商標取消審判
2022-300716
メディグランデ
- 審判番号
- 2022-300716
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2015-097255
- 登録番号
- 5829508
- 請求日
- 2022年08月04日
- 審決日
- 2024年05月14日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 アースパワーセレクション
- 【請求人代理人】加藤 光宏
- 【請求人代理人】永原 彩子
- 【被請求人】株式会社 トゥール・モンド
- 【被請求人代理人】▲高▼橋 譲二
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 大島 康浩
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T132 .1 -Y (W44)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第6号、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条、商標法第2条、商標法第50条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5829508号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5829508号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成27年10月8日に登録出願、第44類「美容,理容,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり,医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,医療用機械器具の貸与,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与」のほか、第35類及び第42類に属する別掲2のとおりの役務を指定役務として、同28年2月26日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和4年8月19日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和元年(2019年)8月19日から同4年(2022年)8月18日までを、以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定役務中、第44類「美容,理容,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり,医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,医療用機械器具の貸与,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与」(以下「請求に係る指定役務」という。)についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び令和4年11月29日付け審判事件弁駁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、審判請求書において甲第1号証を、審判事件弁駁書において甲第1号証及び甲第2号証を提出した(以下、審判事件弁駁書において提出された甲第1号証及び甲第2号証を、それぞれ甲第2号証及び甲第3号証と読み替える。また、甲第○号証を「甲○」、乙第○号証を「乙○」のように表記する。)。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、請求に係る指定役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)権利者
被請求人は、株式会社メディグランデ(以下「メディグランデ」という。)から本件商標の権利を譲渡されたのは2021年1月8日であると主張するが、これは事実に反する。
まず、登録原簿によれば、本商標権の譲渡は、被請求人が主張する譲渡日より以前の2020年11月30日である(甲2)。
しかも、メディグランデは、被請求人が主張する譲渡日より約2年も前の2019年2月27日に破産により消滅している(甲3)。
これらの事実から、被請求人の主張は客観的事実に反している。
(2)乙号証の認否
ア 乙1について
被請求人は、乙1として被請求人代表者が作成するamebaブログを提示し、当該ブログの記載日が2021年11月1日であると主張している。
しかし、同日にこの記事が作成され、投稿されたことを示す証拠は何も提示されていない。日付をうかがわせるのは、乙1の中央付近にある「2021年11月01日(月)」との記載だけである。
仮に、被請求人代表者が、「2021年11月01日(月)」に何らかのブログ記事を投稿したことが事実であるとしても、乙1が同日に作成され、投稿された記事であることの立証は何らなされていない。ブログの記事は、事後的に修正することもできるから、かかる立証がなされていない以上、乙1が「2021年11月01日(月)」に作成、投稿された内容であるとはいえない。
イ 乙2について
被請求人は、乙2として被請求人が経営するメディグランデ池下店のチラシを提示し、2021年10月頃に作成・頒布したと主張している。
しかし、同チラシには「特別割引期間2021/11/1(月)~2021/11/30(火)」という記載があるだけで、同チラシを印刷又は発注した日付の証拠は何ら提示されていない。さらに、同チラシを頒布したという証拠も一切ない。
乙2の内容のチラシは、事後的に作成することも可能であるから、乙2から、2021年10月頃に作成・頒布されたとはいえない。
ウ 乙3について
被請求人は、乙3として乙2のチラシに押印されているゴム印の領収書なるものを提示している。
しかし、該領収書の但し書きには「ゴム印」と記載があるだけで、これが、乙2のチラシに押印されているゴム印を意味するものであることについては何ら立証されていない。
そもそも、本件商標権の移転は2020年11月30日であるのに(甲1)、乙3の日付はそれよりも前の2020年7月31日となっているのである。乙3が、乙2のチラシに押印されたゴム印に対するものであるとするならば、まだ譲渡を受けてもいない商標についてゴム印を作成したことになり、不自然極まりない。
以上より、乙3が、乙2のチラシに押印されているゴム印の領収書であると認めることはできない。
エ 乙4ないし乙6について
被請求人は、被請求人が経営する美容セラピー店の証拠として、乙4として被請求人が運営するメディグランデ池下店の入るビル外観、乙5として同店舗の郵便受、乙6として同店舗の案内表示なるものの写真を提示しており、被請求人はいずれも2022年9月に撮影されたものであると主張する。
しかし、乙4ないし乙6には、撮影日は何も表示されておらず、その他にも撮影日を示す証拠は何ら提出されていない。
さらに、最も重要だと思われる店舗自体の写真がなく、同店舗の営業実態は不明である。乙4ないし乙6の写真は、被請求人によれば、「予告登録日よりも後に撮影された」とのことであるから、本審判において証拠として用いる目的で撮影されたもののはずである。それなのに、店舗自体の写真を撮影、提出していないのは、どう考えても不自然という他ない。
しかも、乙6の写真は、ビルに入居する店舗の案内板を写したものと思われるが、経験則上、とても美容サロンの案内板であると首肯できるものではない。
以上より、乙4ないし乙6の写真が2022年9月に撮影され、メディグランデ池下店が美容セラピーを営んでいるとはいえない。
オ 乙7、乙8について
被請求人は、遅くとも2021年1月からEビルの物件を店舗として営業目的で賃借していた証拠として、乙7、乙8の請求書を提出している。
しかし、乙7には、品目欄に、店舗ではなく、「倉庫」と明確に記載してある。乙8には、品目に相当する記載がないが、4ヶ月分の賃料が、乙7に記載された金額と一致していることから、品目には変更がないものと考えられる。すなわち、被請求人は、Eビルという物件を倉庫として賃借していたにすぎないことが明らかである。このことは、先に示した乙4ないし乙6において店舗自体の写真が含まれていないこととも符合する。
以上より、被請求人が、2021年1月からEビルの物件を店舗として営業目的で賃借していたとはいえない。
(3)商標の同一性
商標権の取消を免れるためには、被請求人が、要証期間内に登録商標を使用していることを立証することを要するが(商標法50条2項)、ここでいう登録商標の使用とは、登録商標といわゆる社会通念上同一の商標を意味するものと解されている。そして、社会通念上同一の商標とは、図形については、外観において同視されることをいうものと解されている。
本件商標は、植物の蔦のようなもので十字を形取った図形と、当該図形の下に「MEDIGRANDE」の文字が配置されたものである。図形と文字は、明確に上下に分離して表示されているため、真っ先に目に入ってくるのは中央に位置する図形であり、図形が商標のメインである印象を強く受ける。
これに対して、被請求人が乙1、乙2、乙5及び乙6に示した商標は、いずれも植物の蔦のようなもので十字が表現され、その十字の中央が上下に2分割された間に「MEDIGRANDE」なる文字が配置されている。つまり、十字と文字が一体化しており、中央に文字が大きく表示されているため文字部分が強く印象に残る。
以上の事情を考慮すれば、被請求人使用商標は、本件商標とは外観において同視できるということはできないから、社会通念上同一の商標とはいえない。
したがって、被請求人は、本件商標を使用しているとはいえない。
(4)商標の使用態様
仮に、本件商標と被請求人による使用商標(乙1、乙2、乙5及び乙6)(以下「被請求人商標」という。)が社会通念上同一であるとした場合でも、被請求人の行為は商標法上の使用には該当しない。
ア 被請求人は、被請求人商標を被請求人代表者が作成するamebaブログ(乙1)内で使用し、当該行為が商標法2条3項8号で規定する役務に関する広告を内容とする情報に本件標章を付して、電磁的方法により提供する行為であると主張する。
広告とは、一般に営業主体が、自社の営業を宣伝するために行うものであり、営業主体以外の者が行うのは、単なる紹介であって、広告とは呼ばないと思われる。また、商標法が、広告を商標の使用として認めているのは、「商標を広告において用いることは、商標に営業上の信用を化体させ、また他人によって用いられる場合に商標に化体した営業上の信用を害することがあるため」と解されている(新・注解商標法(上巻)119頁参照)。この趣旨からすれば、広告的使用の主体は、営業主体であると解されるべきである。
被請求人は、美容セラピーを経営しているのは被請求人であると主張しているから、広告としての使用は被請求人が広告主となっているものでなくてはならないと解される。
しかし、乙1は、タイトルから分かるとおり、被請求人ではなく、代表者個人で運営しているブログであるにすぎない。また、その内容も被請求人代表者自身についてのものであり、被請求人が経営する美容セラピーについてのブログとは全く無関係である。したがって、乙1は、その内容に関わらず、被請求人が行う広告であるとはいえない。
乙1のブログには、「エナジーセラピー専門店」「MEDIGRANDSPA」「次世代マッサージ」という記載があるが、この記載が指定役務「マッサージ」に関する内容であるとしても、当該記載はあくまで被請求人代表者の個人的な紹介であり、商標権者である株式会社トゥール・モンドとしての紹介ではない。したがって、乙1の下部に被請求人商標が表示されているとしても、これが被請求人の指定役務について自他商品役務識別機能を発揮するものとして機能しているとはいえない。
よって、乙1における被請求人商標の表示が広告的使用に該当するとはいえない。
イ 被請求人は、被請求人が経営する美容セラピー店であるメディグランデ池下店のチラシ(乙2)に被請求人商標を付し、顧客等に頒布した行為が商標法2条3項8号で規定する役務に関する広告に本件標章を付して頒布する行為であると主張する。
この点について、被請求人が美容セラピー店を経営しているとはいえないこと、チラシを作成、頒布したとはいえないことは既に主張したとおりである。加えて、以下、乙2の内容は、広告的使用にも該当しないことを主張する。
乙2のチラシには、「肩こり・腰痛」、「頭痛」、「免疫カアップ」などが列挙されているが、最後に「運動後の身体のメンテナンスに」と書かれていることを考えると、これらの記載は、全て効用を表しているにすぎず、役務自体を表すものと理解するのは困難である。チラシ上部の「ハイパーエナジーセラピー」、「新感覚トリートメント」なる言葉が唯一、被請求人が提供するサービスを表す記載にも思えるが、それでもこれらの記載が、本件商標権に係る指定役務のいずれを指すのか特定することは難しい。つまり、乙2は、その内容から見て、消費者が、本件商標権に係るいずれの指定役務に係る広告であるかを認識することはできないものと思われる。
以上より、乙2は、本件商標の広告的使用がなされているとはいえない。
ウ 被請求人は、被請求人が経営するメディグランデ池下店の郵便受け(乙5)及び店舗案内(乙6)に被請求人商標を付した行為が、商標法第2条第3項第6号で規定する役務の提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為であると主張する。
上記「役務の提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為」とは、役務の提供を受ける者側の物に標章を付す場合を指すはずである。本件でいうならば、メディグランデ池下店に役務を受けにきた消費者の所有物に標章を付す行為が該当することになる。
しかし、メディグランデ池下店の郵便受け又は店舗案内が、役務の提供を受ける者の所有物でないことは明らかである。
したがって、被請求人商標をメディグランデ池下店の郵便受け又は店舗案内に付す行為は商標法第2条第3項第6号でいう「役務の提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為」には該当しない。
また、被請求人は遅くとも2021年1月よりPビル(旧「Eビル」)を営業目的で賃借したと主張するが、上述したように、店舗自体の外観写真は一切提示されておらず被請求人が美容セラピー店の営業を実際にしているかは甚だ不明である。それどころか、乙7には「Eビル3階倉庫時使用料金1月、2月、3月、4月分」との記載があり、被請求人は同ビルを倉庫として賃借していた可能性が高い。
したがって、仮に被請求人の主張が、いわゆる広告的使用という趣旨であったとしても、店舗を経営していないのであれば、その郵便受け(乙5)及び店舗案内(乙6)は広告と解する余地はないから、広告的使用にも該当しない。
エ 上述のとおり、いずれの使用態様においても商標法上の使用には該当しない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を令和4年10月9日付け審判事件答弁書、及び同5年9月22日付け審尋に対する同年10月22日付け審判事件意見書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙8を提出した。
1 審判事件答弁書における主張
(1)権利者
本件商標の現在の権利者(被請求人)は、本商標の権利をメディグランデから2021年1月8日に譲渡を受けた。
(2)権利者による本件商標使用
ア 被請求人は、被請求人が経営するEビルの美容セラピー店(名称「メデイグランデ池下店」、乙4~乙6)での役務の広告活動の一環として、被請求人代表者が作成する2021年11月1日(水)付のamebaブログ(乙1 https://ameblo.jp/yuna7400/entry-12765772958.html)で同店舗及びセラピーを紹介した。そのブログ中に本件商標が使用されている。
したがって、権利者である被請求人が2021年11月1日に、日本国内において本件商標の指定商品・役務中第44類「美容,理容,あん摩,マッサージ」の役務に関する広告を内容とする情報に本商標の標章を付して電磁的方法(ブログ)により提供したことになる(商標法第2条第3項第8号)。
イ 被請求人は、被請求人が経営するEビルの美容セラピー店(名称「メディグランデ池下店」、乙4~乙6)でのトリートメント役務の広告活動として、2021年10月頃に作成したチラシ(乙2)を名古屋市及びその近辺で顧客等に頒布して同店舗及びトリートメント役務を紹介した。そのチラシ中に本件商標が使用されている。なお、本件商標はチラシにゴム印で押されているが、そのゴム印の領収書が乙3の左側の領収書である。
したがって、権利者である被請求人が2021年10月頃、日本国内において本件商標の指定商品・役務中第44類「美容,理容,あん摩,マッサージ」の役務に関する広告に本商標の標章を付して頒布したことになる(商標法第2条第3項第8号)。
ウ 被請求人は、被請求人が経営する(名称「メディグランデ池下店」、乙4~乙6)でのトリートメント、セラピー等の役務の提供にあたり、遅くとも2021年1月以降、同店舗の郵便受(乙5)及び店舗案内(乙6)に本件商標を付した。
したがって、権利者である被請求人が遅くとも2021年1月以降、日本国内において、本件商標の指定商品・役務中「美容、理容、あん摩、マッサージ」の役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物(郵便受、店舗の案内表示)に本件商標の標章を付したことになる(商標法第2条第3項第6号)。
エ 上記店舗(メディグランデ池下店)での本商標使用の各証拠について補足説明する。乙4ないし乙6の写真は予告登録日である2022年8月19日より後の2022年9月に撮影されたものであるが、乙7及び乙8のビル賃料請求書から分かるとおり、被請求人は遅くとも2021年1月より同店舗を営業目的で賃借しており、したがってビル賃借当初から乙5及び乙6に見られる本件商標を同店舗で使用していたことが容易に推測できる。
また、乙6の写真にはビル名が「Eビル」ではなく「Pビル」の表示が見られるが、これはつい最近同ビルの管理会社が代わったことによりビル名が変わったにすぎず、このビルに被請求人店舗があることに変わりはない(住居表示も同じである)。
オ 以上のとおり、少なくとも予告登録日である2022年8月19日より以前の3年間のうちに権利者が本件商標を使用していたことは明白である。
2 審判事件意見書における主張
(1)「権利者」について
請求人の主張は「被請求人が権利者でない」という趣旨であろうか。そうであれば被請求人が権利者として登録されている事実を否定することになるがその理由が一切示されておらず、主張自体失当である。
また特許庁における特定承継により登録された日とは別に、当事者間で確定的に譲渡の合意がなされた日にちが異なりうることは当然であるから「客観的事実と異なる」旨の主張も意味がない。
(2)「乙号証の認否」について
ア 乙1について
請求人は、「2021年11月1日に投稿された証拠がない」旨主張するが、被請求人代表者は2021年11月1日付amebaブログ(https://ameblo.jp/yuna7400/entry-12765772958.html)で同店舗及びセラピーを紹介した。このURLを偽造することなど不可能であるし、真実、上記日にちにブログが投稿されたことは疑問の余地がない。そしてこのブログ中に本商標が使用されている以上、請求人主張は理由がない。
また請求人は「事後的に修正することができる」と偽造・変造の可能性を指摘するが証拠の偽造・変造を主張するのであればその反証責任は請求人が負う。
イ 乙2について
特別割引期間が記されている以上、その頃印刷され、発注され頒布されたとみるのが自然であるし、「事後的に作成した」との主張は、証拠の偽造・変造を主張するのであればその反証責任は請求人が負う。
ウ 乙3について
乙3は乙2の証拠価値を補助的に高める間接証拠である。乙2は乙3と相まってその証拠価値が高まっている。
被請求人は本件商標権の特定承継と譲渡を前提としてゴム印を発注するなど準備していたものである。
エ 乙4ないし乙6について
乙4ないし乙6の写真は予告登録日である2022年8月19日より後の2022年9月に撮影されたものであることを被請求人は認めている。
ただ、乙7及び乙8のビル賃料請求書から分かるとおり、被請求人は遅くとも2021年1月より同店舗を営業目的で賃借しており、したがってビル賃借当初から乙5及び乙6に見られる本商標を同店舗で使用していたことが容易に推測できる。
請求人は「店舗自体の写真がなく、営業実態がない」などと趣旨不明の主張に及ぶが、本件争点は、「美容、理容、あん摩、マッサージ」の役務の提供に当たって本商標の標章を付したか否かであって、どのような営業実態があったかが問題となっているわけではない。
オ 乙7、乙8について
乙7に「倉庫」とあるのは被請求人が賃借する以前は「倉庫」として使用されていたため、賃貸人が賃貸物件を特定する名称として請求書に「倉庫」と記したにすぎない。つまりあくまで物件を特定するために「倉庫」と記載したにすぎず、被請求人の賃借目的とは無関係である。
しかも、その後作成された乙8には「倉庫」の記載がない。これは賃貸人も「営業店舗」として使用されることを認識していた証左にほかならない。
請求人は「金額が変わっていないから倉庫のままである」旨主張するが、そもそも倉庫目的で賃貸したものでないことは上述のとおりである上、一定区画を賃貸する以上、使用目的が仮に変わっても賃料が一定であることは何ら不自然でない。
(3)「商標の同一性」について
請求人は商標の同一性がない旨主張するが、被請求人使用の標章が本件商標と異なる点は「MEDIGRANDE」なる文字の位置だけであるところ、全体的に観察して、文字が全く同一であること、特徴的な蔦のようなデザインが全く同じであること、文字と蔦のデザインの大きさ・比率が本件商標と使用標章とはほぼ同じであることなどから同一性に疑問の余地はない。
(4)「商標の使用態様」について
ア 乙1について
請求人は乙1につき、広告主体が異なる旨主張するがこれも失当である。
ブログを一見すれば分かるとおり、被請求人代表者は被請求人の営業と無関係な事実に関して個人的な投稿をしたものでは断じてない。
被請求人代表者は被請求人の営業についてその代表者としてブログに投稿したものであり、被請求人が主体となって広告したことは明白である。
イ 乙2について
請求人は乙2について「役務自体を現すものでない」旨主張するが、「肩こり・腰痛」「頭痛」「免疫カアップ」「運動後の身体のメンテナンス」「ハイパーエナジーセラピ一」「新感覚トリートメント」といった記載は、美容・理容効果を目的としたあん摩・マッサージを示すものであり、被請求人が提供する「美容,理容,あん摩,マッサージ」の役務に関する広告であることは明白である。
ウ 乙5、乙6について
請求人は乙5、乙6について「役務の提供を受ける者の物」自体に商標を付する行為に限定すべきである旨主張するが、物ではなくあくまで役務を提供以上、かかる物に限定して解釈すべきでなく役務の提供側の物も含むと解すべきである。
なお、仮に商標法第2条第3項第6号に該当しなくとも、郵便受や店舗案内に付する行為は役務の「提供を受ける者の利用に供する物」(同法第2条第3項第4号)に標章を付する行為、あるいは「役務の提供の用に供する物」(同法第2条第3項第5号)に標章を付する行為、あるいは「役務に関する広告等」(同法第2条第3項第8号)に標章を付する行為のいずれかに該当するので、商標の使用にあたる。
第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(1)乙1は、被請求人が経営する名古屋市の美容セラピー店における役務の広告活動の一環として、被請求人代表者が作成するブログとするもの(全2葉、以下「本件ブログ記事」という。)であるところ、1葉目の「プロフィール」の見出しの下、被請求人である本件商標権者の代表者名と同一の「H」の氏名の記載がある。
(2)乙1の1葉目において、「エナジーMEDIGRAND」との見出しの下、「2021年11月01日(月)」「エナジーセラピー専門店 MEDIGRAND SPAです」「深部まで深く届くまったく新しい次世代マッサージです。」「お問合せ後のご来店をお願い致します。」の記載がある。
(3)乙1の2葉目に、別掲3のとおりの商標(以下「使用商標」という。)が表示され、その下に、名古屋市の住所が記載されている。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用者について
上記1(1)及び(3)のとおり、Hは、使用商標を表示した本件ブログ記事を投稿していることから、使用商標の使用者は、Hであるといえる。
そして、上記1(1)のとおり、Hは、本件商標権者の代表者であることから、本件商標の使用について黙示の許諾を受けた者と推認できる。
よって、使用商標の使用者であるHは、本件商標の通常使用権者と認められる。
(2)使用商標について
本件商標は、別掲1のとおり、植物を模したとおぼしき十字形の図形及び「MEDIGRANDE」の文字を、いずれも赤色で二段に表してなる。他方、使用商標は、別掲3のとおり、植物を模したとおぼしき十字形の図形と、その中央に「MEDIGRANDE」の文字を、いずれも黄色で表してなる。
本件商標と使用商標を比較するに、本件商標の構成中の図形部分と、使用商標の構成中の図形部分とは、ほぼ同一視できる図形といえるものであり、また、両者の構成中の「MEDIGRANDE」の文字部分は、書体をほぼ同一にし、つづりを共通にする。
そして、両者は色彩及び「MEDIGRANDE」の文字の配置において相違するが、上記のとおり、その他の構成態様をほぼ共通にするものであって、これらの相違点が、両商標の共通性に実質的な影響を及ぼすものとはいえない。
以上のことから、本件商標と使用商標とは、社会通念上同一の商標と認め得るものである。
(3)使用時期について
上記1(1)によれば、本件ブログ記事は、2021年11月1日に投稿されたものとみるのが相当であり、当該日付は要証期間内である。
なお、請求人は、ブログの日付は後から改ざんが可能であるとして、本件ブログ記事が上記日付において掲載されたものといえない旨主張するが、上記事実を疑うべき具体的な証拠は提出されていないから、請求人のこの主張は採用できない。
(4)使用役務について
上記1(1)及び(2)によれば、本件商標の通常使用権者であるHは、名古屋市に所在する自らの店舗においてマッサージの役務(以下「使用役務」という。)を提供しているものと推認され、当該役務は、請求に係る指定役務中、第44類「あん摩・マッサージ及び指圧」に含まれるものである。
(5)使用行為について
上記1(2)によれば、使用商標を表示した本件ブログ記事は、本件商標の通常使用権者による使用役務の提供に関する広告を内容とするものといえる。
そうすると、本件商標の通常使用権者であるHは、要証期間内に、請求に係る指定役務の範ちゅうに属する使用役務に関する広告を内容とする情報に、使用商標を付したものを電磁的方法により提供する行為を行ったものであり、この行為は、商標法第2条第3項第8号に該当する。
また、本件ブログ記事は日本語により日本国内において作成されたものであって、その提供先は日本国内であることが明らかである。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に、日本国内において、本件商標の通常使用権者が、その請求に係る指定役務について、本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)を使用していたことを証明したといえる。
したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定役務について、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-300716