特許拒絶査定不服審判
2022-015098
タッチパネルデバイス、及びタッチパネル
- 審判番号
- 2022-015098
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-026217外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月22日
- 審決日
- 2023年06月19日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】東洋インキSCホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】家入 健
- 【請求人代理人】秦 恵子
- 【請求人】トーヨーケム株式会社
- 【請求人代理人】家入 健
- 【請求人代理人】秦 恵子
- 分類
- P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018- 26217「タッチパネルデバイス、及びタッチパネル」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月29日出願公開、特開2019-144681、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月16日の出願であって、令和3年11月2日付けで拒絶理由通知がされ、令和4年3月1日に意見書が提出されると同時に手続補正がされたたが、令和4年6月30日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和4年9月22日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和5年3月13日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、令和5年5月10日付けで手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和4年6月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)
本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明、および、引用文献Bに記載された技術事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.国際公開第2017/170795号
B.特開2017-065217号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、および、引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.国際公開第2017/170795号(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2017-207596号公報(新たに引用された文献)
第4 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、令和5年5月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
第一の可撓性基材上に、透明導電層と、保護膜と、粘着層と、第二の可撓性基材とをこの順に有し、
前記保護膜の厚みが、0.2μm以上50μm以下であり、
前記粘着層の厚みが、2μm以上95μm以下であり、
前記保護膜と前記粘着層との厚さの合計が100μm未満であり、
前記保護膜が、引張速度0.01mm/秒での引張弾性率が400MPa以上4000MPa以下、かつ、2%延伸したときの引張応力が15MPa以上60MPa以下であり、
前記粘着層が、貯蔵弾性率0.01~0.05MPaであり、
前記粘着層が、水酸基を有するアクリル系重合体(C)と、ポリイソシアネート系硬化剤(D)とを含有するアクリル系粘着剤層である、タッチパネルデバイス。
【請求項2】
前記粘着層は、前記保護膜よりも厚みが大きい、請求項1に記載のタッチパネルデバイス。
【請求項3】
前記保護膜が環構造を有する樹脂を含む、請求項1又は2に記載のタッチパネルデバイス。
【請求項4】
請求項1~3いずれか一項に記載のタッチパネルデバイスを備える、タッチパネル。」
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
当審拒絶理由に引用された引用文献1(原査定の「引用文献A」)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同様。)
ア 段落[0003]-[0018]
「[0003] 上述した電子部品の保護膜の構成材料として、特許文献1には、環構造を有さないアクリル樹脂、光重合性化合物、および光重合開始剤を含む樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、シリカ微粒子、カップリング剤、アルカリ可溶性樹脂、および2官能以上の多官能メタアクリレート化合物を含有する樹脂組成物が開示されている。
先行技術文献
特許文献
[0004]特許文献1:WO2013/084875号
特許文献2:特開2014-157265号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0005] しかしながら、これらの従来の樹脂組成物を用いた保護膜は、可撓性および屈曲性が低いため、曲げ等の応力を加えると割れ(クラック)が発生する。例えば、かかる保護膜で透明電極を保護する場合に、抵抗値が上昇する問題があった。また、透明性が低いという問題や、基材や配線に対する密着性が低いという問題もあった。さらに、かかる保護膜をタッチパネル用途に用いた場合に、人が指で保護膜に繰り返し触れるため、汗に耐え得る適性が必要になる(以下、汗耐性という)が、従来の保護膜では適性が不十分であった。
[0006] 本発明は、優れた屈曲性、透明性、汗耐性を有し、基材、機能層および配線との高い密着性を長期間にわたって維持することができるとともに、屈曲後に抵抗値が上昇し難い保護膜を形成できる樹脂組成物およびかかる樹脂組成物を用いた電子素子(例えば、ディスプレイ、配線板等)の提供を目的とする。
・・・(中略)・・・
[0010] 本発明の樹脂組成物は、ガラス転移温度(以下、Tgという)-30~170℃、かつ数平均分子量(以下、Mnという)1,000~140,000で環構造を有する樹脂(A)と、反応性化合物(B)とを含む。 本発明の樹脂組成物は、所定のTg、Mnおよび環構造を有する樹脂(A)と反応性化合物(B)とを含んでいる。電子素子に用いる保護膜の構成成分として上記樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決することができる。
[0011] 本発明の樹脂組成物は、各種電子部品等の絶縁性保護膜の構成材料として使用される絶縁性樹脂組成物である。かかる樹脂組成物の硬化被膜が、適度な引張弾性率を有し、かつ延伸時に適度な引張応力を有することで、基材等との高い密着性を有するとともに、屈曲後にクラックが発生し難い効果が得られる。また、硬化被膜と対象物との密着性を長期間にわたって維持することができる。
かかる樹脂組成物は、例えば、ディスプレイを構成する様々な部材に使用される機能層や、電子素子の信号配線等を保護する保護膜として使用することが好ましい。かかる保護膜は、機能層を有する基材、機能層および配線(特に、透明電極)との密着性に優れている。また、かかる保護膜を透明電極(透明導電膜ともいう)の保護に使用することにより、屈曲後に抵抗値の上昇を抑制できるという予想外の効果が得られる。また、かかる保護膜は、透明性、汗耐性、および高い水蒸気バリア性を有するという効果を有する。さらに、かかる保護膜をバリア層の保護に使用することにより屈曲後に水蒸気バリア性の低下を抑制できるという予想外の効果が得られる。なお、配線は、金属配線、透明電極層(ITO)、金属メッシュ(金属合金を含む)、銀ナノワイヤー層(銀ナノワイヤーと樹脂を含む)、導電ナノファイバー分散層(例えば、カーボンナノチューブと樹脂、またはカーボンナノファイバーと樹脂を含む)等を含む。
[0012] 上記の本発明によれば、樹脂組成物の硬化被膜が、適度な引張弾性率を有し、かつ延伸時に適度な引張応力を有することで、基材等との高い密着性を有するとともに、屈曲後にクラックが発生し難い効果が得られる。また、硬化被膜と対象物との密着性を長期間にわたって維持することができる。
・・・(中略)・・・
[0017] また樹脂(A)は、環構造を有している。環構造とは、炭素のみから構成される芳香環および脂肪族環、ならびに炭素以外の原子を含む複素環が挙げられる。樹脂(A)において、環構造の位置する部位は、樹脂(A)の主鎖、樹脂(A)の側鎖、または樹脂(A)の主鎖および側鎖に有する態様が挙げられる。
環構造を有する樹脂(A)を用いることにより、基材、機能層および配線に対する密着性が向上するとともに、汗耐性が向上する。また、芳香環を有する樹脂(A)を用いた場合には、人の汗の塩分濃度よりも高い塩分濃度の海水に対しても耐性(以下、塩水耐性という)を有する保護膜(硬化被膜)を得ることができる。これにより、例えば、塩害に遭いやすい沿岸部での使用や、海水がかかる可能性がある海上でも好ましく使用できる電子素子が得られる。
[0018] また、樹脂(A)が環構造を有することで、水蒸気が硬化被膜を透過することを抑制できるため、湿熱経時後に機能層との密着性が低下し難いという効果が得られる。」
イ 段落[0089]-[0095]
「[0089] 本発明の樹脂組成物を用いて形成される保護膜は、以下のようにして形成することができる。例えば、本発明の樹脂組成物をディスプレイの内部に搭載される電子部品の機能層上に印刷(または塗工)し、加熱または光照射(例えば、紫外線照射)することにより硬化した保護膜を形成することが好ましい。また、例えば、本発明の樹脂組成物を太陽電池内部に搭載される透明電極の機能層を保護するために上記と同様にして保護膜を形成できる。保護膜(乾燥被膜)は、機能層の劣化、破断等を防止できる。
[0090] 樹脂組成物から形成した硬化被膜は、引張速度0.01mm/秒での引張弾性率が400~4000MPaであることが好ましく、600MPa以上がより好ましい。
[0091] さらに前記硬化被膜は、2%延伸した時の引張応力が15~60MPaであることが好ましく、20MPa以上がより好ましい。
硬化被膜が所定の引張弾性率および所定の引張応力を同時に満たすと、適度な強靭さと柔軟さを併せ持つ硬化被膜が得られる。これにより保護膜の密着性、耐湿熱性、および屈曲性がより向上する。
・・・(中略)・・・
[0095] 樹脂組成物から形成した硬化被膜の30℃における貯蔵弾性率は、700~3000MPaであることが好ましく、1000MPa以上がより好ましい。貯蔵弾性率が700MPa以上では、適度な強靭さと柔軟さを併せ持つ硬化被膜が得られる。これにより保護膜の密着性、耐湿熱性、および屈曲性がより向上する。」
ウ [図1]
「
[図:0001399165000001.jpg]
」
エ 段落[0099]-[0105]
「[0099] <透明電極層>
次に、機能層としての透明電極層を本発明の樹脂組成物により形成された保護膜で被覆した構成について説明する。
実施態様の1つとして、タッチパネルディスプレイ内に搭載される透明電極層を保護する態様について図1に基づいて説明する。なお、透明電極層を含む態様が下記に限定されないことはいうまでもない。
図1によると、基材11、IM層12、透明電極層13、保護膜14、透明電極層13、保護膜14、粘着層15、基材11を順次積層した態様が挙げられる。
基材11の構成材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、およびガラスが挙げられる。
・・・(中略)・・・
[0102] 透明電極層13の厚みは、通常5nm~100000nm程度である。例えばITOの場合、5~500nm程度である。
[0103] 保護膜14は、上述した本発明の樹脂組成物から形成した硬化被膜である。保護膜14の厚みは、通常3~30μmが好ましく、4~10μmがより好ましい。硬化被膜の厚みが3μm以上になると、機能層の保護機能が向上し屈曲性がより向上する。また保護膜14の厚みが30μm以下になると、生産性の向上やコストダウンを図ることができるとともに、透明性がより向上する。また前記硬化被膜上に、他の樹脂(A)を用いた樹脂組成物から形成される第二の保護膜を備えることも好ましい。異なる特性(引張弾性率、引張応力等)を有する2種類の保護膜14を用いることにより、屈曲性がさらに向上する。
・・・(中略)・・・
[0105] 粘着層15としては、例えばアクリル粘着剤、ウレタン粘着剤、ポリエステル粘着剤、シリコーン粘着剤、ゴム系粘着剤が挙げられる。粘着層15の厚みは、10~300μm程度である。」
オ 段落[0158]
「[0158] <抵抗値>
屈曲性試験を行い試験前後の抵抗値の変化を評価した。図6(a)平面図、(b)側面図を元に試料の作製方法を説明する。ITO積層フィルム51上に市販導電性ペースト(REXALPHA RA FS074、トーヨーケム社製)を乾燥後の膜厚が5μmになるようにスクリーン印刷を行い、縦15mm×横3.5mmの抵抗値測定用端子部52-1および抵抗値測定用端子部52-2を75mmの間隔を空けて形成し、135℃オーブンにて30分乾燥を行い、硬化させた。次いでITO積層フィルム51上に得られた樹脂組成物を乾燥後の膜厚が7μmになるようにスクリーン印刷を行い、縦15mm×横70mmの保護膜53を形成した。次いで130℃オーブンにて30分間乾燥を行い、硬化させて試験シート3を作製した。
なおITO層に直接、テスターで端子を当てて抵抗値を測定すると、ITO層が傷つき正確な抵抗値が測定できないため、銀ペーストでITO上に抵抗値測定用端子部を形成して、そこにテスターを当てて抵抗値を測定した。」
(2) 引用発明
よって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。
「優れた屈曲性、透明性を有し、屈曲後に抵抗値が上昇し難い保護膜を形成できる樹脂組成物を用いた電子素子(例えば、ディスプレイ、配線板等)の提供を目的とし、
樹脂組成物は、環構造を有する樹脂(A)を含み、
樹脂組成物から形成した硬化被膜は、引張速度0.01mm/秒での引張弾性率が400~4000MPaであることが好ましく、
さらに前記硬化被膜は、2%延伸した時の引張応力が15~60MPaであることが好ましく、
樹脂組成物から形成した硬化被膜の30℃における貯蔵弾性率は、700~3000MPaであることが好ましく、
タッチパネルディスプレイ内に搭載される透明電極層を保護する、基材11、IM層12、透明電極層13、保護膜14、透明電極層13、保護膜14、粘着層15、基材11を順次積層した態様において、
基材11の構成材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられ、
保護膜14は、上述した樹脂組成物から形成した硬化被膜であり、保護膜14の厚みは、通常3~30μmが好ましく、4~10μmがより好ましく、
粘着層15としては、例えばアクリル粘着剤が挙げられ、粘着層15の厚みは、10~300μm程度である、
タッチパネルディスプレイ。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2記載事項
当審拒絶理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 段落【0005】-【0006】
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、耐折性に優れ、屈曲可能または折りたたみ可能な有機EL表示装置にも好適に適用され得る光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光学積層体は、基材と、基材の少なくとも片側に配置される偏光子とを備え、該基材と該偏光子との層間剥離力が、0.5N/15mm以上であり、曲率半径2mmで10万回屈曲させた後において、該基材/該偏光子間での層間剥離がなく、かつ、該偏光子の破断およびクラックがない。
1つの実施形態においては、本発明の光学積層体は、25℃における引っ張り弾性率が、1.5GPa以上である。
1つの実施形態においては、上記基材と上記偏光子とが、接着剤層を介して積層されている。
1つの実施形態においては、本発明の光学積層体は、有機EL表示装置の反射防止フィルムとして用いられる。
本発明の別の局面によれば、有機EL表示装置が提供される。この有機EL表示装置は、上記光学積層体を備える。」
イ 段落【0016】
「【0016】
図2は、本発明の別の実施形態による光学積層体の概略断面図である。本実施形態の光学積層体101は、偏光子20の基材10とは反対側に、光学補償層30をさらに備える。1つの実施形態においては、光学補償層30と偏光子20との積層体が円偏光板として機能する。光学補償層30の偏光子20と反対側に導電層(図示せず)が設けられてもよい。このような導電層を設けることにより、光学積層体は、表示セル(有機ELセル)と偏光子との間にタッチセンサが組み込まれた、いわゆるインナータッチパネル型入力表示装置に適用され得る。光学積層体の周縁部(より具体的には、有機EL表示装置のベゼルに対応する位置)に印刷層(図示せず)が形成されてもよい。印刷層は、基材10の偏光子20側(実質的には、樹脂フィルム12の偏光子20側)に形成されてもよく、光学補償層30の偏光子20と反対側に形成されてもよい。印刷層が光学補償層30の偏光子20と反対側に形成され、かつ、導電層および印刷層の両方が形成される場合には、代表的には、光学補償層と導電層との間に印刷層が形成され得る。」
ウ 段落【0109】-【0118】
「【0109】
H.粘着剤層または接着剤層
本発明の光学積層体を構成する各層の積層には、任意の適切な粘着剤層または接着剤層が用いられる。
【0110】
好ましくは、基材と偏光子とは、接着剤層を介して積層される。接着剤層の種類、弾性率および/または厚さを適切に選択することにより、基材と偏光子との層間剥離力を所望の値とすることができる。
・・・(中略)・・・
【0115】
基材と偏光子との積層以外の積層には、上記接着剤層または粘着剤層が用いられ得る。
【0116】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。透明性、加工性、耐久性などの点から、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0117】
粘着剤層の厚みは、代表的には10μm~250μmであり、好ましくは10μm~150μmである。粘着剤層は、単一層であってもよく、積層構造を有していてもよい。
【0118】
粘着剤層の貯蔵弾性率(G’)は、25℃において、好ましくは0.01MPa~1.00MPaであり、より好ましくは0.05MPa~0.50MPaである。粘着剤層の貯蔵弾性率がこのような範囲であれば、非常に優れた屈曲性を有する光学積層体が得られ得る。結果として、屈曲可能または折りたたみ可能な有機EL表示装置を実現することができる。」
3 引用文献Bについて
(1)引用文献B記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Bには、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 段落【0023】-【0026】
「【0023】
1.積層体
本発明の積層体の構成について図1を用いて説明する。本発明の積層体1は、可撓性基材4と透明導電層3を有する透明導電性フィルム5、当該透明導電性フィルム5の透明導電層3上に形成された粘着剤層2を含む構成をしている。また、前記粘着剤層2の貯蔵弾性率が0.1~0.4MPaであることを特徴とするものであり、本発明の積層体1は、屈曲している被着体又は屈曲可能な被着体に適用される。ここで、屈曲している被着体又は屈曲可能な被着体とは、例えば、湾曲状の被着体や、折り曲げられた被着体等の屈曲している形状で固定されている被着体や、使用中に折ったり曲げたりしてその形状を変化させて使用することができる等の屈曲可能な被着体を意味する。すなわち、本発明の積層体自身も、屈曲している形態や、使用中に屈曲させてその形状を変化させる形態とすることができる。従って、本発明の積層体の形状は特に限定されるものではないが、例えば、曲面形状の被着体に適応させるために、曲面形状を有する形状であってもよい。
【0024】
以下、本発明の積層体の各構成について説明する。
【0025】
(1)粘着剤層
本発明で用いる粘着剤層は、貯蔵弾性率が0.10~0.4MPaであり、0.15~0.35MPaであることが好ましく、0.20~0.30MPaであることがより好ましい。本発明で用いる粘着剤層の貯蔵弾性率が前記範囲であることで、本発明の積層体に非常に高い屈曲耐性を付与することができ、かつ、屈曲試験後においても粘着剤層に浮きや剥がれが発生せず、接着性能にも優れるものである。ここで、非常に高い屈曲耐性とは、例えば、屈曲直径が約3mm程度で10,000回以上屈曲試験を行った後でも透明導電膜の抵抗値の上昇率を抑えることができるものである。具体的には、本明細書の実施例に記載されている抵抗値変化率試験において、10,000回の屈曲試験を行った後でも、屈曲前の抵抗値の1.1倍以下の抵抗値となることをいう。ここで、屈曲直径とは、屈曲試験において積層体が円弧状に屈曲されたときに、該屈曲された積層体の内周を形成する直径のことを言い、具体的には、実施例の屈曲試験で使用する金属棒の直径をいう。
【0026】
本発明で用いる粘着剤層は、前記貯蔵弾性率を有するものであればよく、その組成は特に限定されないが、ベースポリマーを含む粘着剤組成物から形成されるものを挙げることができる。当該粘着剤組成物は、アクリル系、合成ゴム系、ゴム系、ウレタン系、シリコーン系等の粘着剤等とすることができるが、透明性、耐熱性等の観点から、(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。」
イ 段落【0075】
「【0075】
前記粘着剤組成物から形成される粘着剤層の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、5~250μm程度であることが好ましく、10~150μm程度であることがより好ましい。粘着剤層の厚みが前記範囲であることで、屈曲性、薄型設計、および密着性を満たすことができるため好ましい。」
ウ 段落【0106】-【0108】
「【0106】
2.タッチパネル
本発明のタッチパネルは、前記積層体を含むことを特徴とする。前記積層体の透明導電層がパターニングされている場合に、タッチパネル用電極板として好ましく用いることができる。タッチパネルとしては、静電容量方式、抵抗膜方式等の各種方式に適用できるが、静電容量方式のタッチパネルの入力装置の電極基板に好適に用いられる。
【0107】
静電容量方式のタッチパネルは、通常、所定のパターン形状を有する透明導電層を備えた積層体がディスプレイ表示部の全面に形成されている。
【0108】
本発明のタッチパネルは、屈曲耐性に優れており、曲面形状を有するディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、ベンダブルディスプレイのいずれも採用することができる。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「タッチパネルディスプレイ」は、「優れた屈曲性、透明性を有し、屈曲後に抵抗値が上昇し難い保護膜を形成できる樹脂組成物を用いた電子素子(例えば、ディスプレイ、配線板等)の提供を目的とし」、「基材11、IM層12、透明電極層13、保護膜14、透明電極層13、保護膜14、粘着層15、基材11を順次積層した態様」であり、「基材11の構成材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられ」るから、本願発明1の「第一の可撓性基材上に、透明導電層と、保護膜と、粘着層と、第二の可撓性基材とをこの順に有し」ていることに相当する。
イ 引用発明の「保護膜14は、上述した樹脂組成物から形成した硬化被膜であり、保護膜14の厚みは、通常3~30μmが好ましく、4~10μmがより好まし」いことは、本願発明1の「前記保護膜の厚みが、0.2μm以上50μm以下であ」ることに相当する。
ウ 引用発明の「粘着層15の厚みは、10~300μm程度である、」ことは、本願発明1の「前記粘着層の厚みが、2μm以上95μm以下であり、前記保護膜と前記粘着層との厚さの合計が100μm未満であ」ることと、「前記粘着層の厚みが、2μm以上であ」る点で共通するといえる。
エ 引用発明の「樹脂組成物から形成した硬化被膜は、引張速度0.01mm/秒での引張弾性率が400~4000MPaであることが好ましく、さらに前記硬化被膜は、2%延伸した時の引張応力が15~60MPaであることが好まし」いことは、本願発明1の「前記保護膜が、引張速度0.01mm/秒での引張弾性率が400MPa以上4000MPa以下、かつ、2%延伸したときの引張応力が15MPa以上60MPa以下であ」ることに相当する。
オ 引用発明の「タッチパネルディスプレイ」は、本願発明1の「前記粘着層が、貯蔵弾性率0.01~0.05MPaである、タッチパネルデバイス」と、「タッチパネルデバイス」である点で共通するといえる。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
〈一致点〉
「第一の可撓性基材上に、透明導電層と、保護膜と、粘着層と、第二の可撓性基材とをこの順に有し、
前記保護膜の厚みが、0.2μm以上50μm以下であり、
前記粘着層の厚みが、2μm以上であり、
前記保護膜が、引張速度0.01mm/秒での引張弾性率が400MPa以上4000MPa以下、かつ、2%延伸したときの引張応力が15MPa以上60MPa以下である、
タッチパネルデバイス。」
〈相違点1〉
本願発明1では、「前記粘着層の厚みが、2μm以上95μm以下であり、
前記保護膜と前記粘着層との厚さの合計が100μm未満であ」るのに対して、引用発明では、「粘着層15の厚みは、10~300μm程度であ」って「95μm以下」ではなく、また、「前記保護膜と前記粘着層との厚さの合計が100μm未満であ」ることが特定されていない点。
〈相違点2〉
本願発明1では、「前記粘着層が、貯蔵弾性率0.01~0.05MPaであり、
前記粘着層が、水酸基を有するアクリル系重合体(C)と、ポリイソシアネート系硬化剤(D)とを含有するアクリル系粘着剤層である」のに対し、引用発明では、「粘着層が、貯蔵弾性率0.01~0.05MPaである」こと、及び、その組成が特定されていない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点2ついて先に検討する。
引用文献2(上記第5 2を参照。)には、インナータッチパネル型入力表示に適用され得る光学積層体の粘着剤層の貯蔵弾性率を、「好ましくは0.01MPa~1.00MPa」とすることで、非常に優れた屈曲性を有する光学積層体とした発明が記載されている。
ここで、一般に、積層体の各層の弾性率を低くすれば、容易に曲げられるようになって、屈曲性が向上することは明らかである。
そして、引用発明も、「優れた屈曲性」を目的の一つとしているから、引用発明において、非常に優れた屈曲性を付与するため、引用文献2に記載の技術的事項を適用し、粘着層15の貯蔵弾性率を、「好ましくは0.01MPa~1.00MPa」の範囲のうち、0.01~0.05MPaを選択することは、当業者が容易に想到し得たものである。
また、引用文献2には、粘着層15として、アクリル系粘着剤を用いることが記載されている。
しかしながら、引用文献2には、粘着層15を、水酸基を有するアクリル系重合体(C)と、ポリイソシアネート系硬化剤(D)とを含有するアクリル系粘着剤層とすることは記載されておらず、また、粘着層が、貯蔵弾性率0.01~0.05MPaであって、水酸基を有するアクリル系重合体(C)と、ポリイソシアネート系硬化剤(D)とを含有するアクリル系粘着剤層とすることが本願出願日前に周知の技術であったとも認められない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1に記載された発明、および引用文献2に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は、本願発明1の構成を含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用文献1に記載された発明、および引用文献2に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第7 原査定についての判断
令和5年5月10日付けの補正により、補正後の請求項1ないし4は、「前記粘着層が、貯蔵弾性率0.01~0.05MPaであり、前記粘着層が、水酸基を有するアクリル系重合体(C)と、ポリイソシアネート系硬化剤(D)とを含有するアクリル系粘着剤層である」という技術事項を有するものとなった。当該技術事項は、原査定における引用文献A、Bには記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1-4は、当業者であっても、原査定における引用文献A、Bに基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-015098