審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2022-020242

液晶硬化膜、液晶硬化膜を含む光学フィルム、及び表示装置

審判番号
2022-020242
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-018521外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年12月13日
審決日
2023年12月19日
公報発行日
2024年03月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021- 18521「液晶硬化膜、液晶硬化膜を含む光学フィルム、及び表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 7月 1日出願公開、特開2021- 99496〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特願2021-18521号(以下「本件出願」という。)は、平成28年7月25日(先の出願に基づく優先権主張 平成27年7月24日)に出願された特願2016-145787号の一部を分割して、令和元年6月27日に新たな特許出願とした特願2019-120437号の一部を分割して、令和3年2月8日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和4年 1月24日付け:拒絶理由通知書 令和4年 5月10日 :意見書、手続補正書の提出 令和4年 8月31日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和4年12月13日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和4年12月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年12月13日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 (1)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、令和4年5月10日に提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された、次のとおりである。 「 【請求項1】 粘接着剤層と、重合性液晶化合物を重合してなる液晶硬化膜と、粘接着剤層及び被転写体とをこの順に含む積層体であって、 前記液晶硬化膜が、300nm以上、380nm以下の範囲に極大吸収波長を有し、 前記液晶硬化膜が、さらに、光重合開始剤組成物を含み、式(Y)、式(1)及び式(2)を満たし、 前記光重合開始剤組成物は、分子内にオキシム構造を有する光重合開始剤を含む、積層体。 97>(1-P’/P0)×100≧73…(Y) (式中、P’は液晶硬化膜の厚さ方向に対して垂直な2つの面におけるP値のうち、値が小さい方の面におけるP値を表す。 P0は上記重合性液晶化合物のP値を表す。 P値は、I(1)/I(2)で表される。 I(1)は赤外全反射吸収スペクトル測定によるエチレン性不飽和結合の面内変角振動由来のピーク強度を表し、I(2)は赤外全反射吸収スペクトル測定による芳香環の不飽和結合の伸縮振動由来のピーク強度を表す。) Re(450)/Re(550)≦1.00 …(1) 1.00≦Re(650)/Re(550) …(2) (式中、Re(450)は波長450nmの光に対する面内位相差値を、Re(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を、Re(650)は波長650nmの光に対する面内位相差値を表す。)」 (2)本件補正後の請求項1に係る発明 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。 「 【請求項1】 粘接着剤層と、重合性液晶化合物を重合してなる液晶硬化膜と、粘接着剤層及び被転写体とをこの順に含む積層体であって、 前記液晶硬化膜が、300nm以上、380nm以下の範囲に極大吸収波長を有し、 前記液晶硬化膜が、さらに、光重合開始剤組成物を含み、式(Y)、式(1)及び式(2)を満たし、 前記光重合開始剤組成物は、分子内にオキシム構造を有する光重合開始剤およびα-アセトフェノン化合物を含む、積層体。 97>(1-P’/P0)×100≧73…(Y) (式中、P’は液晶硬化膜の厚さ方向に対して垂直な2つの面におけるP値のうち、値が小さい方の面におけるP値を表す。 P0は上記重合性液晶化合物のP値を表す。 P値は、I(1)/I(2)で表される。 I(1)は赤外全反射吸収スペクトル測定によるエチレン性不飽和結合の面内変角振動由来のピーク強度を表し、I(2)は赤外全反射吸収スペクトル測定による芳香環の不飽和結合の伸縮振動由来のピーク強度を表す。) Re(450)/Re(550)≦1.00 …(1) 1.00≦Re(650)/Re(550) …(2) (式中、Re(450)は波長450nmの光に対する面内位相差値を、Re(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を、Re(650)は波長650nmの光に対する面内位相差値を表す。)」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)の、発明を特定するために必要な事項である「光重合開始剤組成物」について、本件出願の出願当初の明細書の【0077】等の記載に基づいて、「α-アセトフェノン化合物」をさらに含むものとするよう限定して、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)とする補正事項を含むものである。 そうしてみると、本件補正は特許法17条の2第3項に規定する要件(新規事項の追加の禁止)を満たすものであり、また、同条第5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲の限定的減縮)を目的とする補正に該当する。 そこで、本件補正発明が特許法17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 3 独立特許要件違反についての判断 (1)引用文献の記載事項及び引用発明 ア 引用文献2の記載 原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用され、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2012-21068号公報(平成24年2月2日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定又は判断で利用した箇所である。(以下同様である。) (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、組成物及び光学フィルムに関する。 ・・・中略・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 従来の光学フィルムでは、高湿高温の条件で保管した場合の耐性(耐湿熱性)について必ずしも十分満足できるものではなかった。 【課題を解決するための手段】 【0005】 上記課題を解決することができた本発明の組成物は、式(A)で表される化合物、酸化防止剤及び光重合開始剤を含むことを特徴とする。 【0006】 【化1】 [図:0001407390000001.jpg] [式(A)中、X1は、-S-、-O-又は-NR1-を表す。R1は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。 Y1は、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、又は、炭素数3~12の芳香族複素環式基を表す。 Q1及びQ2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基、1価の炭素数6~20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR2R3又は-SR2を表し、Q1及びQ2は、互いに結合して芳香環又は芳香族複素環を形成していてもよい。R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基を表す。 D1及びD2は、それぞれ独立に、単結合、-CO-O-、-CS-O-、-CR4R5-、-CR4R5-CR6R7-、-O-CR4R5-、-CR4R5-O-CR6R7-、-CO-O-CR4R5-、-O-CO-CR4R5-、-CR4R5-O-CO-CR6R7-、-CR4R5-CO-O-CR6R7-、-NR4-CR5R6-又は-CO-NR4-を表す。 R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。 G1及びG2は、それぞれ独立に、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる-CH2-は、-O-、-S-又は-NH-で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる-CH(-)-は、-N(-)-で置き換っていてもよい。 L1及びL2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、L1及びL2からなる群から選ばれる少なくとも1種が、重合性基を有する基を表す。] ・・・中略・・・ 【発明の効果】 【0012】 本発明によれば、耐湿熱性に優れた光学フィルムを得ることができる。」 (イ)「【発明を実施するための形態】 【0014】 1.組成物 本発明の組成物は、式(A)で表される化合物(以下「化合物(A)」という場合がある)、酸化防止剤(B)及び光重合開始剤(C)を含む。 【0015】 1-1.化合物 本発明の組成物は、化合物(A)を含む。 ・・・中略・・・ 【0195】 化合物(A)の含有量は、固形分に対して、10~99.9質量%が好ましく、20~99質量%がより好ましく、50~97質量%がさらに好ましく、80~95質量%が特に好ましい。化合物(A)の含有量が前記の範囲であれば、広い波長域において一様の偏光変換が可能となる。ここで、固形分とは、本発明の組成物から後述する溶剤成分を除く量をいう。化合物(A)は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。 【0196】 1-2.酸化防止剤(B) 本発明の組成物は、酸化防止剤(B)を含む。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤が挙げられる。中でも、光学フィルムの着色が少ないという点で、フェノール系酸化防止剤が好ましい。 【0197】 前記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、 ・・・中略・・・ 等が挙げられる。 ・・・中略・・・ 【0206】 1-3.光重合開始剤(C) 本発明の組成物は光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、光の作用により活性ラジカルを発生し、化合物(A)の重合を開始しうる化合物である。光重合開始剤としては、アルキルフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、オキシム化合物等が挙げられる。 【0207】 前記アルキルフェノン化合物としては、α-アミノアルキルフェノン化合物、α-ヒドロキシアルキルフェノン化合物、α-アルコキシアルキルフェノン化合物が挙げられる。前記α-アミノアルキルフェノン化合物としては、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-(4-メチルフェニルメチル)ブタン-1-オン等が挙げられ、好ましくは2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オン等が挙げられる。前記α-アミノアルキルフェノン化合物は、イルガキュア(登録商標)369、379EG、907(以上、BASFジャパン(株)製)、セイクオール(登録商標)BEE(精工化学社製)等の市販品を用いてもよい。 【0208】 前記α-ヒドロキシアルキルフェノン化合物としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマー等が挙げられる。前記α-ヒドロキシアルキルフェノン化合物は、イルガキュア184、2959、127(以上、BASFジャパン(株)製)、セイクオールZ(精工化学社製)等の市販品を用いてもよい。前記α-アルコキシアルキルフェノン化合物としては、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。前記α-アルコキシアルキルフェノン化合物は、イルガキュア651(以上、BASFジャパン(株)製)等の市販品を用いてもよい。 【0209】 前記アルキルフェノン化合物としては、α-アミノアルキルフェノン化合物が好ましく、式(C-1)で表される化合物がより好ましい。これらの化合物であると、得られる光学フィルムの耐熱性、耐湿熱性に優れる。 ・・・中略・・・ 【0210】 【化128】 [図:0001407390000002.jpg] [式(C-1)中、Q3は、水素原子又はメチル基を表す。] 【0211】 前記ベンゾイン化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。前記ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等が挙げられる。 前記オキシム化合物としては、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1-オン-2-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)オクタン-1-オン-2-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(3,3-ジメチル-2,4-ジオキサシクロペンタニルメチルオキシ)ベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン等が挙げられる。イルガキュアOXE-01、OXE-02(以上、BASFジャパン社製)、N-1919(ADEKA社製)等の市販品を用いてもよい。 【0212】 前記光重合開始剤は、前記アセトフェノン化合物、前記ベンゾイン化合物、前記ベンゾフェノン化合物、前記オキシム化合物等を、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも光重合開始剤としてアセトフェノン化合物を用いることが好ましい。前記アセトフェノン化合物の使用量は、光重合開始剤全量に対して、90質量部以上であることが好ましく、光重合開始剤全量がアセトフェノン化合物であることがより好ましい。 【0213】 光重合開始剤(C)の含有量は、固形分に対して、好ましくは0.1質量%~30質量%であり、より好ましくは0.5質量%~10質量%である。上記範囲内であれば、組成物に含まれる重合性成分を重合する際に、化合物(A)の配向を乱すことをより抑制できる。 ・・・中略・・・ 【0260】 化合物(A)を重合させた後、基材を剥離することにより、配向膜と本発明の光学フィルムとが積層されたフィルムが得られ、さらに、配向膜を剥離して、本発明の光学フィルムを得ることができる。また、他の基材を、本発明の光学フィルムに貼合し、先に積層していた基材を剥離する、あるいは、先に積層していた基材および配向膜を剥離することにより、転写を行うこともできる。 【0261】 3.偏光板 本発明の偏光板は、上述した光学フィルム又は位相差フィルムを少なくとも一つ有するものである。 本発明の偏光板としては、図1(a)~図1(e)に示すように、 ・・・中略・・・ (5)本発明の光学フィルム1と本発明の光学フィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、本発明の光学フィルム1’と偏光フィルム層2とを接着剤層3’を介して貼り合せた偏光板4e(図1(e))等が挙げられる。ここで接着剤とは、接着剤及び/又は粘着剤のことを総称していう。 ・・・中略・・・ 【0264】 接着剤層3及び接着剤層3’に用いられる接着剤は、透明性が高く耐熱性に優れた接着剤であることが好ましい。そのような接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤あるいはウレタン系接着剤等が用いられる。」 (ウ)「【実施例】 【0270】 以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。 【0271】 1.合成例 化合物(A11-1)は下記のスキームに従って合成した。 【0272】 [図:0001407390000003.jpg] ・・・中略・・・ 【0280】 2.組成物の調製 表1に示す各成分を混合し、得られた溶液を80℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却して組成物を調製した。 (合議体注:上記「表1」は、「表2」の誤記である。) 【0281】 【表2】 [図:0001407390000004.jpg] 【0282】 表中のA11-1、v-1、B-1、B-2、C-1~C-10、BYK361Nは以下の化合物を表す。 【0283】 化合物(A); A11-1:合成例1で得られた化合物(A11-1) v-1:式(v-1)で表される化合物 【0284】 【化134】 [図:0001407390000005.jpg] 【0285】 光重合開始剤(B); B-1:式(B-1)で表される化合物(イルガキュア369;BASFジャパン(株)製) 【0286】 【化135】 [図:0001407390000006.jpg] ・・・中略・・・ 【0289】 酸化防止剤(C); C-1:2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール(東京化成工業製) ・・・中略・・・ レベリング剤; BYK361N(ビックケミージャパン社製) 【0290】 3.光学フィルムの作製 ガラス基板に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業(株)製)の2質量%水溶液をスピンコート法により塗布した後、120℃で60分加熱乾燥し、ガラス基板上に厚さ89nmのポリビニルアルコール膜を得た。続いて、ポリビニルアルコール膜の表面にラビング処理を施した。得られたポリビニルアルコール膜に、組成物をスピンコート法により塗布し、ホットプレート上140℃で1分間乾燥させた。その後、80℃に加熱しながらUV露光装置(ユニキュア;ウシオ電機(株)製)を用いて2400mJ/cm2(365nm基準)を照射して、光学フィルムを得た。 【0291】 3-1.位相差値の測定 得られた光学フィルムの正面位相差値を、測定機(KOBRA-WR、王子計測機器社製)を用いて測定した。尚、基材に使用したガラス基板には、複屈折性が無いため、ガラス基板付きフィルムを測定機で計測することにより、ガラス基板上に作製した光学フィルムの正面位相差値を得ることができる。得られた光学測定正面位相差値は、波長451nm、549nm、及び628nmにおいて、それぞれ測定し、[Re(451)/Re(549)](αとする)及び[Re(628)/Re(549)](βとする)を算出した。 ・・・中略・・・ 【0293】 3-3.光学フィルムの耐湿熱性試験 得られた光学フィルムを、温度60℃湿度90%のオーブン中で1000時間保管した。保管前後の位相差値および色度を測定した。保管前のαに対する試験後のαの差を△α、保管前の|a*|に対する保管後の|a*|の差をΔ|a*|、保管前の|b*|に対する保管後の|b*|の差をΔ|b*|として算出した。△αが-0.2以上+0.2以下、かつΔ|a*|およびΔ|b*|が-3.0以上+3.0以下であれば、光学フィルムの耐湿熱性は良好であると判断できる。位相差値の測定結果を表2に、色度の測定結果を表3に示す。 (合議体注:上記「表2」は「表3」の誤記、上記「表3」は「表4」の誤記である。) 【0294】 【表3】 [図:0001407390000007.jpg] 【0295】 【表4】 [図:0001407390000008.jpg] 【0296】 実施例の光学フィルムは、△α、Δ|a*|及びΔ|b*|が小さく、耐湿熱性に優れることが示された。また、実施例の中でも、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤を含有する実施例1~6の光学フィルムは、特にΔ|b*|が小さく、耐湿熱性により優れることが示された。」 (エ) 「【図1】 [図:0001407390000009.jpg] 」 イ 引用文献2に記載された発明 上記「ア(ウ)」の【表2】によれば、実施例1に係る「組成物」は、「化合物(A)」として「A11-1」を27質量%、「光重合開始剤(B)」として「B-1」を2.7質量%、「酸化防止剤(C)」として「C-1」を0.3質量%、「レベリング剤」として「BYK361N」を0.1質量%、「溶剤」として「シクロペンタノン」を69.9質量%の各成分を混合して得られたものである。 ここで、上記「A11-1」及び上記「B-1」は、それぞれ【0272】及び【0286】に、上記「C-1」及び上記「BYK361N」は、ともに【0289】に記載されたとおりのものである。 また、実施例1に係る「光学フィルム」に関して、引用文献2の【0291】には「ガラス基板付きフィルム・・・ガラス基板上に作製した光学フィルム」と記載されていることから、実施例1により作製されるガラス基板付き光学フィルムは、ガラス基板及びガラス基板上の光学フィルムからなる構成を有することは明らかである。 そうしてみると、引用文献2には、実施例1として、以下の「組成物」の発明(以下「引用組成物発明」という。)が記載されている。 また、同文献には、引用組成物発明の組成物を用いて、【0290】に記載の方法で作製された、ガラス基板付き光学フィルムからなる「積層体」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 (ア)引用組成物発明 「以下に示す各成分を混合して得られた溶液を80℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却して調製した組成物。 化合物(A);以下の式で表されるA11-1を27質量% [図:0001407390000010.jpg] 光重合開始剤(B);B-1:以下の式(B-1)で表される化合物(イルガキュア369;BASFジャパン(株)製)を2.7質量% [図:0001407390000011.jpg] 酸化防止剤(C);C-1:2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール(東京化成工業製)を0.3質量% レベリング剤;BYK361N(ビックケミージャパン社製)を0.1質量% 溶剤;シクロペンタノンを69.9質量%」 (イ)引用発明 「ガラス基板と、ガラス基板に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業(株)製)の2質量%水溶液をスピンコート法により塗布した後、120℃で60分加熱乾燥し、ガラス基板上に厚さ89nmのポリビニルアルコール膜を得、続いて、ポリビニルアルコール膜の表面にラビング処理を施し、得られたポリビニルアルコール膜に、引用組成物発明の組成物をスピンコート法により塗布し、ホットプレート上140℃で1分間乾燥させ、その後、80℃に加熱しながらUV露光装置を用いて2400mJ/cm2(365nm基準)を照射して得た、光学フィルムとからなるガラス基板付き光学フィルム。」 ウ 引用文献4の記載 原査定の拒絶の理由で引用文献4として引用され、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて利用可能となった文献である、大和真樹著,「光重合開始剤の現状と課題」,日本印刷学会誌,社団法人日本印刷学会発行,2003年,第40巻,第3号,168頁~175頁(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「 [図:0001407390000012.jpg] 」 (172頁右欄4行~10行) (イ) 「 [図:0001407390000013.jpg] 」 (170頁) (2)対比 本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。 ア 重合性液晶化合物 引用発明の「化合物(A);以下の式で表されるA11-1」は、その化学構造からみて、本件補正発明の「重合性液晶化合物」に相当する。 イ 光重合開始剤組成物 引用発明の「光重合開始剤(B);B-1:式(B-1)で表される化合物(イルガキュア369;BASFジャパン(株)製)」は、技術的にみて、α-アセトフェノン化合物からなる光重合開始剤に該当する。 また、本件出願の明細書の【0073】には、「本発明では、光重合開始剤組成物を使用する。光重合開始剤組成物は、1種の光重合開始剤のみを含んでもよいし、2種以上の光重合開始剤を含んでもよい。」と記載されている。この記載によれば、引用発明の「組成物」のように、光重合開始剤を1種のみ含む組成物の場合、本件補正発明でいう「光重合開始剤組成物」は、当該光重合開始剤そのものを意味すると解される。そうしてみると、引用発明の「光重合開始剤(B);B-1:式(B-1)で表される化合物(イルガキュア369;BASFジャパン(株)製)」は、本件補正発明の「光重合開始剤組成物」に相当するといえる。 以上総合すると、引用発明の「光重合開始剤(B);B-1:式(B-1)で表される化合物(イルガキュア369;BASFジャパン(株)製)」は、本件補正発明において、「α-アセトフェノン化合物を含む、」「光重合開始剤組成物」に相当する。 ウ 液晶硬化膜 引用発明の「光学フィルム」に関して、引用文献2の【0281】及び【表2】によれば、光学フィルムの固形分100質量%に占める、「A11-1」(重合性液晶化合物)の合計の含有量は、89.7質量%であることが理解される。そして、引用発明の「A11-1」の極大吸収波長はλmax(LC)は、350nmと認められるところ、引用発明の「光学フィルム」の全固形分に占める「A11-1」の上記含有割合に照らせば、当該光学フィルムが、300nm以上、380nm以下の範囲に極大吸収波長を有することは明らかである。 (当合議体注:「A11-1」の極大吸収波長が、350nmであることは、本件出願の明細書の【0208】から確認できる事項である。) 以上総合すると、引用発明の「光学フィルム」は、本件補正発明において、「重合性液晶化合物を重合してなる」、「300nm以上、380nm以下の範囲に極大吸収波長を有し」、「光重合開始剤組成物を含み」と特定される、「液晶硬化膜」に相当する。 エ 積層体 引用発明の「ガラス基板付き光学フィルム」は、「ガラス基板」と「ガラス基板」上の「光学フィルム」からなる構成を有することから、本件補正発明の「重合性液晶化合物を重合してなる液晶硬化膜を含む積層体」に相当する。 (3)一致点及び相違点 上記(2)によれば、本件発明と引用発明とは、 「重合性液晶化合物を重合してなる液晶硬化膜を含む積層体であって、前記液晶硬化膜が、300nm以上、380nm以下の範囲に極大吸収波長を有し、さらに、光重合開始剤組成物を含み、前記光重合開始剤組成物は、α-アセトフェノン化合物を含む、積層体。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 「光重合開始剤組成物」が、本件補正発明では、「分子内にオキシム構造を有する光重合開始剤およびα-アセトフェノン化合物を含む」のに対して、 引用発明では、「光重合開始剤(B);B-1:式(B-1)で表される化合物(イルガキュア369;BASFジャパン(株)製)」であって、「分子内にオキシム構造を有する光重合開始剤」を含まない点。 (相違点2) 「液晶硬化膜」が、本件補正発明では、「式(Y)、式(1)及び式(2)を満た」すものであるのに対して、 引用発明では、この要件を満たすか明らかでない点。 (当合議体注:「式(Y)、式(1)及び式(2)」は、上記「第2」で示したものである。) (相違点3) 「積層体」の構成が、本件補正発明では、「粘接着剤層と、重合性液晶化合物を重合してなる液晶硬化膜と、粘接着剤層及び被転写体とをこの順に含む」のに対して、 引用発明では、ガラス基板上に光学フィルムが配置される構成である点。 (4)判断 ア 相違点1について (ア)光重合開始剤に関する引用文献2の記載 上記「第2 3(1)ア」によれば、引用文献2には、「本発明の組成物は光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、光の作用により活性ラジカルを発生し、化合物(A)の重合を開始しうる化合物である。光重合開始剤としては、アルキルフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、オキシム化合物等が挙げられる。」(【0206】)、「前記オキシム化合物としては、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1-オン-2-イミン、・・・中略・・・、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(3,3-ジメチル-2,4-ジオキサシクロペンタニルメチルオキシ)ベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン等が挙げられる。イルガキュアOXE-01、OXE-02(以上、BASFジャパン社製)、N-1919(ADEKA社製)等の市販品を用いてもよい。」(【0211】)及び「前記光重合開始剤は、前記アセトフェノン化合物、前記ベンゾイン化合物、前記ベンゾフェノン化合物、前記オキシム化合物等を、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」(【0212】)と記載されている。 (イ)光重合開始剤についての周知技術 下記a~cの技術事項は、いずれも先の出願時における当業者の周知技術であったと認められる。 a 高感度の光重合開始剤 オキシム(エステル)型光重合開始剤が、他の型の重合開始剤と比較して、感度の高い重合開始剤であること(必要ならば、例えば、原査定の拒絶の理由で引用文献9として引用され、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて利用可能となった引用文献である、特開2010-152217号公報(平成22年7月8日出願公開。以下「引用文献9」という。)の【0204】~【0208】、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて利用可能となった文献である、田町知也,「高感度・高解像度な新規重合開始剤の開発」,第29回エレクトロニクス実装学会春季講演大会,2015年3月,102頁~104頁(以下「引用文献11」という。)の102頁の「2.1高感度化へのアプローチ」(図3を含む。)及び先の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて利用可能となった文献である、清水正晶,「新規な光重合開始剤の開発」,第26回エレクトロニクス実装学会春季講演大会,2012年3月,233頁~235頁(以下「引用文献12」という。)の234頁左欄1行~9行(図5を含む。)等の記載を参照。)。 b オキシム(エステル)型光重合開始剤の極大吸収波長 引用文献12の234頁左欄第3段落~第6段落、図6及び図7の記載によれば、オキシム(エステル)型光重合性化合物のなかでも、一般的なカルバゾール型オキシムエステル開始剤(例えば、引用文献2の【0211】に列挙された「OXE-02」及び「N-1919」等)の感度は313nmなどの短波長域がメインであって、吸収極大波長も当該波長域近傍に存在すること。 c 光重合開始剤の吸収波長の選択 照射された光のエネルギーを無駄なく重合反応エネルギーに変換して、光重合反応を強化するためには、光重合開始剤の吸収極大波長を、(重合性組成物中の)他の成分の吸収極大波長と異ならせることが好ましいこと。(必要ならば、原査定の拒絶の理由で引用文献7として引用され、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて利用可能となった引用文献である、特開2015-110728号公報(平成27年6月18日出願公開。以下「引用文献7」という。)の【0129】、引用文献4の172頁右欄4行~10行(空行はカウントしていない。)及び先の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて利用可能となった引用文献である、特開2009-98664号公報(平成21年5月7日出願公開。以下「引用文献13」という。)の【0009】<1>及び【0218】~【0219】等を参照。) (ウ)引用発明に内在する技術課題 重合性の液晶性化合物からなる光学異方性層を含む光学フィルムの製造において、照射するUV光の強度を低減することは、一般的な課題であって(例えば、引用文献9の【0005】及び先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2007-279421号公報(平成19年10月25日出願公開。以下「引用文献14」という。)の【0005】~【0006】等を参照。)、このような課題は、技術分野を一にする、引用発明に内在する技術課題といえる。 (エ)上記(ア)~(ウ)を踏まえ、相違点1に係る本件発明の構成に当業者が容易に想到し得たといえるかについて、以下検討する。 上記(ウ)で述べたとおり、照射するUV光の強度を低減してもなお十分な重合が可能であることは、引用発明(の「組成物」)に内在する課題である。そうすると、引用文献2の上記(ア)の記載に接した当業者であれば、引用発明の「イルガキュア369」に加えて、さらに感度の高い光重合開始剤であって、先の出願当時において入手可能なものの採用を検討すると考えられるところ、上記当業者は、上記(イ)に示される全ての周知技術を備える者でもあるから、感度の高いオキシム(エステル)型光重合開始剤であって、とりわけ極大吸収波長が、引用発明の「A11-1」の極大吸収波長(350nm程度)から十分に離れた、市販品の「OXE-02」又は「N-1919」(2以上の極大吸収波長を有し、最も短波長側の極大吸収波長は少なくとも330nm未満である。)を採用する動機は十分にあるといえる。 したがって、当業者が、上記示唆にしたがい、「イルガキュア369」の一部を、「OXE-02」又は「N-1919」に変更して併用することで、相違点1に係る上記構成とすることは、当業者が容易に想到し得たといえる。 イ 相違点2について (ア)式(Y)について 式(Y)が重合性液晶化合物の重合度の目安と解されるところ、引用文献9の【0204】【表1】~【0208】の記載(実施例1及び比較例1における、DLC-Aの側鎖の不飽和基の消失率%の差)からみて、上記アで述べた理由により、当業者が、引用発明における「光重合開始剤」(組成物)として、「イルガキュア369」及び上記「オキシム(エステル)型光重合開始剤」を併用したものを採用した場合、引用発明の「組成物」は、より低減した露光量で重合することが可能となり、その結果、引用発明の「光学フィルム」について、その式(Y)の値が73以上となることは当業者に自明である。 次に、相違点2のうち、「式(Y)」の上限値(97未満)について検討する。 式(Y)の上限値の技術的意義に関して、本件出願の明細書には、「式(Y)にて算出される値は、73以上、好ましくは83以上である。式(Y)にて算出される値は、高温環境下に晒されても位相差値が低下しない範囲であれば、高い数値であることが好ましい。式(Y)にて算出される値の上限値は、例えば、97未満であってもよく、93以下であってもよい。」(【0033】)、「式(Y)にて算出される値が上述の範囲であることは、液晶硬化膜が高温に加熱された場合の位相差値の低下量(変化量)が低減される点において好ましい。」と記載されているが、実施例の「参考例(2)」では、式(Y)の値が補正発明の範囲外となる「97」であるにも関わらず、位相値変化は「-2nm」と位相差値の低下量(変化量)が低減されている(【0225】【表1】)。そうすると、式(Y)の上限値は技術的意義(臨界的意義)を有するものではなく、製造上の目安程度のものである。 なお、式(Y)を97未満とすることによる効果について、本件出願の明細書の【0224】及び【0225】【表1】(特に、参考例(2)の最右列)には、式(Y)の値が上記上限値(97)以上の場合、波長分散値(Re(450)/Re(550))が変化して好ましくないことをうかがわせる記載がある。しかしながら、上記記載は、参考例(2)のみの評価結果を示すにとどまるから、式(Y)の値を97未満としたことによる有利な効果を推認するに足りるものではない。 したがって、生産性の観点から、引用発明の「光学フィルム」の製造にあたり、「組成物」の重合度をある程度の範囲内に適宜とどめておくという選択は、当業者の通常の創作能力の範囲内の事項である。 (イ)式(1)及び式(2)について a 式(1)及び式(2)の技術的意味について 本件補正発明の式(1)及び式(2)は「液晶硬化膜」の光学特性として記載されているところ、その技術的意味は、「重合性液晶化合物」を重合して作製した「液晶硬化膜」が、550nmの基準測定波長よりも短い波長帯域では面内位相差値が小さく(式(1):Re(450)/Re(550)≦1.00)、550nmの基準測定波長よりも長い波長帯域では面内位相差値が大きい(式(2):1.00≦Re(650)/Re(550))という逆波長分散性を有することを示す程度にとどまるものであり、本件出願の明細書の【0038】にも「重合性液晶化合物としては、前述した逆波長分散性を発現する点で下記式(I)の構造を有するもの特に好ましい。」と記載されている。 b 引用発明の光学フィルムについて 引用文献2には、「得られた光学フィルムの正面位相差値を、測定機(KOBRA-WR、王子計測機器社製)を用いて測定した。尚、基材に使用したガラス基板には、複屈折性が無いため、ガラス基板付きフィルムを測定機で計測することにより、ガラス基板上に作製した光学フィルムの正面位相差値を得ることができる。得られた光学測定正面位相差値は、波長451nm、549nm、及び628nmにおいて、それぞれ測定し、[Re(451)/Re(549)](αとする)及び[Re(628)/Re(549)](βとする)を算出」(【0291】)し、その結果を示す【表3】には、引用発明の光学フィルム(実施例1)の「α」の値が「0.897」であり、「β」の値が「1.015」であることが記載されている。 ここで、測定波長が異なるものの、引用文献2の「α」及び「β」は、本件補正発明の式(1)及び式(2)にそれぞれ対応し、引用発明の光学フィルムの「α」は「0.897」であり、「β」は「1.015」であることから、引用発明の光学フィルムは、基準測定波長よりも短い波長帯域では面内位相差値が小さく、550nmの基準測定波長よりも長い波長帯域では面内位相差値が大きいという逆波長分散性の光学特性を有することは明らかである。 したがって、引用発明の光学フィルムは、「式(1)」及び「式(2)」の要件を満たす蓋然性が高いといえるから、上記相違点2は実質的な相違点ではない。 ウ 相違点3について 引用文献2の【0260】には、「他の基材を、本発明の光学フィルムに貼合し、先に積層していた基材を剥離する、あるいは、先に積層していた基材および配向膜を剥離することにより、転写を行うこともできる」ことが記載されており、【0261】及び図1(e)には、具体的な偏光板の構成として、接着剤層3(「粘接着剤層」に相当)と、本発明の光学フィルム1’と、接着剤層3’(「粘接着剤層」に相当)と、偏光フィルム層2(「被転写体」に相当)とをこの順に貼り合せた偏光板4eの構成が記載されている。 したがって、引用発明の光学フィルムを上記構成の偏光板とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (5)効果について 本件発明の奏する効果は、明細書の段落【0027】の記載に基づけば、「高温環境に晒された場合の位相差値の低下量を低減することができる」というものであると認められる。一方、引用文献2には、「本発明によれば、耐湿熱性に優れた光学フィルムを得ることができる。」(【0012】)と記載されており、記載事項ウにも、「実施例の光学フィルムは、△α、Δ|a*|及びΔ|b*|が小さく、耐湿熱性に優れることが示された。」(【0296】)と記載されている。これらの記載に基づけば、引用発明も、耐湿熱性に優れ、△αが小さい、つまり、耐湿熱性試験前後の位相差値の変化が小さいものである。 したがって、本件発明の効果は、引用発明の効果と同様の効果であって、格別なものということができない。 (6)請求人の主張について 令和4年12月13日に提出された審判請求書において、請求人は概略、次の点を主張する。 (当合議体注:下線は便宜のため当合議体で付与したものである。)。 [主張ア] 「本願発明に係る積層体は、上記重合度が補正後の請求項1に規定される範囲内に制御されていることにより、式(Y)、式(1)及び式(2)を満たし、その結果、液晶硬化膜の両面に粘接着剤層を備えるという構成を備えているにもかかわらず、高温に加熱された場合の内面位相差の低下を防止し、かつ、波長分散値の悪化を防止することができるという効果(以下、「効果A」と称する)を奏することが理解できる。 ・・・中略・・・ 引用文献2には、分子内にオキシム構造を有する光重合開始剤とα-アセトフェノン化合物とを含む光重合開始剤組成物を使用すること、すなわち、分子内にオキシム構造を有する光重合開始剤とα-アセトフェノン化合物とを併用することによって、当該液晶硬化膜における重合度を好適に向上させ、好適な範囲に制御できることは記載も示唆もされていない。逆に、引用文献2の[0212]には、「アセトフェノン化合物の使用量は、光重合開始剤全量に対して、90質量部以上であることが好ましく、光重合開始剤全量がアセトフェノン化合物であることがより好ましい。」と記載されている。よって、引用文献2に接した当業者は、α-アセトフェノン化合物と、分子内にオキシム構造を有する光重合開始剤とを併用しようとはしない。・・・中略・・・引用文献2に接した当業者は、光重合開始剤として、α-アセトフェノン化合物に他の光重合開始剤である分子内にオキシム構造を有する光重合開始剤を併用する場合、α-アセトフェノン化合物単独からなる光重合開始剤を使用する場合よりも、得られる積層体の性能は低下すると予測する(引用文献2の[0212])。 よって、当業者であっても、引用文献2の記載に基づいて、本願発明が、特徴A、特に、液晶硬化膜において、「光重合開始剤組成物を含み、当該光重合開始剤組成物が分子内にオキシム構造を有する光重合開始剤およびα-アセトフェノン化合物を含む」ことによって、効果Aを奏することを予測できない。」(審判請求書7~8頁参照) [主張イ] 「引用文献2にも、上記式(Y)における(1-P’/P0)×100にて表される、液晶硬化膜における重合度を特定の範囲に制御すること、および、そのことにより、効果Aが奏されることは、記載も示唆もされていない。また、引用文献2にも、液晶硬化膜形成時の重合反応の進行が過剰にならないように、上記重合度を特定の範囲に抑制すること、およびそのことにより、波長分散値の悪化を防止することができることは、記載も示唆もされていない。 以上のことからも、引用文献2には、液晶硬化膜において、「光重合開始剤組成物を含み、当該光重合開始剤組成物が分子内にオキシム構造を有する光重合開始剤およびα-アセトフェノン化合物を含む」ことによって、式(Y)、式(1)及び式(2)を満たすこと、すなわち、特徴Aを備えることは記載も示唆もされていない。また、引用文献2には、特徴Aを備えることにより、効果Aを奏することが、記載も示唆もされていない。」(審判請求書8~9頁参照) 上記主張について検討する。 [主張アについて] 上記主張は、要するに、分子内にオキシム構造を有する光重合開始剤及びα-アセトフェノン化合物からなる光重合開始剤を併用することで、波長350nm以上及び波長350nm未満の紫外線を効率的に利用することが可能となり、重合性液晶化合物の重合反応をより効率的に進行させることができるというものである。 しかしながら重合性液晶化合物の光吸収に阻害されることなく、光重合開始剤の光吸収が行われる点、重合性液晶化合物の重合反応が効率的に進行することによる効果Aは、上記「(4)ア(イ)c」の技術常識を心得た当業者にとっては、引用文献2に効果A及びその作用機序について明示の記載がなくとも、予想可能なものであって、その程度が格別顕著であるともいえない。 また、「引用文献2に接した当業者は、α-アセトフェノン化合物と、分子内にオキシム構造を有する光重合開始剤とを併用しようとはしない」との主張については、上記「(4)ア」に記載したとおりである。また、上記「(4)ア(イ)a」に記載したように「オキシム(エステル)型光重合開始剤が、他の型の重合開始剤と比較して、感度の高い重合開始剤である」ことが技術常識であることから、「α-アセトフェノン化合物単独からなる光重合開始剤を使用する場合よりも、得られる積層体の性能は低下すると予測する」との主張を採用することはできない。 したがって、上記主張アは理由がない。 [主張イについて] 式(Y)については、上記「(4)イ(ア)」で説示したとおりであり、上記主張イは理由がない。 以上のとおり、上記主張ア~イは、いずれも採用の限りでない。 (7)小括 本件補正発明は、引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するものである。 したがって、本件補正は同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]に記載のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(本願発明)は、前記「第2」1(1)に記載したとおりである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、 [理由]本願発明は、本願の先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、又は、引用文献2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、その先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、同法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 1.特開2011-207765号公報 2.特開2012-021068号公報 3.特開2011-079984号公報(周知技術を示す文献) 4.大和真樹,「光重合開始剤の現状と課題」,日本印刷学会誌,日本, 社団法人日本印刷学会,2003年,第40巻,第3号, 第168~175頁,URL, https://doi.org/10.11413/nig1987.40.168(周知技術を示す文献) 5.国際公開第2010/095680号(周知技術を示す文献) 6.特開2007-241071号公報(周知技術を示す文献) 7.特開2015-110728号公報(周知技術を示す文献) 8.特開2011-008207号公報(周知技術を示す文献) 9.特開2010-152217号公報 3 引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献のうち引用文献2の記載事項は、上記「第2」3(1)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記「第2」3で検討した本件補正発明から、上記「第2」2で述べた限定を除いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て具備し、これにさらに限定を付したものに相当する本件補正発明は、上記「第2」3(2)~(4)で述べたとおり、引用文献2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-020242

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決480件(住友化学株式会社)
  • 2025-013284拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)光学積層体および画像表示装置
    同じ当事者: 住友化学株式会社
  • 2025-001215拒絶査定不服審判 / 2026-08-12 / 原査定取消(特許/登録すべき)着色樹脂組成物
    同じ当事者: 住友化学株式会社
  • 2024-019148拒絶査定不服審判 / 2026-08-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)プロピレン系重合体組成物、二軸延伸フィルム、および包装袋
    同じ当事者: 住友化学株式会社
  • 2024-016376拒絶査定不服審判 / 2026-07-31 / 原査定取消(特許/登録すべき)塩、酸発生剤、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法
    同じ当事者: 住友化学株式会社
  • 2025-004957拒絶査定不服審判 / 2026-06-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)偏光フィルムおよび楕円偏光板
    同じ当事者: 住友化学株式会社
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,821件(121・G02B、575・G02B)
  • 2025-018214拒絶査定不服審判 / 2026-07-13 / 原査定取消(特許/登録すべき)ポリエステルフィルム、および該ポリエステルフィルムを含む偏光板
    共通の審決分類: 121・G02B、575・G02B
  • 2024-018722拒絶査定不服審判 / 2026-03-31 / 請求不成立ウェアラブル視覚化デバイスシステムおよび方法
    共通の審決分類: 121・G02B、575・G02B
  • 2024-013494拒絶査定不服審判 / 2026-02-06 / 請求不成立画像表示用導光板
    共通の審決分類: 121・G02B、575・G02B
  • 2024-014184拒絶査定不服審判 / 2026-01-26 / 請求不成立光電気モジュール
    共通の審決分類: 121・G02B、575・G02B
  • 2024-008662拒絶査定不服審判 / 2026-01-09 / 請求不成立検出器システムのための機能化された導波路
    共通の審決分類: 121・G02B、575・G02B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存