特許拒絶査定不服審判
2023-000277
組織間文書情報共有システム
- 審判番号
- 2023-000277
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-201298
- 請求日
- 2023年01月09日
- 審決日
- 2023年06月19日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社医療情報技術研究所
- 【請求人代理人】大野 浩司
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 智康
- 審判官 渡邊 聡
- 審判官 中野 浩昌
- 分類
- P18 .121-WY (G16H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-201298「組織間文書情報共有システム」拒絶査定不服審判事件〔請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年12月12日を出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。
令和4年 4月 5日付け :拒絶理由通知書
同年 4月21日 :意見書の提出
同年 7月 8日付け :拒絶理由通知書
同年 8月29日 :意見書の提出
同年11月15日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和5年 1月 9日 :審判請求書の提出
同年 3月 2日付け :拒絶理由通知書
同年 5月 4日 :意見書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
(進歩性)本願請求項1~9に係る発明は、以下の引用文献A~Eに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
A:特開2002-366656号公報
B:特開2016-218644号公報
C:特開2002-99561号公報
D:特開2015-114896号公報
E:特開2010-286881号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審において令和5年3月2日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1~9に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1~4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2002-366656号公報(原査定の引用文献A)
2.特開2002-99561号公報(原査定の引用文献C)
3.特開2015-114896号公報(原査定の引用文献D)
4.特開2010-286881号公報(原査定の引用文献E)
第4 本願発明
本願請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」などという。)は、令和5年5月4日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される発明であり、そのうち本願発明1は以下のとおりのものである。
【請求項1】
必ずしも文書カテゴリーの構成、文書カテゴリー内の記述項目が一致しない複数組織の電子カルテ間の文書情報共有において、
前記複数組織間で汎用的な送受信書式を定義し管理する送受信書式定義管理手段、
送信側電子カルテの文書カテゴリーごとの記述項目から情報を抽出して前記送受信書式に代入し送信する送受信書式代入送信手段、
受信した送受信書式の情報を各々対応する受信側電子カルテの文書カテゴリーの記述項目に記録する送受信書式受信記録手段を備え、
前記送受信書式定義管理手段で定義される汎用的な送受信書式は、共有が必要な記述項目を示すタグのリストであり、
前記送受信書式代入送信手段は、前記共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々について、送信側電子カルテで対応する文書カテゴリーの記述項目との対応を定義する送信側マップ定義手段を有し、前記対応する文書カテゴリーの記述項目の内容を、前記送信側マップ定義手段に基づいて、共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々に代入する送信記述項目代入手段を有し、
前記送受信書式受信記録手段は、前記共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々について、受信側電子カルテで対応する文書カテゴリーの記述項目との対応を定義する受信側マップ定義手段を有し、前記共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々への代入内容を、前記受信側マップ定義手段に基づいて、対応する受信側電子カルテの文書カテゴリーの記述項目に記録する、受信記述項目記録手段を有し、
前記送受信書式は、記述項目に複数記録の代入を許容する記述項目複数代入手段を有することを特徴とする組織間文書情報共有システム。
なお、本願発明2~6の概要は、本願発明1を減縮した発明である。
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1(特開2002-366656号公報)について
当審拒絶理由で引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、強調のため当審で付与した。)
「【請求項1】医療機関のカルテデータを別の医療機関に電送する際に、カルテデータを正確に、効率よく、過不足なく電送するためのXMLフォーマットとDTD、および、PC上でのカルテ情報表示装置。」
「【請求項2】医療機関に電子カルテ形態で保存されている患者カルテデータを別の医療機関に電送する際に患者の情報を正確に、効率よく、過不足ない形式で表現するために、カルテデータに含まれる各種情報の種類に合わせて階層構造で表現されたXMLフォーマットとDTD、および、PCでのカルテ情報表示装置。」
「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、電子カルテ内の患者データを交換するフォーマットおよび装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
カルテ情報は、処置処方、主訴、観察、所見に加え、手書きの絵、X線や超音波エコーなどの画像、各種検査の結果、などの形態の異なるデータがお互いに関係付けられて含まれている。データの種類が多様でかつ関係付けが複雑であるため、特定の電子カルテ装置の中ではカルテ情報を表現できていたとしても、その装置外で普遍性のあるデータ形式を使って表現することができなかった。このため、特定の電子カルテ装置で作成されたカルテ情報を、他機種の電子カルテ装置に移管することができず、また、当該データが作成された電子カルテ装置を保有していない医療機関においてカルテ情報を電子的に参照することができなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】別の医療機関の患者カルテデータをそのままの形で再現するデータ表現が存在しなかったため、電子カルテを導入していてもあくまで紙のカルテの代用にすぎず、過去の患者情報の再利用がしにくいという課題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】一人の患者の一来院の患者データ(病歴、診察履歴、薬歴等)を最小単位にして、指定した患者の指定来院日の情報をXML形式でテキストファイル形式で電子カルテ外部に出力する。これを電子メール等でこの患者情報を参照したい医療機関に送信し、受け取った医療機関はこのテキストファイルを電子カルテに取り込むことにより患者カルテデータを電子カルテ上で参照することができる。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0006】図1は、本発明が適用される電子カルテ参照装置の構成図である。本実施形態の電子カルテ参照装置1は、患者データ格納部110と、外部データ入出力機能部120と、外部にXMLフォーマットとDTDを備えた交換用患者データ格納部130と、診察結果入出力機能部140とを備えている。このような本実施形態の電子カルテ参照装置1は、例えば、米国マイクロソフト社製のOS(Operating System)である「Winsows2000(製品名)」を搭載するパーソナル・コンピュータ装置において、アプリケーション・プログラムによって実現し、本発明の方法及び装置を適用することができる。
【0007】図2は交換用患者データ格納部に格納されている患者データの相関関係を示したモデル図である。
【0008】
患者データ230の下には以下の情報が格納される。
1.頭書き情報240
2.住所情報250
3.保険情報260
4.経過情報270
5.処方情報280」
図2
[図:0001399286000001.jpg]
「【0011】
図4は図2の頭書き情報240の詳細である。患者についての基本情報が格納されている。」
図4
[図:0001399286000002.jpg]
「【0026】本発明を適用したXMLファイルのフォーマットの構造を定義したDTD(DocumentType Definition)は以下のようになる。
(中略)
<!-- 頭書き情報 -->
<!ELEMENT ATAMAGAKI (PID,KAN,NAM?,INI?,BTH?,PRL?,SEX?,PNO,REN?,SHK?,BUN?,MIS?,VIS?,KIN?,SEC?,LNG?,PTA?)>
(中略)
【0027】ここで、本発明を適用した
電子カルテ参照装置を持つ二つの医療機関AとBの間である患者Cのデータを交換する方法を説明する。図24はそれぞれの医療機関には本発明を適用した電子カルテ参照装置とその交換方法を示したものである。
【0028】まず、医療機関Aの患者情報格納部161に格納されている患者Cのデータを外部データ入出力機能162を利用して交換用患者データ交換部153に保存する。医療機関は交換用患者データ交換部163に保存されているXML化された患者CのデータをE-MAILなどで医療機関Bに送信する。
患者のプライバシーを考慮するとこのデータは暗号化されていることが望ましい。
【0029】
医療機関Bでは受信したデータは交換用患者データ交換部164に保存され、外部データ入出力機能165を通じて医療機関Bの患者情報格納部166に格納される。この時点で患者Cのデータは医療機関Bにもともと格納されていた他の患者情報と同じに扱うことができ、診察結果入出力機能部167を通して医療機関Bの医師が編集、参照することが可能になる。」
図24
[図:0001399286000003.jpg]
段落【0027】より、図24は、「電子カルテ参照装置を持つ二つの医療機関AとBの間である患者Cのデータを交換する方法」を説明するものであるから、図24に記載された医療機関Aと、医療機関Bと、両者を接続する通信路とを合わせて、「医療機関AとBの間である患者Cのデータを交換するシステム」と捉えることができる。
また、段落【0006】の「患者データ格納部」と段落【0028】、【0029】、図24の「患者情報格納部」は、同じものであることが明らかであるから、表記を「患者データ格納部」に統一する。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
電子カルテ参照装置を持つ二つの医療機関AとBの間である患者Cのデータ、すなわち、電子カルテ形態で保存されている患者カルテデータを交換するシステム(請求項2、【0027】、図24)であって、
電子カルテ参照装置は、患者データ格納部と、外部データ入出力機能部と、外部にXMLフォーマットとDTDを備えた交換用患者データ格納部と、診察結果入出力機能部とを備え(【0006】)、
医療機関Aは、患者データ格納部に格納されている患者Cのデータを外部データ入出力機能を利用して交換用患者データ交換部に保存し、交換用患者データ交換部に保存されているXML化された患者CのデータをE-MAILなどで医療機関Bに送信し(【0028】)、
医療機関Bは、受信したデータを交換用患者データ交換部に保存し、外部データ入出力機能を通じて医療機関Bの患者データ格納部に格納するものであり、この時点で、患者Cのデータは医療機関Bにもともと格納されていた他の患者情報と同じに扱うことができ(【0029】)、
XMLフォーマットとDTDは、患者の情報を正確に、効率よく、過不足ない形式で表現するために、カルテデータに含まれる各種情報の種類に合わせて階層構造で表現されたものであり(請求項2)、
前記DTDは、XMLファイルのフォーマットの構造を定義したものであり(【0026】)、
交換用患者データ格納部に格納されている患者データの下には、頭書き情報、住所情報、保険情報、経過情報、処方情報が格納され(【0007】、【0008】)、
例えば、頭書き情報である、患者についての基本情報は、次のXMLフォーマットを有する、
[図:0001399286000004.jpg]
(【0011】、図4)
システム。
2.引用文献2(特開2002-99561号公報)について
当審拒絶理由で引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0045】すなわち、フォーム変換部113は、まず、マッピングルール記憶部112から該当するマッピングルールを読み込む(ステップS201)。次いで、フォーム変換部113は、マッピングルールに定義された変換元データの項目名を元に、変換元データからそれに属するデータ項目を検索し、その値を変換元データから取得する(ステップS202)。
【0046】例えば、図2(d)のXMLデータが変換元の場合には、マッピングルールに定義された変換元データの項目名に対応するタグが検索され、そのタグに対応する位置のデータ値が取得されることになる。また図2(a)の帳票データが変換元の場合には、マッピングルールに定義された変換元データの項目名に対応する入力フィールドが検索され、その入力フィールド内のデータ値が取得される。
【0047】そして、フォーム変換部113は、マッピングルールに定義された変換先の項目名に従い、変換元から取得したデータ値をマッピングルールで指定される変換先の該当する項目名の位置にセットする(ステップS203)。ステップS202,203の処理は、マッピングルール内の全定義分だけ繰り返し実行される。これにより、変換元データの内容を変換先データの形式に変換して出力することが可能となる。」
以上の記載によれば、引用文献3には、「XMLデータから他の形式のデータへの変換やその逆の変換に際し、変換元の項目名と変換先の項目名とを定義したマッピングルールと、マッピングルールに定義された変換元データの項目名に対応するデータを取得し、変換先の項目名の位置に代入する手段」に関する技術が記載されているといえる。
3.引用文献3(特開2015-114896号公報)について
当審拒絶理由で引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
【0017】
図9は、文書データファイルの一例であり、XML形式で文書データが記録されている。この形式で記録しておけば、<患者氏名>鈴木 フミコ</患者氏名>のように、個々の文書データがタグ付けされているので、当該文書データの意味は明確である。もし後で異なった文書書式で当該文書データを表示、印刷する必要があった際、文書データと書式定義ファイルのデータ項目の出現順が順不同であったとしても、正しく対応関係が決定できる。また、欠落や過剰なデータ項目があったにしても、空白表示、データ無視により、当該文書の本来の書式とは異なっていても、指定された書式定義ファイルでの表示、印刷が可能である。このように、本来の書式とは異なる書式であっても、文書のデータを再利用した表示が可能となる。こうすれば、過去の文書データや、他院の書式の異る文書であっても、使い慣れている自院の現在の書式で表示させることが可能となる。
なお、ここではXML形式としたが、JSONと呼ばれる形式でも良く、指定された書式定義ファイルに対応して整形された文書が表示、印刷されればよい。
[図:0001399286000005.jpg]
[図:0001399286000006.jpg]
[図:0001399286000007.jpg]
以上の記載によれば、引用文献3には、XML形式で文書データを記録する際、例えば「<病名>左肘関節炎 2011/06/05</病名>」とタグ付けして記録することが記載されている。
4.引用文献4(特開2010-286881号公報)について
当審拒絶理由で引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
【0010】
本発明は、異なる医療機関の間で異なる表現が採用された医療情報を交換可能にする。
【請求項3】
所定の第2の変換表に従い、前記出力部の出力した中間情報を前記第2の医療システムで通用する前記医療情報の表現である第2の表現に変換する第2の変換部を備える請求項2に記載の医療情報システム。
【0048】
<第2実施形態>
図6は本発明の好ましい第2実施形態に係る医療情報データベース連携システムの概略構成を示す。このシステムは、医療機関Cの医療情報データベース40C、データ中継システム100C、院内システム50Cと、医療機関Dの医療情報データベース40D、データ中継システム100D、院内システム50D、医療機関Eのデータ中継システム100E、院内システム50E、オンラインデータベース(ODB)200を含む。
【0049】
ODB200は、インターネットなどの外部ネットワークを介して、データ中継システム100C~Eと接続されている。データ中継システム100C~Eの間にはODB200が介在しており、これらは直接接続されていない。
【0050】
データ中継システム100Cは第1実施形態のデータ中継システム100Aと同様であり、またデータ中継システム100D・100Eはともに第1実施形態のデータ中継システム100Bと同様である。
【0051】
ただし、図7に示すように、データ中継システム100Cのデータ出力部は、変換情報をネットワーク経由でODB200に出力する。また、データ中継システム100D・100EはODB200から変換情報をネットワーク経由で入力する。
【0052】
本システムの実際の用法としては、例えば、医療機関CにはCT装置のような高額な検査機器が配備されているが、医療機関Dおよび/またはEにはなく、医療機関Cで当該検査機器を使った検査結果のデータが必要な場合に、これを安全に医療機関Cから医療機関Dおよび/またはEに提供する場合が挙げられる。
【0053】
具体的には、患者Yが、医療機関Cで検査したのち医療機関Dで手術を行い医療機関Eで療養する場合を考える。医療機関Cで行われた患者Yの検査に関する医療情報に含まれる検査名・検査コードは、第1実施形態のデータ中継システム100Aと同様に医療機関Cのデータ中継システム100Cにて中間表現コードに変換されて、当該中間表現コードを含む変換情報がODB200に送信される。ODB200は当該変換情報を受信してODB200の記憶手段である連携用データベース200aに格納するよう連携サーバ200bが制御する。ここで、中間表現コードに含まれる患者Yの個人情報はデータ中継システム100cが出力しないか出力されてもODB200で削除されてもよいが、患者Yを識別する情報である患者IDは必ず含まれているものとする。プライバシー保護のため、患者IDは無意味な記号や文字の組み合わせで構成することが好ましい。
【0054】
患者Yが医療機関CあるいはDに転院した際には、データ中継システム100Dあるいは100Eが、患者Yの患者IDとともにその変換情報を送信する要求をネットワーク経由で送る。連携サーバ200bは、その要求をネットワーク経由で受信したことに応じて、ODB200の患者Yの患者IDに対応する変換情報を連携用データベース200aから取得し、要求を送ってきたデータ中継システム100Dあるいは100Eに当該変換情報を送信する。
【0055】
データ中継システム100Dあるいは100Eは、当該変換情報を受信すると、第1実施形態のデータ中継システム100Bと同様にして、当該変換情報に含まれる中間表現コードを医療機関DあるいはEで通用する検査コード・検査名に変換することで、医療機関Cの検査結果を利用できる。
【0056】
なお、この検査コード・検査名はデータ中継システム100Dあるいは100Eで閲覧だけが可能で、医療機関Dの医療情報データベース40Dや医療機関Eの院内システム50Eに保存できないようにしてもよい。あるいは、ODB200の患者Yの患者IDに対応する患者情報はデータ中継システム100Dあるいは100Eで閲覧だけが可能で、医療機関Dの医療情報データベース40Dや医療機関Eの院内システム50Eに保存できないようにしてもよい。こうすると、患者Yが医療機関CからD、あるいはDからEに転院するときに、医療機関Cにおける患者Yの個人情報を医療機関DやEが一時的に閲覧でき、受け入れ先の医療機関DやEの受け入れた患者がYと一致しているか否かの確認や、受け入れ先の医療機関DやEにおける患者Yの個人情報の入力の手間を小さくすることができる。
【0057】
このように、医療機関Cだけで通用する医療情報を中間表現コードに変換して医療機関DあるいはEに提供することで、受け入れ先の医療機関は患者Yに関する情報を自ら全て検査する必要がなく、ODB200から容易かつ安全に入手でき、情報収集の省力化を図ることができる。
以上の記載によれば、引用文献4には、異なる医療機関の間で異なる表現が採用された医療情報を交換可能とするために、変換表に従って、電子カルテの記述項目の内容を中間情報に変換すること、及び、医療機関が他の医療機関にオンラインデータベースを経由して医療情報を送信する技術が記載されているといえる。
5.引用文献B(特開2016-218644号公報)について
原査定にて引用された引用文献Bには、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は医療や介護、福祉機関で、患者や入所者などの記録文書や作業指示文書の作成、参照をコンピュータネットワークで効率的に行う電子カルテシステムに関し、施設毎に各々文書カテゴリーの構成が異なっていても、また、従事する多数の職種のスタッフが施設間で複雑に入り組んだ状況であっても、さらに、患者が病院、介護施設、在宅と移動したとしても、これらの多施設間で一貫した記録文書や作業指示文書の作成、参照を可能とし、スムーズな医療、介護、福祉連携活動を実現する多施設統合電子カルテシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、慢性疾患や認知症を伴った要介護高齢者の増加に伴い、一つの病院や介護施設では、医療や介護の完結が困難となってきている。肺炎や骨折などにより病院で治療を受けた患者は、退院しても直接は自宅に帰れないことが多く、地域にある介護施設にいったん入所し、落ち着いてから地域のクリニックの訪問診療、訪問介護や看護を受けながら自宅ないし在宅施設に戻ってゆくことが多い。このように、患者は地域にある病院、クリニック、介護施設、在宅施設や自宅を移動し、それに伴って、関与する医師、看護師、リハビリ担当者、介護士、薬剤師などの多数の職種が入れ替わって関与する。施設間、職種間で密に情報を共有し、有機的な協働作業行う、いわゆる「地域包括ケアシステム」実現の必要性が叫ばれるようになってきているが、ここで、施設間、職種間で密に情報を共有し、有機的な協働作業行うことを可能とする多施設統合電子カルテシステムの実現は必須といえよう。
【0003】
従来この種の医療情報共有システムでは、各病院をネットワークで接続して、サーバーに集約された患者に関する情報を共有して閲覧するシステムが採用されてきた。この種の医療情報開示システムでは、例えば図1に示すように、病院A~Cなどの電子カルテ情報を共有サーバーに蓄積しておき、病院D、クリニックE、F等からは、インターネットブラウザを用いて、この共有サーバーにアクセスし、必要な診療情報を参照することを可能とする技術が採用されてきた。」
「【0034】
前記アクセス可能文書参照手段によって複数の施設の文書が集められる。単に、図7、図8の表示に留まるものであれば、日付や時間などから文書の所属する施設を推定することも可能であるが、在宅施設では、病院から医師が、訪問看護ステーションからは訪問看護師と理学療法士が、訪問介護ステーションからは介護士が等々、複数の施設に所属するスタッフが作成した文書が混在することとなり、文書の所属する施設を推定することは困難となる。このため、前記アクセス可能文書参照手段で各施設から文書を参照する際、参照してきた文書データに、参照した施設を明示するタグ情報を付加することにより、文書の出自が明確になる。これにより、施設毎の文書を表示することが容易となり、また、スタッフから文書の編集要求があった時に、当該スタッフが当該文書に対して編集権限を有しているかどうかを問い合わせる先の施設が明確になる。
【0035】
ここで、前記「参照した施設を明示するタグ情報」としては、文書データがXML形式であれば、例えば「<参照施設>OO訪問看護ステーション</参照施設>」、JSON形式であれば、「参照施設:OO訪問看護ステーション」でもよい。リレーショナルデータベース形式であれば、「参照施設」の項目を立てても良い。いずれにしても、参照してきた文書データに、参照施設を明示するデータを付与すればよい。」
「【0040】
以上、実施例を説明したが、本発明の具体的な構成は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
たとえば、本発明の施設毎文書カテゴリー毎文書記録手段では、文書データはXML形式で記録し、アクセス可能文書参照手段においてもXML形式で参照する実施例としているが、記録や送受信が可能であれば、JSON、HL-7、CSV等でも構わない。また、リレーショナルデータベースに記録された文書を、参照の際に適切な形式に変換する 構成とすることも可能である。」
以上の記載によれば、引用文献Bには、「施設間、職種間で密に情報を共有し、有機的な協働作業行うことを可能とする多施設統合電子カルテシステムにおいて、文書データがXML形式当のタグを用いたものであり、文書データはXML形式で記録し、アクセス可能文書参照手段においてもXML形式で参照する実施例としているが、記録や送受信が可能であれば、JSON等でも構わない」ことが記載されている。
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「電子カルテ形態で保存されている患者カルテデータ」は、本願発明1の「電子カルテ」に相当する。そして、引用発明の「医療機関A」及び「医療機関B」のそれぞれの「患者カルテデータ(患者Cのデータ)」は、それぞれ本願発明1の「送信側電子カルテ」及び「受信側電子カルテ」に相当する。
そして、一般に、カルテ情報は、複数の文書からなることが技術常識であるところ、引用発明の医療機関Aと医療機関Bの患者カルテデータ(カルテ情報)は、引用文献1の段落【0002】のとおり、「カルテ情報は、処置処方、主訴、観察、所見に加え、手書きの絵、X線や超音波エコーなどの画像、各種検査の結果、などの形態の異なるデータがお互いに関係付けられて含まれて」おり、「データの種類が多様でかつ関係付けが複雑であるため、特定の電子カルテ装置の中ではカルテ情報を表現できていたとしても、その装置外で普遍性のあるデータ形式を使って表現することができず、このため、特定の電子カルテ装置で作成されたカルテ情報を、他機種の電子カルテ装置に移管することができず、また、当該データが作成された電子カルテ装置を保有していない医療機関においてカルテ情報を電子的に参照することができな」い状況にある、すなわち、引用発明の医療機関Aと医療機関Bの患者カルテデータは、文書カテゴリーの構成、文書カテゴリー内の記述項目が一致しない複数組織の患者カルテデータといえる。
そうすると、引用発明の「電子カルテ参照装置を持つ二つの医療機関AとBの間である患者Cのデータ、すなわち、電子カルテ形態で保存されている患者カルテデータを交換するシステム」は、本願発明1と同様の「必ずしも文書カテゴリーの構成、文書カテゴリー内の記述項目が一致しない複数組織の電子カルテ間の文書情報共有」をするものといえる。
イ 引用発明の「XMLフォーマット」は本願発明1の「汎用的な送受信書式」に相当し、引用発明の「交換用データ格納部」が備える「DTD」は、「XMLファイルのフォーマットの構造を定義した」ものであるから、本願発明1の「送受信書式定義管理手段」とは、「送受信書式定義手段」である点で共通する。
一方、本願発明1では、「前記複数組織間で汎用的な送受信書式を定義し管理する送受信書式定義管理手段」であるのに対し、引用発明では「前記複数組織間で汎用的な送受信書式を定義」はしているものの「管理」をしているか明らかではないから、「送受信書式定義管理手段」であるか明らかでない点で本願発明1と相違する。
ウ 引用発明の医療機関Aが患者カルテデータを、「カルテデータに含まれる各種情報の種類に合わせて階層構造で表現された」「XMLフォーマット」で交換用患者データ格納部に格納することは、「患者カルテデータ」の各記述項目から、「頭書き情報、住所情報、保険情報、経過情報、処方情報」という情報の種類に対応するデータを抽出して、XMLフォーマットに代入することといえ、さらに、医療機関Aは、「交換用患者データ交換部に保存されているXML化された患者Cのデータ(患者カルテデータ)をE-MAILなどで医療機関Bに送信する」ものであるから、引用発明の医療機関Aは、本願発明1の「送信側電子カルテの文書カテゴリーごとの記述項目から情報を抽出して前記送受信書式に代入し送信する送受信書式代入送信手段」という構成を備えるといえる。
エ 引用発明の医療機関Bは、「受信したデータを交換用患者データ交換部に保存し、外部データ入出力機能を通じて医療機関Bの患者データ格納部に格納する」ものであるところ、医療機関Bの患者データ格納部には、患者カルテデータは、医療機関B用の電子カルテ形態で保存されているから、受信したデータ(患者カルテデータ)を医療機関B用の電子カルテ形態で患者データ格納部に格納することは、受信した患者カルテデータの各情報を、医療機関Bの電子カルテに対応して患者データ格納部に格納するものといえ、これにより患者Cのデータは医療機関Bにもともと格納されていた他の患者情報と同じに扱うことができる。そうすると、医療機関Bは、本願発明1の「受信した送受信書式の情報を各々対応する受信側電子カルテの文書カテゴリーの記述項目に記録する送受信書式受信記録手段」という構成を備えるといえる。
オ 上記イのとおり、引用発明の「XMLフォーマット」、「DTD」は、それぞれ、本願発明1の「汎用的な送受信書式」、「XMLファイルのフォーマットの構造を定義した」ものといえるから、引用発明の「XMLフォーマット」の構造を定義した「DTD」は、本願発明1の「前記送受信書式定義管理手段で定義される汎用的な送受信書式」と「前記送受信書式定義手段で定義される汎用的な送受信書式」である点で共通する。
そして、引用発明の患者カルテデータのうちの頭書き情報は、DTDで(引用文献1の段落【0026】)で定義され、図4のような記述項目のタグのリストとしてXMLフォーマットに過不足なく変換されるものであり、医療機関Aが医療機関Bに送信する情報に過不足がないことは、上記タグのリストは共有に必要な記述項目を示すものといえる。そうすると、引用発明のタグのリストは、本件発明1の「共有が必要な記述項目を示すタグのリストである」といえる。
カ 本願発明1では「前記送受信書式代入送信手段は、前記共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々について、送信側電子カルテで対応する文書カテゴリーの記述項目との対応を定義する送信側マップ定義手段を有し、前記対応する文書カテゴリーの記述項目の内容を、前記送信側マップ定義手段に基づいて、共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々に代入する送信記述項目代入手段」、「前記送受信書式受信記録手段は、前記共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々について、受信側電子カルテで対応する文書カテゴリーの記述項目との対応を定義する受信側マップ定義手段を有し、前記共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々への代入内容を、前記受信側マップ定義手段に基づいて、対応する受信側電子カルテの文書カテゴリーの記述項目に記録する、受信記述項目記録手段」を有している。 一方、引用発明は、「送信側マップ定義手段」、「受診側マップ定義手段」を有しておらず、したがって、これらのマップ定義手段に基づいて記述項目を代入あるいは記録する「送信記述項目代入手段」、「受信記述項目記録手段」を有していない点で、本願発明1と相違する。
キ 本願発明1は、「前記送受信書式は、記述項目に複数記録の代入を許容する記述項目複数代入手段」を有しているのに対し、引用発明は、当該手段を有していない点で相違する。
ク 引用発明の「システム」は、上記アからオで言及した事項を踏まえると、医療機関A及び医療機関Bとの間で文書の情報を共有するシステムであるから、本願発明1の「組織間文書情報共有システム」といえる。
ケ まとめ(一致点・相違点)
以上の対比によれば、本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
必ずしも文書カテゴリーの構成、文書カテゴリー内の記述項目が一致しない複数組織の電子カルテ間の文書情報共有において、
前記複数組織間で汎用的な送受信書式を定義する送受信書式定義手段、
送信側電子カルテの文書カテゴリーごとの記述項目から情報を抽出して前記送受信書式に代入し送信する送受信書式代入送信手段、
受信した送受信書式の情報を各々対応する受信側電子カルテの文書カテゴリーの記述項目に記録する送受信書式受信記録手段を備え、
前記送受信書式定義手段で定義される汎用的な送受信書式は、共有が必要な記述項目を示すタグのリストであることを特徴とする組織間文書情報共有システム。
<相違点>
相違点1
「送受信書式定義手段」が、本願発明1では、「複数組織間で汎用的な送受信書式を定義し管理する送受信書式定義管理手段」であるのに対し、引用発明では、「複数組織間で汎用的な送受信書式を定義」はしているものの「管理」するかは明らかではなく、したがって、「送受信書式定義管理手段」であるか明らかでない点。
相違点2
本願発明1では「前記送受信書式代入送信手段は、前記共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々について、送信側電子カルテで対応する文書カテゴリーの記述項目との対応を定義する送信側マップ定義手段を有し、前記対応する文書カテゴリーの記述項目の内容を、前記送信側マップ定義手段に基づいて、共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々に代入する送信記述項目代入手段」、「前記送受信書式受信記録手段は、前記共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々について、受信側電子カルテで対応する文書カテゴリーの記述項目との対応を定義する受信側マップ定義手段を有し、前記共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々への代入内容を、前記受信側マップ定義手段に基づいて、対応する受信側電子カルテの文書カテゴリーの記述項目に記録する、受信記述項目記録手段」を有しているのに対し、引用発明は、「送信側マップ定義手段」、「受診側マップ定義手段」を有しておらず、したがって、これらのマップ定義手段に基づいて記述項目を代入あるいは記録する本願発明1の「送信記述項目代入手段」、「受信記述項目記録手段」を有していない点。
相違点3
本願発明1は、「前記送受信書式は、記述項目に複数記録の代入を許容する記述項目複数代入手段」を有しているのに対し、引用発明は、当該手段を有していない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
引用文献3には、上記「第5 3.」に記載したとおり「XML形式で文書データを記録する際、例えば「<病名>左肘関節炎2011/06/05</病名>」とタグ付けして記録すること」が記載されている。ここで、「病名」とタグ付けされた「左肘関節炎 2011/06/05」は、病名と日付とが不可分のものであって、「記述項目に複数の記録を代入したもの」ではない。このことは、引用文献3の図2、図3を参酌すると、「病名」という一つの項目に「病名」と「日付」が不可分で記載されていることからも明らかである。
したがって、引用文献3には、上記相違点3に相当する構成は記載されていない。
また、他の引用文献である、引用文献2および4にも、上記相違点3に相当する構成は記載されていない。
そして、上記相違点3の構成は、本願出願前において当業者にとって周知であったとの証拠や合理的理由はなく、他の相違点(上記相違点1、2)について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2~4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2.本願発明2~6について
本願発明2~6も、本願発明1の「前記送受信書式は、記述項目に複数記録の代入を許容する記述項目複数代入手段」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2~4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 原査定についての判断
本願発明1~6は、それぞれ「前記送受信書式は、記述項目に複数記録の代入を許容する記述項目複数代入手段」という構成を有するものとなっており、当審拒絶理由において引用されていない引用文献Bにも当該構成は記載されていないから、上記第6のとおり、本願発明1~6は、当業者であっても、原査定における引用文献A~Eに基づいて、容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-000277