特許拒絶査定不服審判
2022-002728
化粧シート、化粧板、化粧シートの製造方法、化粧板の製造方法
- 審判番号
- 2022-002728
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-208284
- 請求日
- 2022年02月24日
- 審決日
- 2023年04月05日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】凸版印刷株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 當間 庸裕
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P18 .113-Z (B32B) / P18 .121-Z (B32B) / P18 .575-Z (B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 行政事件訴訟法46条特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-208284「化粧シート、化粧板、化粧シートの製造方法、化粧板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和1年5月23日出願公開、特開2019-77158〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年10月27日に出願された特願2017-208284号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和3年 6月21日付け:拒絶理由通知
令和3年 8月23日 :意見書及び手続補正書の提出
令和3年11月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和4年 2月24日 :審判請求書及び手続補正書の提出
第2 令和4年2月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年2月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
原紙と、
前記原紙の一方の面に積層された絵柄模様層と、を備える化粧シートであって、
前記絵柄模様層の少なくとも一部は、昇華性物質を含み、
前記昇華性物質は、アントラセン系、トリアゾール系、トリアジン系のいずれか一つもしくは2以上の物質からなり、
前記絵柄模様層は、前記昇華性物質を含む昇華性物質保有部と、前記昇華性物質を含まない昇華性物質非保有部と、を有し、
前記昇華性物質保有部は、前記絵柄模様層が形成する絵柄模様の中で、艶消状、または、艶状の質感を表現する箇所に形成されていることを特徴とする化粧シート。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年8月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
原紙と、
前記原紙の一方の面に積層された絵柄模様層と、を備える化粧シートであって、
前記絵柄模様層の少なくとも一部は、昇華性物質を含み、
前記絵柄模様層は、前記昇華性物質を含む昇華性物質保有部と、前記昇華性物質を含まない昇華性物質非保有部と、を有し、
前記昇華性物質保有部は、前記絵柄模様層が形成する絵柄模様の中で、艶消状、または、艶状の質感を表現する箇所に形成されていることを特徴とする化粧シート。」
2 補正の適否
本件補正における請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明の「昇華性物質」について、「アントラセン系、トリアゾール系、トリアジン系のいずれか一つもしくは2以上の物質からな」ることを限定するものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明
ア 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用された特開昭48-70783号公報には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審が付した。)。
「2.特許請求の範囲
任意の基材の上に任意の模様層と昇華性物質を含む組成物による任意の昇華性模様層とを設け、次いで、全面に樹脂を主成分とする組成物による表面保護層を設け、しかる後、加熱処理を施すことを特徴とする任意の形状の凹凸を有し立体感に富む化粧材の製造法。」
「上記の本発明について、以下に図面を用いて更に詳細に説明する。
上記の本発明の方法においては、任意の基材の上に任意の模様層と昇華性物質を含む組成物による任意の昇華性模様層とを設ける順序によつて次の二つの方法がある。
即ち、第1の方法は、先ず、第1図に示す如く任意の基材1の上に例えば、通常のインキないし塗料組成物等による例えば、文字、図形、記号、或は絵柄等の任意の模様層2を設け、次に該任意の模様層2の上に、該模様層2を構成する任意の模様と同調整合する昇華性物質を含む組成物による任意の昇華性模様層3を設け、次いで、上記の如く任意の基材1の上に模様層2と昇華性模様層3とを順次に設けた後、第2図に示す如く、該模様層2と昇華性模様層3とを含む全面に樹脂を主成分とする組成物による表面保護層4を設け、しかる後、第3図に示す如く上記で模様層2、昇華性模様層3及び表面保護層4とを設けた基材1に加熱処理を施すことによつて、凹部5を有する化粧材を得る方法である。」(2ページ右上欄3行~左下欄2行)
「次に又、上記の第1の方法と第2の方法において任意の模様層2を設ける際に使用する通常のインキないし塗料組成物等としては、従来公知のもの、例えば、公知のインキないし塗料用ビヒクルを主成分とし、これに、例えば、可塑剤、安定剤、ワツクス・グリース、乾燥剤・補助乾燥剤、硬化剤、乳化剤、増粘剤、充填剤その他の添加剤等を任意に添加し、更に染料・顔料等の着色剤を加え、分散剤等と共に溶剤・希釈剤等で充分混合してなる通常のインキないし塗料組成物等を使用することができる。」(3ページ左上欄1~11行)
「次に又、上記の第1の方法と第2の方法において、任意の昇華性模様層3を設ける際に使用する昇華性物質を含む組成物としては、昇華性物質が例えば、溶解ないし分散等のいずれの状態でもその組成物中に含まれているものであればよく、例えば、上記のインキないし塗料組成物等に使用するインキないし塗料用ビヒクルに、昇華性物質を添加し、更に、例えば上記の如き可塑剤、安定剤、ワツクス・グリース、乾燥剤・補助乾燥剤、硬化剤、乳化剤、増粘剤、染料・顔料等の着色剤、充填剤等の添加剤を任意に添加し、分散剤等と共に、溶剤・希釈剤等で充分混合し上記の昇華性物質を溶解ないし分散させた組成物等を使用することができる。
上記の本発明においていう昇華性物質としては、公知のもの、例えば、気化ないし昇華し得る無機ないし有機物質であれば、いずれのものでも使用することができ、例えば、ナフタレン、アリザリン・アストロールB、アリザリン・ピユア・ブルーB、アリザリン・シアニン・グリーンG、アンスラキノン・バイオレツト、セリトン・フアスト・レツドGG、セリトン・フアスト・イエロー5R、アリザリン・オレンヂR、テトラ・ヒドロ・インダスレン、セリトン・フアスト・ブラン5R、ロイコキニザリン等のアゾ系、キノン系若しくはアミン系の分散染料類、しようのう、フタル酸、マレイン酸等のカルボン酸類、その他、イノシトール、ペンタエリスリトール、デヒドロキシベンゼン、メチレンデイガーリツクアシド等を使用することができる。」(3ページ左下欄9行~右下欄17行)
「上記の如き本発明の第1の方法と第2の方法とによつて得られる化粧材は、前記の第3図と第6図に示した如く、任意の基材1の上に任意の模様層2と昇華性模様層3とが設けられて、該任意の模様層2による模様と任意の昇華性模様層3による模様とが同調整合し、更に、上記の昇華性模様層2(当審注:「2」は「3」の誤記と認める。)と対応する表面保護層4上に凹部5が形成されて、該凹部5が上記の任意の模様層2と任意の昇華性模様層3とによる模様と同調整合している構成からなるものである。
尚、本発明の方法において、上記の如く、任意の昇華性模様層3に対応する表面保護層4上に凹部5が形成される理由は、つまびらかではないが、熱処理を施すことによつて、上記の昇華性模様層3中の昇華性物質が昇華し、その部分の表面保護層4を構成する樹脂が溶融陥没して凹部5が形成されるものと推定される。
以上の説明で明らかの如く、本発明の方法は、任意の基材1の上に任意の模様層2、任意の昇華性模様層3及び表面保護層4を設けて熱処理を施すことによつて上記の表面保護層4上に凹部5を賦与して、装飾効果並びに立体効果等を現出させてなる化粧材を製造する方法であつて、従来、凹部を形成する方法において使用する型ロール、型板等を全く使用しないものである。
従つて、本発明の方法においては、化粧材上の任意の模様と化粧材上に賦与した任意の形状の凹凸との整合がはずれるということは全く認められないものである。
更に又、本発明の方法においては、印刷方法等によつて極めて複雑かつ微細な任意の模様層2、任意の昇華性模様層3等を設けることができるので凹部5も複雑かつ微細なものを形成することができ、例えば、木理模様等を現出させる場合には、天然木のそれと全く同じものを有する化粧材を製造することができるものである。
上記の如く、本発明の方法は、凹凸模様を機械的に刻設する際に生ずる種々の欠点を改良するばかりでなく、極めて安価に厚い基材或は薄い基材等に対しても従来にない立体感を賦与してその装飾効果をあげかつ容易に量産し得る方法である。
更に又、本発明の方法においては、上記の如く形成された凹部とそれ以外の部分との間で表面粗度と共に表面光沢の複雑な変化を与えることができる。
上記の如き本発明の方法によつて得られる化粧材は、種々の用途に適し、例えば、任意の基材1として各種の紙を使用する場合には化粧紙を得ることができ、又、同じく合板或は金属板等を使用する場合には、化粧合板或は化粧金属板等を得ることができ、上記の如き化粧材は、例えば、壁材、天井材等の建築材料、家具或は建具材、弱電等のキヤビネツト材等として極めて有用なものである。
以下に実施例をあげて、本発明の方法について更に具体的に説明する。尚、実施例中部とあるは重量部である。
実施例1.
化粧原紙の上に、下記に示す配合割合のものを充分混練してなるインキ組成物を使用してグラビヤ印刷方式によつて木理模様を印刷した。
(インキ組成物)
ニトロセルローズ 15部(当審注:「ニトロセルローズ」は「ニトロセルロース」の誤記と認める。以下同じ。)
無機顔料 12部
醋酸エチル 25部
メタノール 28部
トルエン 20部
合 計 100部
次に、上記の如く木理模様を印刷した後、該木理模様の導管溝部分に下記に示す配合割合よりなるものを充分混練してなる昇華性物質を含むインキ組成物を使用してグラビヤ印刷方式によつて導管溝部分の印刷を行なつた。
(昇華性物質を含むインキ組成物)
ニトロセルローズ 15部
無機顔料 12部
醋酸エチル
メタノール }53部
トルエン
テトラハイドロインダスレン 20部
合 計 100部
次に、上記の如く木理模様と導管溝部分の印刷を行なつた後、その全面にポリウレタン樹脂組成物を、ロールコート法で乾燥後の厚さが約3μ位になるように塗布し、次いで予備乾燥して上記の木理模様等の印刷部分を保護すると共に表面強度を賦与する表面保護層を設け、しかる後約80℃で5分間位加熱処理を施して、導管溝の部分に凹部を有して表面粗度と光沢が異なる立体感に富む化粧紙を得た。
尚、上記で得た化粧紙を常法に従つて合板に貼り合わせたり、或は壁等に貼り合わせた結果、天然木と同等の効果を得た。
上記において、化粧原紙の代りに、目止塗料並びに下地塗料を施した合板、プライマー・コートを施した鋼板等を使用し、上記と同様に行つて上記と同様な結果を得た。」(4ページ右下欄7行~5ページ右下欄18行)
「実施例3.
上記の実施例1において、昇華性物質を含むインキ組成物として下記に示す配合割合よりなるものを充分混練した組成物を使用し、かつスクリーン線数が150線で版深が約70μのグラビア版で印刷する以外は、上記の実施例1と同様に行なつて、化粧紙、化粧合板、化粧鋼板等を同様に得た。
(昇華性物質を含むインキ組成物)
ニトロセルロース 15部
可塑剤 DOP 3部
アリザリン・ブルー 4部
セリトン・レツド 4部
セリトン・イエロー 3.2部
ロイコキニザリン 20部
酢酸エチル
イソプロピルアルコール}50.8部
トロール
合 計 100.0部」(6ページ右上欄3~20行)
「
[図:0001397727000001.jpg]
」
イ 引用発明
上記アの記載事項を総合しつつ、実施例3に着目すると、引用文献4には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「化粧原紙の上に、下記に示す配合割合のものを充分混練してなるインキ組成物を使用してグラビヤ印刷方式によって木理模様を印刷し、
次に、木理模様を印刷した後、該木理模様の導管溝部分に下記に示す配合割合よりなるものを充分混練してなる昇華性物質を含むインキ組成物を使用してグラビヤ印刷方式によって導管溝部分の印刷を行い、
次に、木理模様と導管溝部分の印刷を行った後、その全面にポリウレタン樹脂組成物を塗布し、次いで予備乾燥して表面保護層を設け、しかる後、加熱処理を施して得た化粧紙。
(インキ組成物)
ニトロセルロース 15部
無機顔料 12部
醋酸エチル 25部
メタノール 28部
トルエン 20部
合 計 100部
(昇華性物質を含むインキ組成物)
ニトロセルロース 15部
可塑剤 DOP 3部
アリザリン・ブルー 4部
セリトン・レツド 4部
セリトン・イエロー 3.2部
ロイコキニザリン 20部
酢酸エチル
イソプロピルアルコール}50.8部
トロール
合 計 100.0部」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「化粧原紙」、「昇華性物質」、「化粧紙」は、それぞれ、本件補正発明の「原紙」、「昇華性物質」、「化粧シート」に相当する。
引用発明の「化粧原紙の上に」印刷される「木理模様」及び「該木理模様の導管溝部分に」行われる「導管溝部分の印刷」は、本件補正発明の「前記原紙の一方の面に積層された絵柄模様層」に相当する。
引用発明の「導管溝部分の印刷」が「昇華性物質を含むインキ組成物を使用して」行われることは、本件補正発明の「前記絵柄模様層の少なくとも一部は、昇華性物質を含」むことに相当する。
引用発明の「昇華性物質を含むインキ組成物」が「(昇華性物質を含むインキ組成物)
ニトロセルロース 15部
可塑剤 DOP 3部
アリザリン・ブルー 4部
セリトン・レツド 4部
セリトン・イエロー 3.2部
ロイコキニザリン 20部
酢酸エチル
イソプロピルアルコール}50.8部
トロール
合 計 100.0部」に示される配合割合よりなることは、「昇華性物質」である「ロイコキニザリン」が「1,4,9,10-テトラヒドロキシアントラセン」等の別名で知られるアントラセン系の物質であるから、本件補正発明の「前記昇華性物質は、アントラセン系、トリアゾール系、トリアジン系のいずれか一つもしくは2以上の物質からな」ることに相当する。
引用発明の「昇華性物質を含むインキ組成物を使用して」行われる「導管溝部分の印刷」は、本件補正発明の「前記昇華性物質を含む昇華性物質保有部」に相当する。
引用発明の「(インキ組成物)
ニトロセルロース 15部
無機顔料 12部
醋酸エチル 25部
メタノール 28部
トルエン 20部
合 計 100部」に示される配合割合の「インキ組成物を使用して」印刷される「木理模様」は、本件補正発明の「前記昇華性物質を含まない昇華性物質非保有部」に相当する。
イ そうすると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「原紙と、
前記原紙の一方の面に積層された絵柄模様層と、を備える化粧シートであって、
前記絵柄模様層の少なくとも一部は、昇華性物質を含み、
前記昇華性物質は、アントラセン系、トリアゾール系、トリアジン系のいずれか一つもしくは2以上の物質からなり、
前記絵柄模様層は、前記昇華性物質を含む昇華性物質保有部と、前記昇華性物質を含まない昇華性物質非保有部と、を有する化粧シート。」
【相違点】
本件補正発明では、「前記昇華性物質保有部は、前記絵柄模様層が形成する絵柄模様の中で、艶消状、または、艶状の質感を表現する箇所に形成されている」のに対して、引用発明では、当該構成について特定されていない点。
(4)判断
ア 以下、上記相違点について検討する。
引用文献4には、「昇華性模様層2(当審注:「2」は「3」の誤記と認める。)と対応する表面保護層4上に凹部5が形成され」(4ページ右下欄12~13行)、「上記の如く形成された凹部とそれ以外の部分との間で表面粗度と共に表面光沢の複雑な変化を与えることができる」(5ページ右上欄6~9行)ことが記載され、また、実施例3が「実施例1と同様に行なつて、化粧紙を…同様に得た」(6ページ右上欄8~9行)ものであるところ、その実施例1では「導管溝の部分に凹部を有して表面粗度と光沢が異なる立体感に富む化粧紙を得た」(5ページ右下欄9~10行)ことが記載されている。
そうすると、引用発明の昇華性物質保有部(導管溝部分の印刷(昇華性模様層3))は、絵柄模様(木理模様、導管溝部分)において、昇華性模様層3とそれ以外の部分との間で、表面粗度と表面光沢が異なるように機能する部分であるといえる。
そして、表面粗度や表面光沢の程度をどの程度にするかは、必要とされる木理模様のデザインや装飾効果に応じて、当業者が適宜設計し得たものであり、引用発明における木理模様が、木理模様と導管溝部分からなる絵柄模様の中で、艶消状、または、艶状の質感を表現するようにすることに困難性はない。
イ また、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものであり、格別顕著なものということはできない。
ウ したがって、本件補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3.本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~7に係る発明は、令和3年8月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。また、その請求項6に係る発明(以下「本願発明6」という。本件補正前後で同じ発明である。)は、その請求項6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項6】
原紙と、前記原紙の一方の面に積層された絵柄模様層と、を備える化粧シートの製造方法であって、
前記絵柄模様層の少なくとも一部に、昇華性物質を印刷する昇華性物質印刷工程を含み、
前記昇華性物質印刷工程では、前記絵柄模様層を、前記昇華性物質を印刷した昇華性物質保有部と、前記昇華性物質を印刷しない昇華性物質非保有部と、で形成し、さらに、前記昇華性物質保有部を、前記絵柄模様層が形成する絵柄模様の中で、艶消状、または、艶状の質感を表現する箇所に形成することを特徴とする化粧シートの製造方法。」
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、本願発明1、6は、引用文献4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4の記載事項は、第2[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明1は、第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「昇華性物質」が「アントラセン系、トリアゾール系、トリアジン系のいずれか一つもしくは2以上の物質からな」ることに係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、第2[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、引用発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。
また、本願発明6は、物を生産する方法の発明であって、物の発明である本願発明1とカテゴリー表現上の差異があるだけの発明である。よって、上記のとおり本願発明1について検討したのと同様に、本願発明6も、引用発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明1、6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
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