2022-018050
ボルト締付力感知座金
- 審判番号
- 2022-018050
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-025603外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年11月09日
- 審決日
- 2023年11月01日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】中國氣動工業股▲ふん▼有限公司
- 【請求人代理人】宮田 英毅
- 【請求人代理人】酒井 宏明
- 分類
- P18 .121-Z (G01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
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本願は、令和3年2月19日(パリ条約の例による優先権主張2020年(令和2年)4月13日、台湾)の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。なお、以下、2020年(令和2年)4月13日を「優先日」という。
同年 5月18日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月12日 :原査定の謄本の送達)
同年11月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年11月9日に提出された手続補正書(以下、当該手続補正書による補正を「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「【請求項1】感知座金、信号処理装置及び接続線アセンブリを備えた、ボルト締付力感知座金であって、前記感知座金は、本体、センサ素子及びブッシュを有し、前記本体は、金属材料からなるとともに、ボルトのねじ部の外径を組み合わせる同軸の軸孔を有し、前記軸孔に対して垂直な前記本体の両端面には、緩み防止構造がそれぞれ設けられ、前記本体の外周には、内側に凹んだ環状溝が形成され、前記センサ素子が前記環状溝内に貼り合わされ、前記本体が軸方向で受ける力により発生する変形検出値を測定し、前記ブッシュは、プラスチック絶縁材料の鋳込み成形型であるとともに、前記本体及び前記センサ素子を覆い、前記本体及び前記緩み防止構造は、一体であり、前記信号処理装置は、信号増幅器、マイクロプロセッサ、電源回路ユニット、信号伝送ユニット、記憶ユニット及び警告ユニットを有し、前記接続線アセンブリは、前記ブッシュに配設され、前記センサ素子及び前記信号処理装置と電気的に接続されることを特徴とする、ボルト締付力感知座金。」
第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本件補正前の請求項1に係る発明に対する理由は、次のとおりである。
(進歩性の欠如)本件補正前の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において発行された、下記引用文献に記載された発明に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2010-117334号公報
引用文献2.特表2016-509179号公報
第4 引用文献に記載された発明の認定等
1 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献1(特開2010-117334号公報)には、以下の事項が記載されている。下線は、当合議体によるものであり、以下同様である。
ア 【0001】
「【0001】本発明は、ボルト・ナットで構成された締結体のねじ締付け管理において、最も重要な因子である締付け力、即ちボルト締付け軸力の測定方法およびボルト締付け軸力の測定機に関するものである。」
イ 【0020】、【図1】
「【0020】図1は、本発明の実施形態に係わるボルト軸力測定機の全体構成を示したもので、1は本発明のボルト軸力測定機、A、Bは被締結体、2は被締結体A、Bを締め付けするボルト、21はボルト2の頭部、22はボルト2の締付けナット、3は軸力を測定するためのセンターホール型荷重計、31は荷重計3の電気的接続端子、4はボルト2の回転を止めるためのラチエットレンチなど、41はボルト頭部21に嵌合したラチエットレンチヘッド、5はトルクレンチ若しくはジャイロレンチ、51はトルクレンチ若しくはジャイロレンチ5の交換ヘッド、52はナット22と交換ヘッド51に嵌合するソケット、53はトルクレンチ若しくはジャイロレンチ5の電気的接続端子、6はセンサインタフェース、61、62はセンサインタフェースの接続端子、15はデータの処理と表示を行なうパソコン、32は荷重計の接続端子31とセンサインタフェースの接続端子61を繋ぐ電線ケーブル、54はトルクレンチ若しくはジャイロレンチの接続端子53とセンサインタフェースの接続端子62を繋ぐ電線ケーブル、151はセンサインタフェース6とパソコン15を繋ぐUSBケーブルである。」
「【図1】[図:0001408527000001.jpg]」
ウ 【0021】~【0022】、【図2】、【図3】
「【0021】図2は、本発明の実施形態に係わるボルト軸力測定機1の上記センターホール型荷重計3であって、その一種類である断面H型の荷重計の断面図を示したもので、7は断面横H型の芯体部、70は芯体部7の中心部、71は芯体部7の上部端面、72は芯体部7の下部端面、73は芯体部70の中心部にあけられた貫通穴、74は芯体部7に応力集中を起こすための凹型くびれ部、75はくびれ部74の外側面、81、82、83、84(図示省略)はくびれ部外側面75に4等分の間隔で接着された4個のひずみゲージ、8a、8b、8c、8dは4個のひずみゲージそれぞれのゲージリード線、9は芯体部7を収納する円筒形、若しくは多角形の保護ケース、10は掴み具、11は掴み具10を保護ケース9の側面にねじ止めするための異径ニップル、12は保護ケース9と掴み具10の隙間を埋めるOリング、14は接続端子31を固定するブッシュ、3a、3b、3c、3dはゲージリード線8a、8b、8c、8dのそれぞれと結線された電線である。【0022】図3は、本発明の実施形態に係わるボルト軸力測定機1の上記荷重計3の平面図を示したもので、81、82、83、84は芯体部7の外側面75に4等分の等間隔で接着された4個のひずみゲージである。」
「【図2】[図:0001408527000002.jpg]」
「【図3】[図:0001408527000003.jpg]」
エ 【0023】~【0027】、【図4】、【図5】
「【0023】図4は、本発明の実施形態に係わるボルト軸力測定方法における一連の作業手順を示したブロック図である。ここではトルクを指標とするトルク法と、締付け回転角を指標とする回転角法およびトルク勾配法の二つに分類して示した。以下にこの概要を説明する。【0024】締付け施工に際して先ずは、現場の被締結体について、ボルトサイズ・数量、暴露年月、表面状態および発注者側の要望などの状況を詳しく把握して締付け方式を選定する。ここで高い締付力を必要としない通常の被締結体の場合には締付け軸力を弾性域とするトルク法、若しくは弾性域回転角法を、高い締付け力を必要とする場合には締付け軸力を弾性限界とするトルク勾配法、若しくは塑性域回転角法を選定することになる。次いで、方式決定後には締付けする代表的なボルト・ナット1組を選定し、これに上記ボルト軸力測定機を設置して手動若しくは自動にて締付けを行う。【0025】トルク法を選定した場合には締付けトルクに対する締付け軸力を測定する。このときの締め付けは、前述したように締付け軸力がボルトの弾性域を経て降伏点を超えるまで連続的に行なって、締付け軸力と締付けトルクの測定値をグラフ化する。ここで重要なことは、測定によって得られた当該グラフの曲線が正規の状態を示していることであって、これについては、JISB1083ねじの締付け通則に記載されている事項、および予め準備した標準データと比較して評価する。当該グラフが正規状態であると判断された場合には、当該グラフより弾性域内で上限締付け軸力と下限締付け軸力を算出して目標の締付け軸力に対応する目標締付けトルクを求める。当該目標締付けトルク値を指標として、ボルトの締付け作業を行なう。もしも当該グラフの変化が正規状態でないと判断された場合には、発注者側と協議の上、適正処置を施して再度計測を行なってグラフを求め、前記と同様の操作を行なう。【0026】また、高締付け力を必要とするトルク勾配法を選定した場合には締付け回転角に対する締付け軸力を測定する。このときの締め付けは、上記トルク法とは異なり、締付け軸力がボルトの降伏点を超えて塑性域を経て最大値を過ぎる点まで連続的に測定を行なって、締付け軸力と締付け回転角の関係、および締付け軸力と締付け軸力の回転角に対する微分変化率(以下、軸力勾配という)の関係をグラフ化する。当該両グラフの曲線が正規状態であることを確認した後、トルク勾配法の場合には、目標締付け軸力(JISB1083ねじの締付け通則の5.4.2項に記載の決め方:降伏点であって最大軸力勾配値の2分の1から3分の1程度となる値)を与える締付け回転角を指標として、ボルトの締付け作業を行なう。なお、ここで、回転角法を選定した場合の目標締付け回転角の算出方法についての記述は省略する。【0027】図5は、本発明の実施形態に係わるボルト軸力測定方法およびボルト軸力測定機に従い、締付け手段としてトルクレンチを用い、被締結体である厚み25mmの鋼板材を溶融亜鉛メッキM16サイズのボルト・ナットで締め付けした場合に得られた締付け軸力と締付けトルクの関係を示すグラフである。なお、ここには目標締付け軸力とこれに対応する目標締付けトルクの算出結果を一例として示した。」
「【図4】[図:0001408527000004.jpg]」
「【図5】[図:0001408527000005.jpg]」
オ 【0028】~【0033】
「【0028】以下、本発明のボルト軸力測定方法およびボルト軸力測定機によって行なった締付け作業の方法と作用効果を、高い締付け力を必要としない通常の締め付けを行なうトルク法の場合について図1から図5に基づき説明する。【0029】先ずは、現場の被締結体A,Bの表面状態を調べ、ほこり、水分等の異物があればこれらをウエスで軽く払拭する。次いで図1に示したように上記本発明のボルト軸力測定機1を前記被締結体A,Bのボルト2およびナット22に設置して計測の準備を行なう。この後、ラチエットレンチ4などにてボルト頭部21の回転を止めておき、ナット22をトルクレンチ5で徐々に締付けを行って締付けトルクを上昇させる。そうするとボルト2は徐々に締め付けられて内部には引張応力(即ち軸力)が発生する。この引張応力は反力となってボルト頭部21と被締結体Aの間に挟まれて設置された上記センターホール型荷重計3の上部端面71、下部端面72に圧縮力として作用する。そうするとこの圧縮力によって当該荷重計3の芯体部7のくびれ部74では応力集中が起こり、当該くびれ部74の外周面75に接着されたひずみゲージ81、82、83、84には微小変化が発生することになる。この微小変化は電気信号となってそれぞれのゲージリード線8a、8b、8c、8dおよび電線3a、3b、3c、3dと、電気接続端子31、電線ケーブル32および接続端子61を経てセンサインタフェース6に伝えられる。ここで電気信号は軸力値に変換処理されてUSBケーブルを経てパソコン15に保存される。同様に、締付けトルク値はトルクレンチ5に内蔵されたひずみゲージ(図示省略)で検出され、発生した電気信号は電気的接続端子53、電線ケーブル54および接続端子62を経てセンサインタフェース6に伝えられる。ここで変換処理されたトルク値はパソコン15に保存される。続きを表示(全12行)【0030】パソコン51に連続的に保存された上記軸力値とトルク値は、図5に示したように、締付けトルク(N・m)に対応する締付け軸力(KN)を与える曲線としてパソコン画面にグラフ表示される。【0031】ここで重要なことは、計測して得られた上記グラフの曲線が正規の状態を表していることであって、これについては予め準備された標準データと比較して評価する。当該グラフが正規状態であると判断された場合には、当該グラフよりボルトの耐力T点を求め、上限締付け軸力と下限締付け軸力を所定の計算法により算出して目標の締付け軸力とこれに対応する目標締付けトルクを求める。【0032】最も簡単な計算方法の一例として、上限締付け軸力はボルト耐力の90%、下限締付け軸力はボルト耐力の70%として目標締付けトルクを求めることができる。この場合、上記図5のグラフより、ボルト耐力は26.3KNとなり、上限締付け軸力はこれの90%の23.7KN(これに対応する締付けトルクは140N・m)、下限締付け軸力は18.4KN(これに対応する締付けトルクは168N・m)となる。また、目標締付け軸力を上限締付け軸力と下限締付け軸力の算術平均値とすると、当該目標締付け軸力は21.1KNとなり、この軸力を与える当該目標締付けトルクは150N・mと求められる。なお、上・下限の締付け軸力、および目標締付け軸力の算出方法については、従来から種々の方法があって適宜選ばれるもので、ここで述べた前記方法に限定するものではない。【0033】例えば上記目標締付けトルク値150N・mを最適な締付けトルクとするが、実際の締付け作業においては多少の変動が起こる。このため、140N・m~168N・mを適正な締付けトルク範囲とすることができる。当該目標締付けトルクおよび適正締付けトルク範囲を指標として、ボルトの締付け作業を行なう。ここで用いる締付け工具の一例として、当該目標締付けトルク値を設定しておきこれに到達すれば締付け停止となる電動インパクトレンチなどを用いると効率よく作業を行なうことができる。なお、この締付け作業には現場にて都度望ましい方式が採用されるものである。」
(2) 引用発明の認定
ア 段落【0020】及び【図1】から、ボルト軸力測定機1が、軸力を測定するためのセンターホール型荷重計3と、ボルト2の回転を止めるためのラチエットレンチ4と、トルクレンチ5と、センサインタフェース6と、データの処理と表示を行なうパソコン15と、荷重計3の接続端子31とセンサインタフェース6の接続端子61を繋ぐ電線ケーブル32と、トルクレンチの接続端子53とセンサインタフェースの接続端子62を繋ぐ電線ケーブル54と、センサインタフェース6とパソコン15を繋ぐUSBケーブル151を備えていることが読み取れる。
イ(ア) 【図2】は「センターホール型荷重計3」の断面を示す図であるところ、図2中の符号「2」は、段落【0020】、【0021】の記載からみると、本来は「ボルト2」を示すものであるから、図2における符号の表示として正しいものではなく、「センターホール型荷重計3」を示す符号「3」の誤記であることは明らかである。
(イ) 段落【0021】、【図1】及び前記(ア)において符号「2」を「3」であるとして正しく読み替えた【図2】から、センターホール型荷重計3が、上部端面71、下部端面72、中心部にあけられた貫通穴73、凹型くびれ部74を有する断面横H型の芯体部7と、くびれ部74の外側面75に4等分の間隔で接着された4個のひずみゲージ81、82、83、84と、芯体部7を収納する円筒形、若しくは多角形の保護ケース9と、掴み具10と、掴み具10を保護ケース9の側面にねじ止めするための異径ニップル11と、保護ケース9と掴み具10の隙間を埋めるOリング12と、接続端子31を固定するブッシュ14を有し、4個のひずみゲージそれぞれのゲージリード線8a、8b、8c、8dと接続端子31の間に、電線3a、3b、3c、3dが結線され、貫通穴73の径はボルト2の外径に組み合わされ、貫通穴73とボルト2は同軸となっていることが読み取れる。
ウ 前記(1)の記載事項及び前記ア及びイの認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
<引用発明>
「軸力を測定するためのセンターホール型荷重計3と、ボルト2の回転を止めるためのラチエットレンチ4と、トルクレンチ5と、センサインタフェース6と、データの処理と表示を行なうパソコン15と、荷重計3の接続端子31とセンサインタフェース6の接続端子61を繋ぐ電線ケーブル32と、トルクレンチの接続端子53とセンサインタフェースの接続端子62を繋ぐ電線ケーブル54と、センサインタフェース6とパソコン15を繋ぐUSBケーブル151を備えているボルト軸力測定機1であって、(前記アの認定事項)センターホール型荷重計3は、上部端面71、下部端面72、中心部にあけられた貫通穴73、凹型くびれ部74を有する断面横H型の芯体部7と、くびれ部74の外側面75に4等分の間隔で接着された4個のひずみゲージ81、82、83、84と、芯体部7を収納する円筒形、若しくは多角形の保護ケース9と、掴み具10と、掴み具10を保護ケース9の側面にねじ止めするための異径ニップル11と、保護ケース9と掴み具10の隙間を埋めるOリング12と、接続端子31を固定するブッシュ14を有し、4個のひずみゲージそれぞれのゲージリード線8a、8b、8c、8dと接続端子31の間に、電線3a、3b、3c、3dが結線され、貫通穴73の径はボルト2の外径に組み合わされ、貫通穴73とボルト2は同軸となっており、(前記イの認定事項)ボルト軸力測定機1を被締結体A,Bのボルト2およびナット22に設置して、ラチエットレンチ4などにてボルト頭部21の回転を止めておき、ナット22をトルクレンチ5で徐々に締付けを行って締付けトルクを上昇させ、ボルト2は徐々に締め付けられて内部には引張応力(即ち軸力)が発生し、この引張応力は反力となってボルト頭部21と被締結体Aの間に挟まれて設置された上記センターホール型荷重計3の上部端面71、下部端面72に圧縮力として作用し、この圧縮力によって当該荷重計3の芯体部7のくびれ部74では応力集中が起こり、当該くびれ部74の外周面75に接着されたひずみゲージ81、82、83、84には微小変化が発生することになり、この微小変化は電気信号となってそれぞれのゲージリード線8a、8b、8c、8dおよび電線3a、3b、3c、3dと、電気接続端子31、電線ケーブル32および接続端子61を経てセンサインタフェース6に伝えられ、電気信号は軸力値に変換処理されてUSBケーブルを経てパソコン15に保存され、(【0029】)同様に、締付けトルク値はトルクレンチ5に内蔵されたひずみゲージで検出され、発生した電気信号は電気的接続端子53、電線ケーブル54および接続端子62を経てセンサインタフェース6に伝えられ、ここで変換処理されたトルク値はパソコン15に保存され、(【0029】)パソコン51に連続的に保存された上記軸力値とトルク値は、締付けトルク(N・m)に対応する締付け軸力(KN)を与える曲線としてパソコン画面にグラフ表示され、(【0030】)締付け施工に際して先ずは、現場の被締結体について、ボルトサイズ・数量、暴露年月、表面状態および発注者側の要望などの状況を詳しく把握して締付け方式を選定し、次いで、方式決定後には締付けする代表的なボルト・ナット1組を選定し、これに上記ボルト軸力測定機を設置して手動若しくは自動にて締付けを行うものであり、(【0024】)高い締付力を必要としない通常の被締結体の場合には、締付け軸力を弾性域とするトルク法が締付け方式として選定され、トルク法を選定した場合には締付けトルクに対する締付け軸力を測定し、(【0024】、【0025】)締め付けは、締付け軸力がボルトの弾性域を経て降伏点を超えるまで連続的に行なって、締付け軸力と締付けトルクの測定値をグラフ化し、(【0025】)当該グラフが正規状態であると判断された場合には、当該グラフよりボルトの耐力T点を求め、上限締付け軸力と下限締付け軸力を所定の計算法により算出して目標の締付け軸力とこれに対応する目標締付けトルクを求める、(【0031】)ボルト軸力測定機1。」
2 引用文献2に記載された事項の認定
(1) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献2(特表2016-509179号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0034】図1から図3は、組で使用されるロックワッシャ8A,8Bの従来技術を開示している。ロックワッシャは、通常、一側において歯11の形態の係合手段と、他側においてカム12の形態の係合手段と、を備えている。ロックワッシャ8A,8Bは、組で使用されるよう意図され、且つ常に互いに精密なコピーである。ワッシャ8A及び8Bの間の唯一の差異は、それらが互いに反対に回転させられることである。【0035】図1は、面取り面10を有するロックワッシャ8A,8Bの従来技術を開示している。この面取り面10は、どのようにネジ15が構成されるかを説明するために、ロックワッシャを、半径5を有するネジ、又は2つの半径5’,5a,5b(図7及び図8参照)を有する面取り面を有するネジに適合させるために導入される。図1のワッシャは、面取り面10を有するこの構成を有し、このため、ワッシャ8A,8Bは、半径5を有するネジ、又は2つの半径5a,5bを有する面取り面5’を有するネジ上に嵌合することができ、従って、ワッシャ8Aの歯は、図1aから分かるようにネジのヘッドと係合することができる。【0036】図1aは、歯11及びカム12の機能を開示している。歯11は、ネジヘッドと、取り付けられるワークピース16と、と係合する。ネジ15は、ネジ山付き要素17と係合するネジ山を有している。ネジ山のピッチ角βは、ロックワッシャのカムの楔角αよりも常に小さい。この形態により、ネジ結合部は、堅くロックされる。【0037】歯11は、係合することを可能とするために任意の全体的形態を有することができる。示される形態は、傾斜歯11がそれらのより急勾配の側でネジ15のヘッド又はワークピース16と係合する傾斜ピラミッド形状である。歯11の他の形態が考えられる。例えば、歯11は、一様なピラミッド形状の形態を有することができる。また、歯11は、台形形状を有することができる。歯11は、ネジヘッド及びワークピース16よりも高い硬度を有することが重要である。この理由は、歯11が、ロック機能を達成するために、隣接して位置決めされた材料と係合することができなければならないからである。そうでなければ、歯は、ネジ結合部を締結したときに運動量によって平坦にされるか、又はより硬い隣接面上でスライドする可能性がある。従って、ロックワッシャ8Aは、ネジ結合部を締結するときにネジ15とともに動かされ、ロックワッシャ8Bは、ワークピース16上にあるままとなる。【0038】カム12は、この例として図2を参照して楔として説明される。カム12は、互いの急勾配面に対してロックする能力を有する。従って、それぞれのロックワッシャ8A,8Bは、互いに締結されるときに、それらのそれぞれのカム12が互いに対して位置決めされる。ロックは、カム12の楔形状によって達成される。締結されたネジが、例えば振動又は使用者によって螺合解除されるときに、ロックワッシャの歯11は、ネジのヘッドと、取り付けられた要素16と、と係合する。従って、ロックワッシャ8Aは、ネジ15の回転方向で動きをたどろうとし、他方のワッシャ8Bは、ワークピース16と係合するそのそれぞれの歯11によって所定位置に維持されようとする。カム12は、互い上でスライドし、従って、締結解除方向にスライドするときにカム面の傾き及び楔角αにより、ネジ15の長手方向にネジ結合部を延長させようとする。この延長は、ネジ結合部をロックし、ネジが締結解除することを防止する。従って、カム12は、ロックワッシャ8A,8Bが、ネジの締結解除方向に動かされることを防止する。」
「【図1】[図:0001408527000006.jpg]」
「【図1a】[図:0001408527000007.jpg]」
「【図2】[図:0001408527000008.jpg]」
(2) 引用文献2技術事項の認定
前記(1)の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
<引用文献2技術事項>
「一側において歯11の形態の係合手段と、他側においてカム12の形態の係合手段と、を備えている、組で使用されるロックワッシャ8A,8Bであって、(【0034】)歯11は、ネジヘッドと、取り付けられるワークピース16と係合し、(【0036】)ロックは、カム12の楔形状によって達成され、(【0038】)カム12は、互いの急勾配面に対してロックする能力を有し、それぞれのロックワッシャ8A,8Bは、互いに締結されるときに、それらのそれぞれのカム12が互いに対して位置決めされ、カム12は、ロックワッシャ8A,8Bが、ネジの締結解除方向に動かされることを防止する、(【0038】)組で使用されるロックワッシャ8A,8B。」
第5 対比
1 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
(1)ア 引用発明の「断面横H型の芯体部7」、「4個のひずみゲージ81、82、83、84」及び「芯体部7を収納する円筒形、若しくは多角形の保護ケース9」は、それぞれ本願発明の「本体」、「センサ素子」及び「ブッシュ」に相当する。
したがって、引用発明の「断面横H型の芯体部7」、「ひずみゲージ81、82、83、84」、「ゲージリード線8a、8b、8c、8d」及び「芯体部7を収納する円筒形、若しくは多角形の保護ケース9」からなる集合体は、本願発明の「本体、センサ素子及びブッシュを有[する]」「感知座金」に相当する。
イ 引用発明の「センサインタフェース6」、「データの処理と表示を行なうパソコン15」及び「センサインタフェース6とパソコン15を繋ぐUSBケーブル151」からなる集合体は、本願発明の「信号処理装置」に相当する。
ウ 引用発明の「掴み具10」、「異径ニップル11」、「電線3a、3b、3c、3d」、「接続端子31を固定するブッシュ14」及び「電線ケーブル32」からなる集合体は、本願発明の「接続線アセンブリ」に相当する。
エ 引用発明では、「トルク法を選定した場合には締付けトルクに対する締付け軸力を測定」するものであるところ、上記「締付け軸力」はボルト締付力であるといえるから、引用発明の「ボルト軸力測定機1」は、本願発明の「ボルト締付力感知座金」に相当する。
オ 前記ア~エをまとめると、本願発明と引用発明は、「感知座金、信号処理装置及び接続線アセンブリを備えた、ボルト締付力感知座金」の発明である点において一致する。
(2)ア 前記(1)アを踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記感知座金は、本体、センサ素子及びブッシュを有[する]」点において一致する。
イ(ア) 引用発明において、「貫通穴73の径はボルト2の外径に組み合わされ、貫通穴73とボルト2は同軸となって」いるから、引用発明の「芯体部7」の「中心部にあけられた貫通穴73」は、本願発明の「ボルトのねじ部の外径を組み合わせる同軸の軸孔」に相当する。
(イ) 引用発明の「芯体部7」が有する「凹型くびれ部74」は、本願発明の「本体の外周」に「形成」された「内側に凹んだ環状溝」に相当する。
(ウ) 引用発明において、「芯体部7」の「くびれ部74の外側面75に4等分の間隔で」「4個のひずみゲージ81、82、83、84」が「接着され」ることは、本願発明の「センサ素子が前記環状溝内に貼り合わされ」ることに相当する。
(エ) 引用発明において、「ひずみゲージ」に「発生」した「微小変化」が「電気信号」となり、この「電気信号」が「軸力値に変換処理」されることは、「芯体部7」が受ける「締付け軸力」により発生する「微小変化」を「軸力値」として測定することを意味するから、本願発明の「前記本体が軸方向で受ける力により発生する変形検出値を測定[する]」ことに相当する。
(オ) よって、本願発明と引用発明は、「前記本体は、ボルトのねじ部の外径を組み合わせる同軸の軸孔を有し、前記本体の外周には、内側に凹んだ環状溝が形成され、前記センサ素子が前記環状溝内に貼り合わされ、前記本体が軸方向で受ける力により発生する変形検出値を測定[する]」点において共通する。
ウ 引用発明の「芯体部7を収納する円筒形、若しくは多角形の保護ケース9」は、芯体部7のみならず、芯体部7のくびれ部74の外側面75に接着された4個のひずみゲージ81、82、83、84も収納していることは明らかであるから、引用発明の「保護ケース9」が「芯体部7」と「ひずみゲージ」を「収納する」ことは、本願発明の「前記ブッシュは、前記本体及び前記センサ素子を覆[う]」ことに相当する。
よって、本願発明と引用発明は、「前記ブッシュは、前記本体及び前記センサ素子を覆[う]」点において共通する。
エ 前記ア~ウをまとめると、本願発明と引用発明は、「前記感知座金は、本体、センサ素子及びブッシュを有し、前記本体は、ボルトのねじ部の外径を組み合わせる同軸の軸孔を有し、前記本体の外周には、内側に凹んだ環状溝が形成され、前記センサ素子が前記環状溝内に貼り合わされ、前記本体が軸方向で受ける力により発生する変形検出値を測定し、前記ブッシュは、前記本体及び前記センサ素子を覆[う]」ものである点において共通する。
(3) 引用発明においては、「センサインタフェース6」及び「パソコン15」が、「USBケーブル151」で接続され、「パソコン15」が、「軸力値とトルク値」を「保存」し、「データの処理と表示を行なう」ことから、マイクロプロセッサ、電源回路ユニット、信号伝送ユニット、記憶ユニットを有していることは明らかである。
よって、前記(1)イの検討も踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記信号処理装置は、マイクロプロセッサ、電源回路ユニット、信号伝送ユニット、記憶ユニットを有し」ている点において共通する。
(4) 引用発明において、「掴み具10」は「保護ケース9の側面にねじ止め」され、「電線3a、3b、3c、3d」は、4個のひずみゲージと、センサインタフェース6及びパソコン15を電気的に接続するものである。
よって、前記(1)ウの検討も踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記接続線アセンブリは、前記ブッシュに配設され、前記センサ素子及び前記信号処理装置と電気的に接続される」点において一致する。
2 一致点及び相違点
前記1の対比分析の検討結果を総合すると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。
(1) 一致点
感知座金、信号処理装置及び接続線アセンブリを備えた、ボルト締付力感知座金であって、
前記感知座金は、本体、センサ素子及びブッシュを有し、前記本体は、ボルトのねじ部の外径を組み合わせる同軸の軸孔を有し、前記本体の外周には、内側に凹んだ環状溝が形成され、前記センサ素子が前記環状溝内に貼り合わされ、前記本体が軸方向で受ける力により発生する変形検出値を測定し、前記ブッシュは、前記本体及び前記センサ素子を覆い、
前記信号処理装置は、マイクロプロセッサ、電源回路ユニット、信号伝送ユニット、記憶ユニットを有し、
前記接続線アセンブリは、前記ブッシュに配設され、前記センサ素子及び前記信号処理装置と電気的に接続される、
ボルト締付力感知座金、である点。
(2) 相違点
ア 相違点1
本願発明においては、「感知座金」の「本体」は、「金属材料からなるとともに」、「前記軸孔に対して垂直な前記本体の両端面には、緩み防止構造がそれぞれ設けられ」、「前記本体及び前記緩み防止構造は、一体であ[る]」のに対して、
引用発明においては、センターホール型荷重計3の芯体部7が金属材料であるか不明であり、上部端面71及び下部端面72に、緩み防止構造が設けられていない点。
イ 相違点2
本願発明においては、「感知座金」の「ブッシュ」は、「プラスチック絶縁材料の鋳込み成形型である」のに対して、
引用発明においては、保護ケース9が、プラスチック絶縁材料の鋳込み成形型であるのか不明な点。
ウ 相違点3
本願発明においては、「信号処理装置」が、「信号増幅器」及び「警告ユニット」を有しているのに対して、
引用発明においては、センサインタフェース6及びパソコン15が、信号増幅器及び警告ユニットを有しているのか不明な点。
第6 判断
1 相違点1について
前記相違点1について、検討する。
(1) 「本体」が「金属材料からなる」ことについて
引用発明において、締付け軸力を弾性域とするトルク法が締付け方式として選定される場合には、締付け軸力がボルトの弾性域を経て降伏点を超えるまで締付けが連続的に行なわれることを考慮すると、センターホール型荷重計3の芯体部7は、そのような締付けに耐え得るものでなければならないことは明らかであるから、芯体部7の材料として、強度の高い金属材料とすることは、当業者にとって自明な設計事項にすぎず、格別困難性があるものではない。
(2) 「緩み防止構造」について
ア 引用文献2には、「一側において歯11の形態の係合手段と、他側においてカム12の形態の係合手段と、を備えている、組で使用されるロックワッシャ8A,8Bであって、歯11は、ネジヘッドと、取り付けられるワークピース16と係合し、ロックは、カム12の楔形状によって達成され、カム12は、互いの急勾配面に対してロックする能力を有し、それぞれのロックワッシャ8A,8Bは、互いに締結されるときに、それらのそれぞれのカム12が互いに対して位置決めされ、カム12は、ロックワッシャ8A,8Bが、ネジの締結解除方向に動かされることを防止する、組で使用されるロックワッシャ8A,8B」について記載されている。(前記第4の2(2)の引用文献2技術事項を参照。)
イ 引用発明のボルト軸力測定機1の測定対象であるボルト2においても、ボルト2の締結解除を防止することは、当然有する課題であるといえるから、当該課題を解決するために、引用文献2技術事項に係るネジの締結解除防止手段を採用する契機はあるというべきである。
ウ ここで、引用文献2技術事項の「ロックワッシャ8A、8B」は、「組で使用される」態様であれば、その間に部材が介在していても、当該介在する部材の上部及び下部の表面においてロックワッシャ8A、8Bのカム12の楔形状とそれぞれ噛み合うような軽微な設計変更を行うことにより、ネジの締結解除防止機能を維持することが可能である。
エ そうすると、引用発明において、ボルト頭部21と被締結体A,Bの間にある芯体部7の上部端面71及び下部端面72に、引用文献2技術事項に係る「組で使用されるロックワッシャ8A、8B」をそれぞれ設け、ロックワッシャ8A、8Bのカム12の楔形状とそれぞれ噛み合うようにすることにより、前記相違点1に係る「前記軸孔に対して垂直な前記本体の両端面」に「それぞれ設けられ」る「緩み防止構造」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(3) 本体及び緩み防止構造の「一体」性について
前記(2)ウの軽微な設計変更を加えると、引用発明の芯体部7の上部端面71及び下部端面72は、ロックワッシャ8A、8Bのカム12の楔形状とそれぞれ噛み合うことになるのであるから、芯体部7の上部端面71及び下部端面72は、本願発明の「緩み防止構造」の一部に相当するといえるところ、もとより芯体部7と、芯体部7の上部端面71及び下部端面72は一体であるから、前記相違点1に係る「前記本体及び前記緩み防止構造」が「一体」であることは、自然に導かれることになる。
(4) 前記(1)~(3)の検討結果を踏まえると、引用発明において、前記相違点1に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 相違点2について
前記相違点2について、検討する。
(1) 本願発明の「プラスチック絶縁材料の鋳込み成形型である」について、「鋳込み成形型」という語句の「型」は、鋳込み成形するための型という意味、すなわち、鋳込み成形するための型取り元となる鋳型を意味するのか、あるいは、成形の形式(タイプ)が鋳込み成形であることを意味するのか、日本語として不明確であるところ、本願の明細書の記載や、令和5年6月27日に提出された上申書における請求人の主張(3-4)に鑑み、少なくとも前者の意味ではないと判断し、請求人の主張に沿って「プラスチック絶縁材料により鋳込み成形される」と解釈する。
(2) 引用発明の保護ケース9は、4個のひずみゲージ81、82、83、84を収納するものであり、短絡等の電気的障害を防止する必要があることに鑑みると、絶縁材料により成形されたものであると考えるのが自然である。
(3) また、一般にプラスチックが絶縁材料であることや、このような絶縁材料を鋳込み成形で作成することは、例を示すまでもなく周知であるから、引用発明の保護ケース9を、プラスチック絶縁材料により鋳込み成形することは、当業者が容易に想到し得たことである。
(4) よって、引用発明において、前記相違点2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
3 相違点3について
前記相違点3について、検討する。
(1) 引用発明は、「センサインタフェース6」を有しているところ、「ひずみゲージ」に「発生」した「微小変化」を表す「電気信号」は微弱な信号であると考えられるから、引用発明の「センサインタフェース6」において、かかる微弱な「電気信号」を増幅する信号増幅器を設けることは、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。
(2) また、引用発明においては、締付け軸力を弾性域とするトルク法が締付け方式として選定される場合、ボルト2の締め付けは、締付け軸力がボルトの弾性域を経て降伏点を超えるまで連続的に行なって、締付け軸力と締付けトルクの測定値をグラフ化するものであるところ、降伏点を超えた場合、これ以上締め付けを行う必要がないことは明らかであるから、締め付けを止めるように、ブザーなどの警告ユニットを設けて作業者に知らせるようにすることに、格別の困難性があるものでない。
(3) よって、引用発明において、前記相違点3に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
4 総合検討
前記1~3において検討したとおり、引用発明において前記相違点1~3に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明の奏する作用効果としては、引用発明及び引用文献2技術事項から予測されるものを超え、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 請求人の主張について
(1) 請求人の主張
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ア 審判請求の理由における主張
請求人は、審判請求の理由において、概略次の主張をしている。
(ア) 「プラスチック絶縁材料の鋳込み成形型」の「ブッシュ」について
本願発明のブッシュは、プラスチック絶縁材料の鋳込み成形型であり、鋳型内でセンサ素子及び感知座金本体の環状溝上を流れ、センサ素子を覆うため、ブッシュが固定化され、センサ素子を感知座金本体に強固に固定することができる。
それに対して、引用文献1に記載の発明では、内部空間91は、保護ケース9(ブッシュ)と芯体部7(本体)との間に形成され、ひずみゲージ81~84(センサ素子)は、内部空間91内に配置されているため、内部空間91は、ひずみゲージ81~84を芯体部7に強固に固定することはできない。
(イ) ひずみゲージ81~84の配線について
引用文献1に記載の発明では、ひずみゲージ81~84の配線は、ニップル11(ブッシュ)を通過して掴み具10の接続端子31に設置され、掴み具10とニップル11とは、保護ケース9上に配置されるため、例えば、引用文献1に記載の保護ケース9を、本願発明のように改良した場合、ひずみゲージ81~84の配線は、ニップル11を通過することができないから、掴み具10の接続端子31に配線を設置できない。
(ウ) 摩擦の影響について
引用文献1には、「締付けトルクの約90%は、ボルトのねじ部の摩擦と、ナットおよびボルトの座面と被締結体の表面との摩擦に消費されると考えられ、締付け管理を一層不正確にする要因となっている」ことが記載されており(引用文献1の段落[0005]参照)、ボルトのねじ部の摩擦と、ナットおよびボルトの座面と被締結体の表面との摩擦が増加すると、締付け力測定の精度が低減するから、例えば、引用文献1に記載の芯体部7と、引用文献2に記載の緩み防止構造とを一体とした場合、上記摩擦が増加し、締付け力測定の精度が低減すると考えられる。
したがって、ボルトの軸力を正確に測定することを目的とした引用文献1に記載の発明と、引用文献2に記載の発明と、に基づいて、請求項1に係る発明を当業者が容易に発明をすることができたとの論理付けは困難である。
イ 上申書における主張
請求人は、上申書において、概略次の主張をしている。
(ア) 摩擦の問題について
a 阻害要因
引用文献1に記載のように、従来のトルク法におけるトルクの約90%は、摩擦に消費されると考えられており、「摩擦」という問題は、締付け管理を一層不正確にする要因となっていたため、引用文献1に記載のボルト軸力測定機は、当該要因により生じる影響を解決することを目的としている。
したがって、「摩擦」という問題は、確かに引用文献1の出願思想であり、引用文献1は、「摩擦」という問題を解決するためにボルト軸力測定機を出願しているから、「摩擦」という問題は、引用文献1のボルト軸力測定機と関連しているはずである。
すなわち、「摩擦」という問題は引用文献1と関連しているので、引用文献1の教示に基づき、当業者が引用文献2のゆるみ防止構造と引用文献1とを組み合わせると、引用文献1の「摩擦」という問題を増加させてしまうことになる。
よって、「摩擦」という問題は、引用文献1と引用文献2とを組み合わせる理由の阻害要因になりうる。
b 動機付け
(a) 「摩擦」という問題を解決するために、引用文献1のボルト軸力測定機の両端面は、いずれも熱処理工程により硬化した後に研磨処理をした滑性表面であるから、例えば、引用文献1のボルト軸力測定機を引用文献2のロックワッシャに組み合わせてロックを行う場合、ロックワッシャの硬度とボルト軸力測定機の両端面の硬度が相当するので、ボルトがロックされる際、ロックワッシャはボルト軸力測定機の端面に嵌め込むことができない。また、振動が発生した際、ボルト軸力測定機とロックワッシャとの間に相対的な滑動が生じることによりボルトが緩くなる。さらに、引用文献1のボルト軸力測定機は、主にボルトのロック時の軸力を測定するために用いられるものであり、工学構造の組み合せにおいて長期間に渡って軸力を監視するために用いられない。これらの主な原因は、引用文献1のボルト軸力測定機が引用文献2のロックワッシャと組み合わせて使用することができないためである。
引用文献1のボルト軸力測定機を引用文献2のロックワッシャと組み合わせる場合、振動時にボルトが緩んでしまい、軸力を精密に制御する目的を失うだけでなく、引用文献1のボルト軸力測定機を使用する目的も失うから、当業者は、引用文献1と引用文献2との組み合わせを想到する動機付けを有しない。
(b) 引用文献2において、ボルトがロックされる時、ロックワッシャの下面におけるギザギザ状の構造は、下面の接合面に嵌め込まれる必要がある。また、ロックワッシャの上面はカム面であり、螺旋角より大きい斜面角度でもう一つのロックワッシャに組み合わされる。そして、上面のロックワッシャは、ギザギザ状の構造でボルトの頭部の結合面に嵌め込まれる。そのため、例えば、ボルトがロックされた後に振動した場合、2つのカム面は、カムの斜面角度がボルトの螺旋角より大きいためボルトが緩むことができない。
また、引用文献2は、2つのロックワッシャによりカム面を接合させる。そして、2つのロックワッシャの上下両面は、それぞれギザギザ状の構造で上下両面の結合面に嵌め込まれる。例えば、引用文献2のロックワッシャが引用文献1のボルト軸力測定機に組み合わされると、軸方向の締付力は測定できる。しかし、ボルト軸力測定機の両端面はいずれも熱処理工程により硬化した後に研磨処理をした滑性表面であるため、引用文献2のロックワッシャのギザギザ状の構造は、ボルト軸力測定機の両端面に嵌め込めない。すなわち、振動時におけるゆるみ防止効果を奏することができない。
よって、当業者は、引用文献1と引用文献2との組み合わせを想到する動機付けを有しない。
(イ) 本願発明の効果について
本願発明のボルト締付力感知座金は、簡易化した構造によってボトルの軸力を測定し、ブレ及び緩み防止の効果を奏することができるものであり、ポイントは、緩み防止の構造がボルト締付力感知座金の本体の両端面に直接に一体成形されていることである。
明細書中の図4に示すように、ボルト締付力感知座金の両端面における一体形成の緩み防止の構造によりボルトがロックされるとき、緩み防止の構造は、ボルトの頭部の接合面及びロック対象物の表面に直接に嵌め込むことができるため、ロック時に軸力を測定し、ロック後にブレ及び緩み防止の効果を奏することができる。
また、明細書中の図7に示すように、本願の請求項1のボルト締付力感知座金は、使用時において、上下に各1個のロックワッシャを組み合わせることができるため、ロックワッシャのカム面は、本願の請求項1の緩み防止の構造と相互に噛み合うことができ、これにより、ロックワッシャのギザギザ状の構造は、それぞれボルトの頭部の接合面及びロック対象物の表面に直接に嵌め込むことができる。したがって、軸力の測定だけではなく、ロック後にブレ及び緩み防止の効果も奏することができる。
(2) 請求人の主張に対する当審の判断
折りたたみ中(クリックで表示)
ア 審判請求の理由における主張に対する当審の判断
(ア) 「プラスチック絶縁材料の鋳込み成形型」の「ブッシュ」について
請求人は、ブッシュは、鋳型内でセンサ素子及び感知座金本体の環状溝上を流れ、センサ素子を覆うことにより、ブッシュが固定化され、センサ素子を感知座金本体に強固に固定することができると主張しているが、請求項1には、「前記ブッシュは、プラスチック絶縁材料の鋳込み成形型であるとともに、前記本体及び前記センサ素子を覆い」と記載されているのみであって、本体及びセンサ素子がプラスチック絶縁材料に覆われる具体的態様がどのようなものであるかについて特段規定していないから、当該主張は請求項の記載に基づくものではない。
仮に請求項1の「プラスチック絶縁材料の鋳込み成形型」という文言が請求人の主張の根拠であるとして検討しても、前記2(3)において説示したとおり、一般にプラスチックが絶縁材料であることや、このような絶縁材料を鋳込み成形で作成すること(鋳型に絶縁材料を流し込んで成形すること)は、周知であるから、請求人の主張は、格別のものであるとは認められない。
(イ) ひずみゲージ81~84の配線について
請求人は、引用文献1では、掴み具10とニップル11が保護ケース9上に配置されるため、保護ケース9を本願発明のように改良した場合、ひずみゲージ81~84の配線は、ニップル11を通過することができないから、掴み具10の接続端子31に配線を設置できない旨主張している。
しかしながら、引用文献1の段落【0021】には、「11は掴み具10を保護ケース9の側面にねじ止めするための異径ニップル」との記載があることを踏まえると、異径ニップル11は、掴み具10を保護ケース9の側面にねじ止めするための手段にすぎず、ひずみゲージ81~84の配線(ゲージリード線8a~8d)を通過させるために設けられたものではないから、ゲージリード線8a~8dが異径ニップル11を通過することは、必須の事項であるとはいえない。
引用発明において、「保護ケース9」を鋳型にプラスチック絶縁材料を流し込むことにより成形しても、「ゲージリード線8a~8d」を「保護ケース9」から取り出せるように配慮することは、当業者ならば格別の困難性はないというべきであって、請求人の主張は採用されない。
(ウ) 摩擦の影響について
請求人の主張は、要するに、引用発明の芯体部7と引用文献2技術事項に係る緩み防止構造を一体とした場合、摩擦が増加し、締付け力測定の精度が低減する不都合が生じるというものである。
しかしながら、締付け力の測定においてどの程度の測定精度が要求されるのかについては、ボルトの性能、被締結体の属性、作業負担等を含む締付け施工に係る諸条件を勘案し、発注者側の要望や作業者側の制約を総合的に踏まえて決定されるべきものであり、引用発明において、芯体部7と引用文献2技術事項に係る緩み防止構造を一体とすることにより摩擦が増加したとしても、そのことがすべからく締付け力の測定を無意味なものにするとはいえず、摩擦の増加を許容した上でなお測定を有効なものとすることも可能であるというべきである。
そうすると、請求人の主張を踏まえても、前記1において説示した、引用発明において引用文献2技術事項を適用することは当業者が容易に想到し得たことであるとの判断に変わりはなく、請求人の主張は採用されない。
イ 上申書における主張に対する当審の判断
(ア) 摩擦の問題について
前記ア(ウ)において説示した内容が、同様に当てはまる。
なお、請求人は、引用文献1のボルト軸力測定機の両端面は、いずれも熱処理工程により硬化した後に研磨処理をした滑性表面である旨主張しているが、引用文献1にはその根拠となる記載は見当たらないため、かかる主張を前提とした請求人の主張は、根拠のないものであるから採用されない。
引用発明の「芯体部7」の「上部端面71」及び「下部端面72」の表面性状については、特段限定されていないのであるから、「上部端面71」及び「下部端面72」において、引用文献2技術事項に係る「組で使用されるロックワッシャ8A、8B」の「カム12の楔形状」とそれぞれ噛み合うようにすることは、軽微な設計変更にすぎず、それにより摩擦が増加したとしても、摩擦の増加を許容した上でなお測定を有効なものとすることは可能である。
(イ) 本願発明の効果について
請求人は、要するに、本願発明のポイントは、緩み防止の構造がボルト締付力感知座金の本体の両端面に直接に一体成形されていることであり、それにより、簡易化した構造によってボトルの軸力を測定し、ブレ及び緩み防止の効果を奏することができると主張している。
しかしながら、前記1(2)及び(3)において説示したとおり、引用発明において、ボルト頭部21と被締結体A,Bの間にある芯体部7の上部端面71及び下部端面72に、引用文献2技術事項に係る「組で使用されるロックワッシャ8A、8B」をそれぞれ設け、ロックワッシャ8A、8Bのカム12の楔形状とそれぞれ噛み合うようにすることにより、「前記本体及び前記緩み防止構造」が「一体」であることが導かれることになり、それによる効果も当業者ならば容易に予測し得るものにすぎない。
よって、請求人の主張は、採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-018050