3つの座標から前記上部旋回体の前記回転中心を計算[する]」ことに相当する。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記バケットの各測定位置において、前記測定点の座標を測量装置で測定し、測定した少なくとも3つの座標から前記上部旋回体の前記回転中心を計算[する]」ものである点。
(2) 一致点及び相違点の認定
前記(1)の対比分析の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次のアに示す一致点において一致し、後記イに示す相違点において相違する。
ア 一致点
「建設作業機械に回転可能に配置された測定対象部材の回転中心の位置を取得する方法であって、
前記建築作業機械は、上部旋回体、腕部材、及びバケットを備えた油圧ショベルであり、
前記バケットの施工端部に一つの測定点を設定し、
前記測定対象部材に選定した前記上部旋回体を、前記回転中心を中心として回転し、少なくとも3つの異なる測定位置に前記バケットを配置し、
前記バケットの各測定位置において、前記測定点の座標を測量装置で測定し、
測定した少なくとも3つの座標から前記上部旋回体の前記回転中心を計算し、
前記測量装置は、トータルステーションである建築作業機械における測定対象部材の回転中心取得方法」である点。
イ 相違点
本願発明においては「トータルステーション」が「自己の位置、測定箇所の方位角、前記測定箇所の俯角又は仰角、及び前記測定箇所までの距離を測定し、デジタル出力する」ものであるのに対し、引用発明の「ロボティックトータルステーション」(「トータルステーション」に相当する。)がどのような機能を有するものであるのかは不明である点。
5 判断
上記相違点について検討する。
(1) 相違点について
前記第3の3(2)イで認定したように、「自身の設置点の3次元座標及び測定対象までの距離と水平角及び鉛直角を測定してデジタル出力するトータルステーション」は周知(周知技術1)であり、引用発明における「ロボティックトータルステーション」にこれを採用して、前記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
(2) 請求人の主張について
ア 請求人の主張内容
審判請求書において、請求人は、次のように主張している。
引用発明は、GPS、GPSアンテナからなる3次元位置計測装置を備えたことを前提とする改良発明であり、引用発明は、基本的に、本願発明の従来技術に相当している。
本願当初明細書に記載されているとおり、引用発明を含む従来の建設作業機械のアーム旋回中心を計測する装置にあっては、「GPS用のアンテナがアームの所定位置に設けられ、アンテナの3次元位置情報と複数のポジションセンサーからの出力に基づき、アームの旋回中心の3次元位置を演算する技術があったが、建設作業機械に複数のポジションセンサーやGPS装置を配置する必要があり費用が嵩むほか、測定の手順が煩雑である」という不具合があったものであり、本願発明は、この従来の問題点を解決している。
その結果、「本発明に係る建設作業機械における測定対象部材の回転中心取得方法によれば、建設作業機械の回転部材の回転中心を簡単かつ確実に取得することができる。」という効果を奏するものである。
したがって、本願発明にあっては、引用発明の非常に複雑な手順を経ることなく、簡易かつ迅速であって、さらにGPS装置を配置することによるコストを除去した状態で、回転部材の回転中心の取得が可能となるものである。
この効果は、引用文献1には記載も示唆もないことから引用文献1からは予測不可能な顕著な効果であり、本願発明の上記の効果は引用発明によっては予測不可能な顕著な効果であることから、本願発明の構成には困難性がある。
イ 請求人の主張についての検討
前記第3の3(1)ア(ウ)に摘記したように、引用文献1には「GPSの代わりにロボティックトータルステーションまたは、その他の3次元位置計測装置を用いてもよい。」(【0079】)ことが明示されており、請求人の引用発明は、GPS、GPSアンテナからなる3次元位置計測装置を備えたことを前提とする改良発明である旨の前記主張は、失当である。
また、「非常に複雑な手順を経ることなく、簡易かつ迅速であって、さらにGPS装置を配置することによるコストを除去した状態で、回転部材の回転中心の取得が可能となる」という効果は、トータルステーションの採用により当然に奏される効果であり、当業者に予測困難な効果とはいえない。
したがって、請求人の前記主張は、採用することができない。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-001554