商標取消審判
2022-670076
モーテルワン、モーテル、イチ、ワン
- 審判番号
- 2022-670076
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- —
- 請求日
- 2022年12月16日
- 審決日
- 2024年07月04日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シーエスアイ ダニスマンリク ヴェ デステク ヒズメトレリ アノエム シルケティ
- 【請求人代理人】長谷川 芳樹
- 【請求人代理人】黒川 朋也
- 【請求人代理人】魚路 将央
- 【請求人代理人】國重 充代
- 【被請求人】Motel One GmbH
- 【被請求人代理人】田中 克郎
- 【被請求人代理人】佐藤 俊司
- 【被請求人代理人】波田野 晴朗
- 【被請求人代理人】栗林 知広
- 【被請求人代理人】小林 奈央
- 【被請求人代理人】櫛田 沙希
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 清川 恵子
- 分類
- T131 .1 -Y (W3543)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第7号、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第2項、商標法第50条第1項、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の国際商標登録第1150554号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
第1 本件商標
本件国際登録第1150554号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり(2012年(平成24年)9月14日Germanyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同年11月5日に国際商標登録出願、第35類及び第43類に属する別掲2のとおりの役務を指定役務として、平成25年10月25日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和5年1月5日であり、商標法第50条第2項で規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、令和2年(2020年)1月5日から同5年(2023年)1月4日までの期間(以下「要証期間」という。)である。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定役務である第35類及び第43類の全指定役務について商標登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
請求人は、答弁に対し弁駁していない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、審判事件答弁書、上申書及び回答書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第90号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁書及び上申書
(1)被請求人は欧州を中心にホテルを経営しているところ、日本人旅行者が直接被請求人のウェブサイトにホテル予約のためにアクセスし(乙1)、多くの日本人旅行者が被請求人ホテルに宿泊している事実がある(乙2~乙73)。
(2)また、被請求人は「beOne member」と称する会員プログラムを提供しており(乙74)、会員には朝食やミネラルウォーターの無料サービス、レイトチェックアウト等の特別サービスがあるが、日本の「beOne member」登録者は2023年3月21日現在で996人、会員のみが受け取ることのできるメールマガジン登録者は678人、会員以外も受け取ることのできるメールマガジン登録者は186人となっている。
(3)上記の事実から、被請求人が日本の需要者に「宿泊施設の提供、宿泊の予約の取り次ぎ」の役務を提供していることが明らかである。
2 審尋に対する回答書
(1)被請求人について
被請求人を筆頭とするMotel Oneグループ(以下「モーテルワングループ」という。)は、「Motel One」のブランド名のもとヨーロッパを中心に世界各国で宿泊施設(ホテル)を運営し、あらゆる国・地域からの宿泊客を受け入れている。モーテルワングループは各国に現地法人を設立し、当該現地法人がホテルの運営をしている。たとえば、ドイツにおいてはMotel One Germany Betriebs GmbH(以下「MOBG」という。)がドイツ国内のホテブレを運営している。このようにモーテルワングループは、モーテルワングループが運営するホテルが物理的に所在する国・地域に所在する者に限らず、当該国・地域外から流入する宿泊希望者を主要な需要者と位置づけている。
(2)ホテルの宿泊予約に関する取引の実情
宿泊施設を利用する者は、宿泊施設の所在地に来訪してから宿泊施設を訪問して宿泊施設を探すのではなく、現地到着前に宿泊施設を予約して宿泊施設との間で宿泊契約を締結していることが一般的である。国土交通省が提供する「モデル宿泊約款」においても宿泊契約は、宿泊希望者による宿泊申込を宿泊施設が承諾した段階、つまり予約成立時に成立するとされている(乙75)。
また、近年では、旅行者はウェブサイトやソーシャルメディア等を通じて海外の旅行情報を自ら収集し、自らの好みに応じた旅行先・宿泊先を選ぶことが容易になり、海外旅行の形態も団体でのツアー旅行から、いわゆる“FIT”(Foreign lndependent Tour)と呼ばれる個人旅行へと主流が変化している(乙77)。さらに、ブッキングドットコムのような海タトのホテル予約を仲介するウェブサービスや、宿泊施設自身のシステムを通じて、オンラインで、海外のホテルの宿泊予約をすることも一般的になっており、海外からの顧客であつても利用しやすいオンライン宿泊予約システムを提供している。このようなホテル業界におけるオンラインを通じた宿泊予約の重要性の高まりは、2016年の消費者庁の調査において海外旅行をした者の63.7%がオンライン予約をしたと回答していることからも強く裏付けられる(乙78)。
以上のとおり、ホテル業界において、宿泊予約は、宿泊施設の提供に当然に付随するものであつて、需要者は、チェウクインよりも前の段階の宿泊予約、宿泊施設での宿泊、その後のアフターサービス等を一連の宿泊体験として把握し、ホテル事業者は、これらを一体的なサービスとして提供している。
(3)ブッキングドットコムの宿泊予約サイトでのオンラインの宿泊予約に関する本件商標の使用
ア MOBGと被請求人の関係
MOBGは、モーテルワングループのグループ会社であり、ドイツ国内に所在するモーテルワングループのホテル運営主体である。MOBGは、本件商標の商標権者たる被請求人からモーテルワングループの運営に関して、本件商標の使用についての使用許諾を受けている(乙79)。よって、MOBGが運営するドイツ国内に所在する宿泊施設に関するMOBGによる本件商標の使用は、被請求人からの使用詐諾に基づくものである。
イ 本件商標の使用
大手宿泊予約サイトであるブッキングドットコムのウエブサイトには、被請求人が運営する宿泊施設のほとんどが掲載され、MOBGが運営するドイツのフランクフルトに所在するホテル「モーテル ワン フランクフルトメッセ」(以下「本件被請求人ホテル」という。)の宿泊予約のページ(以下「本件ブッキングドットコムページ」という。)には、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が使用されている(乙80~乙81)。
本件被請求人ホテルでの宿泊を希望する者は、本件ブッキングドットコムページを介して、本件被請求人ホテルの宿泊予約をすることができる。
具体的には、宿泊予約者は「空室状況」にチェックイン日とチェックアウト日を入力することで、宿泊予定期間における空室情報を確認することができる(乙80)。なお、これは、本件被請求人ホテルに関する一例であつて、モーテルワングループは世界に92のホテルを運営し、そのいずれもブッキングドットコム上に同様の宿泊予約ページを掲載している。
その後、予約完了までは「部屋数」を選択し、「予約画面へ」のボタンを押し、宿泊者情報の必要事項を入力の上、支払情報の入力画面でクレジットカードの情報を入力の上、「予約を確定する」のボタンを押すことで本件被請求人ホテルを予約することができる。このように、本件ブッキングドットコムページは本件被請求人ホテルの宿泊予約を行うためのウェブページである。
ウ 本件商標の使用時期
乙第80号証は、本件要証期間内である令和3年(2021年)6月11日時点に掲載された本件ブッキングドットコムページのプリントアウトである。乙第81号証は、本件要証期間後のウェブサイトのプリントアウトであるが、本件要証期間後に、ブッキングドットコムのウェブサイトの仕様が大きく変更された形跡は見当たらないから、令和3年(2021年)6月11日時点において、本件被請求人ホテルの宿泊予約が可能な本件ブッキングドットコムページにおいて、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が使用されていた。
エ 「一時宿泊施設の提供、モーテル及びホテルにおける宿泊施設の提供」(以下「本件役務」という。)について
(ア)省令別表による「宿泊施設の提供」の意義
本件商標の本件役務は、商標法施行規則別表第43類1に定める「宿泊施設の提供」を意味する。
省令別表第43類1において「宿泊施設の提供」及び「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」は並列的に規定されているところ、「媒介」は「双方の間に立ってとりもつこと」(乙82)、「取り次ぐ」は「双方の間に立って物事を伝える」(乙83)という意味であるから、「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」は、第三者が提供する「宿泊施設の提供」の契約締結をとりもつ役務を意味し、自らが提供する「宿泊施設の提供」の宿泊予約サービスは含まれないといえる。
(イ)宿泊予約が本件役務に含まれること
ホテル事業を行う上で、ホテルの宿泊希望者との間で宿泊予約を行うことは、宿泊施設の提供という役務の性質上、役務の重要なプロセスとして当然に含まれる。したがつて、本件役務の内容には、宿泊施設の運営者が、宿泊希望者に対して宿泊施設の宿泊予約を行うことも含まれると解される。
なお、カナダ国内に物理的な宿泊施設を持たないヒルトンが、オンラインでカナダの居住者が利用可能な予約サービスやポイントサービスを提供していたことをもって、カナダにおいてホテルサービスを提供していたといえるか否かが争われた事件において、カナダ連邦裁判所は「ホテルサービス」はオンライン予約等のサービスの提供に不可欠なサービスであるから、このようなオンライン上のサービス提供の存在をもって、ヒルトンがカナダ国内でホテルサービスを提供していると判断している(乙84)。
(ウ)本件商標が本件役務に使用されていること
宿泊施設の提供者が宿泊施設の宿泊希望者に対して宿泊予約を行うことは、本件役務に含まれるのであるから、本件被請求人ホテルを運営する被請求人が、本件ブッキングドットコムページを介して、本件被請求人ホテルの宿泊予約を行うことは、本件役務に該当する。
したがって、本件ブッキングドットコムページ上においてMOBGが本件商標を使用する行為は「電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」(商標法第2条第3項第7号)に該当する。
そして、MOBGは本件商標の権利者である被請求人から、本件被請求人ホテルの運営について、本件商標を使用する使用許諾を受けている(乙79)。
よって、本件商標は、通常使用権者であるMOBGによって、本件役務に使用されている。
オ 本件商標の日本国内における使用
本件役務には、宿泊予約が含まれるから、その宿泊施設が日本において宿泊希望者の宿泊予約をしている場合には、日本において本件役務が行われており、かかる宿泊予約に際して商標が使用されていれば、かかる商標は、日本国内において本件役務に使用されていると解すべきである。
すなわち、本件ブッキングドットコムページは日本からアクセスし利用することが可能であり、本件ブッキングドットコムページは日本語で表示され、かつ、利用可能な通貨として円も表示されている。実際に、MOBGは、本件ブッキングドットコムページから宿泊予約をした宿泊客を多数受け入れている。乙第85号証は、本件要証期間において日本からブッキングドットコム等の外部の宿泊予約サイトにアクセスし、モーテルワングループが運営する宿泊施設の宿泊客のレビューをまとめたレポートであり、日本から本件ブッキングドットコムページ上の予約サービスを利用して宿泊予約をした宿泊客は多数存在する。
また、モーテルワングループは、宿泊客を対象に宿泊に際して利用できる各種ベネフイットを提供する会員プログラム「beONE」を提供しており(乙74)、924名の日本に所在する宿泊客が登録している(2023年1月5日時点)。その他に、モーテルワングループは、宿泊客のうち希望者を対象に、ニュースレターを送信しているところ、約200名の宿泊者が登録している(2023年1月23日時点)。さらに、モーテルワングループの宿泊施設が日本の著名な旅行ガイドブックにおいて紹介されるに至っている(乙86、乙87)。
以上を総合すれば、MOBGが日本において本件役務を提供していたことは明らかといえる。
なお、モーテルワングループは、日本を含む世界中の宿泊希望者との間で宿泊予約を行うために、ブッキングドットコムの利用について同サイトの運営者との間で有償契約を締結の上、モーテルワングループのホテルを掲載し、日本を含む世界中の宿泊希望者から宿泊予約を受け付けている(乙79)。したがつて、本件ブッキングドットコムページを介した本件被請求人ホテルの宿泊予約の提供は、MOBGが自ら提供する役務といえる。
力 小括
以上のとおり、本件被請求人ホテルはドイツに所在しているものの、本件ブッキングドットコムページを介して、MOBGは日本から宿泊予約ができるようにし、本件要証期間内において、本件ブッキングドットコムページにおいて本件商標を使用していたものである。したがって、MOBGによる宿泊予約の提供は、本件役務に該当するものであるから、本件商標は、通常使用権者であるMOBGによって日本において本件役務に使用されていたものといえる(商標法第2条第3項第7号)。
(4)モーテルワングループのウェブサイトにおけるオンライン予約サービスの提供に関する本件商標の使用
ア 本件商標の使用
本件公式サイトのトップ画面には、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が使用されている(乙88)。当該トップ画面には、下部に宿泊施設の所在地(DESTINATION)、到着日(ARRIVAL DATE)、出発日(DEPARTURE DATE)及び宿泊者数等(GUESTS/ROOMS)の入力欄があり、ここに必要な情報を入力することによって、MOBGを 含むモーテルワングループの各国の現地法人が運営するホテルの空室状況等を検索することができる。本件被請求人ホテルの予約完了までの画面遷移は次のとおりであり(乙89の2~乙89の6)、本件公式サイトは、本件被請求人ホテルの宿泊予約をすることができるウェブサイトである。
イ 本件商標の使用時期
乙第88号証は、本件要証期間内である令和4年(2022年)12月20日時点に掲載された本件公式サイトのトップ画面のプリントアウトである。予約完了までの変遷(乙89)については、本件要証期間外のプリントアウトであるが、本件要証期間後に、被請求人のオンライン宿泊予約の方法を大きく変更したことはないから、令和4年(2022年)12月20日時点においても、当該トップ画面における予約完了までの画面遷移は、乙第89号証と同様であったことは推認可能である。
したがって、本件要証期間内である令和4年(2022年)12月20日時点において、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる商標が使用されていた。
ウ 本件役務についての使用
(ア)上記で主張したとおり、宿泊施設の提供者が宿泊施設の宿泊希望者に対して宿泊予約を行うことは本件役務に含まれるのであるから、MOBGが本件公式サイトを介して被請求人ホテルの宿泊予約を行うことは、本件役務に該当する。そして、本件公式ウェブサイト上においてMOBGが本件商標を使用する行為は、「電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」(商標法第2条第3項第7号)に該当する。
よって、本件商標は、被請求人によって、本件商標の本件役務に使用されている。
(イ)本件商標の日本国内における使用
上記でみたように、宿泊施設が日本において宿泊予約に係る役務を提供している場合には、日本において本件役務が行われており、かかる宿泊予約に際して商標が使用されていれば、かかる商標は日本国内において本件役務に使用されていると解すべきである。
本件被請求人ホテルは日本のガイドブックでも紹介され(乙86、乙87)、日本からの顧客も受け入れている。本件公式サイトは日本からアクセス可能であり、実際に日本から本件公式サイトにアクセスして、本件被請求人ホテルを利用している者も数多くいる。乙第1号証は、本件公式サイトヘのアクセスをGoogle Analyticsにより解析した結果のうち、日本からのアクセスに関する解析結果を示すレポートである。たとえば、「1.Tokyo」の欄を確認すると、東京から本件公式サイトにアクセスした閲覧者のうち、およそ5.5%が実際に宿泊予約をしたことが確認できる。また、本件公式サイトには日本語表記はないものの、地名や部屋数などは英語であっても容易に理解可能であるし、宿泊予定日はカレンダーが表示されるのであるから、日本の中学校卒業程度の基本的な英語力があれば、本件公式サイトを通じた宿泊予約は十分に可能である。また、細かな宿泊約款の内容等についても、近年ではGoogle翻訳やDeepL翻訳等のオンライン無償翻訳ツールを使用することで、その内容を理解することができるし、本件公式サイトの利用可能な通貨として明示的に円が指定されていないが、クレジットカードやペイパル等であれば、支払通貨が何であろうと決済可能である。実際に、本件公式サイトを通じて日本から被請求人ホテルを予約した人が数多くいることは、日本の需要者に十分利用可能であることの証左である。
乙第1号証のデータからも明らかなように、本件公式サイトは、日本の需要者(少なくとも基本的な英語力を持つ日本の需要者)によるアクセスを当然に想定している。また、本件要証期間内において「beONE」の会員及びニュースレターの登録者が相当程度存在していたことは、この点を強く裏付ける事情といえる。
エ 小括
以上のとおり、本件公式サイトを介して、MOBGは日本から本件被請求人ホテルの宿泊予約ができるようにし、本件要証期間内に、本件公式サイトにおいて、本件商標を使用していたものである。MOBGによる宿泊予約の提供は、本件役務に該当するものであるから、本件商標は、通常使用権者であるMOBGによつて本件役務に使用されていたものといえる(商標法第2条第3項第7号)。
(5)被請求人が本件商標を第43類「宿泊の予約の取次ぎ」の役務に使用していること
ア 本件商標の使用
本件公式サイトは、被請求人が運営するウェブサイトである(乙90)。被請求人が運営する本件公式サイトを介して、MOBGをはじめとするモーテルワングループの各国現地法人は、自身が運営するモーテルワングループのホテルの宿泊予約を提供しており、本件公式サイトにおいては、本件商標が使用されている。
被請求人は、MOBGをはじめとするモーテルワングループの各国の現地法人らの依頼により、本件公式サイトにおいて、各国の現地法人が運営するホテルと、その宿泊希望者の間の宿泊予約の取次ぎを行っている。
イ 本件商標の使用時期
上記(4)イのとおり、本件商標と社会通念上同一と認められる商標は、本件要証期間内である令和4年(2022年)12月20日時点において、本件公式サイトにおいて使用されていた。
ウ 宿泊の予約の取次ぎの使用
(ア)本件商標の指定役務である「宿泊に関する予約の取次ぎ」は、第三者が提供する「宿泊施設の提供」の契約締結をとりもつ役務を意味する。
被請求人とMOBGは同一グループ内に属する企業ではあるが、法人格としては別法人であり、被請求人が本件公式サイトを管理・運営し、本件公式サイトにアクセスした宿泊希望者とMOBGとのホテルの予約を取りもつ行為は「宿泊に関する予約の取次ぎ」に該当する。
そして、本件公式サイトにおいて、本件商標が使用されており、かかる使用は「電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供にあたりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」(商標法第2条第3項第7号)に該当する。
(イ)日本国内での使用
上記(4)ウ(イ)のとおり、本件公式サイトを介して、日本からMOBGが運営するホテルの宿泊予約が可能であり、実際に日本から本件公式サイトを通じた宿泊予約も多数みる(乙1)。そうすると、本件公式サイトの宿泊予約は多数の日本の需要者に対して提供されたものといえるから、被請求人が提供する「宿泊に関する予約の取次ぎ」は日本の需要者に対して提供されていたものと解すべきである。
エ 小括
以上のとおり、被請求人が運営する本件公式サイトでは日本からMOBGのホテルの宿泊予約が可能であったのだから、被請求人は要証期間内において、本件公式サイトにおいて、本件商標を使用していたものである。本件商標は、被請求人によつて、日本において「宿泊に関する予約の取次ぎ」の役務に使用されていたものといえる(商標法第2条第3項第7号)。
第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
(1)本件商標権者(被請求人)及びMOBGについて
ア 本件商標権者は、モーテルワングループの筆頭であり、「Motel One」のブランド名のもとヨーロッパを中心に世界各国で宿泊施設を運営し、当該グループのホテルの宿泊予約ができる公式サイトを有している(乙88~乙90)。
イ MOBGは、本件商標権者が筆頭であるモーテルワングループのグループ会社であり、ドイツ国内に所在するモーテルワングループのホテル運営主体である。MOBGは、フランクフルトに所在するホテル「モーテルワン フランクフルト メッセ」を運営している(被請求人主張)。
また、MOBGは、本件商標の商標権者たる被請求人からモーテルワングループの運営に関して、本件商標の使用についての使用詐誠を受けている(2023年11月28日付け宣誓供述書、乙79)。
(2)ブッキングドットコムについて
MOBGは、日本を含む世界中の宿泊希望者との間で宿泊予約を行うためにブッキングドットコムの利用について同サイトの運営者との間で2013年9月30日に有償契約を締結している(乙79)。
また、MOBGが運営するホテルは、ブッキングドットコムに掲載され、そのページには、「ホテルチェーン/ブランド:モーテルワン」の記載がある(乙80)。
(3)本件商標の使用について
ア ブッキングドットコムのウェブサイトには、本件商標権者(被請求人)が運営する宿泊施設のほとんどが掲載され、MOBGが運営するドイツフランクフルトに所在するホテル「モーテル ワン フランクフルトメッセ」の宿泊予約のページには別掲3のとおりの商標が使用されている(以下「使用商標」という。乙80~乙81の2)。
イ 乙第80号証は、本件要証期間内である令和3年(2021年)6月11日時点に掲載されたブッキングドットコムページのプリントアウトであり、乙第81号証は、本件要証期間後のブッキングドットコムページのプリントアウトであるが、本件要証期間後に、当該ページの仕様が大きく変更された形跡は見当たらないから、令和3年(2021年)6月11日時点において、ブッキングドットコムページにおいて、使用商標が使用されていた。
(4)日本からの利用者について
ア 本件要証期間におぃて日本からブッキングドットコム等の外部の宿泊予約サイトにアクセスし、モーテルワングループが運営する宿泊施設の宿泊客のレビューをまとめたレポート(乙85)があり、日本からブッキングドットコムページ上の予約サービスを利用して、モーテルワングループの宿泊施設の予約をした宿泊客は多数存在する。
乙第85号証(一部抜き出し)によれば、2022-12-15/Motel One Berlin―PotsdamerPlatz/Booking.com/Japanisch/Yasuki(2葉目)、2022-11-26/Motel One Brussels/Booking.com/Japanisch/Asakawa(3葉目)、2022-10-16/Motel One Berlin-Bellivue/Booking.com/Japanisch/Norikazu(4葉目)、2022-10-13/Motel One Munchen-Campus/Booking.com/Japanisch/Yoshiki(5葉目)、2022-08-14/Motel One Frankfurt-Airport/Booking,com/Japanisch/Yasushi(8葉目)、2022-08-14/Motel One Frankfurt-Romer/Booking.com/Japanisch/Ikuko(8葉目)、2021-11-23/Motel One Frankfurt-Romer/Booking.com/Japanisch/Hideyuki(14葉目)、2020-02-19/Motel One Frankfurt-Romer/Booking.com/Japanisch/Tatsuro(19葉目)の記載がある。
イ モーテルワングループの宿泊施設が日本の著名な旅行ガイドブックにおいて紹介されるに至っている (乙86、乙87)。
2 上記1の事項に基づき、以下判断する。
(1)MOBG(Motel One Germany Betriebs GmbH)について
本件商標権者は、共同経営者兼取締役の宣誓供述書(乙79)を提出し、ホテルを運営するグループ会社のMOBGに、ホテルサービスに関連して、登録第739344号及び第1150554号(本件商標)の商標を使用するライセンスを付与している旨、2023年11月28日付けで宣誓供述している。
当該ライセンスの対象は「ホテルサービス」であるところ、ホテルサービス業には、宿泊を提供するサービスが含まれるから、MOBGが行っているホテル(宿泊施設)の提供が該当するものといえる。
そして、本件指定役務である第43類「一時宿泊施設の提供,モーテル及びホテルにおける宿泊施設の提供」にホテルの提供は含まれるものである。
また、上記宣誓書は、要証期間外であるところ、MOBGは本件商標権者のグループ会社であること、MOBGが2013年9月13日にモーテルワングループのホテルについてブッキングドットコムと有償拠約を締結していることからすれば、少なくとも当該契約締結時から宣誓書の上記日付けにおいて、本件商標権者からMOBGに本件商標の使用について許諾があつたものと推認される。
したがって、MOBGは、第43類「一時宿泊施設の提供,モーテル及びホテルにおける宿泊施設の提供」に係る本件商標の通常使用権者と認められる。
(2)使用商標について
本件商標は、別掲1のとおり、上段に数字の「1」を円で囲んだ青色図形を配し、下段に「mOTEL OnE」の文字が丸文字風の字体で表されている。他方、使用商標は、別掲3のとおり、上段に数字の「1」を円で囲んだ青色図形を配し、下段に「mOTEL OnE」の文字が丸文字風の字体で表されているものであるから、本件商標と使用商標は、商標を構成する文字、図形及び態様を同じくし、「モーテルワン」の称呼も共通であるから、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(3)使用役務について
ブッキングドットコムサイトは、ホテルなどの宿泊施設の予約ができるサイトであり、当該サイトにおいて、本件商標権者(被請求人)を筆頭とするモーテルワングループのホテル及びMOBGのホテルは、使用商標を付してホテル(宿泊施設)としての情報を掲載している。そして、ホテルにおける宿泊施設の提供の役務において、宿泊予約は不可欠なサービスであるところ、上記1(2)のとおり、MOBGは当該サイトにおいて、モーテルワングループ及びMOBGのホテルの宿泊予約ができるようにするために、2013年9月30日に当該サイトの運営者との間で有償契約を締結している(乙79)。
そして、乙第80号証によれば、令和3年(2021年)6月11日において、ブッキングドットコムのページにMOBGが運営するホテルが掲載されているから、当該契約は、少なくとも上記日付において継続していたことが推認できる。
以上を踏まえれば、MOBG(通常使用権者)の行う使用商標の上記使用は、モーテルワングループ及びMOBGが 運営するホテルの宿泊客を増やすことを目的として、ブッキングドットコムが運営する宿泊予約サイトにホテルの情報を掲載しているものであり、「ホテルにおける宿泊施設の提供」(以下「使用役務」という。)の広告、宣伝活動の一つとして使用されているとみるべきである。
そして、使用役務は、本件商標の指定役務中、第43類「一時宿泊施設の提供,モーテル及びホテルにおける宿泊施設の提供」の範ちゅうの役務である。
(4)使用商標の使用者について
上記1(2)のとおり、使用商標が表示されている宿泊施設予約サイト(ブッキングドットコムサイト)への掲載は、MOBGが2013年9月30日に、当該サイトの運営者との間で有償契約を締結していることによるものである(乙79)。
そして、使用役務は、本件商標権者とMOBGとのライセンスに係る役務(ホテルサービス)の範ちゅうの役務である。
以上のことを勘案すると、使用商標の使用者は通常使用権者であるMOBGであるといえる。
(5)商標の使用及び使用時期について
MOBGは、上記1(2)のとおり、ブッキングドットコムのサイトの運営者との間で有償契約を締結しているから、MOBGが、使用商標を表示したホテル情報の掲載を依頼したものである。
そして、上記1(3)によれば、使用商標を表示したホテル情報は、当該サイトに、令和3年(2021年)6月11日時点で掲載されていたことが推認できる。
また、上記1(4)のとおり、要証期間内に、ブッキングドットコムのサイトから、MOBGが運営するホテルを予約して宿泊した日本人がいることも確認できる(乙85)。
そうすると、通常使用権者であるMOBGは、令和3年(2021年)6月11日に「ホテルにおける宿泊施設の提供」に関する情報についての広告に使用商標を付して電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)を行っていたものと認められる。
そして、当該日付は、要証期間内の日付であり、かつ本件商標のライセンスを受けているMOBGによる使用である。
また、ブッキングドットコムのサイトは、日本語で表記され、日本の利用者向けのものであるから、その広告の提供先は日本国内であること明らかである。
(6)小括
以上によれば、本件商標の通常使用権者は、要証期間に日本国内において、本件商標の指定役務中、第43類「一時宿泊施設の提供,モーテル及びホテルにおける宿泊施設の提供」の範ちゅうの役務である「ホテルにおける宿泊施設の提供」の広告を内容とする情報に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付し、電磁的方法により提供したものと認められる。
本件商標の通常使用権者による上記行為は、商標法第2条第3項第8号の「役務に関する広告に標章を付して頒布」する行為に該当する。
なお、請求人は、被請求人の答弁に対し、何ら弁駁していない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の通常使用権者が本件審判の請求に係る指定役務中、第43類「一時宿泊施設の提供,モーテル及びホテルにおける宿泊施設の提供」の範ちゅうの役務である「ホテルにおける宿泊施設の提供」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-670076