特許拒絶査定不服審判
2022-015906
センサ、入力装置および電子機器
- 審判番号
- 2022-015906
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-511078外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年10月05日
- 審決日
- 2023年04月25日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ソニーグループ株式会社
- 【請求人代理人】杉浦 正知
- 【請求人代理人】杉浦 拓真
- 分類
- P18 .55 -WY (G06F) / P18 .537-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-511078「センサ、入力装置および電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月11日国際公開、WO2018/186022、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月14日(優先権主張 平成29年4月3日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
令和3年 9月 7日付け:拒絶理由通知書
令和3年11月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 4月 6日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和4年 6月10日 ;意見書、手続補正書の提出
令和4年 6月30日付け:令和4年6月10日の手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和4年10月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和5年 1月10日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書(以下「当審拒絶理由」という。)
令和5年 3月14日 :意見書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
理由1(新規事項)
令和3年11月15日付け手続補正書でした補正は、以下の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
補正によって請求項1に追加された「前記温度検出用センシング部の上側に位置し、前記温度検出用センシング部を覆う電極」は、この出願の願書に最初に添付した明細書、図面、及び、特許請求の範囲(以下、当初明細書等という)には記載されておらず、新規事項を追加するものである。
出願人が補正の根拠として主張する段落0033は、「温度検出用センシング部30SEA」に含まれる「センス電極33A」についての記載であり、「温度検出用センシング部」の上側に別途の覆う電極を設けるものではない。
よって、この補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
第3 当審の判断
1 補正の内容
令和5年3月14日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された(下線は補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
押圧を検出する静電容量式のセンシング部と、前記センシング部に対応する領域に設けられる、静電容量式の温度検出用センシング部とを有するセンサ電極部と、
前記センサ電極部に対向し、前記センサ電極部の上側に位置するリファレンス電極層と を備え、
前記温度検出用センシング部は、
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極の上側に位置し、前記第1の電極および前記第2の電極を覆う第3の電極と
を含むセンサ。 」
なお、請求項2-8に係る発明は、請求項1に係る発明を減縮した発明である。
2 新規事項について
(1)当初明細書等の記載事項
当初明細書等には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。
「【0024】
一方で、図6に示すように、同一荷重(例えば、150(gf))時に出力されるDelta値がセンサの温度に応じて大きく変動しまう。この結果、スマートフォンの押圧時に動作荷重が変わってしまう問題や、検出座標がずれる等の問題が生じる。本発明者らの解析の結果、この問題は、センサ構成材(例えば、接着層)は温度が低くなるほど硬度が高くなることが主な原因と考えられる。この問題をヤング率温度依存性による問題と称する。これらの問題を踏まえ、一実施形態に係るセンサ20の構造について詳細に説明する。
【0025】
(センサ電極部)
センサ電極部30について、図7?図10を参照して詳細に説明する。図7は、センサ電極部30をZ方向から見た図であり、図8は、センサ電極部30の断面を示す図であり、図9及び図10は、センサ電極部30のより詳細な構成を説明するための図である。
【0026】
センサ電極部30は、上述したように、長尺の矩形状を有し、FPC40の一部である。このようにセンサ電極部30をFPC40の一部とすることで、部品点数を減らすことができる。また、センサ20と基板13との接続の衝撃耐久性を向上できる。FPC40は、図7に示すように、センサ電極部30と、このセンサ電極部30の長辺の中央から延設された接続部41とを備える。センサ電極部30は、複数のセンシング部30SEと、温度検出用センシング部30SEAとを備えている。温度検出用センシング部30SEAは、押圧時に感度を持たずに一種の温度センサとして機能するものである。各温度検出用センシング部30SEAは、各センシング部30SEに対応する領域に設けられ、本例では、図7に示すように、各温度検出用センシング部30SEAは、各センシング部30SEに対をなすように対応して設けられている。
【0027】
図8に示すように、基材31の表側(上側)には、異なる接着剤からなる第1接着層300A及び第2接着層300Bがそれぞれ形成されており、第2接着層300Bの表側には基材31Aが形成されている。一方で、基材31の裏側(下側)には、異なる接着剤からなる第3接着層301A及び第4接着層301Bがそれぞれ形成されており、第4接着層301Bの裏側には基材31Bが形成されている。基材31A、31Bとしては、基材31と同様のものを適用することができる。各接着層に、エポキシ系接着剤等の熱硬化型の接着剤を適用することができる。
【0028】
センシング部30SEを構成するパルス電極32(第1の電極の一例)及びセンス電極33(第2の電極の一例)は、第1接着層300A及び第2接着層300Bからなる接着層に含まれている。また、温度検出用センシング部30SEAを構成するパルス電極32A及び2個センス電極33Aは、第3接着層301A及び第4接着層301Bからなる接着層に含まれている。また、温度検出用センシング部30SEAを構成するセンス電極33Bは、第1接着層300A及び第2接着層300Bからなる接着層に含まれている。
【0029】
センス電極33Bは、パルス電極32Aよりも大きく、パルス電極32Aを覆い隠すように設けられている。図8に示すように、パルス電極32Aとセンス電極33Bとの間に、接着層(例えば、第1接着層300A、第3接着層301A)が介在している。パルス電極32Aの水平方向の例えば両側(一方でもよい)に、2個のセンス電極33Aが設けられている。
【0030】
センサ電極部30は、図9に示すように、可撓性を有する基材31の一方の主面に設けられたパルス電極32とセンス電極33とを備える。パルス電極32は、図9のY軸方向に延設される棒状の連結部からX軸方向に延設する直線上の複数の単位電極体32aを備える。センス電極33は、図9のY軸方向に延設される棒状の連結部からX軸方向に延設する直線上の複数の単位電極体33aを備える。複数の単位電極体32aと複数の単位電極体33aとがY軸方向において交互となるように配置されている。Z軸方向から複数のセンシング部30SEを平面視すると、複数のセンシング部30SEは、X軸方向に等間隔で一列をなすように1次元的に配置されている。
【0031】
また、センサ電極部30の温度検出用センシング部30SEAは、図10に示すように、可撓性を有する基材31の他方の主面に設けられたパルス電極32Aとセンス電極33A及び33Bとを備える。パルス電極32A、センス電極33A及び33Bは、X軸方向に延設するものであり、2個のセンス電極33A、33Bの間にパルス電極32Aが配置されている。基材31の他方の主面には、リファレンス電極層に接続されるためのGND線38A及びシールド38Bが形成されている。
【0032】
基材31は、高分子樹脂を含み、可撓性を有する基板である。高分子樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリイミド(PI)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、環状オレフィンポリマー(COP)またはノルボルネン系熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0033】
上述したように、温度検出用センシング部30SEAは、上側(操作側)に位置するセンス電極33Aにより下側の電極(パルス電極32A及びセンス電極33B)を覆い隠す構造になっている。したがって、後述するリファレンス電極層21bが近づいても、パルス電極32A及びセンス電極33Bの容量が変化することがない。すなわち、温度検出用センシング部30SEAは、押圧に対する感度を有さないので、温度検出用センサとして用いることが可能となる。
【0034】
(電極基材)
電極基材21、22は、可撓性を有する電極フィルムである。電極基材21は、センサ20のセンシング面20Sを構成し、電極基材22は、センサ20の裏面を構成している。
【0035】
電極基材21は、可撓性を有する基材21aと、基材21aの一方の主面に設けられたリファレンス電極層(以下「REF電極層」という。)21bとを備える。電極基材21は、REF電極層21bがセンサ電極部30の一方の主面に対向するようにして、センサ電極部30の一方の主面側に配置されている。電極基材22は、可撓性を有する基材22aと、基材22aの一方の主面に設けられたREF電極層22bとを備える。電極基材22は、REF電極層22bがセンサ電極部30の他方の主面に対向するようにして、センサ電極部30の他方の主面側に配置されている。」
「【図4】
[図:0001398138000001.jpg]
【図8】
[図:0001398138000002.jpg]
」
(2)検討
ア 段落【0024】、【0026】には、「センサ20」の「センサ電極部30は、複数のセンシング部30SEと、温度検出用センシング部30SEAとを備えて」おり、「各温度検出用センシング部30SEAは、各センシング部30SEに対応する領域に設けられ」ていることが記載されている。
イ 段落【0035】には、「リファレンス電極層(以下「REF電極層」という。)21bを備え」、「REF電極層21bがセンサ電極部30の一方の主面に対向するようにして、センサ電極部30の一方の主面側に配置されている」ことが記載されている。
ここで段落【0033】の「温度検出用センシング部30SEAは、上側(操作側)に位置するセンス電極33A(当審注:請求人が審判請求書において主張するとおり、33Bの誤記と認める。)により下側の電極(パルス電極32A及びセンス電極33B(当審注:33Aの誤記と認める)を覆い隠す構造になっている」との記載、および図8の記載を参酌すれば、「上側」は、Z軸上の正方向を意味するものと認められる。
してみると、「リファレンス電極層21b」は、センサ電極部30に対向して、センサ電極部の上側に配置されることが記載されていると認められる。
ウ 上記段落【0033】の「温度検出用センシング部30SEAは、上側(操作側)に位置するセンス電極33A(当審注:33Bの誤記と認める)により下側の電極(パルス電極32A及びセンス電極33B(当審注:33Aの誤記と認める))を覆い隠す構造になっている」との記載によれば、温度検出用センシング部は、パルス電極32Aと、センス電極33Aと、パルス電極32Aおよびセンス電極33Aの上側に位置し、パルス電極32Aおよびセンス電極33Aを覆うセンス電極33Bとを含む構成が記載されていると認められる。
エ そうすると、これらの記載事項と図示内容からみて当初明細書等には、 本件補正の結果請求項1に記載されることとなった、「前記センサ電極部に対向し、前記センサ電極部の上側に位置するリファレンス電極層」について記載されていることは明らかである。
したがって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものと認められる。
よって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。
第4 原査定について
本件補正により補正された請求項1は、令和3年11月15日に提出された手続補正書により補正された請求項1の「前記温度検出用センシング部の上側に位置し、前記温度検出用センシング部を覆う電極」との記載を含まないものとなり、また、上記第3で述べたように、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、原査定の理由を維持することはできない。
第5 当審拒絶理由について
・特許法第36条第6項第2号について
当審では、「請求項1において「前記センサ電極部に対向するリファレンス電極層」と記載されているが、「リファレンス電極層」と「センサ電極部」との位置関係が明確でないため、請求項1に係る発明の技術的範囲が明確でない」との拒絶理由を通知しているが、令和5年3月14日提出の手続補正書により、請求項1において「前記センサ電極部に対向し、前記センサ電極部の上側に位置するリファレンス電極層」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。
第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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