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特許拒絶査定不服審判

2022-018073

ダイナミックヒト重鎖抗体ライブラリー

審判番号
2022-018073
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-510115
請求日
2022年11月10日
審決日
2024年12月18日
公報発行日
2025年06月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】アダジーン インコーポレイテッド
  • 【請求人代理人】園田・小林弁理士法人
審判長/審判官
  • 審判長 福井 悟
  • 審判官 上條 肇
  • 審判官 荒木 英則
分類
P18 .537-WZ (C40B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号特許法36条6項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-510115「ダイナミックヒト重鎖抗体ライブラリー」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月28日国際公開、WO2019/036842、令和 2年12月24日国内公表、特表2020-537632〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成29年 8月21日を国際出願日とする特許出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。 令和 2年 8月21日 :手続補正書の提出 令和 3年 9月 9日付け:拒絶理由通知書 令和 4年 3月14日 :手続補正書の提出 令和 4年 3月18日 :上申書の提出 令和 4年 7月 6日付け:拒絶査定 令和 4年11月10日 :審判請求書の提出 令和 6年 1月 9日付け:拒絶理由通知書 令和 6年 6月18日 :意見書・手続補正書の提出 (以下、令和6年6月18日提出の手続補正書による手続補正を 「本件補正」という。) 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。(下線は補正箇所である。) 「 【請求項1】 ポリヌクレオチドメンバーを含むライブラリーであって、全てのポリヌクレオチドメンバーは、FW1-HVR1-FW2-HVR2-FW3-HVR3-FW4の順序で配置された、3つのHVR領域及び4つのFW領域から構成される抗体重鎖可変領域をコードし、 ポリヌクレオチドメンバーの少なくとも1つは下記のHVR-H1及びHVR-H2を含む抗体重鎖可変領域をコードし、 前記HVR-H1は、 (式I)X1TFX2X3YX4IHWV(配列番号198)(式中、X1はFまたはYであり、X2はSまたはTであり、X3はD、G、N、またはSであり、X4はA、G、またはWである); (式II)YSIX1SGX2X3WX4WI(配列番号199)(式中、X1はSまたはTであり、X2はHまたはYであり、X3はHまたはYであり、X4はA、D、G、N、S、またはTである);及び (式III)FSLSTX1GVX2VX3WI(配列番号200)(式中、X1はGまたはSであり、X2はAまたはGであり、X3はA、G、S、またはTである)からなる群から選択される式に従うアミノ酸配列を含み、 前記HVR-H2は、 (式IV)LAX1IX2WX3X4DKX5YSX6SLKSRL(配列番号201)(式中、X1はLまたはRであり、X2はDまたはYであり、X3はA、D、S、またはYであり、X4はDまたはGであり、X5はR、S、またはYであり、X6はPまたはTである); (式V)IGX1IX2X3SGSTYYSPSLKSRV(配列番号202)(式中、X1はA、D、E、S、またはYであり、X2はSまたはYであり、X3はHまたはYである); (式VI)IGX1IYX2SGX3TX4YNPSLKSRV(配列番号203)(式中、X1はD、E、R、S、またはYであり、X2はHまたはYであり、X3はNまたはSであり、X4はNまたはYである); (式VII)VSX1ISGX2GX3X4TYYADSVKGRF(配列番号204)(式中、X1はA、G、S、V、またはYであり、X2はA、D、S、またはYであり、X3はD、G、またはSであり、X4はSまたはTである); (式VIII)IGX1INPNX2GX3TX4YAQKFQGRV(配列番号205)(式中、X1はI、R、またはWであり、X2はFまたはRであり、X3はD、G、またはSであり、X4はKまたはNである); (式IX)IGX1IX2PSX3GX4TX5YAQKFQGRV(配列番号206)(式中、X1はI、R、またはWであり、X2はSまたはYであり、X3はGまたはSであり、X4はD、G、またはSであり、X5はKまたはNである);及び (式X)VGRIX1SKX2X3GX4TTX5YAAX6VKGRF(配列番号207)(式中、X1はKまたはRであり、X2はAまたはTであり、X3はDまたはYであり、X4はGまたはYであり、X5はDまたはEであり、X6はPまたはSである)からなる群から選択される式に従うアミノ酸配列を含み、 ライブラリーが、抗体軽鎖可変領域をコードする少なくとも1のポリヌクレオチドを更に含む、 ライブラリー。」 第3 当審における拒絶の理由 令和 6年 1月 9日付けで当審が通知した拒絶理由の理由2、4の概要は、次のとおりのものである。 1 理由2(サポート要件) 本件補正前(令和4年3月14日提出の手続補正書)の特許請求の範囲の請求項1~24に記載された発明は、 本願明細書は、ライブラリー全体のうちのいずれか1のポリヌクレオチドがコードする抗体重鎖可変領域においてHVR-H1、HVR-H2として特定のアミノ酸配列を含むものであれば、残りの全てのポリヌクレオチドがコードする抗体重鎖可変領域がこれら特定のアミノ酸配列と無関係なライブラリーであっても、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているものとはいえないから、本願は特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない。 2 理由4(明確性) 請求項1には「HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3を含む抗体重鎖可変領域」が記載されている。 「HVR-H1」、「HVR-H2」、「HVR-H3」はKabat定義に基づく相補性決定領域(CDR)に係る技術常識を参酌できない独自のものである一方で、それらが重鎖可変領域のうち特殊なフレームワークとの関係でいずれに位置するかは特許請求の範囲において定義されておらず、「HVR-H1」、「HVR-H2」、「HVR-H3」は、それぞれ重鎖可変領域のうちのいかなる部分を指しているか明らかでない。 よって、請求項1に係る発明は明確でない。 請求項1を引用する請求項2~24に係る発明、および請求項25に係る発明についても同様である。 第4 当審の判断 1 理由2(サポート要件)について (1) 本願発明の詳細な説明の記載事項 発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている。 (ア) 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本開示は、抗体重鎖(例えば、ダイナミックヒト抗体の重鎖)をコードする合成ポリヌクレオチドを含有するライブラリー、ならびにそれに関する抗体重鎖、抗体、細胞、動物、方法、及びキットに関する。 【背景技術】 【0002】 モノクローナル抗体は、生物学的研究、医学的診断、及び医薬品を含む、様々な分野で非常に有用なものとなった。その潜在的な結合特異性の多様性により、有益な特異性及び能力を持つ抗体ができる。しかしながら、この多様性のために、膨大な数の抗体をスクリーニングして、所望の特性を有する1つ以上の抗体を特定するのは、困難であり、手のかかるものである。 【0003】 目的の抗体を特定する1つの方法は、クローニングしたB細胞配列のライブラリー、ファージディスプレイライブラリー、酵母ディスプレイライブラリーなどの抗体ライブラリーをスクリーニングすることである。これらのライブラリーにより、多数のユニーク抗体配列を表す多数の抗体をスクリーニングして、目的の特異的性質、例えば、特定の標的への結合、結合親和性、選択性などを有する抗体を特定することができる。しかしながら、現在のライブラリーには、特定の制限がある。ヒトB細胞レパートリーなどの生物源に由来するライブラリーは、その生物源からクローニングすることができる抗体配列に限られる。合成ライブラリーは、生物学的に得られたライブラリーと比較して、非天然配列を含み得るが、これについても、特定の時間枠で合成することができる抗体の量という制限がある。更に、非常に大きなライブラリーには、より多くの時間と、網羅的なスクリーニングアプローチが必要であり、そうでなければ、目的の抗体について、ライブラリーのごく一部しか実際にスクリーニングすることができない。 【0004】 したがって、潜在的に機能関連性の高いダイナミック抗体を設計及び構築するために、明確に定義された開発可能な配列プロファイルを有する、十二分な一連のダイナミックユニットを含有するダイナミック抗体ライブラリーの開発が必要とされている。そのようなライブラリーは、ライブラリー中の抗体上の抗体結合部位の多様性だけでなく、所与の抗原上の新規エピトープ及び/または立体構造エピトープを備える抗体スクリーニングの効率も大きく改善させるだろう。更に、そのようなライブラリーにより、高い親和性及び開発可能性プロファイルを有する目的の特定の抗体が特定される可能性が高まるだろう。 【0005】 本明細書で引用される全ての参考文献は、特許出願、特許公報、非特許文献及びUniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号を含め、それぞれの個々の参考文献が参照により援用されることが具体的かつ個別に示される場合と同様に、その全体が参照により本明細書に援用される。【発明の概要】 【0006】 上記及び他の必要性を満たすために、本明細書で開示されるのは、ダイナミックヒト抗体を可能にする、重鎖超可変領域(HVR)及び重鎖可変領域(例えば、VH領域)などの抗体配列である。これらの配列は、高い能力で標的に結合し、及び/または複数の有用なエピトープを認識し、及び/または低い配列同一性(およそ60%以下の配列同一性)で異なる種間で共有されるエピトープと交差反応することができる、柔軟性の高いHVR配列ループを有する抗体ができるように設計された。有利には、これらの抗体配列により、より小さなライブラリーでありながら、多数の有用な抗体を含有し、及び/または所与のライブラリーサイズで多様性がはるかに大きいライブラリーの作製が可能となる。そのようなライブラリーは、広範囲の標的に特異的である目的の新規抗体、またはいくつかの場合では、目的の複数の標的と交差反応する新規抗体を特定するために使用することができる。更に、新たに特定されたダイナミックユニットを使用して、物理的にコンパクトなライブラリーで抗体結合部位の幅広い立体構造の柔軟性を把握する、ダイナミック抗体ライブラリーを設計及び構築するための新しい概念及び方法論が、本明細書で紹介され、実施される。更に、そのような抗体を使用した結果(以下に記載)は、これらのライブラリーから、配列同一性の低い(例えば、60%~70%未満の)異種由来の所与の抗原上の立体構造エピトープ及び/または進化的に保存された部位を標的とする抗体が特定できることを浮き彫りにしている。」 (イ) 「【発明を実施するための形態】 【0068】 本開示は、抗体重鎖(例えば、ダイナミックヒト抗体の重鎖)をコードする合成(例えば、非天然)ポリヌクレオチドを含有するライブラリーを提供する。有利には、本明細書で開示される抗体重鎖は、目的の複数の基質に対するより効果的な基質結合及び/または特異性を得るための柔軟性の高いループを生成するように設計されたHVR配列を含む。これらのHVR配列により、既存の技法よりも広いエピトープカバレッジを有する、より小さな抗体ライブラリーの作製が可能となる。」 (ウ) 「【実施例】 【0170】 本開示は、以下の実施例を参照することによって、より十分に理解されるであろう。しかしながら、実施例は、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載される実施例及び実施形態は、例示のみを目的にするものであり、それらを考慮した様々な変形または変更が当業者に想起され、本出願の趣旨及び範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれることを理解されたい。 【0171】 実施例1:超可変領域のダイナミックモチーフ最小セットの特定 抗体可変ドメインの可変性を構造レベルで理解するために、抗体可変ドメインの幾何学的アラインメントをマッピングし、更に、その幾何学的アラインメントに基づいて、構造エントロピー及び配列エントロピーを計算するアルゴリズムを開発した。そのようなアプローチを取ることは、よく確立されたV(D)J遺伝子再構成プロセスによって決定される抗体多様性の古典的理論を、ダイナミックユニットによる立体構造多様性(Linus Paulingによる鋳型指向立体構造選択;例えば、James,L.and Tawfik,D.“Conformational diversity and protein evolution-a 60-year-old hypothesis revisited”,Trends Biochem Sci.2003 Jul;28(7):361-8参照)と組み合わせて併用し、抗体結合部位の選択及び適合によって、ほぼ無限のエピトープ空間のサンプリングを可能にするものである。一例として、本アルゴリズムを使用して、113のヒト抗体可変重鎖ドメインの高解像度結晶構造に関する構造及び配列の可変性を解析した。可変重鎖ドメインの全ての位置について、エントロピーを計算し、それをプロットした(図1A;構造エントロピーは太線、配列エントロピーは点線)。幾何学的アラインメントに基づいた構造エントロピー及び配列エントロピーの計算によって得られた結果を使用して、超可変(HVR)領域を特定し、これらの可変領域上の重要な位置を特定した。比較のために、例示的な抗体重鎖可変ドメイン配列のHVR(上記の方法によって定義)及びCDR(Kabatによって定義)を特定した(図1B)。 【0172】 興味深いことに、構造アラインメントによって評価された可変性は、配列アラインメントで観察された可変性よりも概して低かった。構造アラインメントによって評価した場合、可変性は概して低かったが、劇的な構造変化を伴う部位/領域は多数あり、これらの可変部位が抗体機能に重要な役割を果たす可能性が示唆される。更に、これらの超可変領域のいくつかは、複数の立体構造を持ち、高い柔軟性を示した。可変性の高い残基領域の特定により、新しい抗体設計に活用できる、抗体可変ドメインの保存及び可変性に関するより包括的な全体像が得られた。このダイナミックモチーフの特定により、少ないアミノ酸配列数で広範囲な構造多様性をカバーすることが可能になった。抗体設計に対するこのアプローチの驚くべき利点は、より限定された数のダイナミックモチーフを可変領域に利用して広範囲の抗体構造多様性をカバーし、目的の複数の抗原への結合を可能にし得る幅広い柔軟性をこれらの抗体に提供できることであった。したがって、ダイナミック重鎖ライブラリーは、不変残基には単一のヒト生殖細胞系列配列またはヒト生殖細胞系列由来配列を使用して構築したが、超可変領域のHVR_H1及びHVR_H2には限定された数のダイナミックモチーフ(106、1010またはそれ以上と比べて)を使用することで、これらの2つの領域で特定された広範囲の構造可変性を把握した。 【0173】 実施例2:共通重鎖ライブラリーの構築 重鎖ライブラリーの構築 重鎖ライブラリーの構築を開始するために、可変領域HVR-H1について、表2に示される式に基づき、3グループの縮重オリゴを設計し、112のユニークHVR-H1配列を得た。可変領域HVR-H2については、表2に示される式に基づき、7グループの縮重オリゴを設計し、565のユニークHVR-H2配列を得た。合成した縮重オリゴを、次のプロトコルにより、二本鎖DNAに変換した。0.75μLの0.2μM鋳型オリゴを、10μLの5x PrimeSTARバッファー、4μLのdNTP混合物、1μLの100μMフォワードプライマー、1μLの100μMリバースプライマー、0.5μLのPrimeSTAR HS DNA Polymerase(2.5U/μL)、及び33μLの水と混合した。PCR溶液を96℃で5分間予熱し、次いで、14サイクル(96℃で15秒、60℃で15秒、72℃で6秒)を実施し、続いて、72℃で3分間伸長した。VH_vr1は、プライマーペアF_1999(CGTTTGTCCTGTGCAGCTTCCGG)(配列番号211)及びR_1999(CGAGGCCCTTACCCGGGGCCTGACG)(配列番号212)を使用して増幅し、一方、VH_vr2は、プライマーペアF_2003(CCGGGTAAGGGCCTCGAGTGG)(配列番号213)及びR_2003(GAGCACGTCCGTTCGAATTGTCGCGACTTATAG)(配列番号214)を使用して増幅した。 【0174】 二本鎖のVH_vr1及びVH_vr2を、その5’末端または3’末端にある重複配列を介して結合させた。使用したプロトコルは、次のとおりであった。20ngのVH_vr1及び20ngのVH_vr2鋳型を、10μLの5x PrimeSTARバッファー、4μLのdNTP混合物、1μLの100μM F_1999プライマー、1μLの100μM R_2003プライマー、0.5μLのPrimeSTAR HS DNA Polymerase(2.5U/μL)、及び水(最大50μL)と混合し、その混合物を、96℃で5分間予熱し、次いで、14サイクル(96℃で15秒、60℃で15秒、72℃で10秒)を実施し、続いて、72℃で3分間伸長した。次いで、これらのPCRフラグメントをゲル電気泳動(GENEray Gel Extractionキット)により精製し、BspEI及びBstBI(Thermo Scientific)で消化し、その後、同じ2つの酵素で消化したフィルターベクターFTV014にクローニングした。このライゲーション混合物を用いて、エレクトロポレーションによるDH10B細胞の形質転換を行い、計算した多様性の10倍を超える数のコロニーをプラスミド調製物のために回収した。精製したプラスミドは、ライブラリーVH-vr12を構成した。 表2:HVR-H1及びHVR-H2設計バリアント配列の式 [図:0001422785000001.jpg] [図:0001422785000002.jpg] 【0175】 次のプロトコルにより、105に近い配列多様性を有するVH_vr3をコードする数百の縮重オリゴを設計し、合成し、二重鎖DNAに変換した。0.75μLの0.2μM鋳型オリゴを、10μLの5x PrimeSTARバッファー、4μLのdNTP混合物、1μLの100μMフォワードプライマー、1μLの100μMリバースプライマー、0.5μLのPrimeSTAR HS DNA Polymerase(2.5U/μL)、及び33μLの水と混合した。PCR溶液を96℃で5分間予熱し、次いで、14サイクル(96℃で15秒、60℃で15秒、72℃で6秒)を実施し、続いて、72℃で3分間伸長した。フォワードプライマーは、S1089(ACAACTGAACAGCTTAAGAGCTGAGGACACTGCCGTCTATTATTG)(配列番号215)であり、リバースプライマーは、S1090(GAGGAGACGGTGACTAGTGTTCCTTGACCCCA)(配列番号216)であった。次いで、得られた合成DNAをゲル電気泳動(GENEray Gel Extractionキット)により精製し、AflII及びSpeI(Thermo Scientific)で消化し、その後、同じ2つの制限酵素で消化したフィルターベクターFTV012にクローニングした。このライゲーション混合物を用いて、エレクトロポレーションによるDH10B細胞の形質転換を行い、計算した多様性の10倍を超える数のコロニーをプラスミド調製物のために回収した。精製したプラスミドは、ライブラリーVH-vr3を構成した。 【0176】 全長VHライブラリーを組み立てるために、精製したVH-vr3ライブラリープラスミド混合物をAflII及びSpeI(NEB)で消化し、vr3コードフラグメントをゲル電気泳動(GENEray Gel Extractionキット)により精製し、同じ2つの制限酵素で消化したVH-vr12ライブラリープラスミド混合物にクローニングした。ライゲーション産物を脱塩した後(QIAquick(登録商標)PCR Purification Kit(QIAGEN))、ローリングサークル増幅(RCA)を実施した。RCAは、以下のように実施した。40ngのライゲーション産物を、10μLの10x NEBuffer4、50μLの100μM pd(N)8、及び水(最大88.5μL)と混合し、95℃で3分間加熱し、1サイクルずつ1℃下がる65サイクル(各サイクル30秒)でアニーリングした。10μLの10mM dNTPミックス、1μLの100×BSA、及び0.5μLのPhi29DNAポリメラーゼを添加した後、アニーリングした反応物を30℃で一晩インキュベートした。RCA産物を最初にNotIで消化し、DNAフラグメントを精製し(QIAquick(登録商標)PCR Purification Kit)、XhoIで更に消化した。次いで、消化した産物をT4 DNAリガーゼ(Thermo Scientific)でライゲートした。エタノール沈殿による精製後、このライゲーション産物を用いて、エレクトロポレーションによるDH10B細胞の形質転換を行った。精製したプラスミドは、ライブラリーVH-vr123を構成した。これらのコンストラクトはそれぞれ同じフレームワーク領域、すなわち、FW-H1(配列番号165)、FW-H2(配列番号166)、FW-H3(配列番号167)、及びFW-H4(配列番号168)を共有した。 【0177】 上記の2つの重鎖ライブラリーのプラスミド混合物をPvuI及びAcc65Iで消化し、同じ2つの制限酵素で同じく消化したファージミドベクターFad40にライゲートした。このライゲーション混合物を用いて、DH10B細胞の形質転換を行い、得られたライブラリーを精製し、定量し、完全なファージミドライブラリーの組み立てのために保存した。 【0178】 VLライブラリーの構築 軽鎖ライブラリーの構築を開始するために、可変領域VL_vr1及びVL_vr2のそれぞれについて、縮重オリゴ18グループ及び定義済みオリゴ5つを設計した。これらを、次のプロトコルにより二本鎖DNAに変換した。0.75μLの0.2μM鋳型オリゴを、10μLの5x PrimeSTARバッファー、4μLのdNTP混合物、1μLの100μMフォワードプライマー、1μLの100μMリバースプライマー、0.5μLのPrimeSTAR HS DNA Polymerase(2.5U/μL)、及び33μLの水と混合した。PCR溶液を96℃で5分間予熱し、次いで、14サイクル(96℃で15秒、60℃で15秒、72℃で6秒)を実施し、続いて、72℃で3分間伸長した。VL_vr1は、プライマーペアF_2898(TACTTATGTAGGCGATCGGGTCACCATCACCTGC)(配列番号217)及びR_2898(CGGAGCTTTTCCTGGTTTCTGTTGATAC)(配列番号218)を使用して増幅し、一方、VL_vr2は、プライマーペアF_2013(GAAACCAGGAAAAGCTCCGAAG)(配列番号219)及びR_2013(CGTCCCGGAACCGGATCCAGAGAAGCGAG)(配列番号220)を使用して増幅した。 【0179】 二本鎖のVL_vr1及びVL_vr2を、その5’末端または3’末端にある重複配列を介して結合させた。使用したプロトコルは、次のとおりであった。20ngのVL_vr1及び20ngのVL_vr2鋳型を、10μLの5x PrimeSTARバッファー、4μLのdNTP混合物、1μLの100μM F_2898プライマー、1μLの100μM R_2013プライマー、0.5μLのPrimeSTAR HS DNA Polymerase(2.5U/μL)、及び水(最大50μL)と混合し、その混合物を、96℃で5分間予熱し、次いで、14サイクル(96℃で15秒、60℃で15秒、72℃で10秒)を実施し、続いて、72℃で3分間伸長した。次いで、これらのPCRフラグメントをゲル電気泳動(GENEray Gel Extractionキット)により精製し、PvuI及びBamHI(Thermo Scientific)で消化し、その後、同じ2つの酵素で消化したフィルターベクターFTV015にクローニングした。このライゲーション混合物を用いて、エレクトロポレーションによるDH10B細胞の形質転換を行い、計算した多様性の10倍を超える数のコロニーをプラスミド調製物のために回収した。精製したプラスミドは、ライブラリーVL-vr12を構成した。 【0180】 次のプロトコルにより、VL_vr3をコードする縮重オリゴを22グループ設計し、合成し、二本鎖DNAに変換した。0.75μLの0.2μM鋳型オリゴを、10μLの5x PrimeSTARバッファー、4μLのdNTP混合物、1μLの100μMフォワードプライマーF2929(ACCATCAGCAGTCTGCAGCCGGAAGACTTCGCAAC)(配列番号221)、1μLの100μMリバースプライマーR2929(GATCTCCACCTTGGTACCCTGTCCGAA)(配列番号222)、0.5μLのPrimeSTAR HS DNA Polymerase(2.5U/μL)、及び33μLの水と混合した。PCR溶液を96℃で5分間予熱し、次いで、14サイクル(96℃で15秒、60℃で15秒、72℃で6秒)を実施し、続いて、72℃で3分間伸長した。次いで、VL_vr3をコードする二本鎖DNAをゲル電気泳動(GENEray Gel Extractionキット)により精製し、PstI及びAcc65I(Thermo Scientific)で消化し、その後、同じ2つの制限酵素で消化したフィルターベクターFTV013にクローニングした。このライゲーション混合物を用いて、エレクトロポレーションによるDH10B細胞の形質転換を行い、計算した多様性の10倍を超える数のコロニーをプラスミド調製物のために回収した。精製したプラスミドは、ライブラリーVL-vr3を構成した。 【0181】 全長VLライブラリーを組み立てるために、精製したVL-vr3ライブラリープラスミド混合物をPstI及びAcc65I(NEB)で消化し、vr3コードフラグメントをゲル電気泳動(GENEray Gel Extractionキット)により精製し、その後、同じ2つの制限酵素で消化したVL-vr12ライブラリープラスミド混合物にクローニングした。このライゲーション産物を用いて、エレクトロポレーションによるDH10B細胞の形質転換を行い、計算した多様性の10倍を超える数のコロニーをプラスミド調製物のために回収した。精製したプラスミドは、ライブラリーVL-vr123を構成した。次いで、制限酵素PvuI及びAcc65Iを使用して、ライブラリープラスミドVL-vr123のvr123インサートをファージミドベクターFad40に移した。Fad40-vr123を含有するライブラリーのサイズは、4*107に達した。 【0182】 完全なダイナミックライブラリーの構築 ダイナミックライブラリーは、VH-vr123ライブラリーに由来する重鎖ライブラリーと、Fad40-vr123ライブラリーに由来する軽鎖ライブラリーとから構成された。VH-vr123ライブラリープラスミドとFad40-vr123ライブラリープラスミドの両方をBspEI及びSpeI(Thermo Scientific)で消化した。VH-vr123ライブラリーに由来する重鎖をコードするDNAフラグメントを、Fad40-vr123ライブラリーに由来するベクター骨格にクローニングした。ローリングサークル増幅(RCA)前に、ライゲーション産物を脱塩した(QIAquick(登録商標)PCR Purification Kit(QIAGEN))。RCAは、以下のように実施した。40ngのライゲーション産物を、10μLの10x NEBuffer4、50μLの100μM pd(N)8、及び水(最大88.5μL)と混合し、95℃で3分間加熱し、1サイクルずつ1℃下がる65サイクル(各サイクル30秒)でアニーリングした。10μLの10mM dNTPミックス、1μLの100×BSA、及び0.5μLのPhi29DNAポリメラーゼを添加した後、アニーリングした反応物を30℃で一晩インキュベートした。RCA産物を最初にNotIで消化し、DNAフラグメントを精製し(QIAquick(登録商標)PCR Purification Kit)、Acc65Iで更に消化した。次いで、消化した産物をT4 DNAリガーゼ(Thermo Scientific)でライゲートした。エタノール沈殿による精製後、ライゲーション産物でER2738細胞をエレクトロポレーションによって形質転換した。プレートから合計1.4*1010のコロニーを回収し(2xYT、1%グルコース、100μg/mLのアンピシリン)、DPL6ライブラリーを作製した。 【0183】 実施例3:目的の抗体を単離するための共通重鎖ライブラリーのスクリーニング ダイナミックライブラリーファージミド粒子の調製 抗原パンニングのためのダイナミックライブラリーファージミド粒子を調製するために、ダイナミックライブラリーを含むER2738細胞(上の実施例2に記載)5.0リットルを、0.1の開始OD600で、2xYT、2%グルコース、100μg/mLのアンピシリン及び12.5μg/mLのテトラサイクリンを含む培地中に播種した。培養液を、250rpmで振盪しながら、0.6~0.8のOD600に達するまで、37℃で成長させた。次いで、多重感染度(MOI)10で、37℃で30分間、細胞にM13KO7ヘルパーファージを感染させた。感染したER2738細胞を、2xYT、100μg/mLのアンピシリン及び50μg/mLのカナマイシンを含む3.2リットルの培地中、22℃で一晩、成長させた。次いで、培養上清を10,000rpmで15分間、遠心分離によって回収し、0.45μmの低結合メンブレンフィルター(Corning)に通して濾過した。次いで、PEG/NaClを使用して、濾過した上清からファージミド粒子を沈殿させ、PBS中に再懸濁した。PEG/NaClによる沈殿と、それに続くPBS中への再懸濁のラウンドを追加で実施した。ファージ濃度をOD268の測定(OD268の1単位を約1*1013ファージ粒子/mLと仮定)によって決定し、プラークアッセイによって確認した。ライブラリーファージミド粒子を、20%グリセロール中、-80℃で保存した。 【0184】 ファージライブラリーパンニング 1~30μg/mlの濃度の抗原タンパク質をMaxisorpストリップ(Thermo Scientific、カタログ番号446469)上に4℃で一晩コーティングした。各ライブラリーに対して、複数の抗原ウェルを準備した。コーティングしたウェルを、まず、5%ミルク含有PBSを用いて、室温で1~2時間ブロッキングし、PBSで洗浄した。次いで、1,100μL/ウェルのファージミド粒子溶液(典型的に、2%ミルク含有PBS中、1~5*1012個のファージ)を4つの平行ウェルに添加し、1~2時間インキュベートした。次いで、Tween 20の濃度を上げながら(0.1%から0.3%)、PBSでウェルを数回洗浄し、最後にPBSだけで洗浄した。結合したファージミド粒子を、100μLの0.2Mグリシン-HClを用いて、室温で10分間、ウェルから溶出した。溶出したファージを、直ちに、18μLの1M Tris-HClで中和した(pH9.1)。 【0185】 あるいは、KingFisher(Thermo Scientific)により、Dynabeads(M280、ストレプトアビジン、Invitrogen、カタログ番号60210)を製造元の説明書に従って使用して、ファージミドライブラリーパンニングを実施した。300μLのDynabeadsをPBSで洗浄し、ビオチン化した抗ヒトFcとともに、室温で20分間、インキュベートした。次いで、ビーズを5%BSAのPBSで、室温で1時間、ブロッキングした。Fc融合抗原(70~100pmol)を1時間の室温でのインキュベーションによって捕捉した。次いで、ビーズをPBSで1回洗浄し、1mLのファージライブラリー溶液(典型的に、5%BSA-PBS中5*1012~1*1013個のファージ粒子)とともに1~2時間インキュベートした。次いで、ビーズをPBS/Tween(0.1%~0.3%)及びPBSで数回洗浄し、結合したファージを、100μLの0.2Mグリシン-HClを用いて、室温で10分間、ビーズから溶出した。溶出したファージを、直ちに、18μLの1M Tris-HClで中和した(pH9.1)。抗原のそれぞれに対して、合計3ラウンドまたは4ラウンドのパンニングを実施し、10倍を超える過剰量の精製ヒトFcを含めて、バックグラウンド結合を減らした。 【0186】 試験した抗原のいくつかについては、2mLの抗原(10~30μg/mL)を使用して、イムノチューブを4℃で一晩コーティングした。ブロッキング、洗浄、及び溶出の各溶液の量は、必要に応じて増やした。 【0187】 濃縮したファージの増幅 溶出した濃縮ファージプールを次のように更に増幅した。溶出したファージミド粒子をER2738細胞に37℃で30分間、感染させた。次いで、感染細胞を、2%グルコース、100μg/mLのアンピシリン及び12.5μg/mLのテトラサイクリンを含む2xYT寒天プレート上に播種した。プレートからコロニーを回収し、100mlの2%グルコース、100μg/mLのアンピシリン及び12.5μg/mLのテトラサイクリン中で成長させ、M13KO7ヘルパーファージを感染させた。増幅したファージを上記プロセスによって精製及び定量した。通常、パンニングの最終ラウンド後に溶出したファージを使用してER2738細胞の感染を行い、得られたER2738コロニーを上清ELISAスクリーニングアッセイのために採取した。 【0188】 上清サンドイッチElisaアッセイ 細菌上清中に存在するFabを測定するために、高感度サンドイッチElisaアッセイを構築した。マイクロプレートをポリクローナル抗ヒトIgG(Fab特異的)(Sigma I5260)でコーティングして、細菌上清中に存在するFabを捕捉し、次いで、HRP標識ヤギ抗ヒトFcを使用して、Fabの捕捉量を検出した。各ウェルのA450を測定して、Fab結合活性を決定した。一次ヒットは、ELISAシグナルがバックグラウンドの少なくとも2倍であるものと定義し、以下の実施例(実施例4)で更に特徴付けた。 【0189】 構築したライブラリーを用いて、12のヒト標的(TAGT-1、TAGT-2、TAGT-3、TAGT-4、TAGT-5、TAGT-6、TAGT-7、TAGT-8H、TAGT-9、TAGT-10H、TAGT-11、及びTAGT-12)、及び2つの対応するマウス標的(TAGT-8M及びTAGT-10M)をスクリーニングした。これらの14の抗原を用いて、合計690の親和性の高いユニークポジティブヒットが特定された。バリアントグループの大部分(表2)が、異なる標的抗原に結合する抗体、または2つの種間で交差反応する抗体(例えば、TAGT-8H及びTAGT-8Mに結合)を形成することができた。確認されたバインダーのバリアントグループは、表2に示される設計バリアントグループのサブセットであった。設計バリアントの大部分が、確認されたバインダー中にも認められた(表3)。(表2の設計式と、表3のポジティブヒットの式を対比して参照されたい)。 表3:ポジティブヒットしたHVR-H1及びHVR-H2設計バリアント配列の式 [図:0001422785000003.jpg] [図:0001422785000004.jpg] 」 (2)本願発明が解決しようとする課題 本願の発明の詳細な説明には【発明が解決しようとする課題】の項目は存在しない。 そこで、【背景技術】、【発明の概要】及び【発明を実施するための形態】の記載より、本願発明が解決しようとする課題を検討すると、冒頭の【背景技術】欄の[0004]には、「したがって、潜在的に機能関連性の高いダイナミック抗体を設計及び構築するために、明確に定義された開発可能な配列プロファイルを有する、十二分な一連のダイナミックユニットを含有するダイナミック抗体ライブラリーの開発が必要とされている。」と記載されている。そして【発明の概要】欄の[0006]には、「これらの抗体配列により、より小さなライブラリーでありながら、多数の有用な抗体を含有し、及び/または所与のライブラリーサイズで多様性がはるかに大きいライブラリーの作製が可能となる。そのようなライブラリーは、広範囲の標的に特異的である目的の新規抗体、またはいくつかの場合では、目的の複数の標的と交差反応する新規抗体を特定するために使用することができる。」と記載されている。そして、【発明を実施するための形態】として、[0068]に、「本開示は、抗体重鎖(例えば、ダイナミックヒト抗体の重鎖)をコードする合成(例えば、非天然)ポリヌクレオチドを含有するライブラリーを提供する。有利には、本明細書で開示される抗体重鎖は、目的の複数の基質に対するより効果的な基質結合及び/または特異性を得るための柔軟性の高いループを生成するように設計されたHVR配列を含む。これらのHVR配列により、既存の技法よりも広いエピトープカバレッジを有する、より小さな抗体ライブラリーの作製が可能となる。」と記載されている。 これら記載から、本願発明は、特異性を得るための柔軟性の高いループを生成するように設計されたHVR配列という手段を用いることで、潜在的に機能関連性の高いダイナミック抗体を設計及び構築するために、明確に定義された開発可能な配列プロファイルを有する、十二分な一連のダイナミックユニットを含有するダイナミック抗体ライブラリーを提供することを企図したものと解される。 したがって、本願発明が解決しようとする課題は、[0004]、[0006]、[0068]の記載によれば、「潜在的に機能関連性の高いダイナミック抗体を設計及び構築するために、明確に定義された開発可能な配列プロファイルを有する、十二分な一連のダイナミックユニットを含有するダイナミック抗体ライブラリーの開発」であると認められる。 (3)サポート要件に係る判断について 発明の詳細な説明には、重鎖超可変領域(HVR)及び重鎖可変領域(例えば、VH領域)などの抗体配列が開示され、これらの配列は、高い能力で標的に結合し、及び/または複数の有用なエピトープを認識し、及び/または低い配列同一性(およそ60%以下の配列同一性)で異なる種間で共有されるエピトープと交差反応することができる、柔軟性の高いHVR配列ループを有するダイナミックヒト抗体ができるように設計されたものである旨、これらの抗体配列により、より小さなライブラリーでありながら、多数の有用な抗体を含有し、及び/または所与のライブラリーサイズで多様性がはるかに大きいライブラリーの作製が可能となった旨が記載されている([0006])。 そして、このことを技術的に裏付ける実施例2及び実施例3として、可変領域HVR-H1について、表2に示される式に基づき、配列番号198~200までの3グループの縮重オリゴを設計し、112のユニークHVR-H1配列を得たこと、可変領域HVR-H2については、表2に示される式に基づき、配列番号201~207までの7グループの縮重オリゴを設計し、565のユニークHVR-H2配列を得たこと([0173])、これらを結合させたライゲーション混合物を用いて、エレクトロポレーションによるDH10B細胞の形質転換を行い、計算した多様性の10倍を超える数のコロニーをプラスミド調製物のために回収し、ライブラリーVH-vr12を得たこと([0174])、構築したライブラリーを用いて、12のヒト標的及び2つの対応するマウス標的を含む14の抗原を用いてスクリーニングし、合計690の親和性の高いユニークポジティブヒットが特定され([0173])、バリアントグループの大部分(表2)が、異なる標的抗原に結合する抗体、または2つの種間で交差反応する抗体(例えば、TAGT-8H及びTAGT-8Mに結合)を形成することができたこと([0189])が記載されている。 すなわち、可変領域HVR-H1については、配列番号198~200までの3グループの縮重オリゴを設計し、112のユニークHVR-H1配列を得、可変領域HVR-H2については、配列番号201~207までの7グループの縮重オリゴを設計し、565のユニークHVR-H2配列を得、さらにこれらを結合させたライゲーション混合物、すなわち、112のユニークHVR-H1配列と565のユニークHVR-H2配列をランダムにライゲーションすることに生成された、数万通り又はそれ以上の多様性を持つ混合物を用いれば、合計690の親和性の高いユニークポジティブヒットが特定され、既存の技法よりも広いエピトープカバレッジを有する、十二分な一連のダイナミックユニットを含有するダイナミック抗体ライブラリーが得られることを理解することができる。 したがって、ライブラリーを構成する各ポリヌクレオチドメンバーが請求項1において定義された、HVR-H1及びHVR-H2を含む抗体重鎖可変領域をコードする場合は、実施例2及び実施例3の記載より、上記(2)で示した課題を解決できることを当業者は認識できるといえる。 しかしながら、本願発明は、「ポリヌクレオチドメンバーの少なくとも1つは下記のHVR-H1及びHVR-H2を含む抗体重鎖可変領域をコードし」と規定されていることからも明らかなように、請求項1のHVR-H1及びHVR-H2を含まないポリヌクレオチドメンバー、例えば、ヒトB細胞レパートリーなどの生物源からクローニングすることができるポリヌクレオチドをポリヌクレオチドのその余のメンバーとして含むものである。 一方、発明の詳細な説明には、FW1-HVR1-FW2-HVR2-FW3-HVR3-FW4の順序で配置された、3つのHVR領域及び4つのFW領域から構成される抗体重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドメンバーの1つが上記112種類のHVR-H1のうちの1つ及び565種類のHVR-H2のうちの1つを含んでいれば、残りがそれ以外のポリヌクレオチドであったとしても、既存の技法よりも広いエピトープカバレッジを有する、十二分な一連のダイナミックユニットを含有するダイナミック抗体ライブラリーが得られたことを裏付ける記載は存在しない。 同様に、ライブラリー中の1つ程度のポリヌクレオチドメンバーが上記特定配列の組み合わせを含むとしても、直ちにその1つに対応する親和性の高いユニークポジティブヒットが得られたことや、抗原上の新規エピトープ及び/または立体構造エピトープを備える抗体スクリーニングの効率が大きく改善したことや、高い親和性及び開発可能性プロファイルを有する目的の特定の抗体が特定される可能性が高まったことは、発明の詳細な説明に記載されていないので、本願発明は、本願発明に係る構成によって、上記の(2)で示した課題が解決できない範囲を明らかに包含している。 したがって、本願発明は、発明の詳細な説明に、上記課題を解決できると当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。 (4)審判請求人の主張に対して 審判請求人が、令和6年6月18日提出の意見書においてした主張とそれらに対する合議体の判断は次のとおりである。 ア 審判請求人の主張 補正後請求項1において、補正前の「ポリヌクレオチドを含むライブラリーであって、前記ポリヌクレオチドのうちの1つは、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3を含む抗体重鎖可変領域をコードし、」との記載を、「ポリヌクレオチドメンバーを含むライブラリーであって、全てのポリヌクレオチドメンバーは、FW1-HVR1-FW2-HVR2-FW3-HVR3-FW4の順序で配置された、3つのHVR領域及び4つのFW領域から構成される抗体重鎖可変領域をコードし、ポリヌクレオチドメンバーの少なくとも1つは下記のHVR-H1及びHVR-H2を含む抗体重鎖可変領域をコードし、」とした。 補正後請求項1~24は本拒絶理由に該当しないと思料する。 イ 判断 本件補正により本願発明のポリヌクレオチドメンバーを含むライブラリーにおいて、「全てのポリヌクレオチドメンバーは、FW1-HVR1-FW2-HVR2-FW3-HVR3-FW4の順序で配置された、3つのHVR領域及び4つのFW領域から構成される抗体重鎖可変領域をコード」することが特定された。 しかしながら、抗体重鎖可変領域が4つのFW領域すなわちフレームワーク領域と3つのHVR領域すなわち超可変領域を含むものであることは、抗体をコードするポリヌクレオチドとして通常のことに過ぎない。 ライブラリーに含まれる個々の抗体をコードするポリヌクレオチドメンバーの少なくとも1つが、上記112種類のHVR-H1のうちの1つ及び565種類のHVR-H2のうちの1つであるというだけでは、ライブラリーが既存の技法よりも広いエピトープカバレッジを有する、十二分な一連のダイナミックユニットを含有し、抗原上の新規エピトープ及び/または立体構造エピトープを備える抗体スクリーニングの効率も大きく改善され、高い親和性及び開発可能性プロファイルを有する目的の特定の抗体が特定される可能性が高まったということはできないので、上記の補正により拒絶の理由は解消しない。 (5)小括 このとおり、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとは認められないから、本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2 理由4(明確性)について (1) 本願発明について 本願発明は、「ポリヌクレオチドメンバーを含むライブラリーであって、全てのポリヌクレオチドメンバーは、FW1-HVR1-FW2-HVR2-FW3-HVR3-FW4の順序で配置された、3つのHVR領域及び4つのFW領域から構成される抗体重鎖可変領域をコードし、ポリヌクレオチドメンバーの少なくとも1つは下記のHVR-H1及びHVR-H2を含む抗体重鎖可変領域をコード」することを発明特定事項とするものである。 これら発明特定事項のうちHVR-H1及びHVR-H2については、「FW1-HVR1-FW2-HVR2-FW3-HVR3-FW4の順序で配置された、3つのHVR領域及び4つのFW領域から構成される抗体重鎖可変領域をコード」することから、抗体重鎖可変領域に配置されていること、FW領域に挟まれていることについては理解することができる。 しかしながら、HVR-H1及びHVR-H2が、どのような構造からなるFW1、FW2、FW3、FW4に挟まれているのかについては、特許請求の範囲において明らかにされていない。 (2) 発明の詳細な説明の記載について 発明の詳細な説明[0083]段落には、「本明細書で使用されるとき、「超可変領域(HVR)」は、配列が超可変性であり、及び/または構造的に定義されたループを形成する、抗体ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVH(H1、H2、H3)にあり、3つがVL(L1、L2、L3)にある。例えば、・・・を参照されたい。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、次の順序:FW1-HVR1-FW2-HVR2-FW3-HVR3-FW4で配置された、3つのHVR及び4つのフレームワーク(FW)領域から構成される。本開示全体を通して、重鎖の3つのHVRは、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3と称される。本開示全体を通して、重鎖の4つのフレームワーク領域は、FW-H1、FW-H2、FW-H3及びFW-H4と称される。比較のために、図1Bに示される例示的な抗体重鎖可変ドメインのHVRの定義(本明細書で使用されるもの)は、相補性決定領域(CDR)のKabat定義とは異なる・・・。」と記載されている。 (3) 明確性に係る判断について 特許請求の範囲において、HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3について、どのような長さのアミノ酸配列からなるFW1、FW2、FW3、FW4に挟まれ、抗体重鎖可変領域上のアミノ酸の位置(残基番号)は特許請求の範囲において特定されておらず、発明の詳細な説明においても、「アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、次の順序:FW1-HVR1-FW2-HVR2-FW3-HVR3-FW4で配置された、3つのHVR及び4つのフレームワーク(FW)領域から構成される。」との記載以上の開示はない。 そして、図1Bに示される例示的な抗体重鎖可変ドメインのHVRの定義(本明細書で使用されるもの)は、相補性決定領域(CDR)のKabat定義とは異なる・・・。」と記載されているのであるから、Kabat定義に基づく相補性決定領域(CDR)の抗体重鎖可変領域中の存在位置に係る技術常識を参酌することはできない。 したがって、「HVR-H1」、「HVR-H2」、「HVR-H3」はKabat定義に基づく相補性決定領域(CDR)に係る技術常識を参酌できない独自のフレームワークに挟まれた位置に存在するものであるため、「HVR-H1」、「HVR-H2」、「HVR-H3」が、それぞれ抗体重鎖可変領域上のどのアミノ酸の位置(残基番号)に存在するのかは、本願の出願時の技術常識を参酌しても、当業者は理解することができない。 よって、本願発明は第三者に不測の不利益を及ぼしうる程度に明確でない。 (4)審判請求人の主張に対して 審判請求人が、令和6年6月18日提出の意見書においてした主張とそれらに対する合議体の判断は次のとおりである。 ア 審判請求人の主張 本願図1Bからも明らかなとおり、HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3は、それぞれ、FW-H1とFWH2、FW-H2とFW-H3、及びFW-H3とFW-H4の間に位置する超可変領域を意味する。そして、HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3のそれぞれの位置は、補正後請求項1に記載のとおり、抗体重鎖可変領域において、FW1-HVR1-FW2-HVR2-FW3-HVR3-FW4の順序で配置されている。 補正後請求項1において、HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3は、それらが重鎖可変領域のうち特殊なフレームワークとの関係での位置について明確であり、重鎖可変領域のうちいかなる部分を指しているか明確であると思料する。 イ 判断 本件補正により本願発明のポリヌクレオチドメンバーを含むライブラリーにおいて、「全てのポリヌクレオチドメンバーは、FW1-HVR1-FW2-HVR2-FW3-HVR3-FW4の順序で配置された、3つのHVR領域及び4つのFW領域から構成される抗体重鎖可変領域をコード」することが特定された。 しかしながら、抗体重鎖可変領域が4つのFW領域すなわちフレームワーク領域と3つのHVR領域すなわち超可変領域を含むものであることは、抗体をコードするポリヌクレオチドとして通常のことに過ぎず、翻訳によって生じるアミノ酸配列のN末端からの絶対位置において何らの情報を与えるものではない。 HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3について、「例示的」として図1Bに [図:0001422785000005.jpg] と記載されていることから判断しても、本願発明のライブラリーにおいては、抗体において相補性決定領域(CDR)の定義に最も汎用されているKabat定義とはN末端からの絶対位置や長さが異なることを包含するものであることは明らかである。 そうであるにも関わらず、特許請求の範囲において、出願人によって新たに設定された技術用語である、HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3について、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明のいずれにおいてもそれらの存在する位置や包含するアミノ酸長等に係る定義は置かれていない。なお、図1Bに係る記載の全ては「例示的」なものに過ぎないから、図1Bの記載をもって本願発明のHVR-H1、HVR-H2、HVR-H3の抗体重鎖可変領域における位置が明らかになるとはいえない。 そうすると、補正後請求項1により、HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3が、重鎖可変領域のうちいかなる部分を指しているか当業者に明確であるとの請求人の主張は採用することができない。 (5)小括 このとおり、本願発明は、明確であるとは認められないから、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 第5 むすび 以上のとおり、本願は、請求項1について、特許法第36条第6項第1号及び第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-018073

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