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特許拒絶査定不服審判

2022-021347

材料感知光画像化、検出、及び測距(LIDAR)システム

審判番号
2022-021347
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-520591外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年12月28日
審決日
2024年03月18日
公報発行日
2024年08月30日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G01N) / P18 .575-Z (G01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-520591「材料感知光画像化、検出、及び測距(LIDAR)システム」拒絶査定不服審判事件〔令和元年7月18日国際公開、WO2019/139656、令和2年12月17日国内公表、特表2020-537146〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1.手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)10月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成29年10月13日(以下「優先日」という。) 米国)を国際出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 ・令和3年12月28日付け:拒絶理由通知 ・令和4年 4月 7日 :意見書・手続補正書の提出 ・ 同年 4月28日付け:拒絶理由通知(最初) ・ 同年 8月12日 :意見書・手続補正書(これによる手続補正を以下「審査時補正」という。)の提出 ・ 同年 8月26日付け:拒絶査定 ・ 同年12月28日 :審判請求書・手続補正書(これによる手続補正を以下「本件補正」という。)の提出 ・令和5年 2月24日 :審判請求書についての手続補正書(以下「審判請求書補正書」という。)の提出 ・ 同年 6月26日 :上申書の提出 第2.本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)審査時補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである(各構成単位冒頭の「pA」などは当審で付した分説番号であり、後記において、前記各構成単位について前記分説番号を用い「構成pA」などということがある。以下、他の発明についても同様。)。 「【請求項1】 pA 光パルスを生成するように構成されたレーザーと、 pB 物体に向けて放出される偏光調整された光パルスを生成するために、前記光パルスの偏光を調整するように構成されたビーム操縦部と、 pC 前記物体から戻される反射、散乱、又は放出された光を偏光するように構成された少なくとも1つの偏光子と、 pD 前記物体からの偏光された反射、散乱、又は放出された光の強度及び偏光に基づいて、前記物体の少なくとも1つの材料を検出するように構成されたプロセッサとを備える pE システム。」 (2)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。 「【請求項1】 A 光パルスを生成するように構成されたレーザーと、 B1 偏光調整された光パルスを生成するために、前記光パルスの偏光を調整し、且つ B2 前記偏光調整された光パルスが物体に向けて放出されるように、前記偏光調整された光パルスの方向を操縦して制御するように構成されたビーム操縦部と、 C 前記物体から戻される反射、散乱、又は放出された光を偏光するように構成された少なくとも1つの偏光子と、 D 前記物体からの偏光された反射、散乱、又は放出された光の強度及び偏光に基づいて、前記物体の少なくとも1つの材料を検出するように構成されたプロセッサとを備える E システム。」 2 補正の適否について 2-1 補正の目的について 本件補正は、該補正前の請求項1に記載した発明特定事項である、「物体に向けて放出される偏光調整された光パルスを生成する」ための、すなわち「偏光調整された光パルスを生成」し、「前記偏光調整された光パルスが物体に向けて放出されるように」するための「ビーム操縦部」を、「偏光調整された光パルスの方向を操縦して制御」するとの機能を持つものに限定する補正を含むものである。 また、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)との産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正発明が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について下記2-2においてさらに検討する。 2-2 独立特許要件について (1)本件補正発明について 本件補正発明の構成は、分説を含め上記1(2)に記載したとおりである。 (2)引用文献に記載された事項 各引用文献に記載された事項は次の各項のとおり。 ア 引用文献2に記載された事項 (ア)引用文献2の記載事項 本件出願の拒絶査定において進歩性欠如に係る理由2の主引用例として引用された文献であって、優先日前に頒布され公知となった引用文献2(特開平8-136455号公報)には次の記載がある(中略は「・・・」で示す。)。 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、製鉄所や焼却処理設備等の発煙・発塵のおそれのある工場の近辺において、発煙・発塵の程度とその発生箇所の自動監視を行うことを目的としたレーザレーダによる大気の汚染監視方法とその監視装置に関する。 ・・・ 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかし、上記レーザレーダによる観測方法で工場内の大気を監視する場合、従来では、単に後方散乱光の強度のみから発煙や発塵の程度を計測するようにしていたので、その発煙又は発塵と水蒸気との識別ができず、このため、本来的に無害である水蒸気を有害な発塵と誤認することがある。 ・・・ 【0008】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく、本発明は次の技術的手段を講じた。すなわち、本発明方法は、予め定められた監視対象域にパルス状のレーザ光を照射し、その監視対象域からの反射光を受光して、その反射光の強度と照射から受光までの時間とから、それぞれ粉塵濃度とその存在地点を計測するようにしたレーザレーダによる大気の汚染監視方法において、前記レーザ光としてある一つの方向に偏光したレーザ光を用いるとともに、監視対象域からの反射光を互いに異なる二つの方向における偏光成分に分離し、この分離した偏光成分の強度の比率により大気中の水蒸気と粉塵や発煙との識別を行うことを特徴とする(請求項1)。 ・・・ 【0011】 【作用】本願発明者らは、その計測経験及び種々の実験結果から、監視対象域の微粒子が煙の場合と水蒸気の場合とで、互いに異なる二つの方向における反射光(後方散乱光)の偏光成分に相当な差が生じることを見出した。本発明は、かかる見地に基づいて成されたもので、監視対象域からの反射光を互いに異なる二つの方向における偏光成分に分離し、この分離した偏光成分の強度の比率により大気中の水蒸気と粉塵や発煙との識別を行うため、無害な水蒸気を粉塵から区別して計測できる。 ・・・ 【0013】 【実施例】以下、図面に基づいて本発明の実施例を具体的に説明する。図1は本実施例で採用した大気の汚染監視装置の構成図を示し、本実施例では小形ミー散乱レーザレーダ(ライダー)システムを採用している。すなわち、本実施例の監視装置1は、レーザ光源2の高調波成分或いは光学結晶によるパラメトリック発振により得た1.4μm以上の波長の短パルス光をその偏光面を揃えて大気中に放射する照射手段3と、監視対象域4から戻ってくる反射光(後方散乱光)5を集光して受光する受光手段6と、その反射光5を互いに異なる二つの方向における偏光成分に分離する偏光フィルタ又は偏光ビームスプリッタから構成された分離手段7と、を備えている。 【0014】分離手段7の直後には、分離された偏光成分を検出して電気信号に変換する検出器8が設けられ、この検出器8は増幅器9を介してトランジェントレコーダ10に接続され、このレコーダ10にコンピュータ11が接続されている。なお、図示していないが、監視装置1は、照射手段3と受光手段6とが連動して監視対象域4を自動的に2次元走査する走査機構を有する。 【0015】コンピュータ11は、各偏光成分の検出器8での出力の比率(偏光解消度)を逐次演算し、その比率より監視対象域4に存在するものが水蒸気か発塵・発煙か或いはその混合物かを識別する演算プログラムを有する。また、コンピュータ11は、上記した各手段を制御し、短パルス光の放射から反射光5を受光するまでの時間から監視対象域4までの距離を求め、走査機構の角度から水蒸気又は発塵の存在を3次元的(距離、方位角、仰角)に求める演算プログラムも備えている。 【0016】前記照射手段3のレーザ光源2としては、DFB半導体レーザ等による直接発振手段を採用できるが、本実施例ではNd:YAGレーザを採用しており、その発振波長は1.06μmである。このNd:YAGレーザの前方に、KTP結晶を用いたパラメトリック発振器12が設けられ、この発振器12によりレーザ光源2は人の目に特に安全な波長域である1.55~1.57μmの波長に変換される。 【0017】また、発振器12のKTP結晶はレーザ光の偏光作用も兼ね備えており、当該発振器12を通過するレーザ光はその波長が変換されるだけでなく、その進行方向に直交するある特定の一つの方向に偏光される。なお、発振器12とは別に偏光フィルタを設けてレーザ光を偏光させてもよいが、この場合、レーザ出力が大きく低減するので、本実施例のように変調作用と偏光作用を兼ね備えた上記KTP結晶を採用するのが好ましい。 【0018】上記パルス光は、パラメトリック発振器12の前方に設けたコリメータを通過し、2枚のミラー13により監視対象域4に向けて一定の走査速度で2次元的に放射される。監視対象域4の方向に向かったパルス光は途中の光路において粉塵や水蒸気等があれば散乱を生じて僅かに後方にも散乱し、この後方散乱光5は前記受光手段6でキャッチされる。 【0019】この受光手段6は、望遠鏡型で内部に凹面鏡14を有する。この凹面鏡14で集光された後方散乱光5は、1.4μm以上の透過域を持つ干渉フィルタ15を通し、このフィルタ15の背後に設けた偏光ビームスプリッタ(分離手段)7で波面振動が互いに直角な2つの偏光成分に分離される。その後、各偏光成分に分離された光は、この波長帯で感度の高いInGaAsよりなる検出器8で電気信号となりトランジェントレコーダ10に入る。 ・・・ 【0022】コンピュータ11では発振レーザビームの立上りから反射光5の受信時間Δtを計算し、c×Δt×1/2=Lとして、粉塵又は水蒸気までの距離を推定する。なお、cは光速である。一方、反射光5の偏光成分は水蒸気と粉塵等とでその様子が異なり、本発明はこの偏光成分の比率の相違から水蒸気と粉塵等とを区別する点に特徴がある。 【0023】すなわち、以下に示すTable2はある一定の距離における煙からの後方散乱を検出したもので、偏向解消度は発振パルス光と同じ偏向成分とこれより90°偏光している成分の比を示している。また、Table3はTable2と同じ条件で水蒸気の偏光解消度を求めたもので、これらの表を比較すれば分かるように、煙と水蒸気とでは反射光5の偏光成分比が大きく異なる。 ・・・ 【0026】ここで、偏向解消度を与える各偏向成分の出力値をそれぞれx、yとすると、Table2及び3より検出したい濃度近辺での偏光解消度y/xは0.33~0.77の範囲でバラついている。また、実際には各偏向成分の出力の絶対値も水蒸気の含まれ具合により大きく異なっている。このため、コンピュータ内部ではy/xのほか(x+y)/2を計算し、この(x+y)/2と先に求めた距離Lとで定まる係数Z(=0~1.0)を予め決めておき、水蒸気の濃度M、粉塵濃度DをそれぞれM=y/x×Z×R1、D=y/x×(1-Z)×R2として求めるようにしている。なお、R1及びR2は測定系により定まる定数である。 ・・・ [図:0001412757000001.jpg] ・・・ [図:0001412757000002.jpg] 」 (イ)引用文献2に記載された発明(引用発明) 上記(ア)の記載事項から、引用文献2には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。ここで、各構成単位末尾括弧内には、該各構成単位の主たる認定根拠とした記載箇所を記した。 「a 光学結晶によるパラメトリック発振により得た1.4μm以上の波長の短パルス光をその偏光面を揃えて大気中に放射する照射手段3に採用される、Nd:YAGレーザからなるレーザ光源2と、(【0013】・【0016】) b1 Nd:YAGレーザの前方に設けられ、レーザ光の偏光作用も兼ね備えるKTP結晶を用いたパラメトリック発振器12と、(【0016】) b2 照射手段3と受光手段6とが連動して、監視対象域4を自動的に2次元走査する走査機構とを備え、(【0014】) b3 前記短パルス光は、パラメトリック発振器12の前方に設けたコリメータを通過し、2枚のミラー13により監視対象域4に向けて一定の走査速度で2次元的に放射されるものであり、また、(【0013】・【0018】) c1 監視対象域4の方向に向かった短パルス光が途中の光路において煙・粉塵や水蒸気などの微粒子による散乱により生じた後方散乱光(反射光)5を受光する受光手段6と、(【0011】・【0013】・【0015】・【0018】・【0019】) c2 前記受光手段6の内部の凹面鏡14で集光された後方散乱光(反射光)5を互いに直角な2つの偏光成分に分離する偏光ビームスプリッタ7から構成される分離手段7と、該各偏光成分を検出して電気信号に変換する各偏光成分の検出器8と、(【0014】・【0015】・【0019】)、 c3 前記各偏光成分の検出器8からの、増幅器9、レコーダ10を介した出力を演算するコンピュータ11とを備え、(【0014】・【0015】) c4 前記分離手段7は偏光フィルタから構成されてもよく、また、(【0013】) d1 前記コンピュータ11では、監視対象域4に存在する煙・粉塵や水蒸気などの微粒子からの、該微粒子が煙・粉塵の場合と水蒸気の場合とで偏光成分に差がある後方散乱光(反射光)5の各偏光成分の、前記各検出器8からの各出力値x、yから、偏光解消度y/xと、係数Zを決めるための(x+y)/2とを演算し、(【0011】・【0014】・【0015】・【0026】) d2 水蒸気の濃度M、粉塵濃度Dをそれぞれ前記y/x及び係数Zを用いて求める、(【0026】) e 大気の汚染監視装置のライダーシステム。(【0013】)」 イ 引用文献6に記載された事項 原査定において引用され、優先日前に公知となった特開2016-176724号公報には、次の記載がある。 「【0022】 光検出系30-1~30-3は、直線偏光24が試料25に入射することによって生じる散乱光を検出するものであり、詳細には、散乱光の強度を検出する。光検出系30-1~30-3は、互いに異なる散乱角方向の光路上に配されている。 ・・・ 【0027】 光検出系30-1は、偏光フィルタ31-1(偏光素子の一例)と、ピンホール32-1と、迷光防止板33-1と、光拡散板34-1と、受光器35-1とを、含む。光検出系30-2は、偏光フィルタ31-2(偏光素子の一例)と、ピンホール32-2と、迷光防止板33-2と、光拡散板34-2と、受光器35-2とを、含む。光検出系30-3は、偏光フィルタ31-3(偏光素子の一例)と、ピンホール32-3と、迷光防止板33-3と、光拡散板34-3と、受光器35-3とを、含む。 ・・・ 【0030】 偏光フィルタ31-1は、散乱光の直線偏光成分を予め定められた角度で通過させることで、散乱光を予め定められた角度方向で偏光する。具体的には、偏光フィルタ31-1は、散乱光の直線偏光成分を、直線偏光24が偏光された所定の偏光方向の電界振動面又は磁界振動面の偏光方向で通過させることで、散乱光を直線偏光24が偏光された所定の偏光方向の電界振動面又は磁界振動面に偏光する。なお、偏光フィルタ31-1に代え、偏光フィルタと同等の機能を有する偏光ビームスプリッタを用いてもよい。 ・・・ 【0043】 例えば、本発明者らは、直線偏光24を、図4に示すように上下方向に電界振動面が偏光されている入射波とし、光検出系30-1を入射波の直線軸上に配し、入射波の電界振動面53に偏光された散乱光強度を検出するようにし、光検出系30-2、30-3を、入射波の偏光方向の電界振動面の同一平面上において異なる角度に配し、それぞれ、電界振動面53、磁界振動面52という異なる偏光面にて散乱光強度を検出するようにした。」 ウ 引用文献8に記載された事項 原査定において引用され、優先日前に公知となった米国特許第5835222号明細書には、次の記載がある。 「Ellipsometry is a well known method of monitoring a change in polarization state in a beam of electromagnetic radiation as a result of interaction with a material system. In general a beam of electromagnetic radiation is conditioned to present with a known polarization state, (eg. linear), then is caused to interact with, (ie. reflect from or be transmitted through), a material system, and then is detected and analyzed to determine the resulting state of polarization thereof. The change in polarization state caused by interaction with a material system is determinative of numerical values for material system characterizing parameters.」(1欄24~34行) (当審訳:「偏光解析法は、物質系との相互作用の結果として電磁放射ビームの偏光状態の変化をモニターするよく知られた方法である。一般的に、電磁放射線のビームは、既知の偏光状態(例えば、直線)になるように調整され、その後、材料系と相互作用させ(例えば、材料系から反射させたり、透過させたり)、その結果生じる偏光状態を決定するために検出・分析される。材料系との相互作用による偏光状態の変化は、材料系の特性パラメータの数値を決定する。」) エ 引用文献9に記載された事項 原査定において引用され、優先日前に公知となった米国特許第5850284号明細書には、次の記載がある。 「This invention relates to using a polarizer on a surface for detecting the presence of a polarization altering or opaque substance on the surface. In particular, this invention relates to detecting ice on a surface using a polarizer on the surface, and especially when the surface is an aircraft wing or other aircraft exterior or control surface. This invention also relates to detecting ice on a road or roadside surface.」(1欄6~12行) (当審訳:「本発明は、表面上の偏光変化物質または不透明物質の存在を検出するために、表面上の偏光子を使用することに関する。特に、本発明は、表面上で偏光子を使用して表面上の氷を検出することに関し、特に、表面が航空機の翼または他の航空機の外面または制御面である場合に関する。本発明はまた、道路または路面上の氷の検出に関する。」) (3)本件補正発明と引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 構成aの「短パルス光」、「レーザ光源2」はそれぞれ、構成Aの「光パルス」、「レーザー」に相当する。また、構成aを含む引用発明は、連続光レーザをその出射後に短パルス化するような特段の要素を備えないし、「Nd:YAGレーザー」は駆動系にパルスジェネレータを用いることで短パルス光を発振可能な固体レーザー(光源)であることが技術常識である。よって、構成aの「短パルス光」は、同「Nd:YAGレーザーからなるレーザー光源2」から発せられる短パルス光を起源とするものであるといえる。 したがって、構成aの「Nd:YAGレーザーからなるレーザー光源2」は、構成Aの「光パルスを生成するように構成されたレーザー」に相当する。 イ 構成b1の「Nd:YAGレーザの前方に設けられ、レーザ光の偏光作用も兼ね備えるKTP結晶を用いたパラメトリック発振器12」の「KTP結晶」は、「Nd:YAGレーザの前方に設けられ」るのであるから、該レーザの出射短パルスレーザ光が入射されるものであり、該「レーザ光の偏光作用も兼ね備える」のであるから、前記入射された短パルスレーザ光に偏光作用を与えるものである。また、レーザ光の波長変換に用いられるKTP結晶が複屈折作用を持つ結晶であり、入射したレーザ光の偏光特性を変化させる性質を備えることは技術常識である。 また、構成B1の「偏光調整」すなわち「偏光を調整」することについて、本件出願の明細書【0061】には「偏光を調整することは、偏光を付与すること又は偏光を変化させることを含んでもよい。」と説明されるにとどまり、実質的に偏光の任意の変化を含む定義がなされているといえる。 よって、構成b1の「レーザ光の偏光作用」は構成B1の「偏光調整された光パルスを生成する」という機能(作用)、及び「光パルスの偏光を調整」するとの機能(作用)に相当するといえる。 したがって、構成b1の「パラメトリック発振器12」のうち特に「Nd:YAGレーザの前方に設けられ、レーザ光の偏光作用も兼ね備えるKTP結晶」は、構成B2の「ビーム操縦部」のうち、構成B1に特定される機能を担う要素に相当するといえる。 ウ(ア)構成b3の「パラメトリック発振器12の前方に設けたコリメータを通過」した「前記短パルス光」は、上記イの説示をふまえると、構成B2の「前記偏光調整された光パルス」に相当する。 (イ)構成a・c1・eによると、「レーザ光源2」も「受光手段6」も「ライダーシステム」という一つのシステムすなわち装置の一要素であるから、構成b3において「監視対象域4に向けて」「放射され」た「前記短パルス光」が、構成c1において「途中の光路において煙・粉塵や水蒸気などによる散乱により」「後方散乱光(反射光)5」を「生じ」、それが「受光手段6」により「受光」されることによる短パルス光の軌跡は、ある一の装置(システム)(の一要素)から放射された光が、散乱により該一の装置(システム)(の他の一要素)に戻るものであるといえる。よって、構成c1の「受光手段6」で「受光」される「監視対象域4の方向に向かった短パルス光が途中の光路において煙・粉塵や水蒸気などによる散乱により生じた後方散乱光(反射光)5」は、構成Cの「戻される反射、散乱、又は放出された光」に相当するといえる。 (ウ)a.上記(イ)をふまえると、構成Cの「戻される反射、散乱、又は放出された光」に相当する構成c1の「後方散乱光(反射光)5」を生じさせる、構成c1の「監視対象域4の方向に向かった短パルス光」の「途中の光路」に存在する「煙・粉塵や水蒸気などの微粒子」は、構成Cの「物体」に相当するといえる。 b.なお、構成c1の「水蒸気」は気相の水を意味する用語であるが、引用発明においては「煙・粉塵」と同列に「微粒子」の一種として特定されるものであるから、雲粒・霧粒・湯気のような液相(又は氷晶のような固相)の水粒子を意味するものと認められる。 c.また、本件補正発明のシステムはLIDAR用途を含むところ(【0003】)、背景技術としてその用途に「大気物理学」を含み(【0005】)、大気物理学の分野においてLIDARは大気中のエアロゾル及び雲の検出を用途とすることが技術常識であるから、構成Cの「物体」には、雲粒や氷晶などの液相・固相の水粒子を含むといえ、このことは、上記a.の認定を裏付ける。 (エ)構成c1によれば、「煙・粉塵や水蒸気」は「監視対象域4」の方向、すなわち「監視対象域4」内に存在し得るものである。よって、上記(ウ)をふまえると、構成b3で「短パルス光」が「監視対象域4に向けて」「放射される」ことは、構成B2の「光パルスが物体に向けて放出される」ことと、少なくとも≪光パルスが物体が存在しうる領域に向けて放出される≫点で共通する。 (オ)上記イ・ウ(ア)・ウ(エ)をふまえると、構成b2の「照射手段3と受光手段6とが連動して、監視対象域4を自動的に2次元走査する走査機構」が担う、構成b3の「前記短パルス光」を「パラメトリック発振器12の前方に設けたコリメータを通過し、2枚のミラー13により監視対象域4に向けて一定の走査速度で2次元的に放射」するという「走査」機能は、短パルス光の放射方向を2次元的に操縦するよう制御する機能に外ならないから、構成B2の「ビーム操縦部」の機能のうち、「前記偏光調整された光パルスが物体が存在しうる領域に向けて放出されるように、前記偏光調整された光パルスの方向を操縦して制御する」機能の点で共通する。 エ 上記イ・ウから、光パルス(短パルス光)の偏光を担う構成b1の「KTP結晶を用いたパラメトリック発振器12」、走査機能のうち特に「監視対象域4」への「短パルス光」の「放射」を担う構成b2の「コリメータ」及び「2枚のミラー13」、並びに、構成b2の「走査機構」を合わせたものは、構成B2の「ビーム操縦部」に相当するといえる。 オ 構成Cの「偏光子」について、本件出願の明細書【0024】には、「一態様においては、少なくとも1つの偏光子は、直線偏光、円偏光、及び楕円偏光のうちの少なくとも1つを適用することによって、物体から戻される反射、散乱、又は放出された光を偏光するように構成されている。」との記載が、また、同【0026】には「一態様においては、少なくとも1つの偏光子は、複数の偏光子を含む。」なる記載がある。 一方、構成c2の「分離手段7」は「後方散乱光(反射光)5を互いに直角な2つの偏光成分に分離する偏光ビームスプリッタ7から構成される」ものであるが、構成c4によれば「偏光フィルタから構成され」る態様も含む。 「偏光子」、「偏光ビームスプリッタ」及び「偏光フィルタ」はいずれも入射光の偏光状態を変化させる偏光素子であるといえるから、引用発明は、構成Cと、≪前記物体から戻される反射、散乱、又は放出された光を偏光するように構成された少なくとも1つの偏光素子≫を備える点で少なくとも共通するといえる。 カ(ア)上記ウ(ウ)の説示をふまえると、構成d1の「監視対象域4に存在する煙・粉塵や水蒸気などの微粒子からの、該微粒子が煙・粉塵の場合と水蒸気の場合とで偏光成分に差がある後方散乱光(反射光)5」は構成Dの「前記物体からの偏光された反射、散乱、又は放出された光」に相当する。 (イ)a.構成Dの「物体からの偏光された反射、散乱、又は放出された光の強度」と「材料を検出」することとの関係に関し本件出願の明細書【0067】・【0068】にはそれぞれ、 「反射されたs偏光の光ビーム118を形成する1つ以上の反射されたs偏光の光パルスの検出された強度・・・が、下記で更に詳細に議論されるように、(例えば、MST分類を使用して)材料タイプの検出を実行するためにプロセッサ126によって利用されてもよい。」、 「反射されたp偏光の光ビーム120を形成する1つ以上の反射されたp偏光の光パルスの検出された強度・・・がまた、下記で更に詳細に議論されるように、材料タイプの検出を実行するためにプロセッサ126によって利用されてもよい。」 なる各記載がある。ここで、s偏光・p偏光は相互に直交する(直線)偏光成分であること、また、光束の直交偏光成分のいずれがs偏光・p偏光であるかは、該光束がある表面に入射する場合の入射光軸・反射光軸を含む入射平面との関係により定義づけられること(よって、空間を進行する光束については、いずれの直交偏光成分もp偏光やs偏光であり得ること)は、それぞれ技術常識である。 よって、本件補正発明の前記「強度」は、(物体で)反射され検出された互いに直交する各偏光成分(s偏光、p偏光)の各検出強度である場合を少なくとも含むといえる。 b.一方、引用発明の構成d1の「前記各検出器8からの各出力値x、y」は、構成c2における「後方散乱光(反射光)5を互いに直角な2つの偏光成分に分離する偏光ビームスプリッタ7から構成される分離手段7」により分離された「各偏光成分を検出して電気信号に変換する各偏光成分の検出器8」による出力値であるから、それぞれ、前記後方散乱光(反射光)5の相互に直角な2つの偏光成分の値である。 c.よって、上記a.・b.から、構成d1の「前記各検出器8からの各出力値x、y」及び該x、yの単純平均値である構成d1の「係数Zを決めるための(x+y)/2」は、構成Dの「物体からの偏光された反射、散乱、又は放出された光の強度」に相当するといえる。 (ウ)構成d1の「後方散乱光(反射光)5の各偏光成分の、前記各検出器8からの各出力値x、yから」「演算し」た「偏光解消度y/x」は、文字どおり、偏光の性質に関する周知慣用のパラメータであるし、前記各出力値x、yの商であるから該x、yとは異なり無次元数であって、構成Dの「光の強度」に相当する構成d1の「各出力値x、y」と同種のパラメータでもない。 よって、構成d1の「監視対象域4に存在する煙・粉塵や水蒸気などの微粒子からの、該微粒子が煙・粉塵の場合と水蒸気の場合とで偏光成分に差がある後方散乱光(反射光)5の各偏光成分の、前記各検出器8からの各出力値x、yから」「演算し」た「偏光解消度y/x」は、構成Dの「前記物体からの偏光された反射、散乱、又は放出された光の」「偏光」に相当する。 (エ)構成d2の「水蒸気」及び「粉塵」は、構成d1の「監視対象域4に存在する」「微粒子」を構成する物質であるから、構成Dの「前記物体の少なくとも1つの材料」と、≪前記物体の少なくとも1つの要素≫である点で少なくとも共通する。 また、構成d2の、「水蒸気」・「粉塵」なる各要素の濃度を求めることは、該各要素の濃度が実質的にゼロか否か、すなわち≪各要素が存在するか否かを求めること≫を含み、その上で、さらなる情報として、その存在の程度、すなわち濃度の値も求めることと位置づけられる。そして、構成d2が含む前記≪各要素が存在するか否かを求めること≫は、構成Dの「前記物体の少なくとも1つの材料を検出する」ことと、≪前記物体の少なくとも1つの要素を検出する≫点で共通する。 (オ)コンピュータが演算を司る要素としてプロセッサを内蔵することは技術常識であるから、構成c3・d1の「コンピュータ11」またはそれに内蔵されることが前記技術常識から自明であるプロセッサは、構成Dの「プロセッサ」に相当する。 キ 構成eの「大気の汚染監視装置のライダーシステム」は、構成Eの「システム」に相当する。 ク 一致点・相違点 上記ア~キのとおりであるから、本件補正発明と引用発明とは、下記(ア)の点で一致し、下記(イ)の各点で相違する。 (ア)一致点 「A 光パルスを生成するように構成されたレーザーと、 B1 偏光調整された光パルスを生成するために、前記光パルスの偏光を調整し、且つ B2’ 前記偏光調整された光パルスが物体が存在しうる領域に向けて放出されるように、前記偏光調整された光パルスの方向を操縦して制御するように構成されたビーム操縦部と、 C’ 前記物体から戻される反射、散乱、又は放出された光を偏光するように構成された少なくとも1つの偏光素子と、 D’ 前記物体からの偏光された反射、散乱、又は放出された光の強度及び偏光に基づいて、前記物体の少なくとも1つの要素を検出するように構成されたプロセッサとを備える E システム。」 (イ)相違点 a.相違点1(構成B2) ビーム操縦部が偏光調整された光パルスの方向を操縦して制御する際に、本件補正発明では「偏光調整された光パルスが物体に向けて放出されるように」するのに対し、引用発明では、前記「物体」に相当する「煙・粉塵や水蒸気などの微粒子」が存在しうる「監視対象域4」に向けて「一定の走査速度で2次元的に放射される」ものである点。 b.相違点2(構成C) 物体から戻される反射、散乱、又は放出された光を偏光するのが、本件補正発明では「偏光子」であるのに対し、引用発明では「偏光ビームスプリッタ7」又は「偏光フィルタ」である点。 c.相違点3(構成D) 物体からの偏光された反射、散乱、又は放出された光の強度及び偏光に基づいて検出するのが、本件補正発明では「物体の少なくとも一つの材料」であるのに対し、引用発明では物体である「監視対象域4に存在する煙・粉塵や水蒸気などの微粒子」の水蒸気濃度及び粉塵濃度である点。 d.一応の相違点4(構成B1・B2) 「ビーム操縦部」が、本件補正発明では単一の要素である態様を含み得るのに対し、引用発明では、「Nd:YAGレーザの前方に設けられ、レーザ光の偏光作用も兼ね備えるKTP結晶を用いたパラメトリック発振器1」及び「照射手段3と受光手段6とが連動して、監視対象域4を自動的に2次元走査する走査機構」から構成されている点。 (4)判断 ア 相違点1について 引用発明において、「煙・粉塵や水蒸気などの微粒子」は「監視対象域4」内に存在し得る監視(検出)対象の物体であり、その構成c1~d2は、監視対象域4に前記微粒子が存在し、それによる後方散乱光(反射光)が受光される場合を前提とするものである。 よって、引用発明は、前記装置構成の前提となる、監視対象域4に前記微粒子が存在する場合においては、該存在する「微粒子」に対して前記短パルス光が放射される態様をとるといえる。 したがって、相違点1は実質的なものではなく、引用発明は、構成B2の「前記偏光調整された光パルスが物体に向けて放出されるように、前記偏光調整された光パルスの方向を操縦して制御するように構成され」ることに相当する構成(機能)を備えるといえる。 イ 相違点2について (ア)偏光子という用語は、狭義においては入射光をある方向の直線偏光に変える光学素子を意味するが、広義においては、前記狭義の偏光子は直線偏光子と称し、ほかに円偏光子など、入射光の偏光状態を変更する様々な偏光素子を含むというのが技術常識である。 (イ)また、前記狭義の場合においても、(直線)偏光子には、直線偏光板や偏光フィルタのほか、入射光を直交する2つの直線偏光成分に分離する偏光ビームスプリッタも含まれるというのもまた、技術常識である。実際、偏光子と称して偏光ビームスプリッタが商品として販売されている事例は広く認められる。 (ウ)この点、本件出願の発明の詳細な説明の【0057】には、 「当業者によって理解されるように、偏光子114、116は、本明細書の教示から逸脱することなく、様々な異なるタイプの偏光のために構成されてもよい。例えば、所与の偏光子は、直線偏光(例えば、s若しくはp型の直線偏光)、右円偏光、左円偏光、楕円偏光、又は当技術分野で既知の任意の他の適切なタイプの偏光を実行するように構成されてもよい。」 なる記載があることから、本件補正発明の偏光子は、前記広義の偏光子として説明されていると理解されるし、直線偏光に限っても、「直線偏光・・・を実行するように構成されて」いれば足りるといえる。 (エ)そうすると、引用発明の構成c2における「偏光ビームスプリッタ7」も、前記技術常識によれば、それ自体偏光子と呼べる光学素子であるから、構成Cの「偏光子」に相当するといえるのであり、相違点2は実質的な相違点であるとはいえない。 (オ)仮に、名称のみからは上記(エ)のように判断できないとしても、引用発明の「分離手段7」としての「偏光ビームスプリッタ7」は、「後方散乱光(反射光)5を互いに直角な2つの偏光成分に分離」し、「各偏光成分の検出器8」により「該各偏光成分を検出して電気信号に変換する」ようにするもの、すなわち、後方散乱光(反射光)5を互いに直角な2つの偏光成分に分離し個別に検出器8に検出させるようにするものであるから、その機能面で、上記(ウ)の「直線偏光(例えば、s若しくはp型の直線偏光)・・・を実行するように構成されて」いれば足る、との要件を満たすといえる。よって、相違点2はやはり、実質的な相違点であるとはいえない。 (カ)仮に、上記(ウ)・(エ)のとおりでなく、本件補正発明における偏光子が直線偏光子(偏光板)に限られるとしても 引用発明の「分離手段7」は構成c4によれば「偏光フィルタから構成され」る態様を含む。 また、偏光成分に関し構成c3・d1・d2によれば、「水蒸気の濃度M、粉塵濃度D」を求めるためには「各偏光成分の検出器8」からの「各出力値x、y」を共に用いることが必須であるといえ、ここでの「各偏光成分」は構成c1の「互いに直角な2つの偏光成分」を指すから、「分離手段7」が構成c4の「偏光フィルタから構成され」る態様であっても、該「偏光フィルタ」は構成c1の「互いに直角な2つの偏光成分に分離する」機能を備える(べき)ものと解される。そうすると、構成c4の「偏光フィルタ」は、微粒子からの後方散乱光(反射光)5を互いに直角な2つの偏光成分に分離するものである必要がある。 ここで、入射光束を偏光フィルタによって直角な2つの偏光成分に分離する場合には、入射光束を2つに分割して個々の分割光束に、または分割せずに前記光束内に、相互に偏光方向が直交する2枚の直線偏光フィルタを配して行うことが当該技術分野において最も一般的であるし、技術常識でもあるといえる。よって、構成c4の「偏光フィルタ」は、個々に偏光方向が直交する2枚の直線偏光フィルタからなる態様であること、少なくとも該態様である場合を含むことが、前記技術常識に照らし明らかであるといえる。 したがって、相違点2はやはり、実質的な相違点であるとはいえない。 (キ)a.仮に、上記(ウ)~(オ)のとおりではなく、引用発明が構成Cの「偏光子」に相当する構成c4の「偏光フィルタ」を備える態様を含むか不明であるとしても、散乱光など測定対象光束の特定の偏光成分を検出する際に用いる偏光素子として偏光フィルタを採用することは、上記(2)イにおいて摘記した引用文献6の【0022】・【0027】・【0043】の記載によっても裏付けられる。 また、構成c2は、入射光束を直交する2つの偏光成分に分離する光学系として、偏光ビームスプリッタを用いるものであるが、偏光フィルタと偏光ビームスプリッタとが入射光の直線偏光成分を検出するための偏光素子として周知かつ相互に可換であることは、上記(2)イで摘記した引用文献6の【0030】の記載によっても裏付けられるものであるし、さらに、前記入射光束を直交する2つの偏光成分に分離する光学系に限っても、偏光ビームスプリッタによるものも、非偏光ビームスプリッタで二分割した入射光束のそれぞれに相互に偏光方向が直交する偏光フィルタを配するようにするものも、いずれも周知であり、かつ相互に可換であることは、例えば優先日前に公知となった特開2011-150686号公報の下記b.の記載によっても裏付けられるとおりである。そして、構成c4も、当該可換性を、上位概念的に(偏光ビームスプリッタの機能は偏光フィルタによっても実現できること)裏付けるものである。 よって、構成c2における偏光ビームスプリッタ7から構成される分離手段7の光学系を、非偏光ビームスプリッタで二分割した入射光束のそれぞれに相互に偏光方向が直交する偏光フィルタを配する光学系へと換えて、相違点2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 b.優先日前に公知となった特開2011-150686号公報の【0016】には、次の記載がある。 「この偏光カメラ10Dは、図5に示すように、1:1の透過性を備えるハーフミラー131と、反射ミラー132と、S偏光フィルタ133と、P偏光フィルタ134と、S偏光フィルタ133を介してS偏光を受光するS偏光用CCD135と、P偏光フィルタ134を介してP偏光を受光するP偏光用CCD136とを有する。・・・なお、ハーフミラー131に代えて、P偏光を反射し、かつ、S偏光を透過するプリズム等の偏光ビームスプリッタを用いてもよい。」 ウ 相違点3について (ア)構成Dにおける「物体」を構成する検出対象の「材料」について本件出願の発明の詳細な説明において、「薄氷」・「黒氷」(【0132】~【0133】)、「プラスチック、木、及びレンガを含有する材料」・「金属素材」・「肌」・「生地」(【0139】)が例示されている。該各例示から、本件補正発明における検出対象としての「材料」には、氷・金属など物質やその状態である場合、プラスチック・レンガ・生地など加工品の種別である場合、肌・木など生体の種別やその一要素である場合など、物体を特定する種々の分類形態に基づく概念が網羅的に含まれていると理解され、特定の概念に限定解釈されるべき記載は本件出願の明細書中に見出せない。 (イ)一方、引用発明において、微粒子に対し検出対象とする「水蒸気」や「粉塵(煙)」なる種別は、上記(ア)で本件補正発明の材料の例として列挙されるうちの≪氷・金属など物質やその状態≫に類するものといえる。 (ウ)また、引用発明が「監視対象域4に存在する煙・粉塵や水蒸気などの微粒子から」該微粒子を構成する物質のうち「水蒸気の濃度」及び「粉塵濃度」を求めることが、水蒸気及び粉塵なる各要素の濃度が実質的にゼロか否か、すなわち≪各要素が存在するか否かを求めること≫を含み、そのことが該各要素を検出することに相当することは、上記(3)カ(エ)で説示したとおりである。 (エ)以上(ア)~(ウ)のとおりであるから、構成d1~d2における、「監視対象域4に存在する煙・粉塵や水蒸気などの微粒子から・・・水蒸気の濃度M、粉塵濃度Dをそれぞれ・・・求める」ことは、該微粒子の材料が水であるのか粉塵であるのかを濃度値が0より大きいか否かによって見極めることを含むといえるから、構成Dの「前記物体の少なくとも1つの材料を検出する」ことに相当するといえ、相違点3は実質的な相違点とはいえない。 (オ)仮に引用発明のd2が構成Dの「材料を検出」することに相当するとまでいえないとしても、物体に偏光を照射し、その散乱光や反射光の偏光を測定する引用発明と同様の偏光解析法によって、物体の材料の検出や、さらに該材料の特性の決定を行うことは、上記(2)ウ・エに摘記した引用文献8・9の記載によっても裏付けられるとおりの周知技術にすぎず、偏光解析法に属する引用発明において、該周知技術を適用して物体の≪材料の検出≫を行うようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 エ 一応の相違点4について (ア)本件補正発明において、「ビーム操縦部」は構成B1の「光パルスの偏光を調整」する機能、及び構成B2の「光パルスの方向を操縦して制御」する機能を備える要素として機能的に特定されるにとどまり、手段としての外形や一体性については特定されない。 (イ)上記(ア)の認定を前提とし、引用発明が構成B1・B2で特定される各機能に相当する機能を持つ要素を備えることを根拠として、引用発明が「ビーム操縦部」に相当する構成を実質的に備えるといえることは、上記(3)イ・ウ・エ並びに相違点1に関する上記アで説示したとおりである。 (ウ)この点、本件出願の明細書において、光の「操縦」に関し、デバイス全体の回転を行う態様について「レーザービームを操縦するためのデバイス全体の回転は、信頼性を低下させ、小型化を制限し、エネルギー消費を増加させる。」(【0008】)なる課題の認識が記載され、その解決手段として、「一度に複数のビームを操縦するために、ビーム(例えば、ビーム104)を幾つの異なるビームに分割してもよく、それによって、1つ以上のビームが画定された角度で放出される。この概念は、ビーム操縦部106から発する多くの発散矢印に関して、図1に例示される。」(【0061】)など、ビームの分割による操縦形態について言及され、光パルスの偏光調整手段と方向の発散(分割)手段とが一体化した態様が示唆(図1)されるものの、該態様については前記摘記のとおり「・・・してもよく」など例示的な言及にとどまり、構成B2における「前記偏光調整された光パルスが物体に向けて放出されるように、前記偏光調整された光パルスの方向を操縦して制御する」ことが、前記ビームの分割(発散)による態様のみに限定解釈されるべきであるとは認められないし、まして、構成B1・B2の「ビーム操縦部」がビームの発散と偏光調整とを共に行う一の要素である態様に限定解釈すべき根拠の存在は認められない。 さらに、ビームの方向の操縦をビームの発散によって行った場合には、受光手段側において物体からの光の到来方向を判別する必要が生じると考えられるが、本件補正発明において受光手段側の構成については、構成C・Dとして、物体からの光の強度及び偏光に基づくことと、偏光子及びプロセッサの存在が特定されるにとどまり、前記到来方向を判別する機能や手段について特定されない。このことからも、本件補正発明におけるビームの操縦形態は、ビームの発散に限定解釈される根拠を欠き、光パルスの放出手段及び受光手段の全体の向きを変化させることによって前記操縦を行うような態様も、本件補正発明から排除されないと認められる。 (エ)よって、仮に「一応の相違点4」は、本件出願の明細書及び図面の記載に基づく限定解釈の可能性を含め子細に検討してもなお、実質的な相違点であるとは認められない。 オ 効果について 本件補正発明により奏される効果は、当業者が、引用発明及び周知技術から予測し得た範囲内のものであって、格別のものではない。 (5)請求人の主張について ア 審判請求書における主張 請求人は審判請求書補正書により補正された審判請求書において、本件補正発明と引用発明との対比に関し下記の主張をしている。 「引用文献2の発明は、上記(b)に示すように、照射手段3が、レーザ光源2及びパラメトリック発振器12という2つの別個の構成要素を含み、レーザ光源2が、レーザ光を生成し、パラメトリック発振器12が、レーザ光源2によって生成されたレーザ光を偏光するというものであります。引用文献2の発明における照射手段3のレーザ光源2は、レーザ光を生成することから、本願発明1における『光パルスを生成するように構成されたレーザー』に対応しているとは認められます。一方、引用文献2の発明における照射手段3のパラメトリック発振器12は、レーザ光源2によって生成されたレーザ光を偏光するためにのみ使用され、偏光されたレーザ光の方向を操縦又は制御することはできないことから、本願発明1とは相違して『偏光調整された光パルスを生成するために、前記光パルスの偏光を調整し、且つ前記偏光調整された光パルスが物体に向けて放出されるように、前記偏光調整された光パルスの方向を操縦して制御するように構成され』ておりません。」 イ 審判請求書における主張についての見解 上記主張は構成B1・B2に関するものであるが、引用発明が構成B1に相当する機能要素と共に構成B2の特定事項に相当する機能要素を備え、合わせて構成B2の「ビーム操縦部」に相当するといえることは、上記(3)イ~エ並びに上記(4)ア・エにおいて説示したとおりである。 よって、上記請求人の主張は採用できない。 (6)小括 上記(3)~(5)において説示したとおりであるから、本件補正発明は、引用発明並びに周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 むすび 上記2において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~26に係る発明は、審査時補正により補正された、特許請求の範囲の請求項1~26に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、分説を含め、上記第2.1(1)に記載したとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 (1)原査定の拒絶の理由の概要(理由2) 本願発明に対する原査定の拒絶の理由である理由2は、本願発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1・6・8・9の記載事項により裏付けられる周知技術や技術常識に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 (2)引用文献等 原査定において引用された文献は次のとおり。 引用文献1:米国特許出願公開第2007/0024849号明細書(周知技術を示す文献) 引用文献2:特開平8-136455号公報 引用文献3:Tetsuo Kan et al.,Enantiomeric switching of chiral metamaterial for terahertz polarization modulation employing vertically deformable MEMS spirals,Nature Communications,2015年10月01日,volume 6, Article number: 8422 (2015),Pages 1-7,doi:10.1038/ncomms9422 引用文献4:特開2014-228300号公報 引用文献5:特開平6-18408号公報 引用文献6:特開2016-176724号公報 引用文献7:米国特許出願公開第2016/0299270号明細書 引用文献8:米国特許第5835222号明細書(周知技術を示す文献) 引用文献9:米国特許第5850284号明細書(周知技術を示す文献) 3 引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願の優先日(出願日)前に公知となった引用文献2・6・8・9の記載事項及び引用発明は、上記第2.2-2(2)に摘記・認定したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本件補正発明の発明特定事項から、構成B1・B2の一部に係る、上記第2.1(2)の下線部の構成を省いたものである。 本願発明の構成pA・pC~pEはそれぞれ、本件補正発明の構成A・C~Eと変わりがない。 また、構成pBは実質的に、「ビーム操縦部」に関する構成B1に係る特定事項の全てと、構成B2のうち「前記偏光調整された光パルスが物体に向けて放出される」との特定事項とに対応する事項とからなり、構成B2のうち「前記偏光調整された光パルスの方向を操縦して制御」する点を省いたものと位置づけることができる。 しかし、引用発明が構成B1に相当する構成を備えることは上記第2.2-2(3)イで説示したとおりである。 また、構成B2のうち「前記偏光調整された光パルスが物体に向けて放出される」ことには、上記第2.2-2(3)ウで説示したとおり、引用発明の構成b3の「前記短パルス光は、パラメトリック発振器12の前方に設けたコリメータを通過し、2枚のミラー13により監視対象域4に向けて一定の走査速度で2次元的に放射される」ことが相当するし、仮に該相当性が認められず上記相違点1の存在を認めるべきであるとしても、該相違点1が実質的な相違点でないか、仮に実質的な相違点であるとしても当業者にとって容易想到であることは、上記第2.2-2(4)アで説示したとおりである。 よって、本願発明は、引用発明並びに周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-021347

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    同じ当事者: ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン
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    同じ当事者: ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン
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    同じ当事者: ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン
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    同じ当事者: ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン
  • 2020-017355拒絶査定不服審判 / 2022-07-20 / 請求不成立寒冷麻酔及び鎮痛剤用のアプリケーター
    同じ当事者: ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン
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    共通の審決分類: 121・G01N、575・G01N
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    共通の審決分類: 121・G01N、575・G01N
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    共通の審決分類: 121・G01N、575・G01N
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    共通の審決分類: 121・G01N、575・G01N
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    共通の審決分類: 121・G01N、575・G01N

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