審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許無効審判

2022-800005

保護部材

審判番号
2022-800005
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2018-117200
登録番号
6535792
請求日
2022年02月04日
審決日
2023年04月05日
公報発行日
2024年03月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社 大同機械
  • 【請求人代理人】窪田 英一郎
  • 【請求人代理人】乾 裕介
  • 【請求人代理人】今井 優仁
  • 【請求人代理人】中岡 起代子
  • 【請求人代理人】本阿弥 友子
  • 【請求人代理人】鈴木 佑一郎
  • 【請求人代理人】堀内 一成
  • 【請求人代理人】山田 康太
  • 【請求人代理人】小島 浩嗣
  • 【被請求人】ジー・オー・ピー 株式会社
  • 【被請求人代理人】國分 孝悦
  • 【被請求人代理人】南林 薫
  • 【被請求人代理人】栗川 典幸
  • 【被請求人代理人】関 直方
  • 【被請求人代理人】古野 久美子
  • 【被請求人代理人】小林 幸夫
  • 【被請求人代理人】弓削田 博
  • 【被請求人代理人】神田 秀斗
審判長/審判官
  • 審判長 平瀬 知明
  • 審判官 尾崎 和寛
  • 審判官 平田 信勝
分類
P1113.111-Y (B62B) / P1113.112-Y (B62B) / P1113.113-Y (B62B) / P1113.121-Y (B62B) / P1113.537-Y (B62B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第6535792号発明「保護部材」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許第6535792号は、平成28年11月7日(優先権主張 平成28年8月31日)に出願された特願2016-217337号の一部を新たな特許出願とした特願2018-117200号に係り、令和元年6月7日にその請求項1~7に係る発明について特許権の設定登録が行われた。 本件無効審判は、令和4年2月4日に、無効審判請求人 株式会社大同機械(以下「請求人」という。)により、「本件特許第6535792号の特許請求の範囲の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」として請求がなされたものであって、本件審判の手続の概要は以下のとおりである。 令和4年 2月 4日 本件無効審判請求 令和4年 4月13日 手続補正書(方式) 令和4年 6月24日 審判事件答弁書 令和4年 7月27日付け 審理事項通知書 令和4年 8月22日付け 審理事項通知書(2) 令和4年 8月31日 口頭審理陳述要領書(請求人) 令和4年 8月31日 営業秘密に関する申出書(請求人) 令和4年 8月31日 口頭審理陳述要領書(1)(被請求人) 令和4年 9月 5日付け 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人) 令和4年 9月12日 第1回口頭審理 令和4年 9月12日 上申書(請求人) 令和4年10月 3日 上申書(2)(請求人) 令和4年10月 3日 上申書(被請求人) 令和5年 2月28日 上申書(被請求人) 以下、令和4年4月13日の手続補正により補正された審判請求書を、単に「審判請求書」という。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~7に係る発明は、次のとおりのものである(以下「請求項1~7に係る発明」をそれぞれ「本件発明1~7」ということがある。)。 「【請求項1】 運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される長尺の棒状部材に対して取り付けられる保護部材であって、 使用者が手で掴むグリップ部と、 前記グリップ部の下側に位置し、前記グリップ部の外周面よりも外側に突出させて前記グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部と、 前記棒状部材が挿入される取付穴と、を有し、 前記取付穴に前記棒状部材が挿入される方向から見て、前記保護部は、略円形であることを特徴とする保護部材。 【請求項2】 前記保護部は、円板状であることを特徴とする請求項1に記載の保護部材。 【請求項3】 運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される長尺の棒状部材に対して取り付けられる保護部材であって、 使用者が手で掴むグリップ部と、 前記グリップ部の下側に位置し、前記グリップ部の外周面よりも外側に突出させて前記グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部と、 前記棒状部材が挿入される取付穴と、を有し、 前記保護部は、円板状であることを特徴とする保護部材。 【請求項4】 前記グリップ部は、略円筒状であって、 前記グリップ部の内部に前記取付穴が位置していることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の保護部材。 【請求項5】 前記保護部材が取り付けられた前記棒状部材を前記挿入孔に挿入した前記運搬台車を上側から見て、 前記保護部は、一部の外周縁が前記運搬台車の台車本体部と重なり合わずに前記台車本体部の外側に位置し、残りの外周縁が前記台車本体部と重なり合って位置することを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の保護部材。 【請求項6】 前記保護部は、使用者が前記グリップ部を手で掴んだ場合に、上面が使用者の手の小指と対面することを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の保護部材。 【請求項7】 前記保護部は、使用者が前記グリップ部を手で掴んだ場合であって、前記保護部材が壁に対して接近したときに、前記グリップ部を掴んだ使用者の手よりも先に前記壁に接触するように前記グリップ部の外周面よりも外側に突出していることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の保護部材。」 第3 請求人の主張 請求人は「本件特許第6535792号の特許請求の範囲の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」ことを請求の趣旨とし、証拠方法として甲第1号証、甲第3号証、甲第8号証の1~3及び甲第9号証~甲第16号証等を提出し、次の無効理由を主張する(第1回口頭審理調書「請求人」欄2参照)。 1 無効理由 (1)無効理由1 本件発明1~3、5~7は、甲第8号証の1~3により示された長岡産業株式会社製「台車用安全カバー」に係る発明であるから、特許法第29条第1項第1号又は第2号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 本件発明4は、甲第8号証の1~3により示された長岡産業株式会社製「台車用安全カバー」に係る発明(主たる証拠)と、甲第11、13~16号証に記載された技術的事項(従たる証拠)とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (2)無効理由2 本件発明1~3、5~7は、甲第8号証の1~3により示された長岡産業株式会社製「台車用安全カバー」に係る発明(主たる証拠)と、甲第1、9~12号証に記載された技術的事項(従たる証拠)とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 本件発明4は、甲第8号証の1~3により示された長岡産業株式会社製「台車用安全カバー」に係る発明(主たる証拠)と、甲第1、9~12号証に記載された技術的事項(従たる証拠)と、甲第11、13~16号証に記載された技術的事項(従たる証拠)とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (3)無効理由3 本件発明1~3、5~7は、甲第9号証に記載された発明又は甲第10号証に記載された発明(主たる証拠)と、甲第8号証の1~3により示された長岡産業株式会社製「台車用安全カバー」に係る発明又は甲第3号証に記載された発明(従たる証拠)とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 本件発明4は、甲第9号証に記載された発明又は甲第10号証に記載された発明(主たる証拠)と、甲第8号証の1~3により示された長岡産業株式会社製「台車用安全カバー」に係る発明又は甲第3号証に記載された発明(従たる証拠)と、甲第11、13~16号証に記載された技術的事項(従たる証拠)とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (4)無効理由4 本件発明1~3、5~7は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 本件発明4は、甲第1号証に記載された発明(主たる証拠)と、甲第11、13~16号証に記載された技術的事項(従たる証拠)とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (5)無効理由5 本件特許の請求項1及び3の「周囲の物体」との記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件発明1~7についての特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 2 証拠方法 甲第1号証:特開平11-342848号公報 甲第2号証:(欠番) 甲第3号証:安全スタッフ 第2253号、労働新聞社、平成28年3月1日、第32~38頁、「【特集II】侮るなかれ!台車作業11のリスク 運搬時のケガを防ぐには その<3>-解決編-」(当審注:<3>は丸に数字の3を意味する。)、表紙、奥付 甲第4~7号証:(欠番) 甲第3号証の2:安全スタッフ WEB版、労働新聞社、平成28年3月3日、「【特集2】侮るなかれ!台車作業11のリスク 運搬時のケガを防ぐには その<3>-解決編-」(当審注:<3>は丸に数字の3を意味する。) 甲第8号証の1:長岡産業株式会社への弁護士照会事項(回答) 甲第8号証の2:同上(添付資料1、商品カタログ「台車安全カバー おててまもるくん」) 甲第8号証の3:同上(添付資料2、商品カタログ「台車用安全カバー おててまもるくん」) 甲第8号証の4:同上(回答書の送付状) 甲第8号証の5:同上(回答書の封筒) 甲第9号証:安全スタッフ 第2251号、労働新聞社、平成28年2月1日、第32~36頁、「【特集2】侮るなかれ!台車作業11のリスク 運搬時のケガを防ぐには その<1>-災害分析編-」(当審注:<1>は丸に数字の1を意味する。)、表紙、奥付 甲第9号証の2:安全スタッフ WEB版、労働新聞社、平成28年2月3日、「【特集2】侮るなかれ!台車作業11のリスク 運搬時のケガを防ぐには その<1>-災害分析編-」(当審注:<1>は丸に数字の1を意味する。) 甲第10号証:安全スタッフ 第2252号、労働新聞社、平成28年2月15日、第26~30頁、「【特集2】侮るなかれ!台車作業11のリスク 運搬時のケガを防ぐには その<2>-災害事例編-」(当審注:<2>は丸に数字の2を意味する。)、表紙、奥付 甲第10号証の2:安全スタッフ WEB版、労働新聞社、平成28年2月17日、「【特集2】侮るなかれ!台車作業11のリスク 運搬時のケガを防ぐには その<2>-災害事例編-」(当審注:<2>は丸に数字の2を意味する。) 甲第11号証:特開2001-233218号公報 甲第12号証:意匠登録第1399969号公報 甲第13号証:意匠登録第1369536号公報 甲第14号証:実願昭52-22973号(実開昭53-47255号)のマイクロフィルム 甲第15号証:特開平11-129908号公報 甲第16号証:特開平10-35505号公報 甲第17~32号証:(欠番) 甲第33号証:特開2003-327125号公報 甲第34号証:(欠番) 甲第35号証:長岡産業株式会社による陳述書 甲第36号証:株式会社労働新聞社のホームページ(安全スタッフについての紹介) 甲第37号証:実願昭51-128673号(実開昭53-45656号)のマイクロフィルム 甲第38号証:特開平6-199242号公報 甲第39号証:米国特許第5630601号明細書 甲第40号証:米国特許出願公開第2011/0285113号明細書 甲第41号証:実願平4-62026号(実開平6-18142号)のCD-ROM 甲第42号証:広辞苑第五版,株式会社岩波書店、第2424頁、第2434頁 甲第43号証:意匠登録第1318546号公報 甲第44号証:登録実用新案第3141978号公報 甲第45号証:東京地裁平成29年1月31日判決(平成28年(ワ)第13870号) 甲第46号証の1:商品カタログ「楽輪車」 甲第46号証の2:株式会社大同機械のホームページ(会社概要・沿革) 甲第47号証:意匠登録第1165515号公報 甲第48号証:特開2006-327471号公報 甲第49号証:実開平1-82977号公報 甲第50号証:特開平11-301486号公報 甲第51号証の1:電子メール(長岡産業株式会社から落合康全宛)、令和4年8月29日 甲第51号証の2の1:請求書・請求明細書、平成28年3月30日 甲第51号証の2の2:当座勘定照合表、平成28年4月28日 甲第51号証の3の1:請求書・請求明細書、平成28年8月22日 甲第51号証の3の2:精算書、平成28年 甲第51号証の4:電子メール(長岡産業株式会社から落合康全宛)、令和4年8月27日 甲第52号証:特開2005-88768号公報 甲第53号証:長岡産業株式会社による陳述書、令和4年9月22日 甲第54号証:東京地方裁判所 令和3年(ワ)第30281号 特許権等侵害差止等請求事件 原告第2準備書面、令和4年6月17日付け 甲第55号証:意匠登録第1395331号公報 第4 被請求人の主張 これに対し、被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、」との審決を求めている。 第5 当審の判断 1 提出された証拠に記載された事項及び発明の認定 以下、甲第1号証等を「甲1」等と略記する。また、甲第8号証の1等を「甲8の1」等と略記する。 1-1 審判請求書提出時の証拠 (1)甲1及び甲1発明 甲1には、以下の事項が記載されている。 ア「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、工場や倉庫、物流センター等で荷物の運搬に用いられる台車等の手押し車に取り付けられる衝撃緩衝用部材に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来から、荷物を運搬することが不可欠な工場や倉庫、物流センター等では、荷物運搬用の手押し車は欠くことができないものである。 【0003】ところで、これらの場所では、比較的狭い通路を手押し車で荷物を運搬することが多く、また手押し車は一般に、移動方向の制御が正確には行えないものである。さらに、通路に他の荷物や機器が置かれていることがあり、必ずしも通路の整理整頓が行き届いているとは言えない。 【0004】このため、手押し車を使用する際には、通路の側壁や通路に置かれているこれらの荷物、機器に荷台を衝突させながら移動している。 【0005】しかし、手押し車が移動中に通路の側壁や荷物、機器に衝突すると、これらに傷つけたり、破損したりする虞れがある。また、手押し車に載せている荷物に損傷を与える虞れがある。 【0006】したがって、この種の手押し車には、手押しハンドルや車輪の近辺などに、各種の衝撃緩衝用部材が取り付けられていた。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の手押し車の衝撃緩衝用部材は、その取り付けられた位置から簡単に移動させることができないので、手押し車を使用する通路の状況等に応じて、手押し車や荷物が損傷する部位が異なってきても、その部位に応じた位置に移動させることができず、衝撃緩衝用部材としての役目をなさないことがあるという課題を有していた。 【0008】さらに、上記従来の手押し車の衝撃緩衝用部材は、手押しハンドルや車輪の近辺などに取り付けるのに金属部材が多く使用されていたので、重量が重くなるという課題や、その構造が複雑であるので、手押し車への取り付け作業に手間がかかるという課題を有していた。 【0009】そこで、この発明は、上記従来の課題を解決するものであり、手押し車への取り付け位置を簡単に移動させることができ、しかも重量が軽く、また手押し車への取り付け作業を非常に簡単に行える衝撃緩衝用部材をを提供することを目的としてなされたものである。 【0010】 【課題を解決するための手段】そのため、この発明に係る手押し車の衝撃緩衝用部材は、可撓性材料からなる本体1の中心部に係止孔1aを設け、本体1の側部からこの係止孔1aに行き当たる切欠部2を設けたものとすることにより、前記係止孔1aをこじ開け可能にしている。」 イ「【0015】図に示したように、この発明に係る手押し車の衝撃緩衝用部材は、可撓性材料からなる本体1の中心部に係止孔1aを設け、本体1の側部からこの係止孔1aに行き当たる切欠部2を設けたものとすることにより、前記係止孔1aをこじ開け可能にしている。そして、前記切欠部2の対面する切口2a、2aには、それぞれを密接させておく密接手段3を設けたものとしている。なお、切欠部2は、図1~4、7、8に示したものでは一個所としており、図5、6に示したものでは二個所としている。 【0016】本体1は、ポリウレタンや発泡ポリスチレン等の可撓性樹脂や、天然ゴム、合成ゴムなどからなっており、その形状は特に限定されないが、図1~6に示したような円盤形状や、図7、8に示したような円柱形状とするのが、通路の側壁等に衝突した場合の抵抗が小さく好ましい。 【0017】係止孔1aは、手押し車Hの手押しハンドル4の手押し部4aや立ち上がり部4bに使用しているパイプの直径に応じて、その直径より少し小さい直径としている。」 ウ「【0022】以上のような構成としたこの発明に係る手押し車の衝撃緩衝用部材は、図2、8に示したように、切欠部2に手の指を差し込むなどして係止孔1aをこじ開けることにより、図9、10に示したように、手押し車Hの手押しハンドル4の立ち上がり部4bの下部に取り付けたり、図11に示したように、手押し車Hの手押しハンドル4の立ち上がり部4bの上部に取り付けたり、図12に示したように、手押し車Hの手押しハンドル4の立ち上がり部4bの中間部に取り付けたりすることができる。しかも、工具等を使用することなしに、手で擦り上げたり擦り下ろしたりすることにより、手押し車Hを使用する通路の状況等に応じて、手押し車Hや荷物が損傷しやすい部位に応じた位置に移動させることができる。」 エ「【図1】 [図:0001407423000001.jpg] 」 オ「【図4】 [図:0001407423000002.jpg] 」 カ「【図11】 [図:0001407423000003.jpg] 」 キ 摘記事項イの「手押し部4a」及び「立ち上がり部4b」は、摘記事項カによれば、それぞれ、「水平方向に沿った」もの、及び、「上下方向に沿った」ものであることが看取できる。そして、摘記事項カによれば、「荷物運搬用」(摘記事項ア)の手押し車Hは、上側の荷台と下側の荷台の上下二段の荷台を有しており、「手押し部4a」は、その両端側が湾曲して「下向きに延び」ており、「荷物運搬用」(摘記事項ア)の手押し車Hの上側の荷台を貫通して、更に下向きに延長した部分が、「立ち上がり部4b」に該当すると認められる。 ク 摘記事項イの「手押し車Hの手押しハンドル4の手押し部4aや立ち上がり部4bに使用しているパイプ」との記載から、「手押しハンドル4」は「パイプからなる」ものであると認められる。また、当該「手押しハンドル4」は、認定事項キによれば、その形態は「コ字状」であると認められる。 ケ 摘記事項カによれば、認定事項キの「荷物運搬用の手押し車H」の下側の荷台たる「台車本体部」は、下に面する側に取り付けられたキャスターたる「走行部」を有することが看取できる。 コ 摘記事項イの「手押し部4a」は、手押し車Hを移動させる際に、使用者が手で掴んで押す部分であることは明らかである。また、摘記事項イの「立ち上がり部4b」は、摘記事項カによれば、上側の荷台及び衝撃緩衝用部材を取り付ける部分であることが看取できる。手押しハンドル4を構成する部分における、かかる機能に照らせば、手押しハンドル4が、認定事項ケの「荷物運搬用の手押し車H」に「固定」されているものと認められる。 サ 摘記事項ウ、カ及び認定事項キ、ク、コから、摘記事項イの「衝撃緩衝用部材」は「荷物運搬用の手押し車に固定され、水平方向に沿った手押し部4aと、水平方向に沿った手押し部4aの両端から下向きに延びる上下方向に沿った立ち上がり部4bと、を有するコ字状のパイプからなる手押しハンドル4の上下方向に沿った立ち上がり部4bの上部に対して取り付けられる」と認められる。 シ 摘記事項イの「衝撃緩衝用部材」は、摘記事項イから、「本体1」を有すると認められる。また、摘記事項イの「衝撃緩衝用部材」は「衝撃緩衝用」であるところ、摘記事項イの「・・・衝撃緩衝用部材は、可撓性材料からなる本体1の中心部に係止孔1aを設け、本体1の側部からこの係止孔1aに行き当たる切欠部2を設けたものとすることにより、前記係止孔1aをこじ開け可能にしている。」との記載及び「本体1は、ポリウレタンや発泡ポリスチレン等の可撓性樹脂や、天然ゴム、合成ゴムなどからなっており、その形状は特に限定されないが、図1~6に示したような円盤形状や、図7、8に示したような円柱形状とするのが、通路の側壁等に衝突した場合の抵抗が小さく好ましい。」との記載に照らせば、摘記事項イの「衝撃緩衝用部材」の「本体1」は、「通路の側壁等との衝突を緩衝する」と認められる。 ス 摘記事項イの「衝撃緩衝用部材」は、摘記事項イから、「係止孔1a」を有すると認められる。また、摘記事項イの「・・・衝撃緩衝用部材は、可撓性材料からなる本体1の中心部に係止孔1aを設け、本体1の側部からこの係止孔1aに行き当たる切欠部2を設けたものとすることにより、前記係止孔1aをこじ開け可能にしている。」との記載、摘記事項エ、オ及び認定事項サから、摘記事項イの「衝撃緩衝用部材」の「係止孔1a」は、「本体1の側部から切欠部2を通じて立ち上がり部4bが挿入される」と認められる。 セ 摘記事項イの「本体1」は、摘記事項イの「本体1は、ポリウレタンや発泡ポリスチレン等の可撓性樹脂や、天然ゴム、合成ゴムなどからなっており、その形状は特に限定されないが、図1~6に示したような円盤形状や、図7、8に示したような円柱形状とするのが、通路の側壁等に衝突した場合の抵抗が小さく好ましい。」との記載、摘記事項カ及び認定事項スから、「本体1の側部から切欠部2を通じて立ち上がり部4bが挿入される方向と直交する方向であって、係止孔1aを向く方向から見て」「略円形である」と認められる。 以上のア~カの摘記事項、及び、キ~セの認定事項から、甲1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明」という。)。 「荷物運搬用の手押し車に固定され、水平方向に沿った手押し部4aと、水平方向に沿った手押し部4aの両端から下向きに延びる上下方向に沿った立ち上がり部4bと、を有するコ字状のパイプからなる手押しハンドル4の上下方向に沿った立ち上がり部4bの上部に対して取り付けられる衝撃緩衝用部材であって、 通路の側壁等との衝突を緩衝する本体1と、 本体1の側部から切欠部2を通じて立ち上がり部4bが挿入される係止孔1aと、を有し、 本体1の側部から切欠部2を通じて立ち上がり部4bが挿入される方向と直交する方向であって、係止孔1aを向く方向から見て、本体1は、略円形である衝撃緩衝用部材。」 なお、請求人は、甲1発明(審理事項通知書の第1の3(4)[甲1合議体発明]と概ね同じである。)について、「衝撃緩衝用部材」のほかに「使用者が手で掴む部分」も発明の内容とするように認定すべきである旨主張している(口頭審理陳述要領書第34頁第16行~第36頁第4行)。かかる主張に対する当審の判断は、下記3(4)ア(「甲1発明の「衝撃緩衝用部材」と本件発明1の「保護部材」との対応関係」)において示したとおりである。 (2)甲3及び甲3発明 甲3には、以下の事項が記載されている。 ア「安全・衛生・教育・保険の総合実務誌」(表紙) イ「特集II 侮るなかれ! 台車作業11のリスク その<3>(当審注:<3>は丸に数字の1を意味する。)-解決編- 日本自動車工業会 林 泰博」(表紙) ウ「前回の「災害事例編」では、台車作業に関連する災害事例と対策の視点を見ていった。今回は締め括りの「解決編」として、「環境」「基準」「教育」という3つの方向から、11種類のリスクの低減方法を説明してもらう。床面の改善によって転倒リスクを低減させるとともに、安定性や操作性の見方、車輪の選び方、切創防止ガードなど、危険の少ない台車の基準や取扱い方法を示している。」(第32頁中段) エ「前回で示したように、台車に関連する災害事例を分析することで、災害リスクについて具体的な対策が見えてきた(図1)。 環境による要因は、「環境確認」・・・・・・運行ルート・床面・障害物・視界 台車構造による要因は、「台車基準」・・・・・・安定性・操作性・耐荷重 取扱上の要因は、「台車教育」・・・・・・操作方法・荷の乗せ方・回避方法(図2)」(第32頁下段左欄第2~10行) オ「図1 [図:0001407423000004.jpg] 」(第32頁) カ「図2 [図:0001407423000005.jpg] 」(第33頁) キ「台車の持ち手にはガードを設置 次は台車の構造による要因を解決するためにAグループ内で運用している台車基準を紹介する。図3(34ページ)は台車を持つ位置の表示だ。これは手指挟まれ防止のために、持つ位置の表示を基準化している。また鍔(つば)状のものを取っ手部に装着し、挟まれ防止対策をしている。写真2(34ページ)は手押台車の取っ手部分ガードの実施事例。鍔状の挟まれ防止ガードは、上下に分割する樹脂製のパーツで構成され、取り付けるようになっている。ガードを運用後は災害防止の効果が上がった。」(第33頁左欄第1行~右欄末行) ク「図3 [図:0001407423000006.jpg] 」(第34頁) ケ「写真2 [図:0001407423000007.jpg] 」(第34頁) コ「二〇一六年三月一日号 通巻二二五三(月二回)発行」(奥付) サ 摘記事項クの「取っ手の高さは押しやすさを考慮し、900mm程度に設置する。」との記載及び「積荷との干渉を防止するために、支柱と取っ手間の距離を80mm以上確保する。」との記載に照らせば、摘記事項クにおける台車の正面図及び側面図から、「水平方向に沿った取っ手」と、「取っ手の両端から下向きに延びる上下方向に沿った支柱」が看取できる。 シ 認定事項サに照らすと、摘記事項ク、ケから、「水平方向に沿った取っ手」及び「取っ手の両端から下向きに延びる上下方向に沿った支柱」とは、全体として「コ字状のパイプ」を形成していることが看取できる。 ス 認定事項シの「コ字状のパイプ」は、摘記事項キの「台車」を移動させる際に、作業者が手で掴んで押す部分であることは明らかである。かかる機能に照らせば、「コ字状のパイプ」が、摘記事項キの「台車」に「固定」されているものと認められる。 セ 摘記事項キの「図3(34ページ)は台車を持つ位置の表示だ。これは手指挟まれ防止のために、持つ位置の表示を基準化している。また鍔(つば)状のものを取っ手部に装着し、挟まれ防止対策をしている。写真2(34ページ)は手押台車の取っ手部分ガードの実施事例。鍔状の挟まれ防止ガードは、上下に分割する樹脂製のパーツで構成され、取り付けるようになっている。」との記載及び認定事項シに照らせば、摘記事項ク、ケから、「一対の鍔状ガード」は、「上下に分割する樹脂製のパーツで構成され」「水平方向に沿った取っ手」に装着されるものと認められる。 ソ 認定事項シの「コ字状のパイプ」は、「一対の鍔状ガード」を「水平方向に沿った取っ手に装着され」(認定事項セ)たものであるから、「コ字状のパイプ」と「一対の鍔状ガード」を併せた構成としての「手押部材」を観念できる。 タ 摘記事項クの「←台車幅を超えない」との記載、摘記事項クにおける台車の正面図及び側面図、及び認定事項セから、「一対の鍔状ガード」は、水平方向に沿った取っ手における、台車幅を超えない位置に装着されると認められる。 チ 摘記事項クの「100φ」との記載に照らせば、摘記事項クにおける「鍔状ガード」の拡大図から、「鍔状ガード」が、外径寸法を100mmとしていることが看取できる。 ツ 摘記事項クにおける「鍔状ガード」の拡大図には、「鍔状ガード」に対する吹き出し中に「赤色エンドストッパー」と記載されているところ、「エンドストッパー」としての機能を考慮すると、「鍔状ガード」は、「取っ手を持つ位置」の末端に取り付けられ、手が「取っ手を持つ位置」の末端を超えて移動することを規制して手が取っ手から脱落することを防止する機能を有すると認められる。 テ 「鍔状ガード」は、「取っ手を持つ位置」の末端に取り付けられ、手が「取っ手を持つ位置」の末端を超えて移動することを規制して手が取っ手から脱落することを防止する機能を有するため(認定事項ツ)、「一対の鍔状ガード」は、取っ手における「一対の鍔状ガード」の内側部分が「取っ手を持つ位置」であることを示すといえる。そうすると、摘記事項クの「台車取り廻し作業で、設備やパレット等との間で手指の挟まれることを防止するため、取っ手の取り付けと正しい持ち手位置の表示を行う。」との記載に照らせば、「一対の鍔状ガード」は、取っ手における「一対の鍔状ガード」の内側部分が「取っ手を持つ位置」であることを表示するといえる。 ト 摘記事項キの「また鍔(つば)状のものを取っ手部に装着し、挟まれ防止対策をしている。」との記載、摘記事項クの「台車取り廻し作業で、設備やパレット等との間で手指の挟まれることを防止するため、取っ手の取り付けと正しい持ち手位置の表示を行う。」及び摘記事項ケから、「一対の鍔状ガード」は、取っ手を掴んだ両手が周囲の物体に接触しないようにガードするものであると認められる。 以上のア~コの摘記事項、及び、サ~トの認定事項から、甲3には、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲3発明」という。)。 「手押台車に固定されたコ字状のパイプと、一対の鍔状ガードとを有する、手押部材であって、コ字状のパイプは、水平方向に沿った取っ手と、取っ手の両端から下向きに延びる上下方向に沿った支柱とからなり、一対の鍔状ガードは、上下に分割する樹脂製のパーツで構成され、水平方向に沿った取っ手における、台車幅を超えない位置に装着されるとともに、外径寸法を100mmとし、台車の取っ手を持つ位置を表示し、かつ、取っ手を掴んだ両手が周囲の物体に接触しないようにガードするものである、手押部材。」 なお、請求人は、甲3発明(審理事項通知書の第1の3(5)の[甲3合議体発明]と概ね同じ。)については、「特に争うものではない」としている(口頭審理陳述要領書第34頁第13~15行)。 (3)甲8の1~3及び甲8発明 甲8の1~3で示される長岡産業株式会社製「台車用安全カバー」が、本件特許に係る原出願の優先日(平成28年8月31日)前に公然知られた又は公然実施されたものであるか(いわゆる公知・公用性)については当事者間で争いがあるところ(審判請求書第32頁第1行~第35頁第20行、答弁書第6頁第16行~第8頁第13行、請求人の口頭審理陳述要領書第55頁第1行~第68頁第5行等)、かかる争点は、下記2で検討することとする。以下では、当該製品に係る発明の認定を行う。 (3-1)甲8の1(弁護士照会回答書) 甲8の1には、以下の事項が記載されている。 ア「8 添付資料1に記載の「台車安全カバー おててまもるくん」、添付資料2に記載の「台車用安全カバー おててまもるくん」は、いずれも、台車のハンドル部分にとりつけて、台車を持つ作業員の手が台車の周囲の物体に接触しないようにして手が挟まれることを防止するために用いる製品と理解していますが、当該理解で正しいでしょうか。」(第3頁・照会事項8) イ「はい、正しいです。」(第3頁・照会事項8に対する回答の箇所) ウ「9 貴社の「台車安全カバー おててまもるくん」(添付資料1)、「台車用安全カバー おててまもるくん」(添付資料2)の商品のサイズはそれぞれ添付資料1および2に記載の通りでしょうか。」(第3頁・照会事項9) エ「はい、その通りです。」(第3頁・照会事項9に対する回答の箇所) オ「10 貴社の「台車安全カバー おててまもるくん」(添付資料1)、「台車用安全カバー おててまもるくん」(添付資料2)の素材はそれぞれ何でしょうか。」(第3頁・照会事項10) カ「添付資料1及び2に記載の商品は全て、本体部分が発泡ポリエチレンの素材で、塩化ビニルのシートが外周に巻かれています。」(第3頁・照会事項10に対する回答の箇所) キ「11 貴社の「台車安全カバー おててまもるくん」(添付資料1)にある「おててまもるくん(40t)と「台車用安全カバー おててまもるくん」(添付資料2)の厚み、外径、内径、長さについて同一の寸法が記載されています。「おててまもるくん(40t)」(添付資料1)と「台車用安全カバー おててまもるくん」(添付資料2)の商品は同一のサイズの商品でしょうか。さらに、同一素材の商品でしょうか。」(第4頁・照会事項11) ク「はい、同一のサイズで同一の素材の商品です。」(第4頁・照会事項11に対する回答の箇所) ケ「12 貴社は、添付資料2の「台車用安全カバー おててまもるくん」の販売開始前に、同様の規格の商品を販売したことがありますか。もしあれば、その商品の販売開始時期とその商品を販売した際の名称を教えてください。」(第4頁・照会事項12) コ「はい、「台車用安全カバー おててまもるくん」という商品名で商品を販売する前に、同一規格の商品を販売しました。その商品の販売開始時期は2014年2月26日で、「パイプカバー(安全カバー)」という名称で販売した実績がございます。」(第4頁・照会事項12に対する回答の箇所) サ「13 12で回答いただいた貴社の商品について、貴社は2016年8月31日までに貴社の顧客に販売した実績はありますか。」(第4頁・照会事項13) シ「はい、当社の顧客1社に販売した実績がございます。」(第4頁・照会事項13に対する回答の箇所) ス「14 12で回答いただいた貴社の商品のサイズと素材は、添付資料2に記載の「台車用安全カバー おててまもるくん」と同一でしょうか。もし違っているのでしたら、違いを教えて下さい。」(第5頁・照会事項14) セ「販売実績のある「パイプカバー(安全カバー)」のサイズと素材は、添付資料2に記載の「台車用安全カバー おててまもるくん」と同一です。」(第5頁・照会事項14に対する回答の箇所) ソ「15 12で回答いただいた貴社の商品の用途と目的は、添付資料2に記載の「台車用安全カバー おててまもるくん」と同一でしょうか。」(第5頁・照会事項15) タ「はい、同一です。」(第5頁・照会事項15に対する回答の箇所) (3-2)甲8の2(甲8の1添付資料1) 甲8の2には、以下の記載がある。 チ「 [図:0001407423000008.jpg] 」 (3-3)甲8の3(甲8の1添付資料2) 甲8の3には、以下の記載がある。 ツ「 [図:0001407423000009.jpg] 」 テ「 [図:0001407423000010.jpg] 」 ト「 [図:0001407423000011.jpg] 」 (3-4)認定事項 甲8の1~3で示される長岡産業株式会社製の商品は、上記(3-1)のとおり、商品名「台車安全カバー おててまもるくん」(甲8の1添付資料1。以下「甲8商品1」という。)、商品名「台車用安全カバー おててまもるくん」(甲8の1添付資料2。以下「甲8商品2」という。)、及び、商品名「パイプカバー(安全カバー)」(甲8の1の回答12。以下「甲8商品3」という。)の3つである。 このうち、無効理由1~3に係る「甲第8号証の1~3により示された長岡産業株式会社製「台車用安全カバー」」とは、甲8商品2及び3が該当する(審判請求書第32頁第3~9行)。 そこで、甲8商品1との関係を踏まえながら、以下で、甲8商品2及び3の構成について検討する。 ナ 摘記事項ア、イから、甲8商品1及び2は、台車のハンドル部分に取り付けて、台車を持つ作業員の手が台車の周囲の物体に接触しないようにして手が挟まれることを防止するという、同じ用途の製品であると認められる。 ニ 摘記事項ウ~クから、甲8商品1及び2は、同一素材のものであり、甲8商品1には、甲8商品2と同一のサイズの商品があると認められる。 ヌ 摘記事項チの「取り付けはとても簡単。ハンドルのカーブ部分に挟み込み、テープをはがして包むだけ!」との記載、摘記事項ツ及び認定事項ナ、ニから、甲8商品2は、甲8商品1と同様に、ハンドルの「カーブ部分」「に対して取り付けられる」ものであると認められる。 ネ 摘記事項ツにおける「Before」との標題の付いた写真及び「After」との標題の付いた写真、並びに技術常識から、甲8商品2が取り付けられる「カーブ部分」を有する「ハンドル」は「コ字状」であると認められる。 ノ 認定事項ヌ、ネに照らせば、摘記事項ツにおける「Before」との標題の付いた写真及び「After」との標題の付いた写真から、甲8商品2が、「コ字状」の「ハンドル」を、甲8商品2が取り付けられる「カーブ部分」と、「カーブ部分」の一方側に延びる「水平部分」と、「カーブ部分」の他方側に延びる部分と、に区分している態様が看取できる。 ハ 認定事項ノに照らせば、摘記事項ツにおける「Before」との標題の付いた写真及び「After」との標題の付いた写真から、「コ字状」の「ハンドル」において、甲8商品2が取り付けられる「カーブ部分」の一方側に延びる「水平部分」を作業員が掴んでいる様子が看取でき、甲8商品2が取り付けられる「カーブ部分」の他方側に延びる部分は「上下方向に沿」って「カーブ部分」から「下向きに延びる」ことが看取できる。 ヒ 「コ字状」の「ハンドル」における「カーブ部分」の一方側に延びる「水平部分」は、甲8商品2によって区分された部分であり(認定事項ノ)、当該区分された部分を、作業員が掴んでいるのであるから(認定事項ハ)、当該区分された部分は、作業員が掴む「グリップ部」として観念できる。 フ 認定事項ネ~ヒに照らせば、摘記事項ツにおける「Before」との標題の付いた写真及び「After」との標題の付いた写真から、「コ字状」の「ハンドル」は、作業員が掴む「グリップ部である水平部分」と、「水平部分の両端から延びるカーブ部分」と、「水平部分の両端からカーブ部分を介して下向きに延びる上下方向に沿った部分」と、を有するものと認められる。 ヘ 甲8商品2は、名称が「パイプカバー(安全カバー)」である甲8商品3とサイズと素材及び用途と目的が同一であり、同一規格のものである(摘記事項ケ、コ、ス~タ)。 ホ 摘記事項ア、イ及び摘記事項ツの「台車運搬時の安全対策品」との記載に照らせば、甲8商品2が取り付けられる「ハンドル」が、台車運搬時に作業員が掴むものであることは明らかである。そして、かかる機能に照らせば、甲8商品2が取り付けられる「ハンドル」は、台車に固定されていると認められる。 マ 摘記事項ウ、エ、トから、甲8商品2は、寸法を外径106mm、内径26mm、長さ100mm及び厚み40mmとした本体を有すると認められる。 ミ 甲8商品2が、台車のハンドル部分に取り付けて、台車を持つ作業員の手が台車の周囲の物体に接触しないようにして手が挟まれることを防止するものであることに照らせば(認定事項ナ)、摘記事項ツにおける「Before」との標題の付いた写真及び「After」との標題の付いた写真から、甲8商品2の本体は、グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないようにするものであると認められる。 ム 認定事項マに照らせば、摘記事項テから、甲8商品2は、本体の外周部からスリットを通じてハンドルが挿入される取付穴を有することが看取できる。 メ 摘記事項テ、ト及び認定事項マ、ムから、甲8商品2は、本体の外周部からスリットを通じてハンドルが挿入される方向と直交する方向であって、取付穴を向く方向から見て、本体は、略円形であると認められる。 (3-5)甲8発明 以上のア~トの摘記事項、及び、ナ~メの認定事項から、無効理由1~3に係る甲8商品2及び3のうち、甲8商品2の構成について、次の発明が認定できる(以下「甲8発明」と言う。)。 「台車に固定され、グリップ部である水平部分と、水平部分の両端から延びるカーブ部分と、水平部分の両端からカーブ部分を介して下向きに延びる上下方向に沿った部分と、を有する、コ字状のハンドルのカーブ部分に対して取り付けられる台車用安全カバーであって、 寸法を外径106mm、内径26mm、長さ100mm及び厚み40mmとし、グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないようにする本体と、 本体の外周部からスリットを通じてハンドルが挿入される取付穴と、を有し、 本体の外周部からスリットを通じてハンドルが挿入される方向と直交する方向であって、取付穴を向く方向から見て、本体は、略円形である台車用安全カバー。」 なお、請求人は、甲8発明(審理事項通知書の第1の3(1)[甲8合議体発明]と概ね同じ。)について、「台車用安全カバー」のほかに「使用者が手で掴む部分」も発明の内容とするように認定すべきである旨主張している(口頭審理陳述要領書第34頁第16行~第36頁第4行)。かかる主張に対する当審の判断は、下記3(1)ア(「甲8発明の「台車用安全カバー」と本件発明1の「保護部材」との対応関係」)において示したとおりである。 (4)甲9及び甲9発明 甲9には、以下の事項が記載されている。 ア「安全・衛生・教育・保険の総合実務誌」(表紙) イ「特集II 侮るなかれ! 台車作業11のリスク その<1>(当審注:<1>は丸に数字の1を意味する。)-災害分析編- 日本自動車工業会 林 泰博」(表紙) ウ「身近な道具としてさまざまな場所で使われている台車。自動車製造の現場では、最近リフトレス化が進み、台車作業が増えているという。日本自動車工業会安全衛生部会Aグループ研究会では、この台車作業のリスクに注目。過去の災害を分析し、11種類のリスクを抽出した。台車での運搬作業で手・指・足などを挟まれる災害が多く、なかには骨折など重篤な災害も発生していることから、災害発生のポイントを押さえ、適切な対策を講じることが大切になる。全3回にわたって、ヤマハ発動機(株)の林泰博主事に台車災害の分析結果とリスクを解説してもらう。」(第32頁中段) エ「台車は身近で扱いやすく多くの職場で使用されているが、挟んだり、ぶつけるなどの災害が繰り返し発生している(写真2,3,4)。赤チン程度の軽微な災害が大半の台車災害だが、稀に重篤な災害が発生しており、侮ることができない。どの会社でも少なからず心当たりがあるのではないだろうか?」(第34頁右欄第13~20行) オ「まずは台車災害の特性を知るために、台車作業を想定したリスクアセスメントをAグループ内で実施した。台車と荷の条件・搬送経路の条件およびリスクアセスメントの結果の一部を示す(図4:36ページ)。」(第35頁右欄第4~8行) カ「次回は実際に発生した災害事例に照らしながら、これら11のリスクについて具体的にみていく。」(第36頁右欄下から3行~末行) キ「写真3 [図:0001407423000012.jpg] 」(第34頁) ク「図4 [図:0001407423000013.jpg] 」(第36頁) ケ「二〇一六年二月一日号 通巻二二五一号(月二回)発行」(奥付) コ 摘記事項ウの「台車」について、摘記事項キから「枠状フレーム」が看取でき、摘記事項クから当該「枠状フレーム」につき「直方体」が看取でき、摘記事項キ、クから「枠状フレーム」は運搬物を積載することが看取できる。 サ 摘記事項クには、台車の正面図及び側面図(「台車と荷の条件」との標題が付された図面)が記載されていると認められるところ、当該正面図と側面図から、台車の直方体の「枠状フレーム」における、「台車の四隅に位置する上下方向に沿った長尺状の部材」が看取できる。 シ 摘記事項キから、「上下方向に沿った長尺状の部材」には、作業者が掴んでいる部分が存在することが看取できる。また、「上下方向に沿った長尺状の部材」が台車の直方体の「枠状フレーム」の一部であることを考慮すると(認定事項サ)、「上下方向に沿った長尺状の部材」は、摘記事項キの写真3において作業者が掴んでいる部分を含め、いずれの部分でも、手で掴むことができると認められる。 以上のア~ケの摘記事項、及び、コ~シの認定事項から、甲9には、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲9発明」という。)。 「台車の直方体の枠状フレームにおける、台車の四隅に位置する上下方向に沿った長尺状の部材であって、 使用者が手で掴むことができる部分を有する、長尺状の部材。」 請求人は、甲9発明(審理事項通知書の第1の3(2)の[甲9合議体発明]として示した。)について、甲33(摘記事項は下記1-2(12)参照)には、「台車の直方体の枠状フレームにおける、台車の四隅に位置する上下方向に沿った長尺状の部材」が、台車の四隅に位置する挿入孔に挿入されることが記載されており、甲9に記載されたタイプの台車においては、挿入孔が設けられていることを当業者は当然に理解するのであるから、甲9発明において、「台車の四隅に位置する上下方向に沿った長尺状の部材」は、台車の四隅に位置する挿入孔に挿入されることを認定すべきであると主張する(口頭審理陳述要領書第36頁第5行~第37頁下から2行)。 しかしながら、甲9の摘記事項キ、クから、台車における直方体の枠状フレームの具体的な取付態様が看取できず、また、甲33から認定できる事項は、甲9発明の認定とは関係はない。よって、請求人の上記主張は採用できない。 (5)甲10及び甲10発明 甲10には、以下の事項が記載されている。 ア「安全・衛生・教育・保険の総合実務誌」(表紙) イ「特集II 侮るなかれ! 台車作業11のリスク その<2>(当審注:<2>は丸に数字の2を意味する。)-災害事例編- 日本自動車工業会 林 泰博」(表紙) ウ「日本自動車工業会の安全衛生部Aグループは、台車をテーマにした労働災害の研究を進めてきた。過去の災害を分析し、リスクアセスメントを行い、災害の原因を11種類のリスクとして分類することができた。災害分析編に引き続き、災害事例編として、作業にどのようなリスクが潜んでいたのか、対策の視点はどこにあったのかを具体的な災害事例を挙げながら林泰博委員に解説してもらう。路面の凹凸、ハンマーロック、台車移動時の視界不良など、気をつけるべき点は多い。」(第26頁中段) エ「災害事例<7>(当審注:<7>は丸に数字の7を意味する。以下同様。):視界不良による災害 ・災害の概要・・・・・・作業車Aは台車を空台車レーンに入れるため、台車を後方に方向転換をした。その際に後方から来た作業車Bの台車との間で右手首をぶつけて負傷した。 ・視点の視点・・・・・・工程内を通過する運搬作業者に対して運行ルールを決め運用徹底とした(一方通行が望ましい)。」(第28頁右欄下から4行~第29頁左欄第4行) オ「災害事例<7> [図:0001407423000014.jpg] 」(第29頁) カ「二〇一六年二月一五日号 通巻二二五二号(月二回)発行」(奥付) キ 摘記事項オから、摘記事項エの「作業車Bの台車」が「枠状フレーム」から構成されることが看取できる。 ク 甲9の上記(4)の摘記事項ア、イ、ウ、カ、ケ及び甲10の摘記事項ア、イ、ウ、カから、甲9と甲10は連番の実務誌であり、甲9には「台車作業11のリスク」の「災害分析編」が特集され、甲10には「台車作業11のリスク」の「災害事例編」が特集されていると認められる。 そして、甲9の上記(4)の摘記事項キには、「写真3 専用台車同士の隙間で指を挟まれ」と記載されているところ、甲9の上記(4)の摘記事項オの「まずは台車災害の特性を知るために、台車作業を想定したリスクアセスメントをAグループ内で実施した。」との記載に照らせば、当該摘記事項キの写真は、台車同士の間で指を挟まれる災害を示すものと認められる。 また、甲10の摘記事項オの写真は、摘記事項エに照らせば、台車同士の間で指を挟まれる災害を示すものと認められる。そうすると、甲9の上記(4)の摘記事項キの写真と甲10の摘記事項オの写真は、いずれも、台車同士の間で指を挟まれる災害を示すものであると認められる。そして、両者の写真を対比すれば、甲9の台車と甲10の台車は、大きさや運搬物の運搬態様で異なるものの、共に運搬物を運搬する「枠状フレーム」から構成されるものであり、形態が類似していると認められる。 そうすると、甲10には台車の正面図と側面図は記載されていないものの、甲9の上記(4)の摘記事項クには台車の正面図と側面図が記載されており、当該摘記事項クの記載に照らせば、甲10の台車についても、「枠状フレーム」は「直方体」であり、台車の直方体の「枠状フレーム」には「台車の四隅に位置する上下方向に沿った長尺状の部材」が存在すると認められる。 ケ 摘記事項オから、「上下方向に沿った長尺状の部材」には、作業者が掴んでいる部分が存在することが看取できる。また、「上下方向に沿った長尺状の部材」が台車の直方体の枠状フレームの一部であることを考慮すると(認定事項ク)、「上下方向に沿った長尺状の部材」は、摘記事項オの写真において作業者が掴んでいる部分を含め、いずれの部分でも、手で掴むことができると認められる。 以上のア~カの摘記事項、及び、キ~ケの認定事項から、甲10には、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲10発明」という。)。 「台車の直方体の枠状フレームにおける、台車の四隅に位置する上下方向に沿った長尺状の部材であって、 使用者が手で掴むことができる部分を有する、長尺状の部材。」 請求人は、甲10発明(審理事項通知書の第1の3(3)の[甲10合議体発明]として示した。)について、甲10の摘記事項オの写真からは、棒状部材を備える孔を備えた部材が存在することが確認でき、また、甲33(摘記事項は下記1-2(12)参照)には、「台車の直方体の枠状フレームにおける、台車の四隅に位置する上下方向に沿った長尺状の部材」が、台車の四隅に位置する挿入孔に挿入されることが記載されており、甲10に記載されたタイプの台車においては、挿入孔が設けられていることを当業者は当然に理解するのであるから、甲10発明において、「台車の四隅に位置する上下方向に沿った長尺状の部材」は、台車の四隅に位置する挿入孔に挿入されることを認定すべきであると主張する(口頭審理陳述要領書第36頁第5行~第37頁下から2行)。 しかしながら、甲10の摘記事項オの写真では、台車における直方体の枠状フレームの取付部分の画像が不鮮明であるため、その具体的な取付態様を確認することができず、また、甲33から認定できる事項は、甲10発明の認定とは関係はない。よって、請求人の上記主張は採用できない。 (6)甲11 甲11には、以下の事項が記載されている。 ア「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、四角い台車を有し、前部と後部の裏面中央に前後で一対をなす回転自在型キャスターを取り付け、両側部の裏面中央に左右で一対をなす固定型キャスターを取り付けたハンドカートに関し、キャスターを菱形に配置した台車の角部が、壁等に衝突しそうになったときの危険を回避できるようにしたことを特長とするものである。」 イ「【0009】 【実施例】以下に、本考案の実施例を図面について説明する。図において、1は、前後に長い四角な台車、2は、台車1の裏面の前部と後部の中央にそれぞれ取り付けられて前後で一対をなす軸線方向の可変な回転自在型のキャスター、3は、裏面の両側部の中央にそれぞれ取り付けられて左右で一対をなす固定型のキャスター、4は、台車1の四隅からそれぞれ垂設した支軸、5は、各支軸4に軸受6を介して回転自在に取り付けた円板型の緩衝ホイールである。」 ウ「【0012】上記各支軸4にそれぞれ回転自在に取り付けた緩衝ホイール5は、いうまでもなく台車1の角部よりも先に周縁が出るようにして取り付けられている。したがって、台車1が壁などの障害物に接近した場合には、それらの障害物との衝突が緩衝ホイール5の当接と回転とによって緩衝されるとともに、台車1の走行を継続できる。 【0013】台車1は、上面の四隅に、適宜の高さに設けた横枠7によって互いに前後左右に連結された支柱8を立設し、各支柱8の上端部をそれぞれ手動操向用のグリップハンドル9として用いられるように備えている。四つ角に立設されたこのグリップハンドル9は、どの方向からも把持して台車1を走行操作することができる。したがって、一般の手押し車式カートのように押し方向が後部に限られることがなく、四方からの台車操作ができ、本発明に係る台車1の回転半径が小さいという特性をよりいっそう発揮させることができる。」 エ「【図1】 [図:0001407423000015.jpg] 」 (7)甲12 甲12には、以下の事項が記載されている。 ア「(55)【意匠に係る物品の説明】本願意匠に係る物品は荷物を載置して手押し等で運搬する運搬台車に関するもので、フレーム上にベースを取付けた平面長方形の台車本体の長手方向の左右両側にそれぞれ縦列に3輪ずつキャスターを独自の並び方で設けた。また、台車本体の四隅のコーナー部に手押し棒が挿着される挿入孔を形成し、この挿入孔に手押し棒を着脱自在に立設した。」 イ「【斜視図】 [図:0001407423000016.jpg] 」 (8)甲13 甲13には、以下の事項が記載されている。 ア「(54)意匠に係る物品 台車」 イ「【斜視図】 [図:0001407423000017.jpg] 」 ウ「【C-C部拡大断面図】 [図:0001407423000018.jpg] 」 (9)甲14 甲14には、以下の事項が記載されている。 ア「2 実用新案登録請求の範囲 (1)フレームと、このフレームの下部両側に軸架された移動用の車輪と、上記フレームの前面に設けられた品物の支持手段と、上記フレームの上部に設けられたハンドルと、このハンドルの端部に取付けられ把持部の外側に保護枠を有する把手体とを備えたことを特徴とする運搬車。」(第1頁第4~11行) イ「・・・さらに、上記両側の案内杆(11)の上端部から後上方に向つてハンドル(14)を一体的に延設し、この両側のハンドル(14)の上端部に把手体(26)を取付ける。この把手体(26)は、ハンドル(14)に嵌合する筒状の把持部(27)の外側上下端部間に彎曲した保護枠(28)を設ける。」(第3頁第13行~第4頁第3行) ウ「しかして、上述のような運搬作業の際、たとえば壁面近くに位置した場合、第3図(当審注:「第」は略字体)に示すように、ハンドル(14)の把手体(26)における保護枠(28)が壁面(29)に接し、作業者の手が直接壁面(29)をこすつたりすることを防止する。」(第8頁第1~5行) エ「第1図 [図:0001407423000019.jpg] 」 オ「第3図 [図:0001407423000020.jpg] 」 (10)甲15 甲15には、以下の事項が記載されている。 ア「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は荷物運搬用の台車に関し、運搬し易く、しかも車輪の数も種々変えられるものである。」 イ「【0006】(実施例1)図1に示すようにAl合金製角パイプを前後方向に長い矩形に組み付けて外枠(1)とし、該外枠(1)の内側の前後方向に2本の断面略C形材(2)(2)を架設し、これら断面略C形材(2)(2)と外枠(1)の角パイプとの間に短尺角パイプをそれぞれ2本ずつ固定した。さらに該外枠(1)の前端の上面側には荷物の脱落防止用のガード棒(3)を門型に固定し、その後端の左右には横方向に3個のハンドル高さ調節用貫通孔(4)を穿設したハンドル取付パイプ(5)を縦方向にそれぞれ固定し、またこの後端部の左右の下面側にはそれぞれ支持脚(6)(6)を固定して台車の荷台部を作製した。なお上記断面略C形材(2)は図2の断面図に示すように、角パイプの一側面の中央に長手方向に連続したスリット状開口(7)を設け、且つ外表面の長手方向に多数の突条を形成した形状であって、該スリット状開口(7)を下方に向けて外枠(1)に固定してある。」 ウ「【0008】また図5に示すようにAl合金製丸パイプ2本をく字状に曲げ、間に連結パイプ(13)を設けて互いに固定し、それぞれの先端部に横向きにハンドル取付用貫通孔(14)を設けてハンドル部を形成し、該ハンドル部の先端を上記ハンドル取付パイプ(5)(5)に挿入したときに、該パイプ(5)(5)の3個のハンドル高さ調節用貫通孔(4)にいずれかの孔(4)と合わせて係止ピン(15)により該ハンドル部を荷台部に取付ける。なお該連結パイプ(13)は該ハンドル部を荷台部に取付けたときに手前側への荷物の脱落防止用のガードの機能も有する。」 エ「【0009】このような構成からなる二輪台車は、例えば図6に示すように車輪取付部(18)を荷台部(19)の略中央に取付けて荷物(20)を載せたときに、該荷物(20)の重心が荷物部(19)の前部(W1)にあったときにはハンドル部(21)をハンドル取付パイプ(5)の最上孔に係止することにより(21aの位置)ハンドルを持つ人の労力を軽減し、他方該荷物(20)の重心が荷物部(21)の後部(W2)にあったときにはハンドル部(21)をハンドル取付パイプ(5)の最下孔に係止することにより(21bの位置)、やはり運搬する人の労力を軽くして楽な運搬ができるようになる。さらにこのように荷物の重心が前部(W1)にあるときには車輪の位置をより前方に移動させ、逆に重心が後部(W2)にあるときには車輪の位置をより後方に移動させることでも同様に労力軽減の効果が得られる。従ってハンドル部(21)の高さ調整と車輪取付部(18)の前後調節により、一層楽な運搬が可能となる。」 オ「【図5】 [図:0001407423000021.jpg] 」 カ「【図6】 [図:0001407423000022.jpg] 」 (11)甲16 甲16には、以下の事項が記載されている。 ア「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は着脱ハンドル式の一輪又は二輪の台車に関し、荷物を運搬し易く、また台車自身をトラック等で運搬するのに好適である。」 イ「【0008】また外枠(1)の後端面の両側には、側面にハンドル高さ調節孔(15)を縦方向に3ヶ所貫通させた外周溝付パイプからなるハンドル取付パイプ(16)(16)を溶接固定した。そして図6に示すようにくの字に屈曲させた外周溝付パイプからなり、上端部をゴム製握部(17)で被覆した両側の把手管(18)(18)とこれら把手管を連結する外周溝付パイプからなる連結管(19)とからなる着脱ハンドル(20)を製作して把手管(18)(18)の下端部を上記ハンドル取付パイプ(16)(16)にそれぞれ差し込む。このとき該把手管(18)(18)のそれぞれの下端部側面を貫通して設けたハンドル着脱孔(21)と、上記ハンドル高さ調節孔(15)(15)(15)のいずれかとを合わせてピン(22)を挿入することで着脱手持ちハンドル(20)を荷台(4)に取付ける。」 ウ「【図6】 [図:0001407423000023.jpg] 」 1-2 口頭審理陳述要領書提出時の証拠 (12)甲33 甲33には、以下の事項が記載されている。 ア「【0031】図12に示した運搬用台車は、台車ベース22の下面の四隅に位置する車輪には全て自在キャスター車輪3が採用され、平面的に見るとコの字形の上囲い枠20を備えた枠台車の実施形態を示している。当然のことながら、台車ベース22の上面の車輪拘束部4は、全て自在キャスター車輪3用として上記した構成の車輪拘束部4がそのまま採用され、四隅の台車ベース用コーナージョイント11に設けられている。」 イ「図12 [図:0001407423000024.jpg] 」 (13)甲37 甲37には、以下の事項が記載されている。 ア「2 実用新案登録請求の範囲 フレームと、このフレームの下部両側に軸架された移動用の車輪と、上記フレームの前面に設けられた品物の支持手段と、上記フレームの上部に設けられたハンドルとを備え、上記フレームを、断面が前後方向に長い楕円形のパイプ材によって形成したことを特徴とする運搬車。」(第1頁第4~10行) イ「なお、実施にあたって、第4図(当審注:「第」は略字体)に示すように、ハンドル(14)に取付ける握り(14a)において、ハンドル(14)に嵌合する筒状部(26)の上下端部間に彎曲した支持片(27)を設けたようなものを用いてもよい。 本考案によれば、フレームを、断面が前後方向に長い楕円形のパイプで形成してあるため、軽量化されるとともに、強度が強く、かつ、ハンドル部分において握りやすく、ハンドル部分にゴムなどの握りをつけた場合でも回ることなく、確実に取付けることができる。」(第8頁第4~14行) ウ「第4図 [図:0001407423000025.jpg] 」 (14)甲38 甲38には、以下の事項が記載されている。 ア「【0024】図9には、ハンドグリップ5.1の有利な構成が示されている。この構成では、ハンドガード部分5.2が設けられている。このハンドガード部分はグリップに支持されており、これによって、閉じられたU字形柄が生じる。この場合に、ハンドガード部分5.2は押しロッド4のほぼ延長に位置している。したがって、ハンドグリップ全体はプラットホーム付き台車1の輪郭内に位置しており、突出したハンドガード部分は回避される。」 イ「図9 [図:0001407423000026.jpg] 」 (15)甲39 甲39には、以下の事項が記載されている(翻訳文は当審で訳したものである)。 ア「FIGS. 4a, 4b and 6a-6d show the design of the pushing handles 15 which are designed as ring handles, so that the pushing hands of the person conducting the transport can transfer a force to the trolley. The actual handles 15.1 are provided with a haptic-favorable coating and outfitted with a protective hand frame 15.2 including a ring, so that the backs of the hands are protected when pushing the trolley.」(第7欄第11~17行) (当審訳:図4a、図4bおよび図6a~6dは、環状ハンドルとして設計されている押し込みハンドル15のデザインを示しており、輸送を行う人の押す手が力をトロリに伝達することができる。グリップ本体15.1は触覚的に効果的なコーティングが施され、そしてリングを備えた保護フレーム15.2を備えており、トロリを押す際に手の甲を保護するようになっている。) 「Fig.4a [図:0001407423000027.jpg] 」 「Fig.4b [図:0001407423000028.jpg] 」 「Fig.8 [図:0001407423000029.jpg] 」 (16)甲40 甲40には、以下の事項が記載されている(翻訳文は当審で訳したものである)。 ア「[0031] FIG. 4 shows a second embodiment of the present invention, wherein the handcart is made of common aluminum alloy and comprises a main frame 1A, two side rods 2A, and a locating rod 3A.」 (当審訳:図4は、本発明の第2の実施形態を示し、手押し車は、一般的なアルミニウム合金製であり、メインフレーム1Aと、2本のサイドロッド2Aと、位置決めロッド3Aを備えている。) イ「[0033] The two side rods 2A are pivotally connected to the two longitudinal rods 11A of the main frame 1A, respectively. Each side rod 2A has an upper section 22A, a lower end 23A, and a stop section 21 between the upper section 22A and the lower end 23A. The upper section 22A and the lower end 23A of each side rod 2A are pivotally connected to the longitudinal rod 11A of the main frame 1A, while the stop section 21A is spaced from the longitudinal rod 11A. The stop section 21A has a curved portion 211A and a horizontal portion 212A. The horizontal portion 212A is provided with a stop block 25A.」 (当審訳:2本のサイドロッド2Aが、メインフレーム1Aの2本の縦ロッド11Aにそれぞれ回動可能に連結される。各サイドロッド2Aは上面部22Aと、下端部23Aと、上面部22Aおよび下端部23Aの間に係止部21を有している。上面部22Aとサイドロッド2Aの下端部23Aがメインフレーム1Aの縦杆11Aに回動自在に連結され、停止部21Aが、長手方向ロッド11Aから離隔されている。停止部21Aは、湾曲部211Aと、水平部212Aを有している。水平部212Aは、ストッパブロック25Aが設けられている。) ウ「Fig.4 [図:0001407423000030.jpg] 」 (17)甲41 甲41には、以下の事項が記載されている。 ア「【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】ハンドルポストに回動自在に支承された枢軸の左右両側に、アクセルグリップを嵌入装着すると共に、該アクセルグリップの外側端には、その半径方向に膨出させた円盤状の膨出部を形成してなるローリフトのハンドル装置。」 イ「【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、ローリフトのハンドル装置に関する。 ・・・ 【0010】 本考案のハンドル装置1は、ハンドルポスト5にカラー6を介して枢軸3を回動自在に支承し、該枢軸3の両端部にアクセルグリップ2を嵌入装着して構成される。 【0011】 前記アクセルグリップ2は、運転者が直接握る部分である把持部2Aと、該把持部2Aの外側端に形成された膨出部2Bとから構成される。該膨出部2Bは、その半径方向に膨出させた円盤状をなし、その該側端面にはネジ4を枢軸3にねじ込むことにより両者を固着する。 【0012】 さらに、図2に示す如く、枢軸3の断面は略「D」字状をなすと共に、アクセルグリップ2の内径もこれに対応する如く形成されている。従って、アクセルグリップ2を回動させると、アクセルグリップ2と枢軸3とは一体的に回動する。 ・・・ 【0014】 ・・・アクセルグリップ2を回動させると、枢軸3及びカム8も一体となって回動し、これにより図示しないリミットスイッチを作動させることができる。 【0015】 【作用】 図6に示す如く、X方向の障害物に対しては、膨出部2Bの外側端面により運転者の手を保護しうるとともに、Y方向については、膨出部2Bの、円周部分により運転者の手を保護する事が可能となる。 」 ウ「【図1】 [図:0001407423000031.jpg] 」 エ「【図2】 [図:0001407423000032.jpg] 」 オ「【図6】 [図:0001407423000033.jpg] 」 (18)甲43 甲43には、以下の事項が記載されている。 ア「【意匠に係る物品の説明】本物品は、長尺のホースあるいは電気ケーブルを巻き取り、または巻き戻すために用いるリールを備えた手押し運搬車である。」 イ「【正面図】 [図:0001407423000034.jpg] 」 ウ「【左側面図】 [図:0001407423000035.jpg] 」 エ「【斜視図2】 [図:0001407423000036.jpg] 」 (19)甲44 甲44には、以下の事項が記載されている。 ア「【請求項1】 フレーム上にベースを取付けた台車本体の裏面の周辺部の少なくとも四隅にキャスターを取付けた運搬台車の、四隅のコーナー部で前記フレームを接続するコーナー部材において、全体がL字形状であり、手押し棒が挿着される挿入孔をL字形の角部に形成し、この挿入孔の箇所から互いに直交する方向にフレームの取付部として対向する側壁部材をそれぞれ垂直に突設したことを特徴とする運搬台車のコーナー部材。」 イ「【0025】 手押し棒3が挿着される筒状で外周面が円弧状の挿入孔8をL字形の角部に形成し、この挿入孔8の箇所から互いに直交する方向にフレーム5の取付部として対向する側壁部材9a,9bをそれぞれ垂直に突設した。」 ウ「図3 [図:0001407423000037.jpg] 」 エ「図4 [図:0001407423000038.jpg] 」 オ「図5 [図:0001407423000039.jpg] 」 (20)甲47 甲47には、以下の事項が記載されている。 ア「(55)【意匠に係る物品の説明】本物品は、運搬台車である。本運搬台車は、台車部分とハンドル部分により構成されており、特に折り畳み椅子の運搬に適している。台車部分には6つの車輪が取り付けられており小回りが利く。台車部分の上面に設けられた波形に形成された部分に折り畳み椅子の底部を係止させてハンドル部分に立て掛ける。また、波形に形成された部分に水平に挿通されている棒材は折り畳み椅子が滑らないようにするためのストッパとして作用する。さらに、一方のハンドルの台車部分側には平板が回動自在に取り付けられており、平板を台車部分の上面に配置させることにより、折り畳み椅子以外の物も安定して運搬することができる。平板部分に他の品物を載置して複数の品物を一回で運搬することもできる。なお、平板をハンドル部分に立て掛ければ、一度に多数の折り畳み椅子を運搬することができる。」 イ「【斜視図】 [図:0001407423000040.jpg] 」 (21)甲48 甲48には、以下の事項が記載されている。 ア「【0018】 このように支持位置に移動された回転筒19にはコーナー柱20を着脱自在に差し込むことができるようになっており、図1に示す場合には、相互に隣り合って配置される回転筒19のそれぞれには角パイプより形成されるコーナー柱20が差し込まれており、それぞれのコーナー柱20に掛け渡される横架材21とにより運搬台車10を人力で走行させるための手押しハンドル22が形成されている。なお、コーナー柱20は、鋼管等の荷物が荷台12から転落するのを防止したりするためにも用いられ、この場合には、全ての回転筒19を支持位置に保持した状態で全ての回転筒19にコーナー柱20を差し込むこともできる。」 イ「図1 [図:0001407423000041.jpg] 」 (22)甲49 甲49には、以下の事項が記載されている。 ア「2・・・・・・手押し棒」(第1頁右欄第10行) イ「第2図 [図:0001407423000042.jpg] 」 (23)甲50 甲50には、以下の事項が記載されている。 ア「【符号の説明】・・・103 手押し棒・・・・」 イ「図2 [図:0001407423000043.jpg] 」 (24)甲52 甲52には、以下の事項が記載されている。 ア「【0024】 次に、取っ手の取り付けに関しては、図7A、Bに示したように、取っ手パイプ8の下端を該当する車輪取付け駒20の垂直な挿入孔9へ差し込み、同取っ手パイプ8と挿入孔9との隙間へやはり錐状で中空形状の楔体12、13を打ち込み固定して取り付ける。 具体的に説明すると、先ず図7Aは、車輪取付け駒20における取っ手パイプ用の垂直な挿入孔9が、下方の奥に向かって口径が約1°~8°の勾配で縮小するテーパー孔として、且つ取っ手パイプ8の外径の約1.0倍~1.5倍の範囲の深さの非貫通孔として形成されている。一方、錐状で中空形状の楔体12は、前記挿入孔9の深さとほぼ等しい長さとし、且つその内径は取っ手パイプ8の外径と均等に形成し、外径は前記挿入孔9と同径で約1°~8°の勾配の中空先細形状に形成されている。取っ手パイプ8を垂直な挿入孔9へ差し込み、続いて前記錐状で中空形状の楔体12を取っ手パイプ8と挿入孔9との隙間へ打ち込み固定して取っ手が設置されている(請求項3に記載した発明)。」 イ「【図1】 [図:0001407423000044.jpg] 」 ウ「【図2】 [図:0001407423000045.jpg] 」 2 甲8商品2及び3の公知・公用性について 甲8商品2及び3の公知・公用性については、当事者間で争いがあるところ(審判請求書第32頁第1行~第35頁第20行、答弁書第6頁第16行~第8頁第13行、請求人の口頭審理陳述要領書第55頁第1行~第68頁第5行等)、以下検討する。 (1)証拠の記載 ア 甲8の1(弁護士照会回答書)の記載 (ア)第1頁には、「照会事項(回答)」との標題とともに、宛先として「第一東京弁護士会会長殿」との記載、回答日の欄には「2021年10月25日」との記載、回答者の欄には、「長岡産業株式会社」との記載、氏名の欄には、「宇野 浩紀」及び「(担当 宇野)」との記載がそれぞれあり、回答者たる「長岡産業株式会社」の押印と担当者たる「宇野 浩紀」の押印がある。 (イ)第1頁には、上記(ア)の標題の下に、「貴会会長よりの弁護士法第23条の2に基づく照会につき、下記のとおり回答します。」との記載があり、続いて、第1~5頁にわたり、1~15までの照会事項と、その照会事項に対する回答が記載されている(回答は、手書きである。)。 (ウ)第1頁には、照会事項1として、「貴社のウェブサイト・・・には、「台車安全カバー おててまもるくん」の商品カタログとして、添付資料1が記載されています(・・・)。添付資料1に記載の「台車安全カバー おててまもるくん」は貴社が現在販売している商品で間違いないでしょうか。」との記載があり、その回答として、「はい、間違いありません。」との記載がある。 (エ)第1頁には、照会事項3として、「「台車用安全カバー おててまもるくん」の商品カタログとして、添付資料2を入手しています。添付資料2は、貴社の商品の販売カタログで間違いないでしょうか。」との記載があり、その回答として、「はい、間違いありません。」との記載がある。 (オ)第2頁には、照会事項4として、「添付資料2は、添付資料1より前に作成された旧版の台車用の安全カバーの商品カタログと理解していますが、当該理解で正しいでしょうか。」との記載があり、その回答として、「はい、正しいです。」との記載がある。 (カ)第2頁には、照会事項5として、「添付資料2の商品カタログの作成時期(日付がわからなければ作成年)を教えて下さい。」との記載があり、その回答として、「2016年です。」との記載がある。 (キ)第2頁には、照会事項6として、「添付資料2の「台車用安全カバー おててまもるくん」の販売を開始した年月日を教えてください。」との記載があり、その回答として、「2016年8月22日です。」との記載がある。 (ク)第2頁には、照会事項7として、「貴社は、添付資料2の「台車用安全カバー おててまもるくん」の販売開始後、2016年8月31日までに貴社の顧客に販売した実績がありますか。」との記載があり、その回答として、「はい、当社の顧客1社に販売した実績があります。」との記載がある。 (ケ)第4頁には、照会事項12として、「貴社は、添付資料2の「台車用安全カバー おててまもるくん」の販売開始前に、同様の規格の商品を販売したことがありますか。もしあれば、その商品の販売開始時期とその商品を販売した際の名称を教えてください。」との記載があり、その回答として、「はい、「台車用安全カバー おててまもるくん」という商品名で商品を販売する前に、同一規格の商品を販売しました。その商品の販売開始時期は2014年2月26日で、「パイプカバー(安全カバー)」という名称で販売した実績がございます。」との記載がある。 (コ)第4頁には、照会事項13として、「12で回答いただいた貴社の商品について、貴社は2016年8月31日までに貴社の顧客に販売した実績はありますか。」との記載があり、その回答として、「はい、当社の顧客1社に販売した実績がございます。」との記載がある。 イ 甲8の3(甲8の1添付資料2)の記載 「 [図:0001407423000046.jpg] 」 ウ 甲8の4(送付状)の記載 (ア)甲8の4には、「送付状」との標題とともに、宛名として「中岡 起代子殿」との記載、差出人として「第一東京弁護士会 会員課 照会係」との記載がある。 (イ)上記(ア)の標題の下に、「回答書送付のご案内」との記載がある。 (ウ)上記(イ)の記載の下に、「下記のとおり回答が到着しましたので、送付致します。」との記載がある。 (エ)上記(ウ)の記載の下に、「照会先 長岡産業株式会社」との記載がある。 (オ)上記(エ)の記載の下に、「申出受付日 2021年10月13日」との記載がある。 エ 甲8の5(封筒)の記載 (ア)甲8の5には、消印日として「3.10.27」との記載、宛名として「第一東京弁護士会御中」との記載、差出人担当者印の欄に「宇野 浩紀」との記載がそれぞれある。 オ 甲35(宇野浩紀作成の陳述書)の記載 甲35には、第1頁に、「長岡産業株式会社 営業部 宇野 浩紀」の記載部分に、「長岡産業株式会社」の押印があるほか、以下の記載がある。 (ア)「私は、長岡産業株式会社(以下、「当社」といいます。)の営業部に所属する従業員です。・・・当社は2021年10月25日に回答書(以下「弁護士照会回答書」といいます。)(添付資料3)を送りました。」(第2頁第2~11行) (イ)「私は、2016年10月に当社に入社し、営業一課に配属されました。その後、営業一課が統合されて営業部となり、現在、営業部に所属しています。営業一課に所属していた頃から現在に至るまで、台車用の安全カバー、パイプカバー、トーレペフ<R>(当審注:<R>は丸にアルファベットのRを意味する。)等の商品(添付資料4)の営業を担当しています。 第1で述べた通り、当社は、弁護士照会を受け取りましたが、私が、弁護士照会でお尋ねの「台車安全カバー おててまもるくん」のメインの担当者であり、当該商品の在庫及び製造管理を行っていることから、弁護士照会回答書には私が回答を記載しました。なお、弁護士照会回答書に私の氏名を記載すること及び回答内容が当社の意見として正しいものであることを私の上司及び当社の代表取締役である長岡利典に確認を取った上で、弁護士照会回答書を返送しました。弁護士照会回答書には、「長岡産業株式会社印」が押印されていますが、この印鑑は、当社が社外にお出しする書面に押印する際に使用するものであり、この印影があることは、私個人の見解ではなく、会社の見解であることを示しています。 本書面も、上記と同様に、当社の意見として正しいものであることを私の上司及び当社代表取締役に確認を取った上で、大同機械の代理人に提出しています。」(第2頁第20行~第3頁第11行) (ウ)「2 当社は、お客様から、当社の水道管の凍結防止用等のクッション材(・・・)を利用して、台車の握り手の挟まれを防止する商品を作ることができないか、というお問い合わせを受け、2014年頃、「パイプカバー(安全カバー)」を商品化しました。2014年は、私が入社する前となりますが、弁護士照会を受領した際に、このような経緯で「パイプカバー(安全カバー)」を開発したことを社内に確認しております。」(第3頁第20行~第4頁第1行) (エ)「「パイプカバー(安全カバー)」は、2014年2月26日にお客様である会社Aに販売し、2014年においてはその後9月30日にも同一の会社Aに販売しました。会社Aに販売した「パイプカバー(安全カバー)」の長さは100mmであり、弁護士照会回答書の回答13に記載の「当社の顧客1社」とは会社Aのことです。 なお、当社は、会社Aとは異なる会社Bに対して、「パイプカバー(安全カバー)」の厚みや長さが異なる品種も含めて2014年に複数回(2014年3月17日、5月19日、8月19日及び9月26日)販売しました。」(第4頁第9~16行) (オ)「3 さらに、当社は、「ペフ安全カバー」との商品も扱っていました。 「ペフ安全カバー」は、添付資料5に記載の規格の商品であり、「パイプカバー(安全カバー)」の厚みを薄くした前述の品種と同じ・・・ものでした。・・・「ペフ安全カバー」は、2016年3月30日に、上記の会社Aや会社Bとは別の会社Cに販売しました。」(第4頁第17~26行) (カ)「4 その後、当社は、「パイプカバー(安全カバー)」と外径等が同じ商品を「台車用安全カバー おててまもるくん」として販売開始しました。 ・・・ 当社は、2016年8月22日に「台車用安全カバー おててまもるくん」を、会社A、B、Cとは異なる会社Dに販売しました。弁護士照会回答書の回答7に記載の「当社の顧客1社」は会社Dのことです。その後、2016年9月2日に「台車用安全カバー おててまもるくん」(添付資料2)のカタログを作成し、その後、上記の会社A、会社B、会社C、会社D以外の数多くの会社に対し、「台車用安全カバー おててまもるくん」を販売しました。」(第5頁第1~13行) (キ)「1 上記に述べた「パイプカバー(安全カバー)」、「ペフ安全カバー」、及び「台車用安全カバー おててまもるくん」の販売の日付については、当社のサーバに格納され、当社の全商品の売上が記録されている売上データベース(以下「売上データベース」といいます。)に記録されています。弁護士照会回答書に「台車用安全カバー おててまもるくん」(添付資料2)、「パイプカバー(安全カバー)」の販売日時をそれぞれ、2016年8月22日、2014年2月26日と回答しましたが、回答にあたっては、売上データベースにおいてそれぞれの商品名をキーワードとして検索して確認の上、記入しました。」(第5頁第23行~第6頁第6行) (ク)「このデータベースには、「売上日」、「商品名」、「取引先(得意先)の名前」、「金額」、「販売数量」が記載されています。 3 当社においては納品日を以て売上日としていますので、このデータベースにおける「売上日」には、商品の納品日が記入されています。上記「第3」で述べた販売日も売上データベースに記録された「売上日」を記載したものです。 4 売上データベースの「商品名」には、「パイプカバー(安全カバー)」、「ペフ安全カバー」、及び「台車用安全カバー おててまもるくん」との商品名に加えて、「品番」、「厚み」、「長さ」も記載されています。」(第6頁第11~19行) (ケ)「5 売上データベースは、当社の営業秘密であり、外部の第三者にお見せすることはできません。なお、大同機械の代理人から、「売上データ」を書き換えることは可能かについてお尋ね頂きましたが、「売上データ」は、経理が使用するものであり、営業部に所属する私がデータを書き換えることはできません。」(第7頁第3~7行) (コ)「2 さらに、「第3」で述べた通り、当社は、2016年9月2日に「台車用安全カバー おててまもるくん」の商品カタログ(添付資料2)を作成しました。この商品カタログは、現在、当社のサーバの、「おててまもるくん」の「関連資料」というフォルダの中に、記録されているものです。 このカタログはPDFで保管されています。弁護士照会回答書に回答を記入する際には、プロパティを確認しておりませんでしたが、このPDFのプロパティを確認したところ、添付資料7の通り、作成日が「2016年9月2日」及び更新日が「2016年9月2日」であることがわかります。」(第7頁第18~25行) (サ)「3 当社は、これらのカタログの作成当時、商品カタログをパワーポイントやPDFで作成しており、外部の印刷会社等に発注せず、営業がプリンターで印刷して他社に配布していました。なお、当社において、商品カタログに作成日時を入れておかなければならないというルールはなく、他の商品カタログ、例えば、添付資料8や9にも日付は特に入っていません。作成日は、パワーポイントやPDFのプロパティの作成日で確認できますので、カタログに入れる必要はないと理解しています。」(第8頁第1~7行) (シ)「上記「第3」で述べた通り、「パイプカバー(安全カバー)」(厚み40mm品)は当初、お客様からのご要望により商品化したもので、最初にこのお客様である会社Aに販売しましたが、他社に販売してはならないとか営業活動してはならない等の制限等はありませんでした。実際、2014年9月頃から商品カタログが作成され、厚み等や商品名を変更した商品として、2016年8月31日以前に「パイプカバー(安全カバー)」、「ペフ安全カバー」、及び「台車用安全カバー おててまもるくん」は会社A以外の会社B、会社C、会社Dという複数の会社に販売されており、「台車用安全カバー おててまもるくん」については2016年9月以降も数多くの会社に販売され、現在でも「台車安全カバー おててまもるくん」として販売が継続されています。」(第8頁第8~18行) カ 甲51の3の1(請求書・請求明細書)の記載 (ア)「請求書」の標題とともに、「請求日 2016/08/22」、「今回御買上額」、「消費税」、「今回御請求額」、「取引銀行」の各記載(「今回御買上額」、「消費税」、「今回御請求額」の各欄の具体的金額並びに銀行名は、営業秘密部分である。)があるほか、長岡産業株式会社及び経理担当者の押印がある。 (イ)「請求明細書」の標題とともに、「2016年8月22日」の日付、並びに、長岡産業株式会社の担当部門及び担当者名の記載があるほか、上記(ア)の「今回御買上額」の内訳を示す表中、「商品番号・商品名」の欄には「PAZ―Z01 台車用安全カバー「おててまもるくん」」の記載が、「数量」の欄には「50.00」の記載がそれぞれある。 なお、当該表中の「単価」、「金額」、「合計」及び「消費税」の各欄の具体的金額は、営業秘密部分である。また、当該「合計」欄の具体的金額は、上記(ア)の「今回御買上額」欄の具体的金額と一致する。 キ 甲51の3の2(精算書)の記載 (ア)「精算書」の標題とともに、「期間 自 2016年08月01日 至 2016年08月31日」、「お振込日 2016年09月05日」、「日本郵便株式会社」、「お問い合わせ先 ゆうパック決済センター」、「長岡産業 様」及び「今回精算額」の記載がある(「今回精算額」欄の具体的金額は、営業秘密部分である。)。 (イ)上記(ア)の記載の下にある「下記銀行へのお振込みをさせていただきます。」との記載の下の表中、「口座名義」の欄には「ナガオカサンギョウ(カ」の記載がある。 (ウ)上記(イ)の表の下にある「【お取引明細】」の標題の表中、「←☆」の印(手書き)が付された行には、「受付日」欄に「0819」の記載が、「配完日」欄に「0822」の記載が、「決済方法」欄に「代金引換」の記載が、それぞれある。 なお、当該行において、「決済金額」及び「受付金額」欄の具体的金額(営業秘密部分)は、上記カ(甲51の3の1)の「請求書」における「今回御請求額」欄の具体的金額(営業秘密部分)と一致する。 ク 甲53(長岡利典作成の陳述書)の記載 甲53には、以下の記載がある。 「・・・ジー・オー・ピーが、2016年8月22日に台車用安全カバー「おててまもるくん」を販売した顧客と当社との間で秘密保持契約が締結され、当該商品について守秘義務を課していたのではないか、当該販売については当該顧客をモニターとしたいわゆるお試し販売であり当該顧客に対して当該商品を公の場で使ってはならないとか、他社に口外してはならない等の約束があったのではないか等の主張をしていることを大同機械から聞きました。 台車用安全カバー「おててまもるくん」に関し、当社と当該顧客との間で、ジー・オー・ピーが主張しているような秘密保持契約や約束等はありませんでした。・・・ 実際に、当社では、2016年8月31日以前に、・・・台車用安全カバー「おててまもるくん」というシリーズ商品について、特定のお客様のみを対象に販売・宣伝していたといったことはなく、お客様が既存のお客様か新規のお客様かに関わらず、お客様からお問い合わせがあれば販売しており、そのための営業活動も他社との間での守秘義務等の制約はなく、通常どおり行っていました。」(第3頁第21行~第4頁第14行) (2)証拠の記載から認定できる事実 ア 甲8の1は第三者である長岡産業株式会社による回答であること 甲8の1(弁護士照会回答書)には、「長岡産業株式会社」、「宇野 浩紀」及び「(担当 宇野)」の記載とともに、回答者たる「長岡産業株式会社」の押印、及び、担当者たる「宇野 浩紀」の押印があることから(上記(1)ア(ア))、甲8の1は、本件無効審判事件の当事者ではない、長岡産業株式会社により作成・回答されたものであって、甲35によれば、回答に当たっての事実関係の確認及び回答欄への記入は、同社の社員であり、かつ、担当者である宇野浩紀により行われたものであると認められる(上記(1)オ(ア)~(ウ)、(キ))。 甲8の1は、「長岡産業株式会社」の押印があること(上記(1)ア(ア))及び甲35の陳述内容(上記(1)オ(イ))に照らして、担当者個人の見解ではなく、長岡産業株式会社の見解を示したものであると認められる。また、甲8の1は、請求人代理人が弁護士照会を行って、長岡産業株式会社から得た回答であることは、甲8の4及び甲8の5により裏付けられている(上記(1)ウ及びエ)。 なお、甲35については、甲8の1の担当者である宇野浩紀により作成されたものであるところ、「長岡産業株式会社」の押印があることからみて(上記(1)オ)、甲8の1と同様に、長岡産業株式会社の見解を示したものであると認められる。 イ 甲8の1は社内の売上データベースに基づいて回答されたものであること 甲8の1には、「台車用安全カバー おててまもるくん」(甲8商品2)及び「パイプカバー(安全カバー)」(甲8商品3)の販売を開始した日(甲35の「販売日時」が該当。上記(1)オ(キ)参照)についての記載(前者は「2016年8月22日」、後者は「2014年2月26日」である。)があるところ、当該「販売日時」は、甲8の1の担当者である宇野浩紀が、長岡産業株式会社の売上データベースを用いて、当該売上データベースに記録されている「売上日」を確認の上で、甲8の1に記入したものであると認められる(上記(1)オ(キ)~(ク))。 なお、当該売上データベースに記録されている売上データは、営業部に所属する宇野浩紀が書き換えることはできないものと認められる(上記(1)オ(ケ))。 ウ 甲8商品2の販売日は客観的証拠により裏付けられていること 甲51の3の1(請求書・請求明細書)によれば、2016年8月22日の日付で、甲8商品2たる「台車用安全カバー おててまもるくん」の販売代金の請求がなされたものと認められ(上記(1)カ)、また、甲51の3の2(精算書)によれば、長岡産業株式会社からゆうパックを利用して発送された商品が、2016年8月22日に購入者へ配達されて、代金引換で決済が行われたものと認められる(上記(1)キ)。 そして、2016年8月22日の日付のほかにも、甲51の3の1の「今回御請求額」欄の金額と甲51の3の2の「決済金額」及び「受付金額」の金額が一致することからみて(上記(1)キ(ウ))、甲51の3の1の取引と甲51の3の2の取引は、同一であると認められる。 以上により、甲8の1及び甲35において示されている、甲8商品2の「販売日時」が「2016年8月22日」である事実は、甲51の3の1及び甲51の3の2という客観的証拠によって、裏付けられていると認められる。 エ 甲8商品2の存在は客観的証拠により裏付けられていること 甲8商品2については、客観的証拠たる商品カタログ(甲8の3)によって、その存在が裏付けられていると認められる(上記(1)イ)。 オ 甲8商品2について営業活動の制限はなかったこと 甲35及び甲53によれば、甲8商品2について、販売先を特定の顧客に限るといった営業活動の制限はなく、複数の会社に守秘義務を課すことなく販売されたものと認められる(上記(1)オ(シ)及びク)。 カ 小括 上記(1)の証拠を総合すると、特に上記ア~オの点を考慮すれば、甲8商品2について、特段の営業活動の制限がない条件下において、2016年8月22日に、顧客1社に対して守秘義務を課すことなく販売されたものと認められる。 (3)被請求人の主張 ア 答弁書 被請求人は、審判事件答弁書第6頁第16行~第8頁第13行において、以下の(ア)~(エ)のように主張する。 (ア)甲8の1の弁護士照会に対する回答者について 甲8の1の弁護士照会に対する回答者が、長岡産業株式会社の社長ではなく、「宇野浩紀」なる人物となっており、この人物が社内でどういう役職、権限を有する者であるのか、さらには同社の社員であるのか不明であるため、甲8の1の回答の内容に証明力が無い。 (イ)甲8の3に示される商品の販売開始日について 甲8の1の照会事項5において甲8の3の商品カタログの作成日は「2016年」と作成年しか回答されていないにもかかわらず、甲8の1の照会事項6においては甲8の3に示される商品を販売開始した年月日は「2016年8月22日」と具体的に回答されており、しかもその「2016年8月22日」が、本件特許に係る原出願の優先日である「平成28年8月31日」の9日前の日付というのも、出来すぎていて不自然な感があり、9日差というのは微妙な差であるので、甲8の3に示される商品の販売開始日の認定には客観的な証拠が必要である。 (ウ)商品カタログを作成する必要性について 甲8の3に示される「台車用安全カバー おててまもるくん」という商品名の商品と同一規格である「パイプカバー(安全カバー)」という商品名の商品は、2014年2月26日の販売開始から2016年8月31日までに顧客1社に販売実績があるのみであり(甲8の1の照会事項13)、甲8の3に示される「台車用安全カバー おててまもるくん」という商品名の商品も、2016年8月22日の販売開始から2016年8月31日までに顧客1社に販売実績があるのみであり(甲8の1の照会事項6、7)、常識的に考えて甲8の3のような商品カタログを作成する必要が無く、したがって、甲8の1において回答された甲8の3の商品カタログの作成日及び甲8の3に示される商品の販売開始日には疑問がある。 (エ)客観的証拠について 甲8の1において、甲8の3の商品カタログの作成日及び配布日、甲8の3に示される商品を顧客1社に販売した日について、その裏付けとなる客観的証拠が示されていないから、甲8の1からは、甲8の3に示される商品が本件特許に係る原出願の優先日である平成28年8月31日前に公然知られた又は公然実施されたものと認定できない。 イ 上申書 被請求人は、令和4年10月3日付け上申書において、概略、(ア)甲35で追加された商品たる「ペフ安全カバー」に基づく公知・公用性の立証は、無効理由の要旨を変更するものであること、(イ)甲8商品3たる「パイプカバー(安全カバー)」については、商品カタログやチラシ等の提出がなく、その構成が全く不明であり、台車用安全カバーの商品であることの存在が立証されていないこと、(ウ)甲8商品2たる「台車用安全カバー」について、その販売後に作成された商品カタログにより販売時点の構成を特定することは客観的妥当性がないこと、(エ)甲8商品2の販売に関し、秘密保持契約が存在することが排除されていないこと、及び、販売後の開梱による公知の状態となった時点が明らかでないこと、の4点を主張している。 ウ 検討 上記被請求人の主張について検討する。 まず、上記アの主張については、(ア)甲8の1の担当者たる宇野浩紀は、長岡産業株式会社の営業部に所属する社員であって、甲8の1の弁護士照会に係る商品の営業担当者であることが甲35によって明らかにされていること、(イ)甲8商品2の販売日については、客観的証拠たる甲51の3の1及び甲51の3の2が提出されていること、(ウ)甲8商品2の商品カタログたる甲8の3に、商品販売の事実に疑問を抱かせるような不自然な点は認められないことから、その主張を採用することはできない。 また、上記イの主張については、(エ)上記(2)の当審の判断は、「ペフ安全カバー」及び「パイプカバー(安全カバー)」の販売事実に依拠していないこと、(オ)甲8商品2について、客観的証拠に裏付けられた販売事実は、カタログに先行して販売された事情に左右されることはなく、また、販売した甲8商品2の構成を販売後に変更してカタログに掲載した事情は窺えず、甲8商品2の販売日(2016年8月22日)からカタログ作成日(2016年9月2日)までの期間が短いため、その短期間に甲8商品2の仕様を変更してカタログを作成することは考えにくいこと、(カ)甲8商品2の販売時に秘密保持契約の存在が排除されていることは、甲35及び甲53により認められることから、同様に、その主張を採用することはできない。 なお、甲8商品2の公用性については、その販売により甲8発明の内容を「知り得る状況となったことを要する」(東京地裁平成17年2月10日判決(平成15年(ワ)第19324号))ところ、その立証は、上記(2)で説示したとおり、甲8商品2の販売日及びその存在を裏付ける客観的証拠(甲8の3、甲51の3の1及び甲51の3の2)に加えて、甲8の1、甲8の4、甲8の5、並びに、甲35及び甲53の陳述書をもって足りるというべきである。 (4)小括 以上によれば、無効理由1~3に係る甲8商品2及び3のうち(上記1-1(3-4)参照)、少なくとも、甲8商品2は、本件特許に係る原出願の優先日である平成28年8月31日前に公然知られた又は公然実施されたものであると認められる。なお、甲8商品2の構成については、上記1(3-5)において、「甲8発明」として認定したとおりである。 3 本件発明1について (1)無効理由1について ア 甲8発明の「台車用安全カバー」と本件発明1の「保護部材」との対応関係 本件発明1の「保護部材」は「保護部」を有し、当該「保護部」は「前記グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する」ものである。他方で、甲8発明の「台車用安全カバー」は「本体」を有し、当該「本体」は「グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないようにする」ものであり、手が周囲の物体に接触しなければ、手は周囲の物体から保護されることになるといえるため、甲8発明の「本体」と本件発明1の「保護部」とは同様の作用を奏するといえる。 ここでは、甲8発明の「本体」と本件発明1の「保護部」とが同様の作用を奏することを考慮して、甲8発明の「台車用安全カバー」と本件発明1の「保護部材」との対応関係を検討する。 まず、甲8発明は、「台車」における「コ字状のハンドル」「に対して取り付けられる台車用安全カバー」であって、「本体」と「ハンドルが挿入される取付穴」とを有するものであるため、甲8発明においては、「本体」は「台車用安全カバー」の一部分であり、「台車用安全カバー」が「本体」のほかに「取付穴」を有し、「台車用安全カバー」が「取付穴」によって「ハンドル」に取り付けられ、ハンドルは手押部材であるといえる。 他方で、本件発明1は、「運搬台車」における「長尺の棒状部材」「に対して取り付けられる保護部材」であって、「グリップ部」と「保護部」と「前記棒状部材が挿入される取付穴」とを有するものであるため、本件発明1においては、「保護部」は「保護部材」の一部分であり、「保護部材」が「保護部」のほかに「取付穴」を有し、「保護部材」が「取付穴」によって手押部材たる「棒状部材」に取り付けられる。 (なお、本件特許の明細書の段落【0027】~【0043】には、実施の形態2及び実施の形態3が記載されているが、当該実施の形態は「保護部材」自体が「グリップ部」を有するものではないので、本件発明1に含まれない。) そうすると、甲8発明の「本体」と本件発明1の「保護部」とが同様の作用を奏し、「取付穴」によって手押部材に取り付けられるものは、甲8発明においては「台車用安全カバー」であり、本件発明1においては「保護部材」なのであるから、甲8発明の「台車用安全カバー」は、本件発明1の「保護部」に相当するものではなく「保護部材」に相当するものであり、甲8発明の「台車用安全カバー」の一部分である「本体」が、本件発明1の「保護部材」の一部分である「保護部」に相当するといえる。 請求人は、甲8の1~3から、台車用安全カバーが取り付けられる手押部材におけるグリップ部と台車用安全カバーとから構成される保護部材に係る発明(審判請求書第34頁第8行~第35頁第20行に記載された、請求人の主張する「公然実施発明1」)を認定でき、当該保護部材に係る発明の「台車用安全カバーが取り付けられる手押部材におけるグリップ部」が本件発明1の「グリップ部」に相当し、当該保護部材に係る発明の「台車用安全カバー」が本件発明1の「保護部」に相当すると主張する(審判請求書第32頁第1行~第35頁第20行、第36頁の説明図、第51頁第6~12行、口頭審理陳述要領書第27頁第1行~第34頁第6行、第34頁第16行~第36頁第4行、第41頁第20行~第42頁第15行等)。 しかしながら、甲8の3には、「取付穴」によって手押部材に取り付けられるものとして、「台車用安全カバー」は記載されているが、「取付穴」によって手押部材に取り付けられるものとして、「グリップ部」と「台車用安全カバー」とから構成される部材は記載されていないため、甲8の1~3から、「取付穴」によって手押部材に取り付けられるものとして、「グリップ部」と「台車用安全カバー」とから構成される保護部材を観念することはできない。 そうすると、上述したように、「取付穴」によって手押部材に取り付けられるものは、甲8発明においては「台車用安全カバー」であり、本件発明1においては「保護部材」なのであるから、甲8発明の「台車用安全カバー」は、本件発明1の「保護部材」に相当し、甲8発明の「台車用安全カバー」は「グリップ部」を有しないのに対して、本件発明1は「保護部材」が「グリップ部」を有する点で相違するといえる。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 イ 対比 上記アを踏まえて、本件発明1と甲8発明とを対比する。 甲8発明の「台車」は、本件発明1の「運搬台車」に相当する。 甲8発明の「台車に固定され」ることは、本件発明1の「運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される」こととの関係において、「運搬台車に固定され」る限りにおいて一致する。 甲8発明の「グリップ部である水平部分と、水平部分の両端から延びるカーブ部分と、水平部分の両端からカーブ部分を介して下向きに延びる上下方向に沿った部分と、を有する、コ字状のハンドル」は、本件発明1の「長尺の棒状部材」との関係において、「手押部材」の限りにおいて一致する。 甲8発明の「コ字状のハンドルのカーブ部分に対して取り付けられる台車用安全カバー」は、「グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないようにする本体」を有するものであり、手が周囲の物体に接触しなければ、手は周囲の物体から保護されることになるといえるため、本件発明1の「長尺の棒状部材に対して取り付けられる保護部材」との関係において、「手押部材に対して取り付けられる保護部材」の限りにおいて一致する。 甲8発明の「寸法を外径106mm、内径26mm、長さ100mm及び厚み40mmとし、グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないようにする本体」は、「グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないようにする」ものであり、手が周囲の物体に接触しなければ、手は周囲の物体から保護されることになるといえるため、本件発明1の「前記グリップ部の下側に位置し、前記グリップ部の外周面よりも外側に突出させて前記グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部」との関係において、「手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部」の限りにおいて一致する。 甲8発明の「本体の外周部からスリットを通じてハンドルが挿入される取付穴」は、本件発明1の「前記棒状部材が挿入される取付穴」との関係において、「手押部材が挿入される取付穴」の限りにおいて一致する。 してみると、本件発明1と甲8発明とは、 「運搬台車に固定される手押部材に対して取り付けられる保護部材であって、 手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部と、 前記手押部材が挿入される取付穴と、を有する保護部材。」 である点で一致し、次の3点で相違する。 <甲8相違点1> 本件発明1は、「保護部材」が「使用者が手で掴むグリップ部」を有し、「保護部」が「前記グリップ部の下側に位置し、前記グリップ部の外周面よりも外側に突出させて前記グリップ部を掴んだ手」を保護するのに対して、甲8発明は、「グリップ部」は「ハンドル」の一部であり、「台車用安全カバー」が有するものではなく、「本体」が「寸法を外径106mm、内径26mm、長さ100mm及び厚み40mmとし、グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないようにする」点。 <甲8相違点2> 本件発明1の保護部は、「前記取付穴に前記棒状部材が挿入される方向から見て」「略円形である」のに対して、甲8発明の本体は、「本体の外周部からスリットを通じてハンドルが挿入される方向と直交する方向であって、取付穴を向く方向から見て」「略円形である」点。 <甲8相違点3> 本件発明1は、手押部材が「運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される長尺の棒状部材」であるのに対して、甲8発明は、手押部材が「コ字状のハンドル」であって、かつ、「台車の挿入孔に挿入される」ものか不明である点。 ウ 判断 (ア)甲8相違点1について 甲8相違点1は、保護部材が有するグリップ部の有無に係るものであるところ、グリップ部の有無の相違が実質的なものであることは明らかである。 また、甲8相違点1のうち、本件発明1の保護部が「前記グリップ部の下側に位置し、前記グリップ部の外周面よりも外側に突出させて前記グリップ部を掴んだ手」を保護するのに対して、甲8発明の本体が「グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないようにする」点については、本件発明1の当該構成が「前記グリップ部」の存在を前提とするものであって、「保護部材が有するグリップ部」の有無が実質的な相違である以上、当該相違点についても、実質的な相違点といえる。 したがって、甲8相違点1は、保護部材に係る構成の相違点として、実質的なものである。 これに対して、請求人は、甲8発明の「台車用安全カバー」が取り付けられる手押部材には「グリップ部」があるため、甲8相違点1は、実質的な相違点ではない旨を主張する(審判請求書第32頁第1行~第36頁、第51頁第6~12行、口頭審理陳述要領書第27頁第1行~第34頁第6行、第34頁第16行~第36頁第4行、第41頁第20行~第42頁第15行等)。 しかしながら、上記アに記載したように、「取付穴」によって手押部材に取り付けられるものは、甲8発明においては「台車用安全カバー」であり、本件発明1においては「保護部材」であるから、甲8発明の「台車用安全カバー」は、本件発明1の「保護部材」に相当するところ、甲8発明の「台車用安全カバー」は「グリップ部」を有しないのに対して、本件発明1の「保護部材」は「グリップ部」を有する点で相違するといえる。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (イ)甲8相違点2について 甲8相違点2に係る甲8発明の構成は、本件発明1の「前記取付穴に前記棒状部材が挿入される方向」から見た「保護部」の形状に合わせて、「本体の外周部からスリットを通じてハンドルが挿入される方向」から「寸法を外径106mm、内径26mm、長さ100mm及び厚み40mmとし」た円筒状の「本体」を見ると、その形状は、四角形(106mm×100mmの寸法)となることは明らかである。そうすると、甲8相違点2は、本件発明1の保護部が「略円形」であるのに対して、甲8発明の本体が「四角形」であることを規定したものとなるから、保護部材に係る構成の相違点として実質的なものである。 これに対して、請求人は、本件発明1で規定される「前記取付穴に前記棒状部材が挿入される方向」の「される」は、取付動作を規定しているものではなく、挿入された状態を示す表現であって、甲8発明において「取付穴を向く方向から見て」「略円形」であることと、本件発明1において「前記取付穴に前記棒状部材が挿入される方向から見て」「略円形」であることとは、実質的に相違しない旨主張する(口頭審理陳述要領書第44頁第1~19行)。 しかしながら、請求人は、「される」が挿入された状態を示す表現であるとする解釈の根拠を何も示しておらず、そのように解釈する合理的な根拠を見いだすことはできない。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (ウ)甲8相違点3について 甲8相違点3によれば、保護部材の取付対象たる「運搬台車に固定される手押部材」について、本件発明1では、「運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される長尺の棒状部材」であるのに対し、甲8発明では、「台車に固定され、グリップ部である水平部分と、水平部分の両端から延びるカーブ部分と、水平部分の両端からカーブ部分を介して下向きに延びる上下方向に沿った部分と、を有する、コ字状のハンドル」である。 そして、「長尺の棒状部材」(「棒状」の意味については、被請求人の令和4年10月3日付け上申書に添付された参考資料1及び2参照)と「コ字状のハンドル」は、形状が異なるといえるから、甲8相違点3が構成上の実質的な相違点であるのは明らかである。 これに対して、請求人は、本件発明1の「棒状」部材の意味内容については、(a)クレーム上も明細書上も特に限定はなく、その全体が湾曲していたとしても、その一部が湾曲していたとしても、いずれであっても「棒状」部材に含まれる、(b)直線部分があれば「棒状」部材である、(c)「棒状」か「ハンドル」かの相違は、些細な違いにすぎないため、実質的に相違しない旨主張する(口頭審理陳述要領書第68頁下から3行~69頁11行)。 しかしながら、上記参考資料1及び2に照らせば、「長尺の棒状部材」と「コ字状のハンドル」は、形状が異なるといえるのは、上記のとおりである。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (エ)小括 以上によれば、甲8相違点1~3は、実質的な相違点であることから、本件発明1は、甲8発明ではない。 (2)無効理由2について ア 対比 本件発明1と甲8発明とは、上記(1)イに記載した一致点で一致し、甲8相違点1~3で相違する。 イ 判断 (ア)甲号証の開示内容 まず、甲9及び甲10には、「台車の直方体の枠状フレームにおける、台車の四隅に位置する上下方向に沿った長尺状の部材」について、台車同士の間で指や手首を挟まれる災害が発生し得ることが記載されている(甲9の摘記事項エ及びキ、甲10の摘記事項エ及びオ)。また、甲9~12には、長尺状の手押部材を有する台車が記載され(上記1(4)~(7))、甲11、13~16等には、台車の手押部材の端部にグリップ部が設けられた構成が記載されている(上記1(6)、(8)~(11)等)。さらに、甲14等には、グリップ部と保護部を一体とする構成が記載されている(上記1(9)等)。 (イ)甲8相違点1について 請求人は、仮に、本件発明1の「保護部材」が手押部材から独立したグリップ部と保護部を備えたものであり、甲8発明は、グリップ部が台車の手押部材に存在し、保護部のみ備えたものであると解釈しても、台車の手押部材とは別の部材のグリップ部を設けることは、周知技術であり(甲11、13~16、37~41、43)、甲8発明において、このようなグリップ部を採用することは容易であり、グリップ部と保護部を一体とすることは、周知の構成であり(甲14、37~41、43)、甲8発明においてグリップ部と保護部を一体に構成することに何ら困難性はない旨主張するので(口頭審理陳述要領書第39頁第9~24行、第42頁第6~15行)、以下検討する。 a 甲8発明はそれ自体で機能しグリップ部を要さないこと 甲8発明の台車用安全カバーは、コ字状のハンドルの水平部分をグリップ部としたとき、ハンドルのカーブ部分に取り付けられることにより機能するものであって(甲8の2の「手挟み事故発生!!」の記載が付された写真(摘記事項チ)、及び甲8の3の「Before」との標題が付いた写真(摘記事項ツ)を参照)、かかる機能が発揮されるには、当該ハンドルに既に存在するグリップ部があれば足りるものであるから、当該台車用安全カバーに更にグリップ部を付加する動機はないといえる。 b 甲8発明と周知技術のグリップ部は取り付け位置が異なること 請求人は、台車の手押部材を覆うようなグリップ部を周知技術として例示し、甲8発明にグリップ部を付加することは容易である旨主張していると認められる。 ここで、請求人が周知技術として提示する各甲号証(甲11、13~16、37~41、43)に示されたグリップ部は、いずれも手押部材の一端に装着するもの、又は、手押部材の一端をグリップ部とするものであると認められる(以下、「手押部材の一端に装着されたグリップ部」を単に「周知技術」という。)。 しかしながら、甲8発明の台車用安全カバーは、コ字状のハンドルのカーブ部分に取り付けられるものであって、更に手押部材を覆うグリップ部を付加する場合、ハンドルのグリップ部である水平部分へ付加することとなるが、上述のとおり、周知技術のグリップ部は手押部材の端部に設けるものであり、端部の存在しないハンドルの水平部分に付加する発想に至ることはないといえる。 c 甲8発明にグリップ部を付加しても本件発明1の構成に至らないこと 仮に、請求人が提示する各甲号証から「台車の手押部材を覆うグリップ部」を認定し、当該グリップ部を甲8発明に付加したとしても、本件発明1に至ることはない。 すなわち、本件発明1は、「使用者が手で掴むグリップ部」と「前記グリップ部の下側に位置し、前記グリップ部の外周面よりも外側に突出させて前記グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部」と「前記棒状部材が挿入される取付穴」からなる「保護部材」である。ここで、「グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する」機能は、「保護部」が「グリップ部の下側に位置し」たことにより、「保護部」と「グリップ部」とが協働(「保護部」が「グリップ部」を掴んだ手を下側から支えつつ保護すること)して発揮されるものと認められる。 しかしながら、仮に、甲8発明における台車のハンドルの水平部分を覆うようにグリップ部を単純に付加することができたとしても、甲8発明の本体が、当該グリップ部に対して下側に位置するとはいえず、また両者が協働するものとも認められない。 d 甲8発明と周知構成の保護部は保護態様が異なること 請求人が周知の構成(甲14、37~41、43)として主張する、グリップ部と保護部を一体とする構成は、手押部材の一端に装着されたグリップ部を掴んだ手の甲が周囲の物体に接触しないように保護するものであると認められる(以下、「手押部材の一端に装着されたグリップ部で保護部と一体となり、手の甲を保護する」構成を単に「周知構成」という。)。かかる保護態様においては、保護対象である手の甲は、グリップ部を掴んだ際に、手押部材の長さ方向においてグリップ部と位置が重なることから、グリップ部と保護部を一体とする構成を採用することは自然である。 一方で、甲8発明は、台車のハンドルのグリップ部を掴んだ手が、ハンドルのカーブ部分にかからないように手の移動を規制して、手を保護するものである(甲8の2の「手挟み事故発生!!」の記載が付された写真(摘記事項チ)、及び甲8の3の「Before」との標題が付いた写真(摘記事項ツ)を参照)。そして、かかる保護態様の甲8発明においては、後記(エ)のとおり、本体の略円筒形の形状は、その使い方と密接に関係しているものであって、本体の寸法は、コ字状のハンドルのカーブ部分をカバーする長さが採用されている。このように、甲8発明は、周知構成とは異なり、手の甲を保護するものとまではいえず、台車のハンドルのグリップ部を掴んだ手は、「ハンドルの長さ方向においてグリップ部と位置が重なる」とまではいえない。そうすると、甲8発明においては、たとえ請求人が主張する周知構成が存在するとしても、かかるグリップ部に保護部を一体化するという発想に至ることはない。 e 請求人の主張について 請求人の主張は上記のとおりであり、甲8発明に周知技術であるグリップ部を適用する動機付けについては、明確な主張はなされていない。請求人は、周知技術の存在を前提として、手押部材とは別の部材のグリップ部を設けるか否かは、当業者が適宜選択可能な設計事項にすぎない事項であるとも主張しているところ、甲8発明において、ハンドルの一部であるグリップ部につき、台車用安全カバーが有する構成に変更することが設計事項であるとはいえないのは、上記a~dのとおりである。 f 小括 上記a~eによれば、甲8発明に周知技術であるグリップ部を適用する動機付けがあるとはいえず、また、本件発明1の構成に至ることはない。したがって、甲8相違点1に係る本件発明1の構成については、甲8発明及び甲11、13~16、37~41、43に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)甲8相違点2について 請求人は、甲8発明に、周知技術1(「運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される長尺状の棒状部材を有する台車」・審判請求書第45頁下から7~6行参照 )又は甲1、9~12の技術的事項(例えば、甲12に記載の棒状部材)を適用するに際しては、「前記取付穴に前記棒状部材が挿入される方向から見て」「略円形」となるように取り付ける以外なく、当業者が適宜なし得る事項にすぎない旨主張するので(口頭審理陳述要領書第44頁第20~24行)、以下検討する。 a 甲8発明のハンドルには上端がなく、軸方向からの挿入は無理であること 甲8発明のハンドルは「台車に固定され、グリップ部である水平部分と、水平部分の両端から延びるカーブ部分と、水平部分の両端からカーブ部分を介して下向きに延びる上下方向に沿った部分と、を有する、コ字状のハンドル」である。当該ハンドルには上端がなく、また、下記(エ)に示すとおり、甲8発明の手押部材を棒状部材とすることも容易想到ではないから、そもそも、ハンドルの軸方向から台車用安全カバーの取付穴にハンドルを挿入することはできない。このように、取付対象がコ字状のハンドルであるために、台車用安全カバーは、必然的に「本体の外周部からスリットを通じてハンドルが挿入される取付穴」を有しているのである。 そうすると、甲8発明において、「本体の外周部からスリットを通じてハンドルが挿入される方向」を変更して、「ハンドルが挿入される方向」を「取付穴を向く方向」と一致させ、もって、甲8相違点2に係る本件発明1の構成とする動機付けがあるとはいえない。 b 甲8発明はスリットを介して挿入する取り付け方に技術的意義を有すること 甲8発明は、「本体の外周部からスリットを介してハンドルが挿入される取付穴」を有するものである。このように、甲8発明は、スリットを介してハンドルが挿入されるものであり、周知技術1の「長尺状の棒状部材」の上端から挿入するように、取り付け方を変更することは想定できない。すなわち、甲8発明のかかる構成は、取り付け箇所が台車のハンドルのカーブ部分であることを前提として、スリットを介してハンドルを挿入してテープを貼着するという、簡単な取り付け方とした点に技術的意義を有するものである(甲8の2の摘記事項チの「取り付けはとても簡単。ハンドルのカーブ部分に挟み込み、テープをはがして包むだけ!」を参照)。 そして、甲8発明を周知技術1の「棒状部材」の上端から挿入するためには、予め、テープでスリットを貼り合わせた状態での取付穴の内径が「棒状部材」の外径に合うように、取付穴を形成する必要があり、取付穴の内径の調整が煩雑である(少しでも内径が小さいとハンドルが挿入できず、少しでも内径が大きいと本体がハンドルからずり落ちることになる。)。また、予め、取付穴を形成してから棒状部材に通すため、棒状部材の外周と取付穴との間に、若干の隙間が残る蓋然性が高く、きちんと固定されない可能性もある(スリットを介した取付けでは、棒状部材にテープを用いてきつく巻き付けるように取り付けることが可能であり、しっかりと固定される。)。 そして、甲8発明の「本体」は、後記(エ)でも述べるように、台車のハンドルのグリップ部を掴んだ手が、ハンドルのカーブ部分にかからないように手の移動を規制するとともに、先んじて周囲の物体に接触して、手を保護するものであり、このような役割を果たすため、本体につき一定の長さを確保すべく、その形状を「略円筒形」として、ハンドルのカーブ部分に取り付けるものである。したがって、甲8発明の「本体」の形状を、「前記取付穴に前記棒状部材が挿入される方向から見て」「略円形」とすることが、設計的な事項ということもできない。 c 請求人の主張について これに対して、請求人は、甲8発明に周知技術1の棒状部材を適用する動機付けを主張するのみであり、甲8発明の取り付け方を変更する動機付けについては、具体的な主張をしていない(口頭審理陳述要領書第44頁第24行~第45頁第2行)。 d 小括 以上のとおりであるから、甲8発明に周知技術1の棒状部材を適用して、「前記取付穴に前記棒状部材が挿入される方向から見て」「略円形」となるように取り付ける動機付けがあるとはいえない。 したがって、甲8相違点2に係る本件発明1の構成については、甲8発明及び甲1、9~12の技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (エ)甲8相違点3について 請求人は、甲8発明はカーブ部分のみでしか装着できないものではなく、周知技術1又は甲1、9~12の技術的事項を組み合わせ、曲がった部分のない一直線状の棒状部材の台車に、装着の対象を置き換えることは容易に想到し得たといえる旨主張する(口頭審理陳述要領書第40頁第1行~第41頁第19行)。 以下検討するに、たとえ、甲9及び甲10に、上記(ア)のとおり、長尺状の手押部材について指や手首を挟む危険性が示されているとしても、甲8発明の「台車用安全カバー」の取付対象を「コ字状のハンドル」から「長尺の棒状部材」に変更する動機付けはないといえる。具体的には、次のとおりである。 a 甲8の3はコ字状のハンドルの置換を示唆するものでないこと 甲8の3(摘記事項ツ~ト)は、コ字状ハンドルを有した台車を前提として、台車用安全カバーをそのカーブ部分に取り付けることが記載されており、当該ハンドルを一直線状の棒状部材とすることは何ら示唆されていない。 b 甲8発明の形状と使い方について(形状と使い方が密接に関係していること) まず、形状については、甲8発明の台車用安全カバーは、「略円筒形」(外径106mm×長さ100mm)の形状を呈しており、外周部から取付穴に通じるスリットが形成された本体を有するものである。 次に、使い方については、上記(イ)dに説示したとおり、甲8発明は、台車のハンドルのグリップ部を掴んだ手が、ハンドルのカーブ部分にかからないように手の移動を規制するとともに、先んじて周囲の物体に接触して、手を保護するものである。このような役割を果たすため、本体につき一定の長さを確保すべく、その形状を「略円筒形」として、ハンドルのカーブ部分に挟み込むことを可能にしている。 また、上記(ウ)に説示したとおり、甲8発明は、本体のスリットを介して台車のハンドルを挿入してテープを貼着して取り付けるものである。略円筒形の本体にスリットが形成された構成が採用されているから、本体が台車のハンドルの周囲を包み込むことができ、スリットの合わせ面を閉じて、テープを用いてハンドルを包み込んだ本体をきつく巻き付けることで、本体を台車のハンドルのカーブ部分に固定することができる。 上記の説示を踏まえると、甲8発明の略円筒形の本体の形状は、その使い方と密接に関係しているものと認められる。そして、本体の形状と使い方が密接に関係している点については、甲8発明の構成において、「グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないようにする本体と、本体の外周部からスリットを通じてハンドルが挿入される取付穴と、を有し、本体の外周部からスリットを通じてハンドルが挿入される方向と直交する方向であって、取付穴を向く方向から見て、本体は、略円形である」の部分に反映されているところである。 c コ字状のハンドルのカーブ部分をカバーする長さが採用されていること 上記bで説示したところを踏まえ、甲8発明の本体は、コ字状のハンドルのカーブ部分をカバーする長さ(100mm)が採用されているといえる。そして、このことは、甲8発明の構成においては、「寸法を外径106mm、内径26mm、長さ100mm及び厚み40mmとし、グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないようにする本体」の部分に反映されている。 d 甲8発明はコ字状のハンドルに適した構成を採用していること 一般的に、コ字状のハンドルは、水平部分がグリップ部を構成するものであるところ、技術常識に照らせば、その特徴は、台車の操作性(グリップ部を把持した姿勢で、台車を押し易く取り回し易いこと)にあるものと認められる(例えば、甲3の第34頁の図3及び第35頁の図5を参照)。そして、甲8発明については、このようなコ字状のハンドルにおいて、台車の取り回し中に水平部分のグリップ部の両端に位置するカーブ部分に手がかかると、上記(イ)dのとおり、周囲の物体に手が接触する危険性が生じるという課題があるところ、かかる課題を解決するため、上記b及びcのとおり、コ字状のハンドル(水平のグリップ部)に適した構成を採用したものであると認められる。 上述のとおり、甲8発明の「台車用安全カバー」は、台車のコ字状のハンドルのカーブ部分に取り付けられることで機能する形状、構造になっていることからみて、たとえ、甲9及び甲10に、上記(ア)のとおり、長尺状の手押部材について指や手首を挟む危険性が示されているとしても、コ字状のハンドルに特有の課題解決手段を有する甲8発明について、長尺状の手押部材に適用する動機付けが示されているとまではいえない。 そうすると、甲8発明の取付対象を「コ字状のハンドル」から「長尺の棒状部材」に変更する動機付けはないといえる。 e 請求人の主張について これに対して、請求人は、「運搬台車を移動させる際には、手押し棒を掴んでいる使用者の手が壁等といった周辺に存在する物体に接触する虞がある」との課題が当業者に知られた課題であって、「グリップの外周面よりも突出させた円形状の部材を手押部材に取り付ける」という解決手段も当業者に知られていたことから、甲8発明に周知技術1又は甲1、9~12の技術的事項を組み合わせる動機付けがある旨主張している(口頭審理陳述要領書第40頁第17~20行、第8頁第2行~第21頁第5行)。 しかしながら、請求人が主張する事情は、上記dのとおり、コ字状のハンドルに適した構成を採用している甲8発明に対して、周知技術1等を適用する動機付けまで示すものとはいえない。 また、請求人は、甲53(長岡産業株式会社代表取締役 長岡利典作成の陳述書)及び甲8の3(「3.完成」との標題の付いた写真)を示して「台車用安全カバーはハンドルのカーブ部分以外にも取り付け可能なものであった」(上申書(2)第17頁第16~17行)と主張する。 しかしながら、甲53は、甲8発明の構成を立証する客観的証拠ではなく、甲8の3の当該写真は、ハンドルを正面から撮影したものではないから、いずれも、甲8発明の「台車用安全カバー」がハンドルのカーブ部分以外に取り付け可能であることを客観的に示すものとはいえない。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 f 小括 上記a~eによれば、甲8相違点3に係る本件発明1の構成は、甲8発明及び甲1、9~12に記載の技術的事項等に基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (オ)まとめ したがって、甲8相違点1~3に係る本件発明1の構成は、たとえ、甲9及び甲10に長尺状の手押部材について指や手首を挟む危険性が示されているとしても、甲8発明及び甲1、9~12に記載の技術的事項等に基いて当業者が容易に想到し得たとはいえない。 そうすると、本件発明1は、甲8発明及び甲1、9~12に記載の技術的事項等に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)無効理由3について ア 対比 (ア)甲9発明との対比 本件発明1と甲9発明とを対比する。 甲9発明の「台車」は、本件発明1の「運搬台車」に相当する。 甲9発明の「台車の直方体の枠状フレームにおける、台車の四隅に位置する上下方向に沿った長尺状の部材」は、本件発明1の「運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される長尺の棒状部材に対して取り付けられる保護部材」との関係において、「運搬台車の4隅に位置する部材」の限りにおいて一致する。 甲9発明の「使用者が手で掴むことができる部分」は、本件発明1の「使用者が手で掴むグリップ部」に相当する。 してみると、本件発明1と甲9発明とは、 「運搬台車の4隅に位置する部材であって、 使用者が手で掴むことができるグリップ部を有する部材。」 である点で一致し、次の3点で相違する。 <甲9相違点1> 「運搬台車の4隅に位置する部材」が、本件発明1では、「運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される長尺の棒状部材に対して取り付けられる保護部材」であるのに対し、甲9発明では、「台車の直方体の枠状フレームにおける、台車の四隅に位置する上下方向に沿った長尺状の部材」である点。 <甲9相違点2> 本件発明1は、「保護部材」が「使用者が手で掴むグリップ部」を有し、「前記グリップ部の下側に位置し、前記グリップ部の外周面よりも外側に突出させて前記グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部」を有するのに対し、甲9発明は、「使用者が手で掴むことができる部分」が「上下方向に沿った長尺状の部材」の一部であり、「保護部」を有しない点。 <甲9相違点3> 本件発明1は、「前記棒状部材が挿入される取付穴」を有し、「前記取付穴に前記棒状部材が挿入される方向から見て、前記保護部は、略円形である」のに対し、甲9発明は、「保護部」のほかに「取付穴」も有しない点。 (イ)甲10発明との対比 本件発明1と甲10発明とを対比する。 甲10発明の「台車」は、本件発明1の「運搬台車」に相当する。 甲10発明の「台車の直方体の枠状フレームにおける、台車の四隅に位置する上下方向に沿った長尺状の部材」は、本件発明1の「運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される長尺の棒状部材に対して取り付けられる保護部材」との関係において、「運搬台車の4隅に位置する部材」の限りにおいて一致する。 甲10発明の「使用者が手で掴むことができる部分」は、本件発明1の「使用者が手で掴むグリップ部」に相当する。 してみると、本件発明1と甲10発明とは、 「運搬台車の4隅に位置する部材であって、 使用者が手で掴むことができるグリップ部を有する部材。」 である点で一致し、次の3点で相違する。 <甲10相違点1> 「運搬台車の4隅に位置する部材」が、本件発明1では、「運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される長尺の棒状部材に対して取り付けられる保護部材」であるのに対し、甲10発明では、「台車の直方体の枠状フレームにおける、台車の四隅に位置する上下方向に沿った長尺状の部材」である点。 <甲10相違点2> 本件発明1は、「保護部材」が「使用者が手で掴むグリップ部」を有し、「前記グリップ部の下側に位置し、前記グリップ部の外周面よりも外側に突出させて前記グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部」を有するのに対し、甲10発明は、「使用者が手で掴むことができる部分」が「上下方向に沿った長尺状の部材」の一部であり、「保護部」を有しない点。 <甲10相違点3> 本件発明1は、「前記棒状部材が挿入される取付穴」を有し、「前記取付穴に前記棒状部材が挿入される方向から見て、前記保護部は、略円形である」のに対し、甲10発明は、「保護部」のほかに「取付穴」も有しない点。 イ 判断 (ア)甲9発明についての判断(甲8発明との組み合わせ) 甲9相違点1~3は、要するに、本件発明1が「グリップ部」、「保護部」及び「取付穴」からなる「保護部材」である点で、本件発明1と甲9発明が相違するというものである。 そして、甲8発明が本件発明1の「保護部材」に相当しないことは、上記(1)ウで述べたとおりであり、また、甲8発明が甲9発明の「上下方向に沿った長尺状の部材」のような一直線状の棒状部材に適用することが容易想到でないことは、上記(2)イで述べたとおりである。具体的には、次のとおりである。 a 甲9相違点1~3と甲8相違点1~3との対応関係 甲9相違点1~3と甲8相違点1~3を対比すると、甲9相違点2は、甲8相違点1に、甲9相違点3は、甲8相違点2にそれぞれ対応する。 すなわち、甲9相違点2に係る本件発明1の構成は、実質的に、甲8相違点1に係る本件発明1の構成と同じである。 また、甲9相違点3に係る本件発明1の構成は、実質的に、甲8相違点2に係る本件発明1の構成を包含するものである。 b 甲9相違点2及び3について 事案に鑑み、甲9相違点2及び3を合わせて検討する。 請求人は、甲9相違点2及び3に係る本件発明1の構成は、甲8発明及び周知技術1又は甲1、9~12の技術的事項等に基いて、当業者が容易に想到し得たものである旨主張している(口頭審理陳述要領書第49頁第6行~第50頁第9行)。 この点、上記aを踏まえると、甲9相違点2及び3に係る本件発明1の構成は、甲8相違点1及び2について検討した理由(上記(2)イ(イ)(ウ))と同様の理由により、たとえ、甲9及び甲10に長尺状の手押部材について指や手首を挟む危険性が示されているとしても、甲9発明、甲8発明及び周知技術1又は甲1、9~12の技術的事項等に基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 c 小括 以上のとおりであるから、少なくとも、甲9相違点2及び3に係る本件発明1の構成は、甲9発明及び甲8発明に基いて当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、本件発明1は、甲9発明及び甲8発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)甲9発明についての判断(甲3発明との組み合わせ) a 甲3発明について 甲3には、上記1(2)に記載したように、「手押台車に固定されたコ字状のパイプと、一対の鍔状ガードとを有する、手押部材であって、コ字状のパイプは、水平方向に沿った取っ手と、取っ手の両端から下向きに延びる上下方向に沿った支柱とからなり、一対の鍔状ガードは、上下に分割する樹脂製のパーツで構成され、水平方向に沿った取っ手における、台車幅を超えない位置に装着されるとともに、外径寸法を100mmとし、台車の取っ手を持つ位置を表示し、かつ、取っ手を掴んだ両手が周囲の物体に接触しないようにガードするものである、手押部材。」(甲3発明)が記載されていると認められる。 他方で、甲3発明は、「一対の鍔状ガード」が「水平方向に沿った取っ手」「に装着される」ものであり、甲9相違点1に係る本件発明1の構成である「保護部材」が「運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される長尺の棒状部材に対して取り付けられる」構成を備えるものではない。 また、甲3発明は、「コ字状のパイプ」が「水平方向に沿った取っ手」を有するものであり、「一対の鍔状ガード」は、「取っ手」又は「グリップ部」に相当する構成を有するものではないから、甲9相違点2に係る本件発明1の構成である「保護部材」が「使用者が手で掴むグリップ部」を有する構成を備えるものではない。 さらに、甲3発明は、「一対の鍔状ガード」については、「水平方向に沿った取っ手における、台車幅を超えない位置に装着されるとともに、外径寸法を100mmとし、台車の取っ手を持つ位置を表示し、かつ、取っ手を掴んだ両手が周囲の物体に接触しないようにガードするものである」が、上記のとおり「使用者が手で掴むグリップ部」を備えるものではないから、少なくとも、甲9相違点2に係る本件発明1の構成である「前記グリップ部の下側に位置し、前記グリップ部の外周面よりも外側に突出させ」た「保護部」の構成を備えるものではない。 b 甲9相違点2について (a)甲9発明に甲3発明を適用しても本件発明1の構成に至らないこと また、上記aによれば、甲3発明は、甲9相違点2に係る本件発明1の構成である「保護部材」が「使用者が手で掴むグリップ部」を有する構成を備えるものではないから、仮に、甲9発明に甲3発明を適用したとしても、甲9相違点2に係る本件発明1の構成である「保護部材」が「使用者が手で掴むグリップ部」を有する構成には至らない。 (b)周知技術のグリップ部を適用する動機付けはないこと 以下では、周知技術のグリップ部を適用する動機付けについて、検討する。具体的には、甲9発明に周知技術のグリップ部(甲11、13~16、37~41、43)を適用する動機付け(b-1)と、甲9発明に甲3発明を適用する際に、甲3発明の鍔状ガードに周知技術のグリップ部を適用する動機付け(b-2)である。 (b-1)甲9発明への適用について(長尺状の部材に端部がないこと) 甲9発明は、「台車の直方体の枠状フレームにおける、台車の四隅に位置する上下方向に沿った長尺状の部材であって、使用者が手で掴むことができる部分を有する、長尺状の部材」である。当該長尺状の部材は、「直方体の枠状フレーム」の一部を構成するものであって、その上端には水平方向に沿った棒状部材が接続されているから、当該長尺状の部材の長さ方向から、周知技術のグリップ部の取付穴に当該部材を挿入して装着することはできない。そうすると、甲9発明の長尺状の部材に、周知技術のグリップ部(手押部材の一端に装着されたグリップ部)を適用する動機付けはない。 (b-2)甲3発明への適用について (b-2-1)甲3発明はそれ自体で機能しグリップ部を要さないこと 甲3発明の鍔状ガードは、「水平方向に沿った取っ手」をグリップ部としたとき、「水平方向に沿った取っ手における、台車幅を超えない位置に装着される」ことにより、「台車の取っ手を持つ位置を表示し、かつ、取っ手を掴んだ両手が周囲の物体に接触しないようにガードする」機能を発揮するものであって、当該鍔状ガードに更にグリップ部を付加する動機はないといえる。 (b-2-2)甲3発明の鍔状ガードは上下分割のパーツで構成されること 甲3発明の「一対の鍔状ガード」は、「上下に分割する樹脂製のパーツで構成され」るものである。かかる構成が採用されているのは、技術常識に照らせば、取っ手に、「一対の鍔状ガード」を簡単に装着・着脱するとともに、装着位置につき「台車幅を超えない」範囲(甲3の第34頁・写真2(摘記事項ケ)の右下及び左上の写真における装着位置を参照)で調整するためであると認められる。 一方で、周知技術であるグリップ部は、手押部材の端部に上から装着するものであって、一体の構成(分割構成が採用されていないもの)であると認められる。そうすると、上記したとおり、簡単に装着・着脱するための構成である、上下分割のパーツの構成を変更してまで、甲3発明の鍔状ガードに、装着の仕方や構成が全く異なる周知技術のグリップ部を組み合わせようとする発想に至ることはない。 (b-2-3)甲9の長尺状の部材に甲3の鍔状ガードを単に適用するのが自然であること 甲9発明に甲3発明を適用するに当たっては、単に、甲9の長尺状の部材に甲3の鍔状ガードを適用するのが自然な発想である。すなわち、甲9において、指を挟まれる災害が発生し得る課題については(上記(2)イ(ア))、単に、甲3の鍔状のガードを甲9の長尺状の部材に装着すれば解決し得る(しかも、かかる適用態様であれば、装着位置の調整も可能である。)。このように、単なる適用で足りるにもかかわらず、わざわざ周知技術のグリップ部を更に適用するとする発想は不自然である。しかも、甲9の長尺状の部材は、グリップ部の位置が特定されておらず、いずれの位置でも使用者に合わせてグリップ部とすることが可能であるところ、かかる長尺状の部材に、装着位置が手押部材の上端に限定された周知技術のグリップ部を更に組み合わせようとする発想に至ることはない。 (c)請求人の主張について 請求人は、甲15、16には、グリップ部の一部にリブがあることが記載されており、甲11、13~16、37~40に記載されるように、手押部材とは別の部材のグリップ部を設けることは周知であり、甲14、37~41、43に記載されるように、グリップ部と保護部を一体とすることも周知であるため、甲3発明を、「保護部材」が「使用者が手で掴むグリップ部」を有するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであると主張する (口頭審理陳述要領書第46頁第9行~25行等)。 しかしながら、請求人は、甲3発明の鍔状ガードに周知技術のグリップ部を適用する動機付けについては、明確な主張をしておらず、また、上記(b)によれば、甲9発明に甲3発明を適用するに当たり、更に周知技術のグリップ部を適用することが、当業者が適宜選択可能な設計事項であるともいえない。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (d)小括 上記(a)~(c)によれば、甲9発明に甲3発明を適用しても、甲9相違点2に係る本件発明1の構成に至ることはなく、また、甲9発明に周知技術のグリップ部を適用する動機付け、及び、甲9発明に甲3発明を適用する際に、甲3発明の鍔状ガードに周知技術のグリップ部を適用する動機付けはない。よって、甲9相違点2に係る本件発明1の構成は、容易想到であるとはいえない。 c 小括 以上のとおりであるから、少なくとも、甲9相違点2に係る本件発明1の構成は、甲9発明及び甲3発明に基いて当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、本件発明1は、甲9発明及び甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)甲10発明についての判断 甲10相違点1~3は、甲9相違点1~3と実質的に同一であるから、上記(ア)及び(イ)の理由と同様の理由により、甲10相違点2に係る本件発明1の構成は、甲10発明及び甲8発明、又は甲10発明及び甲3発明に基いて当業者が容易に想到し得たとはいえない。 そうすると、本件発明1は、甲10発明及び甲8発明、又は甲10発明及び甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)無効理由4について ア 甲1発明の「衝撃緩衝用部材」と本件発明1の「保護部材」との対応関係 甲1発明の「衝撃緩衝用部材」における「本体1」と本件発明1の「保護部材」における「保護部」とは奏する作用が異なるが、ここでは、仮に、甲1発明の「衝撃緩衝用部材」における「本体1」と本件発明1の「保護部材」における「保護部」とで奏する作用が同じであると仮定して、甲1発明の「衝撃緩衝用部材」と本件発明1の「保護部材」との対応関係を検討する。 甲1発明は、「荷物運搬用の手押し車」における「コ字状のパイプからなる手押しハンドル4の上下方向に沿った立ち上がり部4bの上部に対して取り付けられる衝撃緩衝用部材」であって、「本体1」と「係止孔1a」とを有するものであるため、甲1発明においては、「本体1」は「衝撃緩衝用部材」の一部分であり、「衝撃緩衝用部材」が「本体1」のほかに「係止孔1a」を有し、「衝撃緩衝用部材」が「係止孔1a」によって「パイプ」に取り付けられ、パイプは手押部材であるといえる。 他方で、本件発明1は、「運搬台車」における「長尺の棒状部材」「に対して取り付けられる保護部材」であって、「グリップ部」と「保護部」と「前記棒状部材が挿入される取付穴」とを有するものであるため、本件発明1においては、「保護部」は「保護部材」の一部分であり、「保護部材」が「保護部」のほかに「取付穴」を有し、「保護部材」が「取付穴」によって「棒状部材」に取り付けられる。 そうすると、「取付穴」によって棒状部材に取り付けられるものは、甲1発明においては「衝撃緩衝用部材」であり、本件発明1においては「保護部材」であるため、仮に、甲1発明の「衝撃緩衝用部材」における「本体1」と本件発明1の「保護部材」における「保護部」とで奏する作用が同じであると仮定すると、甲1発明の「衝撃緩衝用部材」は、本件発明1の「保護部」に相当するものではなく「保護部材」に相当するものであり、甲1発明の「衝撃緩衝用部材」の一部分である「本体1」が、本件発明1の「保護部材」の一部分である「保護部」に相当するといえる。 請求人は、甲1から、ハンドル4の立ち上がり部4bと衝撃緩衝用部材とから構成される保護部材に係る発明(審判請求書第43頁第7行~第44頁第5行に記載された、請求人の主張する「甲1発明」)が認定でき、当該保護部材に係る発明の「ハンドル4の立ち上がり部4b」が本件発明1の「グリップ部」に相当し、当該保護部材に係る発明における「衝撃緩衝用部材」が、本件発明1の「保護部」に相当すると主張する(審判請求書第40頁第9行~第44頁第5行、第63頁第1~14行、口頭審理陳述要領書第52頁第4行~第53頁第25行、第82頁第23行~第83頁第25行等)。 しかしながら、甲1には、「取付穴(係止孔1a)」によって手押部材に取り付けられるものとして、「衝撃緩衝用部材」は記載されているが、「取付穴」によって手押部材に取り付けられるものとして、「ハンドル4の立ち上がり部4b」と「衝撃緩衝用部材」とから構成される部材は記載されていないため、甲1から、「取付穴」によって手押部材に取り付けられるものとして、「ハンドル4の立ち上がり部4b」と「衝撃緩衝用部材」とから構成される保護部材を観念することはできない。 そうすると、上述したように、「取付穴」によって手押部材に取り付けられるものは、甲1発明においては「衝撃緩衝用部材」であり、本件発明1においては「保護部材」なのであるから、仮に、甲1発明の「衝撃緩衝用部材」における「本体1」と本件発明1の「保護部材」における「保護部」とで奏する作用が同じであると仮定すれば、甲1発明の「衝撃緩衝用部材」は、本件発明1の「保護部材」に相当し、甲1発明の「衝撃緩衝用部材」は「グリップ部」を有しないのに対して、本件発明1は「保護部材」は「グリップ部」を有する点で相違するといえる。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 イ 対比 上記アを踏まえて、本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「荷物運搬用の手押し車」は、本件発明1の「運搬台車」に相当する。 甲1発明の「荷物運搬用の手押し車に固定され」ることは、本件発明1の「運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される」こととの関係において、「運搬台車に固定され」る限りにおいて一致する。 甲1発明の「水平方向に沿った手押し部4aと、水平方向に沿った手押し部4aの両端から下向きに延びる上下方向に沿った立ち上がり部4bと、を有するコ字状のパイプからなる手押しハンドル4の上下方向に沿った立ち上がり部4bの上部」は、本件発明1の「長尺の棒状部材」との関係において、「手押部材」の限りにおいて一致する。 甲1発明の「コ字状のパイプからなる手押しハンドル4の上下方向に沿った立ち上がり部4bの上部に対して取り付けられる衝撃緩衝用部材」は、本件発明1の「長尺の棒状部材に対して取り付けられる保護部材」との関係において、「手押部材に対して取り付けられる部材」の限りにおいて一致する。 甲1発明の「通路の側壁等との衝突を緩衝する本体1」は、本件発明1の「前記グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部」との関係において、「本体」の限りにおいて一致する。 甲1発明の「本体1の側部から切欠部2を通じて立ち上がり部4bが挿入される係止孔1a」は、本件発明1の「前記手押部材が挿入される取付穴」に相当する。 甲1発明の「本体1の側部から切欠部2を通じて立ち上がり部4bが挿入される方向と直交する方向であって、係止孔1aを向く方向」は、本件発明1の「前記取付穴に前記棒状部材が挿入される方向」との関係において、「手押部材の軸方向」の限りにおいて一致する。 してみると、本件発明1と甲1発明とは、 「運搬台車に固定される手押部材に対して取り付けられる部材であって、 本体と、 前記手押部材が挿入される取付穴と、を有し、 前記手押部材の軸方向から見て、前記本体は、略円形である部材。」 である点で一致し、次の3点で相違する。 <甲1相違点1> 本件発明1は、「前記グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部」を有する「保護部材」であって、「保護部材」が「使用者が手で掴むグリップ部」を有し、「保護部」が「前記グリップ部の下側に位置し、前記グリップ部の外周面よりも外側に突出させて前記グリップ部を掴んだ手」を保護するのに対して、甲1発明は、「通路の側壁等との衝突を緩衝する本体1」を有する「衝撃緩衝用部材」であって、「手押し部4a」は「手押しハンドル4」の一部であり、「衝撃緩衝用部材」が有するものではない点。 <甲1相違点2> 本件発明1は、「保護部」が「前記取付穴に前記棒状部材が挿入される方向から見て」「略円形である」のに対して、甲1発明は、「本体1」が「本体1の側部から切欠部2を通じて立ち上がり部4bが挿入される方向と直交する方向であって、係止孔1aを向く方向から見て」「略円形である」点。 <甲1相違点3> 本件発明1は、手押部材が「運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される長尺の棒状部材」であるのに対して、甲1発明は、手押部材が「コ字状のパイプからなる手押しハンドル4」であって、かつ、「手押し車の挿入孔に挿入される」ものか不明である点。 ウ 判断 (ア)甲1相違点1について 本件発明1の「保護部材」は「使用者が手で掴むグリップ部」を有するのに対し、甲1発明の「衝撃緩衝用部材」は「使用者が手で掴むグリップ部」を有しない。 そうすると、グリップ部の有無は構成上の相違点であるため、甲1相違点1は、実質的な相違点である。 請求人は、甲1には、台車のハンドルに「グリップ部」が存在するため、甲1相違点1が実質的な相違点でないと主張する(口頭審理陳述要領書第52頁第14~14行、第82頁第23行~第83頁第25行等)。 しかしながら、上記アに記載したように、甲1には、「取付穴(係止孔1a)」によって手押部材に取り付けられるものとして、「衝撃緩衝用部材」は記載されているが、「取付穴」によって手押部材に取り付けられるものとして、「グリップ部(ハンドル4の立ち上がり部4b)」と「衝撃緩衝用部材」とから構成される部材は記載されていないため、甲1から、「取付穴」によって棒状部材に取り付けられるものとして、「グリップ部」と「衝撃緩衝用部材」とから構成される保護部材を観念することはできない。 そうすると、「取付穴」によって手押部材に取り付けられるものは、甲1発明においては「衝撃緩衝用部材」であり、本件発明1においては「保護部材」なのであるから、甲1発明の「衝撃緩衝用部材」は「グリップ部」を有しないのに対して、本件発明1は 「保護部材」は「グリップ部」を有する点で相違するといえる。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (イ)甲1相違点2について 甲1相違点2に係る甲1発明の構成は、本件発明1の「前記取付穴に前記棒状部材が挿入される方向」から見た「保護部」の形状に合わせて、「本体1の側部から切欠部2を通じて立ち上がり部4bが挿入される方向」から「本体1」を見ると、その形状は、図1及び図4(摘記事項エ及びオ)等に照らすと、左右側面が外側に湾曲した横長の「略四角形」を呈するものと認められる。そうすると、甲1相違点2は、本件発明1の保護部が「略円形」であるのに対して、甲1発明の本体1が「略四角形」であることを規定したものとなるから、構成上の相違点として実質的なものである。 これに対して、請求人は、運搬台車の使用時においては、衝撃緩衝用部材の穴にハンドル4が挿入された状態となり、その状態においてハンドルが挿入されている方向から、当該製品を見れば略円形であるため、甲1相違点2は、実質的な相違点ではない旨主張する(口頭審理陳述要領書第53頁第16~25行)。 しかしながら、請求人の上記主張を採用することができないのは、甲8相違点2(無効理由1)において説示したとおりである(上記(1)ウ(イ)参照)。 (ウ)甲1相違点3について 甲1相違点3によれば、本件発明1は、手押部材が「運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される長尺の棒状部材」であるのに対して、甲1発明は、手押部材が「コ字状のパイプからなる手押しハンドル4」である。 そして、本件発明1の「長尺の棒状部材」(「棒状」の意味については、被請求人の令和4年10月3日付け上申書に添付された参考資料1及び2参照)と甲1発明の「コ字状のパイプからなる手押しハンドル4」は、形状が異なるといえるから、少なくとも、甲1相違点3が構成上の実質的な相違点であるのは明らかである。 これに対して、請求人は、取り付けられるのが保護部材か衝撃緩衝用部材かについては、効果に何らの影響を与えない微差にすぎず、実質的な相違点を構成するものではない旨主張する(口頭審理陳述要領書第52頁第1~3行)。 しかしながら、少なくとも、甲1相違点3について、「長尺の棒状部材」と「コ字状のハンドル」は、形状が異なるといえるのは、上記のとおりである(上記参考資料1及び2参照)。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (エ)小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明ではない。 (5)その他の請求人の主張について なお、参考までに、その他の請求人の主張について、次のとおり付言する。 請求人は、無効理由1~4のほかに、本件特許は、「運搬台車を移動させる際には、手押し棒を掴んでいる(握っている)使用者の手が壁等といった周辺に存在する物体に接触する虞がある」との課題に対し、グリップ部の外周面よりも外側に突出させた保護部を設けることを解決手段としたものであるところ、当該課題は何ら新規なものではなく(甲9、10等)、当該解決手段も当業者に知られたものであり(甲1、41)、仮に、被請求人が主張するように、本件発明1の「長尺状の棒状部材」が曲がった部分のない一直線の手押部材のみを意味すると解釈したとしても、当該手押部材は周知であり(甲11、12等)、また、手押部材と別の部材のグリップ部を設け、グリップ部と円形状の部材等を一体にした構成も何ら新規なものではない旨主張している(口頭審理陳述要領書第6頁第7行~第34頁第6行)。 請求人の上記主張を踏まえて、参考までに、甲1に基づく進歩性欠如、及び、甲41に基づく進歩性欠如について当合議体の見解を示すと、次のとおりである。 ア 甲1に基づく進歩性欠如について (ア)対比 上記(4)1で説示したとおり、本件発明1と甲1発明との間には、甲1相違点1~3が存在する。 (イ)判断 事案に鑑み、甲1相違点1及び2について検討する。 a 甲1相違点1について (a)甲1発明のハンドルには上端がなく、軸方向からの挿入は無理であること 甲1発明のハンドルは「荷物運搬用の手押し車に固定され、水平方向に沿った手押し部4aと、水平方向に沿った手押し部4aの両端から下向きに延びる上下方向に沿った立ち上がり部4bと、を有するコ字状のパイプからなる手押しハンドル4」である。当該ハンドル4には上端がないから、そもそも、ハンドルの軸方向から衝撃緩衝用部材の取付穴(係止孔1a)にハンドルを挿入することはできない(このように、取付対象がコ字状のパイプからなるハンドルであるために、衝撃緩衝用部材は、必然的に「本体1の側部から切欠部2を通じて立ち上がり部4bが挿入される係止孔1a」を有しているのである。)。そうすると、周知技術のグリップ部が手押部材の端部から軸方向に挿入されるものであるところ、甲1発明の手押しハンドル4に周知技術のグリップ部を取り付けることはできない。 (b)甲1発明はそれ自体で機能しグリップ部を要さないこと 甲1発明の衝撃緩衝用部材は、コ字状のパイプからなる手押しハンドル4の水平方向に沿った手押し部4aをグリップ部としたとき、手押しハンドル4の立ち上がり部4bに取り付けられることにより機能するものであって、当該衝撃緩衝用部材にグリップ部を付加する動機はないといえる。 (c)甲1発明の衝撃緩衝用部材はグリップ部に近接して装着することは想定外であること 甲1発明の衝撃緩衝用部材は、「コ字状のパイプからなる手押しハンドル4の上下方向に沿った立ち上がり部4bの上部」に取り付けられるものであり、その取り付け位置は、グリップ部に相当する手押し部4aからは離れている。そもそも、当該衝撃緩衝用部材は、通路の側壁等との衝突を緩衝するものであって、本件発明1の保護部材のように手を保護するものではないから、手押し部4aに近接して装着することは想定されていない。このことは、甲1(【0022】、図9、10、12)に、衝撃緩衝用部材の取り付け位置として、ハンドル4の立ち上がり部4bの上部(甲1発明)のほかにも、当該立ち上がり部4bの中間部や下部が記載されていることから裏付けられる(摘記事項ウ参照)。 確かに、甲1発明において、立ち上がり部4bの上部を把持すれば、把持部分がグリップ部となり、衝撃緩衝用部材によって手が保護される可能性はあるものの、甲1には、手の保護について記載も示唆もなく、衝撃緩衝用部材による手が保護される可能性については、本件発明1に接した上での後知恵の発想にすぎない。 (d)甲1発明は切欠部を通じて挿入する取り付け方に技術的意義を有すること 甲1発明の衝撃緩衝用部材は、「本体1の側部から切欠部2を通じて立ち上がり部4bが挿入される係止孔1a」を有するものである。甲1発明が当該構成を有しているのは、手押し車への取り付け作業を非常に簡単に行える衝撃緩衝用部材を提供するという課題を解決するためであり、甲1発明は、切欠部2を通じて手押しハンドル4のパイプを挿入する取り付け方に技術的意義を有するものである(【0008】~【0010】・摘記事項ア参照)。 この点、甲1の当該段落には、従来の衝撃緩衝用部材は、その構造が複雑であるので、手押し車への取り付け作業に手間がかかるという課題を有していたところ、従来の課題を解決して、手押し車への取り付け作業を非常に簡単に行える衝撃緩衝用部材を提供するために、手押し車の衝撃緩衝用部材につき、「本体1の中心部に係止孔1aを設け、本体1の側部からこの係止孔1aに行き当たる切欠部2を設けたものとすることにより、前記係止孔1aをこじ開け可能にしている」ことが記載されている。 一方で、周知技術であるグリップ部は、手押部材の端部に上から装着するものであって、一体の構成(「こじ開け可能」の構成が採用されていないもの)であると認められる。そうすると、上記したとおり、手押し車への取り付け作業を非常に簡単に行える構成である、「係止孔1aをこじ開け可能」にした構成を変更してまで、甲1発明の衝撃緩衝用部材の本体1に、装着の仕方や構成が全く異なる周知技術のグリップ部を組み合わせようとする発想に至ることはない(仮に、当該本体1に周知技術のグリップ部を一体とする構成を採用すると、周知技術のグリップ部は、当該本体1のように「係止孔をこじ開け可能」にした構成を採用していないため、組み合わせ前のように「係止孔1aをこじ開け」る取り付け方は困難となることから、組み合わせには阻害要因がある。)。 (e)小括 上記(a)~(d)によれば、甲1発明の衝撃緩衝用部材の本体1に周知技術のグリップ部を適用する動機付けはない。よって、甲1相違点1に係る本件発明1の構成は、容易想到であるとはいえない。 b 甲1相違点2について 甲1相違点2は、本件発明1の「保護部」が「前記取付穴に前記棒状部材が挿入される方向から見て」「略円形である」のに対して、甲1発明の「本体1」が「本体1の側部から切欠部2を通じて立ち上がり部4bが挿入される方向と直交する方向であって、係止孔1aを向く方向から見て」「略円形である」点というものである。 そして、甲1発明において、手押しハンドル4の「立ち上がり部4bが挿入される方向」につき、本件発明1と同様に、手押しハンドル4(立ち上がり部4b)の軸方向である「係止孔1aを向く方向」に変更することは、上記a(d)において説示したとおり、想定されていない。そうすると、甲1発明の「立ち上がり部4bが挿入される方向」につき、かかる変更を行うことによって、甲1相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、容易想到であるとはいえない。 c まとめ 以上のとおりであるから、少なくとも、甲1相違点1及び2に係る本件発明1の構成は、甲1発明及び甲11、13~16、37~41,43に記載の技術的事項等に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 そうすると、本件発明1は、甲1発明及び甲11、13~16、37~41,43に記載の技術的事項等に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 甲41に基づく進歩性欠如 (ア)甲41発明(下記摘記事項は、上記1(17)参照) 甲41には、「ハンドルポストに回動自在に支承された枢軸の左右両側に、アクセルグリップを嵌入装着すると共に、該アクセルグリップの外側端には、その半径方向に膨出させた円盤状の膨出部を形成してなるローリフトのハンドル装置」が記載されている(摘記事項ア)。 甲41の枢軸3は、左右方向を向いた状態で、パンドルポスト5に支承されているものと認められる(摘記事項ア~ウ)。 甲41のローリフトのハンドル装置1は、アクセルグリップ2を回動させると、枢軸3及びカム8と一体となって回動して、リミットスイッチを作動させるものであると認められる(摘記事項イ及びウ)。 甲41のアクセルグリップ2と枢軸3は、リミットスイッチを作動させるべく一体的に回動するために、枢軸3の断面は略D字状をなすとともに、アクセルグリップ2の内径も枢軸3の断面に対応する如く把持部2Aの内側端を開口して形成されていると認められる(摘記事項イ~エ)。 甲41のアクセルグリップ2は、運転者が直接握る部分である把持部2Aと、把持部2Aの外側端に形成された円盤状の膨出部2Bとから構成され、膨出部2Bの外側側面及び円周部分により、運転者の手を保護するものと認められる(摘記事項イ及びオ)。 以上によれば、甲41には、次の発明が記載されているものと認められる(以下「甲41発明」という。)。 「ハンドルポスト5に回動自在に支承され左右方向を向く枢軸3の左右両側に、アクセルグリップ2を嵌入装着するとともに、該アクセルグリップ2が、運転者が直接握る部分である把持部2Aと、該把持部2Aの外側端に形成され、その半径方向に膨出させた円盤状の膨出部2Bとから構成され、該枢軸3の断面は略D字状をなすとともに、該アクセルグリップ2の内径も該枢軸3の断面に対応する如く該把持部2Aの内側端を開口して形成した上で嵌入装着する、ローリフトのハンドル装置1。」 (イ)対比 本件発明1と甲41発明とを対比する。 甲41発明の「ローリフト」は、本件発明1の「運搬台車」との関係において、「運搬車」の限りにおいて一致する。 甲41発明の「ハンドル装置1」、「ハンドルポスト5」及び「ハンドルポストに回転自在に支承され左右方向を向く枢軸3」は、本件発明1の「運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される長尺の棒状部材」との関係において、「運搬車のハンドル関連部材」の限りにおいて一致する。 甲41発明の「アクセルグリップ2」は、上記(ア)のとおり、リミットスイッチを作動させるものであるものの、運転者の手を保護する機能を兼ね備えているから、本件発明1の「保護部材」との関係において、「保護関連部材」の限りにおいて一致する。 甲41発明の「(アクセルグリップ2を)嵌入装着する」は、本件発明1の「棒状部材が挿入される」との関係において、「ハンドル関連部材が取り付けられる」の限りにおいて一致する。 甲41発明の「運転者が直接握る部分である把持部2A」は、本件発明1の「使用者が手で掴むグリップ部」に相当する。 甲41発明の「半径方向に膨出させた円盤状の膨出部2B」は、上記(ア)のとおり、外側側面及び円周部分により、運転者の手を保護するものであるから、本件発明1の「前記グリップ部の外周面よりも外側に突出させて前記グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部」に相当する。 甲41発明の「該枢軸3の断面は略D字状をなすとともに、該アクセルグリップ2の内径も該枢軸3の断面に対応する如く該把持部2Aの内側端を開口して形成した上で嵌入装着する」は、当該「該枢軸3の断面に対応する如く形成した」「該アクセルグリップ2の内径」の部分が「枢軸3」の「取付穴」として機能するのは明らかである。そうすると、甲41発明の当該構成は、本件発明1の「前記棒状部材が挿入される取付穴と、を有し」との関係において、「前記ハンドル関連部材が取り付けられる取付穴と、を有し」の限りにおいて一致する。 そうすると、甲41発明の「半径方向に膨出させた円盤状の膨出部2B」は、本件発明1の「前記取付穴に前記棒状部材が挿入される方向から見て、前記保護部は、略円形である」との関係において、「前記取付穴に前記ハンドル関連部材が取り付けられる方向から見て、前記保護部は、略円形である」の限りにおいて一致することは明らかである。 してみると、本件発明1と甲41発明とは、 「運搬車のハンドル関連部材に対して取り付けられる保護関連部材であって、 使用者が手で掴むグリップ部と、 前記グリップ部の外周面よりも外側に突出させて前記グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部と、 前記ハンドル関連部材が取り付けられる取付穴と、を有し、 前記取付穴に前記ハンドル関連部材が取り付けられる方向から見て、前記保護部は、略円形である、保護関連部材。」 である点で一致し、次の3点で相違する。 <甲41相違点1> 本件発明1は、保護関連部材の取付対象が「運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される長尺の棒状部材」であるのに対して、甲41発明は、「ローリフトのハンドル装置1」の「ハンドルポスト5に回動自在に支承され左右方向を向く枢軸3」である点。 <甲41相違点2> 本件発明1の保護関連部材は、「長尺状の棒状部材」に取り付けられる「保護部材」であって、「前記棒状部材が挿入され」るのに対して、甲41発明の保護関連部材は、「ハンドルポスト5に回動自在に支承され左右方向を向く枢軸3」に取り付けられる「アクセルグリップ2」であって、「枢軸3の断面は略D字状をなすとともに、該アクセルグリップ2の内径も該枢軸3の断面に対応する如く該把持部2Aの内側端を開口して形成した上で嵌入装着される」点。 <甲41相違点3> 本件発明1の「保護部」は、「前記グリップ部の下側に位置」するのに対して、甲41発明の「円盤状の膨出部2B」は、「該把持部2Aの外側端に形成され」るものであって、「把持部2A」の「下側に位置」しない点。 (ウ)判断 a 甲41相違点1~3について 事案に鑑み、甲41相違点1~3を合わせて検討する。 (a)甲41発明の「左右方向を向く枢軸3」の向きを変更する動機付けはないこと 甲41相違点1は、保護関連部材の取付対象に係るものであるところ、甲41発明の取付対象は、「ローリフトのハンドル装置1」の「ハンドルポスト5に回動自在に支承され左右方向を向く枢軸3」であり、本件発明1の「運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入される長尺の棒状部材」とは、運搬車の種類、運搬車における取付部位(ハンドル関連部材)が異なるものである。 また、甲41相違点2は、保護関連部材に係るものであるところ、甲41発明は、ハンドルポスト5の枢軸3に取り付けられる「アクセルグリップ2」であり、本件発明1の「長尺状の棒状部材」に取り付けられる「保護部材」とは、使用者の手を保護する点では機能が一部共通するものの、同一の部材であるとはいえない。 ここで、甲41発明の枢軸3は、ローリフトのハンドル装置1のアクセルグリップ2を取り付けるものであって、アクセルグリップ2の操作(ハンドルポスト5の左右両側に配置されたアクセルグリップ2の把持部2Aを両手で握り、その状態でアクセルグリップ2を回動させる操作)を踏まえて、「左右方向を向」いた状態で「ハンドルポスト5に回動自在に支承され」た構成を採用したものである。 そうすると、甲41発明の枢軸3は、「左右方向」を向いて取り付けられることでアクセルグリップ2の操作を実現することに技術的意義を有するものであるから、甲11、甲12等の周知の手押部材のように、その向きを「上下方向」に変更して「運搬台車の4隅に位置する挿入孔に挿入」するように構成する動機付けはないといえる。 なお、上記のアクセルグリップ2の操作に関する構成について付言するに、甲41発明のアクセルグリップ2は、運転者によって把持部2Aに付加される回転トルクを取付部位である枢軸3に伝達して、リミットスイッチを作動させるべく、枢軸3と一体的に回動するために、その内径が枢軸3の断面略D字状に対応するように形成された上で、枢軸3が嵌入装着される構成が採用されている。 また、請求人が提示した証拠(甲11、13~16、37~41、43等)の中には、甲41発明において「ローリフトのハンドル装置1」を「運搬台車」の「長尺の棒状部材」に変更したり、当該ハンドル装置1の「アクセルグリップ2」を当該棒状部材に取り付ける「保護部材」に変更したりすることについて、動機付けを示すものは何もない。 (b)甲41発明のアクセルグリップ2を周知の手押部材に取り付けても本件発明1の構成に至らないこと 上記(a)のとおり、甲41発明に周知の手押部材を組み合わせる動機付けはないが、仮に、その動機付けがあると仮定したとしても、本件発明1の構成に至ることはない。 すなわち、甲41発明のアクセルグリップ2は、把持部2Aの外側端に円盤状の膨出部2Bが形成され、把持部2Aの内側端を開口して、枢軸3を嵌入装着するものである。かかる構成のアクセルグリップ2を周知の手押部材(甲11、甲12等)に取り付ける場合、把持部2Aの開口に当該手押部材を取り付けるほかはなく、この場合、上下方向に沿った当該手押部材の上端に円盤状の膨出部2Bが位置し、その下側に把持部2Aが位置することとなる。このように、保護部たる円盤状の膨出部2Bは、グリップ部たる把持部2Aの「下側に位置」することはないから、両者を組み合わせた態様は、甲41相違点3の本件発明1の構成に至ることはない。 b まとめ 上記aによれば、たとえ、甲11、甲12等に周知の手押部材が開示されているとはいっても、甲41発明の枢軸3について、甲41相違点1及び2に係る本件発明1の構成のように変更する動機付けはなく、また、仮に動機付けがあったとしても、甲41相違点3に係る本件発明1の構成に至ることはない。 以上のとおりであるから、甲41相違点1~3に係る本件発明1の構成は、容易想到であるとはいえず、本件発明1は、甲41発明及び甲11、13~16、37~41、43に記載の技術的事項等に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 本件発明2について (1)無効理由1及び2について 本件発明2は、本件発明1の構成要件を全て含むから、本件発明2と甲8発明との間にも、少なくとも、甲8相違点1~3が存在することになる。そして、上記3(1)及び(2)において説示したとおり、本件発明2は、甲8発明ではなく、また、甲8発明及び甲1、9~12の技術的事項等に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)無効理由3について 本件発明2は、本件発明1の構成要件を全て含むから、本件発明2と甲9発明又は甲10発明との間にも、少なくとも、甲9相違点1~3又は甲10相違点1~3が存在することになる。そして、上記3(3)において説示したとおり、本件発明2は、甲9発明又は甲10発明、及び甲8発明又は甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)無効理由4について 本件発明2は、本件発明1の構成要件を全て含むから、本件発明2と甲1発明との間にも、少なくとも、甲1相違点1~3が存在することになる。そして、上記3(4)において説示したとおり、本件発明2は、甲1発明ではない。 5 本件発明3について (1)無効理由1及び2について 本件発明3は、本件発明1の構成要件のうち「前記取付穴に前記棒状部材が挿入される方向から見て、前記保護部は、略円形である」を「前記保護部は、円板状である」に変更したものである。そうすると、本件発明3と甲8発明との間にも、少なくとも、甲8相違点1及び3が存在することになる。そして、上記3(1)及び(2)において説示したとおり、本件発明3は、甲8発明ではなく、また、甲8発明及び甲1、9~12の技術的事項等に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)無効理由3について 本件発明3の構成要件と本件発明1の構成要件の対応関係は、上記(1)のとおりであるから、本件発明3と甲9発明又は甲10発明との間にも、少なくとも、甲9相違点1及び2又は甲10相違点1及び2が存在することになる。そして、上記3(3)において説示したとおり、本件発明3は、甲9発明又は甲10発明、及び甲8発明又は甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)無効理由4について 本件発明3の構成要件と本件発明1の構成要件の対応関係は、上記(1)のとおりであるから、本件発明3と甲1発明との間にも、少なくとも、甲1相違点1及び3が存在することになる。そして、上記3(4)において説示したとおり、本件発明3は、甲1発明ではない。 6 本件発明4~7について (1)無効理由1及び2について 本件発明4~7は、少なくとも、本件発明3の構成要件を全て含むから、本件発明4~7と甲8発明との間にも、少なくとも、甲8相違点1及び3が存在することになる。そして、上記3(1)及び(2)において説示したとおり、本件発明4~7は、甲8発明ではなく、また、甲8発明及び甲1、9~12の技術的事項等に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)無効理由3について 本件発明4~7は、少なくとも、本件発明3の構成要件を全て含むから、本件発明4~7と甲9発明又は甲10発明との間にも、少なくとも、甲9相違点1及び2又は甲10相違点1及び2が存在することになる。そして、上記3(3)において説示したとおり、本件発明4~7は、甲9発明又は甲10発明、及び甲8発明又は甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)無効理由4について 本件発明4~7は、少なくとも、本件発明3の構成要件を全て含むから、本件発明4~7と甲1発明との間にも、少なくとも、甲1相違点1及び3が存在することになる。そして、上記3(4)において説示したとおり、本件発明4~7は、甲1発明ではない。 7 無効理由5について (1)判断手法について 一般に「法36条6項2号は,特許請求の範囲の記載に関し,特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は,仮に,特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には,特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり,第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るので,そのような不都合な結果を防止することにある。そして,特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきことはいうまでもない。」とされているところ〔知財高裁平成21年(行ケ)第10434号、平成22年8月31日判決言渡。〕、このような観点に基づいて、本件特許の明確性要件の適否を以下に検討する。 (2)判断 まず、「周囲」との用語は、一般的には、「ある物の外周。まわり。」(広辞苑 第六版)を意味し、「物体」との用語は、一般的には、「長さ・幅・高さの3次元において空間を充たしていて、知覚の対象となりうる物質。もの。」(広辞苑 第六版)を意味するため、「周囲の物体」とは、ある物のまわりに存在するものを意味すると理解できる。 ここで、本件特許の明細書には、「発明が解決しようとする課題」に関し、以下の記載がある。 「ところで、手押し棒を用いて運搬台車を移動させる際には、手押し棒を掴んでいる(握っている)使用者の手が壁等といった周辺に存在する物体に接触する虞がある。本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、使用者の手が運搬台車の周辺の物体等に接触しないようにすることを目的とする。」(段落【0004】) また、本件特許の明細書には、「第1の実施形態」に関し、以下の記載がある。 「ここで、第1の実施形態に係る手押部材40の効果について、図4と図5を参照して説明する。図4と図5は、手押部材40の効果を説明する図である。具体的には、図4は、運搬台車1の移動中において、手押部材40の上端部が壁等の物体Wに接近した状態を模式的に示す図である。図5は、運搬台車1の運搬物Bである板材が手押部材40の上端部に寄り掛かった状態を模式的に示す図である。」(段落【0022】) 「図5に示すように、板状の資材を運搬台車1で運搬する際には、板状の資材を手押部材40の上端部に寄り掛けておくことがある。この際、運搬物Bである板状の資材を保護部材42の第1の保護部44に寄り掛けることによって、使用者が手押部材40を掴むスペースを確保でき、かつ、使用者の手H(特に指)が運搬物Bに接触することを防止または抑制できる。ここで、第1の保護部44の側面47は斜め上側に向かって膨出する曲面であり、上面48は上側に向かって膨出する曲面であり、側面47と上面48とは曲面によって滑らかにつながっている。このため、第1の保護部44の斜め上方に運搬物Bが寄り掛かった場合には、曲面で運搬物Bを受けることになる。したがって、運搬物Bに接触痕が形成されることが防止または抑制される。」(段落【0024】) 「このように、第1の実施形態に係る手押部材40によれば、運搬台車1の手押部材40を掴んでいる使用者の手Hに、運搬台車1の周辺の物体Wや運搬台車1の運搬物Bが接触することが防止または抑制される。更に、運搬物Bが保護部材42に接触した場合であっても、運搬物Bに接触痕が形成されることが防止または抑制される。」(段落【0026】) そして、本件特許の請求項1及び3には「前記グリップ部の外周面よりも外側に突出させて前記グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部」と記載されているところ、上記「発明が解決しようとする課題」に関する記載から、本件特許の請求項1及び3に係る発明は、運搬台車を移動させる際に、「グリップ部を掴んだ手」が「周囲の物体」に接触する虞があるため、「グリップ部を掴んだ手」が「周辺の物体」に接触しないようにすることを目的としていると理解でき、上記段落【0022】、【0024】及び【0026】の記載は「実施形態」に関する記載なのであるから、上記段落【0022】、【0024】及び【0026】には、本件特許の請求項1及び3における「周囲の物体」の例として、「壁等の物体W」、「運搬物B」等が記載されていると理解できる。 そうすると、上述した「周囲」及び「物体」との用語の一般的な意味に照らせば、本件特許の請求項1及び3の「周囲の物体」とは、「長尺の棒状部材に取り付けられた保護部材のグリップ部を使用者が掴んで運搬台車を運搬するときに、使用者の手が接触する可能性のあるもの」を意味すると理解できる。そして、グリップ部を掴んだ手が運搬台車の運搬時に接触する可能性のある物体に接触しないように保護する保護部であれば、本件特許の請求項1及び3における「前記グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部」に該当すると当業者であれば理解できるため、本件特許の請求項1及び3の「周囲の物体」との記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確とはいえない。 また、本件特許の請求項2、4~7は、請求項1又は3の記載を直接的又は間接的に引用するものであるところ、上述した本件特許の請求項1及び3についての理由と同様に、本件特許の請求項2、4~7の記載も第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確とはいえない。 したがって、本件特許の請求項1~7の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすため、本件特許の請求項1~7に係る特許は、同法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由5によっては、無効とすることはできない。 なお、請求人は、口頭審理陳述要領書において、無効理由5に係る主張とともに、構成要件1Cにおける「前記グリップ部の外周面よりも外側に突出させて前記グリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部」は機能的クレームであり、その構成が明確ではない旨主張しているところ(口頭審理陳述要領書第87頁第7~12行)、かかる追加の主張は、無効理由5(上記第3の1(5)参照)に係る主張ではないことを付言する。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件発明1~7についての特許を無効にすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-800005

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決17件(ジー・オー・ピー 株式会社、株式会社 大同機械)
  • 2022-800006無効審判 / 2023-11-01 / 請求不成立手押部材および運搬台車
    同じ当事者: ジー・オー・ピー 株式会社、株式会社 大同機械
  • 2018-800009無効審判 / 2019-01-22 / 請求不成立脚立式作業台
    同じ当事者: ジー・オー・ピー 株式会社
  • 2017-880001無効審判 / 2017-12-08 / 請求不成立運搬台車
    同じ当事者: ジー・オー・ピー 株式会社
  • 2024-700911異議申立 / 2026-04-27 / 訂正認容手押部材、運搬台車および保護部材
    同じ当事者: ジー・オー・ピー 株式会社
  • 2024-006890拒絶査定不服審判 / 2025-10-16 / 原査定取消(特許/登録すべき)作業台
    同じ当事者: ジー・オー・ピー 株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)28件(111・B62B、112・B62B、113・B62B ほか)
  • 2022-800006無効審判 / 2023-11-01 / 請求不成立手押部材および運搬台車
    共通の審決分類: 111・B62B、112・B62B、113・B62B、121・B62B ほか1件
  • 2024-700911異議申立 / 2026-04-27 / 訂正認容手押部材、運搬台車および保護部材
    共通の審決分類: 113・B62B、121・B62B、537・B62B
  • 2016-009068拒絶査定不服審判 / 2018-03-05 / 原査定取消(特許/登録すべき)オートバイ後進装置
    共通の審決分類: 113・B62B、121・B62B、537・B62B
  • 2022-800031無効審判 / 2023-03-31 / 請求不成立手押し車
    共通の審決分類: 121・B62B、537・B62B
  • 2022-800032無効審判 / 2023-03-31 / 請求不成立手押し車
    共通の審決分類: 121・B62B、537・B62B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存