特許異議申立
2022-700849
プラント制御方法、プラント制御装置、プログラム、およびプラント
- 審判番号
- 2022-700849
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-563608
- 登録番号
- 7027623
- 請求日
- 2022年08月31日
- 審決日
- 2023年12月06日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日揮グローバル株式会社
- 【権利者代理人】西澤 和純
- 【権利者代理人】大浪 一徳
- 【権利者代理人】松本 将尚
- 【異議申立人】新井 紀子
- 【異議申立人】西澤 まどか
- 審判長/審判官
- 審判長 伏本 正典
- 審判官 渡邊 聡
- 審判官 中野 浩昌
- 分類
- P1651.121-YAA(G06Q) / P1651.131-YAA(G06Q) / P1651.841-YAA(G06Q) / P1651.851-YAA(G06Q) / P1651.854-YAA(G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7027623号発明「プラント制御方法、プラント制御装置、プログラム、およびプラント」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7027623号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕、〔12、13〕、14について訂正することを認める。
特許第7027623号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7027623号の請求項1~14に係る特許(以下、本件特許という。)についての出願は、令和3年6月23日に出願され、令和4年2月18日にその特許権の設定登録がされ、令和4年3月1日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 8月31日 :特許異議申立人新井紀子による特許異議の申立て
令和4年 9月 1日 :特許異議申立人西澤まどかによる特許異議の申立て
令和4年11月 9日付け :取消理由通知書
令和5年 1月16日 :特許権者による訂正請求書・意見書の提出
令和5年 2月24日 :特許異議申立人新井紀子による意見書の提出
令和5年 2月24日 :特許異議申立人西澤まどかによる意見書の提出
令和5年 3月28日付け :訂正拒絶理由通知書
令和5年 4月18日 :特許権者による意見書の提出
令和5年 5月17日付け :取消理由通知書(決定の予告)
令和5年 7月20日 :特許権者による訂正請求書・意見書の提出
令和5年 8月28日 :特許異議申立人新井紀子による意見書の提出
令和5年 8月29日 :特許異議申立人西澤まどかによる意見書の提出
令和5年 9月25日付け :訂正拒絶理由通知書
令和5年10月24日 :特許権者による意見書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正請求について
令和5年7月20日に提出された訂正請求書による訂正(以下、本件訂正という。)は、「特許第7027623号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14について訂正することを求める。」ことを請求の趣旨とし、その内容は以下の訂正事項1~訂正事項3からなる訂正を請求するものである。
なお、令和5年1月16日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、以下の事項により特定されるとおりに訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~11についても同様に訂正する。)(下線は訂正部分。以下同じ。)
【請求項1】
変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を使用して第1製造物を製造する第1製造装置と、
変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を供給する電力供給装置から供給される電力を少なくとも使用して第1製造物を製造する前記第1製造装置から、製造された第1製造物を、受け取って貯蔵する貯蔵装置と、
前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を原料として第2製造物としてアンモニア、メタノール、有機ハイドライド、メタン、一酸化炭素、軽油、過酸化水素の何れかから選択される化学物質を製造する第2製造装置と、
前記第1製造物を供給する対象の設備である発電装置と販売用手段との少なくともいずれか一方である供給対象設備と、
前記貯蔵装置から、前記第2製造装置と、前記発電装置と、前記販売用手段とのそれぞれへの、制御対象とする対象タームにおける前記第1製造物の供給量を制御するプラント制御装置と、
を含んで構成されるプラント、を制御するためのプラント制御方法であって、
前記プラント制御装置は、前記第1製造物を前記第2製造装置に優先的に供給し、余剰の前記第1製造物を前記発電装置と前記販売用手段との少なくともいずれか一方に供給するケースを実施するものであり、
前記第2製造装置に前記第1製造物が供給される場合に、前記電力供給装置から供給される電力供給量の実績値または予測値に基づいて、前記対象タームにおける前記第1製造装置における前記第1製造物の製造量を予測し、その結果として前記貯蔵装置内の前記第1製造物の貯蔵量を予測し、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量の基準レンジの下限値に基づいて、前記第2製造装置の稼働を停止させる制御をし、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量が、前記基準レンジの上限値以上である場合に、前記第1製造装置で製造される前記第1製造物を前記貯蔵装置に送ることなく、前記発電装置または前記販売用手段に送るように制御し、
前記発電装置は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を使用して発電するものであり、
前記販売用手段は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を販売するために外部に供給する手段であり、
演算部は、前記対象タームにおける前記第1製造物の販売単価である第1価格、前記第2製造物の販売単価である第2価格、および前記発電装置で発電される電力の販売単価である第3価格のうちの少なくともいずれか一つを取得し、
前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記第2製造装置への前記第1製造物の供給量である第2供給量を決定し、
前記プラントが前記販売用手段を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記販売用手段への前記第1製造物の供給量である第1供給量を決定し、
前記プラントが前記発電装置を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記発電装置への前記第1製造物の供給量である第3供給量を決定し、
決定された前記第2供給量で前記第1製造物が前記第2製造装置に供給され、前記プラントが前記販売用手段を含む場合には決定された前記第1供給量で前記第1製造物が前記販売用手段に供給され、前記プラントが前記発電装置を含む場合には決定された前記第3供給量で前記第1製造物が前記発電装置に供給される、ように制御信号出力部が制御信号を出力する、
プラント制御方法。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項12について、以下の事項により特定されるとおりに訂正する。(請求項12の記載を引用する請求項13についても同様に訂正する。)
【請求項12】
変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を使用して第1製造物を製造する第1製造装置と、
変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を供給する電力供給装置から供給される電力を少なくとも使用して第1製造物を製造する前記第1製造装置から、製造された第1製造物を、受け取って貯蔵する貯蔵装置と、
前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を原料として第2製造物としてアンモニア、メタノール、有機ハイドライド、メタン、一酸化炭素、軽油、過酸化水素の何れかから選択される化学物質を製造する第2製造装置と、
前記第1製造物を供給する対象の設備である発電装置と販売用手段との少なくともいずれか一方である供給対象設備と、
前記貯蔵装置から、前記第2製造装置と、前記発電装置と、前記販売用手段とのそれぞれへの、制御対象とする対象タームにおける前記第1製造物の供給量を制御するプラント制御装置と、
を含んで構成されるプラント、であって、
前記プラント制御装置は、前記第1製造物を前記第2製造装置に優先的に供給し、余剰の前記第1製造物を前記発電装置と前記販売用手段との少なくともいずれか一方に供給するケースを実施するものであり、
前記第2製造装置に前記第1製造物が供給される場合に、前記電力供給装置から供給される電力供給量の実績値または予測値に基づいて、前記対象タームにおける前記第1製造装置における前記第1製造物の製造量を予測し、その結果として前記貯蔵装置内の前記第1製造物の貯蔵量を予測し、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量の基準レンジの下限値に基づいて、前記第2製造装置の稼働を停止させる制御をし、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量が、前記基準レンジの上限値以上である場合に、前記第1製造装置で製造される前記第1製造物を前記貯蔵装置に送ることなく、前記発電装置または前記販売用手段に送るように制御し、
前記発電装置は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を使用して発電するものであり、
前記販売用手段は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を販売するために外部に供給する手段である、
プラントを制御するためのプラント制御装置であって、
演算部と、
制御信号出力部と、
を備え、
前記演算部は、前記対象タームにおける前記第1製造物の販売単価である第1価格、前記第2製造物の販売単価である第2価格、および前記発電装置で発電される電力の販売単価である第3価格のうちの少なくともいずれか一つを取得し、
前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記第2製造装置への前記第1製造物の供給量である第2供給量を決定し、
前記プラントが前記販売用手段を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記販売用手段への前記第1製造物の供給量である第1供給量を決定し、
前記プラントが前記発電装置を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記発電装置への前記第1製造物の供給量である第3供給量を決定し、
決定された前記第2供給量で前記第1製造物が前記第2製造装置に供給され、前記プラントが前記販売用手段を含む場合には決定された前記第1供給量で前記第1製造物が前記販売用手段に供給され、前記プラントが前記発電装置を含む場合には決定された前記第3供給量で前記第1製造物が前記発電装置に供給される、ように、前記制御信号出力部は、制御信号を出力する、
プラント制御装置。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項14について、以下の事項により特定されるとおりの請求項14として訂正する。
【請求項14】
変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を使用して第1製造物を製造する第1製造装置と、
変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を供給する電力供給装置から供給される電力を少なくとも使用して第1製造物を製造する前記第1製造装置から、製造された第1製造物を、受け取って貯蔵する貯蔵装置と、
前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を原料として第2製造物としてアンモニア、メタノール、有機ハイドライド、メタン、一酸化炭素、軽油、過酸化水素の何れかから選択される化学物質を製造する第2製造装置と、
前記第1製造物を供給する対象の設備である発電装置と販売用手段との少なくともいずれか一方である供給対象装置と、
前記貯蔵装置から、前記第2製造装置と、前記発電装置と、前記販売用手段とのそれぞれへの、制御対象とする対象タームにおける前記第1製造物の供給量を制御するプラント制御装置と、
を含み、
前記プラント制御装置は、前記第1製造物を前記第2製造装置に優先的に供給し、余剰の前記第1製造物を前記発電装置と前記販売用手段との少なくともいずれか一方に供給するケースを実施するものであり、
前記第2製造装置に前記第1製造物が供給される場合に、前記電力供給装置から供給される電力供給量の実績値または予測値に基づいて、前記対象タームにおける前記第1製造装置における前記第1製造物の製造量を予測し、その結果として前記貯蔵装置内の前記第1製造物の貯蔵量を予測し、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量の基準レンジの下限値に基づいて、前記第2製造装置の稼働を停止させる制御をし、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量が、前記基準レンジの上限値以上である場合に、前記第1製造装置で製造される前記第1製造物を前記貯蔵装置に送ることなく、前記発電装置または前記販売用手段に送るように制御し、
前記発電装置は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を使用して発電するものであり、
前記販売用手段は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を販売するために外部に供給する手段であり、
前記プラント制御装置は、
演算部と、
制御信号出力部と、
を備え、
前記演算部は、前記対象タームにおける前記第1製造物の販売単価である第1価格、前記第2製造物の販売単価である第2価格、および前記発電装置で発電される電力の販売単価である第3価格のうちの少なくともいずれか一つを取得し、
前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記第2製造装置への前記第1製造物の供給量である第2供給量を決定し、
前記プラントが前記販売用手段を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記販売用手段への前記第1製造物の供給量である第1供給量を決定し、
前記プラントが前記発電装置を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記発電装置への前記第1製造物の供給量である第3供給量を決定し、
決定された前記第2供給量で前記第1製造物が前記第2製造装置に供給され、前記プラントが前記販売用手段を含む場合には決定された前記第1供給量で前記第1製造物が前記販売用手段に供給され、前記プラントが前記発電装置を含む場合には決定された前記第3供給量で前記第1製造物が前記発電装置に供給される、ように、前記制御信号出力部は、制御信号を出力する、
プラント。
なお、本件訂正は、訂正前の請求項1~11は、請求項2~11が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、一群の請求項1~11について、また、訂正前の請求項12~13は、請求項13が、訂正の請求の対象である請求項12の記載を引用する関係にあるから、一群の請求項12~13について請求されている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無
(1)訂正事項1について
ア 訂正の内容
訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1に記載された発明について、
a)訂正前の請求項1のプラントが、さらに「変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を使用して第1製造物を製造する第1製造装置」の構成を含むように限定する事項を付加する、
b)上記a)にて「第1製造装置」の構成を新たに付加したことに整合させるため、該「第1製造装置」について、「・・・電力供給装置から供給される電力を少なくとも使用して第1製造物を製造する前記第1製造装置」と特定する、
c)「第2製造物」について、「第1製造物を原料として」「アンモニア、メタノール、有機ハイドライド、メタン、一酸化炭素、軽油、過酸化水素の何れかから選択される化学物質を製造する」という限定事項を付加する、
d)訂正前の請求項1の「発電装置と販売用手段との少なくともいずれか一方の供給対象設備」について、「前記第1製造物を供給する対象の設備である発電装置と販売用手段との少なくともいずれか一方である供給対象設備」という限定する構成を付加する、
e)訂正前の請求項1のプラントが、さらに「前記貯蔵装置から、前記第2製造装置と、前記発電装置と、前記販売用手段とのそれぞれへの、制御対象とする対象タームにおける前記第1製造物の供給量を制御するプラント制御装置」の構成を含むように限定する事項を付加する、
f)上記e)により付加された「プラント制御装置」が、
「前記プラント制御装置は、前記第1製造物を前記第2製造装置に優先的に供給し、余剰の前記第1製造物を前記発電装置と前記販売用手段との少なくともいずれか一方に供給するケースを実施するものであり、
前記第2製造装置に前記第1製造物が供給される場合に、前記電力供給装置から供給される電力供給量の実績値または予測値に基づいて、前記対象タームにおける前記第1製造装置における前記第1製造物の製造量を予測し、その結果として前記貯蔵装置内の前記第1製造物の貯蔵量を予測し、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量の基準レンジの下限値に基づいて、前記第2製造装置の稼働を停止させる制御をし、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量が、前記基準レンジの上限値以上である場合に、前記第1製造装置で製造される前記第1製造物を前記貯蔵装置に送ることなく、前記発電装置または前記販売用手段に送るように制御」するものであることを特定する、
g)演算部の「(第1価格、第2価格、第3価格のうちの)少なくともいずれか一つを取得」、「第2供給量を決定」、「第1供給量を決定」、「第3供給量を決定」する処理について、上記e)の訂正により、処理の対象が「対象ターム」となったことに整合するように、「対象タームにおける」処理と特定する、
ように訂正するものである。
イ 訂正の目的について
上記アのa)~g)にて示した訂正事項1の訂正の内容は、いずれも訂正前の請求項1に記載された構成に、新たな特定事項を付加する訂正および上記付加することにより生じた記載の不整合を改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。
ウ 新規事項の有無について
(ア)上記a)、b)による特定事項について
本件特許明細書の【0035】に「第1製造装置10は、少なくとも電力供給装置2から供給される電力(変動性再生可能エネルギーから得られた電力)を使用して、水電解により水素を製造する。言い換えれば、第1製造装置は、変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力供給装置10から供給される電力を使用して、第1製造物を製造する。つまり、第1製造装置10は、水(H2O)を原料として、水素(H2)および酸素(O2)を製造する。第1製造装置10が製造した水素は、配管等を通して貯蔵装置20に渡される。第1製造装置10が製造した酸素は、例えば配管等を通して不図示の別の貯蔵装置に渡される。」と記載されている。
以上の記載によれば、「第1製造装置10は、少なくとも電力供給装置2から供給される電力(変動性再生可能エネルギーから得られた電力)を使用して、水電解により水素(当審注:第1製造物に相当する)を製造する」こと、および、「第1製造装置10が製造した水素は、配管等を通して貯蔵装置20に渡される」ことが記載されているから、上記a)、b)による特定事項は、新規事項ということはできない。
(イ)上記c)による特定事項について
本件特許明細書の【0031】、【0032】に「本実施形態において、第1製造物は、例えば、水素(化学式は、H2)である。水素は、電力供給装置2が供給する電力を用いて、水(H2O)を電気分解することによって製造することができる。また、本実施形態において、第2製造物は、例えば、アンモニア(化学式は、NH3)である。アンモニアは、第1製造物である水素と、空気中から取り入れた窒素(N2)とを用いて、製造することができる。」、「第2製造物は、上で例示したアンモニアには限定されない。第2製造物は、水素を原料の一つとして製造される他の物質(化学物質)であってもよい。第2製造物は、例えば、メタノール、有機ハイドライド、メタン、一酸化炭素、軽油、過酸化水素、液体水素等であってもよいが、ここに例示した物質には限定されない。」と記載されているから、上記c)による特定事項は、新規事項とはいえない。
(ウ)上記d)による特定事項について
本件特許明細書の【0116】に「ここで、実施形態の変形例について説明する。図1に示したように、上記実施形態では、プラント1は、発電装置50と、販売用手段60との、両方を備えていた。変形例として、プラント1が、発電装置50と、販売用手段60との、少なくともいずれか一方のみを備えるようにしてもよい。なお、プラント1が備える、発電装置50と、販売用手段60との、少なくともいずれか一方を、第1製造物を供給する対象の設備として「供給対象設備」と呼ぶ場合がある。」と記載されているから、上記d)による特定事項は、新規事項とはいえない。
(エ)上記e)による特定事項について
本件特許明細書の【0044】に「プラント制御装置201は、プラント1による生産物の製造を制御する。特に、プラント制御装置201は、各ターム(期間)における、貯蔵装置20から、第2製造装置40と発電装置50と販売用手段60とのそれぞれへの、第1製造物の供給量を制御する。そのため、プラント制御装置201は、流量制御弁30、31、および32のそれぞれの絞り開度を個別に制御するための制御信号を出力する。なお、流量制御弁30、31、および32のそれぞれからの第1製造物供給量は、各絞り開度と第1製造物の流速(単位時間あたりに流れる長さ)との積の時間積分である。言い換えれば、流量制御弁30、31、および32のそれぞれからの第1製造物の供給量は、単位時間あたりの流量(流量は、流量制御弁30の絞り開度に依存)の時間積分である。なお、流量計等を用いて実際の第1製造物の流量を測定し、測定された流量をプラント制御装置201にフィードバックすることによって制御を行ってもよい。」と記載されているから、上記e)による特定事項は、新規事項とはいえない。
(オ)上記f)による特定事項について
(オ1)上記f)による特定事項のうち「前記プラント制御装置は、前記第1製造物を前記第2製造装置に優先的に供給し、余剰の前記第1製造物を前記発電装置と前記販売用手段との少なくともいずれか一方に供給するケースを実施するものであり」については、本件特許明細書の【0073】に「ケース1における基本的な考え方としては、まず第2製造物(例えば、アンモニア)の製造量を優先的に考慮し、その後、余っている第1製造物(例えば、水素)の用途の配分を考える。言い換えれば、ケース1では、第2製造装置の継続的運転を最優先目標とする。」と記載されているから、新規事項とはいえない。
(オ2)上記f)による特定事項のうち「前記第2製造装置に前記第1製造物が供給される場合に、前記電力供給装置から供給される電力供給量の実績値または予測値に基づいて、前記対象タームにおける前記第1製造装置における前記第1製造物の製造量を予測し、その結果として前記貯蔵装置内の前記第1製造物の貯蔵量を予測し」については、本件特許明細書の【0076】に「ステップS112において、演算部202は、対象ターム(現タームとも呼ばれる)での第1製造物(水素)の貯蔵量を予測する。演算部202は、具体的には、ステップS111で取得した対象タームの前タームにおける第1製造物の貯蔵量に基づいて、対象タームの第1製造物の貯蔵量を予測する。ただし、演算部202は、対象タームの前タームの電力供給量(実績値または予測値)に基づいて、あるいは対象タームの近傍タームの電力供給量予測データに基づいて、第1製造物の製造量を計算し、その結果として、上記の対象タームの第1製造物の貯蔵量を予測する。」と記載されているから、新規事項とはいえない。
(オ3)上記f)による特定事項のうち「前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量の基準レンジの下限値に基づいて、前記第2製造装置の稼働を停止させる制御をし」については、本件特許明細書の【0077】、【0079】に「ステップS113において、演算部202は、対象ターム(現タームとも呼ばれる)の第1製造物の貯蔵量の予測値(ステップS112で算出)が、所定の閾値(LLL)以上であるか否かを判定する。なお、値LLLは、貯蔵装置20における第1製造物の基準レンジの下限値である。第1製造物の貯蔵量の予測値が閾値LLL以上である場合(ステップS113:YES)には、ステップS114に進む。第1製造物の貯蔵量の予測値が閾値LLL未満である場合(ステップS113:NO)には、ステップS115に進む。」、「ステップS115に進んだ場合、プラント制御装置201は、第2製造装置を停止させる。」と記載されているから、新規事項とはいえない。
(オ4)上記f)による特定事項のうち「前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量が、前記基準レンジの上限値以上である場合に、前記第1製造装置で製造される前記第1製造物を前記貯蔵装置に送ることなく、前記発電装置または前記販売用手段に送るように制御」について
上記特定事項に関連する記載は、本件特許明細書の【0080】、【0083】~【0087】、図5に以下のとおり記載されている。
【0080】
図5は、ケース1における制御のための、プラント制御装置201の処理手順を示す第2のフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って説明する。
【0083】
ステップS123に進んだ場合、演算部202は、対象ターム(現タームとも呼ばれる)での第1製造物の貯蔵装置20での貯蔵量(予測値)が、所定の閾値HHL以上であるか否かを判定する。なお、値HHLは、貯蔵装置20における第1製造物の基準レンジの上限値である。第1製造物の貯蔵量(予測値)が閾値HHL以上である場合(ステップS123:YES)には、ステップS124に進む。第1製造物の貯蔵量(予測値)が閾値HHL未満である場合(ステップS123:NO)には、ステップS127に進む。
【0084】
ステップS124に進んだ場合、演算部202は、対象タームの電力販売単価予測値が閾値TH_ELE_PRICE以上であるか否かを判定する。閾値TH_ELE_PRICEは、第1製造物の販売よりも電力の販売の方が有利であるか否かを判定するための基準値である。対象タームの電力販売単価予測値が閾値TH_ELE_PRICE以上である場合(ステップS124:YES)には、ステップS125に進む。対象タームの電力販売単価予測値が閾値TH_ELE_PRICE未満である場合(ステップS124:NO)には、ステップS126に進む。
【0085】
ステップS125に進んだ場合、演算部202は、第2製造物の製造に割り当てた後の余剰の第1製造物を発電のために使用するための制御を行う。具体的には、演算部202は、第2製造装置40に供給すべき第1製造物の量を求める。また、演算部202は、その他のすべての第1製造物を用いて発電するように、発電装置50に供給すべき第1製造物の量を求める。演算部202は、それら求めたそれぞれの量に基づいて、流量制御弁30、31、および32の絞り開度を制御する。
【0086】
ステップS126に進んだ場合、演算部202は、第2製造物の製造に割り当てた後の余剰の第1製造物を、販売するための制御を行う。具体的には、演算部202は、第2製造装置40に供給すべき第1製造物の量を求める。また、演算部202は、その他のすべての第1製造物を販売用とするために、販売用設備60に供給すべき第1製造物の量を求める。演算部202は、それら求めたそれぞれの量に基づいて、流量制御弁30、31、および32の絞り開度を制御する。
【0087】
ステップS127に進んだ場合、演算部202は、第2製造物の製造に割り当てた後の余剰の第1製造物を、貯蔵装置20に蓄積するための制御を行う。具体的には、演算部202は、流量制御弁30の開度が所定の値(第2製造装置40の定格生産量に応じた絞り開度)となるような制御を行うことにより、所定量の第1製造物が第2製造装置40に供給されるようにする。また、演算部202は、流量制御弁31および32のそれぞれの開度がゼロとなるような制御を行い、第1製造物が発電装置50や販売用手段60には供給されないようにする。
[図:0001407797000001.jpg]
【0083】の「値HHL」が、上記特定事項の「基準レンジ」に相当することは明らかであり、「第1製造物の貯蔵量(予測値)が閾値HHL以上である場合(ステップS123:YES)には、ステップS124に進む。第1製造物の貯蔵量(予測値)が閾値HHL未満である場合(ステップS123:NO)には、ステップS127に進む」とあるから、上記特定事項の「前記基準レンジの上限値以上である場合」とは、「ステップS124に進む」場合のことである。
このとき、【0084】には「対象タームの電力販売単価予測値が閾値TH_ELE_PRICE以上である場合(ステップS124:YES)には、ステップS125に進む。対象タームの電力販売単価予測値が閾値TH_ELE_PRICE未満である場合(ステップS124:NO)には、ステップS126に進む。」とあるから、ステップS124に進むと、「ステップS125」と「ステップS126」のいずれかに進むことになる。
そして、【0085】には「ステップS125に進んだ場合、演算部202は、第2製造物の製造に割り当てた後の余剰の第1製造物を発電のために使用するための制御を行う。具体的には、演算部202は、第2製造装置40に供給すべき第1製造物の量を求める。また、演算部202は、その他のすべての第1製造物を用いて発電するように、発電装置50に供給すべき第1製造物の量を求める」と記載されているから、「第1製造物」は、第2製造物の製造に割り当てた後、余剰の第1製造物のすべてを用いて発電するように、発電装置50に供給されているといえる。すなわち、このときには、第1製造物は、第2製造物に対して割り当てた後、残りの全ては発電装置に供給しているのであるから、第2製造物の製造及び発電装置以外には供給していないと解するのが自然である。
また、【0086】には「ステップS126に進んだ場合、演算部202は、第2製造物の製造に割り当てた後の余剰の第1製造物を、販売するための制御を行う。具体的には、演算部202は、第2製造装置40に供給すべき第1製造物の量を求める。また、演算部202は、その他のすべての第1製造物を販売用とするために、販売用設備60に供給すべき第1製造物の量を求める」と記載されているから、「第1製造物」は、第2製造物の製造に割り当てた後、余剰の第1製造物のすべてを販売用とするように、販売用設備60に供給に供給されているといえる。すなわち、このときには、第1製造物は、第2製造物に対して割り当てた後、残りの全ては販売用設備に供給しているのであるから、第2製造物の製造及び販売用設備以外には供給していないと解するのが自然である。
そして、「閾値HHL未満である場合(ステップS123:NO)には、ステップS127に進」み、「第2製造物の製造に割り当てた後の余剰の第1製造物を、貯蔵装置20に蓄積するための制御を行う」から、換言すると、ステップS127に進まなければ、貯蔵装置20に蓄積するための制御を行わないといえる。
これらの記載を総合すると、基準レンジの上限値以上である場合には、第2製造物の製造及び発電装置、あるいは、第2製造物の製造及び販売用設備、以外には、第1製造物を供給せず、貯蔵装置20に蓄積するための制御を行わないのであるから、基準レンジの上限値以上である場合に、前記第1製造装置で製造される前記第1製造物を、前記貯蔵装置に供給せず、発電装置または前記販売用手段に供給することが発明の詳細な説明に記載されており、発明の詳細な説明の「供給」なる記載を、特許請求の範囲の記載では「送る」と称していると捉えることができるから、「前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量が、前記基準レンジの上限値以上である場合に、前記第1製造装置で製造される前記第1製造物を前記貯蔵装置に送ることなく、前記発電装置または前記販売用手段に送るように制御」することは、特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであって、新規事項であるということはできない。
(カ)上記g)による特定事項について
本件特許明細書の【0049】、【0050】、【0081】-【0086】には、以下の記載がある。
【0049】
演算部202は、第1製造物の販売単価である第1価格と、前記第2製造物の販売単価である第2価格と、前記発電装置で発電される電力の販売単価である第3価格と、をそれぞれ取得する。これらの情報は、別途記載の通り、プラント制御装置201において取得可能である。そして、演算部202は、前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記販売用手段への前記第1製造物の供給量である第1供給量と、前記第2製造装置への前記第1製造物の供給量である第2供給量と、前記発電装置への前記第1製造物の供給量である第3供給量とを、決定する。
【0050】
演算部202は、例えば次の手順で、プラント制御装置201が出力する信号値を求めることができる。即ち、演算部202は、まず、対象タームにおける、第2製造装置40と発電装置50と販売用手段60のそれぞれへの第1製造物の供給量を決定する。演算部202は、次に、それぞれの供給量に基づいて、流量制御弁30,31,および32の開度を求める。そして、演算部202は、各弁の開度を実現するための流量制御弁30,31,および32のそれぞれへの信号値を決定する。
【0081】
ステップS121において、演算部202は、対象ターム(現タームとも呼ばれる)における電力販売価格(単価)の予測値と、第1製造物販売価格(単価)の予測値と、第2製造物販売価格(単価)の予測値と、対象タームでの水素貯蔵量(予測値)とを、それぞれ取得する。なお、対象タームでの水素貯蔵量(予測値)は、図4のステップS114において演算部202が求めた値である。
【0082】
ステップS122において、演算部202は、S121で取得した第2製造物販売価格(単価)の予測値が、所定の閾値(TH_NH3_PRICE)以上であるか否かを判定する。TH_NH3_PRICEは、第2製造物単価についての閾値である。第2製造物販売価格(単価)の予測値がTH_NH3_PRICE以上である場合(ステップS122:YES)には、ステップS123に進む。第2製造物販売価格(単価)の予測値がTH_NH3_PRICE未満である場合(ステップS122:NO)には、ステップS124に進む。
【0083】
ステップS123に進んだ場合、演算部202は、対象ターム(現タームとも呼ばれる)での第1製造物の貯蔵装置20での貯蔵量(予測値)が、所定の閾値HHL以上であるか否かを判定する。なお、値HHLは、貯蔵装置20における第1製造物の基準レンジの上限値である。第1製造物の貯蔵量(予測値)が閾値HHL以上である場合(ステップS123:YES)には、ステップS124に進む。第1製造物の貯蔵量(予測値)が閾値HHL未満である場合(ステップS123:NO)には、ステップS127に進む。
【0084】
ステップS124に進んだ場合、演算部202は、対象タームの電力販売単価予測値が閾値TH_ELE_PRICE以上であるか否かを判定する。閾値TH_ELE_PRICEは、第1製造物の販売よりも電力の販売の方が有利であるか否かを判定するための基準値である。対象タームの電力販売単価予測値が閾値TH_ELE_PRICE以上である場合(ステップS124:YES)には、ステップS125に進む。対象タームの電力販売単価予測値が閾値TH_ELE_PRICE未満である場合(ステップS124:NO)には、ステップS126に進む。
【0085】
ステップS125に進んだ場合、演算部202は、第2製造物の製造に割り当てた後の余剰の第1製造物を発電のために使用するための制御を行う。具体的には、演算部202は、第2製造装置40に供給すべき第1製造物の量を求める。また、演算部202は、その他のすべての第1製造物を用いて発電するように、発電装置50に供給すべき第1製造物の量を求める。演算部202は、それら求めたそれぞれの量に基づいて、流量制御弁30、31、および32の絞り開度を制御する。
【0086】
ステップS126に進んだ場合、演算部202は、第2製造物の製造に割り当てた後の余剰の第1製造物を、販売するための制御を行う。具体的には、演算部202は、第2製造装置40に供給すべき第1製造物の量を求める。また、演算部202は、その他のすべての第1製造物を販売用とするために、販売用設備60に供給すべき第1製造物の量を求める。演算部202は、それら求めたそれぞれの量に基づいて、流量制御弁30、31、および32の絞り開度を制御する。
これらの記載によれば、「(第1価格、第2価格、第3価格のうちの)少なくともいずれか一つを取得」、「第2供給量を決定」、「第1供給量を決定」、「第3供給量を決定」する処理は、ターム単位で行われていることが記載されているから、上記g)による特定事項は、新規事項とはいえない。
エ 特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるかについて
上記イにて検討したように、上記アのa)~g)にて示した訂正事項1の訂正の内容は、いずれも訂正前の請求項1に記載された構成に、新たな特定事項を付加する訂正および上記付加することにより生じた記載の不整合を改めるものであって、上記訂正により実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるということはできない。
オ 小括(訂正事項1)
以上によれば、本件訂正における訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の内容
訂正事項2に係る請求項12についての訂正は、訂正前の請求項12に記載された発明について、
a)「プラント」が、さらに「変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を使用して第1製造物を製造する第1製造装置」の構成を含むように限定する事項を付加する、
b)上記a)にて「第1製造装置」の構成を新たに付加したことに整合させるため、該「第1製造装置」について、「・・・電力供給装置から供給される電力を少なくとも使用して第1製造物を製造する前記第1製造装置」と特定する、
c)「第2製造物」について、「第1製造物を原料として」「アンモニア、メタノール、有機ハイドライド、メタン、一酸化炭素、軽油、過酸化水素の何れかから選択される化学物質を製造する」という限定事項を付加する、
d)訂正前の請求項12の「発電装置と販売用手段との少なくともいずれか一方の供給対象設備」について、「前記第1製造物を供給する対象の設備である発電装置と販売用手段との少なくともいずれか一方である供給対象設備」という限定する構成を付加する、
e)訂正前の請求項12のプラントが、さらに「前記貯蔵装置から、前記第2製造装置と、前記発電装置と、前記販売用手段とのそれぞれへの、制御対象とする対象タームにおける前記第1製造物の供給量を制御するプラント制御装置」の構成を含むように限定する事項を付加する、
f)上記e)により付加された「プラント制御装置」が、
「前記プラント制御装置は、前記第1製造物を前記第2製造装置に優先的に供給し、余剰の前記第1製造物を前記発電装置と前記販売用手段との少なくともいずれか一方に供給するケースを実施するものであり、
前記第2製造装置に前記第1製造物が供給される場合に、前記電力供給装置から供給される電力供給量の実績値または予測値に基づいて、前記対象タームにおける前記第1製造装置における前記第1製造物の製造量を予測し、その結果として前記貯蔵装置内の前記第1製造物の貯蔵量を予測し、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量の基準レンジの下限値に基づいて、前記第2製造装置の稼働を停止させる制御をし、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量が、前記基準レンジの上限値以上である場合に、前記第1製造装置で製造される前記第1製造物を前記貯蔵装置に送ることなく、前記発電装置または前記販売用手段に送るように制御」するものであることを特定する、
g)演算部の「(第1価格、第2価格、第3価格のうちの)少なくともいずれか一つを取得」、「第2供給量を決定」、「第1供給量を決定」、「第3供給量を決定」する処理について、上記e)の訂正により、処理の対象が「対象ターム」となったことに整合するように、「対象タームにおける」処理と特定する、
ように訂正するものである。
イ 訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲を拡張・変更について
上記a)~g)の訂正の内容は、先に検討した、(1)アa)~g)の訂正の内容と実質的に相違はない。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、(1)イ~エで検討したのと同様、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正であって、新規事項を含むということはできず、また、上記訂正により実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるということはできない。
ウ 小括(訂正事項2)
以上によれば、本件訂正における訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の内容
訂正事項3に係る請求項14についての訂正は、訂正前の請求項14に記載された発明について、
a)「プラント」が、さらに「変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を使用して第1製造物を製造する第1製造装置」の構成を含むように限定する事項を付加する、
b)上記a)にて「第1製造装置」の構成を新たに付加したことに整合させるため、該「第1製造装置」について、「・・・電力供給装置から供給される電力を少なくとも使用して第1製造物を製造する前記第1製造装置」と特定する、
c)「第2製造物」について、「第1製造物を原料として」「アンモニア、メタノール、有機ハイドライド、メタン、一酸化炭素、軽油、過酸化水素の何れかから選択される化学物質を製造する」という限定事項を付加する、
d)訂正前の請求項14の「発電装置と販売用手段との少なくともいずれか一方の供給対象装置」について、「前記第1製造物を供給する対象の設備である発電装置と販売用手段との少なくともいずれか一方である供給対象装置」という限定する構成を付加する、
e)「プラント制御装置」が、さらに「前記貯蔵装置から、前記第2製造装置と、前記発電装置と、前記販売用手段とのそれぞれへの、制御対象とする対象タームにおける前記第1製造物の供給量を制御する」の構成を含むように限定する事項を付加する、
f)さらに、「プラント制御装置」が、
「前記プラント制御装置は、前記第1製造物を前記第2製造装置に優先的に供給し、余剰の前記第1製造物を前記発電装置と前記販売用手段との少なくともいずれか一方に供給するケースを実施するものであり、
前記第2製造装置に前記第1製造物が供給される場合に、前記電力供給装置から供給される電力供給量の実績値または予測値に基づいて、前記対象タームにおける前記第1製造装置における前記第1製造物の製造量を予測し、その結果として前記貯蔵装置内の前記第1製造物の貯蔵量を予測し、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量の基準レンジの下限値に基づいて、前記第2製造装置の稼働を停止させる制御をし、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量が、前記基準レンジの上限値以上である場合に、前記第1製造装置で製造される前記第1製造物を前記貯蔵装置に送ることなく、前記発電装置または前記販売用手段に送るように制御」するものであることを特定する、
g)演算部の「(第1価格、第2価格、第3価格のうちの)少なくともいずれか一つを取得」、「第2供給量を決定」、「第1供給量を決定」、「第3供給量を決定」する処理について、上記e)の訂正により、処理の対象が「対象ターム」となったことに整合するように、「対象タームにおける」処理と特定する、
ように訂正するものである。
イ 訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲を拡張・変更について
上記a)~g)の訂正の内容は、先に検討した、(1)アa)~g)の訂正の内容と実質的に相違はない。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、(1)イ~エで検討したのと同様、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正であって、新規事項を含むということはできず、また、上記訂正により実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものあるということはできない。
ウ 小括(訂正事項3)
以上によれば、本件訂正における訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
3 小括(本件訂正について)
以上のとおりであるから、令和5年7月20日提出の訂正請求書により請求された訂正後の請求項〔1~11〕、〔12~13〕、14についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、上記訂正事項に係る請求項の特許については、それぞれ特許異議申立がなされているので、独立特許要件は課されない。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕、〔12~13〕、14について訂正することを認める。
第3 本件発明
請求項1~14に係る発明は、令和5年7月20日に提出された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。(以下、各請求項に係る発明を本件発明1、本件発明2などという。)(下線は訂正部分。以下同じ。)
【請求項1】
変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を使用して第1製造物を製造する第1製造装置と、
変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を供給する電力供給装置から供給される電力を少なくとも使用して第1製造物を製造する前記第1製造装置から、製造された第1製造物を、受け取って貯蔵する貯蔵装置と、
前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を原料として第2製造物としてアンモニア、メタノール、有機ハイドライド、メタン、一酸化炭素、軽油、過酸化水素の何れかから選択される化学物質を製造する第2製造装置と、
前記第1製造物を供給する対象の設備である発電装置と販売用手段との少なくともいずれか一方である供給対象設備と、
前記貯蔵装置から、前記第2製造装置と、前記発電装置と、前記販売用手段とのそれぞれへの、制御対象とする対象タームにおける前記第1製造物の供給量を制御するプラント制御装置と、
を含んで構成されるプラント、を制御するためのプラント制御方法であって、
前記プラント制御装置は、前記第1製造物を前記第2製造装置に優先的に供給し、余剰の前記第1製造物を前記発電装置と前記販売用手段との少なくともいずれか一方に供給するケースを実施するものであり、
前記第2製造装置に前記第1製造物が供給される場合に、前記電力供給装置から供給される電力供給量の実績値または予測値に基づいて、前記対象タームにおける前記第1製造装置における前記第1製造物の製造量を予測し、その結果として前記貯蔵装置内の前記第1製造物の貯蔵量を予測し、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量の基準レンジの下限値に基づいて、前記第2製造装置の稼働を停止させる制御をし、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量が、前記基準レンジの上限値以上である場合に、前記第1製造装置で製造される前記第1製造物を前記貯蔵装置に送ることなく、前記発電装置または前記販売用手段に送るように制御し、
前記発電装置は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を使用して発電するものであり、
前記販売用手段は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を販売するために外部に供給する手段であり、
演算部は、前記対象タームにおける前記第1製造物の販売単価である第1価格、前記第2製造物の販売単価である第2価格、および前記発電装置で発電される電力の販売単価である第3価格のうちの少なくともいずれか一つを取得し、
前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記第2製造装置への前記第1製造物の供給量である第2供給量を決定し、
前記プラントが前記販売用手段を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記販売用手段への前記第1製造物の供給量である第1供給量を決定し、
前記プラントが前記発電装置を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記発電装置への前記第1製造物の供給量である第3供給量を決定し、
決定された前記第2供給量で前記第1製造物が前記第2製造装置に供給され、前記プラントが前記販売用手段を含む場合には決定された前記第1供給量で前記第1製造物が前記販売用手段に供給され、前記プラントが前記発電装置を含む場合には決定された前記第3供給量で前記第1製造物が前記発電装置に供給される、ように制御信号出力部が制御信号を出力する、
プラント制御方法。
【請求項2】
前記演算部が、まず前記第2供給量を決定し、その後、 前記プラントが前記販売用手段を含む場合には、前記演算部は、前記販売用手段に前記第1製造物を供給することを決定して、前記第1供給量を0より大きい値として決定し、 前記プラントが前記発電装置を含む場合には、前記演算部は、前記発電装置に前記第1製造物を供給することを決定して、前記第3供給量を0より大きい値として決定する、
請求項1に記載のプラント制御方法。
【請求項3】
前記プラントが、前記販売用手段と前記発電装置とを含む、
請求項1に記載のプラント制御方法。
【請求項4】
前記演算部が、まず前記第2供給量を決定し、その後、前記第1価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記第1供給量よりも前記第3供給量を多くするか、前記第3供給量よりも前記第1供給量を多くするか、のいずれかを決定する、
請求項3に記載のプラント制御方法。
【請求項5】
前記演算部は、前記第1供給量よりも前記第3供給量を多くする場合において前記第1供給量をゼロとし、または、前記第3供給量よりも前記第1供給量を多くする場合において前記第3供給量をゼロとする、
請求項4に記載のプラント制御方法。
【請求項6】
前記第2価格が所定の基準値以上である場合には、前記演算部は、前記第2供給量を前記供給対象設備への前記第1製造物の供給量よりも多くする、
請求項1に記載のプラント制御方法。
【請求項7】
前記第2価格が所定の基準値以上である場合には、前記演算部は、前記供給対象設備への前記第1製造物の供給量をゼロとする、
請求項6に記載のプラント制御方法。
【請求項8】
前記演算部は、前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格のうちの少なくとも2つが与えられたときに、与えられた拘束条件下で、前記第1供給量と前記第2供給量と前記第3供給量のうちの少なくとも2つによって定まる所定の評価関数値に基づいて、前記第2供給量と、前記供給対象設備への前記第1製造物の供給量とを求める、
請求項1に記載のプラント制御方法。
【請求項9】
前記販売用手段は、前記第1製造物を貯蔵するためのタンクと、販売先の別のプラントへの配管と、輸送手段に積載するための配管と、のいずれかである、
請求項1から8までのいずれか一項に記載のプラント制御方法。
【請求項10】
前記プラントは、
前記電力供給装置から供給される電力を、前記第1製造装置と、電力を販売するための電力販売用設備と、に分配する電力分配装置、
をさらに備え、
前記演算部は、前記電力供給装置から供給される電力の販売単価である第4価格を取得し、
前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格と前記第4価格との少なくともいずれかに基づいて、前記電力販売用設備への電力の供給量である販売用電力供給量を決定し、
前記制御信号出力部は、決定された販売用電力供給量で電力が前記電力分配装置から前記電力販売用設備へ供給されるように、制御信号を出力する、
請求項1から9までのいずれか一項に記載のプラント制御方法。
【請求項11】
前記プラントは、
窒素を製造する窒素製造装置と、
前記窒素製造装置が製造した窒素を販売するために外部に供給する手段である窒素販売用手段と、
をさらに備え、
前記第1製造物は、水素であり、
前記第2製造物は、アンモニアであり、
前記第2製造装置は、前記第1製造物である水素と、前記窒素製造装置から供給される窒素とを使用して、前記第2製造物であるアンモニアを製造するものであり、
前記演算部は、窒素の販売価格である窒素販売価格を取得し、
前記演算部は、少なくとも前記窒素販売価格に基づいて、前記窒素販売用手段への窒素の供給量である販売用窒素供給量を決定し、
前記制御信号出力部は、決定された販売用窒素供給量で窒素が前記窒素製造装置から前記窒素販売用手段へ供給されるように、制御信号を出力する、
請求項1から10までのいずれか一項に記載のプラント制御方法。
【請求項12】
変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を使用して第1製造物を製造する第1製造装置と、
変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を供給する電力供給装置から供給される電力を少なくとも使用して第1製造物を製造する前記第1製造装置から、製造された第1製造物を、受け取って貯蔵する貯蔵装置と、
前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を原料として第2製造物としてアンモニア、メタノール、有機ハイドライド、メタン、一酸化炭素、軽油、過酸化水素の何れかから選択される化学物質を製造する第2製造装置と、
前記第1製造物を供給する対象の設備である発電装置と販売用手段との少なくともいずれか一方である供給対象設備と、
前記貯蔵装置から、前記第2製造装置と、前記発電装置と、前記販売用手段とのそれぞれへの、制御対象とする対象タームにおける前記第1製造物の供給量を制御するプラント制御装置と、
を含んで構成されるプラント、であって、
前記プラント制御装置は、前記第1製造物を前記第2製造装置に優先的に供給し、余剰の前記第1製造物を前記発電装置と前記販売用手段との少なくともいずれか一方に供給するケースを実施するものであり、
前記第2製造装置に前記第1製造物が供給される場合に、前記電力供給装置から供給される電力供給量の実績値または予測値に基づいて、前記対象タームにおける前記第1製造装置における前記第1製造物の製造量を予測し、その結果として前記貯蔵装置内の前記第1製造物の貯蔵量を予測し、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量の基準レンジの下限値に基づいて、前記第2製造装置の稼働を停止させる制御をし、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量が、前記基準レンジの上限値以上である場合に、前記第1製造装置で製造される前記第1製造物を前記貯蔵装置に送ることなく、前記発電装置または前記販売用手段に送るように制御し、
前記発電装置は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を使用して発電するものであり、
前記販売用手段は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を販売するために外部に供給する手段である、
プラントを制御するためのプラント制御装置であって、
演算部と、
制御信号出力部と、
を備え、
前記演算部は、前記対象タームにおける前記第1製造物の販売単価である第1価格、前記第2製造物の販売単価である第2価格、および前記発電装置で発電される電力の販売単価である第3価格のうちの少なくともいずれか一つを取得し、
前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記第2製造装置への前記第1製造物の供給量である第2供給量を決定し、
前記プラントが前記販売用手段を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記販売用手段への前記第1製造物の供給量である第1供給量を決定し、
前記プラントが前記発電装置を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記発電装置への前記第1製造物の供給量である第3供給量を決定し、
決定された前記第2供給量で前記第1製造物が前記第2製造装置に供給され、前記プラントが前記販売用手段を含む場合には決定された前記第1供給量で前記第1製造物が前記販売用手段に供給され、前記プラントが前記発電装置を含む場合には決定された前記第3供給量で前記第1製造物が前記発電装置に供給される、ように、前記制御信号出力部は、制御信号を出力する、
プラント制御装置。
【請求項13】
コンピューターを、請求項12に記載のプラント制御装置、として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を使用して第1製造物を製造する第1製造装置と、
変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を供給する電力供給装置から供給される電力を少なくとも使用して第1製造物を製造する前記第1製造装置から、製造された第1製造物を、受け取って貯蔵する貯蔵装置と、
前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を原料として第2製造物としてアンモニア、メタノール、有機ハイドライド、メタン、一酸化炭素、軽油、過酸化水素の何れかから選択される化学物質を製造する第2製造装置と、
前記第1製造物を供給する対象の設備である発電装置と販売用手段との少なくともいずれか一方である供給対象装置と、
前記貯蔵装置から、前記第2製造装置と、前記発電装置と、前記販売用手段とのそれぞれへの、制御対象とする対象タームにおける前記第1製造物の供給量を制御するプラント制御装置と、
を含み、
前記プラント制御装置は、前記第1製造物を前記第2製造装置に優先的に供給し、余剰の前記第1製造物を前記発電装置と前記販売用手段との少なくともいずれか一方に供給するケースを実施するものであり、
前記第2製造装置に前記第1製造物が供給される場合に、前記電力供給装置から供給される電力供給量の実績値または予測値に基づいて、前記対象タームにおける前記第1製造装置における前記第1製造物の製造量を予測し、その結果として前記貯蔵装置内の前記第1製造物の貯蔵量を予測し、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量の基準レンジの下限値に基づいて、前記第2製造装置の稼働を停止させる制御をし、
前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量が、前記基準レンジの上限値以上である場合に、前記第1製造装置で製造される前記第1製造物を前記貯蔵装置に送ることなく、前記発電装置または前記販売用手段に送るように制御し、
前記発電装置は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を使用して発電するものであり、
前記販売用手段は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を販売するために外部に供給する手段であり、
前記プラント制御装置は、
演算部と、
制御信号出力部と、
を備え、
前記演算部は、前記対象タームにおける前記第1製造物の販売単価である第1価格、前記第2製造物の販売単価である第2価格、および前記発電装置で発電される電力の販売単価である第3価格のうちの少なくともいずれか一つを取得し、
前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記第2製造装置への前記第1製造物の供給量である第2供給量を決定し、
前記プラントが前記販売用手段を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記販売用手段への前記第1製造物の供給量である第1供給量を決定し、
前記プラントが前記発電装置を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記発電装置への前記第1製造物の供給量である第3供給量を決定し、
決定された前記第2供給量で前記第1製造物が前記第2製造装置に供給され、前記プラントが前記販売用手段を含む場合には決定された前記第1供給量で前記第1製造物が前記販売用手段に供給され、前記プラントが前記発電装置を含む場合には決定された前記第3供給量で前記第1製造物が前記発電装置に供給される、ように、前記制御信号出力部は、制御信号を出力する、
プラント。
第4 異議申立ての理由及び証拠方法
1 異議申立人 新井紀子(以下「申立人1」という。)は、証拠として、甲第1号証~甲第5号証を提出し、本件発明1~9、12~14は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載の発明、甲第3号証記載の発明、又は甲第4号証記載の発明と同一であり、本件発明10は、甲第1号証記載の発明又は甲第3号証記載の発明と同一であり、本件発明1~10、12~14は、甲第1号証記載の発明~甲第4号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明11は、甲第3号証記載の発明及び甲第5号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張する。
2 異議申立人 西澤まどか(以下「申立人2」という。)は、証拠として、甲第1号証~甲第6号証を提出し、申立人2が提出した特許異議申立書の「理由の要点」を参酌すると以下のとおり主張している。
本件発明1~3は、甲第1号証記載の発明に、甲第2号証の教示又は甲第3号証~甲第6号証に記載された周知技術を適用することによって当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明1~3は、甲第2号証記載の発明に、甲第1号証の教示を適用することによって当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明4~11は、甲第1号証記載の発明又は甲第2号証記載の発明を主引用発明とし、甲第3号証~甲第6号証に記載された周知技術を適用することによって当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明12~14は、甲第1号証記載の発明に、甲第2号証の教示又は甲第3号証~甲第6号証に記載された周知技術を適用することによって当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明12~14は、甲2号証記載の発明に、甲1号証の教示並びに甲第4号証及び甲第6号証に記載された周知技術を適用することによって当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 証拠方法
申立人1は、証拠として、特許異議申立時に以下の甲第1号証~甲第5号証を、令和5年2月24日の意見書提出時に以下の参考文献1~4を提出している。
甲第1号証(1甲1).特開2019-144897号公報
甲第2号証(1甲2).国際公開第2018/078875号(再公表)
甲第3号証(1甲3).特開2019-216501号公報
甲第4号証(1甲4).特開2003-058605号公報
甲第5号証(1甲5).特開2015-038039号公報
参考文献1(1参1).特開2004-171548号公報
参考文献2(1参2).国際公開第2019/059321号(再公表)
参考文献3(1参3).特開2015-45483号公報
参考文献4(1参4).特開2011-130584号公報
申立人2は、証拠として、特許異議申立時に以下の甲第1号証~甲第6号証を、令和5年2月24日の意見書提出時に以下の参考文献1~2を、令和5年8月29日の意見書提出時に以下の甲第7号証~甲第9号証を提出している。
甲第1号証(2甲1).特開2015-038039号公報(1甲5と同じである)
甲第2号証(2甲2).特開2019-216501号公報(1甲3と同じである)
甲第3号証(2甲3).経営工学総論
甲第4号証(2甲4).特開2007-018284号公報
甲第5号証(2甲5).特開2014-024985号公報
甲第6号証(2甲6).国際公開第2011/108270号
参考文献1(2参1).ディジタル計装制御システムの基礎と応用
参考文献2(2参2).国際公開第2018/069993号
甲第7号証(2甲7) .水素基本戦略
甲第7-2号証(2甲7-2).再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議
甲第7-3号証(2甲7-3).第2回再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議議事概要
甲第7-4号証(2甲7-4).再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議(第2回)議事次第
甲第7-5号証(2甲7-5).水素基本戦略(案)
甲第8号証(2甲8) .エネルギーキャリアLCAへの期待:
CO2フリー水素、アンモニア導入を例に
甲第9号証(2甲9) .特開2016-50318号公報
なお、上記のとおり、1甲5と2甲1、1甲3と2甲2は、それぞれ同じ証拠であるから、以下では、1甲5、1甲3としてまとめて検討する。
第5 各号証の記載事項
1 1甲1の記載事項及び1甲1発明
1甲1には、以下のとおりの記載がある。(下線は当審で付与した。以下同じ)
【0001】
本発明は、ガスエネルギー需給システムの最適化装置及び最適化プログラムに関する。
【0006】
太陽光や風力に代表される再生可能エネルギーを利用して発電し、生じた電力を用いて水素やメタンなどのガスエネルギーを生成し、貯蔵するP2G(パワーツーガス)技術が知られている。P2G技術で生成されたガスエネルギーの供給及び需要に関するエネルギー需給システムにおいても、従来と同様、システムの最適化が求められる。ところが、従来のシステム最適化手法では、再生可能エネルギーを利用した発電の時間変動に起因する電力及びガス供給の過不足や、輸送によるエネルギーの生成と消費との時間差に対する考慮がされていない。このように、システムに含まれる要素の時間変動による影響が十分考慮されずにエネルギーフローが計算されるため、計算精度が低く、非現実的なエネルギーフローを算出する可能性があるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、再生可能エネルギーからP2G技術により生成されたガスエネルギーの生成、輸送及び消費を含むガスエネルギー需給システムにおいて、再生可能エネルギーを用いた発電、ガスエネルギーの生成、輸送及び需要のタイミングを順守し、なお且つ、ガスエネルギー需給システムにおける収益最大化を実現し得る最適化装置及び最適化プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るガスエネルギー需給システムの最適化装置は、再生可能エネルギーを用いて発電し、得られた電力を用いてガスエネルギーを生成し、生成されたガスエネルギーを輸送し、輸送されたガスエネルギーを消費するガスエネルギー需給システムの最適化装置であって、それぞれが記憶装置に記憶された、再生可能エネルギーによる発電の発電量に関する情報を記憶した発電量データベースと、ガスエネルギーの需要量に関する情報を記憶した需要量データベースと、ガスエネルギーを輸送する輸送手段に関する情報を記憶した輸送手段データベースと、ガスエネルギー需給システムを構成する設備に関する情報を記憶した設備データベースと、エネルギー単価に関する情報を記憶したエネルギー価格データベースとを参照して、再生可能エネルギーを用いた発電、ガスエネルギーの生成、輸送及び需要のタイミングを考慮したエネルギーフローの最適化手法を用いて、ガスエネルギーを生成する供給側の収益、ガスエネルギーを消費する需要家の収益、又は、ガスエネルギー需給システム全体の収益を最大化するための、供給側及び需要家が有する設備の容量及び運転計画、並びに、輸送におけるガスエネルギーの輸送量及び輸送スケジュールを算出する。
【0010】
好適な態様では、発電量データベース、需要量データベース、輸送手段データベース及び設備データベースが記憶する情報に基づいて、ガスエネルギー需給システムにおいて実行可能なエネルギーフローを計算するエネルギーフロー計算部と、エネルギー価格データベースが記憶する情報に基づいて、実行可能なエネルギーフローのうち、供給側、需要家又はガスエネルギー需給システム全体の収益を最大化する最適エネルギーフローを計算して、供給側及び需要家が有する設備の容量及び運転計画、並びに、ガスエネルギーの輸送量及び輸送スケジュールを算出する最適エネルギーフロー計算部とを備える。更に好適な態様では、エネルギーフロー計算部による実行可能なエネルギーフローの計算及び最適エネルギーフロー計算部による最適エネルギーフローの計算が、線形計画法又は混合整数計画法により行われる。
【0012】
本発明によれば、再生可能エネルギーからP2G技術により生成されたガスエネルギーの生成、輸送及び消費を含むガスエネルギー需給システムにおいて、再生可能エネルギーを用いた発電、ガスエネルギーの生成、輸送及び需要のタイミングを順守し、なお且つ、ガスエネルギー需給システムの収益最大化を実現することができる。
【0014】
本発明の実施形態におけるガスエネルギー需給システムの最適化装置100は、図1に示すように、データベース入力手段102、エネルギーフロー計算部104及び最適エネルギーフロー計算部106を含んで構成される。すなわち、最適化装置100は、データベース入力、エネルギーフローの計算及び最適エネルギーフローの計算を順に行うことによってガスエネルギーの需給関係を有するガスエネルギー需給システムを最適化する処理を行う。
【0015】
最適化装置100は、図2に示すように、処理部202、記憶部204(記憶装置)、入力部206、出力部208及び通信部210を含む一般的なコンピュータ200によって実現することができる。
【0016】
処理部202は、CPU等の演算処理を行う手段を含む。処理部202は、記憶部204に記憶されている熱源機器の最適化プログラムを実行することによって、本実施の形態における最適化装置100を実現する。記憶部204は、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶手段を含む。記憶部204は、処理部202とアクセス可能に接続され、最適化プログラム、発電量データベース(以下「発電量DB」と記載する)102a、需要量データベース(以下「需要量DB」と記載する)102b、輸送手段データベース(以下「輸送手段DB」と記載する)102c、設備データベース(以下「設備DB」と記載する)102d、エネルギー価格データベース(以下「エネルギー価格DB」と記載する)102e、ガスエネルギー需給システムの制約条件及び目的関数等に関するデータ等、最適化装置100での処理に必要な情報を記憶する。入力部206は、コンピュータ200に情報を入力する手段を含む。入力部206は、例えば、ユーザからの入力を受けるタッチパネルやキーボード等を備える。出力部208は、ユーザから入力情報を受け付けるためのユーザインターフェース画面(UI)等やコンピュータ200での最適化結果を出力する手段を含む。出力部208は、例えば、ユーザに対して画像を呈示するディスプレイを備える。コンピュータ200は、その機能の一部をインターネット等の通信部210によって外部サーバに接続されてもよい。また、コンピュータ200は、その機能の一部を外部サーバ等にて実現してもよい。
【0018】
図3は、最適化処理の対象となるガスエネルギー需給システムのモデルの一例を示す図である。需給システム300は、供給側302の設備として、発電設備310、電力を貯蔵する電力貯蔵設備312、電力からガスに変換する(P2G)変換設備314、生成したガスを貯蔵する貯蔵設備316、ガスを輸送形態に変換する変換設備318、輸送形態のガスを貯蔵する貯蔵設備320を備えている。また、需給システム300は、需要家306の設備として、輸送形態のガスを貯蔵する貯蔵設備322、ガスを使用形態に変換する変換設備324、使用形態のガスを貯蔵する貯蔵設備326、ガスを使用(消費)するガス需要部328、輸送形態のガスを電力に変換する変換設備330、電力を使用(消費)する電力需要部332を備えている。また、図3に示すように、需給システム300では、輸送手段304により輸送形態のガスが供給側302から需要家306へと輸送される。なお、図3に示す需給システム300では、説明のために供給側302及び需要家306が所有する各設備並びに輸送手段304をそれぞれ1つずつ記載したが、当該各設備及び輸送手段304は複数であってもよい。
【0020】
図3に示す発電設備310は、例えば、風力、太陽光、地熱、潮力、波力等の再生可能エネルギーを使用して発電する設備であって、例えば、太陽光発電装置、風力発電装置等が挙げられる。発電設備310で生成された電力は、一部が変換設備314に送られ、残部が電力貯蔵設備312に送られて貯蔵されるか、或いは、電力買取業者に送られる(図3では売電と表記)。電力貯蔵設備312は、電力を貯蔵及び供給可能な設備であり、例えば二次電池等が挙げられる。変換設備314は、電力をガスエネルギーに変換する施設であり、例えば、電力により水を電気分解して水素を生成し、或いは、得られた水素と二酸化炭素との反応によりメタンを生成し、これら水素又はメタンをガスエネルギーとして供給する。貯蔵設備316、320、322及び326は、各種ガスエネルギーを貯蔵及び供給可能な設備であり、例えばタンク及びコンテナ等が挙げられる。変換設備318は、P2G技術により生成されたガスエネルギーを輸送により適した形態に変換する設備であり、例えば、水素の圧縮化、冷却及び圧縮による液体化、トルエンへの溶解(有機ハイドライド法)、金属への吸蔵等が挙げられる。
【0027】
設備DB102dには、需給システム300を構成する設備であって、再生可能エネルギーを用いた発電からガスエネルギーの消費までのエネルギーフローを形成する設備に関する情報が含まれる。そのような設備としては、例えば、発電設備310、電力貯蔵設備312、変換設備314及び318、ガスの貯蔵設備316及び320等の供給側302の設備、並びに、ガスの貯蔵設備322及び326、変換設備324、電力への変換設備330等の需要家306側の設備が挙げられる。設備DB102dに記憶される情報は、例えば、これら設備の変換効率(ηj)、運転条件の一例である負荷制限(最小負荷:xjmin、最大負荷:xjmax、負荷変動下限:Δxjmin、負荷変動上限:Δxjmax)、運転条件の一例である最大設備容量(Cj)、設備コストの一例であるOPEX(運用コスト:OPEXj)、設備コストの一例であるCAPEX(設備投資:CAPEXj)等の情報である。
【0028】
エネルギー価格DB102eには、ガスエネルギー又は電力を購入又は販売する場合のエネルギー単価に関する情報が含まれる。エネルギー価格DB102eに記憶される情報は、例えば、供給側302が発電設備310で発電した電力を売電するときの売電単価(Ce1)、供給側302が需要家306にガスエネルギーを販売するときのガス販売単価(Cg1)、需要家306が需給システム300以外の外部からガスエネルギーを購入するときのガス購入単価(Cg2)、及び、需要家306が需給システム300以外の外部から電力を購入するときの売電単価(Ce2)等である。
【0039】
次に、最適エネルギーフロー計算部106は、エネルギーフロー計算部104が算出した実行可能なエネルギーフローのうち、収益を最大化する最適エネルギーフローを作成する。具体的には、最適エネルギーフロー計算部106は、エネルギー価格DB102eが記憶する情報を参照しながら、記憶部204に記憶された目的関数を用いて最適化計算を行い、本実施形態に係るガスエネルギー需給システムにおいて、供給者、需要家又はガスエネルギー需給システム全体の収益を最大化する最適解を算出する。最適化計算は、例えば線形計画法又は混合整数計画法により行われる。
図3
[図:0001407797000002.jpg]
以上の記載によれば、1甲1には、以下の発明(以下「1甲1発明」という。)が記載されている。
ガスエネルギー需給システムにおける収益最大化を実現し得る最適化装置であって、(【0007】)
上記収益の最大化は、ガスエネルギーを生成する供給側の収益を最大化することを含み、(【0008】)
最適化処理の対象となるガスエネルギー需給システムは、発電設備310、電力を貯蔵する電力貯蔵設備312、電力からガスに変換する(P2G)変換設備314、生成したガスを貯蔵する貯蔵設備316、ガスを輸送形態に変換する変換設備318、輸送形態のガスを貯蔵する貯蔵設備320を備え、(【0018】)
発電設備310は、例えば、風力、太陽光、地熱、潮力、波力等の再生可能エネルギーを使用して発電する設備であり、(【0020】)
変換設備314は、電力をガスエネルギーに変換する施設であり、(【0020】)
変換設備318は、生成されたガスエネルギーを輸送により適した形態に変換する設備であり、変換とは、水素の圧縮化、冷却及び圧縮による液体化、トルエンへの溶解(有機ハイドライド法)、金属への吸蔵等であり(【0020】)
貯蔵設備320は、タンク及びコンテナ等のような各種ガスエネルギーを貯蔵及び供給可能な設備であり、(【0020】)
ガスエネルギー需給システムの最適化装置100は、最適エネルギーフロー計算部106、記憶部204(記憶装置)を含み、(【0014】、【0015】)
記憶部204は、処理部202とアクセス可能に接続され、エネルギー価格データベース(以下「エネルギー価格DB」と記載する)102eなどの、最適化装置100での処理に必要な情報を記憶し、(【0016】)
最適エネルギーフロー計算部106は、エネルギー価格DB102eが記憶する情報を参照しながら、記憶部204に記憶された目的関数を用いて最適化計算を行い、ガスエネルギー需給システムにおいて、供給者の収益を最大化する最適解を算出する、(【0039】)
ガスエネルギー需給システムの最適化装置。
2 1甲2の記載及び1甲2発明
1甲2には、以下のとおりの記載がある。
【0002】
太陽光発電、風力発電など自然エネルギー由来の電力が増加している。一方、火力発電所など化石燃料由来の電力が依然主流である。そのため、自然エネルギー由来の電力のみを電力供給源とする電力網や、自然エネルギー由来の電力と化石燃料由来の電力とをミックスして電力供給源とする電力網といった、複数種の電力網が混在していくことになると予想されている。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、エネルギー網とより効率的にエネルギーの授受を行うことが可能な水素エネルギーシステム、水素エネルギーシステムの制御方法、及びプログラムを提供することである。
【0013】
まず、図1に基づき、第1実施形態に係る水素エネルギーシステム1の全体構成を説明する。図1は、第1実施形態に係る水素エネルギーシステム1の構成を示すブロック図である。この図1に示すように、本実施形態に係る水素エネルギーシステム1は、複数のエネルギー網2、4、6、8、10、12とエネルギーの授受が可能なシステムであり、水素エネルギー制御装置100と、水素製造装置102と、蓄電池104と、気体水素タンク106と、気体水素排出装置108と、液化装置110と、液体水素タンク112と、液体水素排出装置114と、気化装置116と、水素発電装置118と、蓄電池120とを備えて構成されている。
【0014】
ここで、複数のエネルギー網2、4、6、8、10、12について説明する。この複数のエネルギー網2、4、6、8、10、12は、自然エネルギー電力網2と、混成電力網4と、気体水素流通網6と、液体水素流通網8と、高温温水網10と、低温温水網12とで構成される。
【0015】
自然エネルギー電力網2は、自然エネルギー由来の発電設備のみが発電所として接続された電力網である。すなわち、太陽光を用いた太陽光発電装置P2(PV:Photovoltaics)、及び風力を用いて発電する風力発電装置W2などから電力を供給される電力網である。この自然エネルギー電力網2は、化石燃料などの燃料が不要であるが、その発電量は天候や風力などの環境の影響を受けるため不安定であり、発電出力を調整することが難しい。
【0016】
混成電力網4は、自然エネルギー由来の発電設備P2と化石燃料由来の発電設備F2が発電所として接続された電力網である。化石燃料由来の発電設備F2の発電量は安定しており、自然エネルギー由来の発電設備P2の発電量の変動は、化石燃料由来の発電設備F2の発電量で補われる。このため、混成電力網4の方が自然エネルギー電力網2よりも電力供給をより安定して行うことが可能である。一方で、混成電力網4は、化石燃料由来の発電設備F2により発電を行うため、二酸化炭素の排出量がより多くなる。
【0017】
気体水素流通網6は、水素を気体のまま輸送して、水素需要に対して供給する流通網であり、液体水素流通網8は、水素を液体として輸送して、水素需要に対して供給する流通網である。また、高温温水網10は、高温温水需要に対して、高温の温水を供給する水路網であり、低温温水網12は、低温温水需要に対して、低温の温水を供給する水路網である。
【0018】
水素エネルギー制御装置100は、水素製造に関する装置の制御を行う。また、水素エネルギー制御装置100は、時系列な複数の物理量と、それぞれの優先度とに基づき、これらの時系列な複数の物理量の内の少なくとも一つに対応する物理量の時系列な計画値を得ることが可能である。すなわち、水素エネルギー制御装置100は、各装置に対応する計画値に従い、水素製造装置102と、気体水素タンク106と、気体水素排出装置108と、液化装置110と、液体水素タンク112と、液体水素排出装置114と、気化装置116と、水素発電装置118とを制御する。より詳細な構成に関しては、後述する。
【0019】
水素製造装置102は、電気と水から、水電解により水素を製造する。すなわち、この水素製造装置102は、自然エネルギー電力網2、及び混成電力網4の少なくともいずれかから供給された電力を用いて、水の電気分解により水素を製造し、この製造した水素を気体水素タンク106に蓄える。水素製造装置102は、例えば、アルカリ性の溶液に電流を流すことにより、水素と酸素とを製造する電気水分解装置である。すなわち、水素製造装置102は、水素配管を介して、生成した水素を気体水素タンク106に蓄える。より詳細には、水素製造装置102は、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い水の電気分解を行い、水素を製造する。このように、水素製造装置102は、自然エネルギー電力網2、及び混成電力網4のいずれからも電力供給を受けることが可能である。
【0020】
蓄電池104は、水素製造装置102への電力供給が不足する場合に、水素製造装置102への供給電力を補う。これにより、水素製造装置102の水素製造をより安定的に行うことが可能である。
【0021】
気体水素タンク106は、水素製造装置102により製造された気体の水素及び、気体水素流通網6から供給された気体の水素を貯蔵する。この気体水素タンク106は、水素製造装置102と、気体水素排出装置108と、液化装置110とに配管を介して接続されている。より詳細には、気体水素タンク106は、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、水素製造装置102、気化装置116及び気体水素流通網6の少なくともいずれかから供給された水素を、気体水素排出装置108と、液化装置110とに供給する。これから分かる様に、気体水素タンク106に蓄えられる気体水素の量は、水素製造装置102、気化装置116及び気体水素流通網6から供給される気体水素の量と、液化装置110及び水素発電装置118に供給する気体水素量との差に応じて変動する。
【0022】
気体水素排出装置108は、気体水素タンク106から供給された気体水素を気体水素流通網6に供給する。より詳細には、気体水素排出装置108は、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、気体水素タンク106から供給された水素を、気体水素流通網6に供給する。なお、気体水素排出装置108は、気体水素タンク106と一体に構成してもよい。これらから分かる様に、気体水素タンク106、気体水素排出装置108、及び気体水素流通網6は、気体水素の循環系を構成している。
【0023】
液化装置110は、例えば圧縮機であり、気体水素タンク106から供給された気体水素を液体水素に変換する。より詳細には、液化装置110は、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、気体水素タンク106から供給された水素を液体水素に変換し、液体水素タンク112に供給する。なお、液化装置110は、気体水素の循環系から得られた気体水素を、液体水素として、後述する液体水素の循環系に供給している。
【0024】
液体水素タンク112は、液化装置110及び液体水素流通網8の少なくともいずれかから供給された液体水素を貯蔵する。より詳細には、液体水素タンク112は、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、液化装置110及び液体水素流通網8の少なくともいずれかから供給された液体水素を蓄えると共に、液体水素排出装置114に液体水素を供給する。
【0025】
液体水素排出装置114は、液体水素タンク112から供給された液体水素を液体水素流通網8、及び気化装置116に供給する。より詳細には、液体水素排出装置114は、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、液体水素タンク112から供給された水素を液体水素流通網8、及び気化装置116に供給する。なお、液体水素排出装置114は、液体水素タンク112と一体的に構成されてもよい。これらから分かる様に、液体水素タンク112、液体水素排出装置114、及び液体水素流通網8は、液体水素の循環系を構成している。
【0027】
水素発電装置118は、気体水素タンク106から供給される水素を用いて、電力と、熱とを生成する。ここでの熱は、例えば温水として供給される。水素発電装置118は、高温タイプの燃料電池118aと、低温タイプの燃料電池118bとを、備えて構成されている。すなわち、水素発電装置118は、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、酸素と、気体水素タンク106から供給される水素とを用いて電気を発電すると共に、熱を生成する。酸素は空気中の酸素を利用してもよいし、水素製造装置102が水素製造に伴い出力する酸素を酸素タンクに蓄積したものを使用してもよい。また、高温タイプの燃料電池118aは、例えば固体酸化物形型燃料電池であり、高温タイプの燃料電池118aにより製造される例えば750~1000℃の高温温水は、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、高温温水網10に供給される。一方で、低温タイプの燃料電池118bは、例えば固体高分子型燃料電池であり、低温タイプの燃料電池118bにより製造される例えば40~90℃の低温温水は、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、低温温水網12に供給される。なお、これらの温度域は、他の温度域を用いて定義してもよい。また、中温や超高音などの温度域があってもよい。
【0028】
蓄電池120は、水素発電装置118の発電電力が不足する場合に、電力網2、4への供給電力を補う。これにより、水素発電装置118の電力供給をより安定的に行うことが可能である。なお、電力網2、4、水素流通網6、8、温水網10、12に対して、水素エネルギーシステム1以外の需要家はいてもよいし、いなくても良い。
【0029】
図2は、水素エネルギー制御装置100の構成を示すブロック図で有り、この図2に基づき、水素エネルギー制御装置100の詳細な構成を説明する。水素エネルギー制御装置100は、予め定められた複数の物理量毎に定められた優先度に従い、予め定められた複数の物理量毎に対応する時系列な計画値を生成する。すなわち、この水素エネルギー制御装置100は、例えばコンピュータであり、記憶部122と、取得部124と、設定部126と、計画部128と、制御部130とを、備えて構成されている。
【0032】
取得部124は、水素製造に関する時系列な物理量を複数取得する。例えば、装置毎に予め定められた時系列な物理量を取得する。すなわち、装置に供給される予め定められた時系列な需要量、及び装置が供給する予め定められた時系列な供給量を装置毎に取得する。ここでの需要量は、例えば消費される電力量、熱量、水素量などである。また、供給量は、例えば生成される電力量、熱量、水素量などである。
【0033】
設定部126は、予め定められた時系列な物理量毎に優先度を設定する。この設定部126は、電力網、温水網、水素流通網がそれぞれ複数種混在する場合に、それぞれを優先する度合いを意味する基本優先度を設定する。本実施形態では、自然エネルギー電力網2及び、混成電力網4の第1組み合わせ、気体水素流通網6、及び液体水素流通網8の第2組み合わせ、高温温水網10、及び低温温水網12の第3組み合わせそれぞれに基本優先度を設定する。
【0039】
計画部128は、時系列な複数の物理量と、それぞれの優先度とに基づき、時系列な複数の物理量の内の少なくとも一つに対応する時系列な計画値を得る。すなわち、この計画部128は、相互に関連する複数の時系列な計画値であって、複数の時系列な物理量それぞれに対応する複数の時系列な計画値を、物理量毎の優先度に応じて得るのである。
【0067】
以上のように本実施形態では、設定部126が、時系列な物理量毎に優先度を設定し、計画部128が、複数の時系列な物理量それぞれに対応する複数の時系列な計画値を物理量毎の優先度に応じて得ることとした。これにより、より制御に適した時系列な計画値を取得可能であり、エネルギー網とより効率的にエネルギーの授受を行うことができる。
図1
[図:0001407797000003.jpg]
以上の記載によれば、1甲2には、以下の発明(以下「1甲2発明」という。)が記載されている。
水素エネルギーシステムの制御方法であって、(【0007】)
水素エネルギーシステム1は、複数のエネルギー網2、4、6、8、10、12とエネルギーの授受が可能なシステムであり、水素エネルギー制御装置100と、水素製造装置102と、気体水素タンク106と、気体水素排出装置108と、液化装置110と、液体水素タンク112と、液体水素排出装置114と、水素発電装置118とを備え、(【0013】)
複数のエネルギー網2、4、6、8、10、12は、自然エネルギー電力網2と、混成電力網4と、気体水素流通網6と、液体水素流通網8と、高温温水網10と、低温温水網12とで構成され、(【0014】)
自然エネルギー電力網2は、自然エネルギー由来の発電設備のみが発電所として接続された電力網であり、(【0015】)
気体水素流通網6は、水素を気体のまま輸送して、水素需要に対して供給する流通網であり、液体水素流通網8は、水素を液体として輸送して、水素需要に対して供給する流通網であり、高温温水網10は、高温温水需要に対して、高温の温水を供給する水路網であり、低温温水網12は、低温温水需要に対して、低温の温水を供給する水路網であり、(【0017】)
水素エネルギー制御装置100は、各装置に対応する計画値に従い、水素製造装置102と、気体水素タンク106と、気体水素排出装置108と、液化装置110と、液体水素タンク112と、液体水素排出装置114と、気化装置116と、水素発電装置118とを制御し、(【0018】)
水素製造装置102は、自然エネルギー電力網2から供給された電力を用いて、水の電気分解により水素を製造し、この製造した水素を気体水素タンク106に蓄え、(【0019】)
気体水素タンク106は、水素製造装置102により製造された気体の水素を貯蔵するものであって、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、水素製造装置102から供給された水素を、気体水素排出装置108と、液化装置110とに供給し、(【0021】)
気体水素排出装置108は、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、気体水素タンク106から供給された水素を、気体水素流通網6に供給し、(【0022】)
気体水素排出装置108は、気体水素タンク106と一体に構成してもよく、気体水素タンク106、気体水素排出装置108、及び気体水素流通網6は、気体水素の循環系を構成し、(【0022】)
液化装置110は、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、気体水素タンク106から供給された水素を液体水素に変換し、液体水素タンク112に供給し、(【0023】)
液体水素タンク112は、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、液化装置110から供給された液体水素を蓄えると共に、液体水素排出装置114に液体水素を供給し、(【0024】)
液体水素排出装置114は、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、液体水素タンク112から供給された水素を液体水素流通網8に供給し、(【0025】)
水素発電装置118は、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、気体水素タンク106から供給される水素を用いて電気を発電すると共に、高温温水と低温温水を製造するものであって、高温温水は、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、高温温水網10に供給され、低温温水は、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、低温温水網12に供給され、(【0027】)
蓄電池120は、水素発電装置118の発電電力が不足する場合に、電力網2、4への供給電力を補うことで、水素発電装置118の電力供給をより安定的に行うことが可能であり、(【0028】)
水素エネルギー制御装置100は、記憶部122と、取得部124と、設定部126と、計画部128と、制御部130とを備えるコンピュータであり、(【0029】)
取得部124は、装置に供給される予め定められた時系列な需要量(消費される電力量、熱量、水素量)、及び装置が供給する予め定められた時系列な供給量(生成される電力量、熱量、水素量)を装置毎に取得し、(【0032】)
設定部126は、電力網、温水網、水素流通網がそれぞれ複数種混在する場合に、それぞれを優先する度合いを意味する基本優先度を設定するものであって、気体水素流通網6、及び液体水素流通網8の第2組み合わせ、高温温水網10、及び低温温水網12の第3組み合わせそれぞれに基本優先度を設定し、(【0033】)
計画部128は、時系列な複数の物理量と、それぞれの優先度とに基づき、時系列な複数の物理量の内の少なくとも一つに対応する時系列な計画値を得、(【0039】)
設定部126が、時系列な物理量毎に優先度を設定し、計画部128が、複数の時系列な物理量それぞれに対応する複数の時系列な計画値を物理量毎の優先度に応じて得ることにより、エネルギー網と効率的にエネルギーの授受を行うことができる、(【0067】)
水素エネルギーシステムの制御方法。
3 1甲3の記載事項及び1甲3発明
1甲3には、以下のとおりの記載がある。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑み、廃棄物焼却施設において、廃棄物を焼却して得られる燃焼熱からエネルギーの製造、貯蔵を廃棄物焼却の発熱量変動が生じても安定して効率よく行うことができ、エネルギーを利用する用途の制約がない廃棄物焼却によるエネルギー貯蔵供給装置を提供することを課題とする。
【0064】
<第一実施形態>
本実施形態では、図2に見られるように、焼却炉1に接続されたボイラ2に対し、エネルギー製造・利用装置としての発電機13を連結した蒸気タービン12が接続されており、該発電機13に対し水電解装置14が、そして、該水電解装置14に対しアンモニア製造装置15が接続されている。かかる本実施形態では、蒸気タービン12がボイラ2からの蒸気を受けて回転駆動され、該蒸気タービン12に連結されている発電機13で発電し、水電解装置14で外部から受ける水を発電機13からの電力を用いて電気分解して水素そして酸素を発生させ、外部から受ける空気中の窒素とこの水電解装置13からの水素とを用いてアンモニア製造装置15でアンモニアを製造する。製造されたアンモニアは、アンモニア需要先へ供給されて利用される形態そしてアンモニア貯蔵装置でエネルギー源として貯蔵される形態の少なくとも一方の形態で利用される。このようにして、焼却炉を備えた廃棄物焼却施設において、アンモニアの形態でエネルギー貯蔵あるいは需要先へ供給が可能となる。
【0065】
<第二実施形態>
図3に示される第二実施形態は、図2で説明された第一実施形態と概ね同じであるが、水電解装置14で発生した水素が、アンモニア製造装置15のみならず、水素需要先と水素貯蔵装置の少なくとも一方に送られて、水素需要先で利用される形態そして水素貯蔵装置でエネルギー源として貯蔵される形態の少なくとも一方の形態で利用される。このようにして、焼却炉を備えた廃棄物焼却施設において、アンモニアの形態でエネルギー貯蔵あるいは需要先へ供給が可能となるとともに、水素の形態でエネルギー貯蔵あるいは需要先へ供給が可能となる。
【0066】
また、これに加え、水電解装置14で発生させる水素量、アンモニア製造装置15で製造するアンモニア量を制御するとともに、水素及びアンモニアをそれぞれの需要先と貯蔵装置に供給する供給量を制御するためのエネルギー製造供給制御装置(図示せず)を設けてもよい。該エネルギー製造供給制御装置は、水素及びアンモニアの各需要先での需要及び各貯蔵装置での貯蔵の現状と将来予想や、水素及びアンモニアの販売価格等に基づき、それぞれの需要及び貯蔵の状況を適切な状況とするように、上記水電解装置14そしてアンモニア製造装置15へ指令信号を送り、これらを制御する。このように、水素及びアンモニアの個々の製造比率や需要先、貯蔵装置への供給比率を調整して総合的なエネルギー変換効率を高くすることができ、又経済的に優れたエネルギー製造供給を実現できる。
【0067】
<第三実施形態>
図4に示される第三実施形態は、図2で説明された第一実施形態と概ね同じであるが、発電機13で発電した電力が、水電解装置14のみならず、電力需要先と電力貯蔵装置の少なくとも一方に送られて、電力需要先で利用される形態そして電力貯蔵装置でエネルギー源として貯蔵される形態の少なくとも一方の形態で利用される。このようにして、焼却炉を備えた廃棄物焼却施設において、アンモニアの形態でエネルギー貯蔵あるいは需要先へ供給が可能となるとともに、電力の形態でエネルギー貯蔵あるいは需要先へ供給が可能となる。
【0068】
また、これに加え、発電機13で発電する電力量、アンモニア製造装置15で製造するアンモニア量を制御するとともに、電力及びアンモニアをそれぞれの需要先と貯蔵装置に供給する供給量を制御するためのエネルギー製造供給制御装置(図示せず)を設けてもよい。該エネルギー製造供給制御装置17は、電力及びアンモニアの各需要先での需要及び各貯蔵装置での貯蔵の現状と将来予想や、電力及びアンモニアの販売価格等に基づき、それぞれの需要及び貯蔵の状況を適切な状況とするように、上記発電機13そしてアンモニア製造装置15へ指令信号を送り、これらを制御する。このように、電力及びアンモニアの個々の製造比率や需要先、貯蔵装置への供給比率を調整して総合的なエネルギー変換効率を高くすることができ、又経済的に優れたエネルギー製造供給を実現できる。
【0069】
<第四実施形態>
次に、図5に示される第四実施形態は、図3の第二実施形態と同様に、発電機13からの電力を用いて電気分解して水素そして酸素を発生させ、この水電解装置13からの水素と窒素を用いてアンモニア製造装置15でアンモニアを製造し、製造したアンモニアを、アンモニア需要先とアンモニア貯蔵装置の少なくとも一方に供給するとともに、水電解装置14で発生した水素を水素需要先と水素貯蔵装置の少なくとも一方に供給し、さらに、図4の第三実施形態と同様に発電機13で発電した電力を電力需要先と電力貯蔵装置の少なくとも一方に供給するようになっている。また、これに加え、発電機13で発電する電力量、水電解装置14で発生させる水素量、アンモニア製造装置15で製造するアンモニア量を制御するとともに、電力、水素及びアンモニアをそれぞれの需要先と貯蔵装置に供給する供給量を制御するためのエネルギー製造供給制御装置17が設けられている。該エネルギー製造供給制御装置17は、電力、水素及びアンモニアの各需要先での需要及び各貯蔵装置での貯蔵の現状と将来予想や、電力、水素及びアンモニアの販売価格等に基づき、それぞれの需要及び貯蔵の状況を適切な状況とするように、上記発電機13、水電解装置14そしてアンモニア製造装置15へ指令信号を送り、これらを制御する。このように、電力、水素及びアンモニアの個々の製造比率や需要先、貯蔵装置への供給比率を調整して総合的なエネルギー変換効率を高くすることができ、又経済的に優れたエネルギー製造供給を実現できる。
図5
[図:0001407797000004.jpg]
まず、【0069】の「第四実施形態」では、「図5に示される第四実施形態は、図3の第二実施形態と同様に、発電機13からの電力を用いて電気分解して水素そして酸素を発生させ、この水電解装置13からの水素と窒素を用いてアンモニア製造装置15でアンモニアを製造し、製造したアンモニアを、アンモニア需要先とアンモニア貯蔵装置の少なくとも一方に供給するとともに、水電解装置14で発生した水素を水素需要先と水素貯蔵装置の少なくとも一方に供給し、さらに、図4の第三実施形態と同様に発電機13で発電した電力を電力需要先と電力貯蔵装置の少なくとも一方に供給するようになっている。」と記載されているから、「第二実施形態」と「第三実施形態」の構成を備えているといえる。
また、【0065】の「第二実施形態」では、「図2で説明された第一実施形態と概ね同じであるが、水電解装置14で発生した水素が、アンモニア製造装置15のみならず、水素需要先と水素貯蔵装置の少なくとも一方に送られて、水素需要先で利用される形態そして水素貯蔵装置でエネルギー源として貯蔵される形態の少なくとも一方の形態で利用される。」の記載が、【0067】の「第三実施形態」では、「図2で説明された第一実施形態と概ね同じであるが、発電機13で発電した電力が、水電解装置14のみならず、電力需要先と電力貯蔵装置の少なくとも一方に送られて、電力需要先で利用される形態そして電力貯蔵装置でエネルギー源として貯蔵される形態の少なくとも一方の形態で利用される。」と記載されている。
したがって、「第四実施形態」は、「第一実施形態」、「第二実施形態」、「第三実施形態」の構成を備え、さらに、付加された構成を備えたものであるといえる。
よって、「第四実施形態」である1甲3に記載された発明は、以下の構成からなる発明(以下「1甲3発明」という。)であるといえる。
焼却炉1に接続されたボイラ2に対し、発電機13を連結した蒸気タービン12が接続され、該発電機13に対し水電解装置14が、そして、該水電解装置14に対しアンモニア製造装置15が接続され、(【0064】)
蒸気タービン12がボイラ2からの蒸気を受けて回転駆動され、該蒸気タービン12に連結されている発電機13で発電し、水電解装置14で外部から受ける水を発電機13からの電力を用いて電気分解して水素そして酸素を発生させ、外部から受ける空気中の窒素とこの水電解装置13からの水素とを用いてアンモニア製造装置15でアンモニアを製造し、製造されたアンモニアは、アンモニア需要先へ供給されて利用される形態、あるいは、アンモニア貯蔵装置でエネルギー源として貯蔵される形態の少なくとも一方の形態で利用され、(【0064】)
水電解装置14で発生した水素が、アンモニア製造装置15のみならず、水素需要先と水素貯蔵装置の少なくとも一方に送られて、水素需要先で利用される形態、あるいは、水素貯蔵装置でエネルギー源として貯蔵される形態の少なくとも一方の形態で利用され、(【0065】)
発電機13で発電した電力が、水電解装置14のみならず、電力需要先と電力貯蔵装置の少なくとも一方に送られて、電力需要先で利用される形態、あるいは、電力貯蔵装置でエネルギー源として貯蔵される形態の少なくとも一方の形態で利用され、(【0067】)
発電機13で発電する電力量、水電解装置14で発生させる水素量、アンモニア製造装置15で製造するアンモニア量を制御するとともに、電力、水素及びアンモニアをそれぞれの需要先と貯蔵装置に供給する供給量を制御するためのエネルギー製造供給制御装置17を設け、該エネルギー製造供給制御装置17は、電力、水素及びアンモニアの各需要先での需要及び各貯蔵装置での貯蔵の現状と将来予想や、電力、水素及びアンモニアの販売価格等に基づき、それぞれの需要及び貯蔵の状況を適切な状況とするように、上記発電機13、水電解装置14そしてアンモニア製造装置15へ指令信号を送り、これらを制御する、(【0069】)
廃棄物焼却によるエネルギーの貯蔵供給装置。(【0008】)
4 1甲4の記載事項及び1甲4発明
1甲4には、以下のとおりの記載がある。
【0001】
【発明の属する分野】本発明は、水素生成装置によって生成した水素を取引するに際して、ネットワークに接続されたホスト装置によって取引先を決定し、この取引先との間で水素を取引する水素取引システムに関し、エネルギー源としての水素に対して、従来の貨幣に相当する高い流通価値を付与して柔軟に流通させることによって、全く新しい取引システムを構築することが可能な水素取引システム及び水素取引方法に関する。また、このような水素取引システム及び水素取引方法に用いて好適な水素貯蔵装置、情報端末装置、及びホスト装置に関する。
【0012】そこで本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、エネルギーを備蓄や取引が容易な形で貯蔵するとともに、貯蔵されたエネルギーを柔軟に取引・流通させることが可能な全く新しいエネルギーの取引・流通システムを構築することを目的とする。
【0017】すなわち、本発明の請求項1に係る水素取引システムは、ネットワークを介して接続された複数の情報端末装置及びホスト装置と、上記各情報端末装置に接離自在とされた水素貯蔵装置と、上記水素貯蔵装置に供給する水素を生成する水素生成装置とを備える。上記水素貯蔵装置は、水素を貯蔵するとともに外部に接続される装置との間で水素の授受が自在とされてなる水素貯蔵手段と、各種情報を記憶する情報記憶手段とを有する。上記水素生成装置は、各種エネルギーを用いて水素を生成する水素生成手段と、この水素生成手段により生成した水素を上記水素貯蔵装置の水素貯蔵手段に供給する水素供給手段とを有する。上記情報端末装置は、上記水素貯蔵装置の情報記憶手段に対して各種情報の記録再生を行う記録再生手段と、上記ホスト装置に対してネットワークを介して各種情報を送受信する第1の情報送受信手段とを有する。上記ホスト装置は、上記情報端末装置に対してネットワークを介して各種情報を送受信する第2の情報送受信手段と、上記情報端末装置から送信された情報に基づいて、上記水素貯蔵装置に貯蔵された水素の取引に関わる情報を処理する情報処理手段とを有する。そして、上記水素貯蔵装置に貯蔵された水素の取引先を、利用者の要求に応じて上記ホスト装置によって決定し、水素を当該取引先との間で水素を取引する。
【0082】各利用者側には、図2に示すように、各種のエネルギーを用いて水素を生成する水素生成装置10と、この水素生成装置10によって生成された水素が貯蔵される水素カートリッジ30と、この水素カートリッジ30に関する情報をネットワーク100を介して後述するホスト装置200などとの間で送受信するコンピュータ装置50とが備えられる。
【0083】なお、水素カートリッジ30とコンピュータ装置50との間、及びコンピュータ装置50とホスト装置200との間で行われる情報の通信(送受信)は、その接続形態や通信方式などに限定されるものではない。これら装置間は、各種の伝送ケーブルを用いて有線通信を行うとしてもよいし、例えば電波や赤外線などにより無線通信を行うとしてもよい。
【0086】水素生成装置10は、図3に示すように、各種エネルギーを用いて水素を生成する水素生成部11と、この水素生成部11により生成した水素を水素カートリッジ30に供給する水素供給部12とを有する。なお、図3は、水素生成装置10の概略を示す機能ブロック図である。
【0087】水素生成部11は、例えば自然エネルギー、回生エネルギー、或いは夜間の余剰電力などを利用して、例えば水を電気分解することなどによって、水素を生成する。
【0088】ここで、自然エネルギーとしては、例えば太陽光、風力、バイオマス、波力、地熱などを挙げることができる。水素生成部11は、これらの自然エネルギーから、一度電気エネルギーを生成し、この電気エネルギーを水の電気分解に利用することによって、水素を生成するように構成されている。なお、自然エネルギーから電気エネルギーを生成するに際しては、従来から用いられている各種エネルギー変換技術を利用することによって容易に実現することができる。具体的には例えば、いわゆる太陽電池を用いて太陽光を電気エネルギーに変換したり、風車を利用した風力発電システムなどにより風力を電気エネルギーに変換するなどのような各種の手法を採用することができる。
【0091】水素供給部12は、例えば各種のポンプなどによって構成されており、水素生成装置10に水素カートリッジ30が接続された状態で、水素生成部11によって生成された水素を水素カートリッジ30に供給する機能を有している。
【0095】そして、水素カートリッジ30は、供給された水素を内部に貯蔵したり、内部に貯蔵した水素を外部の各種装置に対して供給したりする機能を有している。また、内部に各種の情報を自由に記憶することが可能とされ、外部に接続された装置からの要求に応じて、この情報の記憶再生が行われる。
【0096】水素カートリッジ30は、図4に示すように、例えば樹脂材料や金属材料などによって形成された外装ケース31の内部に、燃料としての水素を貯蔵する水素吸蔵体32と、コンピュータ装置50や他の各種装置との間で各種情報の送受信を行う通信インターフェース33と、水素吸蔵体32及び通信インターフェース33の動作を制御する制御部34と、この制御部34に接続されたメモリ部35とを備えている。
【0115】水素取引システムにおける利用者側には、以上のような構成とされた水素生成装置10、水素カートリッジ30、及びコンピュータ装置50が用意される。そして、水素取引システムにおいては、図6に示すように、ホスト装置200に対して、複数の利用者(図6中においては、複数の利用者を代表して、利用者A、利用者B、利用者Cとして示す。)がそれぞれコンピュータ装置50によって、インターネット100を介して接続されている。
【0116】また、ホスト装置200には、インターネットを介して、各種の事業者が接続されており、相互に各種情報を送受信することが可能とされている。なお、各事業者は、各種のコンピュータ装置を用いてホスト装置200に対してアクセスを行う。
【0117】また、図6中においては、このような事業者の一例として、水素を燃料として販売する燃料会社、水素を燃料の一部として用いることにより電力を生成し、この電力を販売する電力会社、取引が成立した水素を取引先まで運送する運送業者、水素の取引に際して現金決済が生じた場合に決済を行う銀行、水素の取引の対価を証券の形で提供する証券会社、水素の取引に対してかける保険を提供する保険会社を図示している。
【0119】また、ホスト装置200は、例えばハードディスク装置や半導体記憶素子等によって構成され、各種の情報が記憶されるメモリ部201を備えている。メモリ部201には、水素の取引を仲介する際に参照する各種のデータベースが記憶されている。
【0122】先ず、図7中のステップS10に示すように、各利用者は、それぞれ水素生成装置10によって各種エネルギーから水素を生成し、水素カートリッジ30に貯蔵する。このようにして水素カートリッジ30に貯蔵された水素は、例えば燃料電池が搭載された他の装置に対して自ら供給して、いわゆる自給自足を行うことにより利用することができる。
【0123】ここで、利用者により余剰の水素が生成され、水素カートリッジ30に貯蔵された場合には、コンピュータ装置50を水素カートリッジ30と接続し、メモリ部35に記憶された情報をコンピュータ装置50によって読み取る。これにより、コンピュータ装置50は、水素カートリッジ30毎に固有の識別情報や取引情報を知り、さらには内部に貯蔵された水素量などの情報を知ることができる。
【0124】次にステップS11において、利用者は、コンピュータ装置50を用いて、例えばキーボード52やマウス53を操作することにより、余剰の水素を他の利用者又は事業者に対して提供(売却)することを要求する。このとき、提供する水素量や、取引を行うに際して希望する価格などを入力するとしてもよい。
【0125】次にステップS12において、コンピュータ装置50は、インターネット100を介してホスト装置200にアクセスする。これによりホスト装置200は、例えばメモリ部201に記憶された各種データベースを検索することにより、利用者が希望とする条件(すなわち、取引する水素量、希望価格、或いは取引先の種類など)に応じて、取引先を選出する。
【0126】次にステップS13において、ホスト装置200は、選出された取引先に対して取引を行うか否かを利用者に対して確認する。そして、この取引先に対して取引を行うことを利用者が却下した場合には処理をステップS14に進め、利用者が承諾した場合には処理をステップS15に進める。
【0127】ステップS14においては、利用者から要求された取引が成立しなかったものとして、取引が中止される。このとき、ホスト装置200は、新たな取引先を選出しなおした上で、処理をステップS13に戻し、再度利用者に取引の確認を求めるとしてもよい。
【0128】ステップS15においては、ホスト装置200が選出した取引先との間で水素の取引を行うことが利用者によって承諾され、取引が決定される。
【0129】次にステップS16においては、取引先との間で水素の取引が行われる。このとき水素を実際に取引するに際して、利用者は、ホスト装置200から通知された取引先に関する情報に基づいて水素カートリッジ30を取引先に届ける。
以上の記載によれば、1甲4には、以下の発明(以下「1甲4発明」という。)が記載されている。
自然エネルギー、回生エネルギー、或いは夜間の余剰電力などを利用して、水を電気分解することなどによって、水素を生成する水素生成部11と、(【0087】)
水素生成部11によって生成された水素を水素カートリッジ30に供給する機能を有する水素供給部12と、(【0091】)
供給された水素を内部に貯蔵したり、内部に貯蔵した水素を外部の各種装置に対して供給したりする機能を有する水素カートリッジ30と、(【0095】)
水素カートリッジ30は、外装ケース31の内部に、燃料としての水素を貯蔵する水素吸蔵体32と、コンピュータ装置50や他の各種装置との間で各種情報の送受信を行う通信インターフェース33と、水素吸蔵体32及び通信インターフェース33の動作を制御する制御部34と、この制御部34に接続されたメモリ部35とを備え、(【0096】)
ホスト装置200は、水素の取引を仲介する際に参照する各種のデータを含む各種の情報が記憶されるメモリ部201を備え、(【0119】)
各利用者は、それぞれ水素生成装置10によって各種エネルギーから水素を生成し、水素カートリッジ30に貯蔵し、(【0122】)
利用者により余剰の水素が生成され、水素カートリッジ30に貯蔵された場合には、コンピュータ装置50を水素カートリッジ30と接続し、メモリ部35に記憶された情報をコンピュータ装置50によって読み取り、(【0123】)
利用者は、コンピュータ装置50を用いて、提供する水素量や、取引を行うに際して希望する価格などを入力し、余剰の水素を他の利用者又は事業者に対して提供(売却)することを要求し、(【0124】)
コンピュータ装置50は、インターネット100を介してホスト装置200にアクセスし、メモリ部201に記憶された各種データベースを検索することにより、利用者が希望とする条件(すなわち、取引する水素量、希望価格、或いは取引先の種類など)に応じて、取引先を選出し、(【0125】)
ホスト装置200は、選出された取引先に対して取引を行うか否かを利用者に対して確認し、利用者が承諾した場合には処理を進め、(【0126】)
ホスト装置200が選出した取引先との間で水素の取引を行うことが利用者によって承諾され、取引が決定される、(【0128】)
水素取引方法。(【0001】)
5 1甲5の記載事項及び1甲5発明
1甲5には、以下のとおりの記載がある。
【請求項1】
太陽エネルギーを取得し、かつ取得した太陽エネルギーの一部を利用して水素製造設備で水素を製造すること、
窒素製造設備で、空気から窒素を製造すること、
水素貯蔵設備で、前記水素製造設備により製造した水素を貯蔵すること、
アンモニア合成設備で、前記製造した水素及び前記製造した窒素からアンモニアを連続的に合成すること、
を含む、アンモニア製造方法。
【0009】
太陽エネルギーは非常に有力な代替エネルギーであるものの、これを社会活動の中で活用するためには、(1)太陽エネルギーのエネルギー密度が低いこと、並びに(2)太陽エネルギーの貯蔵及び移送が困難であることが、問題となる。しかし、(2)の太陽エネルギーの貯蔵及び移送に関する課題を解決することにより、砂漠等の広大な敷地を確保でき、利用できるようになることにより、エネルギー密度の低さは問題とならなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためには、太陽エネルギーを貯蔵及び移送が容易な化学エネルギーに変換することが必須である。種々の物質が考えられるが、取り扱い性、安全性、既存インフラの利用、エネルギーとしての応用性を考えるとアンモニアが最も適していると考えられる。このアンモニアの製造方法は、水素製造設備で、太陽エネルギーを取得し、かつ取得した太陽エネルギーの一部を利用して水から水素を製造すること、窒素製造設備で、空気から窒素を製造すること、水素貯蔵設備で、水素製造設備により製造した水素を貯蔵すること、アンモニア合成設備で、製造した水素及び製造した窒素からアンモニアを連続的に合成することを含む。
【0027】
〈水素製造設備100〉
水素製造設備100は、太陽エネルギーを取得し、かつ取得した太陽エネルギーの一部を利用して水素を製造する設備である。
【0058】
〈水素貯蔵設備〉
水素貯蔵設備200は、水素製造設備100で製造された水素を貯蔵し、かつ、水素を窒素製造設備300及びアンモニア合成設備400に供給する設備である。昼間に水素製造設備100により製造された水素の少なくとも一部を貯蔵し、夜間でも貯蔵した水素を窒素製造設備300及びアンモニア合成設備400に供給することで、水素貯蔵設備200は、窒素製造設備及びアンモニア合成設備400の連続運転を可能にする。
【0071】
〈窒素製造設備(窒素製造法)〉
素製造設備300は、アンモニア合成設備400の合成ガスの一部となる窒素を空気から製造し、その一部を貯蔵する機能を含めた設備である。
【0100】
〈アンモニア合成設備(アンモニア合成方法)〉
水素及び窒素からアンモニアを合成する設備である。
【0137】
図16を用いて、図15に示したアンモニアプラントにおける物質収支の一例を説明する。
【0138】
以下に示す3つのケースにおいて、物質収支を計算した。
【0139】
ケースA)水素燃焼により窒素を製造し、かつ水素燃焼により発電した電気を、窒素製造設備及びアンモニア合成設備で24時間使用する。
【0140】
ケースB)水素燃焼により窒素を製造し、かつ水素燃焼により発電した電気を、窒素製造設備及びアンモニア合成設備で夜間のみ使用する。昼間は、図5の発電ユニット190で発電して、発電ユニット190から窒素製造設備及びアンモニア合成設備に必要な電力を供給する。
【0141】
ケースC)深冷分離により窒素を製造し、かつ水素燃焼により発電した電気を、窒素製造設備及びアンモニア合成設備で夜間のみ使用する。
【0142】
物質収支を計算する計算条件は以下の通りである。
【0143】
アンモニア製造量:2,500t/d
合成ガス中の窒素量:1,860,000Nm3/d
合成ガス中の水素量:5,570,000Nm3/d
水素燃焼ガス発電効率:0.3
【0144】
図16に上記ケース及び計算条件で得た物質収支の表801を示す。表801から明らかのように、アンモニア製造量を一定とした場合、ライン201に示される必要水素流量は、ケースC、ケースA、ケースBの順で少なくなる。夜間の必要電力を全て窒素製造設備300で供給するケースBとケースCを比較すると、深冷分離より水素燃焼により窒素を製造したほうが、必要水素量が小さくなることがわかる。
【0145】
この結果は、いくつかの仮定に基づいて計算したものであり、実際のプラントでの選択は、この計算以外にも、例えば、プラントの建設コスト、メンテナンス性、外部からの電力供給の可否、敷地面積等、数多くの要因を考慮して決定される。
【0146】
ここで記載した全ての例と条件は、読み手に本発明を理解させることを意図した記載であるため、本発明の限定を伴わずに解釈されるべきである。本発明の実施例は詳細に記載されたが、発明の範囲と離れることなく、様々な変更、置換、及び代替案がなされ得ることを理解すべきである。
以上の記載によれば、1甲5には、以下の発明(以下「1甲5発明」という。)が記載されている。
太陽エネルギーを取得し、かつ取得した太陽エネルギーの一部を利用して水素を製造する水素製造設備100、(【0027】)
水素製造設備100で製造された水素を貯蔵し、かつ、水素を窒素製造設備300及びアンモニア合成設備400に供給する水素貯蔵設備200、(【0058】)
アンモニア合成設備400の合成ガスの一部となる窒素を空気から製造し、その一部を貯蔵する機能を含めた窒素製造設備300、(【0071】)
水素及び窒素からアンモニアを合成するアンモニア合成設備400、(【0100】)
を備え、
プラントの建設コスト、メンテナンス性、外部からの電力供給の可否、敷地面積等、数多くの要因を考慮して物質収支の計算を行う、(【0144】、【0145】)
アンモニア製造方法。(【請求項1】)
6 2甲3の記載事項
2甲3には、以下のとおりの記載がある。
1.5 計画・決定問題
1.5.1 資源配分の計画問題-線形計画法,問題の構造
経営問題のなかで,資金,時間,労働力などの資源の制約がある中で,ある目的を達成するために,これらの資源をいかに有効利用するかという「資源の最適な配分計画の問題」がある.そのようなとき数理的な力を借りて計画を立てる方法に「数理計画法」がある.その代表的な手法として「線形計画法」(LP:Linear Programming)がある.
(3)展開 製品が多数で制約条件が多くなると,図で表現が出来なくなり幾何学的に解けなくなる.そこでシンプレックス法等の解法手順を利用することになる(18章を参照せよ).数理計画法は,定式化した式が線形から非線形へ,変数が連続系から離散系へ,目的が一つから多数へ広がっていく.非線形計画法,整数計画法,目標計画法などである.
数理計画法は,<1>まず問題を数式的に定式化(数学的モデル化)して,<2>つぎにこれを数理的に解く手順を考案する.<1>の定式化をする場合,上で見たように「問題の構造」は,(a)目標(ここでは利益最大),(b)取り得る手段(ここでは製品A,Bの生産量),(c)制約条件/環境条件/境界条件(設備,労働力の制限)から決まるという基本的枠組みの認識が重要である.あるいは問題は(a)目的,(b)解決者の管理できる部分(取りうる手段),(c)解決者の管理できない部分(環境,労働条件)によって形成されるとも言える.今解決しようとしている問題が,ここで説明したように目標・目的,解決方法・手段,制約条件が明確になると問題は構造化された段階になったといえる.
(上記<1>、<2>などは、丸の中に数字の1、2などがある文字を表す。)
以上の記載によれば、2甲3には、資金,時間,労働力などの資源の制約がある中で、ある目的を達成するために、これらの資源をいかに有効利用するかという「資源の最適な配分計画の問題」があり、数理的な力を借りて計画を立てる方法に「数理計画法」があること、および、数理計画法には、線形計画法、非線形計画法、整数計画法、目標計画法などがあることが記載されている。
7 2甲4の記載事項
2甲4には、以下のとおりの記載がある。
【0001】
本発明は、性状の異なる複数の原料から石油製品を製造するための石油製品製造制御装置、その方法、そのプログラム、および、そのプログラムを記録した記録媒体、並びに、石油製品の製造装置に関する。
【0002】
従来、例えば原油から種々の石油製品を製造装置で製造する際に、最も利益が上がる制御方法として、線形計画法を利用する方法が知られている。この線形計画法を利用した製造装置における制御方法は、原料、最終製品、および製造装置の運転条件に基づいて、目的関数の最適値を与える運転条件を演算している(例えば、特許文献1参照)。
【0046】
そして、プラント系制御装置310は、プラント系製造装置200の運転状態を検出するとともに、所定の運転状態、すなわち利益が最大となる運転状態でプラント系製造装置200を運転させる制御、すなわち最適な生産計画を演算する装置である。
このプラント系制御装置310は、例えば図3に示すように、プラント系インターフェース部311と、プラント系操作手段312と、プラント系表示手段313と、プラント系記憶手段314と、プラント系演算手段315と、などを備えている。
【0055】
また、プラント系記憶手段314には、原油から石油製品を製造する気液平衡などの平衡式や熱量など、熱力学に関する熱力特性データや、精製装置210および石油化学装置220を構成する各装置における運転性能などの装置特性に関する装置特性データ、製造する石油製品の性状や価格などの石油製品データなども記憶されている。
さらに、プラント系記憶手段314には、プラント系制御装置310全体を動作制御するOS(Operating System)上に展開される各種プログラムなどをも記憶している。さらに、プラント系記憶手段314は、プラント系演算手段315が演算の際に処理する信号などを一時的に記憶可能、すなわちメモリとしても機能する。
【0056】
プラント系演算手段315は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備え、図示しない各種入出力ポートである、プラント系インターフェース部311が接続される入出力ポート、プラント系操作手段312が接続される入力ポート、プラント系表示手段313が接続される表示制御ポート、プラント系記憶手段314が接続される記憶ポートなどを有している。
そして、プラント系演算手段315は、各種プログラムとして、運転状態認識手段315Aと、原油性状認識手段、ナフサ性状認識手段および石油製品性状認識手段として機能する運転条件認識手段315Bと、生産計画演算手段としてのプラントモデル演算手段315Cと、などを備えている。
【0059】
プラントモデル演算手段315Cは、プラント系記憶手段314に記憶された熱力物性データおよび装置物性データに基づいて、プラント系製造装置200をモデル化すなわち精製装置210および石油化学装置220を構成する各装置を、熱力物性データおよび装置特性データに基づいて熱力学的に気液平衡で連結したモデルを構築する。
具体的には、図7に示すように表されるプラントモデルを生成する。このプラントモデルは、プラントモデルの各装置における処理前後を、装置特性に基づいて原油およびナフサの性状として表される51純成分と39擬似成分とにより、原料から石油製品までを熱力学的に気液平衡状態で熱計算される構成に構築されている。
そして、プラントモデル演算手段315Cは、プラントモデルを用いて、運転状態認識手段315Aから出力される運転状態に基づいてプラント系製造装置200の稼働状態である石油製品の製造状況を演算したり、運転条件認識手段315Bから出力される運転条件に基づいて石油製品を製造するための生産計画を演算したりする。
【0060】
演算される生産計画としては、原料の費用と、石油製品の価格および各装置の電力や燃料、スチーム費用などの用役費用との関係に基づいて、利益が最大となるプラントモデルの運転条件が演算される。
ここで、原料の費用は、運転条件認識手段315Bで取得した運転条件データにおける原料データに基づいて、原油データベース314Aの原油データおよびナフサデータベース314Bのナフサデータ、原油タンク251に貯留する原油の混合割合やチャージ量、ナフサタンク257に貯留するナフサの混合割合やチャージ量で演算される。
用役費用は、プラントモデルにおける製造工程で生成する燃料ガスの生成量および価格、電気量および価格などに基づいて演算される。
なお、燃料ガスの価格としては、図4に示すような留分にて分類される成分にて価格が設定される。すなわち、原油データベース314Aの原油データとして、留分で分類される成分の価格に関するデータも記載されている。
石油製品の費用は、製造される量および価格に基づいて演算される。この石油製品の価格についても、プラント系記憶手段314に記憶されている石油製品データに基づいて認識される。
そして、生産計画としては、石油製品の費用から原料の費用および用役費用を除いた値を目的関数として、各装置の装置特性データに基づき、目的関数が最大値となる効率よく石油製品を製造すなわち利益が最大となる各装置の運転条件である最適化運転条件を演算する。
以上の記載によれば、2甲4には、以下の技術事項が記載されている。
原油から種々の石油製品を製造装置で製造する際に、最も利益が上がる制御方法として、線形計画法を利用する方法が知られており、(【0002】)
プラント系製造装置200の運転状態を検出するとともに、所定の運転状態、すなわち利益が最大となる運転状態でプラント系製造装置200を運転させる制御、すなわち最適な生産計画を演算するプラント系制御装置310を備え(【0046】)、
プラント系制御装置310は、プラント系インターフェース部311と、プラント系操作手段312、プラント系表示手段313、プラント系記憶手段314、プラント系演算手段315などを備え、(【0046】)
プラント系記憶手段314は、熱力学に関する熱力特性データ、精製装置210および石油化学装置220を構成する各装置における運転性能などの装置特性に関する装置特性データ、製造する石油製品の性状や価格などの石油製品データなどを記憶し、(【0055】)
プラント系演算手段315は、各種プログラムとして、運転状態認識手段315A、運転条件認識手段315B、生産計画演算手段としてのプラントモデル演算手段315Cを備え、(【0056】)
プラントモデル演算手段315Cは、プラント系記憶手段314に記憶された熱力物性データおよび装置物性データに基づいて、プラント系製造装置200をモデル化してプラントモデルを生成し、(【0059】)
プラントモデルを用いて、運転状態認識手段315Aから出力される運転状態に基づいてプラント系製造装置200の稼働状態である石油製品の製造状況を演算したり、運転条件認識手段315Bから出力される運転条件に基づいて石油製品を製造するための生産計画を演算し、(【0059】)
演算される生産計画としては、原料の費用と、石油製品の価格および各装置の電力や燃料、スチーム費用などの用役費用との関係に基づいて、利益が最大となるプラントモデルの運転条件が演算される、(【0060】)
石油製品製造制御方法。
8 2甲5の記載事項
2甲5には、以下のとおりの記載がある。
【0017】
以下、本発明について、図面を用いて説明する。
<企業集合体の運用方法>
本発明に従う企業集合体の運用方法は、原料を処理し、製品を生産するための複数の装置を備える企業集合体の運用方法である。
そして、本発明は、図1に示すように、原料炭化水素油の組成分析を行い、該原料炭化水素油に含まれる炭化水素組成を取得する工程(図1(a))と、前記取得した炭化水素組成に基づいて、設定した分留温度で、ライトナフサ留分、ヘビーナフサ留分、灯油留分及び軽油留分の分留についてシミュレーションを行うことで、前記各留分の炭化水素組成及び収率を算出する工程(図1(b))と、前記算出した各留分の炭化水素組成及び収率に基づいて、ライトナフサ留分、灯油留分及び軽油留分については、エチレンクラッカーシミュレーションを行い、ヘビーナフサ留分については接触改質シミュレーションを行うことで、前記装置ごとに生産される製品の収率を算出する工程(図1(c))と、前記算出された製品の市況価格及び収率に基づいて、前記企業集合体についての経済的メリットを算出した後、前記製品の市況価格を変数として、前記経済的メリットが最大になるときの前記各留分の分留温度を算出する工程(図1(d))と、を含むことを特徴とする。
【0032】
前記分留される留分を、ライトナフサ留分、ヘビーナフサ留分、灯油留分及び軽油留分としているが、ライトナフサ留分はエチレンクラッカー原料であり、ヘビーナフサ留分は接触改質装置の原料である。灯油留分および軽油留分については、エチレンクラッカーの原料価格と、灯油及び軽油の燃料油市況との兼ね合いでエチレンクラッカー原料とするか燃料油として市販するかを考慮する必要がある。このように留分毎に原料となる装置が異なり、留分によっては燃料油としての需要があるため、上記各留分の分留についてシミュレーションを行う。
【0034】
(工程C)
本発明による企業集合体の運用方法は、前記工程Bの後、図1(c)に示すように、前記算出した各留分の炭化水素組成及び収率に基づいて、ライトナフサ留分、灯油留分及び軽油留分については、エチレンクラッカーシミュレーションを行い、ヘビーナフサ留分については接触改質シミュレーションを行うことで、前記装置ごとに生産される製品の収率を算出する工程(工程C)を含む。
【0035】
前記エチレンクラッカーシミュレーションとは、原料となるライトナフサ(燃料油の市況等によっては、灯油留分、軽油留分を含む)の炭化水素組成を元に、化合物毎に製品への転化経路を仮定することによって、製品中の炭化水素組成の推定を行う計算のことをいい、これによってエチレンクラッカー各装置から生産される製品(例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン等)の収率を算出することができる。
【0036】
前記接触改質シミュレーションとは、原料となるヘビーナフサの炭化水素組成を元に、化合物毎に製品への転化経路を仮定することによって、製品中の炭化水素組成を推定する計算のことをいい、これによって接触改質装置から生産される製品(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等)の収率を算出することができる。
【0038】
(工程D)
本発明による企業集合体の運用方法は、前記工程Cの後、図1(d)に示すように、前記算出された製品の市況価格及び収率に基づいて、前記企業集合体についての経済的メリットを算出した後、前記製品の市況価格を変数として、前記経済的メリットが最大になるときの前記各留分の分留温度を算出する工程(工程D)を含む。
【0039】
ここで、前記企業集合体の経済的メリットとは、企業集合体の種類や、戦略等によって異なるため特に限定はされないが、例えば、金銭的な利益が最も大きくなること等のことをいう。
【0040】
前記企業集合体についての経済的メリットの算出方法については、例えば、エチレンクラッカー装置から生産されるエチレンやプロピレン、接触改質装置から生産されるベンゼン、トルエンおよびキシレン等の製品の市況価格を変数xとし、前記各製品の収率を変数yとし、エチレンクラッカー装置での収益(=x×y)、接触改質装置収益(=x×y)、及び、その他の製品を燃料油等で販売したときの収益(=x×y)の3つに対して、各装置等で処理する原料の収率について、各留分の分留温度を変数に最適化を行い、その収益の総和によって、経済的メリットを算出できる。
【0041】
また、前記経済的メリットが最大になるときの前記工程Bにおける各留分の分留温度を算出する方法としては、数段階の分留温度を変化させた原料油の収率及び炭化水素組成から、先に記載したエチレンクラッカーシミュレーション及び接触改質シミュレーションから算出される製品の収率の計算を行う。このシミュレーションから得られた製品の収率と市況の製品価格をもとに、分留温度と2つの装置を総合した収益の傾向を把握することができる。最適な分留温度の算出方法としては、先に算出した分留温度とエチレンクラッカーおよび接触改質装置の2つの装置を総合した収益の傾向において、収益が最大となる分留温度を決定すればよい。これによって、前記分留温度の制御を行うことで、企業集合体全体の効率的な運用を制御することが可能となる。
【0042】
さらに、前記分留のシミュレーションによって得られた灯油留分及び軽油留分について、エチレンクラッカーで処理を行わずに燃料油として使用した場合の前記企業集合体の経済的メリットを、前記燃料油の市況価格に基づいて算出することで、前記各装置の運転条件を定めることが好ましい。製品の価格によっては、前記燃料油を製品に変えるよりも、燃料油として販売したほうが企業集合体としての利益が大きくなる場合があることから、その可能性も考慮した運用が行えるためである。
以上の記載によれば、2甲5には、以下の技術事項が記載されている。
原料を処理し、製品を生産するための複数の装置を備える企業集合体の運用方法であって、(【0017】)
原料炭化水素油の組成分析を行い、該原料炭化水素油に含まれる炭化水素組成を取得する工程と、(【0017】)
前記取得した炭化水素組成に基づいて、設定した分留温度で、ライトナフサ留分、ヘビーナフサ留分、灯油留分及び軽油留分の分留についてシミュレーションを行うことで、前記各留分の炭化水素組成及び収率を算出する工程と、(【0017】)
前記算出した各留分の炭化水素組成及び収率に基づいて、ライトナフサ留分、灯油留分及び軽油留分については、エチレンクラッカーシミュレーションを行い、ヘビーナフサ留分については接触改質シミュレーションを行うことで、前記装置ごとに生産される製品の収率を算出する工程と、(【0017】)
前記算出された製品の市況価格及び収率に基づいて、前記企業集合体についての経済的メリットを算出した後、前記製品の市況価格を変数として、前記経済的メリットが最大になるときの前記各留分の分留温度を算出する工程と、(【0017】)
を含み、
エチレンクラッカーシミュレーションとは、原料となるライトナフサ(燃料油の市況等によっては、灯油留分、軽油留分を含む)の炭化水素組成を元に、化合物毎に製品への転化経路を仮定することによって、製品中の炭化水素組成の推定を行う計算のことをいい、これによってエチレンクラッカー各装置から生産される製品(例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン等)の収率を算出することができ、(【0035】)
接触改質シミュレーションとは、原料となるヘビーナフサの炭化水素組成を元に、化合物毎に製品への転化経路を仮定することによって、製品中の炭化水素組成を推定する計算のことをいい、これによって接触改質装置から生産される製品(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等)の収率を算出することができる、(【0036】)
企業集合体の運用方法。
9 2甲6の記載事項
2甲6には、以下のとおりの記載がある。
【0001】
本発明は、無触媒法によるFAME(Fatty Acid Methyl Ester;脂肪酸メチルエステル、以下同じ)製造技術、より詳細には、油糧原料から圧抽して得られた植物原油と、該植物原油を精製して植物油脂を生産する際に副生した脂肪酸含有副生物と、を所定の比率で混合し、無触媒法によりFAMEを製造するFAME製造技術などに関連する。
【0029】
<本発明に係るFAME製造システムについて>
本発明に係るFAME製造システムは、予め生産量を設定し、油糧原料を圧抽後精製して植物油脂を生産する植物油脂生産システムに併設され、油糧原料を圧抽して得られた植物原油と、該植物原油を精製して植物油脂を生産する際に副生した脂肪酸含有副生物との混合比率を、前記設定した植物油脂の生産量に応じて変更し、該混合物を用いて無触媒法によりFAMEを製造するものを全て包含する。
【0043】
混合手段1では、圧抽工程A1で取得した植物原油、及び、精製工程A2で発生した脂肪酸含有副生物を所定の比率で混合し、遊離脂肪酸の含有量が所定の範囲内になるように調整する。混合手段1は、混合比率を調節できるものであればよく、特に限定されない。例えば、混合弁などの公知技術を用いることができる。
【0044】
植物原油と脂肪酸含有副生物との混合比率は、植物油脂、FAME、脂肪酸含有副生物を利用した有価物(例えば、ロウ・石鹸など)の価格変動などを考慮し、0:100~100:0の範囲で適宜、設定する。
【0045】
例えば、需給バランスや価格変動などに基づき、植物油脂の生産量を引き上げたい場合には、植物油脂製造に供する植物原油を増やし、FAME製造に供する植物原油を減らすとともに、植物原油に対する脂肪酸含有副生物の混合比率を高くする。これにより、植物油脂を増産できるとともに、FAMEを安定的に製造できる。
【0046】
同様に、例えば、需給バランスや価格変動に基づき、植物油脂の生産量を抑えたい場合、植物油脂製造に供する植物原油を減らし、FAME製造に供する植物原油を増やすとともに、植物原油に対する脂肪酸含有副生物の混合比率を低くする。これにより、植物油脂を減産できるとともに、FAMEを安定的に製造できる。
【0047】
その他、例えば、脂肪酸含有副生物を利用した有価物の生産量を引き上げたい場合にも、前記と同様、FAME製造において、植物原油に対する脂肪酸含有副生物の混合比率を低くすることにより、これらの有価物を増産できるとともに、FAMEを安定的に製造できる。
【0048】
例えば、植物原油から植物油脂・FAMEを製造し、脂肪酸含有副生物からロウ製品(ろうそく)・石鹸・FAMEを製造し、植物原油と脂肪酸含有副生物とを混合してFAMEを製造する場合、植物原油の量(Cp)と脂肪酸含有副生物の量(αcw)を取得した上で、植物原油のうち植物油脂生産の原料とする割合(Rcp)、植物原油のうちFAME製造の原料とする割合(Rcb)、脂肪酸含有副生物のうちロウ製造の原料とする割合(Rww)、脂肪酸含有副生物のうち石鹸製造の原料とする割合(Rws)、脂肪酸含有副生物のうち、FAME製造の原料とする割合(Rwb)を設定し、それに基づいて、植物油脂生産による製造収益(Pp)、植物原油からFAMEを製造した場合の製造収益(Pcb)、脂肪酸含有副生物からFAMEを製造した場合の製造収益(Pwb)、ロウ製造による製造収益(Pww)、石鹸製造による製造収益(Pws)を演算し、全体の製造収益(Pt)を算出する。そして、全体の収益が最も高いと予測される組合せの製造割合を取得し、それに基づき、混合比率を決定する。
【0049】
例えば、FAME製造部Bに制御部(図示せず)を設け、各部の制御を行うとともに、混合比率の値に基づいて混合手段1を制御する構成にしてもよい。その場合、上記の混合比率の取得及び混合手段の制御は、プログラムを用いて自動化し、コンピュータ制御にしてもよい。
【0050】
この演算は、例えば、「数1」に示す数式を用いて最適の製造割合を取得し、それに基づき混合比率を決定することにより、実現できる。なお、この数式において、各製造収益は、製品価格から製造・販売に要するコスト(初期投資、変動など)を除したものである。
以上の記載によれば、2甲6には、以下の技術事項が記載されている。
予め生産量を設定し、油糧原料を圧抽後精製して植物油脂を生産する植物油脂生産システムに併設され、油糧原料を圧抽して得られた植物原油と、該植物原油を精製して植物油脂を生産する際に副生した脂肪酸含有副生物との混合比率を、前記設定した植物油脂の生産量に応じて変更し、該混合物を用いて無触媒法によりFAMEを製造する技術に関して、(【0029】) 植物原油と脂肪酸含有副生物との混合比率は、植物油脂、FAME、脂肪酸含有副生物を利用した有価物の価格変動などを考慮し適宜設定でき、(【0044】)
需給バランスや価格変動などに基づき、植物油脂の生産量を引き上げたい場合には、植物油脂製造に供する植物原油を増やし、FAME製造に供する植物原油を減らし、(【0045】)
需給バランスや価格変動に基づき、植物油脂の生産量を抑えたい場合、植物油脂製造に供する植物原油を減らし、FAME製造に供する植物原油を増やし、(【0046】)
上記の混合比率の取得及び混合手段の制御は、プログラムを用いて自動化し、コンピュータ制御にしてもよい、(【0049】)
FAME製造技術。(【0001】)
10 意見書に添付された証拠について
以下、1参1~1参4、2参1、2参2、2甲7~2甲9の記載についてまとめて検討する。
(1)1参1に記載された技術事項
1参1には、その特許請求の範囲の記載などからみて、プラント運用を最適化するに際して、不確定性を有する負荷予測値、機器入出力特性値及び燃料価格予測値と、これら各値の確率または確率分布とを用いて複数のシナリオを作成し、前記最適化手法による状態変数の評価を、複数のシナリオに対して実行することに関する技術事項が記載されている。
(2)1参2に記載された技術事項
1参2には、その段落【0002】、【0111】の記載などからみて、
水を電気分解することにより水素を生成する水素生成装置において、水素の貯蔵量Vが予め定められた閾値Th1を下回る場合、電解装置1000の稼働計画を更新し、電解装置1000の稼働時間を予め定められた一定時間だけ増加させたり、電気料金の低い時間帯を選択して稼働時間を増加させたりすることで、更新した稼働計画による水素の貯蔵量Vの推移を算出する技術事項が記載されている。
(3)1参3に記載された技術事項
1参3には、その段落【0002】、【0003】、【0006】の記載などからみて、
「太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱等、自然の力で定常的(もしくは反復的)に補充されるエネルギー資源(再生可能エネルギー)の利用が注目されている。」こと、及び、「このような再生可能エネルギーを利用したものとして、例えば、焼却炉においてゴミを燃焼させた際に発生する熱を用いるものがある(例えば、特許文献1)。特許文献1に係る技術は、焼却炉において排出される熱を活用して温水を生産する技術」、「焼却炉においてゴミを焼却する際に発生する熱を利用して電力を効率的に発電することができる発電システム」に関する技術事項が記載されている。
(4)1参4に記載された技術事項
1参4には、その段落【0009】、【0020】の記載などからみて、「発電電力が不確定な再生可能エネルギーを利用した発電設備を電力系統に連系した際に、発電電力の不確定性を考慮しつつ、再生可能エネルギーを利用した発電設備以外の発電設備の運用コストを考慮した発電計画を具体的に作成」することを目的とした発明において、「再生可能エネルギー利用発電設備120としては、太陽光や風力等の自然エネルギーを利用するものに限らず、再生可能な生物資源や廃棄物の燃焼エネルギー等を利用して発電する発電設備も含まれる」技術事項が記載されている。
(5)2参1に記載された技術事項
2参1には、その177、178、180、181頁の記載などからみて、プロセスの中で「液体」の流量を制御することで、圧力制御を行うことや、タンクの液面を制御することで系内の液体流量を制御することに関する技術が記載されている。
(6)2参2に記載された技術事項
2参2には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。
太陽光や風力等の再生可能エネルギーにより発電した電力を負荷に供給し、余剰電力を用いて生成した水素を水素貯蔵部に貯蔵する水素電力貯蔵システムにおいて、([0002])
水素製造部104は、発電部102から供給された電力を用いて、水の電気分解により水素を製造し、この製造した水素を水素貯蔵部106に蓄え、([0013])
供給部108は、水素貯蔵部106から、例えば燃料電池自動車(FCV:Full Cell Vechill )に水素を供給し、([0015])
素発電部110は、例えば燃料電池(FC:Fuel Cell)であり、水素貯蔵部106に蓄えられた水素を用いて発電した電力を負荷2に供給し、すなわち、この水素発電部110は、動作制御装置100の制御に従い、酸素と、水素配管6から供給される水素とを用いて電気を発電し、([0016])
水素量取得部114は、供給部108が特定期間に供給する第1水素量を取得し、([0019])
取得部120は、特定期間に供給部108が供給する第1水素量H1nと、特定期間nに水素製造部104が製造する水素量と水素発電部110が使用する水素量との差分である第2水素量H2nとを取得し、([0025])
第2水素量H2nは、不足電力が生じる特定期間nでは、正の値をとり、余剰電力が生じる特定期間nでは、負の値をとり、すなわち、第2水素量H2nは、特定期間nにおいて増減し、([0039])
また、第1水素量H1nは、正の値であり、第2水素量H2nは、上述の様に、正、負いずれの値もとり得、すなわち、水素発電部110が水素を用いて発電する場合には正の値を示し、水素製造部104が水素を生成する場合には負の値を示し、このように、第1水素量H1nと、第2水素量H2nとの加算値に基づき、水素貯蔵残量取得値δnが算出され、([0042])
また、水素貯蔵残量取得値δnが0以下になる場合、且つ(δn-1-H1n)が負の場合、FC制御量算出処理部154は、水素発電部110の発電を停止させ、換言すると、水素発電部110の発電を停止させることで、δn-1の水素量を供給部108から供給可能にし、すなわち、水素貯蔵残量取得値δn-1が第1水素量H1nより少ない場合に、FC制御量算出処理部154は、水素発電部110の発電を停止させ、供給部108による水素貯蔵残量取得値δn-1で示す水素量の供給を可能にし、([0044])
水素発電部110と、供給部108との間に優先順を設定可能であり、制御部116は、水素貯蔵部106に貯蔵される水素量が所定値以下になる場合に、優先順に基づき水素発電部110及び供給部108の制御を行うことで第1実施形態に係る動作制御装置100と相違する変形例では、([0087])
制御部116は、水素発電部110と、供給部108との間の優先順を操作者の操作情報に従い設定し、制御部116は、特定期間nにおいて(3)式で示す水素貯蔵残量取得値δnがしきい値th以下になる場合、水素発電部110、及び供給部108の中の優先順の低い方の動作を制限し、ここでのしきい値thは、例えば水素貯蔵部106に貯蔵可能である水素量の10%であり、([0088])
より詳細には、制御部116は、水素発電部110の優先順が高い場合、供給部108からの水素供給に制限をかけ、一方で、制御部116は、供給部108の優先順が高い場合、水素発電部110の発電に制限をかけ、([0089])
制御部116が、水素貯蔵部106に貯蔵される水素量が特定期間に所定値th以下になる場合に、優先順に基づき供給部108、及水素発電部110の制御を行うこととすることにより、水素貯蔵部106に貯蔵される水素量が所定値以下になった場合でも、状況に応じて供給部108、及水素発電部110の内の一方を優先的に使用可能である、([0090])
水素電力貯蔵システム。
[図:0001407797000005.jpg]
(7)2甲7に記載された技術事項
2甲7には、その17、18頁の記載などからみて、「水素の供給について、液体水素に加え、有機ハイドライド法によるメチルシクロヘキサン(MCH)、更にはアンモニアやメタンといったエネルギーキャリアの活用可能性があり、これらの水素エネルギーキャリアが果たす役割・機能は様々であって、液化水素やMCHは純粋に水素を運ぶための媒体である一方、アンモニアは水素キャリアであると同時に直接利用が可能である」という技術事項が記載されている。
(8)2甲8に記載された技術事項
2甲8には、その165頁の記載などからみて、水素の輸送(エネルギーキャリア)として、液体水素、有機ハイドライド(メチルシクロヘキサン)、アンモニア等が利用される研究開発が進んでいるという技術事項が記載されている。
(9)2甲9に記載された技術事項
2甲9には、【0002】~【0004】の記載などからみて、水素は、その貯蔵・輸送技術が、水素エネルギー社会の実現に必要不可欠であり、密度が高く、安全で大量貯蔵・輸送に優れた水素貯蔵法として、有機ハイドライド法が注目を浴びていて、太陽光や風力など再生可能エネルギーの不安定な発電出力に対し、当該発電によって得られる電力を用いて水電解装置にて水素を発生させた後、水素付加反応装置にて有機ハイドライドを生成させるという技術事項が知られていたことが記載されている。
なお、2甲7-2乃至2甲7-5は、申立人2が令和5年8月29日提出した意見書をみると、2甲7について平成29年12月26日に公知であったことを示す証拠であると認めることができるから、これらに記載された技術事項については省略する。
第6 取消理由(決定の予告)の概要
訂正前の請求項1-14に係る特許に対して、当審が令和5年5月17日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(理由1:主たる引用文献を「1甲2」として)
請求項1-14に係る発明は、1甲2に記載された発明に、1甲3、2甲3に記載された技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(理由2:主たる引用文献を「1甲3」として)
請求項1-14に係る発明は、1甲3に記載された発明に、1甲2、2甲3に記載された技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項1-14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
第7 当審の判断
(1)訂正後の請求項1に係る発明
上記訂正請求により訂正された訂正後の「本件発明1」は、上記第3【請求項1】において示したとおりのものである。
ア 取消理由通知に記載した取消理由(理由1)について
(ア)1甲2発明
1甲2には、上記「第4 2」において示したとおりの「1甲2発明」が記載されている。
(イ)対比・判断
本件発明1と1甲2発明とを対比する。
(a)1甲2発明の自然エネルギーは、1甲2の【0002】に記載されるとおり「太陽光発電、風力発電など自然エネルギー」であるところ、本件発明1の「変動性再生可能エネルギー」は、本件の発明の詳細な説明の段落【0034】によれば「変動性再生可能エネルギーとは、自然条件等によって出力が大幅に変動するエネルギーである。変動性再生可能エネルギーは、例えば「自然再エネ」あるいは「再エネ」等とも呼ばれる。変動性再生可能エネルギーの例は、太陽光エネルギー、風力エネルギー、潮汐力エネルギー等である。変動性再生可能エネルギーは、発電するために用いられる。」とあるから、いずれも「太陽光エネルギー」や「風力エネルギー」を由来としている点で共通している。
そして、1甲2発明では「自然エネルギー電力網2は、自然エネルギー由来の発電設備のみが発電所として接続された電力網で」あり、「水素製造装置102は、自然エネルギー電力網2から供給された電力を用いて、水の電気分解により水素を製造」するから、上記の「水素製造装置102」は、「自然エネルギー由来の発電設備のみが発電所として接続された電力網」「から供給された電力を用いて、水の電気分解により水素を製造」する装置であるといえる。
したがって、1甲2発明の「水素製造装置102」は、本件発明1の「変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を使用して第1製造物を製造する第1製造装置」に相当する。
(b)1甲2発明の「気体水素タンク106」は、「水素製造装置102により製造された気体の水素を貯蔵するもの」である。
ここで、「水素製造装置102により製造された気体の水素」は、上記(a)で検討したとおり、「変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を使用して第1製造物を製造する第1製造装置」により製造された第1製造物であるから、当該第1製造物(水素)を貯蔵する1甲2発明の「気体水素タンク106」は、本件発明1の「変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を供給する電力供給装置から供給される電力を少なくとも使用して第1製造物を製造する前記第1製造装置から、製造された第1製造物を、受け取って貯蔵する貯蔵装置」に相当する。
(c)1甲2発明では、貯蔵された水素を原料として、「高温水素水」、「低温水素水」「液体水素」を製造しているが、本件発明1のように「第2製造物としてアンモニア、メタノール、有機ハイドライド、メタン、一酸化炭素、軽油、過酸化水素の何れかから選択される化学物質を製造」していない。
(d)1甲2発明の「水素発電装置118」は、「水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、気体水素タンク106から供給される水素を用いて電気を発電」しているから、本件発明1の「前記第1製造物を供給する対象の設備である発電装置」に相当する。
また、「気体水素流通網6は、水素を気体のまま輸送して、水素需要に対して供給する流通網であり」、「気体水素排出装置108は、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、気体水素タンク106から供給された水素を、気体水素流通網6に供給し」ている。
上記気体水素は、貯蔵装置から供給される前記第1製造物であり、気体水素流通網を利用して気体水素を販売しているといえるから、1甲2発明の「気体水素排出装置108」は、「前記第1製造物を供給する対象の設備である販売用手段」に相当する。
以上のことから、1甲2発明は、本件発明1の「前記第1製造物を供給する対象の設備である発電装置と販売用手段との少なくともいずれか一方である供給対象設備」 を備えているといえる。
(e)1甲2発明の「水素エネルギー制御装置100」は、「各装置に対応する計画値に従い、水素製造装置102と、気体水素タンク106と、気体水素排出装置108と、液化装置110と、液体水素タンク112と、液体水素排出装置114と、気化装置116と、水素発電装置118とを制御」している。
先に検討したとおり、1甲2発明の「気体水素タンク106」、「水素発電装置118」、「気体水素排出装置108」は、本件発明1の「貯蔵装置」、「発電装置」、「販売用手段」に相当している。
上記1甲2発明の「各装置に対応する計画値に従い、水素製造装置102と、気体水素タンク106と、気体水素排出装置108と、液化装置110と、液体水素タンク112と、液体水素排出装置114と、気化装置116と、水素発電装置118とを制御」は、1甲2発明の全体構成から見て、気体水素タンク106から、「気体水素排出装置108」、「液化装置110」、「水素発電装置118」に供給する水素の供給量を制御していることは明らかであるから、1甲2発明の「水素エネルギー制御装置100」は、本件発明1の「前記貯蔵装置から、前記第2製造装置と、前記発電装置と、前記販売用手段とのそれぞれへの、制御対象とする対象タームにおける前記第1製造物の供給量を制御するプラント制御装置」の「前記貯蔵装置から、前記発電装置と、前記販売用手段とのそれぞれへの、前記第1製造物の供給量を制御するプラント制御装置」に対応する構成を備えているといえる。
もっとも、1甲2発明の「水素エネルギー制御装置100」は、1甲2発明が「第2製造装置」を備えていないことに関連して、「第2製造装置」への供給量を制御しておらず、また、「制御対象とする対象ターム」における供給量の制御を行っているか明らかでない点で相違する。
(f)1甲2発明の「水素エネルギーシステム」は、「複数のエネルギー網」を備えて、これらエネルギー網からエネルギーを授受し、授受したエネルギーを利用して「水素製造装置102」により水素を製造し、製造された水素を、「気体水素排出装置108」、「気体水素排出装置108」から排出すると共に、「水素発電装置118」を利用して発電などを行い、電力供給などを行うシステムであり、このような「システム」は、「プラント」と呼べるから、1甲2発明の「水素エネルギーシステムの制御方法」は、本件発明1の「プラント制御方法」に相当する。
(g)先に検討したとおり、1甲2発明は、本件発明1の「第2製造装置」に相当する構成を備えていないから、本件発明1の、
「前記プラント制御装置は、前記第1製造物を前記第2製造装置に優先的に供給し、余剰の前記第1製造物を前記発電装置と前記販売用手段との少なくともいずれか一方に供給するケースを実施するものであり」、
「前記第2製造装置に前記第1製造物が供給される場合に、前記電力供給装置から供給される電力供給量の実績値または予測値に基づいて、前記対象タームにおける前記第1製造装置における前記第1製造物の製造量を予測し、その結果として前記貯蔵装置内の前記第1製造物の貯蔵量を予測し」、
「前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量の基準レンジの下限値に基づいて、前記第2製造装置の稼働を停止させる制御をし」、
「演算部は、前記対象タームにおける前記第1製造物の販売単価である第1価格、前記第2製造物の販売単価である第2価格、および前記発電装置で発電される電力の販売単価である第3価格のうちの少なくともいずれか一つを取得し」、
「前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記第2製造装置への前記第1製造物の供給量である第2供給量を決定し」、
「前記プラントが前記販売用手段を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記販売用手段への前記第1製造物の供給量である第1供給量を決定し」、
「前記プラントが前記発電装置を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記発電装置への前記第1製造物の供給量である第3供給量を決定し」、
「決定された前記第2供給量で前記第1製造物が前記第2製造装置に供給され、前記プラントが前記販売用手段を含む場合には決定された前記第1供給量で前記第1製造物が前記販売用手段に供給され、前記プラントが前記発電装置を含む場合には決定された前記第3供給量で前記第1製造物が前記発電装置に供給される、ように制御信号出力部が制御信号を出力する」、
との構成を備えていない。
(h)1甲2発明は、本件発明1の「基準レンジ」に相当する構成を備えていない。したがって、1甲2発明は、本件発明1の「前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量が、前記基準レンジの上限値以上である場合に、前記第1製造装置で製造される前記第1製造物を前記貯蔵装置に送ることなく、前記発電装置または前記販売用手段に送るように制御し」の構成を備えていない。
(i)1甲2発明では「水素発電装置118は、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、気体水素タンク106から供給される水素を用いて電気を発電」するものであるから、1甲2発明の「水素発電装置118」は、本件発明1の「前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を使用して発電するものであ」る「発電装置」に相当する。
(j)1甲2発明の「気体水素排出装置108は、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、気体水素タンク106から供給された水素を、気体水素流通網6に供給」している。上記供給は、「販売」と称してもよいことは明らかであるから、1甲2発明の「気体水素排出装置108」は、「前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を販売するために外部に供給する手段」ということができ、本件発明1の「販売用手段」に相当する。
(k)まとめ(一致点・相違点)
以上の対比によれば、本件発明1と1甲2発明とは、以下の一致点で一致し相違点で相違する。
(一致点)
変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を使用して第1製造物を製造する第1製造装置と、
変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を供給する電力供給装置から供給される電力を少なくとも使用して第1製造物を製造する前記第1製造装置から、製造された第1製造物を、受け取って貯蔵する貯蔵装置と、
前記第1製造物を供給する対象の設備である発電装置と販売用手段との少なくともいずれか一方である供給対象設備と、
前記貯蔵装置から、前記発電装置と、前記販売用手段とのそれぞれへの、前記第1製造物の供給量を制御するプラント制御装置と、
を含んで構成されるプラント、を制御するためのプラント制御方法であって、
前記発電装置は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を使用して発電するものであり、
前記販売用手段は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を販売するために外部に供給する手段である、
プラント制御方法。
(相違点)
相違点1
本件発明1は「前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を原料として第2製造物としてアンモニア、メタノール、有機ハイドライド、メタン、一酸化炭素、軽油、過酸化水素の何れかから選択される化学物質を製造する第2製造装置」を備えているのに対し、1甲2発明は、当該構成を備えていない点
相違点2
相違点1に関連して、「プラント制御装置」が、本件発明1では「前記貯蔵装置から、前記第2製造装置と、前記発電装置と、前記販売用手段とのそれぞれへの、制御対象とする対象タームにおける前記第1製造物の供給量を制御するプラント制御装置」であるのに対し、1甲2発明は、「前記第2製造装置」を有していないので「前記第2製造装置」を制御対象とせず、また、「制御対象とする対象ターム」なる技術事項を有していない点
相違点3
相違点1に関連して、1甲2発明は、本件発明1の
「前記プラント制御装置は、前記第1製造物を前記第2製造装置に優先的に供給し、余剰の前記第1製造物を前記発電装置と前記販売用手段との少なくともいずれか一方に供給するケースを実施するものであり」、
「前記第2製造装置に前記第1製造物が供給される場合に、前記電力供給装置から供給される電力供給量の実績値または予測値に基づいて、前記対象タームにおける前記第1製造装置における前記第1製造物の製造量を予測し、その結果として前記貯蔵装置内の前記第1製造物の貯蔵量を予測し」、
「前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量の基準レンジの下限値に基づいて、前記第2製造装置の稼働を停止させる制御をし」、
「演算部は、前記対象タームにおける前記第1製造物の販売単価である第1価格、前記第2製造物の販売単価である第2価格、および前記発電装置で発電される電力の販売単価である第3価格のうちの少なくともいずれか一つを取得し」、
「前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記第2製造装置への前記第1製造物の供給量である第2供給量を決定し」、
「前記プラントが前記販売用手段を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記販売用手段への前記第1製造物の供給量である第1供給量を決定し」、
「前記プラントが前記発電装置を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記発電装置への前記第1製造物の供給量である第3供給量を決定し」、
「決定された前記第2供給量で前記第1製造物が前記第2製造装置に供給され、前記プラントが前記販売用手段を含む場合には決定された前記第1供給量で前記第1製造物が前記販売用手段に供給され、前記プラントが前記発電装置を含む場合には決定された前記第3供給量で前記第1製造物が前記発電装置に供給される、ように制御信号出力部が制御信号を出力する」、
との構成を備えていない点
相違点4
1甲2発明は、本件発明1の「前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量が、前記基準レンジの上限値以上である場合に、前記第1製造装置で製造される前記第1製造物を前記貯蔵装置に送ることなく、前記発電装置または前記販売用手段に送るように制御し」の構成を備えていない点
(l)事案に鑑み、相違点1、3について判断する。
1甲2発明では、外部に供給する(気体)水素以外の物質として、「液体水素」、「高温温水」、「低温温水」を有している。
しかし、これらの物質は、例えば、「液体水素」は、気体水素と状態のみが異なる物質であり、また、「高温温水」、「低温温水」は、1甲2の発明の詳細な説明の「また、新たなエネルギーとして水素エネルギーが注目されつつある。水素製造装置により水素が生成され、水素貯蔵装置に貯蔵される。この貯蔵装置に貯蔵された水素を、水素発電装置により再び電力に変換することが可能である。このため、これらの装置群を電力網に接続することで、電力網から電力を供給されることも、電力網に電力を供給することも可能である。水素発電装置の例として、燃料電池がある。燃料電池の種類によって生成される熱の温度域が異なっている。この特性を生かすために、燃料電池が熱を供給する先も、高温温水網、低温温水網などが混在していくと予想されている。」(【0003】)、「水素発電装置118は、気体水素タンク106から供給される水素を用いて、電力と、熱とを生成する。ここでの熱は、例えば温水として供給される。水素発電装置118は、高温タイプの燃料電池118aと、低温タイプの燃料電池118bとを、備えて構成されている。すなわち、水素発電装置118は、水素エネルギー制御装置100と接続され、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、酸素と、気体水素タンク106から供給される水素とを用いて電気を発電すると共に、熱を生成する。酸素は空気中の酸素を利用してもよいし、水素製造装置102が水素製造に伴い出力する酸素を酸素タンクに蓄積したものを使用してもよい。また、高温タイプの燃料電池118aは、例えば固体酸化物形型燃料電池であり、高温タイプの燃料電池118aにより製造される例えば750~1000℃の高温温水は、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、高温温水網10に供給される。一方で、低温タイプの燃料電池118bは、例えば固体高分子型燃料電池であり、低温タイプの燃料電池118bにより製造される例えば40~90℃の低温温水は、水素エネルギー制御装置100の制御に従い、低温温水網12に供給される。なお、これらの温度域は、他の温度域を用いて定義してもよい。また、中温や超高音などの温度域があってもよい。」(【0027】)などの記載からみて、水素発電装置の燃料電池が発電する際の熱を有効活用しようとするものであることから、1甲2発明は、自然エネルギーを用いて電力を発電し、その電力から製造した水素を、更に、他の物質に変えて供給しようとする技術思想は有していない。
この点、
1甲1には、風力、太陽光、地熱、潮力、波力等の再生可能エネルギーを使用して発電し、発電された電力からガスエネルギー(例えば、電力により水を電気分解して水素)を生成し、ガスエネルギーを輸送により適した形態に変換(トルエンへの溶解(有機ハイドライド法)、金属への吸蔵)を行うこと、
1甲3には、焼却炉1に接続されたボイラ2に対し、発電機13を連結した蒸気タービン12が接続され、該発電機13に対し水電解装置14が、そして、該水電解装置14に対しアンモニア製造装置15が接続され、蒸気タービン12がボイラ2からの蒸気を受けて回転駆動され、該蒸気タービン12に連結されている発電機13で発電し、水電解装置14で外部から受ける水を発電機13からの電力を用いて電気分解して水素そして酸素を発生させ、外部から受ける空気中の窒素とこの水電解装置13からの水素とを用いてアンモニア製造装置15でアンモニアを製造し、製造されたアンモニアは、アンモニア需要先へ供給されること、
1甲5には、太陽エネルギーを取得し、かつ取得した太陽エネルギーの一部を利用して水素製造設備で水素を製造し、窒素製造設備で、空気から窒素を製造し、水素貯蔵設備で、前記水素製造設備により製造した水素を貯蔵し、アンモニア合成設備で、前記製造した水素及び前記製造した窒素からアンモニアを連続的に合成すること、
2甲7には、水素の供給について、液体水素に加え、有機ハイドライド法によるメチルシクロヘキサン(MCH)、更にはアンモニアやメタンといったエネルギーキャリアの活用可能性があり、これらの水素エネルギーキャリアが果たす役割・機能は様々であって、液化水素やMCHは純粋に水素を運ぶための媒体である一方、アンモニアは水素キャリアであると同時に直接利用が可能であること、
2甲8には、水素の輸送(エネルギーキャリア)として、液体水素、有機ハイドライド(メチルシクロヘキサン)、アンモニア等が利用される研究開発が進んでいること、
2甲9には、太陽光や風力など再生可能エネルギーの不安定な発電出力に対し、当該発電によって得られる電力を用いて水電解装置にて水素を発生させた後、水素付加反応装置にて有機ハイドライドを生成させること、
等がそれぞれ記載されている。
これらの1甲1~2甲9には、水素を運ぶキャリアとして、水素に対して何らかの処理を行い、水素と異なる物質を製造し、当該製造された物質を利用することは記載されている。
しかし、上記1甲2発明は、そもそも、水素から他の物質を製造して水素のキャリアとすることまでは想定していないのであるから、水素を気体で供給する構成を備えた1甲2発明に対し、更に、水素から他の物質を製造し、当該製造された物質を供給する構成を付加する本件発明1は、容易に発明をすることができたとはいえず、仮に、上記1甲1~2甲8の技術が知られていたことで、1甲2発明に、水素から他の物質を製造する装置(第2製造装置)を付加し、当該製造された物質を外部に供給する構成を単に付加したとしても、さらに、相違点3の構成にあるように、「第1製造物を前記第2製造装置に優先的に供給し、余剰の前記第1製造物を前記発電装置と前記販売用手段との少なくともいずれか一方に供給する」ように第2製造装置を、1甲2発明に付加することは容易に為し得たことであるということはできない。
したがって、本件発明1は、1甲2に記載された発明及び他の証拠に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 取消理由通知に記載した取消理由(理由2)について
(ア)1甲3発明
1甲3には、上記「第5 3」において示したとおりの「1甲3発明」が記載されている。
(イ)対比・判断
本件発明1と1甲3発明とを対比する。
(a)1甲3発明の「水電解装置14」は、「発電機13からの電力を用いて電気分解して水素(そして酸素)を発生させ」ているから、「発電した電力を使用して第1製造物(水素)を製造する第1製造装置」である点で、本件発明1の「第1製造装置」に相当する。
もっとも、本件発明1の「第1製造装置」は、「変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を使用して」いるのに対し、1甲3発明は「焼却炉1に接続されたボイラ2」「からの蒸気を受けて回転駆動され、該蒸気タービン12に連結されている発電機13で発電」した電力を使用している点で相違する。
(b)1甲3発明は「水電解装置14で発生した水素が、アンモニア製造装置15のみならず、水素需要先と水素貯蔵装置の少なくとも一方に送られて、水素需要先で利用される形態、あるいは、水素貯蔵装置でエネルギー源として貯蔵される形態の少なくとも一方の形態で利用され」ている。
上記「水電解装置14で発生した水素」は、上記(a)で検討したとおり、本件発明1の「第1製造物」に対応しているから、1甲3発明の「水素貯蔵装置」は、本件発明1の「第1製造物を、受け取って貯蔵する貯蔵装置」に対応する。
したがって、1甲3発明は、本件発明1の「発電した電力供給装置から供給される電力を少なくとも使用して第1製造物を製造する前記第1製造装置から、製造された第1製造物を、受け取って貯蔵する貯蔵装置」を備えているといえる。
もっとも、上記(a)で検討したように、「電力供給装置」が、本件発明1では、「変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を供給する電力供給装置」であるのに対し、1甲3発明では、「変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を供給する電力供給装置」ではない点で相違する。
(c)1甲3発明では「蒸気タービン12がボイラ2からの蒸気を受けて回転駆動され、該蒸気タービン12に連結されている発電機13で発電し、水電解装置14で外部から受ける水を発電機13からの電力を用いて電気分解して水素そして酸素を発生させ、外部から受ける空気中の窒素とこの水電解装置13からの水素とを用いてアンモニア製造装置15でアンモニアを製造し」ているから、本件発明1の「前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を原料として第2製造物としてアンモニア、メタノール、有機ハイドライド、メタン、一酸化炭素、軽油、過酸化水素の何れかから選択される化学物質を製造する第2製造装置」と「前記第1製造物を原料として第2製造物としてアンモニア、メタノール、有機ハイドライド、メタン、一酸化炭素、軽油、過酸化水素の何れかから選択される化学物質を製造する第2製造装置」である点で一致する。
もっとも、本件発明1では「前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を使用して」いるのに対し、1甲3発明では第2製造装置に供給される第1製造物は「前記貯蔵装置から供給され」ていない点で相違する。
(d)1甲3発明では「発電機13で発電した電力が、水電解装置14のみならず、電力需要先と電力貯蔵装置の少なくとも一方に送られて」いるから、「発電装置の供給対象設備」を備えている。
また、1甲3発明では「水電解装置14で発生した水素が、アンモニア製造装置15のみならず、水素需要先と水素貯蔵装置の少なくとも一方に送られて」いるから、「販売用手段の供給対象設備」を備えている。
してみると、1甲3発明は、本件発明1の「前記第1製造物を供給する対象の設備である発電装置と販売用手段との少なくともいずれか一方である供給対象設備」を備えているといえる。
(e)1甲3発明は「第1製造物を、受け取って貯蔵する貯蔵装置」から
「発電機」、「アンモニア製造装置」に第1製造物を供給する構成を備えていない。
したがって、1甲3発明は「前記貯蔵装置から、前記第2製造装置と、前記発電装置と、前記販売用手段とのそれぞれへの、制御対象とする対象タームにおける前記第1製造物の供給量を制御するプラント制御装置」を備えていない。
(f)1甲3発明の「エネルギーの貯蔵供給装置」を「プラント」と称することは普通のことであり、また、1甲3発明の「装置」では、当該装置が備える要素を用いて、当該装置を制御する方法を実現しているから、1甲3発明は「プラント制御方法」でもあるといえることは明らかである。
(g)1甲3発明は、「発電機13で発電する電力量、水電解装置14で発生させる水素量、アンモニア製造装置15で製造するアンモニア量を制御するとともに、電力、水素及びアンモニアをそれぞれの需要先と貯蔵装置に供給する供給量を制御するためのエネルギー製造供給制御装置17を設け、該エネルギー製造供給制御装置17は、電力、水素及びアンモニアの各需要先での需要及び各貯蔵装置での貯蔵の現状と将来予想や、電力、水素及びアンモニアの販売価格等に基づき、それぞれの需要及び貯蔵の状況を適切な状況とするように、上記発電機13、水電解装置14そしてアンモニア製造装置15へ指令信号を送り、これらを制御」している。
上記1甲3発明の構成は、発電した電力、発生させた水素、製造したアンモニアを需要先と貯蔵装置に供給するに際して、貯蔵量や供給先の需要・価格などを考慮して適切に配分を行うという一般的な技術が特定されているのみであるから、本件発明1の
「前記プラント制御装置は、前記第1製造物を前記第2製造装置に優先的に供給し、余剰の前記第1製造物を前記発電装置と前記販売用手段との少なくともいずれか一方に供給するケースを実施するものであり」、
「前記第2製造装置に前記第1製造物が供給される場合に、前記電力供給装置から供給される電力供給量の実績値または予測値に基づいて、前記対象タームにおける前記第1製造装置における前記第1製造物の製造量を予測し、その結果として前記貯蔵装置内の前記第1製造物の貯蔵量を予測し」、
「前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量の基準レンジの下限値に基づいて、前記第2製造装置の稼働を停止させる制御をし」、
「前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量が、前記基準レンジの上限値以上である場合に、前記第1製造装置で製造される前記第1製造物を前記貯蔵装置に送ることなく、前記発電装置または前記販売用手段に送るように制御し」、
「演算部は、前記対象タームにおける前記第1製造物の販売単価である第1価格、前記第2製造物の販売単価である第2価格、および前記発電装置で発電される電力の販売単価である第3価格のうちの少なくともいずれか一つを取得し」、
「前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記第2製造装置への前記第1製造物の供給量である第2供給量を決定し」、
「前記プラントが前記販売用手段を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記販売用手段への前記第1製造物の供給量である第1供給量を決定し」、
「前記プラントが前記発電装置を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記発電装置への前記第1製造物の供給量である第3供給量を決定し」、
「決定された前記第2供給量で前記第1製造物が前記第2製造装置に供給され、前記プラントが前記販売用手段を含む場合には決定された前記第1供給量で前記第1製造物が前記販売用手段に供給され、前記プラントが前記発電装置を含む場合には決定された前記第3供給量で前記第1製造物が前記発電装置に供給される、ように制御信号出力部が制御信号を出力する」、
という具体的な制御については特定されていない。
(h)1甲3発明は、上記(e)にて検討したように、「第1製造物を、受け取って貯蔵する貯蔵装置」から「発電機」に第1製造物を供給する構成を備えていない。
したがって、1甲3発明は「前記発電装置は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を使用して発電するものであり」の構成を備えていない。
(i)1甲3発明は「水電解装置14で発生した水素が、アンモニア製造装置15のみならず、水素需要先と水素貯蔵装置の少なくとも一方に送られて、水素需要先で利用される形態、あるいは、水素貯蔵装置でエネルギー源として貯蔵される形態の少なくとも一方の形態で利用され」ている。
上記特定事項では、「水素貯蔵装置でエネルギー源として貯蔵される形態」で利用された水素は、貯蔵された後、どのように利用されるか格別特定していないが、上記水素貯蔵装置は、「水素需要先」と同じように供給先として記載されているから、少なくとも、貯蔵された水素は、水素需要先(すなわち販売先)に供給されることは当業者であれば自明である。
したがって、1甲3発明は、「前記販売用手段は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を販売するために外部に供給する手段であり」の構成を備えているといえる。
(j)まとめ(一致点・相違点)
以上の対比によれば、本件発明1と1甲3発明とは、以下の一致点で一致し相違点で相違する。
(一致点)
発電した電力を使用して第1製造物を製造する第1製造装置と、
発電した電力を供給する電力供給装置から供給される電力を少なくとも使用して第1製造物を製造する前記第1製造装置から、製造された第1製造物を、受け取って貯蔵する貯蔵装置と、
前記第1製造物を原料として第2製造物としてアンモニア、メタノール、有機ハイドライド、メタン、一酸化炭素、軽油、過酸化水素の何れかから選択される化学物質を製造する第2製造装置と、
前記第1製造物を供給する対象の設備である発電装置と販売用手段との少なくともいずれか一方である供給対象設備と、
を含んで構成されるプラント、を制御するためのプラント制御方法であって、
前記販売用手段は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を販売するために外部に供給する手段である、
プラント制御方法。
(相違点)
相違点1
「発電した電力」が、本件発明1では「変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力を使用して発電した電力」であるのに対し、1甲3発明は「焼却炉1に接続されたボイラ2」「からの蒸気を受けて回転駆動され、該蒸気タービン12に連結されている発電機13で発電した電力」である点
相違点2
第2製造装置に供給される第1製造物が、本件発明1では「前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物」であるのに対し、1甲3発明では「前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物」ではない点
相違点3
1甲3発明は「前記貯蔵装置から、前記第2製造装置と、前記発電装置と、前記販売用手段とのそれぞれへの、制御対象とする対象タームにおける前記第1製造物の供給量を制御するプラント制御装置」を備えていない点
相違点4
1甲3発明は、本件発明1が備える、
「前記プラント制御装置は、前記第1製造物を前記第2製造装置に優先的に供給し、余剰の前記第1製造物を前記発電装置と前記販売用手段との少なくともいずれか一方に供給するケースを実施するものであり」、
「前記第2製造装置に前記第1製造物が供給される場合に、前記電力供給装置から供給される電力供給量の実績値または予測値に基づいて、前記対象タームにおける前記第1製造装置における前記第1製造物の製造量を予測し、その結果として前記貯蔵装置内の前記第1製造物の貯蔵量を予測し」、
「前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量の基準レンジの下限値に基づいて、前記第2製造装置の稼働を停止させる制御をし」、
「前記貯蔵装置における第1製造物の貯蔵量が、前記基準レンジの上限値以上である場合に、前記第1製造装置で製造される前記第1製造物を前記貯蔵装置に送ることなく、前記発電装置または前記販売用手段に送るように制御し」、
「演算部は、前記対象タームにおける前記第1製造物の販売単価である第1価格、前記第2製造物の販売単価である第2価格、および前記発電装置で発電される電力の販売単価である第3価格のうちの少なくともいずれか一つを取得し」、
「前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記第2製造装置への前記第1製造物の供給量である第2供給量を決定し」、
「前記プラントが前記販売用手段を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記販売用手段への前記第1製造物の供給量である第1供給量を決定し」、
「前記プラントが前記発電装置を含む場合には、前記演算部は、取得した前記第1価格と前記第2価格と前記第3価格との少なくともいずれかに基づいて、前記対象タームにおける前記発電装置への前記第1製造物の供給量である第3供給量を決定し」、
「決定された前記第2供給量で前記第1製造物が前記第2製造装置に供給され、前記プラントが前記販売用手段を含む場合には決定された前記第1供給量で前記第1製造物が前記販売用手段に供給され、前記プラントが前記発電装置を含む場合には決定された前記第3供給量で前記第1製造物が前記発電装置に供給される、ように制御信号出力部が制御信号を出力する」、
との構成を備えていない点
相違点5
1甲3発明は、本件発明1の「前記発電装置は、前記貯蔵装置から供給される前記第1製造物を使用して発電するものであり」の構成を備えていない点
(l)上記相違点について判断する。
1甲3発明は、その発明の詳細な説明に、「廃棄物焼却施設には、廃棄物を焼却して得られた燃焼熱を回収し、蒸気を生成してタービンにより発電し、電力を供給する廃棄物発電を行う施設がある。近年、廃棄物発電が地域分散型のエネルギー供給施設としての役割を期待されており、そのためには安定したエネルギー供給が不可欠である。しかしながら、廃棄物組成は雑多で変動が大きいため、生成する蒸気量の変動も大きくなり、安定した電力供給が難しい面がある。また、廃棄物発電により作成されたエネルギーを貯蔵する技術についても有効な技術の開発が要望されている。/発電量の変動対策として、補助発電装置(太陽光発電パネル)と蓄電池を併設し、廃棄物発電の電力変動を抑え、補完する技術が開示されている(特許文献1)。・・・しかしながら、特許文献1では、太陽光の強弱により太陽光発電量は変動するので、安定した電力貯蔵・供給という観点からは補助発電として不十分である。さらに、電力というエネルギー形態のみではエネルギーの用途が限られ、また、蓄電池は電力変動補完という程度の貯蔵であるので多量かつ長期の貯蔵が難しい。」(【0002】-【0006】)、「本発明は、かかる事情に鑑み、廃棄物焼却施設において、廃棄物を焼却して得られる燃焼熱からエネルギーの製造、貯蔵を廃棄物焼却の発熱量変動が生じても安定して効率よく行うことができ、エネルギーを利用する用途の制約がない廃棄物焼却によるエネルギー貯蔵供給装置を提供することを課題とする。」(【0008】)と記載されているように、そもそも、「廃棄物焼却の発熱量変動が生じても安定して効率よく行うことができ」るようにすることを目的としており、そのために太陽光発電(変動性再生可能エネルギー)を利用することは適切ではないことが示唆されている。
したがって、1甲3発明の「焼却炉1に接続されたボイラ2」「からの蒸気を受けて回転駆動され、該蒸気タービン12に連結されている発電機13で発電した電力」を、そもそも変動することが前提の「変動性再生可能エネルギーを用いて発電した電力」とすることに阻害要因があるといえ、1甲3発明において相違点1の構成を採用することは当業者が容易に想起したことであるということはできない。
一応、1参3、1参4には、再生可能エネルギーとして、「太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱等、自然の力で定常的(もしくは反復的)に補充されるエネルギー資源(再生可能エネルギー)」・「太陽光や風力等の自然エネルギーを利用するもの」の他に「焼却炉においてゴミを燃焼させた際に発生する熱を用いるもの」・「再生可能な生物資源や廃棄物の燃焼エネルギー等を利用して発電する発電設備」があるとの記載があるが、これらはいずれも再生可能エネルギーとして同列に記載しているのみで、格別「変動性再生可能エネルギー」であることを前提としているものではない。
そして、本件発明1では、単なる再生可能エネルギーではなく、変動性再生可能エネルギーを利用して発電を行い、当該発電された電力を用いて「第1製造物」を製造し、第1製造物を利用して「第2製造物の製造」、「発電」、「第1製造物の販売」を、効率よく行うために相違点2~相違点5の構成を備えているといえるから、仮に、1甲3発明に相違点1の構成を転用することが容易であるとしても、上記転用に伴い、相違点2~相違点5の構成を更に採用することは当業者が容易に為し得たことであるということはできない。
したがって、本件発明1は、1甲3に記載された発明及び他の証拠に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
上記取消理由通知で通知した取消理由以外に、申立人1は、1甲1、1甲4を主たる引用例として、申立人2は、2甲1(1甲5である。)を主たる引用例としたうえで、本件発明1について特許異議申立てを行っているので、これらの主張について検討する。
なお、申立人1は、本件発明1は、1甲2に記載された発明、1甲3に記載された発明と同一との主張も行っているが、上記ア、イで検討したとおり、本件発明1は、1甲2発明、1甲3発明のそれぞれと相違点を有するから、本件発明1は、1甲2に記載された発明及び1甲3に記載された発明と同一ではない。
また、申立人2の2甲2を主たる引用例とする主張は、2甲2は1甲3と同じであるから、すでに、上記イで検討済みである。
(ウ-1)1甲1を主たる引用例とした主張
a 1甲1発明
1甲1には、上記「第5 1」において示したとおりの「1甲1発明」が記載されている。
b 対比・判断
本件発明1と1甲1発明との対比において、申立人1は以下のとおり主張し、1甲1発明と本件発明1との間に相違がないと述べている。
「本件請求項1記載の発明と対比すると、・・・製造された第1を、受け取って貯蔵する貯蔵装置(貯蔵設備322)を有する点、発電装置(電力に変換する変換設備330)と販売用手段(ガス需要部328)の少なくともいずれか一方の供給対象設備を有する点において同じである。なお、甲第1号証記載の発明では、供給側で生成した水素等を需要側に輸送する構成とされているが、需要側の貯蔵設備322は、供給側で再生エネルギーを用いて発電した電力を使用して製造された製造物(水素等)が貯蔵される、という点で本件請求項1記載の発明と何ら変わりはない。」(特許異議申立書44頁下から10行-最下行)
しかし、本件発明1の「プラント」は「第1製造物を製造する第1製造装置」、「前記第1製造装置から、製造された第1製造物を、受け取って貯蔵する貯蔵装置」、「化学物質を製造する第2製造装置」、「供給対象設備」、「を含んで構成されるプラント」であるところ、1甲1発明では、供給側の設備と需要家側の設備とは、輸送手段を用いて輸送形態とされたガスを輸送しており、これら供給側の設備と需要家側の設備とを一体としたプラントとみなすことはできないから、上記申立人1の主張は採用することができず、1甲1発明と本件発明1とは、根本的にその構成が異なるから、1甲1発明に基づいて本件発明1を当業者が容易に発明をすることができたということができないことは明白である。
したがって、本件発明1は、1甲1に記載された発明と同一ではないし、1甲1に記載された発明及び他の証拠に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ-2)1甲4を主たる引用例とした主張
a 1甲4発明
1甲4には、上記「第5 4」において示したとおりの「1甲4発明」が記載されている。
b 対比・判断
本件発明1と1甲4発明との対比において、申立人1は以下のとおり主張し、1甲4発明と本件発明1との間に相違がないと述べている。
「甲第4号証には、水素貯蔵装置と、上記水素貯蔵装置に供給する水素を生成する水素生成装置とを備えた水素取引システムが開示されており、自然エネルギーを利用して発電された電力を水素に変換し、これをカートリッジ(本件請求項1記載の発明の貯蔵装置に該当)に貯蔵して、希望価格が折り合った取引先(燃料会社や電力会社であり、本件請求項1記載の発明で言うところの販売用手段や発電装置に該当)に供給することが開示されている。」
しかし、本件発明1の「プラント」は「第1製造物を製造する第1製造装置」、「前記第1製造装置から、製造された第1製造物を、受け取って貯蔵する貯蔵装置」、「化学物質を製造する第2製造装置」、「供給対象設備」、「を含んで構成されるプラント」であるところ、1甲4発明の取引先(の装置)は、カートリッジに貯蔵した水素を販売したその相手(の装置)であって、1甲4発明の水素生成装置とは異なる装置であるから、本件発明1のプラントと同等のものであるとみなすことはできず、上記申立人1の主張は採用することができない。してみると、1甲4発明と本件発明1とは、根本的にその構成が異なるから、1甲4発明に基づいて本件発明1を当業者が容易に発明をすることができたということができないことは明白である。
したがって、本件発明1は、1甲4に記載された発明と同一ではないし、1甲4に記載された発明及び他の証拠に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ-3)1甲5(2甲1)を主たる引用例とした主張
a 1甲5発明
1甲5には、上記「第5 5」において示したとおりの「1甲5発明」が記載されている。
b 対比・判断
1甲5発明は、本件発明1と対比すると、そもそも、水素を利用して合成されたアンモニアのみが出荷(外部に供給)されることを想定しており、その過程で生成された「水素(本件発明1の第1製造物)」や「電力」を外部に供給することは想定されていない。
例えば、1甲2には、自然エネルギー由来の電力を利用して水素を製造し、製造された水素やその過程で更に製造される各種エネルギー源(電力、温水)を外部に供給する技術が、1甲3には、廃棄物焼却の発熱を利用して水素を製造し、製造された水素やその過程で更に製造される各種エネルギー源(アンモニア、電力)を外部に供給する技術が、それぞれ記載されている。
一方、1甲5に記載された、1甲5発明が解決しようとする課題と解決するための手段には以下のとおり記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
太陽エネルギーは非常に有力な代替エネルギーであるものの、これを社会活動の中で活用するためには、(1)太陽エネルギーのエネルギー密度が低いこと、並びに(2)太陽エネルギーの貯蔵及び移送が困難であることが、問題となる。しかし、(2)の太陽エネルギーの貯蔵及び移送に関する課題を解決することにより、砂漠等の広大な敷地を確保でき、利用できるようになることにより、エネルギー密度の低さは問題とならなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためには、太陽エネルギーを貯蔵及び移送が容易な化学エネルギーに変換することが必須である。種々の物質が考えられるが、取り扱い性、安全性、既存インフラの利用、エネルギーとしての応用性を考えるとアンモニアが最も適していると考えられる。このアンモニアの製造方法は、水素製造設備で、太陽エネルギーを取得し、かつ取得した太陽エネルギーの一部を利用して水から水素を製造すること、窒素製造設備で、空気から窒素を製造すること、水素貯蔵設備で、水素製造設備により製造した水素を貯蔵すること、アンモニア合成設備で、製造した水素及び製造した窒素からアンモニアを連続的に合成することを含む。」
当該記載からみて、仮に、1甲2、1甲3に、水素に加えて他のエネルギー源を外部に供給する技術思想が記載されているとしても、1甲5発明は、「太陽エネルギーを貯蔵及び移送が容易な化学エネルギーに変換することが必須」であるとして、当該変換を、アンモニア合成設備で、アンモニアを合成することで解決しているのであるから、1甲5発明において、少なくとも、水素を外部にエネルギー源として供給しようとすることには阻害要因があり、1甲5発明に基づいて本件発明1を当業者が容易に発明をすることができたということができないことは明白である。
したがって、本件発明1は、1甲5に記載された発明及び他の証拠に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)訂正後の請求項2~11に係る発明
上記訂正請求により訂正された訂正後の「本件発明2」~「本件発明11」は、上記第3【請求項2】~【請求項11】において示したとおりのものである。
本件発明2~11は、請求項1の記載を引用し、さらに限定する構成を付加した発明であって、上記相違点に係る構成を有しているから、上記(1)に示した理由と同様の理由により、1甲1ないし1甲4に記載された発明と同一であるということはできないし、上記申立人1、申立人2が提出した各証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(3)訂正後の請求項12、13に係る発明
上記訂正請求により訂正された訂正後の「本件発明12」~「本件発明13」は、上記第3【請求項12】~【請求項13】において示したとおりのものである。
本件発明12は、本件発明1の「プラント制御方法」のカテゴリを「プラント制御装置」に変えた発明であって、上記(1)で検討した相違点に対応する構成を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、1甲1ないし1甲4に記載された発明と同一であるということはできないし、上記申立人1、申立人2が提出した各証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、本件発明13は、請求項12の記載を引用し、さらに限定する構成を付加した発明であって、本件発明12と同様、上記相違点に係る構成を有しているから、上記(1)に示した理由と同様の理由により、1甲1ないし1甲4に記載された発明と同一であるということはできないし、上記申立人1、申立人2が提出した各証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(4)訂正後の請求項14に係る発明
上記訂正請求により訂正された訂正後の「本件発明14」は、上記第3【請求項14】において示したとおりのものである。
本件発明14は、本件発明1の「プラント制御方法」のカテゴリを「プラント」に変えた発明であって、上記(1)で検討した相違点に対応する構成を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、1甲1ないし1甲4に記載された発明と同一であるということはできないし、上記申立人1、申立人2が提出した各証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700849