特許無効審判
2022-800024
卵パックを移載するロボットシステムおよび移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法
- 審判番号
- 2022-800024
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2021-089955
- 登録番号
- 6989989
- 請求日
- 2022年03月15日
- 審決日
- 2022年11月08日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】共和機械 株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
- 【請求人代理人】三山 峻司
- 【請求人代理人】矢倉 雄太
- 【請求人代理人】西川 侑之介
- 【被請求人】株式会社 ナベル
- 【被請求人代理人】三品 明生
- 【被請求人代理人】角川 博美
- 【被請求人代理人】吉田 昌司
- 【被請求人代理人】飯島 歩
- 審判長/審判官
- 審判長 山崎 勝司
- 審判官 稲葉 大紀
- 審判官 當間 庸裕
- 分類
- P1113.536-Y (B65G) / P1113.537-Y (B65G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6989989号発明「卵パックを移載するロボットシステムおよび移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6989989号(以下「本件特許」という。)は、令和元年12月13日を出願日とする特願2019-224975号(以下「原出願」という。)の一部を、令和3年5月28日に新たな特許出願(特願2021-89955号)としたものであり、その特許権について、令和3年12月7日に設定登録を受けた(請求項の数3。特許権者:株式会社ナベル(以下「被請求人」という。))。
その後、本件の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明についての特許を無効とすることについて、令和4年3月15日に共和機械株式会社(以下「請求人」という。)から、本件審判の請求がされた。
本件審判の手続の経緯の概要は次のとおりである。
令和 4年 3月15日 審判請求書提出
同年 6月 9日 審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)提出
同年 7月15日 審理事項通知書
同年 8月10日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
同年 8月18日 口頭審理陳述要領書、甲第1~6号証提出(請求人)
同年 9月 8日 口頭審理
第2 請求人の主張
請求人は、「特許第6989989号発明の特許請求の範囲の請求項1から3に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」を請求の趣旨とし、次の無効理由を主張する(本件特許の請求項1~3に係る発明を以下「本件発明1」等という。また、まとめて「本件発明」という。)。
1 無効理由1(実施可能要件)
本件特許の出願の願書に添付された明細書の発明の詳細な説明の記載は、下記の点で当業者が実施できる程度に十分に記載されていない。
(1)本件特許の請求項1について
ア 「棚板を使用状態に展開させる手段」が「卵パックを移載するロボット」である場合に、吸着以外の手段を備えたロボットがどのように棚板を展開するのか。
イ 「棚板を使用状態に展開させる手段」が「卵パックを移載するロボットとは異なる装置」である場合に、「異なる装置」の内容(構造や機序)がどのようなもので、「異なる装置」がどのように棚板を展開するのか。
(2)同請求項2について
「棚板を把持する手段」が吸着以外の手段である場合に、どのように棚板を把持して展開するのか。
(3)同請求項3について
ア 「棚板を使用状態に展開させるステップ」が「卵パックを移載するロボットを用いたステップ」である場合に、吸着以外の手段を備えたロボットがどのように棚板を展開するのか。
イ 「棚板を使用状態に展開させるステップ」が「卵パックを移載するロボットとは異なる装置を用いたステップ」である場合に、「異なる装置」の内容(構造や機序)がどのようなもので、「異なる装置」がどのように棚板を展開するのか。
したがって、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。
2 無効理由2(サポート要件)
本件特許の出願の願書に添付された明細書の発明の詳細な説明の記載は、下記の点について記載されていない。
(1)本件特許の請求項1について
ア 「棚板を使用状態に展開させる手段」が「卵パックを移載するロボット」である場合における、吸着以外の手段を備えたロボットが棚板を展開させる具体的構成。
イ 「棚板を使用状態に展開させる手段」が「卵パックを移載するロボットとは異なる装置」である場合における、「異なる装置」の具体的構成。
(2)同請求項2について
「棚板を把持する手段」が吸着以外の手段の場合における、「棚板を把持する手段」の具体的構成。
(3)同請求項3について
ア 「棚板を使用状態に展開させるステップ」が「卵パックを移載するロボットを用いたステップ」である場合における、吸着以外の手段を備えたロボットが棚板を展開させる具体的方法。
イ 「棚板を使用状態に展開させるステップ」が「卵パックを移載するロボットとは異なる装置を用いたステップ」である場合における、「異なる装置」が棚板を展開させる具体的方法。
したがって、本件特許の請求項1~3に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化することができないから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。
3 無効理由3(明確性要件)
本件特許の出願の願書に添付された特許請求の範囲の記載の請求項1及び3は、「収納状態の棚板を使用状態に展開」させるとの課題(目的)を示しているに過ぎず、その課題を解決するための具体的な手段及び方法を示しておらず、請求項2は、「棚板を把持する手段」が、棚板をどのように展開するのか明確ではないから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。
第3 被請求人の主張
答弁の趣旨は、「「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求める。」ものである。
第4 当審の判断
1 本件発明について
(1)本件特許明細書等の記載事項
本件特許明細書には、次の記載がある(「・・・」は、文の省略を意味する。)。
ア 技術分野について「本発明は、卵パックを移動式のラックに移載するロボットシステムおよび移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法に関するものである。」(段落【0001】)と記載され、
イ 背景技術について「ロールインナーは、複数の棚を備え、各棚に卵パックが積み重ねられた状態で載せられる。この状態で、ロールインナーは移動され、そのまま売り場に陳列が可能である。・・・また、輸送効率を上げるために、非使用時にコンパクトに収容できるように、棚板が折り畳み式になっている。」(【0004】~【0006】)と記載され、
ウ 本件発明が解決しようとする課題について「特許文献2記載の移動式のラック(ロールインナー)に卵容器を収納する作業は、人手により行われており、いまだ自動化が達成されていない。卵パックをロールインナーに収納しようとした場合、折り畳まれている棚板を展開操作しなければならないので、人手に代わってロボットを用いる特許文献1に開示されている技術を、そのまま適用することができないという課題があった。そこで、本発明は、前記従来技術の課題を解決する卵パックを移載するロボットシステムおよび移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法を提供することを目的とする。」(【0008】~【0011】)と記載されている。
エ 特許請求の範囲には、以下のとおり記載されている。
「【請求項1】
ロボットヘッドとロボットアームと制御部とを備え、展開された使用状態と収納状態との間で状態変更可能な棚板を複数枚有する移動式のラックに前記ロボットヘッドで保持した卵パックを移載するロボットシステムであって、
収納状態の棚板を使用状態に展開させる手段をさらに備え、
前記展開させる手段は、卵パックを移載するロボット又は卵パックを移載するロボットとは異なる装置であり、
前記ロボット又は前記装置は、卵パックが移載された棚板の上段側にある収納状態の棚板を使用状態に展開させる、ロボットシステム。
【請求項2】
前記展開させる手段は、棚板を把持する手段を含む、請求項1記載のロボットシステム。
【請求項3】
ロボットヘッドとロボットアームと制御部とを有するロボットシステムを用いて、展開された使用状態と収納状態との間で状態変更可能な棚板を複数枚有する移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法であって、
前記ロボットヘッドで卵パックを保持するステップと、
保持した卵パックを使用状態の棚板上に移載するステップと、
収納状態の棚板を使用状態に展開させるステップとを備え、
前記展開させるステップは、卵パックを移載するロボット又は卵パックを移載するロボットとは異なる装置を用いたステップであり、
前記ロボット又は前記装置は、卵パックが移載された棚板の上段側にある収納状態の棚板を使用状態に展開させる、移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法。」
(2)本件発明の認定
上記(1)の記載事項を総合すると、本件発明1~3は、上記(1)エの特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであって、卵パックを移動式のラックに移載するロボットシステムおよび移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法に関するものであり、「移動式のラック(ロールインナー)に卵容器を収納する作業が人手により行われており、いまだ自動化が達成されていないという従来技術の課題を解決する卵パックを移載するロボットシステムおよび移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法を提供すること」を本件発明の課題とするものである(以下「本件発明の課題」という。)。
2 無効理由1(実施可能要件)について
(1)実施可能用要件の判断基準
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明には、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載しなければならない旨規定するところ、実施可能要件を充足するためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要する。
(2)本件発明1についての判断
ア 本件発明1は、「棚板を使用状態に展開させる手段」として、「卵パックを移載するロボット又は卵パックを移載するロボットとは異なる装置であ」ると特定し、「前記ロボット又は前記装置」によって、「卵パックが移載された棚板の上段側にある収納状態の棚板を使用状態に展開させる」と特定していることから、「卵パックを移載するロボット」又は「卵パックを移載するロボットとは異なる装置」によって、「棚板を使用状態に展開させる」ことにより、「自動化」した「卵パックを移載するロボットシステムおよび移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法」を提供するものと理解できる。
イ そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「卵パックを移載するロボット」について、以下の事項が記載されている。
「【0020】
卵パックの移載ロボットシステム10は、ロボットヘッド1と、ロボットアーム2と、制御部3とを備える。
【0021】
ロボットヘッド1は、把持部11を備える。把持部11は、複数の卵パックPを把持する。把持部11は、例えば、横方向に隣接する3つの卵パックPを保持することができる。把持部11は、複数の吸着部材12によって構成される。各吸着部材12は、蓋が閉じられた卵パックPの天面P1側を吸着する。各吸着部材12は、真空機構(図示しない)に接続されている。各吸着部材12は、上下方向に伸縮可能な蛇腹構造である。1つの卵パックPにつき、複数個(例えば6つ)の吸着部材12で保持する。なお、1つの卵パックPにつき、4つの吸着部材12で保持してもよいし、吸着された卵パックPが必要以上に傾かなければ、吸着部材12の配置方法はどのようなものであってもよい。
【0022】
ロボットアーム2は、ロボットヘッド1の位置姿勢を変更可能なものである。ロボットアーム2は、一時待機領域8とロールインナーRとの間でロボットヘッド1を移動させる。ロボットアーム2は、例えば、6軸垂直多関節ロボット等の、任意に作動する慣用の多関節ロボットが適用される。この他に、ロボットアーム2は、ロボットヘッド1をX軸、Y軸およびZ軸に対して、任意に移動させることができるロボットまたは装置など種々のものを採用できる。なお、一時待機領域8は、搬送装置9の下流側に設けられており、搬送装置9の上流側には、卵をパックに収容する包装装置(図示せず)が配置されている。」
上記記載事項によると、「卵パックを移載するロボット」は、制御部と、ロボットアーム2と、ロボットヘッド1と、ロボットヘッド1に備えられた複数の吸着部材12によって構成される把持部11とを有し、ロボットアーム2は、慣用の多関節ロボットや、X軸、Y軸及びZ軸に対して、任意に移動させることができるロボット又は装置が採用できることがわかる。
そうすると、「棚板を使用状態に展開させる手段」が「卵パックを移載するロボット」である場合には、「棚板を使用状態に展開させる手段」は、制御部と、ロボットアーム2と、ロボットヘッド1と、ロボットヘッド1に備えられた複数の吸着部材12によって構成される把持部11とを有し、ロボットアーム2は、慣用の多関節ロボットや、X軸、Y軸及びZ軸に対して、任意に移動させることができるロボット又は装置により、把持部11の吸着部材12により棚板を吸着して移動させて、使用状態に展開すれば、本件発明1を実施できるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるといえる。
ウ 他方、「棚板を使用状態に展開させる手段」が「卵パックを移載するロボットとは異なる装置であ」ることについて、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、
「【0043】
折り畳み式の棚板R1を展開させるステップは、卵パックPを移載するロボットとは異なる装置を用いるなどしてもよい。」と記載されるものの、具体的な態様の直接的な記載はなされていない。
そこで、本件特許明細書の発明の詳細な説明をさらにみると、把持部11について、以下の事項が記載されている。
「【0039】
把持部11は、吸着タイプのものには限られない。例えば、図8及び図9に示すロボットヘッド1は、卵パックPを側方から把持する把持部13を備える。把持部13は、10個入りの卵パックPのうち、長手方向に沿ってほぼ全体を包み込むようにして把持する。把持部13は、図9の二点鎖線で示す位置に退避することで把持状態を解除する。
【0040】
また、図10及び図11にロボットヘッド1は、卵パックPを上下から把持する把持部14を備える。把持部14は、10個入りの卵パックPのうち、長手方向に沿ってほぼ全体を包み込むようにして把持する。具体的には、把持部14は、支持部材15と、協働部材16とを備える。支持部材15は、卵パックPの下面側に配置される。支持部材15は、例えば棒状のもので、卵の形状に沿った凹凸が設けられた下面の凹部P3に配置され、凹部P3内に収まっている。協働部材16は、支持部材15と協働して卵パックPが大きく傾いたり、横揺れしたりすることを抑制する。協働部材16は、例えば板状のもので、卵パックPの天面P1上に配置される。なお、協働部材16の形状や配置場所は、図示したものには限られない。把持部14は、例えば、図11の二点鎖線で示す位置に退避することで把持状態を解除する。また、図10に示すように、ロボットアーム2の先端21は、卵パックPの側方に位置していてもよい。」
そして、図8~図11の態様と、上記【0039】、【0040】の記載を併せてみると、吸着による把持部11ではなく、卵パックPを側方から把持する把持部13や、卵パックPを上下から把持する把持部14を備える場合には、前記把持部13又は14では収納状態の棚板を吸着できないことは明らかであるから、卵パックを移載するロボットのロボットヘッドが把持部13又は14に加え、吸着による把持部11も備える構成とするか、又は、すでに棚板を展開させる手段として示されている、「制御部と、ロボットアーム2と、ロボットヘッド1と、ロボットヘッド1に備えられた複数の吸着部材12によって構成される把持部11とを有し、ロボットアーム2は、慣用の多関節ロボットや、X軸、Y軸及びZ軸に対して、任意に移動させることができるロボット又は装置」を「卵パックを移載するロボットとは異なる装置」として採用することにより、吸着による把持手段で棚板を吸着して移動させればよいことは、本件特許明細書の発明の詳細な説明を総合してみると、理解できる。
エ さらに、請求項1の「展開された使用状態と収納状態との間で状態変更可能な棚板」は、「把持部11が棚板R1を吸着し、その状態のままロボットヘッド1を手前側に移動させることで、・・・展開される」(【0032】)という程度の簡単な動作で展開される構造を有するものであるから、「棚板を使用状態に展開させる手段」としては、棚板を保持したまま移動できるような手段であれば足りるといえる。そして、本件出願時の技術常識を踏まえると、そのような手段としては、移動対象を吸着するものに限らず、例えば、移動対象を引っ掛けて保持する単純な構造を備えたロボットアームなどの周知の技術が想定できる。そうすると、本件出願時の技術常識を踏まえることで、本件特許明細書等に記載された吸着による把持部11以外の把持手段によっても棚板を保持及び展開することが可能であることを当業者は理解できる。
オ そして、卵パックを移載するロボットとは異なる装置や、吸着以外の把持手段により棚板を展開させる上記各態様を実施するに際して、当業者に過度の試行錯誤を強いるともいえない。
カ よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているということができる。
(3)本件発明2についての判断
ア 本件発明2は、「収納状態の棚板を使用状態に展開させる手段」が「棚板を把持する手段を含む」と特定していることから、「卵パックを移載するロボット」又は「卵パックを移載するロボットとは異なる装置」が「棚板を把持する」ことで「棚板を使用状態に展開させる」ことにより、「自動化」した「卵パックを移載するロボットシステムおよび移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法」を提供するものと理解できる。
イ そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「棚板を把持する」ことについて、以下の事項が記載されている。
「【0032】
棚板R1の一段分を移載した後、図6及び図7に示すように、制御部3は、折り畳み式の棚板R1を展開させる。すなわち、折り畳み式の棚板R1は、卵パックPを移載する際と同じロボットヘッド1を用いて、収納状態から使用状態に展開される。具体的には、制御部3は、把持部11が棚板R1を吸着し、その状態のままロボットヘッド1を手前側に移動させることで、折り畳み式の棚板R1が展開される。収納状態の棚板R1は、下段の収納空間R2の上部の一部分のみを覆う一方、展開された使用状態の棚板R1は、下段の収納空間R2の上部の全体を覆う。」
上記記載事項によると、「収納状態の棚板を使用状態に展開させる手段」が含む「棚板を把持する手段」としては、複数の吸着部材12によって構成される把持部11が採用できることがわかる。
ウ さらに、請求項1の「展開された使用状態と収納状態との間で状態変更可能な棚板」は、「把持部11が棚板R1を吸着し、その状態のままロボットヘッド1を手前側に移動させることで、・・・展開される」(【0032】)という程度の簡単な動作で展開される構造を有するものであるから、「棚板を把持する手段」としては、棚板を把持したまま移動できるような手段であれば足りるといえる。そして、本件出願時の技術常識を踏まえると、そのような手段としては、移動対象を吸着するものに限らず、例えば、移動対象を挟んで把持する単純な構造を備えたロボットアームなどの周知の技術が想定できる。よって、本件出願時の技術常識を踏まえることで、本件特許明細書等に記載された吸着による把持部11以外の把持手段によっても棚板を把持及び展開することが可能であることを当業者は理解できる。
エ そうすると、卵パックを移載するロボットとは異なる装置や、吸着以外の把持手段により棚板を展開させる上記各態様を実施するに際して、当業者に過度の試行錯誤を強いるともいえない。
オ よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているということができる。
(4)本件発明3についての判断
本件発明3は、本件発明1の「ロボットシステム」を「移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法。」としたものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているということができる。
(5)請求人の主張について
ア 本件発明1、3について
(ア)請求人は、請求項1、3について、本件特許明細書等において、卵パックPを移載する際と同じロボットヘッド1を用いて吸着による把持部11により棚板を展開する方法以外に、ロボットヘッド1によっても、また卵パックを移載するロボットとは異なる装置によっても、棚板を展開する具体的な手段及び方法が記載されておらず、技術常識を参酌しても理解できず、実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない旨主張する(審判請求書8ページ1~10行、口頭審理陳述要領書10~19ページの「(2.2)実施可能要件に関する被請求人の主張に対する反論」の項)。
しかしながら、上記(2)及び(4)で示したように、吸着以外による棚板を展開する具体的な手段が発明の詳細な説明に記載されていないとしても、本件出願時の技術常識を踏まえることで、吸着以外の手段によっても棚板を展開することが可能であることを当業者は理解できるから、請求人の当該主張は採用できない。
(イ)請求人は、請求項1、3について、【0001】の「移動式のラック」は、卵パック用移動式ラックで別名「ロールインナー」と呼ばれるもので、ロボットアーム等で作業ができる開口部は前面部と上面にしかない旨、棚板を折り畳んだ状態と展開した状態で保持する仕組み(フック)が必要であるから、棚板を展開するためには、フックから外す手段又は工程と、フックに嵌める手段又は工程が必要となる旨、棚板を展開させる手段又は方法として卵パックを移載する装置とは異なる装置を用いる場合、卵パックを移載するロボットとの干渉をどのように回避して作業させるかを検討する必要がある旨、を主張する(口頭審理陳述要領書4ページ23行~10ページの装置概要図)。
しかしながら、本件発明1、3の「移動式のラック」が、請求人が主張するような開口部の大きさや、棚板を保持する仕組み(フック)を備えた構造の卵パック用ロールインナーであることは、特許請求の範囲の記載では特定されていないし、また、本件発明を実施するに際して、移動式のラックのサイズ、棚板を展開させる手段、卵パックを移載する装置等の寸法を適宜選択して装置間の干渉を避けたり、棚板の保持する仕組み(フック)を備えていない棚板を用いればよいことも、当業者であれば容易に理解できるから、請求人の当該主張は採用できない。
イ 本件発明2について
請求人は、請求項2について、本件特許明細書等において、ロボットアーム2が卵パックPを側方から把持する把持部13又は卵パックPを上下から把持する把持部14を備える場合、かかるロボットアーム2がどのように棚板を展開するのか記載されておらず不明である旨主張する(審判請求書10ページ1~4行、口頭審理陳述要領書19ページ4~12行)。
しかしながら、上記(2)ウで示したように、前記把持部13又は14では収納状態の棚板を吸着できないことは明らかであるから、卵パックを移載するロボットのロボットヘッドが把持部13又は14に加え、吸着による把持部11も備える構成とするか、又は、すでに棚板を展開させる手段として示されている、「制御部と、ロボットアーム2と、ロボットヘッド1と、ロボットヘッド1に備えられた複数の吸着部材12によって構成される把持部11とを有し、ロボットアーム2は、慣用の多関節ロボットや、X軸、Y軸及びZ軸に対して、任意に移動させることができるロボット又は装置」を「卵パックを移載するロボットとは異なる装置」として採用することにより、吸着による把持手段で棚板を吸着して移動させればよいことは、本件特許明細書の発明の詳細な説明を総合してみると、理解できる。さらに、上記(3)ウで示したように、本件出願時の技術常識を踏まえると、そのような手段としては、移動対象を吸着するものに限らず、例えば、移動対象を挟んで把持する単純な構造を備えたロボットアームなどの周知の技術が想定できる。そうすると、本件出願時の技術常識を踏まえることで、本件特許明細書等に記載された吸着による把持部11以外の把持手段によっても棚板を把持及び展開することが可能であることを当業者は理解できる。
したがって、請求人の当該主張は採用できない。
(6)小括
以上のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、本件発明1~3に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、無効理由1には理由がない。
3 無効理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号で規定するサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)発明の課題
上記1(2)で認定したとおり、本件発明は、卵パックを移動式のラックに移載するロボットシステムおよび移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法に関するものであるところ、上記「本件発明の課題」を有するものである。
(3)本件発明1についての判断
ア 請求項1の記載
本件発明1は、上記「本件発明の課題」を解決するための手段として、「ロボットヘッドとロボットアームと制御部とを備え」「展開された使用状態と収納状態との間で状態変更可能な棚板を複数枚有する移動式のラックに前記ロボットヘッドで保持した卵パックを移載するロボットシステム」であって、「収納状態の棚板を使用状態に展開させる手段をさらに備え、前記展開させる手段は、卵パックを移載するロボット又は卵パックを移載するロボットとは異なる装置であり、前記ロボット又は前記装置は、卵パックが移載された棚板の上段側にある収納状態の棚板を使用状態に展開させる」ものである。
そして、「収納状態の棚板を・・・展開させる手段は、卵パックを移載するロボット又は卵パックを移載するロボットとは異なる装置であり」とは、文言上、棚板を展開させる手段が、卵パックを移載するロボット自体であるか、卵パックを移載するロボットとは別の装置であることを意味するものと理解できる。
イ 本件特許明細書等の記載
(ア)本件特許明細書等には、「卵パックを移載するロボット」で棚板を使用状態に展開する具体的な実施例として、
「【0032】
棚板R1の一段分を移載した後、図6及び図7に示すように、制御部3は、折り畳み式の棚板R1を展開させる。すなわち、折り畳み式の棚板R1は、卵パックPを移載する際と同じロボットヘッド1を用いて、収納状態から使用状態に展開される。具体的には、制御部3は、把持部11が棚板R1を吸着し、その状態のままロボットヘッド1を手前側に移動させることで、折り畳み式の棚板R1が展開される。」と記載されており、当該吸着による把持部11により棚板を把持及び展開することで、上記「本件発明の課題」を解決することができると、当業者は認識することができる。
(イ)また、「卵パックを移載するロボットとは異なる装置」について本件特許明細書等に具体的な記載はないが、棚板を展開させる手段が卵パックを移載するロボットである場合と卵パックを移載するロボットとは異なる装置である場合において、棚板を展開させるために必要となる構造や機序に格別の違いはないことは当業者にとって明らかであるから、棚板を展開させる手段が卵パックを移載するロボットとは異なる装置である場合においても、吸着による棚板展開手段を用いることができると理解できる。
(ウ)さらに、上記2(2)エで示したとおり、請求項1の「展開された使用状態と収納状態との間で状態変更可能な棚板」は、「把持部11が棚板R1を吸着し、その状態のままロボットヘッド1を手前側に移動させることで、・・・展開される」(【0032】)という程度の簡単な動作で展開される構造を有するものであるから、「棚板を使用状態に展開させる手段」としては、棚板を保持したまま移動できるような手段であれば足りるといえる。そして、本件出願時の技術常識を踏まえると、そのような手段としては、移動対象を吸着するものに限らず、例えば、移動対象を引っ掛けて保持する単純な構造を備えたロボットアームなどの周知の技術が想定できる。そうすると、本件出願時の技術常識を踏まえることで、本件特許明細書等に記載された吸着による把持部11以外の把持手段によっても棚板を保持及び展開することで、上記「本件発明の課題」を解決できると、当業者は認識できる。
(4)本件発明2についての判断
本件特許明細書等には、「ロボットヘッド1の下面側には、10個入りの卵パックPのうち、長手方向から6個分の卵に対応する部分を卵パックPの上面で吸着する把持部11を備える。」(【0027】)及び「折り畳み式の棚板R1は、卵パックPを移載する際と同じロボットヘッド1を用いて、収納状態から使用状態に展開される。具体的には、制御部3は、把持部11が棚板R1を吸着し、その状態のままロボットヘッド1を手前側に移動させることで、折り畳み式の棚板R1が展開される。」(【0032】)との記載並びに図6及び図7が記載されており、本件発明2の「前記展開させる手段は、棚板を把持する手段を含む」との発明特定事項は、本件特許明細書等に記載されているといえる。そして、当業者であれば、かかる構成を採用することにより、上記「本件発明の課題」を解決できることを認識できる。
(5)本件発明3についての判断
本件発明3は、本件発明1の「ロボットシステム」を「移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法。」としたものであるから、本件発明1と同様の理由により、当業者は、上記「本件発明の課題」を解決することができることを認識できる。
(6)請求人の主張について
ア 本件発明1、3について
(ア)請求人は、本件特許明細書等において、卵パックPを移載する際と同じロボットヘッド1を用いて吸着による把持部11により棚板を展開する方法以外に、ロボットヘッド1によっても、また卵パックを移載するロボットは異なる装置によっても、棚板を展開する具体的な手段及び方法が記載されておらず、技術常識を参酌しても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない旨主張する(審判請求書17ページ下から4行~18ページ7行、口頭審理陳述要領書19ページ21~24行)。
しかしながら、上記(3)イで示したように、本件発明1の「棚板を展開させる手段」について、本件特許明細書等には、吸着による棚板展開手段が示されており、さらに、「今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。」(【0044】)との記載を併せみると、吸着による棚板展開手段は例示に過ぎないことが理解できる。また、吸着による棚板展開手段以外の具体的構成について、発明の詳細な説明に記載がなくても、移動対象を吸着するものに限らず移動対象を引っ掛けて保持する簡単な構造を備えたロボットアームなどが本件出願時によく知られていたという技術常識に照らせば、吸着による棚板展開手段に限らず種々の周知の構成でも上記「本件発明の課題」を解決できると認識できるから、請求人の当該主張は採用できない。
(イ)請求人は、被請求人がロボットヘッドにおける吸着以外の把持手段の技術常識として答弁書にて列挙している特許公開公報に開示されているものは、本件発明が属する技術分野及び技術的課題とは異なるから技術常識として参酌することは不当である旨主張する(口頭審理陳述要領書20ページ18行~21ページ23行)。
しかしながら、被請求人が列挙する複数の指を備えたロボットアームは、様々な作業内容に対応することを想定していることは技術常識であるから、上記特許公開公報に個別に記載されている技術分野や解決すべき課題が本件発明が属する技術分野や解決すべき課題と異なるとしても、ロボットアームに関する技術常識として参照することを阻害するとまではいえないから、請求人の当該主張は採用できない。
イ 本件発明2について
本件特許明細書等において、ロボットアーム2が卵パックPを側方から把持する把持部13又は卵パックPを上下から把持する把持部14を備える場合、かかるロボットアーム2がどのように棚板を展開するのか記載されておらず不明である旨主張する(審判請求書18ページ8行~20ページ2行、口頭審理陳述要領書24ページ17~24行)。
しかしながら、上記2(2)ウで示したように、前記把持部13又は14では収納状態の棚板を吸着できないことは明らかであるから、吸着による把持手段で棚板を吸着して移動させればよいことは、本件特許明細書の発明の詳細な説明を総合してみると、認識できる。さらに、上記2(3)ウで示したように、本件出願時の技術常識を踏まえると、そのような手段としては、移動対象を吸着するものに限らず、例えば、移動対象を挟んで把持する単純な構造を備えたロボットアームなどの周知の技術が想定できる。そうすると、本件出願時の技術常識を踏まえることで、本件特許明細書等に記載された吸着による把持部11以外の把持手段によっても棚板を把持及び展開することが可能であることを当業者は認識できる。
したがって、請求人の当該主張は採用できない。
(7)小括
以上のとおり、本件発明は、発明の詳細な説明において、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえず、発明の詳細な説明に記載したものであるから、本件発明1~3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、無効理由2には理由がない。
4 無効理由3(明確性要件)について
(1)本件発明1についての判断
請求項1の発明特定事項より、本件発明1は、「ロボットヘッドとロボットアームと制御部とを備え、展開された使用状態と収納状態との間で状態変更可能な棚板を複数枚有する移動式のラックに前記ロボットヘッドで保持した卵パックを移載するロボットシステム」であって、
「収納状態の棚板を使用状態に展開させる手段をさらに備え」ていて、
「前記展開させる手段」は、「卵パックを移載するロボット」又は「卵パックを移載するロボットとは異なる装置」であって、
「前記ロボット又は前記装置」は、「卵パックが移載された棚板の上段側にある収納状態の棚板を使用状態に展開させる」、
「ロボットシステム」であり、文言上は、特許請求の範囲に記載された発明は、不明瞭とするところはなく、明確なものといえる。
他方、「卵パックを移載するロボット」、「卵パックを移載するロボットとは異なる装置」との記載は、具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されているかとの点では、「卵パックを移載するロボット」又は「卵パックを移載するロボットとは異なる装置」で「卵パックが移載された棚板の上段側にある収納状態の棚板を使用状態に展開させる」か否かを判断できるので、この点で、文言上、不明確なところはない。
よって、本件発明1は明確である。
(2)本件発明2についての判断
請求項2の「前記展開させる手段は、棚板を把持する手段を含む」という記載に関し、上記2(2)イで示したように、本件特許明細書等にはその具体例としては、吸着による棚板展開手段が記載されていて、吸着により棚板を保持する態様が記載されていて、請求項2は、「前記展開させる手段」が、「棚板を把持する手段を含む」ことを述べるものであるから、その点で、不明確とするところはない。
よって、本件発明2は明確である。
(3)本件発明3についての判断
本件発明3は、本件発明1の「ロボットシステム」を「移動式のラックに複数段に積まれた状態の卵パックを生産する方法。」としたものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明3は明確である。
(4)請求人の主張について
ア 本件発明1、3について
請求項1、3の記載は、ロボット又は装置で収納状態の棚板を使用状態に展開させるとの課題(目的)を示しているに過ぎず、課題解決のための具体的な手段及び方法が示されておらず、発明の外延を確定させることができないから明確ではない旨主張する(審判請求書21ページ下から7行~22ページ4行、口頭審理陳述要領書23ページ下から8行~24ページ4行)。
しかしながら、上記2(2)イで示したように、本件特許明細書等には具体例として吸着による棚板展開手段が記載されているし、「棚板を使用状態に展開させる手段」という記載についても不明確なところはないから、発明の外延を確定させることができないほど不明確であるとはいえないから、請求人の当該主張は採用できない。
イ 本件発明2について
請求項2の「棚板を把持する手段」が吸着以外の把持手段を含むのか否か、吸着以外の把持手段を含むとしても、どこを把持してどのように展開するのか不明である旨主張する(審判請求書23ページ下から2行~24ページ5行、口頭審理陳述要領書24ページ17~24行)。
しかしながら、上記(2)で示したように、「前記展開させる手段は、棚板を把持する手段を含む」という記載に不明確なところはなく、さらに、上記2(3)ウで示したように、本件出願時の技術常識を踏まえると、そのような手段としては、移動対象を吸着するものに限らず、例えば、移動対象を挟んで把持する単純な構造を備えたロボットアームなどの周知の技術が想定でき、本件出願時の技術常識を踏まえることで、本件特許明細書等に記載された吸着による把持部11以外の把持手段によっても棚板を把持及び展開することが可能であることを当業者は理解できるから、そのような吸着以外による棚板を把持する手段も含み得ることは明らかであるし、どこを把持してどのように展開するかについても、少なくとも吸着による棚板展開手段については記載されており、その他の把持態様で実施した場合において、棚板のどこを把持してどのように展開するかは、把持態様に応じて当業者が適宜選択し得ることである。したがって、請求人の当該主張は採用できない。
(5)小括
以上のとおり、本件発明は明確であるから、本件発明1~3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、無効理由3には理由がない。
5 まとめ
上記1~4のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1~3には、いずれも理由がない。
第5 結び
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1~3によっては本件発明1~3についての特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-800024