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特許拒絶査定不服審判

2022-020935

メーターアセンブリの減衰の判定

審判番号
2022-020935
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-507608外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年12月23日
審決日
2024年01月24日
公報発行日
2024年07月26日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G01F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-507608「メーターアセンブリの減衰の判定」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月20日国際公開、WO2020/036584、令和 3年12月 9日国内公表、特表2021-534390〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成30年(2018年)8月13日を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和3年 4月 9日 :翻訳文の提出
令和4年 3月15日付け :拒絶理由通知書

同年 6月27日 :意見書及び手続補正書の提出

同年 8月22日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)

(同月30日 :原査定の謄本の送達)

同年12月23日 :審判請求書の提出

第2 本願発明について

1 請求項1における「判定する」という語の解釈について

(1) 令和4年6月27日に提出された手続補正書により補正された請求項1(以下「補正後の請求項1」という。)には、「流量計(5)のメーターアセンブリ(10)の減衰を判定するメーター電子機器(20)であって、」との記載があるところ、「流量計(5)のメーターアセンブリ(10)の減衰」の何を「メーター電子機器(20)」によって「判定する」のか不明であって、日本語の記載として明瞭でない。

この点に関し、補正後の請求項1には、さらに「前記メーターアセンブリ(10)の総減衰関連値を判定する」という記載があり、「メーターアセンブリ(10)の減衰を判定する」という語句における判定対象は、実際には「メーターアセンブリ(10)の総減衰関連値」であるとしても、「総減衰関連値」という「値」を「判定する」ということの意味は不明であるから、当該記載を参酌したとしても日本語の記載として不明瞭であることに変わりはない。

(2)ア(ア)a そこで、本願の国際出願日における請求の範囲の記載を参照すると、前記(1)で指摘した補正後の請求項1の記載箇所に対応する原語の記載は、「A meter electronics (20) for determining a damping of a meter assembly (10) of a flow meter (5),」となっている。

b 原語と翻訳文の記載を対比すると、補正後の請求項1の記載における「判定する」という語は、原語の記載における「determining」に対応するものと理解される。

(イ) そして、一般に、「determining」は「決定する」という意味である。

(ウ) 前記部分における「判定する」という語を「決定する」という意味に解釈した場合には、明細書の記載に照らして特段の不整合は認められず、前記(1)において指摘した日本語の記載としての不明瞭さは解消される。

イ 以上より、前記(1)で指摘した請求項1の記載における「判定する」という語は、「決定する」と翻訳すべきところの誤訳であり、前者を後者の意味に解釈するのが相当である。

ウ また、補正後の請求項1に記載の「前記1つ以上の減衰セクション(430a、530a~530f)および前記1つ以上の立ち上がりセクション(430b、630a~630f)に基づいて、前記メーターアセンブリ(10)の総減衰関連値を判定する」の「判定する」についても、同様の理由により、「決定する」という意味に解釈するのが相当である。

2 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記1の検討結果を踏まえて補正後の請求項1の記載の誤訳を改めた次の記載により特定されるとおりのものと認める。なお、下線は当合議体が付したもので、誤訳を改めた箇所を示す。また、「総減衰関連値」という用語の考察に用いるので、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2から請求項8についても摘記した。

「【請求項1】
流量計(5)のメーターアセンブリ(10)の減衰を決定するメーター電子機器(20)であって、前記メーター電子機器(20)が、実質的に共振周波数における前記メーターアセンブリ(10)の励起に対する応答を含む振動応答を前記メーターアセンブリ(10)から受信するインターフェース(201)と、前記インターフェース(201)と通信する処理システム(203)と、を備え、前記処理システム(203)が、
前記インターフェース(201)から前記振動応答を受信し、
前記振動応答の複数の応答電圧(V)であって、1つ以上の減衰セクション(430a、530a~530f)および1つ以上の立ち上がりセクション(430b、630a~630f)のうちの少なくとも1つを含む複数の応答電圧(V)を測定し、
続きを表示(全19行)
前記1つ以上の減衰セクション(430a、530a~530f)および前記1つ以上の立ち上がりセクション(430b、630a~630f)に基づいて、前記メーターアセンブリ(10)の総減衰関連値を決定するように構成されている、メーター電子機器。
【請求項2】
前記1つ以上の減衰セクション(430a、530a~530f)および1つ以上の立ち上がりセクション(430b、630a~630f)のうちの少なくとも1つが、周期的応答電圧プロット(430、530、630)である、請求項1に記載のメーター電子機器(20)。
【請求項3】
前記1つ以上の減衰セクション(530a~530f)が、応答電圧減衰曲線からなり、前記1つ以上の立ち上がりセクション(630a~630f)が、応答電圧立ち上がり曲線からなる、請求項1または請求項2に記載のメーター電子機器(20)。
【請求項4】
前記メーターアセンブリ(10)の前記総減衰関連値が、前記1つ以上の減衰セクション(430a、530a~530f)に基づく前記メーターアセンブリ(10)の総減衰特性値である、請求項1から3のいずれか一項に記載のメーター電子機器(20)。
【請求項5】
前記処理システム(203)が、さらに、前記総減衰特性値に基づいて減衰特性を判定するように構成されている、請求項4に記載のメーター電子機器(20)。
【請求項6】
前記総減衰特性値が、前記1つ以上の減衰セクション(530a~530f)にそれぞれ対応する部分減衰特性の平均である、請求項4に記載のメーター電子機器(20)。
【請求項7】
前記メーターアセンブリ(10)の前記総減衰関連値が、前記メーターアセンブリ(10)の総減衰特性値である、請求項1から6のいずれか一項に記載のメーター電子機器(20)。
【請求項8】
前記メーターアセンブリ(10)の前記総減衰特性値が、前記メーターアセンブリ(10)の平均減衰特性からなる、請求項7に記載のメーター電子機器(20)。」

第3 原査定における拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由の概要は、次のとおりである。

理由1(進歩性の欠如)

本願発明は、その出願前に発行された特開2011-237353号公報(以下「引用文献1」という。)に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定

1 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定

(1) 引用文献1の記載事項

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前記引用文献1には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したもので、引用発明の認定に直接用いる記載に付した。

ア 【0001】~【0008】

「【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動手段により駆動力を与えて振動させた振動管に作用するコリオリ力に基づいて前記振動管を流れる流体の流量を計測するコリオリ流量計に関する。
【背景技術】
続きを表示(全22行)
【0002】
プラントで使用される流量計の一方式として、コリオリ流量計が知られている。コリオリ流量計は、流体が流れるU字管をコイルの励磁により振動させ、U字管の内部を通過する流体により生ずるコリオリ力をU字管のねじれを介して計測するものである。流体の流量に応じてコリオリ力が増大するため、U字管のねじれの幅や位相を介して流量を計測することが可能となる。
【0003】
コリオリ流量計では、U字管のねじれを利用して流量を計測するため、U字管の腐食等が進行すると、流量計測に誤差を生じさせる。また、U字管のメンテナンス上からも腐食等を把握することが望ましい。
【0004】
特表2009-509163号公報には、U字管の腐食の指標としてばね定数Kの変化を利用するものが開示されている。この例では、ばね定数Kを計測する際に、コリオリのU字管を駆動する励磁電流を切って振動を減衰させる。この減衰特性はζωで表される。ここで、ζは減衰定数、ωは角周波数を表す。Q=1/2ζで減衰曲線を計測することによりζωが決定される。ばね定数KはK=QDωで算出される。ここで、Dは機械的減衰係数で増幅器の増幅ゲインGに比例する。また、ω=2πFであり、振動の周波数Fから求められる。この方式では、流速、流体の密度と無関係にU字管のばね定数Kを求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009-509163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の方式でばね定数を算出する場合には、流体に気泡がわずかに混入してもζが不規則に変化し、大きな誤差を生み易い。Qは通常5000程度あり、減衰率ζωはU字管の構造で決まってしまい変更できない。このため、短時間で減衰率を求めようとすると、減衰幅が小さくなり誤差が大きくなる場合がある。また逆に、減衰させる時間を長くしてばね定数Kの算出精度を上げようとすると、振幅がゼロに近い領域まで計算対象となり、ノイズの影響を受ける。
【0007】
また、U字管のばね定数だけではU字管の内部への付着物の状況を判断できないという問題もある。
【0008】
本発明の目的は、振動管の状態を正確に診断することができるコリオリ流量計を提供することにある。」

イ 【0020】~【0023】、【図1】

「【0020】
図1(a)は本実施形態のコリオリ流量計の発振回路を示す図、図1(b)はコリオリセンサユニットの構成を示す図、図1(c)は本実施形態のコリオリ流量計の制御系を示すブロック図である。
【0021】
図1(a)に示すように、本実施形態のコリオリ流量計は、U字管の振動を検出するコリオリセンサユニット1と、U字管の振動を維持するための駆動電流をコリオリセンサユニット1に与える電流増幅器2と、コリオリセンサユニット1の出力信号を増幅する増幅器3と、増幅器3の出力信号の振幅を抽出する平滑回路4と、平滑回路4の出力信号と目標電圧Vrefとの差分を増幅する制御増幅器5と、固定ゲイン設定電圧Eを出力する電圧設定部6と、制御増幅器5の出力信号ΔVまたは電圧設定部6の出力値である固定ゲイン設定電圧Eのいずれかを選択するスイッチ7と、増幅器3の出力信号およびスイッチ7で選択された信号(以下、発振帰還ゲインGと呼ぶ)を乗算する乗算器8と、を備える。電流増幅器2は乗算器8の出力信号を増幅し、コリオリセンサユニット1に向けて上記駆動電流を出力する。なお、増幅器3の出力信号は、コリオリ力(U字管のねじれの振幅ないし位相)を検出するための信号としても使用される。
【0022】
図1(b)に示すように、コリオリセンサユニット1は、U字管と、U字管を振動させるための加振器10と、U字管の振動を取得するセンサA11a、B12bと、によって構成される。加振器10は、電流増幅器2からの駆動電流よってU字管を振動させる。センサA11a、B12bは、U字管の振動より得る電圧を増幅器3に出力する。本実施例のコリオリ流量計では、1つだけのセンサの使用で、振動管(U字管)の状態を診断することができる。以下、センサユニット1による出力は、センサA11aを使用するものとする。なお、センサB11bを用いてもセンサA11aを用いた場合と同様の診断効果を得ることができる。
【0023】
図1(c)に示すように、電圧設定部6およびスイッチ7は演算制御部9に接続され、演算制御部9により制御される。また、演算制御部9はU字管の診断に必要な演算および処理を実行する。U字管の診断に必要な演算および処理については後述する。」
「【図1】
[図:0001411801000001.jpg]
」

ウ 【0024】~【0034】、【図2】

「【0024】
次に、本実施形態のコリオリ流量計の動作について説明する。
【0025】
通常動作時には、スイッチ7により制御増幅器5の出力信号ΔVが選択される。この場合、制御増幅器5の出力信号ΔVは平滑回路4の出力信号(振幅)に応じて変化し、回路ループは平滑回路4の出力信号を目標電圧Vrefに一致させるように作用する。このときの発振帰還ゲインGのことを発振帰還ゲインG0と呼ぶ。この回路ループは定常状態では一定振幅で発振し、U字管は一定振幅で振動する状態となる。この状態でU字管のねじれを検出して流量を測定する。
続きを表示(全35行)
【0026】
図2(a)は、通常動作時におけるコリオリセンサユニット1の出力信号(増幅器3の出力信号)を示している。図2(a)に示すように、U字管の振幅に応じてコリオリセンサユニット1の出力信号は概略一定の振幅を示す。
【0027】
一方、診断動作時には、スイッチ7により固定ゲイン設定電圧Eが選択される。また、U字管の振動が減衰または成長するように、固定ゲイン設定電圧Eが所定の固定値に設定される。図2(b)はU字管の振動が減衰する場合のコリオリセンサユニット1の出力信号を示す図、図2(c)はU字管の振動が成長する場合のコリオリセンサユニット1の出力信号を示す図である。
【0028】
本実施形態のコリオリ流量計では、発振帰還電流ゲインGをG1,G2に順次切り替えることにより、U字管の振動を成長、減衰させて振幅の成長率と減衰率とを求め、最終的にばね定数Kおよびダンピング(減衰)係数Dを算出する。以下、ばね定数K、ダンピング係数D等を算出する原理について説明する。
【0029】
まず、U字管の振動方程式は、(1)式で示される。
Md2X/dt2+DdX/dt+KX=GdX/dt ・・・(1)式
ここで、X:U字管の振動の変位、M:U字管全体の質量、D:ダンピング係数、K:U字管のばね定数、G:発振帰還電流ゲイン、ω:角周波数である。
【0030】
(1)式の右辺の「GdX/dt」は電流増幅器2からコリオリセンサユニット1に与えられる駆動電流に基づく作用力に相当し、「G」は制御増幅器5の出力信号ΔVおよび固定ゲイン設定電圧Eにより規定される。
【0031】
(1)式の両辺をMで割ると、(2)式、D/M=2ζω、ω=sqrt(K/M)より(3)式、(4)式のように順次変形できて、(5)式を得る。
d2X/dt2+DdX/Mdt+K/M・X=G/M・dX/dt ・・・(2)式
d2X/dt2+2ζωdX/dt+ω2X=G/M・dX/dt ・・・(3)式
d2X/dt2+(2ζω-G/M)dX/dt+ω2X=0 ・・・(4)式
X=Aexp{-ζω+G/(2M)}t×sin(ωt) ・・・(5)式
【0032】
このように、U字管の振動の変位Xは減衰/成長する正弦波の波形をとる。また、U字管の振動の変位Xに比例するコリオリセンサユニット1の出力信号は、同様に減衰/成長する正弦波の波形となる。
【0033】
発振帰還電流ゲインGをG1(G1>G0)としたときのコリオリセンサユニット出力の2乗値の積分値の増減率をα1(>1)、発振帰還電流ゲインGをG2(G0>G2)としたときのコリオリセンサユニット出力の2乗値の積分値の増減率をα2(<1)としたとき、
α1={-2ζω+G1/M}×ΔT・・・(6)式
α2={-2ζω+G2/M}×ΔT・・・(7)式
と置くと、(6)式および(7)式より、
M=(G1-G2)/(α1-α2) ・・・(8)式
となる。なお、増減率>1は振幅の成長を、増減率<1は振幅の減衰をそれぞれ示す。
【0034】
このような手順で、ばね定数Kおよびダンピング係数Dを算出することができる。
K=M×ω2 ・・・(9)式
D=G1-(α1×M)/ΔT ・・・(10)式」

エ 【0035】~【0060】、【図3】、【図4】、【図5】

「【0035】
図3は、診断動作時における演算制御部9の動作を示すフローチャートである。
【0036】
図3のステップS1では、通常動作時における角周波数ωを測定する。各周波数ωは増幅器3の出力信号(Asin(ωt))などに基づいて測定することができる(図1)。
続きを表示(全78行)
【0037】
次に、ステップS2では、制御増幅器5の出力信号ΔVを測定する。これにより、通常動作時における発振帰還電流ゲインGを求めることができる。
【0038】
次に、ステップS3では、診断開始時刻t0に到達したか否か判断し、判断が肯定されればステップS4へ進み、判断が否定されればステップS1へ戻る。
【0039】
ステップS4では、スイッチ7を制御増幅器5の出力信号ΔVを選択する側から、電圧設定部6の出力値である固定ゲイン設定電圧Eを選択する側に切り替える。また、電圧設定部6の固定ゲイン設定電圧Eの値を、発振帰還電流ゲインGがG1となる値に設定する。これにより、コリオリセンサユニット出力の2乗値の積分値の増減率αがα1(>1)に設定される。
【0040】
図4(a)はコリオリセンサユニット出力の2乗値の積分値の増減率αの変化を示す図、図4(b)はコリオリセンサユニット出力の変化を示す図である。図4(a)および図4(b)に示すように、増減率αは時刻t0で1からα1(>1)に切り替わる。また、それまでほぼ一定値を保っていた増幅器3の出力信号(Asin(ωt))の振幅が、時刻t0から増大し始める。
【0041】
次に、ステップS5では、時刻t1になるまで、すなわちL秒間、期間i=1~Nのそれぞれについて正弦波の振幅の増減率(成長率)を計算する。次に、ステップS6では、ステップS5で算出された増減率の平均値を算出する。
【0042】
図5(a)は、ステップS5の処理を示す図である。
【0043】
図5(a)に示すように、ステップS5では、Δtずつの期間(i=1~N)のそれぞれについて
正弦波:A×exp(-ζωt+G1/2M)t×sin(ωt+φ)
の2乗和Sjの計算を行う。
【0044】
[図:0001411801000002.jpg]
【0045】
仮にコリオリセンサユニット出力のサンプリングレートが0.001秒でΔtの期間、すなわちサンプリング数Nが1000であれば、Sjの積分時間は1秒となる。これをL回繰り返して実行すれば、全部でL秒となる。
隣接する振幅の増減率Rは、
R=Sj/Sj-1=exp{(-2ζω+G1/M)・ΔT} ・・・(12)式
として算出される。これをjが1からLまで繰り返す。
【0046】
ステップS6では、L回算出された増減率Rの平均値RAVEを算出する。すなわち、
【0047】
[図:0001411801000003.jpg]
【0048】
これから、増減率α1(>1)は時間当たりの平均値RAVE、
α1=ln(RAVE)/ΔT=-2ζω+G1/M ・・・(14)式
として算出される。
【0049】
次に、図3のステップS7では、時刻t1において、電圧設定部6の固定ゲイン設定電圧Eの値を、発振帰還電流ゲインGがG2となる値に設定する。これにより、コリオリセンサユニット出力の2乗値の積分値の増減率αがα2(<1)に設定される。これにより、図4(a)および図4(b)に示すように、増減率αは時刻t1でα1(>1)からα2(<1)に切り替わる。また、それまで増大していた増幅器3の出力信号(Asin(ωt))の振幅が、時刻t1から減少し始める。
【0050】
次に、ステップS8では、時刻t2になるまで、すなわちL秒間、期間i=1~Nのそれぞれについて正弦波の振幅の増減率(減衰率)を計算する。次に、ステップS9では、ステップS8で算出された増減率の平均値を算出する。
【0051】
ステップS8およびステップS9では、それぞれステップS6およびステップS7と同様の処理が実行される。すなわち、図5(b)に示すように、ステップS8では、Δtずつの期間(i=1~N)のそれぞれについて
正弦波:A×exp(-ζωt+G2/2M)t×sin(ωt+φ)
の2乗和Sjの計算を行う。以下、ステップS5およびステップS6と同様の演算を実行することにより、増減率α2(<1)は、
α2=ln(RAVE)/ΔT=-2ζω+G2/M ・・・(15)式
として算出される。
【0052】
次に、ステップS10では、時刻t2(図4)において、スイッチ7を電圧設定部6の出力値である固定ゲイン設定電圧Eを選択する側から制御増幅器5の出力信号ΔVを選択する側に切り替える。これにより通常動作に戻るため、増減率αがほぼ1となり、正弦波の振幅がほぼ一定値に維持されるようになる(図4)。
【0053】
次に、ステップS11では、U字管の全体質量M、ばね定数Kおよびダンピング係数Dを算出する。
【0054】
(14)式および(15)式よりζωを消去すると、以下のようにU字管の全体質量Mが計算される。
M=(G1-G2)/(α1-α2) ・・・(16)式
【0055】
全体質量Mは、U字管の腐食によって変化するが管内の流体密度にも依存する。このため全体質量Mは診断変数として使用できないが、式(9)、式(10)に従って、流体密度や流体の速度に依存しないばね定数Kおよびダンピング係数Dを計算することができる。
【0056】
次に、ステップS12では、(9)式で算出されたばね定数Kが所定値Aよりも小さいか否か判断し、判断が肯定されればステップS13へ進み、判断が否定されればステップS14へ進む。
【0057】
ステップS13では、U字管の腐食が進行している旨を示すアラームを発報し、ステップS1へ戻る。
【0058】
ステップS14では、(10)式で算出されたダンピング係数Dが所定値Bよりも大きいか否か判断し、判断が肯定されればステップS15へ進み、判断が否定されればステップS1へ戻る。
【0059】
ステップS15では、U字管の内壁への付着物の付着が進行している旨を示すアラームを発報し、ステップS1へ戻る。
【0060】
以上の処理のうち、ステップS1~ステップS9の処理が増減率取得手段の機能に、ステップS11の処理が算出手段の機能に、ステップS12~ステップS15の処理が診断手段の機能に、それぞれ相当する。
【0061】
このように、本実施形態のコリオリ流量計では、U字管の振動方程式((1)式)を用いて、ばね定数Kおよびダンピング係数Dを互いに独立したパラメータとして算出しているので、U字管の腐食や付着物の状況を独立して診断することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態のコリオリ流量計では、励磁電流を切らずに、適当な発振帰還電流ゲインを与えながら正弦波の振幅の増減率を取得するため、増減率を適切な値となるように制御することができる。このため、診断に必要なパラメータを精度良く求めることが可能となる。
【0063】
さらに、コリオリセンサユニット出力の2乗積分値の変化率を計算することにより、任意の時間帯の成分値の増加率または減少率の平均値を容易に算出することができる。また、2つのゲインG1,G2を設定することにより、Q値を求める必要がない。なお、ゲインをゼロとすることでQ値を測定することも可能である。
【0064】
また、増加率および減少率の差α1-α2を計算するので、気泡などの外乱の影響が抑制できる。また、増減率を任意に設定できるので、診断動作に要する時間も短縮化できる。例えば、G1,G2の変化幅を大きく設定すれば、短時間での診断が可能となる。
【0065】
また、本実施形態のコリオリ流量計では、図4(b)に示すように、発振帰還電流ゲインG1、G2を適切な値とすることにより、正弦波の振幅の増減率を取得する間、コリオリ流量計としての機能を発揮できる範囲にU字管の振幅範囲を抑制することができる。このため、診断動作時においても流量を並行して正確に測定することができ、オンライン診断が可能となる。また、通常動作に戻るのにほとんど時間を要しない。なお、上記実施形態では、振幅を増加から減少に転じるようにしているが、図4(c)に示すように、例えば、発振帰還電流ゲインをG2からG1に順次切り替えることで、振幅を減少から増加に転じるようにしてもよい。この場合にも、コリオリ流量計としての機能を発揮できる範囲にU字管の振幅範囲を抑制することで、診断動作時においても流量を正確に測定することが可能となる。
【0066】
さらに、本実施形態のコリオリ流量計では、L回算出された増減率Rの平均値に基づいて増減率α1、α2を算出している。このため、外乱の影響等を受けることなく、正確に増減率を計算できるとともに、正確なばね定数Kおよびダンピング係数Dを算出することが可能となる。例えば、U字管で気泡が発生した場合には、正弦波の実際の波形には気泡の発生状況に応じて相応の乱れが生ずる。しかし、増減率Rを多数回計算しこれらを平均化することで、気泡の混入に起因する正弦波の乱れの影響を効果的に排除することができる。
【0067】
なお、上記実施形態では、α1>1、α2<1としているが、α1=1あるいはα2=1となるようなG1あるいはG2を選択してもよい。」
「【図3】
[図:0001411801000004.jpg]
」
「【図4】
[図:0001411801000005.jpg]
」
「【図5】
[図:0001411801000006.jpg]
」

(2) 引用文献1の記載から認定した事項

ア 認定事項1

(ア) 引用文献1の段落【0020】には、次の記載がある。

「図1(c)は本実施形態のコリオリ流量計の制御系を示すブロック図である。」

(イ) 引用文献1の段落【0023】には、次の記載がある。

「図1(c)に示すように、電圧設定部6およびスイッチ7は演算制御部9に接続され、演算制御部9により制御される。また、演算制御部9はU字管の診断に必要な演算および処理を実行する。」

(ウ) 前記(ア)及び(イ)より、引用文献1には、次の事項が記載されていると認められる(以下「認定事項1」という。)。

<認定事項1>

「演算制御部9、電圧設定部6及びスイッチ7は、コリオリ流量計の制御系であること。」

イ 認定事項2

引用文献1の段落【0036】、【0040】及び【0049】には、通常動作時における増幅器3の出力信号が「Asin(ωt)」で表されることが記載されている。これらの記載を参照しつつ【図1】を見ると、次の事項が見て取れる(以下「認定事項2」という。)。

<認定事項2>

「増幅器3は、通常動作時において正弦波の出力信号(Asin(ωt))を出力し、演算制御部9は、増幅器3の出力信号を受信するものであること。」

ウ 認定事項3

引用文献1の段落【0039】~【0041】及び【0049】~【0050】を参照しつつ【図4】の(b)を見ると、次の事項が見て取れる(以下、それぞれ「認定事項3-1」及び「認定事項3-2」という。)。

<認定事項3-1>

「時刻t0からt1の間は、発振帰還電流ゲインGがG1であり、増幅器3の出力信号の振幅が増大し続けること。」

<認定事項3-2>

「時刻t1からt2の間は、発振帰還電流ゲインGがG2であり、増幅器3の出力信号の振幅が減少し続けること。」

エ 認定事項4

(ア) 段落【0055】には、「式(9)、式(10)に従って、流体密度や流体の速度に依存しないばね定数Kおよびダンピング係数Dを計算することができる」と記載されている。

ここで、D=G1-(α1×M)/ΔT ・・・(10)式

(イ)a 式(6)式と式(14)、及び、式(7)と式(15)を対比すると、それぞれの式は同じ「α1」及び「α2」の標記を用いていても、ΔTだけ次元(ディメンジョン)が相違している。

α1={-2ζω+G1/M}×ΔT・・・(6)式

α2={-2ζω+G2/M}×ΔT・・・(7)式

α1=ln(RAVE)/ΔT=-2ζω+G1/M ・・・(14)式

α2=ln(RAVE)/ΔT=-2ζω+G2/M ・・・(15)式

b 前記aの点を踏まえると、段落【0055】においては、式(10)ではなく、式(10)の右辺から「/ΔT」を削除した下記の式(10’)を用いるべきであると認められる。

D=G1-(α1×M) ・・・(10’)式

(3) 引用発明の認定

前記(1)において摘記した事項及び前記(2)において認定した認定事項1~認定事項4を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

<引用発明>

「 U字管の診断に必要な演算および処理を実行する演算制御部9であって、(【0023】)
コリオリ流量計は、U字管の振動を検出するコリオリセンサユニット1と、U字管の振動を維持するための駆動電流をコリオリセンサユニット1に与える電流増幅器2と、コリオリセンサユニット1の出力信号を増幅する増幅器3と、増幅器3の出力信号の振幅を抽出する平滑回路4と、平滑回路4の出力信号と目標電圧Vrefとの差分を増幅する制御増幅器5と、固定ゲイン設定電圧Eを出力する電圧設定部6と、制御増幅器5の出力信号ΔVまたは電圧設定部6の出力値である固定ゲイン設定電圧Eのいずれかを選択するスイッチ7と、増幅器3の出力信号およびスイッチ7で選択された信号を乗算する乗算器8と、を備え、(【0021】)
電圧設定部6およびスイッチ7は演算制御部9に接続され、演算制御部9により制御され、(【0023】)
演算制御部9、電圧設定部6及びスイッチ7は、コリオリ流量計の制御系であり、(認定事項1)
続きを表示(全39行)
コリオリセンサユニット1は、U字管と、U字管を振動させるための加振器10と、U字管の振動を取得するセンサA11a、B12bと、によって構成され、
加振器10は、電流増幅器2からの駆動電流によってU字管を振動させ、
センサA11a、B12bは、U字管の振動より得る電圧を増幅器3に出力し、(【0022】)
増幅器3は、通常動作時において正弦波の出力信号(Asin(ωt))を出力し、演算制御部9は、増幅器3の出力信号を受信するものであり(認定事項2)、
診断動作時には、スイッチ7により固定ゲイン設定電圧Eが選択され、U字管の振動が減衰または成長するように、固定ゲイン設定電圧Eが所定の固定値に設定され、(【0027】)
コリオリ流量計では、発振帰還電流ゲインGをG1,G2に順次切り替えることにより、U字管の振動を成長、減衰させて振幅の成長率と減衰率とを求め、最終的にばね定数Kおよびダンピング(減衰)係数Dを算出するものであり、(【0028】)
U字管の振動方程式は、(1)式で示され、
Md2X/dt2+DdX/dt+KX=GdX/dt ・・・(1)式
ここで、X:U字管の振動の変位、M:U字管全体の質量、D:ダンピング係数、K:U字管のばね定数、G:発振帰還電流ゲイン、ω:角周波数であり、(【0029】)
U字管の振動の変位Xは減衰/成長する正弦波の波形をとり、U字管の振動の変位Xに比例するコリオリセンサユニット1の出力信号は、同様に減衰/成長する正弦波の波形となるものであり、(【0032】)
診断動作時における演算制御部9の動作において、(【0035】)
ステップS3では、診断開始時刻t0に到達したか否か判断し、判断が肯定されればステップS4へ進み、(【0038】)
ステップS4では、スイッチ7を制御増幅器5の出力信号ΔVを選択する側から、電圧設定部6の出力値である固定ゲイン設定電圧Eを選択する側に切り替え、
電圧設定部6の固定ゲイン設定電圧Eの値を、発振帰還電流ゲインGがG1となる値に設定し、これにより、コリオリセンサユニット出力の2乗値の積分値の増減率αがα1(>1)に設定され、それまでほぼ一定値を保っていた増幅器3の出力信号(Asin(ωt))の振幅が、時刻t0から増大し始め、(【0039】、【0040】)
時刻t0からt1の間は、発振帰還電流ゲインGがG1であり、増幅器3の出力信号の振幅が増大し続け、(認定事項3-1)
ステップS5では、時刻t1になるまで、すなわちL秒間、期間i=1~Nのそれぞれについて正弦波の振幅の増減率(成長率)を計算し、(【0041】)
ステップS6では、L回算出された増減率Rの平均値RAVEを算出し、増減率α1(>1)を時間当たりの平均値RAVEより、
α1=ln(RAVE)/ΔT=-2ζω+G1/M ・・・(14)式
として算出し、(【0046】、【0048】)
ここで、D/M=2ζω、ω=sqrt(K/M)であり、(【0031】)
ステップS7では、時刻t1において、電圧設定部6の固定ゲイン設定電圧Eの値を、発振帰還電流ゲインGがG2となる値に設定し、これにより、コリオリセンサユニット出力の2乗値の積分値の増減率αがα2(<1)に設定され、それまで増大していた増幅器3の出力信号(Asin(ωt))の振幅が、時刻t1から減少し始め、(【0049】)
時刻t1からt2の間は、発振帰還電流ゲインGがG2であり、増幅器3の出力信号の振幅が減少し続け、(認定事項3-2)
ステップS8では、時刻t2になるまで、すなわちL秒間、期間i=1~Nのそれぞれについて正弦波の振幅の増減率(減衰率)を計算し、(【0050】)
ステップS9では、ステップS8で算出された増減率の平均値を算出し、(【0050】)
ステップS8およびステップS9では、それぞれステップS6およびステップS7と同様の処理が実行され、ステップS5およびステップS6と同様の演算を実行することにより、増減率α2(<1)は、
α2=ln(RAVE)/ΔT=-2ζω+G2/M ・・・(15)式
として算出され、(【0051】)
ステップS10では、時刻t2において、スイッチ7を電圧設定部6の出力値である固定ゲイン設定電圧Eを選択する側から制御増幅器5の出力信号ΔVを選択する側に切り替え、(【0052】)
ステップS11では、U字管の全体質量M、ばね定数Kおよびダンピング係数Dを算出し、以下のようにU字管の全体質量Mが計算され、
M=(G1-G2)/(α1-α2) ・・・(16)式
(【0053】、【0054】)
ステップS11では、式(9)、式(10)に従って、流体密度や流体の速度に依存しないばね定数Kおよびダンピング係数Dを計算することができる、
K=M×ω2 ・・・(9)式
D=G1-(α1×M) ・・・(10’)式(【0055】、認定事項4、【0034】)
演算制御部9。」

2 技術常識1

(1) 引用文献2の記載事項

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原査定において周知技術を示す文献として引用された、本願出願前に発行された文献である特表2009-509163号公報(以下「引用文献2」という。)の段落【0001】~【0008】には、次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、流量計の検証診断のための流量計電子装置と方法に関する。
【背景技術】
続きを表示(全21行)
【0002】
典型的には、コリオリ流量計や振動管密度計のような振動管路センサは、流動物質を含む振動管路の運動を検出することによって動作する。管路における物質に関連する質量流量、密度などの特性は、管路に関連する運動変換器から受信される測定信号を処理することによって決定することができる。一般に、振動物質で充填された系の振動モードは、収容する管路とそこに含まれる物質との結合された質量、剛性及び減衰特性によって影響される。
【0003】
振動型流量計の管路は1つ以上の流管を備えることができる。流管は共振周波数で振動するよう強制され、管の共振周波数は流管における流体の密度に比例する。管の入力側及び出力側に配置されたセンサが、管の端部間の相対振動を測定する。流れ期間に、振動管と流れる質量とがコリオリの力に起因して結合され、管の端部間での振動に位相ずれを生じさせる。位相ずれは質量流量に正比例する。
【0004】
典型的なコリオリ質量流量計は、パイプライン又は他の移送システムにおいてインライン接続されていて流体やスラリ等の物質をシステムにおいて運搬する1つ以上の管路を備える。それぞれの管路は、単純な曲げモード、捻れモード、放射モード、結合モードなどを含む一組の固有振動モードを持つものとみなされる。典型的なコリオリ質量流量測定の応用においては、物質が流れるとき、管路は1つ以上の振動モードで励振され、管路の運動が管路に沿って離れた点で測定される。典型的には、励振は、管路を周期的に振動させるボイスコイル型駆動装置のような例えば電気機械的な装置であるアクチュエータによって提供される。質量流量は、変換器の位置における運動間の時間遅延又は位相差を測定することによって決定される。典型的には、1つ又は複数の流管の振動応答を測定するために、2つのこうした変換器(又はピックオフ・センサ)が用いられ、典型的にはアクチュエータの上流側又は下流側の位置に配置される。2つのピックオフ・センサはケーブルによって電子的機器に接続される。機器は2つのピックオフ・センサから信号を受け取り、その信号を処理して質量流量測定値を導出する。
【0005】
2つのセンサ信号間の位相差は、1つ又は複数の流管を通って流れる物質の質量流量と関係付けられる。物質の質量流量は2つのセンサ信号間の時間遅延に比例し、したがって、質量流量は、時間遅延に流れ校正係数(FCF)を乗じることによって決定される。この場合、時間遅延は位相差を周波数で割ったものである。FCFは物質特性と流管の断面特性とを反映する。従来技術においては、FCFは、流量計をパイプライン又は他の管路に設置する前に校正処理によって決定される。校正処理においては、所与の流量で流体を流管に流し、位相差と流量との比率を計算する。
【0006】
コリオリ流量計の1つの利点は、測定される質量流量の精度が流量計における運動要素の摩耗によって影響されないことである。流量は、流管の2つの点の間の位相差に流れ校正係数を乗じることによって決定される。唯一の入力は、流管上の2つの点の振動を示すセンサからの正弦波信号である。位相差はこうした正弦波信号から計算される。振動する流管には運動要素はない。したがって、位相差の測定及び流れ校正係数は流量計の運動要素の摩耗によって影響されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
FCFは流量計組立体の剛性特性と関係付けられる。流量計組立体の剛性特性が変化すると、FCFも変化する。したがって、変化は、流量計によって生成される流量測定値の精度に影響する。流管の物質特性及び断面特性の変化は、例えば浸食又は腐食によって生じる。したがって、流量計の精度を高レベルに維持するために、流量計組立体の剛性の変化を検出及び/又は定量化することができることが極めて望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施の形態に係る流量計のための流量計電子装置が提供される。流量計電子装置は、流量計からの振動応答を受け取るインタフェースと、インタフェースと通信する処理システムとを備える。振動応答は、実質的に共振周波数における流量計の振動に対する応答を含む。処理システムは、インタフェースから前記振動応答を受け取り、振動応答の周波数(ω0)を決定し、振動応答の応答電圧(V)と駆動電流(I)を決定し、流量計の減衰特性(ζ)を測定し、周波数(ω0)、応答電圧(V)、駆動電流(I)及び減衰特性(ζ)から剛性パラメータ(K)を決定するよう構成される。」

(2) 技術常識1

前記(1)で示した摘記事項に例示されるように、次に示す事項は、本願の出願前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)。

[技術常識1]

「コリオリ流量計の動作において、流管を共振周波数で振動させること。」

第5 対比・判断

1 対比

(1) 対比分析

本願発明と引用発明を対比する。

ア(ア)a 引用発明における「コリオリ流量計」は、本願発明における「流量計」に相当する。

b 引用発明における「コリオリセンサユニット1」は、「U字管と、U字管を振動させるための加振器10と、U字管の振動を取得するセンサA11a、B12bと、によって構成され[る]」(【0022】)ものであるから、本願発明における「メーターアセンブリ」に相当する。

c(a) 引用発明の「演算制御部9」は、コリオリ流量計という「メーター」において用いられるものである。

(b) そして、引用発明の「演算制御部9」は、コリオリ流量計において、「U字管の診断に必要な演算および処理を実行する」(【0023】)ものであるから、電子機器であることは明らかである。

(c) したがって、引用発明の「演算制御部9」は、本願発明の「メーター電子機器」に相当する。

(イ)a 引用発明において、「ダンピング(減衰)係数D」は次の(1)式で示されるU字管の振動方程式の左辺第2項の係数であるから、「ダンピング(減衰)係数D」はコリオリ流量計のU字管の振動の減衰を表す値である。

「Md2X/dt2+DdX/dt+KX=GdX/dt ・・・(1)式
ここで、X:U字管の振動の変位、M:U字管全体の質量、D:ダンピング係数、K:U字管のばね定数、G:発振帰還電流ゲイン、ω:角周波数であ[る]」(【0029】)

b したがって、引用発明において、「コリオリ流量計」の「U字管」の「ダンピング(減衰)係数Dを算出する」ことは、本願発明において、「流量計(5)のメーターアセンブリ(10)の減衰を決定する」ことに相当する。

(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、「流量計のメーターアセンブリの減衰を決定するメーター電子機器」の発明である点において一致する。

イ(ア)a 引用発明において、「加振器10が電流増幅器2からの駆動電流よってU字管を振動させ[る]」こと(【0022】)は、「コリオリセンサユニット1」のU字管を励起することに相当する。

b そして、引用発明における増幅器3の出力信号は、通常動作時においては、正弦波Asin(ωt)であり、診断動作時においては、発振帰還電流ゲインGがG1であるかG2であるかに応じて、振幅が増大するか減少する正弦波の波形となるのであるから、いずれにしてもsin(ωt)という振動成分を有していることに変わりはない(引用文献1の【0031】の(5)式を参照)。

c そうすると、引用発明における増幅器3の出力信号は、電流増幅器2からの駆動電流による加振器10の振動に対するU字管の振動応答を示すものであるといえるから、本願発明における、「メーターアセンブリの励起に対する応答を含む振動応答」に相当する。

(イ) 引用発明における「演算制御部9」は、増幅器3の正弦波の出力信号を受信するものであ[り](認定事項2)、正弦波の振幅の増減率(成長率)を計算[する](【0041】、【0050】)ものであるから技術常識を考慮すると、増幅器3の出力信号を受信するインターフェース及び当該インターフェースと通信する処理システムを備えることは明らかである。

(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において共通する。

「メーターアセンブリの励起に対する応答を含む振動応答を前記メーターアセンブリから受信するインターフェースと、前記インターフェースと通信する処理システムと、を備え[る]」点、及び、

「前記処理システムは、前記インターフェースから振動応答を受信する」点。

ウ(ア)a 引用発明は、ステップS4において、「時刻t0からt1の間は、発振帰還電流ゲインGがG1であり、増幅器3の出力信号の振幅が増大し続け[る]」(認定事項3-1)ものであるところ、引用発明における「ステップS4」の「時刻t0からt1の間」は、本願発明における「立ち上がりセクション」に相当する。

b また、引用発明は、ステップS7において、「時刻t1からt2の間は、発振帰還電流ゲインGがG2であり、増幅器3の出力信号の振幅が減少し続け[る]」(認定事項3-2)ものであるところ、引用発明における「ステップS7」の「時刻t0からt1の間」は、本願発明における「減衰セクション」に相当する。

(イ) 引用発明は、「ステップS7では、時刻t1になるまで、すなわちL秒間、期間i=1~Nのそれぞれについて正弦波の振幅の増減率(成長率)を計算[する]」(【0041】)ものであり、「ステップS8では、時刻t2になるまで、すなわちL秒間、期間i=1~Nのそれぞれについて正弦波の振幅の増減率(減衰率)を計算[する]」(【0050】)ものでもあるから、ステップS7とステップS8の各期間i=1~Nのそれぞれについて、増幅器3の正弦波の出力を電圧として複数測定することは明らかであり、この引用発明における複数の測定電圧である「増幅器3の正弦波の出力」は、本願発明における「振動応答の複数の応答電圧」に相当する。

(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。

「前記処理システムが、
前記振動応答の複数の応答電圧であって、1つ以上の減衰セクションおよび1つ以上の立ち上がりセクションのうちの少なくとも1つを含む複数の応答電圧を測定[する]」点。

エ(ア)a 引用発明は、次の構成を備えている。

「ステップS5では、時刻t1になるまで、すなわちL秒間、期間i=1~Nのそれぞれについて正弦波の振幅の増減率(成長率)を計算し」(【0041】)、

「ステップS6では、L回算出された増減率Rの平均値RAVEを算出し、増減率α1(>1)を時間当たりの平均値RAVEより、
α1=ln(RAVE)/ΔT=-2ζω+G1/M ・・・(14)式
として算出[する]」(【0046】、【0048】)構成。

b 前記ウ(ア)aにおいて検討したとおり、引用発明における「時刻t0からt1の間」は、本願発明における「立ち上がりセクション」に相当するから、引用発明は、処理システムが、「立ち上がりセクション」に基づいて、「増減率α1」を算出するものであるといえる。

(イ)a 引用発明は、次の構成を備えている。

「ステップS8では、時刻t2になるまで、すなわちL秒間、期間i=1~Nのそれぞれについて正弦波の振幅の増減率(減衰率)を計算し」(【0050】)、

「ステップS9では、ステップS8で算出された増減率の平均値を算出し」(【0050】)、

「ステップS8およびステップS9では、それぞれステップS6およびステップS7と同様の処理が実行され、ステップS5およびステップS6と同様の演算を実行することにより、増減率α2(<1)は、
α2=ln(RAVE)/ΔT=-2ζω+G2/M ・・・(15)式
として算出され[る]」(【0051】)構成。

b 前記ウ(ア)bにおいて検討したとおり、引用発明における「時刻t1からt2の間」は、本願発明における「減衰セクション」に相当するから、引用発明においては、処理システムが、「減衰セクション」に基づいて、「増減率α2」を算出するものであるといえる。

(ウ)a(a) 引用発明はステップS11で「U字管の全体質量M」を次の(16)式で計算し(【0053】、【0054】)、

「M=(G1-G2)/(α1-α2) ・・・(16)式」

同じくステップS11で、「式(10’)に従って、流体密度や流体の速度に依存しない」「ダンピング係数Dを計算することができる」ものである(【0055】、認定事項4、【0034】、)。

「D=G1-(α1×M) ・・・(10’)式」

(b) すなわち、引用発明は、処理システムが、「増減率α1」及び「増減率α2」を用いて「U字管の全体質量M」を計算し、「増減率α1」及び「U字管の全体質量M」を用いて「ダンピング係数D」を計算するものである。

b(a) ここで、U字管の全体質量Mは、(16)式を用いて、増減率α1、増減率α2に基づいて求められるものであるところ、式(16)と式(10’)から、全体質量Mを介することなく明示的にDを計算可能なように式変形すると、次のようになる。

D=(G2α1-G1α2)/(α1-α2) ・・・(10”)式

(b) 上記(10”)式によれば、「ダンピング係数D」も、「増減率α1」及び「増減率α2」に基づいて計算されるものである。

(c) したがって、引用発明は、演算制御部9が、一つ以上の「時刻t0からt1の間」(「立ち上がりセクション」に相当する。)及び一つ以上の「時刻t1からt2の間」(「減衰セクション」に相当する。)に基づいて「ダンピング係数D」を決定するように構成されているといえる。

c そして、前記(イ)aにおいて検討したとおり、引用発明の「ダンピング(減衰)係数D」は、コリオリ流量計のU字管の振動の減衰を表す値であるから、メーターアセンブリの減衰に関連する物理量の値であるといえる。

(エ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において共通する。

「処理システムが、
前記1つ以上の減衰セクションおよび前記1つ以上の立ち上がりセクションに基づいて、前記メーターアセンブリの減衰に関連する物理量の値を決定するように構成されている」点。

(2) 一致点及び相違点の認定

前記(1)の対比分析の結果を総合すると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ、次のア及びイに示すとおりである。

ア 一致点

「 流量計のメーターアセンブリの減衰を決定するメーター電子機器であって、
メーター電子機器が、メーターアセンブリの励起に対する応答を含む振動応答を前記メーターアセンブリから受信するインターフェースと、前記インターフェースと通信する処理システムと、を備え、前記処理システムが、
前記インターフェースから前記振動応答を受信し、
前記振動応答の複数の応答電圧であって、1つ以上の減衰セクションおよび1つ以上の立ち上がりセクションのうちの少なくとも1つを含む複数の応答電圧を測定し、
前記1つ以上の減衰セクションおよび前記1つ以上の立ち上がりセクションに基づいて、前記メーターアセンブリの減衰に関連する物理量の値を決定するように構成されている、
メーター電子機器」である点。

イ 相違点

(ア) 相違点1

「メーターアセンブリの励起」(引用発明における「加振器10によるコリオリセンサユニット1のU字管の振動」が相当する。)の周波数が、

本願発明においては、「実質的に共振周波数」であるのに対し、

引用発明においては、「実質的に共振周波数」であることの明示の特定はない点。

(イ) 相違点2

前記1つ以上の減衰セクションおよび前記1つ以上の立ち上がりセクションに基づいて決定される、メーターアセンブリの減衰に関連する物理量の値が、

本願発明においては、

「総減衰関連値」であるのに対して、

引用発明においては、

「時刻t1からt2の間」(「減衰セクション」に相当する。)に基づいてL回算出された増減率Rの平均値RAVEを算出することにより計算された「増減率α1」及び「時刻t0からt1の間」(「立ち上がりセクション」に相当する。)に基づいてL回算出された増減率Rの平均値RAVEを算出することにより計算された「増減率α2」の双方を用いて計算された「ダンピング係数D」である点。

2 判断

(1) 相違点1について

前記第4の2(2)において技術常識1として示したとおり、コリオリ流量計の動作において、流管を共振周波数で振動させることは技術常識であるから、引用発明における、加振器10によるコリオリセンサユニット1のU字管の振動を、実質的に共振周波数によって行うようにすることは、当業者にとって極めて自明のことにすぎない。

(2) 相違点2について

ア 流量計及びメーター電子機器の技術分野において、「総減衰関連値」という語句は、確立された専門用語ではない。

イ このため、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載を参照すると、明細書の発明の詳細な説明には、「総減衰関連値」という用語を定義する記載はない。

ウ そこで、「総減衰関連値」という用語に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載を参照して考察することにする。

(ア)a まず、「総減衰関連値」という語句における「減衰関連値」という用語に関連した記載として次の記載がある。なお、前記第2の1において示したとおり「判定される」は「決定される」の意味に解釈することが相当である。)

「【0102】
図4~図6に関する上記の説明は、平均減衰関連値(例えば、平均減衰特性C、平均減衰特性ζavgなど)について説明しているが、任意の適切な減衰関連値を使用することができる。例えば、減衰に関連するが、減衰特性または減衰特性ではない値を使用することができる。追加的または代替的に、総減衰関連値は、平均値以外のものとすることができる。例えば、総減衰関連値は、平均、加重平均などとすることができる。追加的または代替的に、総減衰関連値は、任意の適切な方法で判定されることができる。
…(中略)…
【0105】
メーターアセンブリの総減衰関連値は、1つ以上の減衰セクションに基づくメーターアセンブリの総減衰特性値とすることができる。例えば、減衰ベースの平均減衰特性Cavgは、それぞれ、図4および図5に示される減衰セクション430a、530a~530fに基づいて判定されることができる。この方法はまた、総減衰特性値に基づいて減衰特性を判定することができる。例えば、減衰ベースの平均減衰特性Cavgは、減衰セクション430a、530a~530fに基づいて判定されることができる。追加的または代替的に、総減衰特性値は、1つ以上の減衰セクションにそれぞれ対応する部分減衰特性の平均とすることができる。
【0106】
メーターアセンブリの総減衰関連値は、メーターアセンブリの総減衰特性値とすることができる。例えば、総減衰特性は、平均減衰特性Cavgとすることができる。すなわち、メーターアセンブリの総減衰特性値は、メーターアセンブリの平均減衰特性から構成されることができる。」

b(a) 前記aに摘記した明細書の段落【0102】、【0105】及び【0106】の記載を参酌すると、「減衰関連値」という用語には、「減衰特性」それ自体を表す物理量の値も含まれることが理解される。

(b) なお、「減衰関連値」という用語に「減衰特性」それ自体を表す物理量の値も含まれることは、次に再掲した、請求項1の記載を引用する請求項7や請求項8の記載を参酌しても明らかである。

「 【請求項7】
前記メーターアセンブリ(10)の前記総減衰関連値が、前記メーターアセンブリ(10)の総減衰特性値である、請求項1から6のいずれか一項に記載のメーター電子機器(20)。
【請求項8】
前記メーターアセンブリ(10)の前記総減衰特性値が、前記メーターアセンブリ(10)の平均減衰特性からなる、請求項7に記載のメーター電子機器(20)。」

(イ)a 次に「減衰関連値」の頭に「総」の文字をかぶせ、「総減衰関連値」という用語を用いた場合にどのような意味を有するか検討する。

関連する発明の詳細な説明の記載としては、明細書の段落【0102】~【0108】の次の記載がある。

「【0102】
図4~図6に関する上記の説明は、平均減衰関連値(例えば、平均減衰特性C、平均減衰特性ζavgなど)について説明しているが、任意の適切な減衰関連値を使用することができる。例えば、減衰に関連するが、減衰特性または減衰特性ではない値を使用することができる。追加的または代替的に、総減衰関連値は、平均値以外のものとすることができる。例えば、総減衰関連値は、平均、加重平均などとすることができる。
…(中略)…
【0106】
メーターアセンブリの総減衰関連値は、メーターアセンブリの総減衰特性値とすることができる。例えば、総減衰特性は、平均減衰特性Cavgとすることができる。すなわち、メーターアセンブリの総減衰特性値は、メーターアセンブリの平均減衰特性から構成されることができる。
【0107】
…(中略)…
総減衰関連値は、1つ以上の減衰セクション430a、530a~530fまたは1つ以上の立ち上がりセクション430b、630a~630fから判定されるため、ノイズ、または他の偽のデータ破損は、メーターアセンブリの判定された減衰にそれほど大きな変動を引き起こさない可能性があるため、より再現性の高いメーター検証を保証する。
【0108】
したがって、とりわけ、1つ以上の減衰セクション430a、530a~530fおよび1つ以上の立ち上がりセクション430b、630a~630fのうちの少なくとも1つに基づいて、メーターアセンブリの総減衰関連値を判定することを含む技術的解決策は、例えば、メーターアセンブリの減衰の不正確な判定を引き起こす可能性のある応答電圧プロット430、530、630のノイズの技術的課題を解決するために使用されることができる。」

b 前記aに摘記した明細書の段落【0102】、【0106】~【0108】の記載を参酌すると、「総減衰関連値」を用いることの技術上の意義(技術効果)は、平均、加重平均などを用いることにより、単一のデータセットに基づく場合に比較してノイズに起因する不正確さが軽減されることであることが理解される。

ただし、「平均、加重平均など」の表現から理解されるとおり、平均や加重平均に限定されるものではない。

(ウ) 以上の検討を踏まえると、「総減衰関連値」という用語は、確立された専門用語ではなく、明細書の発明の詳細な説明の記載に定義もないところ、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、「減衰特性」それ自体を表す物理量の値も含まれ、平均、加重平均など複数のデータセットに基づいて決定されたものであり、単一のデータセットに基づく場合に比較してノイズに起因する不正確さが軽減されるという効果を奏するもの、という程度の意味と解釈すべきである。

エ(ア) 前記1(1)エ(ウ)において示したとおり、引用発明においては、立ち上がりセクションにおいて計算される「増減率α1」及び減衰セクションにおいて計算される「増減率α2」の双方とも、L回算出された増減率Rの平均値RAVEを算出することにより計算されるものであり、単一のデータセットに基づく場合に比較してノイズに起因する不正確さが軽減されるものであることは明らかである。

そして、「ダンピング係数D」は、式(10”)の「D=(G2α1-G1α2)/(α1-α2)」に基づいて算出されるものであり、成長(「立ち上がり」に相当する。)と減衰の双方のデータを用いるものであり、気泡の混入に起因する正弦波の乱れの影響を効果的に排除することができるという効果をする(引用文献1の【0066】)ものである。

(イ) したがって、引用発明における「ダンピング係数D」は「減衰特性」それ自体を表す物理量の値であって、複数のデータセットに基づいて決定されたものであり、単一のデータセットに基づく場合に比較してノイズに起因する不正確さが軽減されるものといえる。

(ウ) よって、引用発明における「ダンピング係数D」は、本願発明における「総減衰関連値」に含まれると解釈すべきである。

オ 以上検討のとおりであるから、前記相違点2は実質的な相違点ではない。

(3) 総合評価

前記(1)及び(2)において検討したとおり、相違点1に係る本願発明の構成は、極めて自明のものであり、また、相違点2も実質的な相違点でないから、相違点1及び相違点2は、いずれも格別のものではない。

そして、相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、本願発明の奏する効果としては、当業者にとって予測困難であり、かつ、格別顕著なものを認めることはできない。

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

3 請求人の主張について

(1) 審判請求書の主張内容

請求人は審判請求書において、次のことを主張している。

<請求人の主張>

本願請求項1の

「総減衰関連値」という用語は、U字管全体の質量Mを含む式から算出されるダンピング係数Dを、その範囲に含まない。具体的には、拒絶査定謄本での解釈は、「総減衰関連値」の「総」との修飾子を無視したものである。引用文献1の式(10)と、例えば本願明細書の段落[0098]-[0102](総減衰関連値が、減衰及び立ち上がりの特性値の平均値、加重平均値等でありうることが説明されている)とを比較されたい。総減衰関連値は、減衰及び立ち上がりの特性値を総合した値に関連するものであることが分かる。これは、引用文献1のダンピング係数Dとは全く異なるものである。

U字管全体の質量Mを決定する式(8)では、ゲインに対する比を表す分母において、増減率α1とα2とを減算している。この式から分かるように、質量Mは、増減率α1とα2を「総合」したものではない。式(8)では、2つの増減率α1とα2との差が、G1とG2との差を分子とする比の分母となっている。したがって、式(8)及び式(10)によりダンピング係数Dを求めるとの教示は、請求項1の、「前記1つ以上の減衰セクション(430a、530a~530f)および前記1つ以上の立ち上がりセクション(430b、630a~630f)に基づいて、前記メーターアセンブリ(10)の総減衰関連値を判定する」ことに反しているのは明らかである。

(2) 請求人の主張に対する当審の判断

前記2(2)において検討したとおり、引用発明における「ダンピング係数D」は、本願発明における(前記1つ以上の減衰セクションおよび前記1つ以上の立ち上がりセクションに基づいて決定された前記メーターアセンブリの)「総減衰関連値」に含まれると解釈するのが相当であるから、請求人の前記(1)の主張は、採用できない。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-020935

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