特許拒絶査定不服審判
2022-014108
発電装置
- 審判番号
- 2022-014108
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-162735外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月08日
- 審決日
- 2023年10月11日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (F03D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-162735「発電装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 4月13日出願公開、特開2023- 53599〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、令和3年10月1日の出願であって、その手続の経緯は、概ね以下のとおりである
令和 3年11月 8日付け 拒絶理由通知書
令和 4年 3月 1日 意見書、手続補正書の提出
令和 4年 4月20日付け 拒絶理由通知書
令和 4年 6月27日 意見書の提出
令和 4年 8月15日付け 拒絶査定
令和 4年 9月 8日 審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年9月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年9月8日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。)
「【請求項1】
流体の進行方向に直交し、且つ水平方向にのびる回転軸と、
前記回転軸から放射状にのびる複数のブレードと、
前記ブレードを内包するケースとを備えるタービンと、
前記回転軸の回転エネルギーを電力に変換する発電機とを備えており、
前記ケースはメッシュ状の円筒形である本体部と、前記本体部の両端の開口を閉じる円形板とを備えており、
前記円形板が前記回転軸に固定されており、
前記ブレードの一部が前記回転軸に直接接合されており、
前記流体を前記本体部の上部又は下部のいずれか一方のみに当てることを特徴とする発電装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年3月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~3の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
流体の進行方向に直交し、且つ水平方向にのびる回転軸と、
前記回転軸から放射状にのびる複数のブレードと、
前記ブレードを内包するケースとを備えており、
前記ケースはメッシュ状の円筒形である本体部と、前記本体部の両端の開口を閉じる円形板とを備えており、
前記円形板が前記回転軸に固定されており、
前記ブレードの一部が前記回転軸に直接接合されており、
前記流体を前記本体部の上部又は下部のいずれか一方のみに当てることを特徴とするタービン。
【請求項2】
前記本体部の一部にのみ前記流体を導入するためのダクトを備えることを特徴とする請
求項1に記載のタービン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタービンと、
前記回転軸の回転エネルギーを電力に変換する発電機を備えることを特徴とする発電装置。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項3に記載された発明の引用請求項を、本件補正前の請求項1のみにして独立形式へ変更し、本件補正後の請求項1とした補正であり、多数項引用形式請求項の引用請求項を減少させる補正であるから、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載及び引用発明
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2014-77354号公報(平成26年5月1日公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は理解の一助のために当審が付した。以下同様。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、水路の流水中に混在するゴミ類を排除することなく、水車を稼働できる構造の越塵水車装置に関する。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の水車式駆動装置が直面するゴミ類の問題点に鑑み、流水中のゴミ類が水車の回転を阻害することなく稼働することができる水車装置を提供する。」
(ウ)「【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載、越塵水車装置は、水車6を保持する 懸架台1とアーム2であり水車6の回転軸3を保持する、該回転軸3に直交する円盤4を左右に設ける、該円盤4の円周縁部へ均等に複数の水車翼5を回転軸3と平行に設ける、そして、水車6の円周縁部へスクリーン7を設けた構成であり、水路の流水中に含まれる真水とゴミ類は水車6の円周縁部に設けたスクリーン7により真水とゴミ類に分別される、そして、真水は水車6内に導入され水車翼5の抗力と揚力により真水の持つ直線的運動エネルギーを回転運動エネルギーに変換され機械的動力として出力する。そして、ゴミ類はスクリーン6で分別され水車6のスクリーン7に沿ってスクリーン7の外周を回遊し水車6の下流方向へ水と一緒に放流される構造としたことを特徴とした越塵水車装置。
【0007】
請求項2記載、スクリーン7は、コイルスクリーン又は、ネットスクリーンで構成する、該スクリーン7は、金属製、樹脂製、ナイロン、ビニロン、炭素繊維等の素材を用いた、コイルスクリーン、ネットスクリーン、であり、水車5の円周縁部へ装着或は覆い被せた構造であることを特徴とする請求項1記載の越塵水車装置。
【0008】
請求項3記載、越塵水車装置を略水平設置の越塵水車装置として表しているが、略鉛直設置の越塵水車装置としても稼働運転は可能であり、特に、河川より取水する取水口には複数の略鉛直設置とすることで真水とゴミ類に分別できることを特徴とする請求項1及び請求項2記載の越塵水車装置。」
(エ)「【発明の効果】
【0009】
本発明の越塵水車装置は、水車6の円周縁部へスクリーン7を設けたことで、真水は水車6内へ導入され水流の直線運動エネルギーを回転運動エネルギーに変換し機械的エネルギーとして利用できる、ゴミ類はスクリーン7によって水車6の回転とともに水車6の下流方向へ水とともに放流する構造であり、ゴミ上げ等の労力が不要であり、ゴミ類は水車6へ絡みにくく、ゴミ類により水路が遮蔽されにくく、水路に及ぼす影響を少なくできる、水路の状況で水平軸型越塵水車装置として使用には、上掛け水車方式、又は、下掛け方式の越塵水車として利用できる、また、取水口付近の使用では、垂直軸型の越塵水車装置として利用できる、さらに、発電装置を装着すれば、水力発電装置として利用できる、さらに、天然のゴミ類(木の葉、小枝、小動物の死骸等)は川より海へ運ばれると海洋生物の餌となり海が豊かになる利点がある。」
(オ)「【0011】
越塵水車装置を、水路の状況で水平軸型越塵水車装置として使用には、上掛け水車方式、又は、下掛け方式で越塵水車装置として利用できる、そして、取水口付近の使用では、垂直軸型越塵水車装置として右回転水車方式、又は、左回転方式の越塵水車装置として利用できる、スクリーン7の使用素材は、金属製、樹脂製、繊維製、のスクリーン7として使用可能な素材を用いる。」
(カ)「【0012】
図1は、越塵水車装置の正面図であり、水車を保持する 懸架台1、アーム2であり、該懸架台1、アーム2は、回転軸3を保持する、水車6は、回転軸3と円盤4と水車翼5で構成し、該回転軸3と回転軸3に直交するよう左右の円盤4で該円盤4の円周縁部へ均等に複数の回動する水車翼5を配設する、前記の水車6の円周縁部へスクリーン7を設けた構造の越塵水車装置であり、該スクリーン7は金属製、樹脂製、ナイロン、ビニロン、炭素繊維等の素材を用いて、コイルスクリーン、ネットスクリーン、とする。
【0013】
図2は、越塵水車装置の側面図であり、水車を保持する 懸架台1、アーム2、回転軸3、円盤4、水車翼5、水車6、スクリーン7で構成する構造の越塵水車装置であり、流水の方向と水車の回転方向を表している。
【0014】
図3は、円筒形状のスクリーン7でありスプリングスクリーンの概観図を示す。」
(キ)「【産業上の利用可能性】
【0015】
不純物を含む混合物流体(気体、液体、固体)を越塵水車装置、又は、越塵風車装置を用いて選別する選別装置として利用できる、そして、文中のバケットを水車翼として表しているが、一般的な水車や、クロスフロー型水車へスクリーンを覆い被せる装着方法もある、さらに、発電装置を装着すれば、水力発電装置として利用できる。」
(ク)「【図1】
[図:0001404293000001.jpg]
【図2】
[図:0001404293000002.jpg]
【図3】
[図:0001404293000003.jpg]
」
(ケ)図1及び2の記載から、回転軸3は、流水の方向に直交しているといえる。
(コ)前記(エ)及び(オ)の記載から、越塵水車装置は、「水平軸型越塵水車装置として使用」されるところ、その際、回転軸3が水平方向にのびることは明らかである。
(サ)前記(カ)並びに図1ないし3の記載から、スクリーン7は、円筒形状のネットスクリーン7を含むことは明らかである。また、前記(カ)並びに図1及び2の記載から、スクリーン7は、水車6の左右の円盤4の円周縁部に設けられるといえ、即ち、スクリーン7の両端の開口は、水車6の円盤4で閉じられているといえる。そして、スクリーン7及び円盤4で囲まれた内部には、水車翼5が配置されるから、スクリーン7及び円盤4は、水車翼5を内包するといえる。
(シ)前記(ウ)及び(カ)並びに図1及び2の記載から、円盤4が回転軸3に固定されていることは、明らかである。
イ 引用発明1
前記ア(ア)ないし(シ)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「流水の方向に直交し、且つ水平方向にのびる回転軸3と、
複数の水車翼5と、
前記水車翼5を内包するスクリーン7及び円盤4とを備える水平軸型越塵水車装置と、
発電装置とを備えており、
前記スクリーン7はネット状の円筒形で形成され、前記スクリーン7の両端の開口を水車6の前記円盤4で閉じており、
前記円盤4は前記回転軸3に固定されており、
上掛け水車方式、又は、下掛け方式とした水力発電装置。」
ウ 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2018-100656号公報(平成30年6月28日公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、河川流水のエネルギー密度を上げる誘導ダクトに接続して使用する水車として、より広範囲な設置条件の小水力発電に適応する水車を提供する。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2015-169204小水力発電装置で採用した簡易水車の使用範囲をさらに拡大し、多種多様な河川条件に適応する水車の開発を課題とする。」
(ウ)「【0012】
図1は、本発明の小水力発電用水車を構成する水車ランナー図である。
(図1-a)は、水車ランナーの正面図である。 ブレード4の内周端(ランナードラムへの取付端)に汲み上げた排水を容易に落下させる為の排水孔6を設け、ブレードによる汲み揚げ水をいち早く落下させ、ランナーの高速回転を可能にした構造である。
(図1-b)で水車ランナーの回転が速くなると水車排水の一部を汲み揚げて、ランナードラム5とブレード4間とに囲まれた空間に排水を溜めてしまい、水車効率を低下させる。 その為、本考案はランナーブレードの取付け位置を内周端9より反回転方向にθ角度遅らせた位置にブレードの外周端8を取付けることにより、ブレードの内周端9が軸水平線に来ても汲み上げ水が溜まり難い構造とした。 尚このブレード外周端の取付け角度7は、水車ランナーの回転速度に応じて大きくする。
(図1-c)は、ラビリンス構造を判り易く拡大した図である。
ランナーリング2の凸部とブラケットリング10の凹部とは接触することなく組み合わされて1対のラビリンス構造を形成する。
また水車ブラケット19のランナー主軸1の貫通部には軸封水装置13を設けることによって水車ランナー室の高圧水は封じられ、ほぼその全量をランナーブレードに作用する構造である。
【0013】
図2は、小水力発電用水車の正面図と側面の断面図である。
(図2-a)は水車の接続フランジ14側から見た正面図で、ラビリンスの取付け位置15及び軸封水装置13の取付け位置を示す。
ランナーリングの凸部とブラケットリングの凹部とを組み合わせて一対と成すラビリンス構造と軸封水装置は、水車ランナー室20に流入した高圧水のほぼ全量をランナーブレードに作用させる効果がある。 尚このラビリンス構造は、水車ランナー室20の水圧によって2対,3対と凹凸のラビリンス構造を増すことになる。
また固定されたブラケットの軸貫通部にはグランドパッキンやメカニカルシール等の軸封水装置13を設け、ランナー主軸のブラケット貫通部からの高圧水の漏れを防ぐ構造とした。 これらラビリンス構造と軸封水装置によって、水車のランナー室20に流入する高圧水のほぼ全量を有効に利用することができる。
(図2-b)の流水変向板16は、接続フランジ14から流入する高圧水をできるだけ多くのランナーブレードに作用させるための装置で、例えば図6の小水力発電用水車の用法図の(図6-b)に示す高段差の河川に用いる場合、この流水変向板はランナー外周部に沿って長くし、より多くのランナーブレードに高圧流水を作用させる効果がある。
また流水抑制板17は、ランナーブレードの外周端間の寸法より長い幅とし、水車ランナー室20に流入した高圧水が反回転方向に作用するのを抑制する効果がある。」
(エ)「【0015】
図4は、小水力発電装置を設置した側面概要図である。
河川流水のエネルギー密度を高める誘導ダクトとその狭搾された吐出口の接続フランジ24に小水力発電用水車の接続フランジ14とをボルト止めして一体と成し、それらをダクト吊りボルト37,懸垂架台34及び渡し架台33等で、固定し、洪水時にあっても冠水しない高さに発電機を取付け、水車の主軸と発電機の主軸との間に増速装置を設けた構造である。 本考案では、水車の回転数と発電機が要求する回転数とにかなりの乖離がある為にその中間に増速装置を設けたが、その乖離が許容範囲に在る場合は、増速装置を省くことがある。」
(オ)「【産業上の利用性】
【0020】
小河川に設置して使用する小水力発電装置は、その設置条件が余りに多種多様である為、幾つも運転条件を設定し、極めて狭い条件下での運転を余儀なくされる。
本発明の小水力発電用水車は、そうした設置条件を少しでも和らげ、より多くの小河川に適用する地産地消型の発電装置として小河川の持っている潜在エネルギーの活用をめざすものである。
町中にあっては防犯灯の電源として、農村地帯にあっては、電照栽培用の電源や電気柵の電源として、また電動工具用バッテリーやEV車の充電用として利用することが想定される。」
(カ)「【符号の説明】
【0021】
(図1)
1 ランナー主軸
2 ランナーリング
3 ランナー側板
4 ランナーブレード
5 ランナードラム
6 ブレード排水孔
7 ブレード外周端の取付け角度
8 ブレード外周端
9 ブレード内周端
10 ブラケットリング
11 ブラケット固定ボルト
12 水車カバー
13 軸封水装置
(図2)
14 接続フランジ
15 ラビリンス
16 流水変向板
17 流水抑制板
18 水車排水口
19 水車ブラケット
20 水車ランナー室
(図3)
21 ワイヤーフック
22 防護柵
23 引掛けアングル
24 吐出口フランジ
25 取水口
26 耐圧板
27 整流板
(図4)
28 誘導ダクト
29 吊りワイヤー
30 小水力発電用水車
31 増速機
32 発電機
33 渡し架台
34 懸垂架台
35 リードボルト
36 ダクト吊り架台
37 ダクト吊りボルト
38 ゴミ吐き出し口
(図4)(図5)
A 段差上流川底
B 河川段差
C 段差下流川底
D 護岸
E 河川護岸天端
F 上流水面
G ゴミ除けスクリーン
H 落差
K 下流水面
S 流水方向
R 回転方向
θ 遅れ角」
(キ)「【図1】
[図:0001404293000004.jpg]
【図2】
[図:0001404293000005.jpg]
【図4】
[図:0001404293000006.jpg]
」
(ク)前記(ウ)及び図1の記載から、ランナードラム5が流水方向Sに直交し、水平方向にのびることは、明らかである。
(ケ)前記(ウ)並びに図1及び2の記載から、複数のランナーブレード4がランナードラム5から放射状にのびること、また、ランナーブレード4の一部がランナードラム5に直接接合されていることは、明らかである。
(コ)前記(エ)及び(カ)並びに図4の記載から、発電機32は、ランナードラム5(回転軸)の回転エネルギーを電力に変換するものであるといえる。
(サ)前記(ウ)及び(カ)並びに図1及び2の記載から、小水力発電用水車の水車ランナーは、両端に、円形のランナー側板3を備え、ランナー側板3は、ランナードラム5に固定されているといえる。
(シ)前記(ウ)並びに図1、2及び4の記載から、流水が水車ランナーの下部のランナーブレード4に当てる構成とされているといえる。
エ 引用発明2
前記ウ(ア)ないし(シ)から、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「流水方向に直交し、且つ水平方向にのびるランナードラム5と、
前記ランナードラム5から放射状にのびる複数のランナーブレード4と、を備える小水力発電用水車と、
前記ランナードラム5の回転エネルギーを電力に変換する発電機32とを備えており、
小水力発電用水車の水車ランナー両端に、円形のランナー側板3を備えており、
前記ランナー側板3が前記ランナードラム5に固定されており、
前記ランナーブレード4の一部が前記ランナードラム5に直接接合されており、
流水を水車ランナーの下部のランナーブレード4に当てる小水力発電装置。」
(3)引用発明1との対比
ア 本件補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「流水の方向」は本件補正発明の「流体の進行方向」に相当し、以下同様に、「水車翼5」は「ブレード」に、「水平軸型越塵水車装置」は「タービン」に、「発電装置」は「発電機」に、「スクリーン7」は「本体部」に、「ネット状」は「メッシュ状」に、「円盤4」は「円形板」に、「水力発電装置」は「発電装置」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1の「スクリーン7及び円盤4」は、水車翼5を内包するものであるから、本件補正発明の、ブレードを内包する「ケース」に相当する。そうすると、引用発明1の「前記スクリーン7はネット状の円筒形で形成され、前記スクリーン7の両端の開口を水車6の円盤4で閉じており、前記円盤4は前記回転軸3に固定されており、」は、本件補正発明の「前記ケースはメッシュ状の円筒形である本体部と、前記本体部の両端の開口を閉じる円形板とを備えており、前記円形板が前記回転軸に固定されており、」に相当する。
さらに、水車を使用した発電装置は、水車の回転運動エネルギーを電力に変換するものであることは、技術常識から明らかであるところ、引用文献1の前記(2)ア(エ)の記載も勘案すると、引用発明1の「発電装置」は、本件補正発明1の「前記回転軸の回転エネルギーを電力に変換する発電機」に相当する。
イ 一致点及び相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「流体の進行方向に直交し、且つ水平方向にのびる回転軸と、
複数のブレードと、
前記ブレードを内包するケースとを備えるタービンと、
前記回転軸の回転エネルギーを電力に変換する発電機とを備えており、
前記ケースはメッシュ状の円筒形である本体部と、前記本体部の両端の開口を閉じる円形板とを備えており、
前記円形板が前記回転軸に固定されている、
発電装置。」
(相違点1)
ブレードについて、本件補正発明は、「前記回転軸から放射状にのび」、「前記ブレードの一部が前記回転軸に直接接合されて」いるのに対し、引用発明1は、水車翼5がそのような構成を有したものではない点。
(相違点2)
本件補正発明は、「前記流体を前記本体部の上部又は下部のいずれか一方のみに当てる」のに対し、引用発明1は、上掛け水車方式、又は、下掛け方式とした点。
(4)判断
ア 相違点1について
引用文献2には、前記(2)エで示したように、「流水方向に直交し、且つ水平方向にのびるランナードラム5と、前記ランナードラム5から放射状にのびる複数のランナーブレード4と、を備える小水力発電用水車と、前記ランナードラム5の回転エネルギーを電力に変換する発電機32とを備えており、小水力発電用水車の水車ランナー両端に、円形のランナー側板3を備えており、前記ランナー側板3が前記ランナードラム5に固定されており、前記ランナーブレード4の一部が前記ランナードラム5に直接接合されており、流水を水車ランナーの下部のランナーブレード4に当てる小水力発電装置。」(引用発明2)が記載されている。
そして、引用発明1と引用発明2とは、共に、水車を使用した水力発電装置という同一の技術分野に属するものであり、また、引用文献1の発明の詳細な説明の段落0015に「文中のバケットを水車翼として表しているが、一般的な水車や、クロスフロー型水車へスクリーンを覆い被せる装着方法もある、」(前記(2)ア(キ))と記載されるように、水車の形式を変更してもよい旨示唆されている。
さらに、引用発明1の水平軸型越塵水車装置の水車6と、引用発明2の小水力発電用水車とは、共に、両端に円形板を備えた水車である点で、構造が共通するものでもある。
そうすると、引用発明1の水平軸型越塵水車装置の水車6に代えて、引用発明2に示される、ランナードラム5から放射状にのびる複数のランナーブレード4を備え、また、前記ランナーブレード4の一部が前記ランナードラム5に直接接合される小水力発電用水車を適用し、本件補正発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
引用文献1の発明の詳細な説明の段落0011の「越塵水車装置を、水路の状況で水平軸型越塵水車装置として使用には、上掛け水車方式、又は、下掛け方式で越塵水車装置として利用できる、」(前記(2)ア(オ))との記載及び水車の技術常識に鑑みると、「上掛け水車方式」は、越塵水車装置の上部にのみ流水を当てる方式であり、また、「下掛け方式」は、越塵水車装置の下部にのみ流水を当てる方式であると理解できる。
そうすると、本件補正発明の「前記流体を前記本体部の上部又は下部のいずれか一方のみに当てる」ことと、引用発明1の「上掛け水車方式、又は、下掛け方式とした」こととの、両者に差異はなく、相違点2は、実質的な相違点ではない。
また、仮に両者に相違するところがあるとしても、引用発明1において、本件補正発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(5)請求人の主張に対して
請求人は審判請求書で、「引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された流体駆動タービンを適用した場合、例えば上記回転軸が水平方向にのびる状態で水車を水中に没入させる態様を想定すると、上方に位置しているランナーブレードと下方に位置しているランナーブレードの両者が流水によって同一方向に圧力を受ける(例えば引用文献1の図2の右方向に圧力を受ける)ので、回転効率が著しく低下するという問題(阻害要因)が生じます。換言すると、引用文献1に係る発明は上記多様な実施態様に対応するべく、円盤の円周縁部に複数の水車翼5を設けて、水車翼で発生した回転力を円盤を介して回転軸に伝達する構造を採用したものと思慮致します。」(4頁18行~5頁1行)と、また、「引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された流体駆動タービンを組み合わせることについて阻害要因が存在します。」(5頁13~14行)と主張する。
しかしながら、引用文献1の段落0009(前記(2)ア(エ))及び0011(前記(2)ア(オ))に「水路の状況で水平軸型越塵水車装置として使用には、上掛け水車方式、又は、下掛け方式の越塵水車として利用できる、」と記載されるように、回転軸が水平方向にのびる状態のとき、水車を水中に没入させる態様は想定しておらず、上方に位置しているランナーブレードと下方に位置しているランナーブレードの両者が流水によって同一方向に圧力を受けることが含まれないことは、明らかである。
したがって、引用文献1に示される水平軸型越塵水車装置において、「回転軸が水平方向にのびる状態で水車を水中に没入させる態様を想定」できることを前提とした、請求人の上記主張は、当を得たものとはいえず、採用できない。
(6)作用効果について
前記相違点を勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用発明2が奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(7)まとめ
したがって、本件補正発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上によれば、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年9月8日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年3月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項3に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用文献の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2の記載及び引用発明1及び2は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
前記第2[理由]2で検討したように、本件補正発明は、本件補正前の請求項3に記載された発明(本願発明)の引用請求項を、本件補正前の請求項1のみにしたものであるから、本願発明のうち、請求項1を引用するものは、本件補正発明と同じ発明特定事項を備えるものである。
そうすると、本件補正発明が、前記第2[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-014108