商標取消審判
2022-301081
ヒューマンリソース
- 審判番号
- 2022-301081
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願1994-074975
- 登録番号
- 4045438
- 請求日
- 2022年12月15日
- 審決日
- 2024年10月03日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】村野 親
- 【被請求人】株式会社 日本人事総研
- 【被請求人代理人】秋山 敦
- 【被請求人代理人】福士 智恵子
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 大島 康浩
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T131 .1 -Y (035)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第8号、商標法第2条第3項、商標法第50条、商標法第50条第1項、商標法第70条第1項、商標法第2条第3項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第4045438号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第4045438号商標(以下「本件商標」という。)は、「HUMAN RESOURCE」及び「ヒューマンリソース」の文字を二段に横書きしてなり、平成6年7月25日に登録出願、第35類「経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供」を指定役務として、同9年8月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和5年1月6日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和2年(2020年)1月6日から同5年(2023年)1月5日までを、以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び審判事件弁駁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証(以下、「甲第○号証」を「甲○」、「乙第○号証」を「乙○」のように表記する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人の使用商標及び使用役務について
被請求人は、乙1ないし乙11をもって登録商標をその指定役務中「経営の診断及び指導」に使用していると主張する。
しかしながら、これらの証拠書類によれば、いずれの使用態様も被請求人の経営方針あるいはスローガンの一部に「人材。人的資源。」を意味する普通名称として「ヒューマンリソース」の語が使用されているにすぎない。当該使用は被請求人が提供する「経営の診断及び指導」に関するサービスの出所識別標識、すなわち商標法上の商標として登録商標が使用されているものではなく、商標法第2条第3項各号の「使用」に該当する使用ではない。
ア 乙1及び乙2
これらは被請求人のホームページとなるが、いずれも「ヒューマンリソースを追求し、企業の成長・発展をサポートする\日本人事総研」と記載されており、このうち「日本人事総研」の文字は大きく表され、「ヒューマンリソースを追求し、企業の成長・発展をサポートする」の語は「日本人事総研」の約四分の一のフォントで表されている。当該態様から「ヒューマンリソース」の語は独立して使用されているものではないことは明らかである。
そもそも「ヒューマンリソース」の語は「人材。人的資源。」を意味する語としてカタカナ語辞典にも掲載されている語であり、人事や人材に関する役務との関係では識別力が無い語である(甲3、甲4)。この点につき改めて被請求人の使用態様をみると、「ヒューマンリソースを追求し、企業の成長・発展をサポートする/日本人事総研」の態様は、単に被請求人である「日本人事総研は、人材資源を追求して、(被請求人のクライアントである)企業の成長と発展をサポートします」という被請求人の経営方針、あるいはスローガンと理解され、当該経営方針やスローガンの文中の一部に用いられている「ヒューマンリソース」の語は被請求人が提供するサービスの出所を表すものではなく、単に一般名称としての「人的資源」を意味するものに他ならず、商標法上の商標としての使用ではないことは明らかであり、商標法第2条第3項各号に規定する「使用」には該当しない。
イ 乙4
本号証は2022年3月10日 全国中小企業団体中央会「令和元年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金に係る補助金確定通知書」及び当該補助金申請書類(写し)であるところ、「その1:補助事業の具体的取組内容(1)事業変遷」の箇所に「当社は(中略)創業者である並木と岡田は「ヒューマンリソースを追求し、企業の成長・発展をサポートする」という考えのもと、事業運営を行ってきました。」との記載がある。当該記載「という考えのもと」とあるとおり、「ヒューマンリソースを追求し、企業の成長・発展をサポートする」は被請求人の企業としての考え方や理念を示しているものである。また、「現在は、企業向けの人事コンサルティング事業と社会労務士(以降、社労士)向けの人事コンサルタント事業が主な事業となっています。」との記載からも人事関連のサービスについて、「人的資源」を意味する語として「ヒューマンリソース」の語を使用していることが確認できる。
なお、「社会労務士(以降、社労士)向けの人事コンサルタント事業」については「シャロン\社労士×コンサル」との記載があり、まさに「シャロン」が当該サービスの名称として、すなわち商標として使用されていることが確認できる。
ウ 乙7
本号証は研修資料(2022年6月29日開催講演会)(写し)であるところ、その最終ページに被請求人の企業紹介として「ヒューマンリソースを追求する日本人事総研」との記載が確認できる。当該記載は被請求人の企業としての理念やスローガンを示しているものであり、当該文中の「ヒューマンリソース」の語は「人的資源」を意味する語として使用されているにすぎず、特定のサービスの出所を示す標識として使用されておらず、商標法上の商標として使用されているものではない。
また、同講演の申し込み用紙中の講師紹介欄に「ヒューマンリソースを追求し、常に顧客の目線に立った誠実で丁寧な指導をモットーとし、(後略)」との記載が確認できる。当該記載にあるとおり、「モットー(理念)」を表す文章中に「人的資源」を表す一般名詞として「ヒューマンリソース」が使用されている。当該記載は特定のサービスの出所を示す標識として使用されているものではない。
なお、人事に関する研修は第35類「経営の診断及び指導」に含まれる役務ではなく、第41類「セミナーの企画・運営又は開催」に含まれる役務であり、特許庁においても「人事に関する講演会及び研修会の企画・運営及び開催」は第41類の役務(類似群コード:41A03)とされている旨付言する。
エ 乙8
本号証は研修資料(2022年7月22日開催請演会)(写し)であるところ、最終ページに被請求人の企業紹介として「ヒューマンリソースを追求する 日本人事総研」との記載が確認できる。当該記載は被請求人の企業としての理念やスローガンを示しているものであり、当該文中の「ヒューマンリソース」の語は「人的資源」を意味する語として使用されているにすぎず、特定のサービスの出所を示す標識として使用されているものではない。
また、講師プロフィールの記載として「(前略)ヒューマンリソースを追求した中小企業の人事に関するサポートに取り組んでいる。」との記載が確認できる。当該記載は被請求人の事業紹介にすぎず、「ヒューマンリソース」の語は「人的資源」を意味する語として使用されているものである。したがって当該記載中の「ヒューマンリソース」が特定のサービスの出所を示す標識、すなわち商標として使用されているものではない。
オ 乙9
本号証は研修資料(2022年10月26日開催講演会)(写し)であるところ、最終ページに被請求人の企業紹介として「ヒューマンリソースを追求する日本人事総研」との記載が確認できる。当該記載は被請求人の企業としての理念やスローガンを示しているものであり、当該文中の「ヒューマンリソース」の語は「人的資源」を意味する語として使用されているにすぎず、特定のサービスの出所を示す標識として使用されているものではない。
カ 乙10
本号証は名刺(写し)であるところ、その裏面とおぼしき箇所に「ヒューマンリソースを追求する」との記載があり、その下部に「株式会社日本人事総研」の記載が確認できる。そもそも名刺は商品、役務との関係が不明確であり、「経営の診断及び指導」への使用を示す証拠たり得ない。仮に名刺への商標の使用が「経営の診断及び指導」への使用として認められるとした場合であっても、上述の使用態様は被請求人である日本人事総研の経営理念やスローガンを示すものであり、「ヒューマンリソース」が特定のサービスの出所を示す標識として使用されているものでないことは明白である。
キ その他
なお、被請求人は乙1中の右端の表示「コンサルティング・サービス→→→詳細はこちら!」、「サポーティング・サービス→→→詳細はこちら!」の表示、乙3等の記載をもって「経営の診断及び指導」の役務の提供を行っている旨を主張する。人事に関するコンサルティング業務が「経営の診断及び指導」に含まれるとしても、これらの記載は単に被請求人が当該業務を行っていることを示すにすぎず、登録商標を「経営の診断及び指導」の識別標識として使用していることを何ら示すものではない。
(2)結語
以上のとおり、被請求人は、本件商標を「経営の診断及び指導」並びに「市場調査,商品の販売に関する情報の提供」について使用していることにつき、何ら立証を行っているとはいえない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判事件答弁書及び令和5年7月26日付け審尋に対する同年8月30日付け審判事件回答書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙14(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁書における主張
(1)本件商標は、欧文字の「HUMAN RESOURCE」と片仮名の「ヒューマンリソース」の文字を上下二段に表記してなり、下段の「ヒューマンリソース」は上段の「HUMAN RESOURCE」の発音を日本語の発音としたものであり、いずれも「人材」、「人的資源」という同一の意味を有するものである。このように、上段及び下段の各部分が意味(観念)を同一とするとき、その一方の使用は、登録商標と社会通念上同一の商標である。また、このとき、登録商標と使用商標の文字の書体が同一でない場合であっても、いずれの文字も標準の書体が使用されている場合には、使用商標は、登録商標と社会通念上同一の商標である(平成24年(行ケ)第10442号審決取消請求事件)。
(2)商標権者は、1993年12月創立以来、中小企業の人事制度の策定・整備・導入・運用・浸透を支援するサービスとして、人事・組織コンサルティングや人事コンサルタント養成支援ツール等を提供している。商標権者は、本件審判請求の登録前3年以内に、指定役務中、第35類「経営の診断及び指導」について、本件商標を使用している。
(3)商標権者のホームページにおいては、商標権者が、指定役務中、第35類「経営の診断及び指導」の範囲内の役務としての、人事制度の策定を含むコンサルティングサービス、人事運用・調査・診断を含むサポーティングサービスを提供していることが示されている(乙1~乙4参照)。
商標権者のホームページのうち、乙1は2021年6月16日のトップページ、乙2は2022年7月1日の代表挨拶ページ、乙3の1及び乙3の2は2022年7月6日のトップページ及び商標権者の事業の一つである人事・組織コンサルティングの内容を説明するページである。各ウェブページにおいて、ページの冒頭部分に「ヒューマンリソース」の文字が標準の書体で表示されている。なお、乙4は、2022年3月10日付けの全国中小企業団体中央会による「令和元年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金に係る補助金確定通知書」及び当該補助金審査申請時に提出した商標権者の事業内容説明資料であり、商標権者が人事コンサルティングサービスを提供していることが記載されている。
(4)乙5は、2020年及び2021年に商標権者が提供した人事制度に関する研修・講演会の実績一覧、乙6は、2022年に商標権者が提供した人事制度に関する研修・講演会の実績一覧である。そして、研修・講演会が実際に実施されたことを示す証拠として、乙7ないし乙9が、研修・講演会で使用された研修資料の例である。なお、乙5及び乙7ないし乙9において、具体的な企業名等の記載については黒塗りとしている。
研修資料について具体的に説明すると、乙7は、令和4年(2022年)6月29日に開催された人事制度導入の講習会のテキストであり、乙6の一覧中、乙6第2頁記載の実施日「2022年06月」、対象「社会保険労務士」、研修内容「講演/なぜ人事制度を導入するのか・賃金とは何か・JOB型人事制度・高齢化社会への対応」、業種「事務組合」の購習会で使用されたテキストである。
乙8は、2022年7月22日に開催されたレベルアップ研修のテキストであり、乙6の一覧中、乙6第2頁記載の実施日「2022年07月」、対象「管理職」、研修内容「レベルアップ研修/職場のコミュニケーションと目的・・(中略)・・自己開示する」、業種「医療・介護」の研修で使用されたテキストである。
乙9は、2022年10月26日に開催された人事・労務基礎研修のテキストであり、乙6の一覧中、乙6第1頁記載の実施日「2022年10月」、対象「営業職」、研修内容「人事・労務基礎研修(6)/労務管理からの視点・人事と労務の融合・会社の関心事・ハラスメント」、業種「金融・保険」の研修で使用されたテキストである。
そして、乙7の第12頁、乙8の最終頁(30枚目)、乙9の第18頁のそれぞれにおいて、「ヒューマンリソース」の文字が標準の書体で使用されている。
(5)乙10は、商標権者の代表取締役及び従業員の名刺の写しである。これらの名刺の裏には「ヒューマンリソース」の文字が標準の書体で使用記載されている。そして、乙11は、乙10の名刺の請求書(令和4年7月29日付け)であり、これらの名刺の購入時期が令和4年(2022年)7月であることを示している。
なお、乙10で使用されている「ヒューマンリソース」の文字は緑色であるが、商標法第50条の「登録商標」には、その登録商標に類似する商標であって、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含むとされている(商標法第70条第1項)。
(6)上記乙各号証で示すように、商標権者は、本件審判請求の登録前3年以内である2020年1月6日ないし2023年1月5日の期間において、本件商標と社会通念上同一の「ヒューマンリソース」の文字を、商標権者のホームページ、各種研修・講演会テキスト及び名刺に使用しており、この使用は商標権者の提供する人事制度の策定の指導・助言、人事運用・調査・診断サービスについての使用であり、指定役務中、第35類「経営の診断及び指導」の範囲内の使用である。
2 回答書における主張
(1)被請求人は、新たな証拠として乙12ないし乙14の6を提出するとともに、答弁書において提出した証拠及び新たな証拠における本件商標の使用が、商標法第2条第3項各号のいずれに該当するかについて主張する。
(2)乙1ないし乙3の2
これらは、指定役務中第35類「経営の診断及び指導」の範囲内である、人事制度の策定を含むコンサルティングサービス、人事運用・調査・診断を含むサポーティングサービスを提供していることを示す、商標権者のホームページである。当該ホームページにおいて、本件商標と社会通念上同一の商標「ヒューマンリソース」が、商標権者の上記サービスの出所識別標識として使用されており、この使用は、商標法第2条第3項第8号の「役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
(3)乙4
乙4では、商標権者が人事コンサルティングサービスを提供していることが記載されており、事業内容説明資料において、商標「ヒューマンリソース」が商標権者の上記サービスの出所識別標識として使用されている。この使用は、商標法第2条第3項第8号の「役務に関する広告、若しくは取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当する。
(4)乙5ないし乙9
乙5、乙6は、商標権者が提供した人事制度に関する研修・講演会の実績一覧である。
乙7ないし乙9は、商標権者が提供した人事制度に関する研修・講演会で実際に使用された研修・講演会資料であり、これらの資料には、商標「ヒューマンリソース」が付されており、指定役務の第35類「経営の診断及び指導」の範囲内である、人事制度の策定を含むコンサルティングサービスに対して商標権者の出所識別標識として使用されていることが示されている。この使用は、商標法第2条第3項第3号の「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する行為」に該当する。
さらに、乙5及び乙6は、商標権者が提供した人事制度に関する研修。講演会の実績一覧であり、乙7ないし乙9の資料を使用して実際に研修・講演会が実施されたことが示されている。このように、乙5及び乙6と併せると、乙7ないし乙9における商標の使用は、商標法第2条第3項第4項の「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」に該当する。
(5)乙10及び乙11
乙10は、商標権者の代表取締役及び従業員の名刺の写しである。これらの名刺の裏には商標「ヒューマンリソース」が記されている。乙11は、要証期間内の乙10の名刺の請求書であり、これらの名刺の購入時期が要証期間内であることを示している。
この乙10における商標の使用については、新たな証拠として提出する乙12の1ないし乙14の6と併せて詳述する。
(6)商標権者の営業方法について
商標権者は、もとより大企業ではなく、大量の宣伝や、大量の広告資料等の印刷物をばらまくような営業活動を行っていない。商標権者の営業スタイルとして、取引希望の企業をターゲットとして選定(例えば、紹介者による紹介によって選定)し、ターゲットに選定した企業に個別に訪問して、営業活動を行っている。
そして、訪問の際には、名刺(乙10)とともに、クリアファイル(乙12の1)に入れた会社案内及びパンフレット(乙12の2)を提供している。商標権者は、要証期間においても、取引を得るために、上記の営業スタイルで複数の企業を訪問し、名刺とともに会社案内及びパンフレットを提供してサービスの説明を行っている。
(7)乙12の1及び2
乙12の1のクリアファイルは、乙12の2の営業用会社案内及びパンフレットを営業先の企業に頒布するときに、これらを収納するために使用されるものであり、会社案内及びパンフレットとともに頒布されている。
乙12の2は、商標権者の会社案内、及び商標権者のサービスとしての人事制度導入。運用のコンサルティング、及び企業経営のコンサルティングに関する説明が記載されたパンフレットである。このパンフレットの1頁目には、「私達、日本人事総研は、これまでに大小さまざまな企業の人事制度導入・運用のコンサルティングを実践してまいりました。それを通じて、社員の皆様にやる気をもって仕事に挑戦できる仕組みを提案し、企業の生産性や利益向上に結びつくことを実証してきました。」との記載がある。この記載から、商標権者が、指定役務である第35類「経営の診断及び指導」をサービスとして継続的に提供していることは明らかである。そして、営業の際には、本件商標と社会通念上同一の商標「ヒューマンリソース」が記されている名刺(乙10)とともに、このパンフレットが営業先の企業に頒布されている。このように、商標権者の「経営の診断及び指導」にかかるサービスの内容が示されているパンフレットとともに商標「ヒューマンリソース」が記されている名刺が用いられており、このような営業活動により、商標「ヒューマンリソース」は、取引者たる営業先の企業に対し、商標権者の「経営の診断及び指導」にかかるサービスの出所識別標識として使用されている。この使用は、商標法第2条第3項第8号の「役務に関する広告、若しくは取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当する。
(8)乙13及び乙14の1ないし6
乙13は、要証期間内に、商標権者が実際に営業を行った企業(一例)のリストである。
乙14の1ないし6は、乙13のリスト掲載企業の担当者から得た確認書である。この確認書は、商標権者が、乙13に記載された企業に対し、要証期間内に、上記(5)及び(6)で説明した営業方法及び営業資料によって、実際に営業を行ったことを裏付ける、商標権者以外の第三者からの証言を示す客観的証拠である。
(9)上記のとおり、乙10と新たに提出する乙12ないし乙14の6から、商標権者が、要証期間内に、日本国内において、指定役務中、第35類「経営の診断及び指導」について、本件商標と社会通念上同一の商標「ヒューマンリソース」を、商標法第2条第3項第8号の「役務に関する広告、若しくは取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当するものとして使用していることは明らかである。
第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
(1)乙1は、商標権者のホームページ(以下「本件ホームページ」という。)の2021年6月16日付けアーカイブの出力物であるところ、「サービスご紹介」の項に、別掲のとおり、「ヒューマンリソースの日本人事総研」の見出しの下、「人事についてお悩みの企業様はもちろん その他ご意見・ご質問など お気軽にお問い合わせください」という広告文が表示されており、当該見出しは「ヒューマンリソース」の文字(以下「本件使用商標」という。)を含むものとなっている。
(2)乙2は、本件ホームページの2022年7月1日付けアーカイブの出力物であるところ、「日本人事総研について」の見出しの下、「代表挨拶」として、「弊社は、人事部(課)のない企業を中小企業と位置づけ、人事制度の策定・整備・導入・運用・浸透を支援致します。(中略)人事制度を目的ではなく、企業の成長・発展、人材の育成・定着の手段と捉えることをモットーにしています。」の記載がある。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標について
本件商標は、上記第1のとおり「HUMAN RESOURCE」の文字及び「ヒューマンリソース」の文字を二段に横書きしてなり、下段の「ヒューマンリソース」の片仮名は、上段の「HUMAN RESOURCE」の欧文字の読みを表したものといえる。そして、「HUMAN(ヒューマン)」の文字は「人間的」(広辞苑第七版 株式会社岩波書店)の意味を、「RESOURCE(リソース)」の文字は「資産。資源。」(前掲書)の意味を有する語であって、これらをそれぞれ結合した上段の欧文字と下段の片仮名の観念が異なるものではないから、本件商標は、二段併記の構成からなるものであって、かつ、上段と下段の文字の観念が相違するものではない。
そして、本件使用商標は、別掲のとおり、「ヒューマンリソース」の文字を横書きしてなるところ、これは、本件商標の構成中の下段の使用に該当するといえるから、本件商標と社会通念上同一の商標の使用とみるのが相当である。
(2)使用者及び使用時期について
上記1(1)のとおり、商標権者は、2021年6月16日に存在していた商標権者のウェブサイトに、本件商標と社会通念上同一である本件使用商標を使用していたことが推認できるから、商標の使用者は、商標権者である。
そして、上記2021年6月16日は、要証期間である。
(3)使用役務及び使用行為について
上記1(2)の本件ホームページにおける「代表挨拶」の記載によれば、商標権者は、顧客である中小企業の成長発展等を目的として、人事制度の策定や導入、運用等を行っていることがうかがえる。
そうすると、商標権者は、企業の成長発展を目的とした、人事面での経営の診断及び指導の役務(以下「使用役務」という。)を行っているとみて差し支えないものであり、これは、本件商標の指定役務中、第35類「経営の診断及び指導」の範ちゅうの役務といえる。
そして、上記1(1)の本件ホームページにおける本件使用商標を表示した見出し及び広告文は、その記載内容より、使用役務に関する広告ということができるから、商標権者は、自社のホームページに、本件使用商標を付して、使用役務についての広告を掲載し、電磁的方法により提供する行為を行ったと認められる。
(4)小括
上記(1)ないし(3)からすれば、商標権者は、要証期間に、日本国内において、本件商標の指定役務に関する広告を内容とする情報に、本件商標と社会通念上同一の商標を付して電磁的方法により提供したと認められ、これは商標法第2条第3項第8号に該当する商標の使用といえる。
また、当該公開は日本国内で行われていること明らかである。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に、日本国内において、商標権者が、本件商標と社会通念上同一の商標を、本件商標の指定役務について使用していたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
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