審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2022-019576

制御された化学量論を有するポリヌクレオチドライブラリおよびその合成

審判番号
2022-019576
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-525959
請求日
2022年12月02日
審決日
2025年09月10日
公報発行日
2026年02月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ツイスト バイオサイエンス コーポレーション
  • 【請求人代理人】清原 義博
  • 【請求人代理人】弁理士法人清原国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 上條 肇
  • 審判官 田中 耕一郎
  • 審判官 荒木 英則
分類
P18 .537-WZ (C40B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-525959「制御された化学量論を有するポリヌクレオチドライブラリおよびその合成」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月24日国際公開、WO2018/094263、令和 2年 2月13日国内公表、特表2020-504709〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2017年11月17日(パリ条約による優先権主張2016年11月18日、2017年8月21日、及び2017年9月14日 いずれも(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は次のとおりである。 令和3年12月17日付け:拒絶理由通知書 令和4年 4月 4日 :意見書、手続補正書の提出 同年 7月26日付け:拒絶査定 同年12月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和6年 1月13日 :審判請求理由を補充する手続補正書の提出 同年 7月 2日付け:拒絶理由通知書 令和7年 1月 6日 :手続補正書の提出 (以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。) 同年 1月15日 :上申書の提出 同年 3月12日付け:審尋 なお、令和7年3月12日付けの審尋に対し、請求人からの回答書は提出されなかった。 第2 本願発明 本願請求項1~14に係る発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲1~14に記載された事項により特定されたものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 合成ポリヌクレオチドライブラリであって、前記合成ポリヌクレオチドライブラリは少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドを含み、各2本鎖ポリヌクレオチドは80塩基から200塩基の長さを含み、 少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドの少なくとも30%が、10%から30%又は70%から90%のGCの割合を有し、 各2本鎖ポリヌクレオチドは、 第1の非標的配列と第2の非標的配列、および1つ以上の標的核酸配列に相補的な第1の挿入配列を含む、第1のポリヌクレオチド鎖と、 前記第1の非標的配列と前記第2の非標的配列、および前記第1の挿入配列に相補的な第2の挿入配列を含む、第2のポリヌクレオチド鎖と、を含み、 前記第1のポリヌクレオチド鎖と前記第2のポリヌクレオチド鎖は部分的にハイブリダイズされる、合成ポリヌクレオチドライブラリ。」 第3 当審が通知した拒絶の理由 当審が本件補正前(令和4年12月2日提出の手続補正書)の特許請求の範囲の請求項1に関して令和6年7月2日付けで通知した拒絶の理由1(以下、「拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりのものである。 理由1(サポート要件) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明について、実施例の記載をみても具体的にプローブライブラリが製造されたことが記載されておらず、当該プローブライブラリにより本願課題に対してどのような影響があるのかについては、技術常識を踏まえても不明であって、これらの実施例の記載によっては、本願課題を解決できたと解することはできず、その余の記載においても、具体的な試験結果は記載されておらず、技術常識を踏まえても、「合成ポリヌクレオチドライブラリ」が「少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドを含」むことや「2本鎖ポリヌクレオチドを含むプローブライブラリ」であることなど発明を特徴付ける内容として記載された事項のいずれについても、本願課題を解決できたと解することはできないから、請求項1の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満足しない。 第4 当審の判断 上記拒絶理由通知に対し、請求人は令和7年1月6日付けで手続補正書を提出して、請求項1の記載を上記「第2」で示したとおり補正した。 本願発明に関し、上記拒絶理由が解消したか否かを、以下検討する。 1 発明の詳細な説明の記載事項 本願発明に関し、発明の詳細な説明及び図面には、以下の記載がある。なお、下線は当審で付した。 (1) 【0033】~【0034】 「【0033】 本明細書で提供されるのは、GC含量、反復配列、後端アデニン、二次構造、標的配列結合への親和性、または予測データあるいは実験データに基づいて、ポリヌクレオチドの第2の集団を生成するための修飾されたヌクレオチド等の、規定された特性を有するポリヌクレオチドライブラリを合成するための方法である。例えば、ポリヌクレオチドライブラリが、増幅後に規定されたGC含量に帰結するように合成用に選択される場合、GC含量に依存する合成工程におけるライブラリ内のポリヌクレオチドに関する種の表示の調整は、増幅後のポリヌクレオチド表示の改善をもたらす。ポリヌクレオチドライブラリのGC含量は、少なくとも10%、……70%、……または95%以上であり得る。いくつかの例では、ポリヌクレオチドライブラリのGC含量は、多くとも10%、20%、30%、……90%、95%、または100%未満である。場合によっては、GC含量は、約5~95%、10~90%、30~80%、40~75%、または50~70%の範囲である。 【0034】 本明細書に記載されるポリヌクレオチドライブラリは、それらのGC含量に適合させてもよい。……例えば、増加したポリヌクレオチド頻度が、主として約10%から約30%の範囲、および約70%から約90%のGC含量を有するライブラリを設計することができる。……」 (2) 【0157】~【0160】 「【0157】 本明細書で提供されるのは、ポリヌクレオチドライブラリを生成するための方法であって、該方法は:少なくとも約5000の非同一のポリヌクレオチドをコードするあらかじめ決定された配列を提供する工程;面を有する構造を提供する工程であって、面は複数のクラスタを含む、工程;少なくとも約5000の非同一のポリヌクレオチドを合成する工程であって、少なくとも5000の非同一のポリヌクレオチドの各々は異なる遺伝子座を伸長させる、工程;および、ポリヌクレオチドライブラリを形成するために少なくとも5000の非同一のポリヌクレオチドを増幅する工程を含み、ここで、少なくとも5000の非同一のポリヌクレオチドの約80パーセントより多くは、ポリヌクレオチドライブラリに関する平均表示の少なくとも約2倍以内の量で表示される。……さらに本明細書で提供される方法において、少なくとも約5000の非同一のポリヌクレオチドの約30%より多くが、10%から30%または70%から90%のGCの割合を有するポリヌクレオチドを含む。…… 【0158】 本明細書で提供されるのは、ポリヌクレオチドライブラリを生成するための方法であって、該方法は:少なくとも約5000の非同一のポリヌクレオチドをコードするあらかじめ決定された配列を提供する工程;面を有する構造を提供する工程であって、面は複数のクラスタを含む、工程;少なくとも約5000の非同一のポリヌクレオチドを合成する工程であって、少なくとも5000の非同一のポリヌクレオチドの各々は異なる遺伝子座を伸長させる、工程;および、ポリヌクレオチドライブラリを形成するために少なくとも5000の非同一のポリヌクレオチドを増幅する工程であって、ポリヌクレオチドライブラリは、増幅反応後に75%より大きい正確な配列比率を有する工程、を含む。……さらに本明細書で提供される方法において、少なくとも約5000の非同一のポリヌクレオチドの約30%より多くが、10%から30%または70%から90%のGCの割合を有するポリヌクレオチドを含む。…… 【0159】 本明細書で提供されるのは、少なくとも5000の非同一のポリヌクレオチドを含む核酸ライブラリであって、少なくとも5000の非同一のポリヌクレオチドは合成されたポリヌクレオチドの増幅産物であり、および少なくとも5000の非同一のポリヌクレオチドの約80%より多くが、核酸ライブラリに関する平均表示の少なくとも約2倍以内の量で表示される。……さらに本明細書において核酸ライブラリが提供され、少なくとも約5000の非同一のポリヌクレオチドの約30%より多くが、10%から30%または70%から90%のGCの割合を有するポリヌクレオチドを含む。…… 【0160】 本明細書において、少なくとも5000の非同一のポリヌクレオチドを含む核酸ライブラリが提供され、ここでGC含量が制御され、およびライブラリは、増幅反応後に75%より大きい正確な配列比率を提供する。さらに本明細書において、増幅反応後に85%より大きい正確な配列比率を有する核酸ライブラリが提供される。……さらに本明細書において核酸ライブラリが提供され、少なくとも約5000の非同一のポリヌクレオチドの約30%より多くが、10%から30%または70%から90%のGCの割合を有するポリヌクレオチドを含む。……」 (3) 実施例5(【0197】~【0201】) 「【0197】 実施例5:合成されたポリヌクレオチドライブラリのPCR増幅 【0198】 9,996のポリヌクレオチド、GC含量の変動する無作為化された配列の各100塩基の長さ、20~80%のGC含量を設計し、実施例3に記載の類似する構成を有する構造上で合成した。GC表示に対するPCR増幅の効果を判定するために、ポリヌクレオチド集団を、高忠実度のDNAポリメラーゼ(DNAポリメラーゼ1)を用いて6または20のサイクルのいずれかで増幅した。代替的に、ポリメラーゼ選択が増幅後の全体的な配列表示に効果を有するかどうかを判定するために、2つの他の高忠実度のPCR酵素を使用し、6、8、10、または15サイクルの間、ポリヌクレオチド集団を増幅した。PCR増幅後、サンプルは、次世代シーケンシングのために準備され、Illumina MiSeqプラットフォーム上で配列決定された。150のbp SEの読み取りが、100Xのおよその読み取り深度へと生成された。生のFASTQファイルが分析された。6、10、または15サイクルのいずれかのポリメラーゼによるポリヌクレオチド表示は、図16に表される。ポリヌクレオチド表示の均一性が、様々な疾病に関して評価され、表4に概説される。 【0199】 【表4】 [図:0001431424000001.jpg] 【0200】 増幅された各ポリヌクレオチド集団に関するドロップアウトの数を、図15に示すように定量化し、増幅サイクル 対 集団のフラクションは平均閾値の10%を下回った。ポリメラーゼ1ドロップアウトが素早く成長したのに対し、ポリメラーゼ2ドロップアウトは比較的一定のままであった。 【0201】 GC分布に対する過剰増幅の影響を評価した。図18。一般的には、GC含量30%~70%のポリヌクレオチドは、近似曲線、Y=Xに従い、およびより多くのサイクルで頻度が増加した。70%より多くのGC含量を有するポリヌクレオチドが、概して20サイクル後にわずかに頻度が多かったのに対し、30%未満のGC含量のポリヌクレオチドは、概して、6サイクル後にわずかに頻度が多かった。」 (4) 図16~図18 「【図16】 [図:0001431424000002.jpg] 【図17】 [図:0001431424000003.jpg] 【図18】 [図:0001431424000004.jpg] 」 (5) 図面の簡単な説明(【0010】) 「【図面の簡単な説明】 【0010】 …… 【図15】ポリヌクレオチドの数 対 1つのポリヌクレオチドあたりのパーセントの測定数としてのGC含量のプロットである。 …… 【図17】記録された増幅後のポリヌクレオチド集団の均一性の定量化でのチャートを提供する。」 (6) 実施例6(【0202】~【0205】) 「【0202】 実施例6:全プレート増幅からのポリヌクレオチド表示と、平行なポリヌクレオチドクラスタ増幅との比較 【0203】 図10に示されるように、平らなシリコンプレート上の121の遺伝子座を各々含む256のクラスタを有する構造上で、ポリヌクレオチドが合成された。ポリヌクレオチド合成は、実施例3からの一般的方法を使用して、ホスホラミダイトの化学作用によって行なわれた。構造上のポリヌクレオチドを切断して組み合わせた。 【0204】 プレートにわたってポリヌクレオチドを組み合わせて増幅した。増幅後に、図19に見られるような線で表される平均値からの顕著なGCのバイアスと分散があった。その結果、より多くのシーケンシングが必要であり、およびより多くのドロップアウトがあった。 【0205】 クラスタの増幅からのポリヌクレオチドの分布は図20に見られる。実行1と実行2では、平均値(線)からの度数分布は約8であり、および平均値からの分散は約1.7Xであった。GCの割合は17%から94%の範囲であった。図23と図20は、再現性があることを例証し、およびポリヌクレオチド集団は、GCバイアスの劇的な減少を示す(図20)。加えて、0のドロップアウトがあり、および30%少ないシーケンシングが求められた。」 (7) 図19~図20 「【図19】 [図:0001431424000005.jpg] 【図20】 [図:0001431424000006.jpg] 」 (8) 図23 「【図23】 [図:0001431424000007.jpg] 」 (9) 実施例7(【0206】~【0207】) 「【0206】 実施例7:種々のGC含量で合成されたポリヌクレオチドライブラリ 【0207】 約15%から約85%のGC含量を含む13,000のポリヌクレオチド配列のライブラリを、合成のためにあらかじめ選択した(図22)。第1のポリヌクレオチドライブラリは構造上で合成され、および合成は、実施例3からの一般的方法を使用してホスホラミダイト化学作用によって行なわれた。構造上のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのPCRバイアスのかかったライブラリを生成するために、増幅後に切断されて組み合わされた。ライブラリ内のポリヌクレオチド配列は、GC含量に従ってビンに入れられ、各ビンの化学量論は、PCR増幅によって生成された、観察されたGCバイアスを考慮して適合された。例えば、より高い、またはより低いGC含量を含むポリヌクレオチドは、増幅後に化学量論の表示を均一にするより高い初期濃度を有する。これは、増幅工程からのPCR GCのバイアスを効果的に減らし、または除去する。第2のポリヌクレオチドライブラリは構造上で合成され、および合成は、実施例3からの一般的方法を使用してホスホラミダイト化学作用によって行なわれた。構造上のポリヌクレオチドは、増幅後に均一のGCの表示で(図21A)、ポリヌクレオチドの高度に均一なライブラリを生成するために(図23)、切断されて組み合わされ、その後に増幅された。GCの平衡なライブラリの1つの利点は、望ましいサンプリングカバー率のためにより少ないサンプリングが求められることである。例えば、ライブラリの80%と90%のカバー率のためのサンプリングは、単分散ライブラリのための理論上の最小に近づいた(図24Aと図24B)。度合の変動する高いおよび低いGC含量の両方を好むポリヌクレオチドライブラリをさらに合成した(それぞれ図21Bと図21C)。低いGC含量(図21D)または高いGC含量(図21E)を好むポリヌクレオチドライブラリをさらに合成した。」 (10) 図21A~図22 「【図21A】 [図:0001431424000008.jpg] 【図21B】 [図:0001431424000009.jpg] 【図21C】 [図:0001431424000010.jpg] 【図21D】 [図:0001431424000011.jpg] 【図21E】 [図:0001431424000012.jpg] 【図22】 [図:0001431424000013.jpg] 」 (11) 図24A~B 「【図24A】 [図:0001431424000014.jpg] 【図24B】 [図:0001431424000015.jpg] 」 (12) 実施例8(【0208】~【0209】) 「【0208】 実施例8:80量体および120量体のポリヌクレオチド長さで合成された、GCの平衡なポリヌクレオチドライブラリ 【0209】 各々が80の核酸長さである、およそ20,000の特有のポリヌクレオチドを含むライブラリを設計し、実施例7の一般的方法を使用してGCを平衡にし、そして構造上で合成した;合成は、実施例3からの一般的方法を使用して、ホスホラミダイトの化学作用によって行なわれた。各々が120の核酸の長さであり、ポリヌクレオチドを含む類似のライブラリをさらに合成した(図26)。両ライブラリは高度に均一な分布を示し、>99%のユニーク配列が識別された。ライブラリはまた、GC含量の分散を通じて均一性を示し、複製を通じて高い一致を有し(図27)、雑音にさらされる末尾に少数のポリヌクレオチドを有した。」 (13) 図26~図27 「【図26】 [図:0001431424000016.jpg] 【図27】 [図:0001431424000017.jpg] 」 (14) 実施例9(【0210】~【0211】) 「【0210】 実施例9:ポリヌクレオチドライブラリの繰り返しの増幅後のGC含量評価 【0211】 20-80%のGC含量を含む9,996の特有のポリヌクレオチドから成るポリヌクレオチドライブラリは、各々100塩基の長さであり、実施例3からの一般的方法を使用して、ホスホラミダイト化学作用によって構造上で合成された。ライブラリを、2つの異なる高忠実度のDNAポリメラーゼを用いて8または15PCRサイクルのいずれかで増幅し、集団におけるポリヌクレオチドの頻度を、これらの2つの条件間で比較した(図28)。同定線(identity line)(黒色破線)は、8または15PCRサイクルのいずれか後の、集団内の同じ頻度のポリヌクレオチドを示す。8サイクルの増幅と比較して、同定線上の配列は、15サイクル後の集団での過剰表示であり、線の下の配列は、15サイクル後の集団での提示不足である。この場合、ポリメラーゼ1は、増加するPCRサイクルと共にGCバイアスを示す。8サイクルの増幅と比較して、15サイクルの増幅後、高GCの配列(70%を超えるGC、中くらいの灰色)については過剰表示が観察され、低GCの配列(30%未満のGC、最も暗い灰色)は提示不足であった。加えて、同様のGC割合内での濃縮における大きな変動は、GC含量以外の因子、ヘアピン形成またはホモポリマー伸張等が、増幅バイアスに影響を及ぼし得ることを示唆する。ポリメラーゼ2は同じ配列表示バイアスを示さなかった。」 (15) 図28 「【図28】 [図:0001431424000018.jpg] 」 (16) 実施例10(【0212】~【0214】) 「【0212】 実施例10:ポリヌクレオチドライブラリの繰り返しの増幅後のドロップアウトと表示評価 【0213】 種々のDNAポリメラーゼ酵素での増幅によって導入されたバイアスを調査した。実施例9のポリヌクレオチドライブラリを、6、8、10、または15サイクル間、DNAポリメラーゼ1(図29、暗い線)またはDNAポリメラーゼ2(図29、明るい線)のいずれかで増幅した。PCRサイクルの増加は、ポリヌクレオチド配列のドロップアウト頻度と相関していた。ドロップアウト頻度は、平均の10%未満の豊富量を有する配列として定義される。この効果の範囲は、増幅に使用されたDNAポリメラーゼに依存した。配列のより大きな部分は、DNAポリメラーゼ2での増幅と比較して、DNAポリメラーゼ1での増幅後にドロップアウトした(15サイクルでのドロップアウトのおよそ20倍多い)。種々のポリメラーゼは、GC含量、長さ、および配列の複雑性に応じて、異なるライブラリ配列の増幅のために最適である場合もある。 【0214】 各DNAポリメラーゼを用いて15PCRサイクル増幅されたライブラリを、ポリヌクレオチド配列の表示を評価するためにより詳細に研究した(図30)。 DNAポリメラーゼ1を用いたポリヌクレオチドライブラリの増幅は、15PCRサイクル度に20倍より多くの配列ドロップアウトをもたらした(図29)。 DNAポリメラーゼ1を用いて増幅されたポリヌクレオチドの分布は、DNAポリメラーゼ2で増幅されたポリヌクレオチドの分布より大きかった。 DNAポリメラーゼ1で増幅されたライブラリのポリヌクレオチド分布は、平均値の1.5倍以内に存在する配列の64%を有した。 同じライブラリをDNAポリメラーゼ2で増幅した場合、>89%の配列が平均の1.5倍以内に存在し、DNAポリメラーゼ2で増幅されたライブラリがDNAポリメラーゼ1よりもはるかに低いバイアスを有することを示した。 DNAポリメラーゼ1を用いて増幅されたライブラリに導入されたバイアスは、ポリヌクレオチドライブラリをカバーするのに必要なスクリーニング成果を高める。」 (17) 図29~図30 「【図29】 [図:0001431424000019.jpg] 【図30】 [図:0001431424000020.jpg] 」 (18) 実施例11(【0215】~【0217】) 「【0215】 実施例11:次世代シーケンシング(NGS)を用いた、エクソームを標的とするための制御された化学量論ポリヌクレオチドライブラリの使用 【0216】 1つ以上の遺伝子エクソンとオーバーラップする最大370,000以上の非同一のポリヌクレオチドを含むライブラリ(プローブライブラリ)を標的とする第1のポリヌクレオチドcDNAは、実施例3からの一般的方法を使用して、ホスホラミダイト化学作用によって構造上で設計され、合成される。 ポリヌクレオチドは、対象の標的エクソンの続く捕捉のためのプローブを形成するために、PCRを使用して(または個体フェーズ合成中に直接)、ビオチン等の分子タグに結合される。 プローブをゲノム核酸のライブラリの配列にハイブリダイズし、未結合の配列から分離する。 未結合のプローブを洗い流して、cDNA配列で濃縮された標的ライブラリを残した。 次に、濃縮されたライブラリを、NGSを使用して配列し、および各予測される遺伝子に関する読み取りを、遺伝子を標的とするのに使用されるcDNAプローブの関数として測定する。 【0217】 いくつかの例では、標的配列の読み取り頻度は、標的配列の豊富量、プローブ結合、二次構造、または濃縮に関わらず標的配列のシーケンシング後に表示を低下させる他の因子によって影響を受ける。ポリヌクレオチドライブラリの化学量論的制御は、第2のポリヌクレオチドcDNA標的ライブラリを得るために第1のポリヌクレオチドcDNA標的ライブラリの化学量論の修正によって行われ、より少ない読み取りに帰結するポリヌクレオチドプローブ配列に関する化学量論を増加させる。この第2のcDNA標的ライブラリは、実施例3からの一般的方法を使用し、ホスホラミダイト化学作用によって構造上で設計されて合成され、そして前記のように標的ゲノムDNAライブラリの配列エクソンを濃縮するために使用される。」 (19) 実施例12(【0218】~【0220】) 「 【0218】 実施例12:エクソームプローブライブラリを用いた化学量論制御の多数の反復 【0219】 エクソームプローブライブラリは、実施例11の一般的方法を使用して合成され、試験された。化学量論的な修飾を多数、繰り返し、結果として制御された化学量論プローブライブラリ、ライブラリ1を得た。いくつかのコンパレータエクソーム濃縮キットと比較して、これは、標的の望ましいカバー率を得るために、有意に少ないシーケンシング読み取りをもたらす。正確なシーケンシングのために、標的エクソーム塩基の少なくとも90%の30xの読み取り深度が望ましく、および過剰シーケンシング(理論上の読み取り深度、30xより大きな読み取り深度)がしばしば、均一性の問題を補うために必要とされる。制御された化学量論エクソームプローブライブラリは、55xの理論上の読み取り深度で、標的塩基の90%の30xの読み取り深度を達成することができ(図32A)、これは、他のコンパレータエクソーム濃縮キットによって必要とされるよりも有意に少ないシーケンシングカバー率であり、およびより速い配列スループットであった(1実行あたりのサンプル、表5)。4.5Gbのシーケンシングに標準化される場合、制御された化学量論プローブライブラリは10xの読み取り深度の全標的塩基の>95%を提供し、これは他のコンパレータエクソームプローブキットより有意に高かった(図32B)。 【0220】 【表5】 [図:0001431424000021.jpg] 」 (20) 図32A~B 「【図32A】 [図:0001431424000022.jpg] 【図32B】 [図:0001431424000023.jpg] 」 (21) 実施例14(【0223】~【0224】) 「【0223】 実施例14:70,000のプローブパネルの生成 【0224】 70,000の非同一のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド標的ライブラリ(プローブライブラリ)を、実施例3からの一般的方法を使用してホスホラミダイト化学作用によって、およびライブラリ2を生成するために実施例11の一般的方法を使用して制御されたGCによって、構造上で設計して合成した。シーケンシング後の読み取り分布は図34に示され、およびGCビン標的カバー率は、図35Aと図35Bに示される。」 (22) 図34~図35B「【図34】 [図:0001431424000024.jpg] 【図35A】 [図:0001431424000025.jpg] 【図35B】 [図:0001431424000026.jpg] 」 2 拒絶理由(特許法第36条第6項第1号)に関する判断 (1) サポート要件の判断規範 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識等に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、本願明細書のサポート要件の存在は、本願出願人すなわち審判請求人が証明責任を負うと解するのが相当である。 (2)本願発明が解決しようとする課題 この点を踏まえて本願明細書をみると、【0003】には以下の記載がある。 「高い忠実性と低コストでの非常に効率的な化学的遺伝子合成は、バイオテクノロジーと医療において、および基礎的な生物学的研究において中心的な役割を有している。デノボの遺伝子合成は、基礎的な生物学的研究およびバイオテクノロジーでの応用にとって強力なツールである。小規模での比較的短いフラグメントの合成のための様々な方法が知られているが、これらの技術にはしばしば、スケーラビリティ、自動化、速度、精度、およびコストの点で問題がある。」 そうすると、本願発明において解決されるべき課題(以下、「本願課題」という。)として「高い忠実性と低コストでの非常に効率的な化学的遺伝子合成におけるスケーラビリティ、自動化、速度、精度、およびコストの点での問題の解決」があり、請求項1の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすといえるためには、請求項1に係る発明により本願課題が解決されたことが示される必要があるものといえる。 そして請求項1をみると、本願発明は合成ポリヌクレオチドライブラリに関する発明であって、「合成ポリヌクレオチドライブラリは少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドを含」むことと、「少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドの少なくとも30%が、10%から30%又は70%から90%のGCの割合を有」することが記載されているので、これらの観点から本願課題の解決について検討する。 (2) 実施例の記載に基づく判断 まず、「少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドを含」み、「少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドの少なくとも30%が、10%から30%又は70%から90%のGCの割合を有」する「合成ポリヌクレオチドライブラリ」が、本願課題を解決できたことを具体的に明示する実施例は記載されていない。 次に、「合成ポリヌクレオチドライブラリは少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドを含」むことと、及び、「少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドの少なくとも30%が、10%から30%又は70%から90%のGCの割合を有」することについて記載された実施例に関して、以下、検討する。 ア 上記1の(3)~(5)は実施例5に関する記載である。ここで、【0200】には「図15」と記載されているが、「図15」は段落0196にも記載があること、【0200】や1の(5)にある図面の説明内容や明細書中で図面番号が順番に記載されていることを踏まえると、【0200】の「図15」は「図17」の誤記であると解すべきものといえる。 実施例5はポリヌクレオチドの数が9996であって、請求項1に記載された「少なくとも5000」の約2倍にあたる。次世代シーケンサーを用いたシーケンシングにおいて、カバー率等の結果品質はリード数に比例し、リード数はポリヌクレオチドライブラリに含まれるポリヌクレオチド数に連動するから、仮にライブラリに含まれるポリヌクレオチド数9996で実施した結果が本願発明における何らかの課題を解決するものであるとしても、そのことによって、より少ないリード数をもたらすライブラリに含まれるポリヌクレオチド数が5000である場合にまでただちに拡張ないし一般化できるとはいえない(この点は、本項のイ以降で具体的にライブラリに含まれるポリヌクレオチド数が挙げられた部分においても同様である。)。 また、DNAポリメラーゼを用いて6または20PCRサイクルのいずれかで増幅し、集団におけるポリヌクレオチドの頻度を、これらの2つの条件間で比較した場合に、30%以下又は70%以上のGCの割合を100%満たし、かつ詳細は明らかではないが特定の組成からなるポリヌクレオチドライブラリと、30%超で70%未満のGCの割合を100%満たし、かつ詳細は明らかではないが特定の組成からなるポリヌクレオチドライブラリとにおいてポリヌクレオチドの頻度に差が生じることがあることは【0201】や図18の記載から理解できる。しかしながら、【0201】や図18の記載はGC含量%をいずれかの軸で並べたデータに基づくものではなく、30%以下又は70%以上のGCの割合を満たす任意の組成からなるポリヌクレオチドライブラリがポリヌクレオチドの頻度に差が生じることを抑制することを示すものではない。かえって、30%以下又は70%以上のGCの割合を満たしさえすればいかなるポリヌクレオチドライブラリであっても、PCRサイクルの増幅時に、集団におけるポリヌクレオチドの頻度に差を生じさせないとはいえないことは、図19「増幅」、図21A、図21D、図21Eの図において例えば65~69%のGCの割合のものが増幅時に生じさせるポリヌクレオチドの頻度のばらつきと70~74%のGCの割合のものが増幅時に生じさせるポリヌクレオチドの頻度のばらつきとの間に格別の差違が生じているわけではないことからも明らかであり、ましてや、30%以下又は70%以上のGCの割合を満たすポリヌクレオチドがポリヌクレオチドライブラリ中に30%含まれていれば集団におけるポリヌクレオチドの頻度に差を生じさせないとはいえる根拠を何ら見いだすことができない。 したがって、実施例5において図18として、DNAポリメラーゼを用いて6または20PCRサイクルのいずれかで増幅し、集団におけるポリヌクレオチドの頻度を、これらの2つの条件間で比較した場合に、30%以下又は70%以上のGCの割合を100%満たし、かつ詳細は明らかではないが特定の組成からなるポリヌクレオチドライブラリと、30%超で70%未満のGCの割合を100%満たし、かつ詳細は明らかではないが特定の組成からなるポリヌクレオチドライブラリとにおいてポリヌクレオチドの頻度に差が生じることが示されているとしても、詳細は明らかではない特定の組成を前提としない本願発明が「少なくとも5000のポリヌクレオチドの少なくとも30%が、10%から30%又は70%から90%のGCの割合を有」することで過剰増幅への影響が解消し、高い忠実性と低コストでの非常に効率的な化学的遺伝子合成におけるスケーラビリティ、自動化、速度、精度、およびコストの点での本願課題が解決すると解することはできない。 したがって、実施例5の記載によっては、本願課題を解決できたと解することはできない。 イ 上記1の(6)~(8)は実施例6に関する記載である。 合成対象となったポリヌクレオチドは、シリコンプレート上の遺伝子座とクラスタの数を踏まえると、その合計は5000の約6倍にあたる30976(=121×256)であって、ポリヌクレオチド数の観点ではアで指摘したのと同様の問題がある。また、【0204】、【0205】や、図19、20、23の記載からは、ポリヌクレオチド増幅後のポリヌクレオチド頻度あたりのGC含量の割合のプロット、ポリヌクレオチドの数対ポリヌクレオチドの頻度のプロットとこれらに関する説明が記載され、特に図19では、増幅後のポリヌクレオチドにおいてGC含量とポリヌクレオチド頻度との関係が増幅前と比較して大きく異なることは理解できるが、アで述べたことと同じ理由から、「少なくとも5000のポリヌクレオチドの少なくとも30%が、10%から30%又は70%から90%のGCの割合を有」することでポリヌクレオチド増幅にともなう問題が解決できたと解することのできる記載ではない。 したがって、実施例6の記載によっては、本願課題を解決できたと解することはできない。 ウ 上記1の(9)~(11)は実施例7に関する記載である。 実施例7はライブラリに含まれるポリヌクレオチドの数が5000の約2.5倍にあたる13000であって、ポリヌクレオチド数の観点ではアで指摘したのと同様の問題がある。また、【0207】や図21A~EにはGC含量を変化させた状態でポリヌクレオチドを増幅させた結果が記載されており、GC含量が均一の場合と比較して、高いGC含量あるいは低いGC含量を増加させた場合、増幅後に増加させた部分のポリヌクレオチド頻度が増加することが理解できるものの、発明の詳細な説明の記載では具体的に高いGC含量あるいは低いGC含量にあたる部分をどの程度増加すれば望ましいポリヌクレオチド頻度となるのかは記載されておらず、図面の記載をみてもこの点が明らかではない。またアで述べたことと同じ理由から、「少なくとも5000のポリヌクレオチドの少なくとも30%が、10%から30%又は70%から90%のGCの割合を有」することでポリヌクレオチド増幅にともなう問題を解決できたと解することはできない。 したがって、実施例7の記載によっては、本願課題を解決できたと解することはできない。 エ 上記1の(12)~(13)は実施例8に関する記載である。 実施例8はライブラリに含まれるポリヌクレオチドの数が5000の4倍にあたる20000であって、ポリヌクレオチド数の観点ではアで指摘したのと同様の問題がある。また、【0209】では「実施例7の一般的方法を使用してGCを平衡にし、そして構造上で合成した」こと、「ライブラリはまた、GC含量の分散を通じて均一性を示し、複製を通じて高い一致を有し(図27)、雑音にさらされる末尾に少数のポリヌクレオチドを有した」ことが記載されているが、GC含量ごとの複製結果が示されているわけではないため、ライブラリに関して「少なくとも5000のポリヌクレオチドの少なくとも30%が、10%から30%又は70%から90%のGCの割合を有」したと判断できず、またアで述べたことと同じ理由から、上記記載によって本願課題を解決できたと解することはできない。 したがって、実施例8の記載によっては、本願課題を解決できたと解することはできない。 オ 上記1の(14)~(15)は実施例9に関する記載である。 実施例9はライブラリに含まれるポリヌクレオチドの数が5000の約2倍にあたる9996であって、ポリヌクレオチド数の観点ではアで指摘したのと同様の問題がある。また、高GCの配列や低GCの配列において、DNAポリメラーゼによってPCRでの増幅後における過剰表示や提示不足がみられる場合とみられない場合の双方が存在していることが記載されているものの、アで述べたことと同じ理由から、「少なくとも5000のポリヌクレオチドの少なくとも30%が、10%から30%又は70%から90%のGCの割合を有」することだけで過剰表示や提示不足への影響が解消すると理解できる内容ではない。 したがって、実施例9の記載によっては、本願課題を解決できたと解することはできない。 カ 上記1の(16)~(17)は実施例10に関する記載である。 実施例10は実施例9のポリヌクレオチドライブラリを使用し、種々のDNAポリメラーゼ酵素での増幅によって導入されたバイアスを調査したものであって、実施例9に関し上記オで指摘した点は同様であると考えられるほか、DNAポリメラーゼ2での増幅と比較して、DNAポリメラーゼ1での増幅後にドロップアウトしたものが多くあることが具体的な試験結果とともに記載されており、「少なくとも5000のポリヌクレオチドの少なくとも30%が、10%から30%又は70%から90%のGCの割合を有」することだけで過剰表示や提示不足への影響が解消すると理解できる内容ではない。 したがって、実施例10の記載によっては、本願課題を解決できたと解することはできない。 キ 上記1の(21)~(22)は実施例14に関する記載であり、(18)は実施例14で引用する実施例11に関する記載である。 (ア) 実施例14は「70,000の非同一のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド標的ライブラリ(プローブライブラリ)」を実施例11の一般的方法を使用して制御されたGCによって、構造上で設計して合成したものであって、ポリヌクレオチド数の観点ではアで指摘したのと同様の問題がある。 (イ) シーケンシング後の読み取り分布が図34に示されているが、GCの割合が10%から30%である場合と70%から90%である場合が読み取り状況に対しどのように影響したのかが示されていない。 (ウ) 図35Aと図35Bをみると、縦軸が「読み取り深度(X回の読み取り)」、横軸が「標準化された%塩基」とされており(「10-30% GC」等の記載を底部においた図として説明している。)、上記1の(21)の「GCビン標的カバー率は、図35Aと図35Bに示される」との記載も考慮すると、横軸は塩基の出現頻度を百分率で示したものと理解できる。そして、それぞれが「10-30% GC」、「>30-50% GC」、「>50-70% GC」、「>70-90% GC」というGC含量別に、及び、それぞれが「ライブラリ2」と「コンパレータ(アレイベースのライブラリ)」別に記載されている。 また、「図面の簡単な説明」の図35A~Bに関する記載は「10~30%、および30~50%のGC含量を有する標的」や「50~70%より大きい、および30~50%より大きいGC含量を有する標的」に関するものであり、GC含量の範囲を区切った場合の、それぞれにおける読み取り深度の分布を示すことは理解できるものの、特に「10-30% GC」及び「>70-90% GC」にあたる部分がライブラリ全体からみてどの程度の割合を示した場合に、適切な読み取り深度を達成できるのかという点は依然として不明であるから、「合成ポリヌクレオチドライブラリ」に含まれる「少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドの少なくとも30%が、10%から30%又は70%から90%のGCの割合を有」することを示すものであることを示すことが理解できるようには記載されたものと理解することができない。 (エ) 上記(ア)~(ウ)で検討したとおりであるから、実施例14の記載によっては、本願課題を解決できたと解することはできない。 (3) 実施例以外の、発明の詳細な説明の記載に基づく判断 発明の詳細な説明のうち、実施例以外の部分で「合成ポリヌクレオチドライブラリは少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドを含」むこと、及び、「少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドの少なくとも30%が、10%から30%又は70%から90%のGCの割合を有」することに関して記載されているのは上記1の(1)~(2)であるが、「合成ポリヌクレオチドライブラリは少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドを含」み、かつ、「少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドの少なくとも30%が、10%から30%又は70%から90%のGCの割合を有」する場合に本願課題を解決できたと当業者が理解できる記載は、上記1の(1)~(2)のいずれにもみられない。 したがって、上記1の(1)~(2)の記載によっても、本願課題を解決できたと解することはできない。 (4) 小括 上記(1)~(3)で検討したとおり、本願の発明の詳細な説明をみても、「少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドを含」み、「少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドの少なくとも30%が、10%から30%又は70%から90%のGCの割合を有」する「合成ポリヌクレオチドライブラリ」により、本願課題が解決できたと当業者が認識する記載があったとはいえず、また、ライブラリに含まれるポリヌクレオチドの数が少なければ少ないほど、ゲノムのカバー率や読み取り深度の倍率を高めることは困難になる一方、ライブラリに含まれるポリヌクレオチドの数が多ければ多いほど、ゲノムのカバー率や読み取り深度の倍率が高まるものの、コストや速度等の課題に反するという、ゲノムDNAシーケンシングにおける技術常識を踏まえてもこの点は同様である。 したがって、本願発明は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が本願出願時において認識できるように記載された範囲のものとはいえないから、本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものとはいえない。 3 請求人の主張について (1) 本願発明に関して、請求人は、令和7年1月15日付け上申書において、当審が検討した上記2の点のほか、以下のア~ウの旨を主張して、本願が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすことは明らかであると主張する。 ア 【0025】や【0073】にも記載されるように、標的配列の望ましい割合にわたって許容可能な読み取り数で実験結果を得るために必要な合計読み取り数が少なくなるため、標的核酸配列の100%をカバーすると1塩基あたり55読み取りになることが予想される場合、本発明に係る合成ポリヌクレオチドライブラリは、1塩基あたり30読み取りでフラグメントの90%をカバーすることを可能にし、本発明に係る合成ポリヌクレオチドライブラリは、下流のシーケンシングの効率を高める。 イ 実施例12は、標的サンプルの塩基の90%に対して、塩基あたり30回の読み取り(読み取り深度30倍)のみを使用して、理論上の読み取り深度55倍を達成できる例示的なライブラリの能力を示しており、「均一性の問題を補うために必要とされる」過剰シーケンスが回避され、シーケンスカバレッジを高めるために必要な読み取り数が少なくなるため、例示的なライブラリではシーケンススループットも高速化された。 ウ 修正後の請求項1には、低GC含有量および高GC含有量のポリヌクレオチドが少なくとも30%含まれたライブラリが記載されており、これは10%を超えているところ、実施例14では、合成ポリヌクレオチドライブラリの10%を超える低GC含有量および高GC含有量のポリヌクレオチドの頻度を持つ例示のライブラリが、過剰シーケンスを必要とせずに、より高い読み取り深度を達成できることが立証されており、精度およびシーケンシングカバレッジが向上し、スループットが向上することが示されている。 (2) しかしながら、上のような請求人の主張ア~ウはいずれも採用することができない。その理由はそれぞれ以下のア~ウのとおりである。 ア 「標的核酸配列の100%をカバーすると1塩基あたり55読み取りになることが予想される場合、本発明に係る合成ポリヌクレオチドライブラリは、1塩基あたり30読み取りでフラグメントの90%をカバーすることを可能に」するとの主張に関し、請求項1の記載をみても「1塩基あたり55読み取り」、「1塩基あたり30読み取りでフラグメントの90%をカバー」といった内容は含まれておらず、本願発明の発明特定事項に基づく主張ではない。 イ 上記1の(19)~(20)に記載のある実施例12をみると、ライブラリに含まれるポリヌクレオチドの数が明示されず、「エクソームプローブライブラリは、実施例11の一般的方法を使用して合成され、試験された。化学量論的な修飾を多数、繰り返し、結果として制御された化学量論プローブライブラリ、ライブラリ1を得た。」と記載されるのみである。また、上記1の(18)に記載のある実施例11をみると、「1つ以上の遺伝子エクソンとオーバーラップする最大370,000以上の非同一のポリヌクレオチドを含むライブラリ(プローブライブラリ)を標的とする第1のポリヌクレオチドcDNAは、実施例3からの一般的方法を使用して、ホスホラミダイト化学作用によって構造上で設計され、合成される。」と記載されており、ライブラリに含まれるポリヌクレオチドの数は明記されておらず不明である。他に記載されている数値を考慮した場合でも、挙げられているのは実施例11にある「最大370,000以上」という、5000よりははるかに大規模であることが理解できるもののみである。加えて、実施例11や12には使用されたライブラリのGC含量に関しても明記がなく、不明である。 そうすると、読み取り深度に関する結果に基づく請求人の主張をみても、実施例12の試験結果から、「少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドを含」み、「少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドの少なくとも30%が、10%から30%又は70%から90%のGCの割合を有」する「合成ポリヌクレオチドライブラリ」にまで拡張ないし一般化できたと解することのできる事情があるとはいえず、本願課題が解決できたと解することはできない。 ウ 実施例14では、合成ポリヌクレオチドライブラリの10%を超える低GC含有量および高GC含有量のポリヌクレオチドの頻度を持つ例示のライブラリが、過剰シーケンスを必要としないと主張するが、実施例14は「70,000の非同一のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド標的ライブラリ(プローブライブラリ)」を用いたものであり、その10%は7,000の非同一のポリヌクレオチドであって、本願発明の「合成ポリヌクレオチドライブラリ」のポリヌクレオチド数の下限である「少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチド」をも上回る大量のポリヌクレオチドを用いた試験結果であるから、「少なくとも5000の2本鎖ポリヌクレオチドの少なくとも30%が、10%から30%又は70%から90%のGCの割合を有」する場合に本願課題を解決できたと解することはできない。 また、図35Aや図35Bで示されている内容が、低GC含有量および高GC含有量のポリヌクレオチドの頻度を持つ例示のライブラリが、コンパレータエクソーム濃縮キットを用いたライブラリと比較することで、過剰シーケンスを必要とせずに、より高い読み取り深度を達成できることが立証されていると解しうるに足る具体的な根拠は示されていない。 仮に図35Aや図35Bにそれが示されているといえるとしても、図35Aや図35Bで示されている内容は、30%以下又は70%以上のGCの割合を満たすポリヌクレオチドのみによって構成されたポリヌクレオチドライブラリに係るものであると認められるところ、本願発明の発明特定事項のとおり、30%以下又は70%以上のGCの割合を満たすポリヌクレオチドがポリヌクレオチドライブラリ中に30%含まれていれば過剰シーケンスを必要とせずに、より高い読み取り深度を達成できることが立証されているとする根拠は何ら見いだすことができない。 第5 むすび 以上のとおり、本願は、請求項1に係る発明について、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないものである。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-019576

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決5件(ツイスト バイオサイエンス コーポレーション)
  • 2023-012388拒絶査定不服審判 / 2026-06-09 / 原査定取消(特許/登録すべき)核酸ベースのデータ保存
    同じ当事者: ツイスト バイオサイエンス コーポレーション
  • 2023-011828拒絶査定不服審判 / 2025-12-09 / 請求不成立GPCR結合タンパク質およびその合成
    同じ当事者: ツイスト バイオサイエンス コーポレーション
  • 2023-005231拒絶査定不服審判 / 2025-06-03 / 請求不成立新規合成した遺伝子ライブラリ
    同じ当事者: ツイスト バイオサイエンス コーポレーション
  • 2022-014137拒絶査定不服審判 / 2023-12-18 / 請求不成立生物学的配列の自動アノテーションとスクリーニングのためのシステムおよび方法
    同じ当事者: ツイスト バイオサイエンス コーポレーション
  • 2021-004067拒絶査定不服審判 / 2023-07-11 / 請求不成立新規合成した遺伝子ライブラリ
    同じ当事者: ツイスト バイオサイエンス コーポレーション
同じ論点・分野の審決(審決分類)8件(537・C40B)
  • 2022-020593拒絶査定不服審判 / 2025-08-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)区画化ペプチドライブラリを生成及びスクリーニングする方法
    共通の審決分類: 537・C40B
  • 2023-006688拒絶査定不服審判 / 2025-07-08 / 原査定取消(特許/登録すべき)改変された抗体可変領域を含む抗原結合分子のライブラリ
    共通の審決分類: 537・C40B
  • 2022-018073拒絶査定不服審判 / 2024-12-18 / 請求不成立ダイナミックヒト重鎖抗体ライブラリー
    共通の審決分類: 537・C40B
  • 2021-009158拒絶査定不服審判 / 2023-08-22 / 原査定取消(特許/登録すべき)合成単一ドメイン抗体
    共通の審決分類: 537・C40B
  • 2021-004251拒絶査定不服審判 / 2023-02-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)試料に関連するポリヌクレオチドの同定
    共通の審決分類: 537・C40B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存