特許拒絶査定不服審判
2022-015185
活性炭複合創傷被覆材
- 審判番号
- 2022-015185
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-533502
- 請求日
- 2022年09月26日
- 審決日
- 2024年07月16日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】カルゴン カーボン コーポレーション
- 【請求人代理人】矢口 太郎
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 木原 裕二
- 分類
- P18 .121-WZ (A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-533502号「活性炭複合創傷被覆材」拒絶査定不服審判事件〔平成30年6月28日国際公開、WO2018/119398、令和2年1月30日国内公表、特表2020-503107号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)12月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年12月23日 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。
令和2年12月21日 :手続補正書の提出
令和3年10月19日付け:拒絶理由通知書
令和4年 1月25日 :意見書、誤訳訂正書、手続補正書の提出
令和4年 5月12日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和4年 5月24日 :原査定の謄本の送達)
令和4年 9月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和5年12月12日付け:拒絶理由通知
令和6年 5月20日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~28に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は、それぞれ令和6年5月20日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~28に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。
「複合創傷被覆材であって、
活性炭材料および治療活性剤を含む創傷接触層と、
前記創傷接触層の創傷とは反対側に隣接するバリア材料層と、
前記バリア材料層の創傷とは反対側に隣接する液体吸収材料層と、
前記液体吸収材料層の創傷とは反対側に隣接する液体不透過性の外層と、
前記液体不透過性の外層および前記バリア材料層の一部を前記創傷接触層に実質的に接着させる接着部であって、前記接着部は前記複合創傷被覆材の未接着層の密封パウチを形成し、前記液体吸収材料層を封入する、前記接着部と
を有し、
前記バリア材料層は、前記液体吸収材料層への創傷浸出液の通過を可能にし、かつ、前記創傷浸出液が前記創傷接触層に逆流するのを防ぐものであり、および、
前記治療活性剤は、鎮痛剤、麻酔剤、浸透性コロイド、プロテアーゼ阻害剤、タンパク質分解酵素、成長因子、栄養素、またはそれらの組み合わせの一つを含むものである、
複合創傷被覆材。」
第3 当審拒絶理由の概要
令和5年12月12日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
拒絶理由1(明確性)
本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
拒絶理由2(進歩性)
本願の請求項1~28に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1 特開平7-275293号公報
2 英国特許出願公開第2531345号明細書
3 特表2017-502801号公報(周知技術を示す文献)
4 特表2004-528898号公報(周知技術を示す文献)
第4 当審の判断
当審は、以下に示すとおり、令和6年5月20日提出の手続補正書による補正及び意見書の内容を考慮しても、上記第3に記載した拒絶理由2(進歩性)は解消していないと判断する。
1 引用文献の記載、引用発明等
(1) 引用文献1
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、次の事項が記載されている。
「【0001】
【従来の技術】本発明は吸収性物品用の液体分配層に関し特に、おむつ、生理用ナプキン、トレイニングパンツ、失禁者用パッド、けが人用包帯等用に関するものである。」
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、指向性のある高度な毛細管的動き、および重力に抗してでも液体を吸い上げる作用を付与することによって、吸収性物品の中の遠い領域まで、入って来る液体源から遠く離れてその液体を素早く移動できる寸法的にも安定な液体分配層を提供することを課題とする。」
「【0009】親水性に改質され、配列された本発明の繊維ウェブの繊維は、非常に交絡または繊維間に強い結合を形成しているので、先行技術が待っているフィラメントのゆるみやずれのような問題がなく、繊維配列方向にほぼ沿って液体の毛細管的移動および吸い上げをしやすくすると言う点で本発明の異方性微細繊維ウェブは、寸法安定性が高く、物理的完全性および著しく改良された液体分配性を提供する。本発明の極めて有用な液体分配層は、平方ヤード当たりのオンス(osy)で約0.1から約15osyが好ましく、約1osyから約5osyが更に好ましく、かつ厚さは約0.001インチから約0.5インチが好ましく、約0.008インチから約0.15インチが更に好ましい。図1は、吸収性物品10の断面図であり、本発明の液体分配層の使用例を提供している。吸収性物品10は透液性の上張り層12、液体分配層14、吸収性コア、即ち本体16および不透液性層18を含む。液体分配層は吸収性コア16と上張り12の両方に緊結している。液体分配層14は、入ってくる液体体液を、xおよびyの平面方向、繊維配向の方向にほぼ沿っている、だけでなく、z方向、即ち層の深さ方向にも分配し、それによって、吸収性コア16の能力を更にかつ効果的に活用する。図1は、吸収性コア12の上に置かれた液体分配層の配置を示しているが、吸収性物品の別のデザインや機能の特徴を付与するために液体分配層を吸収性コアの下に置いてもよいし、吸収性コアの上にも底にも両方に置くことができるし、また、吸収性物質の2つの層の間に置いてもよい。上張り12は、上に加えられて液体を素早く取り込んで、その液体を液体分配層14の上に送るように設計されている。上張り層12は不織布でも織布でもよく、また孔開きフィルムでも孔開き不織布でもよくまたは液体を素早く送ることで知られている比較的多孔質物質ならいずれでもよい。裏打ち層18は、吸収性コア16によって吸収された液体が吸収性物品の外側に移動しないようにすることができるような望ましい不透液性物質ならいずれでもよい。裏打ち層は通気性があってもよい。適当な物質の例はポリエチレンフィルムのような熱可塑性フィルムである。吸収性コア16は、天然有機物例えば、セルロース質フラッフ、寒天、ペクチンおよびグアールゴム、合成ヒドロゲルポリマー、例えばカルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸の金属塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリレート等、並びにそれらの混合物を含む業界では公知の液体超吸収性物質のいずれかから作ってもよい。」
「【0019】本発明の液体分配層は吸収性物品、例えばおむつ、生理用ナプキン、トレーニングパンツ、失禁者用製品、けが人用包帯等として極めて有用である。本発明の液体分配層は吸収性物品の使い勝手を更に良くし、かつ物理的完全性および寸法安定性を付与しながら、吸収性物品の使用期間が短か過ぎないようにしている。本発明を次の実施例で更に詳しく説明する。実施例は決して本発明の範囲を限定しようとするためのものではない。例各試験片の指向性の液体移動性能を液体移動試験(LTT)によって決定した。各試験片を幅2インチ長さ7インチの帯状物に切断して計量した。その帯状物の1端の2インチを平坦な試験台の上に置いて、木材フラッフと水性コロイドとの重量で50/50の混合物を含む2インチ立方の吸収性剤を試験台上にある帯状物の全体に載せて0.25psiの圧縮力をこの吸収性剤にかけた。リザーバーの高さは、試験台の上端部と、人工血液銀行の0.9%の塩化ナトリウムかん水の入ったリザーバーの頂上面との距離が4インチになるように調節して、帯状試験片の残部はリザーバーの中に垂直におろして帯状試験片の1インチをかん水の中に浸した。かん水が吸収性剤へ垂直に移動するように60分間、試験片をそのまま静置した。各試験片の性能は最初の試験片の重量に対するリザーバーから移動したかん水溶液の重量比で表した。」
「【図1】
[図:0001416943000001.jpg]
」
イ 引用発明
引用文献1の【図1】によると、吸収性物品10が上張り層12と不透液性層18の縁が閉じられていること、及び不透液性層18が吸収性コア16の下に隣接していることが理解できる。
そうすると、上記アから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「透液性の上張り層12、液体分配層14、吸収性コア16および不透液性層18を含む吸収性物品10であって、
液体分配層14は吸収性コア16と上張り層12の両方に緊結しており、
液体分配層14は、入ってくる液体体液を、xおよびyの平面方向、繊維配向の方向にほぼ沿っており、z方向、即ち層の深さ方向にも分配し、それによって、吸収性コア16の能力を更にかつ効果的に活用し、
上張り層12は、上に加えられて液体を素早く取り込んで、その液体を液体分配層14の上に送るように設計され、
不透液性層18が吸収性コア16の下に隣接しており、
上張り層12と不透液性層18の縁が閉じられている、吸収性物品10。」
(2) 引用文献2
ア 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、次の事項が記載されている(翻訳は当審による)。
「本発明は、複合創傷被覆材に関し、特に、カーボンクロス及び超吸収性材料の層を含む複合創傷被覆材に関する。」(明細書1ページ3~5行)
「しかし、創傷被覆材の一般的な要件は、創傷滲出液が吸収され、細菌および他の感染源が創傷から効率的に除去されることである。
特に慢性創傷の治療においては、患者の快適さと自信を向上させるために、臭気の原因となる分子を除去することがさらに重要である。活性炭布は、抗菌特性を示すだけでなく、過剰な創傷滲出液の除去と臭気の原因となる分子の吸着に効果的であることが判明しており、これらの理由から創傷被覆材に使用されている。カーボンクロスには、その耐久性と柔軟性に優れた構造により、患者に合わせて簡単に曲がり、動き、構造が劣化することなく数日間着用できるという追加の利点がある。活性炭布は、慢性創傷、例えば褥瘡、褥瘡、脚潰瘍、MRSA、植皮、火傷、感染した切り傷、外科的創傷などの治療に特に使用される。」(明細書1ページ12~24行)
「活性炭生地は、柔軟な微多孔性の生地の形をした活性炭である。」(明細書4ページ9行)
「いくつかの実施形態では、カーボンクロスの層は創傷接触層を形成する。」(明細書5ページ6行)
「創傷治癒を補助又は促進することが知られている追加の薬剤も、創傷被覆材に含ませることができる。
例えば、被覆材には、抗菌剤、防腐剤、抗真菌剤及び/又は抗炎症剤も含まれていてもよく、そのような薬剤は、カーボンクロス、超吸収性材料、又は追加の吸収性材料(存在する場合)のいずれかに組み込まれてもよい。)。」(明細書8ページ8~12行)
「図1
[図:0001416943000002.jpg]
」
イ 引用文献2記載事項
上記アから、引用文献2には、次の事項が記載されていと認められる。
「創傷被覆材及び超吸収性材料の層を含む複合創傷被覆材であって、創傷被覆材は、活性炭からなる活性炭布が使用され、創傷接触層を形成し、創傷治癒を補助又は促進することが知られている追加の薬剤を含ませた、複合創傷被覆材。」(以下「引用文献2記載事項」という。)
(3) 周知技術
ア 引用文献3
引用文献3には次の事項が記載されている。
「【0047】
物品は、接触層と近位吸収層との間に、少なくとも1つの第1の分配層を含んでいて良い。
【0048】
実際に、液体にとっては、可能な限り良好に分配されることが好ましい。それによって、液体が、物品と接触している皮膚、創傷又は粘膜に向かって逆流することを防止する一方で、近位吸収層により多くの液体を貯蔵することを可能にするためである。」
イ 引用文献4
引用文献4には次の事項が記載されている。
「【0023】
分配層62は、獲得層60から体液(尿、経血など)を吸収することにより体液が獲得層60から着用者の身体に戻らないようにするか、又は少なくとも体液が戻るのを低減するために、獲得層60の下に設けられてもよい。分配層62は、好ましくは、体液の大部分を吸収性物品のトップシートなどの下地層に移動させることができる。体液を着用者の皮膚から更に移動させて離すために、別の獲得層が分配層62の下に設けられてもよい。分配層材料はある一定の親水性を呈するのが望ましい。しかしながら、これは必ずしも、これらが完全に親水性(つまり、水の湿潤角がほぼゼロであること)でなければならないことも、この親水性が全ての領域の全ての表面にわたって均一でなければならないことも意味するものではない。親水性は、セルロース性繊維を使用する時などは親水性ベース材料から、又は樹脂を配合された若しくは表面に塗布された界面活性剤と主に比較的疎水性であるポリマー材料から開始することにより達成することができる。あるいは、分配材料そのものは、例えば疎水性材料を含むウェブを形成した後に、それ自体が更に親水化され得、これは、界面活性剤の添加により親水性にされ得る。」
ウ 特開2008-68090号公報(以下「引用文献5」という。)
新たに引用する引用文献5には次の事項が記載されている。
「【0062】
本開示の包帯材料包帯材料中の医薬薬剤として含められ得るその他の抗微生物薬剤は以下を含む:局所麻酔剤;副交感神経作用剤;トランキライザー;スルホンアミド;ビタミン;抗マラリア薬剤;抗片頭痛剤;L-dopaのような抗パーキンソン病薬剤;抗痙攣薬;抗コリン作用剤(例えば、オキシブチリン);冠状動脈拡張薬およびニトログリセリンのような心臓血管薬剤;アルカロイド;鎮痛剤;コデイン、ジヒドロコデイノン、メペルジン、モルヒネなどのような麻薬;サリチレート、アスピリン、アセタミノフェン、d-プロポキシフェンなどのような非麻薬;ナルトレキソンおよびナロキソンのようなオピオイドレセプターアンタゴニスト;抗癌剤;抗痙攣薬;抗嘔吐薬;抗ヒスタミン剤;ホルモン薬剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニソン、非ホルモン薬剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなどのような抗炎症剤;プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬物;エストロゲン;抗細菌剤;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固剤;抗痙攣薬;抗うつ剤;免疫学的薬剤;ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン、副腎皮質ホルモンおよび黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH));ワクチン(例えば、腫瘍、細菌およびウイルス抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;成長因子(例えば、神経成長因子、インシュリン様成長因子);タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニスト、およびタンパク質アゴニスト;アンチセンス分子、DNAおよびRNAのような核酸;オリゴヌクレオチド;およびリボザイム。上で注記したように、実施形態では、医薬薬剤の組み合わせが用いられ得る。
・・・
【0064】
医薬薬剤は、本開示の包帯材料を形成するために利用される任意の層中に取り込まれ得るか、またはそれに付与され得、実施形態では、これら医薬薬剤は、患者の皮膚と接触するような層および/または構成要素に付与され得る。このような層は、例えば、制限されないで、親水性層、それに、および/または疎水性層の周縁に付与される接着層、ならびに親水層の表面の平面またはその周縁に含められるか、または別個の吸収層として親水性層に付与される任意の吸収材料を含む。」
エ 特表2014-525291号公報(以下「引用文献6」という。)
新たに引用する引用文献6には次の事項が記載されている。
「【0018】
他の実施形態においては、活性炭を含む層の中に治療に有効な薬剤が含められうる。前記の備えつけられた治療に有効な薬剤は、材料の穴の容積内に前もって吸着されても良く、また、後に起こる前記材料からの薬剤の放出は、制御されても良い。そのような実施形態においては、前記の治療に有効な薬剤の放出は、前記材料に電流を加えることによって制御されうる。適切な治療に有効な薬剤の例は、抗生剤、抗微生物剤、スルフォンアミド、消毒薬、鎮痛薬、または麻酔薬と、浸透性コロイド、プロテアーゼ阻害剤、タンパク質分解酵素、成長因子、ステロイド系または非ステロイド系抗炎症薬、栄養剤、抗酸化剤、及びその類似物などの治癒を促進するために用いられる他の薬剤及び物質と、治療に有効な薬剤の任意の組み合わせとを含みうる。実施形態に有用でありうる特定の有効な薬剤の例は、アクリゾルシン、ハロプロジン、ヨードクロルヒドロキシキン、トルナフテート、トリアセチン、ツボクサ、硝酸エコナゾール、マフェナイド、ムピロシン、ポビドンヨード、クロルヘキシジン、スルファジアジン銀、ポビドンヨード、銀塩、トリクロサン、スクラルフェート、四級アンモニウム塩、テトラサイクリン、ペニシリン、テラマイシン、エリスロマイシン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリマイシンB、ムピロシン、クリンダマイシン、及びそれらの任意の混合物を含みうるが、これに限定されない。」
オ 周知技術
引用文献3、4の記載(上記ア、イ)から、次の事項は周知技術であると認められる。
「吸収性物品において、接触層と吸収層との間に分配層を設けることで、吸収層から接触層への液体の逆流が防止されること。」(以下「周知技術1」という。)
2 対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「吸収性コア16」は本願発明の「液体吸収材料層」に相当し、同様に「不透液性層18」は「液体不透過性の外層」に相当する。
引用発明の「上張り層12」は、体に接触する層であることは自明であるから、本願発明の「創傷接触層」と、接触層の限りで一致する。
引用発明の「入ってくる液体体液を、xおよびyの平面方向、繊維配向の方向にほぼ沿っており、z方向、即ち層の深さ方向にも分配し、それによって、吸収性コア16の能力を更にかつ効果的に活用」する「液体分配層14」と、本願発明の「前記液体吸収材料層への創傷浸出液の通過を可能にし、かつ、前記創傷浸出液が前記創傷接触層に逆流するのを防ぐものである」「バリア材料層」とは、液体吸収材料層への液の通過を可能にする通過材料層の限りで一致する。
引用発明の「吸収性物品10」は、本願発明の「複合創傷被覆材」と、複合吸収性物品の限りで一致する。
引用発明の「透液性の上張り層12、液体分配層14、吸収性コア16および不透液性層18を含」み、「液体分配層14は吸収性コア16と上張り層12の両方に緊結しており」、「上張り層12は、上に加えられて液体を素早く取り込んで、その液体を液体分配層14の上に送るように設計され、不透液性層18が吸収性コア16の下に隣接して」いる「吸収性物品10」は、本願発明の「創傷接触層と、前記創傷接触層の創傷とは反対側に隣接するバリア材料層と、前記バリア材料層の創傷とは反対側に隣接する液体吸収材料層と、前記液体吸収材料層の創傷とは反対側に隣接する液体不透過性の外層と」「を有」する「複合創傷被覆材」と、接触層と、前記接触層の体とは反対側に隣接する通過材料層と、前記通過材料層の体とは反対側に隣接する液体吸収材料層と、前記液体吸収材料層の体とは反対側に隣接する液体不透過性の外層とを有する複合吸収性物品の限りで一致する。
以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1]
「複合吸収性物品であって、
接触層と、
前記接触層の体とは反対側に隣接する通過材料層と、
前記通過材料層の体とは反対側に隣接する液体吸収材料層と、
前記液体吸収材料層の体とは反対側に隣接する液体不透過性の外層と、
を有し、
前記通過材料層は、前記液体吸収材料層への液の通過を可能にするものである、複合吸収性物品。」
[相違点1]
接触層と、前記接触層の体とは反対側に隣接する通過材料層と、前記通過材料層の体とは反対側に隣接する液体吸収材料層と、前記液体吸収材料層の体とは反対側に隣接する液体不透過性の外層とを有する複合吸収性物品に関して、本願発明は接触層が「創傷接触層」である「複合創傷被覆材」であるのに対して、引用発明は接触層が「上張り層12」である「吸収性物品10」であり、創傷を被覆するものとは特定していない点。
[相違点2]
接触層に関して、本願発明は「活性炭材料および治療活性剤を含」み、「前記治療活性剤は、鎮痛剤、麻酔剤、浸透性コロイド、プロテアーゼ阻害剤、タンパク質分解酵素、成長因子、栄養素、またはそれらの組み合わせの一つを含むものである」「創傷接触層」であるのに対して、引用発明は「上張り層12」であって、活性炭材料および治療活性剤を含まない点。
[相違点3]
液体吸収材料層への液の通過を可能にする通過材料層に関して、本願発明は「前記液体吸収材料層への創傷浸出液の通過を可能にし、かつ、前記創傷浸出液が前記創傷接触層に逆流するのを防ぐものである」「バリア材料層」であるのに対して、引用発明は「入ってくる液体体液を、xおよびyの平面方向、繊維配向の方向にほぼ沿っており、z方向、即ち層の深さ方向にも分配し、それによって、吸収性コア16の能力を更にかつ効果的に活用」する「液体分配層14」である点。
[相違点4]
本願発明は「前記液体不透過性の外層および前記バリア材料層の一部を前記創傷接触層に実質的に接着させる接着部であって、前記接着部は前記複合創傷被覆材の未接着層の密封パウチを形成し、前記液体吸収材料層を封入する、前記接着部」を有するのに対して、引用発明はそのような「接着部」を有しない点。
3 判断
(1) 相違点1、相違点2について
相違点2が創傷接触層に関するものであるから、相違点1と関連しており、相違点1と相違点2とをまとめて検討する。
引用文献1の【0001】には、吸収性物品の用途として「けが人用包帯」が例示されている。ここで、引用文献1の【0005】には、発明が解決しようとする課題として「本発明は、指向性のある高度な毛細管的動き、および重力に抗してでも液体を吸い上げる作用を付与することによって、吸収性物品の中の遠い領域まで、入って来る液体源から遠く離れてその液体を素早く移動できる寸法的にも安定な液体分配層を提供することを課題とする。」と記載されていることからも判断できるとおり、引用発明の吸収性物品10は、液体源から上張り層12に液体が入ってくる構成を想定しているものであり、通常の「けが」における患部からの液体の滲出の態様を考慮すると、「けが人用包帯」が例示されている引用発明の吸収性物品10を「けが」の患部に直接当接させることは引用文献1に記載されているに等しい事項といえる。そして、本願発明の「創傷接触層」が本願明細書の【0025】に記載されている「創傷」に対して接触する接触層であることを鑑みると、けがの患部に直接当接する、引用発明の「上張り層12」は「創傷接触層」にほかならず、相違点1は実質的な相違点ではない。
ここで、引用文献2記載事項は、本願発明の記載に沿って表現すれば、創傷接触層が活性炭材料および治療活性剤を含む創傷接触層と、液体吸収材料層とを有する、複合創傷被覆材といえる。
そして、引用発明と引用文献2記載事項とは、いずれも患部(創傷)に直接当接する接触層と液体吸収材料層とを有する複合被覆材に関するものであり、引用発明に引用文献2記載事項を組み合わせる動機付けは十分存在するものである。そして、引用文献1の上記【0001】の記載、【0005】の発明が解決しようとする課題の記載及び【0019】の記載を含め、引用文献1の記載全体を参酌しても、引用文献2記載事項を引用発明に適用することを阻害する事情があるとも認められない。
そうすると、引用発明に引用文献2記載事項を適用し、引用発明の「上張り層12」を、引用文献2記載事項の活性炭材料および治療活性剤を含む創傷接触層とすることは、当業者が容易になし得たことである。その際、治療活性剤として、引用文献5(上記1(3)ウ)や引用文献6(上記1(3)エ)に記載された周知のものを採用して、相違点2に係る本願発明の構成とすることに格別の困難性はない。
なお、令和6年5月20に提出された意見書において、請求人は、引用文献1には、上張り層が治療活性剤を含むことも、治療活性剤が鎮痛剤、麻酔剤、浸透性コロイド、プロテアーゼ阻害剤、タンパク質分解酵素、成長因子、栄養素、またはそれらの組み合わせの一つを含むものであることについても開示も示唆もされておらず、また、引用文献2には、鎮痛剤、麻酔剤、浸透性コロイド、プロテアーゼ阻害剤、タンパク質分解酵素、成長因子、栄養素、またはそれらの組み合わせの一つを含むものであると特定された治療活性剤を含むことについては開示も示唆もされていないため、引用文献1と引用文献2の開示内容を組み合わせても、本願発明を構成し得ない旨主張している。
しかしながら、当該主張については上記のとおりであり、採用することはできない。
(2) 相違点3について
引用発明の「液体分配層14」は、「入ってくる液体体液を、xおよびyの平面方向、繊維配向の方向にほぼ沿っており、z方向、即ち層の深さ方向にも分配し、それによって、吸収性コア16の能力を更にかつ効果的に活用」するもの、すなわち、入ってくる液体を平面方向及び深さ方向に分散しつつ、吸収性コア16への液体の通過を可能にするものである。
また、周知技術1は、接触層と吸収層との間に分配層を設けることで、吸収層から接触層への液体の逆流が防止されることであるところ、引用発明は、接触層である「上張り層12」と「吸収性コア16」との間に「液体分配層14」が設けられるものであるから、層構成は周知技術1の層構成と共通するものであり、すなわち、当該周知技術1を踏まえると、「液体分配層14」は、吸収性コア16への液体の通過を可能とし、かつ、液体が上張り層12に逆流するのを防ぐものである。
そうすると、相違点3は実質的な相違点ではない。
(3) 相違点4について
引用発明の「吸収性コア16」の密閉をどのように行うかは当業者が適宜決め得ることである。引用発明において引用文献2の図3の構成を参考にして、相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
(4) 効果について
上記相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
4 小括
よって、本願発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-015185