特許拒絶査定不服審判
2022-015779
圃場形状生成システム及び農作業車
- 審判番号
- 2022-015779
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-240369
- 請求日
- 2022年10月04日
- 審決日
- 2023年10月11日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社クボタ
- 【請求人代理人】弁理士法人R&C
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 九鬼 一慶
- 審判官 濱野 隆
- 分類
- P18 .121-Z (G01C) / P18 .575-Z (G01C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-240369「圃場形状生成システム及び農作業車」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 7月 2日出願公開、特開2020-101467〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年(2018年)12月21日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和 3年12月16日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 2月18日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月30日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 7月 5日 :原査定の謄本の送達)
同年10月 4日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年10月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年10月4日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和4年10月4日にされた補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についての補正を含むものであって、次の(1)に示す本件補正前(令和4年2月18日にされた手続補正後をいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
農作業車に装着され、前記農作業車の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部に対する前記農作業車の摺動板ガードの後端部を含む所定部位の相対座標を記憶した記憶部と、
前記農作業車が圃場の最外周側を走行したときにおける走行軌跡から圃場形状データを生成する生成部と、を備え、
前記生成部は、前記位置情報取得部で取得した前記位置情報を、前記記憶部に記憶した前記相対座標により補正した補正位置情報に基づいて、前記圃場形状データを生成する圃場形状生成システム。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
農作業車に装着され、前記農作業車の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部に対する前記農作業車の摺動板ガードの後端部の相対座標を記憶した記憶部と、
前記農作業車が圃場の最外周側を走行したときにおける走行軌跡から圃場形状データを生成する生成部と、を備え、
前記生成部は、前記位置情報取得部で取得した前記位置情報を、前記記憶部に記憶した前記相対座標により補正した補正位置情報に基づいて、前記圃場形状データを生成する圃場形状生成システム。」
2 本件補正の目的
本件補正による請求項1についての補正は、「相対座標」が表わす対象となる部位について、本件補正前の「摺動板ガードの後端部を含む所定部位」から本件補正後の「摺動板ガードの後端部」に限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件についての当審の判断
本件補正による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討を行う。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の「本件補正後の請求項1」で示した記載により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開2017-127291号公報(以下「引用文献1」という。)には、次に摘記する事項が記載されている(下線は合議体が付した。以下同様である。)。
a 【請求項1】
「【請求項1】
車体部と、
アンテナが受信した測位システムからの測位信号に基づいて前記車体部の位置情報を取得可能な位置情報取得部と、
前記車体部に対して予め設定されたオフセット補正値を記憶する記憶部と、
農作業が行われる作業領域の形状を特定する形状特定部と、
を備え、
前記形状特定部は、前記作業領域にて前記車体部を周回走行させた際の前記車体部の位置情報に基づいて第1作業領域形状を特定するとともに、前記周回走行における前記車体部の周回方向と前記第1作業領域形状と前記オフセット補正値に基づいて、前記第1作業領域形状とは異なる第2作業領域形状を特定可能であり、
前記形状特定部は、当該第2作業領域形状を前記作業領域の形状として特定することを特徴とする農業用作業車両。」
b 【0001】、【0020】、【0021】、【図1】、【図2】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、主として農業用作業車両に関する。詳細には、測位システムからの測位信号を受信するアンテナを備え、当該アンテナにより受信した信号に基づいて自らの位置情報を取得可能な農業用作業車両であって、自らの位置情報を利用して農作業を行う作業領域の形状を取得可能な農業用作業車両に関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るロボットトラクタ1の全体的な構成を示す側面図である。図2は、ロボットトラクタ1の平面図である。図3は、第1実施形態におけるロボットトラクタ1の制御系の主要な構成を示すブロック図である。
【0021】
初めに、本発明に係る農業用作業車両の実施の一形態であるロボットトラクタ(以下、単に「トラクタ」と称する場合がある。)1について説明する。第1実施形態に係るトラクタ1は、圃場領域内を自走する車体部としての走行機体2を備える。走行機体2には、図1及び図2において鎖線で示す作業機3が着脱可能に取り付けられている。この作業機3としては、例えば、耕耘機、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等の種々の作業機があり、これらの中から必要に応じて所望の作業機3を選択して走行機体2に装着することができる。走行機体2は、装着された作業機3の高さ及び姿勢を変更可能に構成されている。」
「【図1】
[図:0001404345000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001404345000002.jpg]
」
c 【0028】、【0040】、【図3】
「【0028】
図3に示すように、トラクタ1は、走行機体2の操作(前進、後進、停止及び旋回等)並びに作業機3の動作(昇降、駆動、及び停止等)を制御するための制御部として、制御装置4を備える。制御装置4には、ガバナ装置41、変速装置42、及び昇降アクチュエータ44等がそれぞれ電気的に接続されている。」
「【0040】
図3に示す制御装置4は、トラクタ1が自律走行するように制御するための各部を備えており、これと併せて測位用アンテナ6等の各種構成をトラクタに設けることにより、既存のトラクタを無人のロボットトラクタ1として利用することが可能となる。制御装置4は、CPU、ROM、RAM等を有する小型のコンピュータとして構成されており、上記のROMには、オペレーションプログラムやアプリケーションプログラムや各種データが記憶されている。上記のハードウェアとソフトウェアの協働により、制御装置4を、圃場情報記憶部51、作業情報記憶部52、作業経路作成部53、記憶部としての端部位置情報記憶部61、形状特定部としての領域形状取得部62、及び表示用データ作成部60等として動作させることができる。」
「【図3】
[図:0001404345000003.jpg]
」
d 【0046】-【0055】、【図4】-【図6】
「【0046】
記憶部としての端部位置情報記憶部61は、図4に示す距離の情報、具体的には、例えばトラクタ1の車幅方向における測位用アンテナ6からトラクタ1の左端までに相当する距離L、及び、測位用アンテナ6からトラクタ1の右端までに相当する距離Rをオフセット補正値として記憶する。なお、本実施形態のようにトラクタ1に作業機3が装着されている場合は、上記の距離L,Rが示すトラクタ1の「左端」「右端」とは、作業機3を含めた形でのトラクタ1の車幅方向での左端及び右端を意味する。なお、距離Lと距離Rとは、同一の値であっても、異なる値であっても良い。」
【0047】
これらの距離L,Rは、例えばオペレータが実際に距離を測定して遠隔操作装置46に入力すること等により、端部位置情報記憶部61に記憶させることができる。ただし、これらの距離L,Rを取得する方法はこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、オペレータが作業機3の種類を遠隔操作装置46に入力することにより、距離L,Rが自動で算出(推定)されるものとしてもよい。」
「【図4】
[図:0001404345000004.jpg]
」
「【0048】
図3に示す形状特定部としての領域形状取得部62は、作業機3による農作業の対象となる作業領域の形状を取得するためのものである。この領域形状取得部62は、位置情報取得部としての周回アンテナ経路記憶部63、操舵角記憶部64、周回方向判定部65、外周側端部経路算出部66、オフセット補正値調整部としてのオフセット調整部67、及び旋回部分修正部68等を備えて構成される。
【0049】
位置情報取得部としての周回アンテナ経路記憶部63は、測位用アンテナ6の位置情報を登録しながら図5に示すように作業領域Cの形状に沿って(例えば、輪郭に沿って)トラクタ1を実際に周回(1回り)させる作業をオペレータが行ったときに、当該位置情報の経時変化(推移)を記憶することで、測位用アンテナ6の周回軌跡を実質的に記憶するものである。なお、以下では、トラクタ1を上記のように作業領域Cの形状に沿って(例えば、輪郭に沿って)周回するように走行させる作業を「周回走行」と呼び、このときに登録された位置情報を用いて得られた測位用アンテナ6の周回軌跡を「周回アンテナ経路」と呼ぶことがある。この周回アンテナ経路の形状は、本実施形態における「第1作業領域形状」に相当する。測位用アンテナ6の位置情報の推移は、例えば、一定の時間間隔をおいて衛星からの測位信号を測位用アンテナ6により反復して受信することにより取得することができる。あるいは、トラクタ1に搭乗したオペレータが、位置情報を登録したいタイミングで操作具(例えば、スイッチ)を操作することにより、周回走行中の作業領域Cの外形のうち所望の位置に相当する位置情報を取得することもできる。」
「【図5】
[図:0001404345000005.jpg]
」
「〔…中略…〕
【0052】
外周側端部経路算出部66は、周回アンテナ経路記憶部63から読み出した周回アンテナ経路に基づいて、上記のトラクタ1の周回走行に伴って当該トラクタ1の車幅方向における作業領域Cの輪郭に近い側の端部(本実施形態では、走行外周側の端部)が通過した経路(以下、「外周側端部経路」と呼ぶことがある。)を計算(補正)により求める。なお、外周側端部経路の計算には、周回アンテナ経路記憶部63から読み出した周回アンテナ経路と、周回方向判定部65による周回方向の判定結果と、端部位置情報記憶部61から読み出されたオフセット補正値(本実施形態では、図4の距離L又は距離R)と、が用いられる。
【0053】
具体的には、外周側端部経路算出部66は、周回方向判定部65で判定した結果が右回りであった場合には、トラクタ1の車幅方向において測位用アンテナ6からトラクタ1の左端までに相当する距離Lの分だけ、上記の周回アンテナ経路の位置情報をトラクタ1の進行方向に対して左側へオフセットすることにより、第2作業領域形状としての外周側端部経路の形状を算出する。なお、トラクタ1の進行方向は、周回アンテナ経路記憶部63に記憶される位置情報の推移から容易に求めることができる。
【0054】
一方、外周側端部経路算出部66は、周回方向判定部65で判定した結果が左回りであった場合には、トラクタ1の車幅方向において測位用アンテナ6からトラクタ1の右端までに相当する距離Rの分だけ、上記の周回アンテナ経路の位置情報をトラクタ1の進行方向に対して右側へオフセットすることにより、第2作業領域形状としての外周側端部経路の形状を算出する。
【0055】
図5には、トラクタ1をSTARTの地点からENDの地点(ENDの地点はSTARTの地点と同一である)まで左回りに周回走行させた例が示されている。この場合、周回方向判定部65により、トラクタ1の周回走行の方向は左回りであると判定される。従って、上記の外周側端部経路算出部66は、図6に示すように周回アンテナ経路をトラクタ1の進行方向に対して右側へ距離Rの分だけオフセットする計算(補正)を行って、第2作業領域形状としての外周側端部経路の形状を取得する。」
「【図6】
[図:0001404345000006.jpg]
」
e 【0077】、【0078】
「【0077】
以上で説明したように、本実施形態のトラクタ1は、車体部としての走行機体2と、位置情報取得部としての周回アンテナ経路記憶部63と、記憶部としての端部位置情報記憶部61と、形状特定部としての領域形状取得部62と、を備える。周回アンテナ経路記憶部63は、測位用アンテナ6が受信した測位システムからの測位信号に基づいて走行機体2の位置情報を取得可能である。端部位置情報記憶部61は、走行機体2に対して予め設定されたオフセット補正値(距離)L,Rを記憶する。領域形状取得部62は、農作業が行われる作業領域Cの形状を特定する。領域形状取得部62の周回アンテナ経路記憶部63は、作業領域Cにて走行機体2を周回走行させた際の走行機体2の位置情報に基づいて第1作業領域形状としての周回アンテナ経路を特定する。また、領域形状取得部62の外周側端部経路算出部66は、前記周回走行における走行機体2の周回方向と前記周回アンテナ経路とオフセット補正値L,Rに基づいて、前記第1作業領域形状とは異なる第2作業領域形状を特定可能である。この外周側端部経路算出部66は、当該第2作業領域形状としての外周側端部経路を作業領域Cの形状として特定する。
【0078】
これにより、走行機体2を周回走行させた際の測位用アンテナ6から受信した測位信号に基づいて把握される第1作業領域形状(周回アンテナ経路)そのものを作業領域Cの形状として認識するのではなく、走行機体2に対して予め設定されたオフセット補正値L,Rも考慮に入れて得られる第2作業領域形状(外周側端部経路)を作業領域Cの形状として取得することができる。従って、より実際に即した作業領域Cの形状を取得することができる。また、オペレータがトラクタ1を周回走行させる方向が右回り、左回りの何れであっても、周回方向も考慮に入れた上で第1作業領域形状(周回アンテナ経路)とオフセット補正値L,Rに基づいて第2作業領域形状(外周側端部経路)を算出することができるので、作業領域Cの形状を登録する作業の手間を軽減することができる。」
f 【0125】-【0132】
「【0125】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
〔…中略…〕
【0130】
上記の実施形態では、圃場領域の位置及び形状は画像処理等により取得され、作業領域Cの位置及び形状はトラクタ1を周回走行させることにより領域形状取得部62により取得されることとしたが、圃場領域の位置及び形状についても、トラクタ1を周回走行させて領域形状取得部62により取得されることとしてもよい。領域形状取得部62により圃場領域の位置及び形状を取得する場合の処理は、上述した作業領域Cの位置及び形状を取得する場合の処理と同様であり説明を省略する。
【0131】
上記の実施形態では、本発明は、自律走行するロボットトラクタ1に適用されるものとした。しかしながら、必ずしもこれに限るものではなく、オペレータが搭乗して操向操作する一般的なトラクタに本発明を適用することもできる。
【0132】
本発明は、上記の実施形態のようにトラクタに適用することに限定されず、例えば田植機に適用することもできる。その場合、植付部(植付装置)が作業機に相当することとなる。更に、本発明は、他の様々な農業用作業車両に適用することもできる。」
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)で示した摘記事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「農業用作業車両であって、(【請求項1】)
車体部と、
アンテナが受信した測位システムからの測位信号に基づいて前記車体部の位置情報を取得可能な位置情報取得部と、
前記車体部に対して予め設定されたオフセット補正値を記憶する記憶部と、
農作業が行われる作業領域の形状を特定する形状特定部と、
を備え、
前記形状特定部は、前記作業領域にて前記車体部を周回走行させた際の前記車体部の位置情報に基づいて第1作業領域形状を特定するとともに、前記周回走行における前記車体部の周回方向と前記第1作業領域形状と前記オフセット補正値に基づいて、前記第1作業領域形状とは異なる第2作業領域形状を特定可能であり、
前記形状特定部は、当該第2作業領域形状を前記作業領域の形状として特定するものであり、(【請求項1】)
オフセット補正値は、右回りであった場合には、農業用作業車両の車幅方向において測位用アンテナから農業用作業車両の左端までに相当する距離Lの分であり、(【0052】、【0053】、【0021】)
オフセット補正値は、左回りであった場合には、農業用作業車両の車幅方向において測位用アンテナから農業用作業車両の右端までに相当する距離Rの分であり、(【0052】、【0054】、【0021】)
距離L,Rが示す農業用作業車両の「左端」「右端」とは、作業機を含めた形での農業用作業車両の車幅方向での左端及び右端を意味するものであり、(【0046】、【0021】、【図4】)
圃場領域の形状についても、車両を周回走行させて形状特定部により取得されるものであり、圃場領域の形状を取得する場合の処理は、第2作業領域の形状を取得する場合の処理と同様であり(【0130】、【0077】、【図6】)
前記車両は、作業機に相当する植付装置を備えた田植機である、(【0132】)
農業用作業車両。(【請求項1】)」
イ 引用文献4、6、7の記載事項及び技術常識の認定
(ア)a 引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開平9-115013号公報(以下「引用文献4」という。)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はGPS受信機を備えた自動車およびその運用方法に関する。
〔…中略…〕
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前述したようにGPS受信機で認識できる位置は数ミリメートルレベルの高精度である。しかしながら、従来のGPS付自動車においてはGPS受信機自身の認識する位置(以後、GPS位置と呼ぶ)と自動車の各部の位置との相対位置関係が正確に得られていないために、自動車自身の位置は正確には得られていなかった。例えば、狭い路地をGPS付自動車が通過しようとした場合、精密な道路地図情報と正確なGPS位置とを比較すれば前記GPS付自動車を壁に擦らずに通過させることが可能なはずであるが、該自動車の実際の左右のバンパー端位置とGPS位置との相対位置が正確に認識されていないために上記の様な狭い路地の誘導は実際には精度良く行うことができない。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明のGPS受信機を備えた自動車およびその運用方法は、前記GPS受信機の位置と前記自動車各部の位置との相対位置を記録する記録装置を具備していること、または、前記自動車の特徴とGPS受信機の設置位置とを記録する記録装置を備えること、または、GPS受信機からの相対位置を測定する測定機能と測定した各部の前記相対位置を記録する記録装置を備えているGPS付自動車、または、自動車の軌跡を自動車の有する形状の軌跡として記録するGPS付自動車の運用方法であることを特徴とする。ことを特徴とする。
【0005】
【作用】GPS受信機の認識する位置と自動車の各部との正確な相対位置を認識することで、GPS受信機で得られた位置情報を用いて自動車各部の正確な位置を認識する。
【0006】
【実施例】本発明の請求項1に対応する第1の実施例を図1を用いて説明する。図1はセダンタイプの自家用自動車を上方から見た図である。GPS受信機1は自動車2の後方のトランクルームの所定の位置に固定されている。厳密に表現すれば前記GPS受信機のGPS位置が正確に所定の位置になるように固定する。GPS受信機と自動車各部の相対位置は記録装置50に入力される。記録装置に入力キーボードを備える場合や別に用意したパーソナルコンピュータで予め入力作業を行ったフロッピーディスクを挿入する場合もある。無線で入力する場合もある。入力する各部の位置として図1では車両の幅や長さに対応する数値を入力する。自動車自身の直進方向をx軸(長さ方向)としてx軸に直交する方向であるy軸を輻方向として定義する。GPS位置からの前方車長3、後方車長4、左車幅5、右車幅6のそれぞれの数値を入力して、前記記録装置に記録する。この記録データは車両位置を算出する際に必要に応じて用いられる。図1では前方車長等の各数値は実際の寸法よりも5センチメートル多めの数値とした。多めの数値にすることで狭い路地で擦る危険性は減少する。このように自動車の各部の相対位置は実際の寸法通り入力する必要は必ずしもない。」
「【図1】
[図:0001404345000007.jpg]
」
「【0012】
【発明の効果】本発明のGPS付自動車によればGPS受信機の認識する位置情報から自動車の各部の位置が認識できる。精密な地図情報と自動車の外形とを比較することで狭い路地で自動車を壁に擦るような事故を未然に防ぐことができる。また、実際に自動車の移動の記録を自動車形状の軌跡として記録することで道路の実態が簡便に把握できる。」
b 引用文献6の記載事項
当審において新たに引用する本願の出願前に発行された特開2018-116608号公報(平成30年(2018年)7月26日発行。以下「引用文献6」という。)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、作業地を自動走行する作業車のための走行経路を生成する走行経路生成装置及び走行経路生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、作業地を自動走行しながら作業を行う作業車が提案されている。このように作業車を自動走行させるためには、走行目標となる走行経路を生成する必要がある。作業地を網羅する走行経路を生成するためには、作業地の形状を正確に把握していることが前提条件となる。圃場などの作業地は、私的な農道などによって区画されているので、一般的な地図から正確な作業地の形状を求めることは困難である。
〔…中略…〕
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圃場などの作業地では、作業地が畦などの境界によって区画されており、作業車が作業地に出入りするための出入口通路が作業地毎に決まっている。この出入口通路は、傾斜通路であったり、硬く固められた通路であったりして、作業車による作業対象にはならない領域である。しかしながら、特許文献1におけるティーチング走行を通じての作業地形状の算出においては、この出入口通路の存在が無視されている。このため、算出された作業地形状に対して生成された自動走行のための走行経路は、出入口通路に重なる可能性がある。また、走行経路と出入口通路との重なりを避けるため、走行経路が出入口通路から遠く離れた位置に設定されることで、走行経路によってカバーされない作業領域が残されるという問題も生じる。
【0006】
このような実情から、本発明の課題は、作業地における自動走行するための作業対象領域を、簡単かつ正確に算出することが可能な走行経路生成装置及び走行経路生成プログラムを提供することである。
〔…中略…〕
【0012】
作業車自体を位置測定器として用いる場合、作業車が作業地の形状特徴点(多角形の頂点)に接近しても、通常自動走行のために設定されている自車位置と、当該形状特徴点の位置との間に距離がある。この距離による位置誤差を解消するため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記作業車のコーナ部には、前記始点、前記経過点、及び前記終点の位置に対応付けられる1つ以上の照準点が規定されており、前記始点、前記経過点、及び前記終点の位置は、前記自車位置から前記照準点までの距離によって前記自車位置を修正することで算出されるように構成されている。これにより、作業車の適当なコーナ部(照準点)を作業地の形状特徴点に接近させるだけで、作業車による正確な位置測定が可能となる。好ましくは、このような照準点を、作業車の右前端部、左前端部、右後端部、左後端部に設定して、そのうちのいずれかを選択されるように構成すれば、スムーズに照準点を作業地の形状特徴点に合わせることができる。」
「【0023】
次に、図4に示されている、圃場形状算出処理及び走行経路生成処理の流れ図を用いて、経路生成モジュール6の各機能部の基本的な役割を説明する。図4では、圃場の形状は台形で、上辺右端に下向き傾斜した出入口通路が設けられている。さらに、図5で示すように、トラクタの4つのコーナ部に照準点T1、T2、T3,T4が規定されており、これらの照準点T1、T2、T3,T4と、衛星測位モジュール80からの測位データに基づく自車位置(図5では、車体中央の黒丸で示されている)との間の距離が予め設定されており、各照準点T1、T2、T3,T4の位置座標が、自車位置から算出可能である。タッチパネル60には、照準点選択ボタンB1、B2、B3,B4が表示され、押された照準点選択ボタンB1、B2、B3,B4に対応する照準点が、以下の圃場形状算出処理で有効となる。」
「【図5】
[図:0001404345000008.jpg]
」
c 引用文献7の記載事項
当審において新たに引用する特開2017-127289号公報(以下「引用文献7」という。)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、主として農業用作業車両に関する。詳細には、測位システムからの測位信号を受信して自らの位置情報を取得可能な農業用作業車両であって、自らの位置情報を利用して例えば農作業を行う作業領域等の所望の領域の形状を取得可能な農業用作業車両に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のナビゲーションシステムでは、オペレータの手動運転により作業車両に作業対象敷地の外形に沿って走行させたときの走行軌跡を、作業対象敷地の外形と判別する。従って、オペレータが敷地内において当該敷地の縁ぎりぎりに沿って走行しないと正確な外形を取得することができず、走行技術に熟練を要する点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、農業用作業車両において、簡単に、例えば農作業を行う作業領域等の所望の領域の形状を取得できる構成を提供することにある。
〔…中略…〕
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の農業用作業車両が提供される。即ち、この農業用作業車両は、位置情報記憶部と、制御部と、を備える。前記位置情報記憶部は、アンテナが受信した測位システムからの測位信号に基づく位置情報を記憶可能である。前記制御部は、前記位置情報記憶部に記憶された複数の位置情報に基づいて形成される領域の形状を特定する。
【0009】
これにより、従来のように作業領域の輪郭に沿って農業用作業車両を実際に走らせて、この農業用作業車両が走行した連続的な走行軌跡を作業領域の形状として取得する場合と比べて、アンテナが受信した複数の位置情報だけに基づいて領域の形状を特定することができるので、領域の形状を簡単に取得することができる。
【0010】
前記の農業用作業車両においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この農業用作業車両は、車体部と、補正値記憶部と、を備える。前記車体部は、前記アンテナを取付け可能である。前記補正値記憶部は、前記車体部における前記アンテナの位置と前記車体部の大きさとに基づいて設定される補正値を記憶可能である。前記制御部は、前記補正値に基づいて前記複数の位置情報を補正し、補正された前記複数の位置情報に基づいて前記領域の形状を特定する。
【0011】
これにより、アンテナの位置を補正値に基づいて補正して、位置情報を実際の領域の形状に近づけることができ、より実際に則した領域の形状を取得することができる。
【0012】
前記の農業用作業車両においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この農業用作業車両は、農作業に用いられる作業機を備える。前記制御部は、前記領域の形状として、前記作業機により作業が行われる作業領域の形状を特定する。
【0013】
これにより、作業機により作業が行われる作業領域の形状を簡単に特定することができる。」
「【0061】
具体的には、補正値記憶部64は、図9に示す距離の情報、即ち、トラクタ1の車幅方向における測位用アンテナ6からトラクタ1の作業機3の左端までに相当する距離L、及び測位用アンテナ6から作業機3の右端までに相当する距離Rを記憶する。更に、補正値記憶部64は、トラクタ1の車長方向における測位用アンテナ6からトラクタ1の前端までに相当する距離F、及び測位用アンテナ6から作業機3の後端までに相当する距離Bを記憶する。」
「【0067】
次に、制御装置53は、ステップS201で記憶した各位置情報に対して、当該位置情報を作業領域Eの輪郭の角部に近づけるための補正値を補正値記憶部64から読み出す(ステップS202)。この補正値は、具体的には図9に示すように、測位用アンテナ6とトラクタ1の前端、後端、左端、右端、左前端、右前端、左後端、及び右後端との相対的な位置関係を示す距離L,R,B,Fに基づいて定められる値である。あるいは、トラクタ1の鉛直方向に対する傾きも考慮に入れて、トラクタ1の前端、後端、左端、右端、左前端、右前端、左後端、及び右後端が配置される作業領域Eの端の位置と、測位用アンテナ6の位置と、の相対的な位置関係を示す距離L,R,B,Fに適宜修正を加え、これを補正値とするものとしても良い。」
「【図9】
[図:0001404345000009.jpg]
」
(イ) 技術常識Aの認定
前記(ア)で示した引用文献4、6、7の摘記事項において例示されるように、次に示す技術事項は技術常識(以下「技術常識A」という。)であると認められる。
[技術常識A]
「GPSによる車体の測位装置に対する、車体の各端部の相対的な座標を用いて、GPSにより求めた車体の位置を補正することにより、車体の各端部の位置をより正確に求め、GPSによる車体の測位装置のみを用いることに比較してより高精度に測定の目的を果たせるように配慮を行うこと。」
ウ 引用文献3、5の記載事項及び周知技術の認定
(ア)a 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開2013-74842号公報(以下「引用文献3」という。)には、次に摘記する事項が記載されている(図中の太枠線は合議体が付した。以下同様である。)。
「【0019】
以下、本発明を適用した田植機の一例である乗用型田植機の実施形態を図面の記載に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1に示すように、乗用型田植機は、操向操作自在な左右一対の前輪1及び左右一対の後輪2を備えた走行機体3の前部側に、エンジン4及びミッションケース5を備え、走行機体3の中央部にステアリングハンドル6等を装備した操縦部7と運転座席8とを備えて構成され、又、走行機体3の左右両側に予備苗のせ台9が配設されている。
【0020】
走行機体3の後方には、リフトシリンダ10の操作により、リンク機構11を介して昇降操作自在に苗植付け装置12が連結され、その苗植付け装置12の後方に、散布装置の一例であるところの、粉粒状の除草剤等の薬剤を散布する薬剤散布装置13が備えられている。
ミッションケース5には、操縦部7に装備した変速レバー7aを操作することにより変速操作される静油圧式の無段変速装置(図示せず)が備えられている。」
「【図1】
[図:0001404345000010.jpg]
」
「【0021】
図2に示すように、苗植付け装置12は4条植型式に構成されている。この苗植付け装置12は、操縦部7に備えた運転座席8の横側部に配設された植付けレバー60の操作により、前記リフトシリンダ10を作動させて上昇及び下降可能に構成されているとともに、後述するように、植付けレバー60の操作に伴って、苗植付け装置12に備えられたマーカ40の姿勢変更操作も行うように構成されている。
〔…中略…〕
【0026】
前記苗のせ台20は、植付け伝動ケース16に支持された摺動板23によって、下端部側を左右方向に摺動移動自在に案内され、前傾姿勢となる苗のせ面20aの背面側が苗のせ台支持枠30で支持されている。つまり、苗のせ台20の背面側に横向きに配設してあるガイドレール29のガイド溝に、苗のせ台支持枠30に装着したガイドローラ30aが嵌入して苗のせ台20を左右移動自在に支持するように構成してある。
前記苗のせ台支持枠30は、図3及び図4に示すように、左右の植付け伝動ケース16の横外側で支持フレーム15に下端側を接続された左右一対の縦支柱31と、その左右の縦支柱31,31の上端部同士にわたって架設された横架部材32とで背面視門形に形成されている。」
「【図2】
[図:0001404345000011.jpg]
」
「【図4】
[図:0001404345000012.jpg]
」
「【0032】
そして、図5に実線で示したように、マーカ40のアーム部42が固定金具35の第1係合部37aに係合した状態(非作用位置b)では、苗植付け装置12が植付け作業位置まで下降しても、図4に仮想線で示すように、マーカ40の回転マーカ43が後輪12の横外側に位置して、後輪12との接触を免れた状態となる。この状態でマーカ40の回転マーカ43は摺動板ガード23aの外側縁上の鉛直線y1よりも機体内方側に入り込むように位置する。これによって、苗植付け装置12を作業位置まで下降させて苗植付け作業を行う際に、両マーカ40を非作用姿勢に維持したままでの回り植え作業を行うことが可能となる。
本発明でいう苗植付け装置12の左右幅とは、苗植付け装置12の左右方向で最も外側方に位置する左右の摺動板ガード23aの外側縁同士の左右方向での間隔をいう。」
「【図5】
[図:0001404345000013.jpg]
」
b 引用文献5の記載事項
当審において新たに引用する特開2004-196000号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0048】
【発明の実施の形態】
図1、図2に、水田作業機の一例として乗用型田植機が示されている。この乗用型田植機は、操向自在な左右一対の前輪1と操向不能な左右一対の後輪2とを備えた四輪駆動型の走行機体3の後部に、8条植え仕様の苗植付け装置4が油圧シリンダ5によって駆動されるリンク機構6を介して昇降自在に連結されるとともに、機体後部に8条仕様の施肥装置7が装備された構造となっている。
〔…中略…〕
【0050】
前記苗植付け装置4は、10条分の苗を載置して左右方向に設定ストロークで往復移動される苗のせ台16、苗のせ台16の下端から1株分づつ苗を切り出して圃場に植付けてゆく8組の回転式の植付け機構17、植付け箇所を整地する5個の整地フロート18、等を備えて構成されており、苗のせ台16に補給するための予備苗を複数段に載置収容する予備苗のせ台19が、機体前部の左右に配備されている。」
「【図1】
[図:0001404345000014.jpg]
」
「【図2】
[図:0001404345000015.jpg]
」
(イ) 周知技術Aの認定
前記(ア)で示した引用文献3、5の摘記事項において例示されるように、次に示す技術事項は周知のものであると認められる(以下「周知技術A」という。)。
[周知技術A]
「後端部を有する摺動板ガードを備えた苗植付け装置を備える乗用型田植機」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 引用発明は、「圃場領域の形状についても、車両を周回走行させて形状特定部により取得されるものであ[る]」ところ、引用発明の「圃場領域の形状」は、本件補正発明の「圃場形状」に相当し、引用発明の「圃場領域の形状」の「取得」は、本件補正発明の「圃場形状生成」に相当する。
したがって、「圃場形状生成システム」の発明である本件補正発明と「圃場領域の形状についても」「取得される」「農業用作業車両」の発明である引用発明は、次の点において一致する。
「圃場形状生成システム」の発明である点。
(イ)a 引用発明の「田植機」である「農業用作業車両」は、本件補正発明の「農作業車」に相当する。
b(a) 前記aを踏まえると、引用発明の「農業用作業車両」の「車体部の位置情報」は、本件補正発明の「農作業車の位置情報」に相当する。
(b) そうすると、引用発明の「アンテナが受信した測位システムからの測位信号に基づいて前記車体部の位置情報を取得可能な位置情報取得部」は、本件補正発明の「前記農作業車の位置情報を取得する位置情報取得部」に相当する。
(c) また、引用発明において、「位置情報取得部」は、「農業用作業車両」が備えるから、「位置情報取得部」は「農業用作業車両」に装着されているといえる。
c 前記a及びbを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「農作業車に装着され、前記農作業車の位置情報を取得する位置情報取得部」を備える点。
(ウ)a 引用発明の「記憶部」は、本件補正発明の「記憶部」に相当する。
b 引用発明においては、
「前記形状特定部は、前記作業領域にて前記車体部を周回走行させた際の前記車体部の位置情報に基づいて第1作業領域形状を特定するとともに、前記周回走行における前記車体部の周回方向と前記第1作業領域形状と前記オフセット補正値に基づいて、前記第1作業領域形状とは異なる第2作業領域形状を特定可能であり、」「前記形状特定部は、当該第2作業領域形状を前記作業領域の形状として特定するものであ[る]」
から、前記(イ)の検討結果も踏まえると、引用発明の「前記車体部に対して予め設定されたオフセット補正値」は、「位置情報取得部」で「取得」した「車体部の位置情報」を補正し、補正した位置情報を得て、当該補正した位置情報に基づいて「圃場領域の形状」を取得するための、補助データである、ということができる。
c 前記(イ)b(a)並びにa及びbを踏まえると、「前記生成部は、前記位置情報取得部で取得した前記位置情報を、前記記憶部に記憶した前記相対座標により補正した補正位置情報に基づいて、前記圃場形状データを生成する」本件補正発明と引用発明とは、次の点において共通する。
「前記位置情報取得部で取得した前記農作業車の位置情報を補正して補正位置情報を得て、前記補正位置情報に基づいて圃場形状データを生成するための補助データを記憶した記憶部」を備える点。
(エ)a 引用発明において、「圃場領域の形状についても、車両を周回走行させて形状特定部により取得されるものであ[る]」から、前記(ア)も踏まえると、引用発明における「形状特定部」は、本件補正発明における「圃場形状データを生成する」「生成部」に相当する。
b(a) 引用発明における、
「前記作業領域にて前記車体部を周回走行させた際の前記車体部の位置情報」という技術事項は、
「前記作業領域にて前記車体部を周回走行させた際の前記車体部の走行軌跡」であるとの言いかえができることは、明らかである。
(b) してみると、引用発明においては、
「前記作業領域にて前記車体部を周回走行させた際の前記車体部の位置情報に基づいて第1作業領域形状を特定するとともに、前記周回走行における前記車体部の周回方向と前記第1作業領域形状と前記オフセット補正値に基づいて、前記第1作業領域形状とは異なる第2作業領域形状を特定可能であり」、「圃場領域の形状を取得する場合の処理は、第2作業領域の形状を取得する場合の処理と同様であ[る]」
ことを踏まえると、「前記作業領域にて前記車体部を周回走行させた際の前記車体部の走行軌跡」(上記(a)参照)から圃場領域の形状を取得しているといえる。
(c) さらに、引用発明において、「車両を周回走行」させるに際して、圃場の最外周側を走行したときのデータを用いることは明らかである。
c 前記(イ)並びにa及びbの検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記農作業車が圃場の最外周側を走行したときにおける走行軌跡から圃場形状データを生成する生成部」を備える点。
(オ) 前記(ウ)c及び(エ)aを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。
「前記生成部は、前記位置情報取得部で取得した前記位置情報を、前記記憶部に記憶した補助データにより補正した補正位置情報に基づいて、前記圃場形状データを生成する」点。
イ 一致点及び相違点の認定
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記の(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「農作業車に装着され、前記農作業車の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部で取得した前記農作業車の位置情報を補正して補正位置情報を得て、前記補正位置情報に基づいて圃場形状データを生成するための補助データを記憶した記憶部と、
前記農作業車が圃場の最外周側を走行したときにおける走行軌跡から圃場形状データを生成する生成部と、を備え、
前記生成部は、前記位置情報取得部で取得した前記位置情報を、前記記憶部に記憶した補助データにより補正した補正位置情報に基づいて、前記圃場形状データを生成する圃場形状生成システム」である点。
(イ) 相違点
「前記位置情報取得部で取得した前記農作業車の位置情報を補正して補正位置情報を得て、前記補正位置情報に基づいて圃場形状データを生成するための補助データ」が、
本件補正発明においては、
「前記位置情報取得部に対する前記農作業車の摺動板ガードの後端部の相対座標」であるのに対して、
引用発明においては、
「前記車体部に対して予め設定されたオフセット補正値」であり、
「オフセット補正値は、右回りであった場合には、農業用作業車両の車幅方向において測位用アンテナから農業用作業車両の左端までに相当する距離Lの分であり、」
「オフセット補正値は、左回りであった場合には、農業用作業車両の車幅方向において測位用アンテナから農業用作業車両の右端までに相当する距離Rの分であ[る]」点。
(4) 相違点についての判断
ア 農業用車両として、「後端部を有する摺動板ガードを備えた苗植付け装置を備える乗用型田植機」は周知のものである(「周知技術A」(前記(2)ウ(イ)参照))から、引用発明の「植付装置を備えた田植機」として「後端部を有する摺動板ガードを備えた苗植付け装置を備える乗用型田植機」に適用することは、当業者が適宜選択できる設計事項にすぎない。
イ(ア) そして、「GPSによる車体の測位装置に対する、車体の各端部の相対的な座標を用いて、GPSにより求めた車体の位置を補正することにより、車体の各端部の位置をより正確に求め、GPSによる車体の測位装置のみを用いることに比較してより高精度に測定の目的を果たせるように配慮を行うこと」は、技術常識である(「技術常識A」(前記(2)イ(イ)参照))。
(イ)a したがって、引用発明においては、農業用作業車両の車幅に相当する分の補正しか行っていないが、測位用アンテナに対する農業用作業車両の後端部の相対座標を用いて、農業用作業車両の各端部の位置をより正確に求めて補正し、より高精度に圃場形状データを生成できるようにすることは、当業者にとっては、適宜選択できる自明な設計変更にすぎない。
b ここで、農業用車両として、「後端部を有する摺動板ガードを備えた苗植付け装置を備える乗用型田植機」に適用した場合、農業用作業車両の後端部は、「摺動板ガードの後端部」になる。
c したがって、引用発明を周知技術Aに適用した場合に技術常識Aに基づいた配慮を行うと、測位用アンテナに対する摺動板ガードの後端部の相対座標を用いて補正することとなり、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えることとなるから、当該相違点は、格別のものでなく、当業者が引用発明、周知技術A及び技術常識Aに基づいて容易に想到し得たものである。
ウ(ア) 前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ) そして、本件補正発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
(ウ) したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術A及び技術常識Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 請求人の主張について
ア 審判請求書における請求人の主張内容
請求人は、審判請求書において、次の(ア)及び(イ)の主張をしている。
(ア) 本件補正発明は、位置情報取得部に対する農作業車の摺動板ガードの後端部を含む所定部位の相対座標を記憶した記憶部を備え、生成部は、位置情報取得部で取得した位置情報を、記憶部に記憶した相対座標により補正した補正位置情報に基づいて、圃場形状データを生成する。このような本件補正発明が備える構成は、何れの引用文献においても、記載も示唆もされていない。
(イ)a 本件補正発明は、農作業車を保護する摺動板ガードが畦と圃場との境界付近に位置するため、位置情報取得部に対する摺動板ガードの後端部の相対座標に基づいて位置情報取得部で取得した位置情報を補正することにより、圃場形状データをリアルタイムに精度よく生成することができる。例えば、畦と圃場との境界付近にうねり等があった場合でも、摺動板ガードの後端部の移動軌跡に基づいて圃場形状データを生成できるため、うねり等を反映した精度の高い圃場形状データをリアルタイムに生成することができる。
b また、摺動板ガードは、機体の最外側に位置するため、圃場の畦際に最も近く、最も精度よく畦際形状を取得することができる。さらに、摺動板ガードは機体の最外側且つ後方に位置するため、旋回後に畦際まで近接して後進することで、特に、圃場の四隅の畦形状を正確に取得することができる。
c このように、摺動板ガードの位置を取得することにより、直進時及び旋回時のいずれの場合も適切な位置を取得することができる。この結果、精度の高い圃場形状データをリアルタイムで生成する利便性の高いものとなっている。
d 本件補正発明は、単に、位置情報を補正(オフセット)する技術に留まらず、特に「摺動板ガードの後端部」の位置に基づいて圃場形状を取得することにより、格別の作用効果を奏するものである。
イ 請求人の主張に対する当審の判断
(ア) 本件補正発明の「前記位置情報取得部に対する前記農作業車の摺動板ガードの後端部の相対座標を記憶し」、「前記位置情報取得部で取得した前記位置情報を、前記記憶部に記憶した前記相対座標により補正した補正位置情報に基づいて、前記圃場形状データを生成する[こと]」が、引用発明、周知技術A及び技術常識Aから当業者が容易に想到し得たものであることは、前記(4)において検討したとおりである。
(イ) 請求人が主張する、本件補正発明が奏する格別の作用効果についてみると、「旋回後に畦際まで近接して後進することで、特に、圃場の四隅の畦形状を正確に取得できること」は、引用発明において相違点に係る本件補正発明の構成を備えることによる効果として自明の効果にすぎず、また、「うねり等を反映した精度の高い圃場形状データをリアルタイムに生成すること」及び「精度の高い圃場形状データをリアルタイムで生成する利便性の高いものとなっていること」は、請求項で特定された技術事項から必然的に導かれるものではないから(請求項で特定した技術事項は当該作用効果を奏するための十分条件になってはいないから)、請求項の記載に基づくものではなく、採用することはできない。
(ウ) 以上のとおりであるから、前記アの請求人の主張は、前記(4)の結論を左右するものではない。
(6) 本件補正についてのむすび
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1-8に係る発明は、令和4年2月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(1)に摘記した請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての進歩性欠如の理由2は、次のとおりである。
理由2(進歩性欠如)
本願発明は、下記の引用文献1、3、4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開2017-127291号公報
引用文献3:特開2013-74842号公報
引用文献4:特開平9-115013号公報
3 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
引用文献1には、前記第2の3(2)ア(ア)で示したとおりの摘記事項が記載されており、また、前記第2の3(2)ア(イ)で認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
引用文献3及び引用文献4には、それぞれ、前記第2の3(2)ウ(ア)及びイ(ア)で示したとおりの摘記事項が記載されており、また、技術常識A及び周知技術Aは、それぞれ、前記第2の3(2)イ(イ)及びウ(イ)において認定したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、「相対座標」が表す対象となる部位について、本件補正後の「摺動板ガードの後端部」とする限定を省き、「摺動板ガードの後端部を含む所定部位」とするものである(前記第2の2「本件補正の目的」参照)。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、当該構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3において検討したとおり、引用発明、周知技術A及び技術常識Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、周知技術A及び技術常識Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-015779