2022-017747
過度の眠気を処置するための方法および組成物
- 審判番号
- 2022-017747
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-516785外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年11月07日
- 審決日
- 2025年04月23日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ジャズ ファーマシューティカルズ アイルランド リミテッド
- 【請求人代理人】高岡 亮一
- 【請求人代理人】小田 直
- 【請求人代理人】岩堀 明代
- 【請求人代理人】高橋 香元
- 分類
- P18 .537-WZ (A61K) / P18 .55 -WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 6項目
第1 手続の経緯
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この出願(以下「本願」という。)は、2018年(平成30年)6月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年6月2日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和3年 5月26日 手続補正書の提出
令和4年 2月14日付け 拒絶理由通知書
同年 5月23日 意見書、手続補正書及び手続補足書
の提出
同年 7月 4日付け 拒絶査定
同年11月 7日 手続補正書及び審判請求書の提出
令和6年 5月 8日付け 拒絶理由通知書
同年10月10日 意見書及び手続補正書の提出
同年11月27日付け 審尋の通知
令和7年 3月 3日 回答書の提出
第2 拒絶の理由の概要
令和6年5月8日付け拒絶理由通知書により当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、以下のとおりのものである。
理由1
(新規事項)令和4年11月7日付け手続補正書による補正後の特許請求の範囲に記載された下記ア~コの事項は、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文等又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内において記載されておらず、かつ、同翻訳文等から自明な事項であるとも認められないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。
ア 請求項1~19、32~40における「(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカルバメート(APC)またはその薬学的に許容される塩(以下「APC」という。)の1日1回75mgの用量を3日間、次いで1日1回150mgの用量を含」み、「前記1日1回150mgの用量は、前記投与レジメンにおける最大用量であ」るという投与レジメン。
イ 請求項1~7、9~12における、APCによってもたらされるEpworth Sleepiness Scale(ESS)スコアの変化によって測定される、ヒト患者の過度の眠気の改善が、「投与レジメンの12週目においてベースラインから少なくとも25%」であるという事項。
ウ 請求項13~19における、APCによってもたらされる覚醒維持検査(MWT)スコアの変化によって測定される、ヒト患者の過度の眠気の改善が、「投与レジメンの12週目においてベースラインから少なくとも25%」であるという事項。
エ 請求項20~31における「対象にAPC75mgの1日用量を3日間投与すること、および前記対象において最大耐量が達成されるまで、3日ごとに1回を超えない1日用量を増加させることを含み、1日1回150mgの用量が前記投与レジメンにおける最大用量である」という事項。
オ 請求項21~31における「前記1日用量は、4日ごと、5日ごと、6日ごと、または7日ごとに1回を超えずに増加される」という事項。
カ 請求項22~31における「前記1日用量における最初の増加は、1日用量APC150mgへの増加である」という事項。
キ 請求項23~31における「前記対象が以前に提供された1日用量が最大耐量を超える兆候を示した場合、3日ごとに1回を超えない1日用量を減少させる」という事項。
ク 請求項24~31における「前記1日用量は、4日ごと、5日ごと、6日ごと、または7日ごとに1回以下に減少される」という事項。
ケ 請求項25~31における「前記1日用量の減少は、APC1日用量75mgへの減少である」という事項。
コ 請求項26~31における「前記1日用量の減少は、APC1日用量37.5mgへの減少である」という事項。
理由2
(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明1において特定する投与レジメン自体が記載されておらず、また、本願発明1の投与レジメンでAPCを投与した実施例もなく、ESSスコアの変化によって測定される、ヒト患者の過度の眠気の改善が、当該投与レジメンの12週目においてベースラインから少なくとも25%をもたらすことも裏付けられていない。
本願発明2~40についても同様に、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明2~40において特定する投与レジメン自体が記載されておらず、当該投与レジメンによってヒト患者の過度の眠気の改善がもたらされることを裏付ける実施例の記載もない。
第3 当審の判断
1 理由1(新規事項)について
(1)令和6年10月10日提出の手続補正書による補正後の特許請求の範囲の記載
当審拒絶理由の通知に対し、審判請求人は令和6年10月10日に手続補正書を提出し、補正前の請求項21及び24を削除する補正(以下「本件補正」という。)を行った。本件補正後の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。また、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~38に係る発明を、請求項の番号に従い、「本願発明1」等といい、まとめて「本願発明」ということがある。
「【請求項1】その必要があるヒト患者の過度の眠気を改善するための方法に使用するための組成物であって、前記組成物は、(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカルバメート(APC)またはその薬学的に許容される塩を含み、前記方法は、前記組成物を投与レジメンに 従って前記ヒト患者に投与するステップを含み、前記投与レジメンは、(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカルバメート(APC)またはその薬学的に許容される塩の1日1回75mgの用量を3日間、次いで1日1回150mgの用量を含み、前記1日1回150mgの用量は、前記投与レジメンにおける最大用量であり、前記APCまたはその 薬学的に許容される塩は、Epworth Sleepiness Scale(ESS)スコアの変化によって測定される、ヒト患者の過度の眠気の改善を、投与レジメンの12週目においてベースラインから少なくとも25%もたらす、組成物。【請求項2】前記患者は、10超のベースラインESSスコアを有する、請求項1に記載の組成物。続きを表示(全78行)【請求項3】前記過度の眠気は、日中の過度の眠気である、請求項1または2のいずれか1項に記載の組成物。【請求項4】前記APCは、APCの薬学的に許容される塩として提供される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。【請求項5】前記APCは、塩酸塩の形態である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。【請求項6】前記患者は、ナルコレプシーを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。【請求項7】前記患者は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。【請求項8】その必要があるナルコレプシーを有するヒト患者の過度の眠気を処置するための方法に使用するための組成物であって、前記組成物は、(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカルバメート(APC)またはその薬学的に許容される塩を含み、前記方法は、前記組成物を投与レジメンに従って前記ヒト患者に経口投与するステップを含み、前記投与レジメンは、(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカルバメート(APC)またはその薬学的に許容される塩の1日1回75mgの開始用量を3日間、次いで1日1回150mgの用量を含み、前記1日1回150mgの用量は、前記投与レジメンにおける最大用量である、組成物。【請求項9】前記APCまたはその薬学的に許容される塩は、Epworth Sleepiness Scale(ESS)スコアの変化によって測定される、ヒト患者の過度の眠気の改善を、投与レジメンの12週目においてベースラインから少なくとも25%もたらす、請求項8に記載の組成物。【請求項10】前記過度の眠気は、日中の過度の眠気である、請求項8または9に記載の組成物。【請求項11】前記APCは、APCの薬学的に許容される塩として提供される、請求項8~10のいずれか1項に記載の組成物。【請求項12】前記APCは、塩酸塩の形態である、請求項8~11のいずれか1項に記載の組成物。【請求項13】その必要があるヒト患者の過度の眠気を改善するための方法に使用するための組成物であって、前記組成物は、(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカルバメート(APC)またはその薬学的に許容される塩を含み、前記方法は、前記組成物を投与レジメンに従って前記ヒト患者に投与するステップを含み、前記投与レジメンは、(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカルバメート(APC)またはその薬学的に許容される塩の1日1回75mgの用量を3日間、次いで1日1回150mgの用量を含み、前記1日1回150mgの用量は、前記投与レジメンにおける最大用量であり、前記APCまたはその薬学的に許容される塩は、覚醒維持検査(MWT)スコアの変化によって測定される、ヒト患者の過度の眠気の改善を、投与レジメンの12週目においてベースラインから少なくとも25%もたらす、組成物。【請求項14】前記患者は、10超のベースラインESSスコアを有する、請求項13に記載の組成物。【請求項15】前記過度の眠気は、日中の過度の眠気である、請求項13または14に記載の組成物。【請求項16】前記APCは、APCの薬学的に許容される塩として提供される、請求項13~15のいずれか1項に記載の組成物。【請求項17】前記APCは、塩酸塩の形態である、請求項13~16のいずれか1項に記載の組成物。【請求項18】前記患者は、ナルコレプシーを有する、請求項13~17のいずれか1項に記載の組成物。【請求項19】前記患者は、OSAを有する、請求項13~17のいずれか1項に記載の組成物。【請求項20】その必要があるヒト患者の過度の眠気を改善するための方法に使用するための組成物であって、前記組成物は、(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカルバメート(APC)またはその薬学的に許容される塩を含み、前記方法は、前記組成物を投与レジメンに従って、それを必要とする前記ヒト患者に提供することを含み、前記方法は、前記対象にAPC75mgの1日用量を3日間投与すること、および前記対象において最大耐量が達成されるまで、3日ごとに1回を超えない1日用量を増加させることを含み、1日1回150mgの用量が前記投与レジメンにおける最大用量である、組成物。【請求項21】前記1日用量における最初の増加は、1日用量APC150mgへの増加である、請求項20に記載の組成物。【請求項22】前記方法において、前記対象が以前に提供された1日用量が最大耐量を超える兆候を示した場合、3日ごとに1回を超えない1日用量を減少させることをさらに含む、請求項20または21に記載の組成物。【請求項23】前記1日用量の減少は、APC1日用量75mgへの減少である、請求項20~22のいずれか1項に記載の組成物。【請求項24】前記1日用量の減少は、APC1日用量37.5mgへの減少である、請求項20~22のいずれか1項に記載の組成物。【請求項25】前記APCは、APCの薬学的に許容される塩として提供される、請求項20~24のいずれか1項に記載の組成物。【請求項26】前記APCは、塩酸塩の形態である、請求項20~25のいずれか1項に記載の組成物。【請求項27】前記対象は、日中の過度の眠気の治療のために、APCまたはその薬学的に許容される塩を提供される、請求項20~26のいずれか1項に記載の組成物。【請求項28】前記日中の過度の眠気は、ナルコレプシーに関連する、請求項27に記載の組成物。【請求項29】前記日中の過度の眠気は、閉塞性睡眠時無呼吸に関連する、請求項27に記載の組成物。【請求項30】その必要がある閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を有するヒト患者の過度の眠気を治療するための方法に使用するための組成物であって、前記組成物は、(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカルバメート(APC)またはその薬学的に許容される塩を含み、前記方法は、前記組成物を、(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカルバメート(APC)またはその薬学的に許容される塩の1日1回75mgの用量を3日間、次いで1日1回150mgの用量を含む投与レジメンに従って、前記ヒト患者に経口投与するステップを含み、前記1日1回150mgの用量は、前記投与レジメンにおける最大用量であり、前記APCまたはその薬学的に許容される塩は、Epworth Sleepiness Scale(ESS)スコアによって測定される、過度の眠気を、投与レジメンの12週目において10ポイント未満に減少させる、組成物。【請求項31】前記OSAを有する患者は、10超のベースラインESSスコアを有する、請求項30に記載の組成物。【請求項32】前記APCまたはその薬学的に許容される塩は、ESSスコアによって測定される過度の眠気を、投与レジメンの12週目において少なくとも5ポイント減少させる、請求項30または31に記載の組成物。【請求項33】前記過度の眠気は、日中の過度の眠気である、請求項30~32のいずれか1項に記載の組成物。【請求項34】前記APCは、APCの薬学的に許容される塩として提供される、請求項30~33のいずれか1項に記載の組成物。【請求項35】前記APCは、APCの塩酸塩の形態である、請求項30~34のいずれか1項に記載の組成物。【請求項36】前記1日用量は、前記患者の就寝よりも少なくとも10時間前までに投与される、請求項30~35のいずれか1項に記載の組成物。【請求項37】前記1日用量は、前記患者の起床から1時間以内に投与される、請求項30~36のいずれか1項に記載の組成物。【請求項38】前記患者は、成人である、請求項30~37のいずれか1項に記載の組成物。」
(2)判断
ア 本件補正後の特許請求の範囲に記載された事項
当審拒絶理由で指摘した、前記第2の理由1 ア~コの事項(以下それぞれ「補正事項ア」等という。)のうち、補正事項オ及びクについては、本件補正前の請求項21及び24に記載される事項であり、本件補正によって当該請求項が削除されることにより、当該事項についても削除された。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲に依然として記載される、補正事項ア~エ、カ、キ、ケ及びコ(ただし、当審拒絶理由において補正前の特許請求の範囲について指摘した補正事項ア~コにおける「請求項22、23、25~40」については、それぞれ、本件補正後の特許請求の範囲における「請求項21~38」に読み替えるものとする。)について、以下に検討する。
イ 翻訳文等における「投与レジメン」及び「ヒト患者の過度の眠気の改善」に関する記載
翻訳文等には、以下の事項が記載されている。なお、下線は合議体が付したものであり、「・・・」は記載の省略を示す。
「【0002】発明の分野本発明は、カルバモイルフェニルアラニノール化合物、および同物質を使用して障害を処置する方法に関する。【背景技術】続きを表示(全13行)【0003】(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカルバメート(APC)は、日中の過度の眠気、カタプレキシー、ナルコレプシー、疲労、うつ状態、双極性障害、線維筋痛症、およびその他を含む様々な障害の処置に有用であることが証明されているフェニルアラニン類縁体である。・・・【0004】過度の眠気の処置に関して、他の化合物が承認されてはいるが、ほとんどの化合物が、眠気の検査で「正常」とみなされるレベルまで対象の眠気のレベルを改善させる特性を示してはいない。【0005】本発明は、覚醒の「正常な」レベルが達成されるように過度の眠気を処置するための方法および組成物を提供することにより、当該分野における欠点を克服する。【発明の概要】【0006】本発明は、「正常な」レベルの覚醒が、標準的な、客観的および主観的な眠気の検査に基づき達成された驚くべきアウトカムを伴う、たとえばナルコレプシーまたは閉塞性睡眠時無呼吸による、対象の過度の眠気を処置するための方法の開発に関する。」
「【0028】本発明は、その必要がある対象の日中の過度の眠気を処置するための方法であって、(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカルバメート(APC)またはその薬学的に許容される塩を、前記対象のESS(Epworth Sleepiness Scale)に関するスコアを、5ポイント以上、たとえば10ポイント以上、たとえば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20、またはそれ以上のポイント、またはその中のいずれかの範囲だけ下げるために十分な量で前記対象に投与するステップを含む、方法に関する。一部の実施形態では、投与されるPACの量は、正常、たとえば10以下とみなされるレベルまで、前記対象のESSに関するスコアを下げるために十分である。特定の実施形態では、処置した対象の少なくとも約5%、たとえば少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上が、特定のスコアを達成する。・・・【0031】本発明の別の態様は、その必要がある対象の日中の過度の眠気を処置するための方法であって、(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカルバメートまたはその薬学的に許容される塩を、前記対象の覚醒維持検査(MWT)に関するスコアを、少なくとも5分間、たとえば少なくとも10分間または15分間、たとえば少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30分、またはそれ以上、またはその中のいずれかの範囲だけ、増加させるために十分な量で、前記対象に投与するステップを含む、方法に関する。特定の実施形態では、処置した対象の少なくとも約5%、たとえば少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%,またはそれ以上が、特定のスコアを達成する。」
「【0081】本発明の一実施形態では、APCは、障害を処置するために必要に応じて対象に投与される。本化合物は、連続的または断続的に投与され得る。一実施形態では、本化合物は、たとえば1日に2、3、もしくは4回といった1日に1回超、または1、2、3、4、5、6、もしくは7日ごとに1回、対象に投与される。別の実施形態では、本化合物は、1週間に1回以下、たとえば2週間ごとに1回以下、1ケ月に1回以下、2ケ月ごとに1回以下、3ケ月ごとに1回以下、4ケ月ごとに1回以下、5カ月ごとに1回以下、6ケ月ごとに1回以下、またはそれより長い間隔で、対象に投与される。さらなる実施形態では、本化合物は、2つ以上の異なるスケジュールを使用して、たとえば、最初は高頻度に(たとえば特定のレベルまで高めるために、たとえば1日に1回以上)投与され、その後頻度を少なくして(たとえば1週間に1回以下)投与される。他の実施形態では、本化合物は、任意の非連続的な投与レジメンにより投与され得る。一例では、本化合物は、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、7日ごと、8日ごと、9日ごと、または10日ごと、またはそれ以上の期間ごとに1回以下で、投与され得る。投与は、1週間、2週間、3週間、もしくは4週間、または1ケ月、2ケ月、3ケ月、もしくはそれ以上長い期間の間、続行され得る。任意選択で、休薬期間の後に、本化合物を、同じまたは異なるスケジュール下で投与することができる。休薬期間は、対象に及ぼす本化合物の薬力学的作用によって、1週間、2週間、3週間、または4週間、またはそれ以上長い期間であり得る。別の実施形態では、本化合物は、特定のレベルに達し、その後一定したレベルを維持し、tailing dosageとなるように、投与され得る。」
「【0087】実施例1閉塞性睡眠時無呼吸を有する対象における過度の眠気の処置に関するAPCの安全性および有効性のフェーズ3の試験過度の眠気(ES)は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)で提示される主訴のうちの1つであり、CPAP(持続陽圧呼吸:・・・)療法を順守している場合であっても、患者の62.5%で持続すると推定されている(Weaver et al.,・・・)。OSAにおけるESは、機能および労働生産性の低下の原因であり(Nena et al.,・・・)、自動車事故および職業上の事故のリスクの上昇に関連している(Garbarino et al.,・・・)。APCは、非臨床モデルおよびナルコレプシー患者でのフェーズ2の臨床試験において、強力な覚醒促進作用を有する、選択的なドーパミンおよびノルエピネフリンの再取り込み阻害剤である(Bogan et al.,・・・)。この試験は、OSAを有する成年におけるESの処置に関して、プラセボと比較して、1日1回投与したAPC塩酸塩(JZP-110)の安全性および有効性の維持を評価した。【0088】この試験は、プラセボ対照二重盲検の、強化された(enrichde)ランダム化脱落設計であった(図1)。用量設定段階(Titration Phase)(1~2週目)では、患者は、1日1回の投与をAPC75mlで開始し、3日ごとに用量を増減させ、APC 75mg、150mg、または300mgの最大耐量に達することができた。安定用量段階(3~4週目)では、患者に、用量設定段階で用量設定された用量を、2週間投与し続けた。二重盲検脱落段階(5~6週目)では、4週目に、PGI-C(・・・)の尺度(・・・)で「much」または「very much」の改善を報告した患者、ならびに覚醒維持検査(MWT)およびESS(・・・)で改善を有した患者を、1:1に無作為化して、JZP-100またはプラセボを現段階と同じ用量で2週間投与した。」
「【0101】実施例2閉塞性睡眠時無呼吸を有する対象における過度の眠気の処置に関するAPCの安全性および有効性のフェーズ3の試験における機能および労働生産性の測定過度の眠気(ES)は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を有する患者の主訴のうちの1つであり、労働不能および生産性の低下に関連している(Nena et al.,・・・)。APCは、OSA、ナルコレプシー、およびパーキンソン病を有する患者におけるESの処置で評価されている覚醒促進作用を伴う、選択的なドーパミンおよびノルエピネフリンの再取り込み阻害剤である。続きを表示(全76行)【0102】この試験の目的は、成年のOSAおよびESを有する患者における、日中の機能、労働生産性、および活動の障害に及ぼすAPC塩酸塩の効果を評価することである。【0103】この試験は、実施例1により詳細に記載されるような、12週間の、プラセボ対照二重盲検の並列設計の試験であった(Schweitzer et al.,・・・)。患者は、12週間の間のAPC 37.5mg、75mg、150mg、300mg、またはプラセボに無作為化し(1:1:2:2:2)、OSAの一次療法へのアドヒアランスまたはノンアドヒアランスにより階層化した(アドヒアランスの定義は、夜間の70%以上での夜間あたり4時間以上の使用であった)。ベースライン、並びに1週目、4週目、8週目、および12週目での、機能の状態および労働生産性および活動の障害に及ぼすAPCの効果を評価するために、2名の患者により報告された測定を、二次的な有効性のアウトカムとして含めた。FOSQ-10(・・・)により、機能に及ぼすESの作用を評価した。WPAI:SHP(・・・)により、過去7日間における、雇用した患者における労働の生産性の障害、および全患者における労働を除く全般的な活動の障害を評価した。4つのアウトカムが、WPAI:SHPから利用可能である:アブセンティズム(健康により損なわれた労働時間のパーセント);プレゼンティズム(健康による労働の間の機能不全のパーセント);総労働損失(パーセント)(アブセンティズムおよびプレゼンティズムから計算);ならびに健康による活動の障害(パーセント)。FOSQ-10を、プラセボと比較した経時的な変化として評価し(最小二乗(LS)平均値);4つのWPAIのアウトカムを、12週目にプラセボと比較して評価した。有効性解析は、改変された治療企図集団(mITT)に基づくものであり、FOSQ-10またはWPAI:SHPに対して多重度の調節を行わなかった。安全性および忍容性は、安全性の解析対象での、治療下で発現した有害事象(TEAE)、バイタルサイン、心電図検査、身体試験、コロンビア自殺重症度評価尺度、および室内試験に基づき評価した。【0104】ベースラインの特徴は、治療グループを通して類似していた。安全性の解析対象(n=474)は、主に白人の男性であり、おおよそ50代半ばであった(表5)。患者は、ESSスコア(14.8~15.6の範囲)および短いMWT睡眠潜時(12.0~13.6分の範囲)により表される中程度のESを有していた。患者の大部分は、中程度の疾病または著しい疾病であると臨床医によって評価されていた。mITTの集団は、459名の患者からなり、このうちの404名(88.0%)がこの試験を完了した。有害事象は、脱落の主な理由であり、有効性の欠如によっては中断しなかった。MWTおよびESSのコプライマリーエンドポイントは、全ての用量で一致していた(表6)。PGI-C(・・・)に基づく鍵となるセカンダリーエンドポイントは、APC 37.5mgを除き全ての用量で一致した(表6)。【0105】APCは、プラセボと比較して、150mgおよび300mgの用量で統計的に有意な効果を伴い、12週目でFOSQ-10スコアを用量依存的に増加させた(図6)。改善は、150mgおよび300mgの用量で、早くも1週目に観察された。【0106】雇用された224名(48.8%)の患者では、OSAは、自己報告された労働および活動の障害に実質的な影響を有した(図7)。プレゼンティズム(労働時の間の生産性の損失)は、雇用された患者における総労働損失の主な要因であると思われた。アブセンティズムは相対的に少なく、ここでの患者は、ベースラインでは1週間あたり労働の0.5%~3.5%を行えていなかった、労働以外の活動の障害は、ベースラインで37.8%~44.3%の範囲にあった。12週目には、150mgおよび300mgの用量のAPCは、プラセボと比較して、プレゼンティズム、総労働損失、および活動の障害(労働以外)を有意に減少させた。【0107】最も一般的なTEAEは、頭痛、吐き気、食欲減少、不安、上咽頭炎、および不眠症であった(表7)。TEAEの発生頻度およびTEAEによる中断は、全般的に用量依存的であると思われた(表7)。7つの重篤なTEAEが、5名の患者で観察された:プラセボにおける甲状腺腫(n=1)および自動車事故からもたらされた背部痛/坐骨神経痛(n=1);JZP-110 37.5mgにおける胆管閉塞症(n=1)およびレンサ球菌性心内膜炎(n=1);ならびにJZP-110 150mgにおける高血糖(n=1)。患者にJZP-110 300mgを投与する前に始まった、中程度の重症度の冠動脈疾患である、1つの非治療下で発現した有害事象が存在した;冠動脈ステントを挿入し、この患者を回復させた。APCは、血圧および脈拍数に中程度の作用を有した。ベースラインからの増加の平均値は、収縮期血圧で1~4mmHgおよび拡張期血圧で1~3mmHgあり、ならびに脈拍数におけるベースラインからの増加の平均値は2~5拍動/分であった。【0108】結論として、APCは、全ての用量でのMWTおよびESSのコプライマリーエンドポイント、ならびに37.5mgを除く全ての用量での鍵となるPGI-Cのセカンダリーエンドポイントを満たした。APC 150mgおよび300mgは、FOSQ-10に関して、用量依存的であり統計的に有意な、患者が記録した機能および活動の改善をもたらした。APC 150mgおよび300mgは、12週目に、プラセボと比較して有意に低い、WPAI:SHPに関するプレゼンティズムおよび総労働損失を有した。APCは、12週目に、プラセボと比較して有意に少ない、通常の日中の活動(仕事での労働以外)を行う特性として定義される活動の障害を有していた。安全性および忍容性は、ナルコレプシー患者における以前のAPCのフェーズ2の試験と一致していた(Bogan et al.,・・・)。最も高頻度に報告されたTEAE(どのグループでも≧5%)は、頭痛、吐き気、食欲減少、不安、上咽頭炎、および不眠症であった。【0109】実施例3閉塞性睡眠時無呼吸を有する対象における過度の眠気の処置に関するAPCの安全性および有効性のフェーズ3の試験における、SF-36およびEQ-5D-5Lの測定過度の眠気(ES)は、OSAの一次療法にも関わらず最大62.5%の患者において持続する、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の頻出の症状である(Weaver et al.,・・・)。ESは、OSA患者における健康に関連するクオリティオブライフ(HRQoL)の特定のドメインに逆的に影響を与える。SF-36(・・・)を使用した試験は、活力および日常役割機能が特に影響を受けたことを示している(Smith et al.,・・・)。APCは、OSA、ナルコレプシー、およびパーキンソン病を有する患者におけるESの処置に関して評価されている覚醒促進作用を伴う選択的なドーパミンノルエピネフリンの再取り込み阻害剤である。【0110】この試験は、SF-36 v2(SF-36 version 2)7およびEQ-5D-5L(5-dimension, 5-level EuroQol)(・・・)を使用して、OSAおよびESを有する成年患者における患者が報告したHRQoLに及ぼすAPCの効果を評価した。【0111】これは、12週間の、プラセボ対照二重盲検の並列設計の試験であった。患者を、12週間の間のAPC 37.5mg、75mg、150mg、もしくは300mg、またはプラセボに無作為化し(1:1:2:2:2)、OSAの一次療法へのアドヒアランスまたはノンアドヒアランスにより階層化した。【0112】SF-36 v2は、2つの概略的な尺度(身体的サマリースコアおよび精神的サマリースコア)、ならびに8つの特定の健康状態のドメイン(身体機能、日常役割機能(身体)、体の痛み、全体的健康感、活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)、心の健康)(Ware Jr et al.,.・・・)からなる。EQ-5D-5Lは、全般的なEQ-5D-5Lインデックススコア(0=死亡、1=完全な健康)と、「想像できる最悪の健康」を0および「想像できる最良の健康」を100で定まる健康状態の視覚的評価スケール(VAS)とをもたらすために使用される、5つの応答レベル(それぞれが、問題なし、わずかな問題、中程度の問題、重篤な問題、および著しい問題/行うことができない)を有する5つの質問/次元(移動、身の回りの管理、ふだんの活動、痛み/不快感、および不安/うつ状態)からなる(The EuroQol Group. EQ-5D-5L User Guide.・・・)。【0113】有効性の解析は、改変された治療企図(mITT)集団に基づくものであり;SF-36 v2またはEQ-5D-5Lに対する多重度の調節は行わなかった。SF-36 v2スコアは、0~100に尺度付けされており(全ての尺度に関して、高いスコアは、良好な健康を表す)、SF-36 Manuals(・・・)からのUSの一般集団のデータを使用して国民標準値に基づくスコアに変換させ;MMRM(・・・)を使用して解析し;有効性のエンドポイントのベースラインの値を使用して、ベースラインからの変化の差異を決定した。EQ-5D-5L VASおよびインデックススコアのデータは、MMRMモデルを使用して解析した。安全性および忍容性は、治療下で発現した有害事象(TEAE)、バイタルサイン、心電図検査、身体試験、および室内試験に基づき評価した。【0114】ベースラインの特徴は、治療グループを通して類似していた。安全性の解析対象(n=474)は、主に白人(76.2%)の男性(52.7%)であり、平均年齢(標準偏差[SD])は53.9(10.9)歳であった(表8)。患者は、ESSスコア(14.8~15.6の範囲)および短いMWTの睡眠潜時(12.0~13.6分の範囲)により表される、中程度のESを有していた。患者の大部分(75.3%)は、中程度の疾病または著しい疾病であると臨床医によって評価されていた。mITTの集団は、459名の患者からなり、このうちの404名(88.0%)がこの試験を完了した。中断の主な理由は、有害事象であり、患者は、有効性の欠如によっては試験を中断しなかった。【0115】完全なプライマリーな結果は、実施例1に提示されている。全ての用量で、コプライマリーエンドポイント(MWTおよびESSにおけるベースラインから12週目までの変化)が満たされた(表9)。鍵となるセカンダリーエンドポイントの、PGI-C(・・・)は、APC 37.5mgを除く全ての用量で満たされた(表9)。【0116】身体的サマリースコアの尺度における用量依存的な増加は、APC 150mgおよび300mgで統計的に有意であった(図8)。精神的サマリースコアは、APC 37.5mg、75mg、および150mgで類似しており、APC 150mgのみが統計上の有意性に達した(図8)。身体的サマリースコアおよび精神的サマリースコアに関する変化は、MCID(・・・)を超えなかった。【0117】個々のSF-36ドメインにおいて、最も大きなAPCの作用は、活力、次いで日常役割機能(身体)において観察された(図9)。これは2つのドメインは、全ての処置グループを通して最小のスコアを有することにより表されている、ベースラインでの最も大きな機能不全を示した。活力のドメインでは、APC 75mg、150mgおよび300mgで、MACIDを超える用量依存的な応答があると思われ(図9)、APC 150mgおよび300mgではプラセボと比較して統計上有意な改善がある。またAPC 150mgは、日常役割機能(身体)、全体的健康感、社会生活機能、および日常役割機能(精神)に関して、プラセボと比較して統計上大きなベースラインからの変化をもたらした(図9)。【0118】EQ-5D VASに及ぼすAPCの作用は、用量依存的であると思われるが、プラセボと有意に異なるものではなかった(図10A)。EQ-5D-5Lインデックスの値に及ぼす有意な作用は存在しなかった(図10B).【0119】最も一般的なTEAEは、頭痛、吐き気、食欲減少、不安、上咽頭炎、および不眠症であった(表10)。TEAEの発生頻度およびTEAEによる中断は、全般的に用量依存的であると思われた。300mgと比較して低いAPC150mgでのTEAEの発生頻度は、少なくとも部分的に、高い用量と比較して大きなHRQoLの改善の要因であり得るとの可能性がある。7つの深刻なTEAEが、5名の患者で報告された:プラセボにおける甲状腺腫(n=1)および交通事故からもたらされた背部痛/坐骨神経痛(n=1);APC 37.5mgにおける胆管閉塞症(n=1)、およびレンサ球菌性心内膜炎(n=1);JZP-110 150mgにおける高血糖(n=1)。患者にAPC 300mgを投与する前に開始した、中程度の重症度の冠動脈疾患である、1つの非治療下で発現した有害事象が存在した;冠動脈ステントを挿入し、この患者を回復させた。APCは、血圧および脈拍数に中程度の作用を有した。ここでのベースラインからの増加の平均値は、収縮期血圧で1~4mmHgおよび拡張期血圧で1~3mmHgあり、ならびに脈拍数におけるベースラインからの増加の平均値は2~5拍動/分であった。【0120】結論として、APCは、37.5mgを除く全ての用量で、ESを低減させる主要評価項目を満たした。最も一般的なTEAEは、頭痛、吐き気、食欲減少、不安、上咽頭炎、および不眠症であり、全般的に、NおよびOSAにおけるAPCの安全性のプロファイルと一致した。APCでの処置は、SF-36v2で測定される際のHRQoLの改善に関連していた。APC 150mgは、身体的サマリースコアおよび精神的サマリースコアの尺度、ならびに日常役割機能(身体)、全体的健康感、活力、社会生活機能、および日常役割機能(精神)のドメインに関して統計的に有意な改善を伴い、SF-36v2の下位尺度に最も大きな影響を与えた。APC 300mgは、日常役割機能(身体)および活力のドメイン、ならびに身体的サマリースコアの尺度に関して、プラセボと比較して統計的に大きな改善を示した。JZP-110 75mg、150mgおよび300mgでは、活力のドメインは、MCIDの閾値を超えた。EQ-5D-5LインデックスまたはVASスコアでは、有意な変化は観察されず、この指標は、OSA(たとえば移動、身の回りの管理、痛み)への関連性の次元を捉えないことを示唆している。SF-36v2およびEQ-5D-5Lに関するベースラインのスコアは、国民標準値(population norms)に近く、これら患者が、自身のベースラインのMWT睡眠潜時およびESSスコアにより明示される実質的なESを有していたにも関わらず、ベースラインで顕著な機能不全を示さなかった。【0121】実施例4ナルコレプシーを有する対象におけるAPCのフェーズ3の試験ナルコレプシーは、睡眠状態および覚醒状態の安定性を制御する神経生理学経路の調節不全からもたらされる慢性的な神経性の障害である(Dauvilliers et al.,・・・)。過度の眠気(ES)は、全てのナルコレプシー患者に存在する、衰弱症状である(・・・)。APCは、ナルコレプシーのげっ歯類のモデルおよび成年のナルコレプシー患者における2つのフェーズ2の臨床試験において証明されている強力な覚醒推進作用を有する、選択的なドーパミンおよびノルエピネフリンの再取り込み阻害剤である(Bogan et al.,・・・)。【0122】この試験の目的は、ナルコレプシー1型または2型(それぞれ、過去にカタプレキシーを有するかまたは有していないナルコレプシー)の患者におけるESおよび覚醒不全の処置に関するAPC塩酸塩(JZP-110)の有効性および安全性を評価することである。【0123】この試験は、12週間の、無作為化した、プラセボ対照二重盲検の並列設計の試験であった。患者を、プラセボ、またはAPC 37.5mg、75mg、150mg、もしくは300mgを投与させるように無作為化し(1:1:1:1);無作為化を、カタプレキシーの有無により階層化した。【0124】主な選択基準に、18歳以上75歳以下の成年であって、ICSD-3(・・・)の基準によるナルコレプシー1型または2型と診断され、40分の覚醒維持検査(MWT)である5回の試験のうち最初の4回の試験におけるベースラインの平均睡眠潜時<25分、およびベースラインのESS(・・・)のスコア≧10、通常の夜間の総睡眠時間≧6時間、および18~45kg/m2のボディマス指数である成人を含めた。【0125】主な除外基準に、ナルコレプシー以外のいずれかの病態、夜間もしくは変則的なシフトでの勤務などの行動、またはESもしくはカタプレキシーの評価に影響し得る薬物の使用、および著しく不安定な病態、行動障害もしくは精神障害の病歴もしくは存在、または参加の安全性に影響し得る外科的な病歴を含めた。【0126】コプライマリーエンドポイントは、MWT平均睡眠潜時およびESSスコアにおける、ベースラインから12週目までの変化であった。鍵となるセカンダリーエンドポイントは、12週目での、PGI-C(・・・)に関して改善を報告した患者のパーセンテージであった。他のセカンダリーエンドポイントおよび予備的なエンドポイントは、機能およびクオリティオブライフの変化、ならびに1週間当たりのカタプレキシーの発作の回数の変化を含んでいた。安全性の評価は、有害事象、室内試験、およびバイタルサインを含むものであった。【0127】有効性の解析は、無作為化され、少なくとも1つの用量の試験医薬を投与され、MWTおよびESSの両方のベースラインおよび少なくとも1つのベースライン後の評価を有する全ての患者として定義されている、改変された治療企図集団(mITT)に基づくものであった。MWTおよびESSは、MMRM(・・・)モデルを使用して解析した。PGI-Cは、カイニ乗検定を使用して解析した。固定した階層テストの手法を使用して、コプライマリーエンドポイントおよび鍵となるセカンダリーエンドポイントに関してAPCの最も高い用量で開始し、多重度に対して補正を行い;その後、それぞれをこれよりも低い用量で処理することにより試験を処理した。【0128】無作為化された239名の患者のうち、236名に、少なくとも1つの用量の試験医薬を投与し、安全性の解析対象に含めた(図11)。中断の比率は、プラセボ(11.9%)、JZP-110 75mg(16.9%)、およびJZP-100 150mg(13.6%)と比較して、JZP-110 300mg(27.1%)で最も高かった(図11)。APC 300mgにおける中断の最も一般的な理由は、有効性の欠如(10.2%;n=6)および有害事象(8.5%;n=5)であった。mITTの集団は、231名の患者からなるものであった。プラセボに無作為化した1名の患者およびJZP-110 150mgに無作為化した4名の患者が、MWTおよびESSのベースラインおよび少なくとも1つのベースライン後の有効性の評価を有さなかった。【0129】患者の集団の64.9%が女性、79.7%が白人であり、平均年齢(標準偏差)は36.2(13.2)歳であった。患者の大部分(64.5%)は、中程度の疾病または著しい疾病であると臨床医によって評価されており、MWT睡眠潜時のベースラインの平均値は6.2~8.7分であり、ESSスコアの平均値は、17.0~17.3であった。デモグラフィックおよび臨床的特徴は、mITT集団における処置グループにおいて類似していた(表11)。【0130】この試験は、JZP-110 150mgおよび300mgにて、MWTおよびESSにおけるベースラインからの変化であるコプライマリーエンドポイント、ならびにPGI-Cの改善を伴う患者のパーセンテージである鍵となるセカンダリーエンドポイントを満たした(表12)。【0131】APCは、12週目に、150mgおよび300mgにて、プラセボと比較してMWT平均睡眠潜時を有意に増加させた(図12;mITT集団)。統計的に有意な効果が、早くも1週目に、全ての用量で観察された。MWTに及ぼす効果は、用量依存的であり、12週間の試験にわたり安定していた。増加のレベルによる結果の分析結果(breakdown)を表13に示す。【0132】APCは、12週目に、全ての用量で、プラセボと比較してESSスコアを有意に減少させた(図13;mITT集団)。統計的に有意な効果が、早くも1週目に、APC 150mgおよび300mgで観察された。ESSに及ぼす効果は、用量依存的であり、12週間の試験にわたり安定していた。【0133】APCは、12週目に、プラセボと比較して、全ての用量で全身状態の改善を報告した患者のパーセンテージを有意に増大させた(名目上のP値 75mg)(図14;mITT集団)。統計的に有意な作用が、早くも1週目に全ての用量で観察された。患者により評価された改善は、用量依存的であり、12週間の試験にわたり安定していた。【0134】全てのJZP-110グループで最も一般的なTEAE(≧5%)は、頭痛、吐き気、食欲減少、上咽頭炎、口渇、および不安であった(表14)。全般的に、最も一般的なTEAEの発生頻度は、用量依存的であった。APC 150mgのグループにおける1名の患者が、研究者により関連しないとみなされた、非心臓性の胸部疼痛および不安といった2つの深刻なTEAEを有していた;この患者は、この試験を続行した。TEAEによる中断は、プラセボよりもAPC150mgおよび300mgのグループで多かった。【0135】結論として、APC 150mgおよび300mgは、12週目に、MWT、ESS、およびPGI-Cに関して統計的有意性および強力な作用をもたらし、これは、ナルコレプシー患者における以前のフェーズ2の試験からの知見と一致していた3,4。75mgでは、ESSで有意な効果が観察されたが、MWTでは観察されなかった。有効性は、全てのプライマリーエンドポイントおよび鍵となるセカンダリーエンドポイントに関して、用量と関連していた。効果は、早くも1週目に観察され、12週間の試験にわたり維持されており、これは、12週間の試験にわたりAPCの覚醒促進作用に対する明らかな忍容性が存在しないことを示している。安全性および忍容性は、以前の、ナルコレプシー患者でのフェーズ2の試験と一致していた(Bogan et al.,・・・)。一般的なTEAE(≧5%)は、頭痛、吐き気、食欲減少、上咽頭炎、口渇、および不安であった。」
「【表5】[図:0001427063000001.jpg][図:0001427063000002.jpg]【表6】[図:0001427063000003.jpg]」
「【表8】[図:0001427063000004.jpg][図:0001427063000005.jpg]【表9】[図:0001427063000006.jpg]」
「【表11】[図:0001427063000007.jpg]」
「【表13】[図:0001427063000008.jpg]」
「【0011】【図1】図1は、閉塞性睡眠時無呼吸を有する患者の過度の眠気の処置のための試験設計を示す。・・・【図12】図12は、覚醒維持検査に関するベースラインからの変化の平均値を示す。【図13】図13は、Epworth Sleepiness Scaleに関するベースラインからの変化の平均値を示す。・・・」
「【図1】[図:0001427063000009.jpg]」
「【図12】[図:0001427063000010.jpg]」
「【図13】[図:0001427063000011.jpg]」
ウ 補正事項ア、エ、カ、キ、ケ及びコの「投与レジメン」について
補正事項アに含まれる「APCの1日1回75mgの用量を3日間、次いで1日1回150mgの用量」という投与スケジュールにおける「次いで」の意味は、「(一)[副]つづいて。ほどなく。まもなく。(二)[接続]次に。それから。」(新村 出 編、広辞苑 第五版、1998年、1764頁、ついで【次いで・尋いで】の項を参照。)であるから、上記投与スケジュールは、「1日1回75mgの用量」につづいて、「1日1回150mgの用量」があるもの、すなわち「1日1回75mg」の用量で「3日間」投与した後、4日目以降は「1日1回150mg」の用量を投与するものと解される。
他方、前記イの【0002】~【0006】に記載されるように、APCは、「日中の過度の眠気」等の「処置に有用であることが証明されている」公知の化合物であり、本願発明は「過度の眠気の処置に関して、」「ほとんどの化合物が、眠気の検査で「正常」とみなされるレベルまで対象の眠気のレベルを改善させる特性を示してはいない」という技術的背景のもとなされた発明であって、「本発明は、「正常な」レベルの覚醒が」「達成された驚くべきアウトカムを伴う」「対象の過度の眠気を処置するための方法に使用するための組成物」であるところ、APCの「投与レジメン」について、【0081】には、「2つ以上の異なるスケジュールを使用」することが説明され、【0088】には、「用量設定段階(Titration Phase)(1~2週目)では、患者は、1日1回の投与をAPC75ml(合議体注:「mg」の誤記と認める。)で開始し、3日ごとに用量を増減させ、APC 75mg、150mg、または300mgの最大耐量に達することができた。」と記載されている。また、【図1】の記載を参照しても、「用量設定段階」が「2週間」であり、「75mgで開始、最大150mgまたは300mgに用量設定」することが記載されている。
しかしながら、【0088】の用量設定段階は、1~2週目に「3日ごとに用量を増減させ」るものであり、最初の3日投与後に続いて投与された用量が、何mg増減したかは不明であるし、その次の3日投与後も、さらに用量を増減するものであるから、補正事項アの投与レジメンを記載するものではない。
また、【0088】及び【図1】の記載では、3日ごとに何mgを増減したか不明であり、補正事項エ、カ、キ、ケ及びコに含まれる「3日ごとに1回を超えない」という増減の頻度、すなわち「3日ごと」以外の増減の頻度や、増減した後の用量は記載されていない。
そして、翻訳文等の他の記載を参照しても、補正事項ア、エ、カ、キ、ケ及びコの投与レジメンを明示又は示唆する記載はなく、当然、当該投与レジメンが過度の眠気を処置することを技術的に裏付ける記載もなく、本願出願時の技術常識からみて自明な事項でもない。
エ 補正事項イ及びウの「ヒト患者の過度の眠気の改善の程度」について
前記ウで説示したとおり、「本発明は、「正常な」レベルの覚醒が」「達成された驚くべきアウトカムを伴う」「対象の過度の眠気を処置するための方法に使用するための組成物」であるところ、その「達成された驚くべきアウトカム」である「ヒト患者の過度の眠気の改善の程度」について、翻訳文等を参照すると、前記イの【0028】及び【0031】には、ESS及びMWTに関するスコアを、「処置した対象の少なくとも約5%、たとえば少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上が、特定のスコアを達成する。」(下線は合議体によって付した。)と記載されているが、ベースラインからのスコアの変化量の下限値が「25%」であったことは記載されていない。
また、前記イの【表5】及び【表6】には、実施例2の臨床試験における各群のベースライン及び12週目で観察されたESSスコア及びMWT睡眠潜時(分)がそれぞれ記載され(【0104】も参照。)、前記イの【表8】及び【表9】には、実施例3の臨床試験における各群のベースライン及び12週目で観察されたESSスコア及びMWT睡眠潜時(分)がそれぞれ記載され(【0114】及び【0115】も参照。)、前記イの【表11】及び【表13】には、実施例4の臨床試験における各群のベースライン及び12週目で観察されたESSスコア及びMWT睡眠潜時(分)がそれぞれ記載され(【0129】及び【0130】を参照。)、前記イの【図12】及び【図13】には、実施例4の臨床試験における各群で観察されたMWT睡眠潜時(分)及びESSスコアのベースラインからの変化の平均値の推移が示されている(【0131】及び【0132】を参照。)。
しかしながら、実施例2~4(【0101】~【0135】)の臨床試験は、いずれも補正事項アの「投与レジメン」ではなく、「12週間の間」、「37.5mg、75mg、150mg、もしくは300mg」という固定用量を投与し続けるものである(【0103】、【0111】及び【0123】を参照。)。
また、【表5】及び【表6】、【表8】及び【表9】、【表11】及び【表13】、並びに【図12】及び【図13】からは、ベースラインと12週目の変化は読み取れるものの、「投与レジメンの12週目においてベースラインから少なくとも25%もたらす」というESSスコア又はMWTスコアの改善の下限値が「25%」となることを記載するものでもない。
さらに、12週間の間、固定用量を用いた実施例2~4の臨床試験の結果を、それらとは異なる投与レジメンを用いた場合の治療効果にそのまま外挿できるという技術常識もなく、仮に上記表及び図から、ESSスコア又はMWTスコアの改善の下限値が「25%」であることが読み取れたとしても、これらの記載から補正事項イ及びウの事項が自明であったということもできない。
そして、翻訳文等の他の記載を参照しても、補正事項イ及びウを明示又は示唆する記載はなく、当該事項が本願出願時の技術常識からみて自明な事項でもない。
オ 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和7年3月3日提出の回答書の(1)において、補正事項ア、エ、キ及びケについて、以下の説明をしている。
「本願実施例1(明細書段落[0088])では図1を参照しており、用量設定段階において、患者はAPC75mgの1日1回の投与から開始し、最大耐量に達するまで3日ごとに増減「できる」ことを示しています。この投与範囲には最大耐量150mgが含まれ、最大耐量は安定用量段階においても継続されます。したがって、段落[0088]の記載は図1と併せて、患者に75mgを3日間1日1回投与し、その後150mgを1日1回投与するという投与レジメンを明らかに包含しており、1日1回の150mgの投与が投与レジメンの最大用量となります。」
また、審判請求人は、上記回答書の(2)において、補正事項カについても同様の説明をしている。
しかしながら、上記説明は、実施例1の臨床試験に参加した患者の中には、たまたま75mgを3日間1日1回投与し、その後150mgを1日1回投与した患者が含まれていた可能性があることを釈明するに留まり、患者に対して統一的に採用されるAPCの投与レジメンとして、補正事項ア、エ、カ、キ及びケの特定の投与レジメンが開示されていたことを説明するものではない。
さらに、前記ウで説示したとおり、翻訳文等には「本発明は、「正常な」レベルの覚醒が」「達成された驚くべきアウトカムを伴う」「対象の過度の眠気を処置するための方法に使用するための組成物」であると説明されているところ、令和4年5月23日提出の意見書(4-2.理由2(進歩性)について)において、「出願人は、(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカルバメート(APC)を用いた広範な研究の後に、本願発明の投与レジメンを開発しました。当該投与レジメンは、これまで知られていなかった用量依存性の副作用を考慮して、薬物の忍容性を最大化するように設計されており、薬物の個々の薬物動態特性に部分的に基づいています。」、「本願請求項に記載の投与レジメンの特徴は、これまで当技術分野で認識されていなかった、APCの用量依存的な治療に起因する有害作用(TEAE)から生じる忍容性の検討事項に対処しています。本願の出願日以前は、血圧および心拍数の増加は、APCの投与に関連する用量依存性TEAEであることが当業者には知られていませんでした。」、「引用文献2および3が、300 mgの1日1回投与で治療効果を示し、明らかな用量依存性TEAEがないことを考慮すると、引用文献の開示は、当業者を、i)最大用量を1日1回150mgに制限することや、ii)150mgまで漸増する前に少なくとも3日間75mgの1日用量を維持することに動機付けなかったであろうと考えます。」、「本願出願人は、定常状態に達するのに3日が必要であると判断されたため、APCの独自の薬物動態および上記の忍容性の検討事項を考慮して、本願請求項に記載の投与レジメンを3日の最小用量間隔で設計しました。」(下線は合議体が付したものである。)と請求人は主張している。
そして、請求人の上記主張のとおり「1日1回75mgの用量を3日間、次いで1日1回150mgの用量」を投与するという投与レジメンが、本願発明の化合物に起因する有害作用を抑制し、忍容性を高めるために設計されたものであるならば、当該投与レジメンは、他の投与レジメンにはない特別な技術的意義を有するものであり、なおさら、前記ウで説示したとおり、翻訳文等にはこれを裏付ける記載はなく、本願出願時の技術常識からみて自明な事項でもないといえる。
したがって、「1日1回75mgの用量を3日間、次いで1日1回150mgの用量」を投与するという投与レジメンは、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえる。
カ まとめ
以上のとおりであるから、本件補正により、補正後の特許請求の範囲は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項が導入されることは明らかであるから、本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
2 理由2(サポート要件)について
前記1に説示したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明1において特定する投与レジメン自体が記載されておらず、また、本願発明1の投与レジメンでAPCを投与した実施例もなく、ESSスコアの変化によって測定される、ヒト患者の過度の眠気の改善が、当該投与レジメンの12週目においてベースラインから少なくとも25%をもたらすことも裏付けられていない。
本願発明2~38についても同様に、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明2~38において特定する投与レジメン自体が記載されておらず、当該投与レジメンによってヒト患者の過度の眠気の改善がもたらされることを裏付ける実施例の記載もない。
したがって、本願発明1~38は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
第4 むすび
以上のとおり、補正事項ア~エ、カ、キ、ケ及びコを含む本件補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、また、本願の請求項1~38に係る発明について、本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-017747