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特許拒絶査定不服審判

2022-013770

温度試験装置及び温度試験方法

審判番号
2022-013770
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-152723外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年09月02日
審決日
2023年10月18日
公報発行日
2024年01月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G01R) / P18 .575-Z (G01R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-152723「温度試験装置及び温度試験方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月 1日出願公開、特開2021- 32682〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

この出願(以下「本願」という。)は、令和元年8月23日を出願日とする特許出願であって、本願の出願後の手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和4年 1月 4日付け:拒絶理由通知書

同年 2月25日 :意見書、手続補正書の提出

同年 6月 1日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

(同月14日 :原査定の謄本の送達)

同年 9月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和4年9月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和4年9月2日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]

1 本件補正の内容

令和4年9月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲(令和4年2月25日に提出された手続補正書による補正後のものをいう。)の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。

(1) 本件補正前の請求項1

「【請求項1】
被試験アンテナ(110)を有する被試験対象(100)の送信特性又は受信特性の温度依存性を測定する温度試験装置(1)であって、
周囲の電波環境に影響されない内部空間(51)を有する電波暗箱(50)と、
前記内部空間に収容され、前記被試験対象の送信特性又は受信特性を測定するための無線信号を前記被試験アンテナとの間で送信又は受信する試験用アンテナ(6)と、
続きを表示(全11行)
前記内部空間におけるクワイエットゾーン(QZ)内に配置された前記被試験対象の姿勢を順次変化させる姿勢可変機構(56)と、
前記内部空間に収容され、前記クワイエットゾーンを含む空間領域(71)を取り囲む断熱材からなる断熱筐体(70)と、
前記空間領域の温度を複数の所定温度に制御可能な温度制御装置(30)と、
前記温度制御装置により前記空間領域の温度が制御された状態で、前記姿勢可変機構により前記被試験対象の姿勢が変化されるごとに、前記被試験対象の送信特性又は受信特性の測定を行う測定装置(20)と、
前記内部空間に収容され、所定の回転放物面を有するリフレクタ(7)と、を備え、
前記試験用アンテナから送信された無線信号の電波が前記クワイエットゾーンに入射する前に通過する前記断熱筐体の領域において、前記クワイエットゾーンに入射する前記無線信号の電波の進行方向に垂直な平板状部分(70a)が形成され、
前記リフレクタは、前記回転放物面から定まる焦点位置(F)に配置された前記試験用アンテナと前記被試験アンテナとの間で送受信される無線信号の電波を、前記回転放物面を介して反射することを特徴とする温度試験装置。」

(2) 本件補正後の請求項1

「【請求項1】
被試験アンテナ(110)を有する被試験対象(100)の送信特性又は受信特性の温度依存性を測定する温度試験装置(1)であって、
周囲の電波環境に影響されない内部空間(51)を有する電波暗箱(50)と、
前記内部空間に収容され、前記被試験対象の送信特性又は受信特性を測定するための無線信号を前記被試験アンテナとの間で送信又は受信する試験用アンテナ(6)と、
続きを表示(全11行)
前記内部空間におけるクワイエットゾーン(QZ)内に配置された前記被試験対象の姿勢を順次変化させる姿勢可変機構(56)と、
前記内部空間に収容され、前記クワイエットゾーンを含む空間領域(71)を取り囲む断熱材からなる断熱筐体(70)と、
前記空間領域の温度を複数の所定温度に制御可能な温度制御装置(30)と、
前記温度制御装置により前記空間領域の温度が制御された状態で、前記姿勢可変機構により前記被試験対象の姿勢が変化されるごとに、前記被試験対象の送信特性又は受信特性の測定を行う測定装置(20)と、
前記内部空間に収容され、所定の回転放物面を有するオフセットパラボラ型のリフレクタ(7)と、を備え、
前記試験用アンテナから送信された無線信号の電波が前記クワイエットゾーンに入射する前に通過する前記断熱筐体の領域において、前記クワイエットゾーンに入射する前記無線信号の電波の進行方向に垂直な平板状部分(70a)が形成され、
前記リフレクタは、前記回転放物面から定まる焦点位置(F)に配置された前記試験用アンテナと前記被試験アンテナとの間で送受信される無線信号の電波を、前記回転放物面を介して反射することを特徴とする温度試験装置。」

2 本件補正の目的

本件補正による請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1の「所定の回転放物面を有するリフレクタ(7)」について「オフセットパラボラ型」に限定するものである。

そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。

したがって、本件補正による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件

前記のとおり、本件補正による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下検討する。

(1) 本件補正発明

本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定 (ア) 引用文献1に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2005-347524号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付した(以下同様)。

a 【0001】

「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波暗室に関し、さらに詳細には、電波吸収性部材を含む電波吸収体を電磁シールド室の内面に形成して構成された電波暗室であって、その中で電子機器などの被試験体に関する種々の特性評価を行うようにした電波暗室に関する。」

b 【0002】-【0012】、【図1】

「【背景技術】
【0002】
従来より、電子機器からの放射電磁波の評価、電磁適合性評価あるいはアンテナの送受信特性の評価などは、電波暗室を用いて電波暗室内において行われていた。
【0003】
続きを表示(全23行)
図1には、こうした従来の電波暗室の一部を破断して示した概略構成説明図が示されており、電波暗室において電子機器からの放射電磁波を評価する場合を示している。
【0004】
図1に示すように、電波暗室100は、外部から遮蔽された電磁シールド室102を備えている。
【0005】
この電磁シールド室102は、電磁シールド性を有する床104の表面104aと、床104の表面104aに立設された前方電磁シールド壁106aと、床104の表面104aに立設された後方電磁シールド壁106bと、床104の表面104aに立設された左側電磁シールド壁106cと、床104の表面104aに立設された右側電磁シールド壁106dと、前方電磁シールド壁106aと後方電磁シールド壁106bと左側電磁シールド壁106cと右側電磁シールド壁106dとの上面に配設された上側電磁シールド壁106eとにより、外部から遮蔽された空間である。
【0006】
こうした電磁シールド室102の内面、即ち、床104の表面104aならびに前方電磁シールド壁106a、後方電磁シールド壁106b、左側電磁シールド壁106c、右側電磁シールド壁106dおよび上側電磁シールド壁106eの内側には、電波吸収性部材を含む電波吸収体108が配設されている。
【0007】
また、左側電磁シールド壁106cと当該左側電磁シールド壁106cに配設された電波吸収体108の下部には、電磁シールド室102の内部と外部とを連通するケーブル導出口110が形成されている。
【0008】
電磁シールド室102内における床104の表面104aに形成された電波吸収体108上には、被試験体たる送受波機器としての電子機器112を支持する第1支持台114と、測定用のアンテナ116を支持する第2支持台118とが配設されている。なお、電子機器112とアンテナ116とは、第1支持台114と第2支持台118とにそれぞれ所定の位置および姿勢で支持される。なお、アンテナ116の上下方向位置は、第2支持台118に沿って可変に設定することができ、種々の高さ位置において電子機器112から放射される電波の特性を評価することができるようになされている。
【0009】
ここで、アンテナ116に接続されるフレキシブルケーブル120は、アンテナ116後端の接続部116aからアンテナ116の直後方において電磁シールド室102内における床104の表面104aに向けて垂れ下がり、当該表面104aを這うように延長し、ケーブル導出口110を通って電波暗室100の外部へ引き出され、特性測定器122に接続されている。なお、フレキシブルケーブル120は、例えば、同軸ケーブルよりなるものである。
【0010】
以上の構成において、電子機器112から放射される電磁波をアンテナ116により、例えば、水平/垂直偏波として受信し、特性測定器122によりこの特性を評価する。または、アンテナ116から電波を放射して、電子機器112の動作の変化を評価する。
【0011】
しかしながら、上記した従来の電波暗室においては、電波吸収性部材を含む電波吸収体を配設した電磁シールド室全体の空調管理を行う通常の空調設備しかなく、被試験体である送受波機器の周囲温度を一定に保つことができず、送受波機器から放射または受信される電磁波による温度特性評価に影響を与える恐れがあるという問題点があった。
【0012】
なお、周囲温度を一定に保つ装置として恒温槽が知られているが、こうした恒温槽は被試験体である送受波機器から放射される電磁波に影響を与える金属製のものしかないものであり、電波暗室内において用いることはできないものであった。」
「【図1】
[図:0001405379000001.jpg]
」

c 【0014】、【0026】

「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記したような従来の技術が有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電波吸収性部材を含む電波吸収体を配設した電磁シールド室内において被試験体の周囲温度を一定に保つことができるようにして、被試験体から放射または受信される電磁波による温度特性評価への影響を低減することができるようにした電波暗室を提供しようとするものである。」
「【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電波吸収性部材を含む電波吸収体を配設した電磁シールド室内において被試験体である送受波機器の周囲温度を一定に保つことができるようになるため、被試験体である送受波機器から放射または受信される電磁波による温度特性評価への影響を低減することができるようになり、被試験体の温度特性を安価で簡単に測定可能な電波暗室を提供することができるという優れた効果を奏する。」

d 【0027】-【0039】、【図2】、【図3】

「【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による電波暗室の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0028】
続きを表示(全27行)
なお、図2乃至図5において、図1と同一あるいは相当する構成に関しては、図1において用いた符号と同一の符号を用いて示すことにより、その詳細な構成および作用の説明は省略する。
【0029】
図2には、本発明の実施の形態の一例による電波暗室の一部を破断して示した図1に対応する概略構成説明図が示されており、電波暗室において電子機器からの放射電磁波を評価する場合を示している。
【0030】
この図2に示す本発明による電波暗室10は、被試験体である送受波機器たる電子機器112全体を囲うカバー12と、カバー12の一部に形成されたカバー開口部14に連接された空気循環用ダクト16とを有する点において、従来の電波暗室100とは異なる。
【0031】
ここで、カバー12および空気循環用ダクト16は、電磁波に影響せずに保温性のよい素材で構成することが好ましい。こうした電磁波に影響せずに保温性のよい素材としては、例えば、発泡スチロールや樹脂があり、発泡スチロールにカバー12を形成し、樹脂により空気循環用ダクト16を形成することができる。
【0032】
図3はカバー12および空気循環用ダクト16の一部を示す斜視図であり、図2とともに図3を参照しながら、カバー12と空気循環用ダクト16との詳細な構成について説明する。
【0033】
上記したように、カバー12に形成されたカバー開口部14には空気循環用ダクト16が連接されているが、この空気循環用ダクト16は吸気用ダクト16aと排気用ダクト16bとにより構成されている。
【0034】
また、右側電磁シールド壁106dと当該右側電磁シールド壁106dに配設された電波吸収体108の下部には、電磁シールド室102の内部と外部とを連通する通路18が形成されており、吸気用ダクト16aと排気用ダクト16bとよりなる空気循環用ダクト16は、この通路18を通って電波暗室10の内部と外部とにわたって延長し、吸気用ダクト16aと排気用ダクト16bとの一方の開口端部をカバー12に形成されたカバー開口部14に連接するとともに、吸気用ダクト16aと排気用ダクト16bとの他方の開口端部を電波暗室10の外部において開口している。
【0035】
電波暗室10の外部には設定温度を変更可能な空調設備20が設置されており、電波暗室10の外部において開口している吸気用ダクト16aと排気用ダクト16bとの他方の開口端部は、この空調設備20に接続されている。
【0036】
この空調設備20を稼働することによって、吸気用ダクト16aを介して空調設備20から送出される空気がカバー12内へ導入され、排気用ダクト16bを介してカバー12内の空気が空調設備20へ送出される。このようにしてカバー12および吸気用ダクト16aと排気用ダクト16bとにより構成される空気循環用ダクト16内の空気が強制的に循環されて、カバー12および吸気用ダクト16aと排気用ダクト16bとにより構成される空気循環用ダクト16内の温度は変更可能かつ任意の一定温度に保持可能とされている。
【0037】
以上の構成において、この電波暗室10においては、設定温度が所定の任意の温度となるようにして空調設備20を稼働すると、空気循環用ダクト16の吸気用ダクト16aと排気用ダクト16bとによってカバー12内の空気が強制的に循環されて、カバー12内は当該所定の任意の温度に短時間で平衡状態になり、当該所定の任意の温度に一定に保持することができる。
【0038】
従って、この電波暗室10においては、電波吸収性部材を含む電波吸収体108を配設した電磁シールド室102内において被試験体たる送受波機器である電子機器112の周囲温度を一定に保つことができるようになるため、電子機器112から放射または受信される電磁波による温度特性評価への影響を低減することができるようになり、電子機器112において送受される電波の温度特性測定精度を向上することが可能となる。このため、電子機器112の温度特性を安価で簡単に測定することができるようになり、例えば、電子機器112の放射EMIの温度特性を安価でより精度良く測定することができる。
【0039】
即ち、電波暗室10によれば、電波暗室10における試験に際し、被試験体たる送受波機器としての電子機器112において送受される電波の温度特性測定精度を向上することができる。」
「【図2】
[図:0001405379000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001405379000003.jpg]
」

(イ) 引用文献1の記載から読み取れる事項の認定

a 引用文献1における従来技術と共通する構成

(a) 引用文献1の【0002】-【0012】及び図1は、従来技術を示すものであり、【0028】においては、「図2乃至図5において、図1と同一あるいは相当する構成に関しては、図1において用いた符号と同一の符号を用いて示すことにより、その詳細な構成および作用の説明は省略する。」と記載されている。

(b) そして、【0030】には、「図2に示す本発明による電波暗室10は、被試験体である送受波機器たる電子機器112全体を囲うカバー12と、カバー12の一部に形成されたカバー開口部14に連接された空気循環用ダクト16とを有する点において、従来の電波暗室100とは異なる。」と記載されている。

(c) 前記(a)及び(b)を踏まえると、引用文献1の図2から図5に記載されたものにおいても、次の構成を備えているといえる。

「外部から遮蔽された電磁シールド室102を備える電波暗室100と、(【0004】)
電磁シールド室102内における床104の表面104aに形成された電波吸収体108上に配設された第2支持台118に支持された測定用のアンテナ116と、(【0008】)
電磁シールド室102内における床104の表面104aに形成された電波吸収体108上に配設された第1支持台114に、所定の位置および姿勢で支持された被試験体たる送受波機器としての電子機器112と、(【0008】)
電子機器112から放射される電磁波をアンテナ116により、例えば、水平/垂直偏波として受信し、この特性を評価し、または、アンテナ116から電波を放射して、電子機器112の動作の変化を評価する、特性測定器122。(【0010】)」

b 図2及び図3から読み取れる事項

引用文献1の、本発明の実施の形態の一例による電波暗室の一部を破断して示した概略構成説明図である図2、及び、カバー12および空気循環用ダクト16の一部を示す斜視図である図3から、次の事項が見て取れる。

「カバー12は直方体形状をしていること。」

(ウ) 引用発明の認定

前記(ア)において摘記した事項及び前記(イ)において認定した事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]

「電子機器からの放射電磁波を評価する電波暗室であって、(【0029】)
外部から遮蔽された電磁シールド室102を備える電波暗室100と、(【0004】)
電磁シールド室102内における床104の表面104aに形成された電波吸収体108上に配設された第2支持台118に支持された測定用のアンテナ116と、(【0008】)
電磁シールド室102内における床104の表面104aに形成された電波吸収体108上に配設された第1支持台114に、所定の位置および姿勢で支持された被試験体たる送受波機器としての電子機器112と、(【0008】)
続きを表示(全13行)
電子機器112から放射される電磁波をアンテナ116により、例えば、水平/垂直偏波として受信し、この特性を評価し、または、アンテナ116から電波を放射して、電子機器112の動作の変化を評価する、特性測定器122と、(【0010】)
を備え、
被試験体である送受波機器たる電子機器112全体を囲うカバー12を有し(【0030】)、
カバー12は、電磁波に影響せずに保温性のよい素材で構成されており、(【0031】)
カバー12は、直方体形状をしており、(前記b)
電波暗室10の外部には設定温度を変更可能な空調設備20が設置されており、(【0035】)
空調設備20を稼働することによって、カバー12および吸気用ダクト16aと排気用ダクト16bとにより構成される空気循環用ダクト16内の空気が強制的に循環されて、カバー12および吸気用ダクト16aと排気用ダクト16bとにより構成される空気循環用ダクト16内の温度は変更可能かつ任意の一定温度に保持可能とされており、(【0036】)
電波吸収性部材を含む電波吸収体108を配設した電磁シールド室102内において被試験体たる送受波機器である電子機器112の周囲温度を一定に保つことができるようになるため、電子機器112から放射または受信される電磁波による温度特性評価への影響を低減することができるようになり、電子機器112において送受される電波の温度特性測定精度を向上することが可能となる、(【0038】)
電波暗室。」

イ 引用文献2に記載された事項及び技術常識1の認定

(ア) 引用文献2に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用された文献である“3GPP TR 38.810 V16.2.0 (2019-03)”,[online],2019年03月,[検索日2022.01.04], インターネット<URL: https://www.3gpp.org/ftp//Specs/archive/38_series/38.810/38810-g20.zip >,10-11ページ、20-22ページ、104-105ページ(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。括弧内に合議体による翻訳文を示した。

a 10-11ページ

「・3.3 Abbreviations
・For the purposes of the present document, the abbreviations given in 3GPP TR 21.905 [1] and the following apply.
An abbreviation defined in the present document takes precedence over the definition of the same abbreviation, if any, in 3GPP TR 21.905 [1].
・ AAA Active Antenna System
続きを表示(全42行)
・ AoA Angle of Arrival
・ BW Bandwidth
・ CA Carrier Aggregation
・ CATR Compact Antenna Test Range
・ CDL Clustered Delay Line
・ CSI Channel State Information
・ DFF Direct Far Field
・ DNF Direct Near Field
・ DUT Device Under Test
・ EIS Effective Isotropic Sensitivity
・ EIRP Effective (or equivalent) isotropic radiated power
・ EPRE Energy per resource element
・ EVM Error Vector Magnitude
・ FF Far Field
・ FR1 Frequency Range 1
・ FR2 Frequency Range 2
・ FS Free Space
・ FWA Fixed Wireless Access
・ IBB In-band blocking
・ IF Intermediate Frequency
・ IFF Indirect Far Field
・ LNA Low Noise Amplifier
・ MU Measurement Uncertainty
・ NFTF Near Field To Far-field
・ NR New Radio
・ NSA Non-standalone
・ OTA Over The Air
・ PA Power Amplifier
・ RSRP Reference signal receive power
・ SNR Signal-to-Noise Ratio
・ SS System Simulator
・ SS-RSRPB SS reference signal received power per branch
・ TDL Tapped Delay Line
・ TI Test Interface
・ TRP Total Radiated Power
・ TRxP Transmission Reception Point
・ UBF UE beam lock function
・ UE User Equipment」

(・3.3 略語

・この文書の目的上、3GPP TR 21.905 [1] および以下に示されている略語が適用されます。

この文書で定義されている略語は、3GPP TR 21.905 [1] で同じ略語が定義されている場合、それよりも優先されます。

・ AAA アクティブ アンテナ システム

・ AoA 到来角

・ BW 帯域幅帯域幅

・ CA キャリア・アグリゲーション

・ CATR コンパクト・アンテナ・テスト・レンジ

・ CDL クラスター化遅延線

・ CSI チャネル状態情報

・ DFF 直接遠方界

・ DNF 直接近方界

・ DUT 被試験デバイス

・ EIS 実効等方性感度

・ EIRP 実効(または同等の)等方性放射電力

・ EPRE 資源要素ごとのエネルギー

・ EVM エラー ベクトルの大きさ

・ FF 遠方界

・ FR1 周波数範囲1

・ FR2 周波数範囲2

・ FS フリースペース

・ FWA 固定無線アクセス

・ IBB 帯域内ブロッキング

・ IF 中間周波数

・ IFF 間接遠方界

・ LNA ローノイズアンプ

・ MU 測定の不確かさ

・ NFTF 近方から遠方へ

・ NR ニュー・ラジオ

・ NSA 非スタンドアロン

・ OTA オーバー・ジ・エア

・ PA パワーアンプ

・ RSRP 基準信号受信電力

・ SNR 信号対雑音比

・ SS システムシミュレータ

・ SS-RSRPB ブランチごとのSS基準信号受信電力

・ TDL タップディレイライン

・ TI テスト インターフェイス

・ TRP 総放射電力

・ TRxP 送受信ポイント

・ UBF UE ビームロック機能

・ UE ユーザー端末)

b 20-21ページ

「・5.2.2 Direct far field (DFF) setup simplification for centre of beam measurements
・5.2.2.1 Description
The DFF setup in 5.2.1 can be simplified in the following way to perform centre of the beam measurements:
- The measurement and the link antenna can be combined so that the single antenna is used to steer the beam and to perform UE RF measurements.
続きを表示(全12行)
The measurement setup of UE RF characteristics for f > 6 GHz capable of centre of beam measurements and is shown in Figure 5.2.1.1-1 below.
[図:0001405379000004.jpg]
Figure 5.2.2.1-1: Centre of beam measurement setup of UE RF characteristics
The applicability criteria of the simplified DFF setup for centre of beam measurements are defined in 5.2.1.1.
・5.2.2.3 Far-field criteria
The far-field criteria of the simplified DFF setup for centre of beam measurements are defined in 5.2.1.2.
・5.2.2.3 Testing and calibration aspects
The same testing and calibration aspects apply as outlined in 5.2.1.3.」

(・5.2.2 ビーム中心測定における直接遠方界(DFF)セットアップの簡略化

・5.2.2.1 説明

5.2.1の直接遠方界(DFF)セットアップは、ビーム中心測定を行うために次のように簡略化することができます:

- 測定用アンテナおよびリンクアンテナを組み合わせ、単一のアンテナを使用してビームを制御し、ユーザー端末RF測定を実行できます。

ビーム中心測定が可能なf > 6GHzのユーザー端末RF特性の測定セットアップを、以下の図5.2.1.1-1に示します。

(図省略)

図5.2.2.1-1:ユーザー端末RF特性のビーム中心測定セットアップ

ビーム中心測定のための簡略化された直接遠方界(DFF)セットアップの適用基準は、5.2.1.1に定義されている。

・5.2.2.3 遠方界基準

ビーム中心測定のための簡略化された直接遠方界(DFF)セットアップの遠方界基準は、5.2.1.2に定義されている。

・5.2.2.3 試験と較正の側面

5.2.1.3で概説したのと同じ試験と較正が適用される。)

c 21-22ページ

「・5.2.3 Indirect far field (IFF) method 1
The IFF method 1 creates the far field environment using a transformation with a parabolic reflector. This is also known as the compact antenna test range (CATR). Refer to Annex E for additional information.
・5.2.3.1 Description
The IFF measurement setup of UE RF characteristics for f > 6 GHz is capable of centre and off centre of beam measurements and is shown in Figure 5.2.3.1-1 below.
続きを表示(全18行)
[図:0001405379000005.jpg]
Figure 5.2.3.1-1: IFF method 1 (CATR) measurement setup of UE RF characteristic
The key aspects of this test method setup are:
- Indirect Far field of Compact Antenna Test Range as the one used in [9] with quiet zone diameter at least D.
- A positioning system such that the angle between the dual-polarized measurement antenna and the DUT has at least two axes of freedom and maintains a polarization reference.
- Before performing the UBF, the measurement probe acts as a link antenna maintaining polarization reference with respect to the DUT. Once the beam is locked then the link is to be passed to the link antenna which maintains reliable signal level with respect to the DUT.
- For setups intended for measurements of UE RF characteristics in non-standalone (NSA) mode with 1UL configuration, an LTE link antenna is used to provide the LTE link to the DUT. The LTE link antenna provides a stable LTE signal without precise path loss or polarization control.
- For setups intended for measurements in NR CA mode with FR1 and FR2 inter-band NR CA, test setup provides NR FR1 link to the DUT. The NR FR1 link has a stable and noise-free signal without precise path loss or polarization control.
The applicability criteria of this test method are:
- The total test volume is a cylinder with diameter d and height h.
- DUT must fit within the total test volume for the entire duration of the test.
- Either a single radiating aperture, multiple non-coherent apertures or multiple coherent apertures DUTs can be tested.
- EIRP, TRP, EIS, EVM, spurious emissions and blocking metrics can be tested.
- No manufacturer declaration is needed.」

(・5.2.3 間接遠方界(IFF)方式1

間接遠方界(IFF)方式1は、放物面反射鏡による変換を使用して遠方界環境を作成します。これは、コンパクト・アンテナ・テスト・レンジ(CATR)とも呼ばれます。追加情報については、付属書Eを参照してください。

・5.2.3.1 説明

f > 6GHzのユーザー端末RF特性の間接遠方界(IFF)測定セットアップは、ビームの中心および中心から外れた測定が可能であり、以下の図5.2.3.1-1に示されています。

(図省略)

図5.2.3.1-1:ユーザー端末RF特性の間接遠方界(IFF)方式1(CATR)測定セットアップ

この試験方法のセットアップの主な側面は次のとおりです。

- [9]で使用される、少なくともDのクワイエット・ゾーン直径を持つコンパクト・アンテナ・テスト・レンジの間接遠方界。

- 二重偏波測定アンテナと被試験デバイス(DUT)の間の角度が少なくとも二つの自由軸を持ち、偏波基準を維持するような位置決めシステム。

- UBFを実行する前に、測定プローブは被試験デバイス(DUT)に対する偏波基準を維持するリンクアンテナとして機能します。ビームがロックされると、リンクは被試験デバイス(DUT)に関して信頼できる信号レベルを維持するリンクアンテナに渡されます。

- 1UL構成の非スタンドアロン(NSA)モードでのユーザー端末RF特性の測定を目的としたセットアップの場合、LTEリンクアンテナを使用して被試験デバイス(DUT)にLTEリンクを提供します。LTEリンクアンテナは、正確なパス損失や偏波制御なしで安定したLTE信号を提供します。

- FR1およびFR2帯域間NR CAを使用したNR CAモードでの測定を目的としたセットアップの場合、試験セットアップは被試験デバイス(DUT)へのNR FR1リンクを提供します。NR FR1リンクには、正確な経路損失や偏波制御がなくても、安定したノイズのない信号が得られます。

この試験方法の適用基準は次のとおりです。

- 全試験体積は、直径dおよび高さhの円柱です。

- 被試験デバイス(DUT)は、試験の全期間にわたって全試験体積内に収まる必要があります。

- 単一の放射開口部、複数の非コヒーレント開口部、または複数のコヒーレント開口部の被試験デバイス(DUT)のいずれかを試験できます。

- EIRP、TRP、EIS、EVM、スプリアスエミッション、ブロッキングメトリクスを試験できます。

- メーカー宣言は必要ありません。)

d 104-105ページ

「Annex E:
Rationale behind IFF method 1
・E.1 IFF method 1 ― working principle
A CATR (Compact Antenna Test Range) is a collimator system in which the spherical wave is transformed in plane wave within the desired quiet zone (QZ). In other words, a compact range project the measurement (range) antenna infinitely far away thus making it a far-field range. Figure E.1-1 does show this concept:
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[図:0001405379000006.jpg]
This is a reciprocal system setup. For TX measurements, the device under test will radiate a spherical wavefront to the range collimator which focalises into the feed antenna only the propagation vector which matches with the boresight direction of the reflector. On the other hand, for RX measurements, the feed antenna would radiate a spherical wavefront to the range reflector which is collimated towards the DUT. In other words, the spherical wavefront is transformed into a plane wavefront when at the DUT.
In order to meet the requirements, the following parameters are mainly considered when designing a CATR:
- Quiet Zone
- Focal length
- Offset angle
- Feed location
Figure E.1-2 does introduce the concept of quiet zone (QZ). Basically, the plane wavefront (uniform amplitude and phase) is guaranteed in a certain cylinder volume:
[図:0001405379000007.jpg]
Figure E.1-2: CATR ? Quiet Zone concept
Quiet Zone size would depend on mainly the reflector, feed taper, anechoic chamber design. In figure E.1-3 is shown the phase distribution in the QZ for a state of the art CATR designed for 3m QZ size at 18GHz:
[図:0001405379000008.jpg]
Figure E.1-3: Phase curvature within the CATR QZ
It has to be noted that the total phase variation in the QZ for a CATR is much lower than the phase variation (22.5deg) for a typical direct FF range.」

(附属書 E:

間接遠方界(IFF)方式1の背後にある理論的根拠

・E.1 間接遠方界(IFF)方式1 ? 動作原理

CATR(コンパクト・アンテナ・テスト・レンジ)は、球面波が所望のクワイエット・ゾーン(QZ)内では平面波であるように変換されるコリメータシステムです。言い換えれば、コンパクト・レンジは測定(レンジ)アンテナが無限に遠くに投影されるため、遠距離レンジになります。図E.1-1はこの概念を示しています。

(図省略)

図E.1-1:コンパクト・レンジ - 動作原理

これは相互システムのセットアップです。送信(TX)測定の場合、被測定デバイスは球面波面をレンジコリメータに放射し、反射鏡の照準方向と一致する伝播ベクトルのみをフィード・アンテナに集束します。一方、受信(RX)測定の場合、給電アンテナは被試験デバイス(DUT)に向かってコリメートされたレンジ反射板に球面波面を放射します。言い換えれば、被試験デバイス(DUT)の位置では球面波面が平面波面に変換されます。

要件を満たすために、コンパクト・アンテナ・テスト・レンジ(CATR)を設計する際には主に次のパラメータが考慮されます。

- クワイエット・ゾーン

- 焦点距離

- オフセット角度

- フィードの場所

図E.1-2では、クワイエット・ゾーン(QZ)の概念が導入されています。基本的に、ある円柱体積の中では平面波面(均一な振幅と位相)が保証されます。

(図省略)

図E.1-2: コンパクト・アンテナ・テスト・レンジ(CATR) ? クワイエット・ゾーンの概念

クワイエット・ゾーンの大きさは、主に反射鏡、給電テーパー、無響室の設計によって決まります。図E.1-3には、18GHzで3mのQZサイズに設計された最先端のCATRのQZ内の位相分布が示されています。

(図省略)

図 E.1-3: コンパクト・アンテナ・テスト・レンジ(CATR)クワイエット・ゾーン(QZ)内の位相曲率

コンパクト・アンテナ・テスト・レンジ(CATR)のクワイエット・ゾーン(QZ)での総位相変動は、一般的な直接遠方界(FF)レンジの位相変化(22.5度)よりもはるかに小さいことに注意する必要があります。)

(イ) 技術常識1の認定

前記(ア)において摘記した引用文献2の記載事項に例示されるように、次の技術的事項は、技術常識(以下「技術常識1」という。)であると認められる。

[技術常識1]

「回転放物面の一部からなるオフセット放物面反射鏡を用いて、供給アンテナ(Feed Antenna)からの球面波の電波を、所定のクワイエット・ゾーン直径を有し、被試験デバイス(DUT)に向かう平面波に変換する、間接遠方界(IFF)測定セットアップによって、ユーザー端末RF特性の試験を行うこと。」

ウ 引用文献3~5に記載された事項及び周知技術1の認定

(ア) 引用文献3に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2008-164424号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。

a 【0001】

「【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験体の周囲環境を所定条件に変化させる環境試験装置に関する。」

b 【0064】~【0066】、【図12】

「【0064】
また、上述した第1実施形態においては、試験体9を回転させることができなかったが、カバーに種々の装置を設けることによって試験体9を回転させてもよい。例えば、図12に示すように、上部カバー860の上部中央から延在する軸827と、この軸827の一端を支持しつつ、軸827を回転させるモータ841と、軸827の他端に回転板801とを設ける。そして、回転板801上に被試験体9を載置する。図示しない制御装置からの制御によりモータ841が駆動することにより、回転板801が回転し、被試験体9を回転させることができる。
【0065】
さらに、上述した第1~第6の実施形態において、カバーにランプやガス供給装置など、気体調節室25によって調整される温湿度以外の試験環境設備を備えてもよい。これにより、筐体12を含めて環境試験装置全体を取り替える必要なく、適宜、試験条件・目的に応じたカバーを用いることで、環境試験を行うことができる。
【0066】
加えて、上述した第1~第6の実施形態において、送風機19はモータ42を有していたが、このモータは、油圧モータでもエアモータでもいかなるモータであってもよい。このとき、例えば、この環境試験装置が電波暗室などの不要輻射波の測定を行う環境で用いられる場合においては、エアモータを使用することにより、電磁波が発生しないので、不要輻射波の測定精度が低下しない。」
「【図12】
[図:0001405379000009.jpg]
」

(イ) 引用文献4に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2008-166474号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。

a 【0015】~【0025】、【図1】、【図2】

「【0015】
図1は、本発明の一実施形態による環境試験装置1が電波暗室100内に配置されたときの概略構成図である。図1に示す電波暗室100は、外部から遮蔽された電磁シールド室101を有している。電磁シールド室101は、電磁シールド性を有する床102、図1中前後左右の4つの電磁シールド壁103及び各電磁シールド壁103の上面に配設された電磁シールド性を有する天井104により、外部から遮蔽された空間である。そして、電磁シールド室101の内面、すなわち、床102、天井104及び各電磁シールド壁103の内面には、電波吸収体105が配設されている。これにより、電磁波が電波暗室100の外部から電磁シールド室101内に入らなくなる。
【0016】
図1中左側の電磁シールド壁103とその内面の電波吸収体105の下部には、電磁シールド室101と外部とを連通する連通孔110が形成されている。床102上の電波吸収体105には、被試験体9を収容し且つ被試験体9の周囲温湿度を所定条件に設定する環境試験装置1と、圧縮空気を貯溜するエアタンク2と、測定用のアンテナ121を支持する支持台122とが配設されている。なお、被試験体9は環境試験装置1により、アンテナ121は支持台122により所定の位置及び姿勢で支持される。また、アンテナ121の上下方向の位置は、支持台122に沿って可変に設定することができ、種々の高さ位置において被試験体9から放射される不要輻射波を測定することができる。
続きを表示(全22行)
【0017】
アンテナ121は、図1に示すように、フレキシブルケーブル123と接続されている。フレキシブルケーブル123は、アンテナ121の後端(図1中左端)の接続部121aからアンテナ121の後方において、電磁シールド室101内における床102に向けて垂れ下がり、電波吸収体105上を這うように延長し、連通孔110を通って電波暗室100の外部に引き出されている。そして、フレキシブルケーブル123が、電波暗室100の左側に隣接して配置された測定器125と接続されている。本実施形態において、フレキシブルケーブル123は、同軸ケーブルよりなるものであるが、他の種類のケーブルであってもよい。
【0018】
また、図1中右側の電磁シールド壁103とその内面の電波吸収体105の下部には、電磁シールド室101と外部とを連通する連通孔115が形成されている。連通孔115には、電波暗室100の右側に隣接して配置されたエアコンプレッサ3とエアタンク2とを繋ぐエアホース4が通されている。エアコンプレッサ3は、電波暗室100の外部に配置されているので、エアコンプレッサ3が駆動することで発生する電磁波が電磁シールド室101内に入り込まない。また、エアタンク2には、エアホース4以外に2本のエアホース5,6がそれぞれ接続されており、これらエアホース5,6は環境試験装置1に含まれる2つのエアモータ41,42とそれぞれ接続されている。エアホース5,6とエアタンク2との接続箇所には、電磁バルブ(図示せず)がそれぞれ配置されている。これら電磁バルブは、開閉するだけのものであり、被試験体9の不要輻射波を測定する前に閉状態から開状態とされ、不要輻射波の測定が終了したときに閉状態とされる。そのため、電磁バルブの開閉動作時に生じる電磁波の影響が被試験体9の不要輻射波の測定に影響を与えることはない。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態による環境試験装置の概略断面図である。図3は、本発明の一実施形態による環境試験装置のカバー15を取り外した状態における平面図である。図2に示すように、環境試験装置1は、内部に空調室25(後述する)を有する金属製の筐体12と、筐体12の上面13を覆うように筐体12の上面13上に取り付けられたカバー15とを含んでいる。
【0020】
カバー15は、上部が塞がった円筒形状を有しており、筐体12に取り付けられたときに、筐体12とで被試験体9を取り囲む試験室14を構成する。本実施形態におけるカバー15は、電波透過性を有し断熱性の優れる発泡スチロールからなるが、樹脂など電波透過性を有する材質であればどうような材質からなっていてもよい。
【0021】
筐体12は、円筒状の側壁21と、側壁21の上面及び下面に設けられた天井22及び床23とを有している。そして、筐体12は、側壁21、天井22及び床23によって囲まれた空間25内に、加熱器33と、加湿器34とが設けられている。また、筐体12には、除湿及び冷却手段となるヒートパイプ31及びペルチェ素子32が設けられている。これらヒートパイプ31、ペルチェ素子32、加熱器33及び加湿器34によって空間25内の空気の温湿度を所定温湿度に調整する温湿度調整手段を構成している。つまり、空間25は、空調室25となっている。
【0022】
また、筐体12の上部外周側面には、カバー15が取り付けられたときに、カバー15を支持する4つの支持部材17が設けられている。これら4つの支持部材17は、上面13よりも上方に突出して形成されており、天井22の中心を点対称として配置されている。
【0023】
ヒートパイプ31は、側壁21を貫通しつつ側壁21に固定されており、一方の端部が空調室25内に配置され、他方の端部が空調室25の外側に配置されている。ヒートパイプ31の一方の端部であって空調室25内にある方は、吸熱フィン71が固定されている。これにより、空調室25内の空気を効果的に吸熱及び除湿することができる。一方、ヒートパイプ31の他方の端部には、ペルチェ素子32が固定されている。
【0024】
ペルチェ素子32は、空調室25の外に配置されており、一方の面32aにヒートパイプ31が固定されており、他方の面32bに放熱フィン72が固定されている。そして、ペルチェ素子32は、図示しない制御装置からの制御により電流が流されることで、一方の面32aが冷却されヒートパイプ31及び吸熱フィン71を介して空調室25の空気を冷却及び除湿する。このとき、ペルチェ素子32の他方の面32bが発熱するが、他方の面32bには放熱フィン72及び吸熱ファン(図示せず)が固定されているので、ペルチェ素子32からの発熱を効果的に放熱させることができる。これにより、空調室25を効果的に冷却及び除湿することが可能となる。なお、ペルチェ素子32が動作していない場合は、ヒートパイプ31の熱移動が停止され断熱が保たれる。一方、加熱器33は、図示しない制御装置からの制御により、空調室25の空気を加熱する。また、加湿器34は、図示しない制御装置からの制御により、空調室25の空気を加湿する。
【0025】
天井22は、図3に示すように、円形平面形状のターンテーブル26と、ターンテーブル26をガイドするガイド部材24とを有している。ガイド部材24は、ターンテーブル26の側周面から側壁21の上面まで延在している。ターンテーブル26は、その中心が天井22の中心と重なる位置に配置されており、被試験体9を載置するステージとなっている。ターンテーブル26の中心には、空調室25を横切って上下方向(上面13に対して垂直な方向)に延在する軸27が固定されている。筐体12の床23には、軸27の一端を回転可能に支持するエアモータ41が設けられている。このエアモータ41は、エアホース5の一端と接続されており、エアタンク2から空気が供給されることにより駆動し、軸27を回転させる。また、空調室25には、軸27が挿通されたロータリーエンコーダ(センサ)28が配置されている。これにより、アンテナ121に対する被試験体9の角度が何度であるかを検知することができる。そのため、被試験体9をアンテナ121に対して所定角度とした場合の被試験体9の不要輻射波を測定することができる。」
「【図1】
[図:0001405379000010.jpg]
」
「【図2】
[図:0001405379000011.jpg]
」

(ウ) 引用文献5に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2012-80022号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。

a 【0022】、【図1】

「【0022】
図1は、本発明による温湿度調整機構の第1の実施の形態の構成の概略図である。図1はターンテーブルのない電波暗室で、小型の被試験体に対して本発明を適用したものである。図1において、本実施の形態の温湿度調整機構1は、電波暗室2内にて行われるEMC試験の際に被試験体8の周囲の温度および湿度を所定の条件に保持するために用いる温湿度調整機構であって、電波暗室2のシールド床3の一部に設けた孔4と、電波暗室2の外部に設けた温度および湿度を調整する温湿度調整手段7と、温湿度調整手段7と孔4とを通気可能に接続する手段であるダクト9と、孔4と被試験体8の間に設置した絶縁材料からなる台6と、被試験体8と孔4と台6の全体を覆う透明な絶縁材料からなるカバー5とからなり、台6とカバー5はシールド床3からの取り外しが可能となっている。」
「【図1】
[図:0001405379000012.jpg]
」

b 【0028】~【0031】、【図2】

「【0028】
図2は、本発明による温湿度調整機構の第2の実施の形態の構成の概略図である。図2はターンテーブルのある電波暗室20で、大型の被試験体28に対して本発明を適用したものである。
【0029】
本実施の形態の温湿度調整機構21の基本的な構成は第1の実施の形態と同様であり、シールド床23の一部にターンテーブル10を有することが第1の実施の形態と異なっている。
【0030】
ターンテーブル10は、被試験体を回転させて行う試験で用いられる。ターンテーブル10は、温湿度調整手段7に接続されたダクト9からの温湿度調整された空気を、回転の妨げとならずに流入できるように、その中央部に孔24を設けている。また、ターンテーブル10は従来知られている電波暗室で通常用いられるものである。ダクト9は、従来の電気ケーブル等の接続と同様に回転に支障のないように接続、配置される。台26は被試験体28が大型のため背の低いものを使用するが、温湿度調整された空気の流出入に支障がない脚付き構造である必要がある。
【0031】
電波暗室20の中にあるターンテーブル10の径が3m、試験空間高さが2mとした場合、被試験体28を覆うカバー25の大きさは最も大きいものでもφ3.5m×H2.5m程度であるが、この大きさに収まらなければならないということはない。しかしながら、被試験体と空間を保った上で出来るだけ小さい方がエネルギーの抑制効果が高い。」
「【図2】
[図:0001405379000013.jpg]
」

(エ) 周知技術1の認定

前記(ア)~(ウ)において摘記した引用文献3~5の記載事項に例示されるように、周知技術として、次の技術的事項(以下「周知技術1」という。)が認められる。

[周知技術1]

「電波暗室において、被試験体の温度特性試験のために設けられたカバーの内部において、被試験体の姿勢を変化させるためのターンテーブルを設けること。」

エ 引用文献7、8に記載された事項及び技術常識2の認定

(ア) 引用文献7に記載された事項

特開2019-135462号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の事項が記載されている。

a 【0001】~【0002】

「【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、スマートフォン、タブレット、無線ルータ等の無線端末の送受信特性を測定する際に用いる無線端末測定装置に関し、特に、次世代(第5世代)の無線端末に割り当てられた24.25GHz/28GHz/39GHzなどのミリ波帯を用いる無線端末の特性を正確に測定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線端末の送受信の特性を、実際の電波を用いて測定する方法として、電波暗室や電波暗箱の内部に、測定対象の無線端末と測定用アンテナを配置し、測定用アンテナに対する無線端末の姿勢を相対的に変化させながら、無線端末と測定用アンテナとの間で電波を送受信することで、評価に必要な測定値を全方位について得る、所謂OTA(OverTheAir)環境試験が従来から用いられている。」

(イ) 引用文献8に記載された事項

特開平10-93287号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の事項が記載されている。

a 【0002】~【0005】

「【0002】
【従来の技術】近年、極超短波(UHF)を利用した様々な通信機器が実用化されおり、その研究開発や製造においては、電磁波性能試験や感度試験などを?繁に行う必要性が生じている。従来、これらの試験は電波暗室で行われていた。電波暗室は、電磁的にシールドされた部屋の周囲の壁面、天井、床面全てに電波吸収体を貼り付け、外部から侵入する電磁波を遮断し、内部で発生する電磁波を吸収する特別な構造の部屋である。簡易的な場合でも、縦横高さがいずれも数m程度(例えば、5m×8m×4m)のかなり大きな測定空間であり、内部に作業者が立ち入れるような大型設備である。電波吸収体としては、例えばフェライトタイル(フェライトの平板状焼結品)やピラミッド型の誘電体が用いられている。【0003】周知のように、最近、様々な小型無線機器が開発・製造されており、例えば、800MHz帯のアナログ式携帯電話機、1.5GHz帯のGPS(全世界測位システム)アンテナやデジタル式携帯電話機、1.9GHz帯のPHS(簡易型携帯電話機)、2.5GHz帯の無線LAN、VICS(道路交通情報通信システム)、ワイヤレスカードなどがある。従来技術では、これらは全て同じ電波暗室を使って試験している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】電波暗室は、上記のような様々な周波数帯の被測定機器について、その大きさを問わず、高精度で測定できる利点があり、極めて重要な測定空間を提供している。しかし、測定精度を高く維持すること、広い周波数帯域に対応できるようにすること、などのために、厚いフェライトタイルや嵩張るピラミッド型の電波吸収体を内壁全面に取り付ける必要があり、非常に広い設置スペースを必要とし、施工面においても時間とコストがかかる欠点がある。特に、測定する必要のある機器の数や種類が増えると、電波暗室を多数設備しなければならず、上記の欠点は極めて重大な問題となる。
【0005】ところが、実際の研究開発や製造技術の改良、製品検査などでは、特定の周波数帯を使用している量産化されている被測定機器等について、さほど厳密な測定結果は必要とせず、とりあえず簡易的な測定試験や検査を行い、おおよその測定レベルあるいは相対的な値や傾向が分かれば十分である場合も多い。そのような用途では、電波暗室のような大型で高価な測定空間ではなく、小型で且つ安価な測定空間が求められている。しかし、単に小型で安価というだけではなく、できるだけ性能の優れたものが求められることは言うまでもない。
【0006】本発明の目的は、特定の周波数を使用する被試験機器について、その指定周波数帯域に対応していて、壁面での反射によって生じるモードが抑えられ電波吸収性能も優れており、簡易的な測定試験や検査を安定に行える小型で安価な測定空間となる電波暗箱を提供することである。」

(ウ) 技術常識2の認定

前記(ア)及び(イ)において摘記した引用文献7及び8の記載事項に例示されるように、次の技術的事項は技術常識(以下「技術常識2」という。)であると認められる。

[技術常識2]

「無線端末の試験を、簡易的又は安価に行う場合に、電波暗室ではなく電波暗箱を用いること。」

(3) 対比・判断

ア 対比

(ア) 対比分析

本件補正発明と引用発明を対比する。

a(a) 引用発明の「電子機器からの放射電磁波を評価する電波暗室」は、次の(i)及び(ii)の点を備えるから、被試験アンテナを有する被試験対象の送信特性又は受信特性の温度依存性を測定する温度試験装置であるといえる。

(i) 電子機器112から放射される電磁波をアンテナ116により、例えば、水平/垂直偏波として受信し、この特性を評価し、または、アンテナ116から電波を放射して、電子機器112の動作の変化を評価する、特性測定器122を備える点。

(ii) 電波吸収性部材を含む電波吸収体108を配設した電磁シールド室102内において被試験体たる送受波機器である電子機器112の周囲温度を一定に保つことができるようになるため、電子機器112から放射または受信される電磁波による温度特性評価への影響を低減することができるようになり、電子機器112において送受される電波の温度特性測定精度を向上することが可能なものである点。

(b) したがって、本件補正発明と引用発明は、「被試験アンテナを有する被試験対象の送信特性又は受信特性の温度依存性を測定する温度試験装置」の発明である点において一致する。

b(a) 引用発明の「電波暗室100」の「外部から遮蔽された電磁シールド室102」は、「周囲の電波環境に影響されない内部空間」であるといえる。

(b) そうすると、「周囲の電波環境に影響されない内部空間(51)を有する電波暗箱(50)」を備える本件補正発明と「外部から遮蔽された電磁シールド室102を備える電波暗室100」を備える引用発明とは、次の点において共通する。

「周囲の電波環境に影響されない内部空間(51)を有し、当該空間を覆い、漏洩電波を十分に減衰・遮蔽する設備」を備える点。

c(a) 引用発明の「測定用のアンテナ116」は、「電磁シールド室102内における床104の表面104aに形成された電波吸収体108上に配設された第2支持台118に支持され」たものであるから、電磁シールド室102に収容されているものである。

(b) また、引用発明の「測定用のアンテナ116」は、「特性測定器122」が「電子機器112から放射される電磁波をアンテナ116により、例えば、水平/垂直偏波として受信し、この特性を評価し、または、アンテナ116から電波を放射して、電子機器112の動作の変化を評価する」際に、「電子機器112から放射される電磁波を」「受信し」、また、「電子機器112の動作の変化を評価する」ために「電波を放射」するものである。

(c) 前記(a)(b)及び前記b(b)を踏まえると、引用発明の「電磁シールド室102内における床104の表面104aに形成された電波吸収体108上に配設された第2支持台118に支持された測定用のアンテナ116」は、本件補正発明の「前記内部空間に収容され、前記被試験対象の送信特性又は受信特性を測定するための無線信号を前記被試験アンテナとの間で送信又は受信する試験用アンテナ(6)」に相当する。

(d) したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。

「前記内部空間に収容され、前記被試験対象の送信特性又は受信特性を測定するための無線信号を前記被試験アンテナとの間で送信又は受信する試験用アンテナ」を備える点。

d(a) 引用発明の「第1支持台114」は、「被試験体たる送受波機器としての電子機器112」を「所定の位置および姿勢で支持」するものである。

(b) また、引用発明の「第1支持台114」は、「電磁シールド室102内における床104の表面104aに形成された電波吸収体108上に配設された」ものであるから、電磁シールド室102に収容されているものである。

(c) そうすると、「前記内部空間におけるクワイエットゾーン(QZ)内に配置された前記被試験対象の姿勢を順次変化させる姿勢可変機構(56)」を備える本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。

「前記内部空間に配置された前記被試験対象を保持する手段」を備える点。

e(a) 引用発明の「カバー12」を構成する「保温性のよい素材」が、本件補正発明の「断熱筐体(70)」の「断熱材」に相当することは、明らかである。

(b) そして、引用発明の「カバー12」は、「電子機器112全体を囲う」ものであるから、「電磁シールド室102」に収容されている。

(c) 前記(a)(b)及び前記b(b)を踏まえると、引用発明の「被試験体である送受波機器たる電子機器112全体を囲う、電磁波に影響せずに保温性のよい素材で構成することが好ましいカバー12」と、本件補正発明の「前記内部空間に収容され、前記クワイエットゾーンを含む空間領域(71)を取り囲む断熱材からなる断熱筐体(70)」とは、「前記内部空間に収容され、被試験対象が含まれる空間領域を取り囲む断熱材からなる断熱筐体」である点で共通する。

(d) したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。

「前記内部空間に収容され、被試験対象が含まれる空間領域を取り囲む断熱材からなる断熱筐体」を備える点。

f(a) 引用発明の「設定温度を変更可能な空調設備20」は、「空調設備20を稼働することによって」、「カバー12」「内の温度は変更可能かつ任意の一定温度に保持可能」となるものであり、「温度は変更可能かつ任意の一定温度に保持可能」であることから、複数の所定の温度に保持可能であることは明らかである。

(b) そうすると、引用発明の「設定温度を変更可能な空調設備20」は、本件補正発明の「前記空間領域の温度を複数の所定温度に制御可能な温度制御装置(30)」に相当する。

(c) したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。

「前記空間領域の温度を複数の所定温度に制御可能な温度制御装置」を備える点。

g(a) 引用発明の「特性測定器122」は、本件補正発明の「測定装置(20)」に相当する。

(b) 引用発明は、「電波吸収性部材を含む電波吸収体108を配設した電磁シールド室102内において被試験体たる送受波機器である電子機器112の周囲温度を一定に保つことができるようになるため、電子機器112から放射または受信される電磁波による温度特性評価への影響を低減することができるようになり、電子機器112において送受される電波の温度特性測定精度を向上することが可能となる」ものである。

(c) したがって、引用発明においては、「電子機器112全体を囲うカバー12」内の温度が制御された状態で、「特性測定器122」により、電子機器112において送受される電波の温度特性が測定されているといえる。

(d) そうすると、「前記温度制御装置により前記空間領域の温度が制御された状態で、前記姿勢可変機構により前記被試験対象の姿勢が変化されるごとに、前記被試験対象の送信特性又は受信特性の測定を行う測定装置(20)」を備える本件補正発明と、引用発明は、次の点において共通する。

「前記温度制御装置により前記空間領域の温度が制御された状態で、前記被試験対象の送信特性又は受信特性の測定を行う測定装置」を備える点。

h(a) 引用発明の「カバー12」は「直方体形状」であるから、平板状部分を有することは明らかである。

(b) また、引用発明の「カバー12」は、「被試験体である送受波機器たる電子機器112全体を囲う」ものであるから、電子機器112において送受される電波が、前記平板状部分を通過することも明らかである。

(c) そうすると、「前記試験用アンテナから送信された無線信号の電波が前記クワイエットゾーンに入射する前に通過する前記断熱筐体の領域において、前記クワイエットゾーンに入射する前記無線信号の電波の進行方向に垂直な平板状部分(70a)が形成され」る本件補正発明と、引用発明は、次の点において共通する。

「前記試験用アンテナから送信された無線信号の電波が通過する前記断熱筐体の領域において、平板状部分が形成され」る点。

(イ) 一致点及び相違点の認定

前記(ア)の対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次のaに示す一致点において一致し、後記のbに示す相違点において相違する。

a 一致点

「被試験アンテナを有する被試験対象の送信特性又は受信特性の温度依存性を測定する温度試験装置であって、
周囲の電波環境に影響されない内部空間を有し、当該空間を覆い、漏洩電波を十分に減衰・遮蔽する設備と、
前記内部空間に収容され、前記被試験対象の送信特性又は受信特性を測定するための無線信号を前記被試験アンテナとの間で送信又は受信する試験用アンテナと、
前記内部空間に配置された前記被試験対象を保持する手段と、
前記内部空間に収容され、被試験対象が含まれる空間領域を取り囲む断熱材からなる断熱筐体と、
前記空間領域の温度を複数の所定温度に制御可能な温度制御装置と、
前記温度制御装置により前記空間領域の温度が制御された状態で、前記被試験対象の送信特性又は受信特性の測定を行う測定装置と、
を備え、
前記試験用アンテナから送信された無線信号の電波が通過する前記断熱筐体の領域において、平板状部分が形成された、
温度試験装置」である点。

b 相違点

(a) 相違点1

本件補正発明においては、

被試験対象が配置される部分を含む内部空間に「クワイエットゾーン(QZ)」が形成され、

「クワイエットゾーン(QZ)」は、「前記内部空間に収容され、所定の回転放物面を有するオフセットパラボラ型のリフレクタ(7)」であって、「前記回転放物面から定まる焦点位置(F)に配置された前記試験用アンテナと前記被試験アンテナとの間で送受信される無線信号の電波を、前記回転放物面を介して反射する」リフレクタにより形成されており、

断熱筐体の平板状部分に関して、「前記試験用アンテナから送信された無線信号の電波が前記クワイエットゾーンに入射する前に通過する前記断熱筐体の領域において、前記クワイエットゾーンに入射する前記無線信号の電波の進行方向に垂直な平板状部分(70a)が形成され[て]」おり、

周囲の電波環境に影響されない内部空間を有し、当該空間を覆い、漏洩電波を十分に減衰・遮蔽する設備が、「電波暗箱」であるのに対して、

引用発明においては、「クワイエットゾーン(QZ)」が形成されていることの特定はなく、「リフレクタ(7)」に対応する構成を有しておらず、

周囲の電波環境に影響されない内部空間を有し、当該空間を覆い、漏洩電波を十分に減衰・遮蔽する設備が「電波暗室」である点。

(b) 相違点2

内部空間に配置された被試験対象を保持する手段が、

本件補正発明においては、被試験対象の姿勢を順次変化させる姿勢可変機構であって、

測定装置は、前記被試験対象の姿勢が変化されるごとに測定を行うものであるのに対して、

引用発明においては、

内部空間に配置された被試験対象を保持する手段は、電子機器112を所定の姿勢で支持する第1支持台114であって、被試験対象の姿勢を順次変化させるものではなく、

特性測定器122(「測定装置」に相当する。)は、電子機器112の姿勢が変化されるごとに測定を行うものではない点。

イ 判断

(ア) 相違点1について

前記(2)イ(イ)において技術常識1として示したとおり、「供給アンテナ(Feed Antenna)」からの電波が「所定のクワイエット・ゾーン直径を有」する「平面波に変換」される「間接遠方界(IFF)測定セットアップ」によって、「被試験デバイス(DUT)」について、「ユーザー端末RF特性の試験を行うこと」は、当業者における技術常識である。この間接遠方界(IFF)測定セットアップでは、所定のクワイエット・ゾーン直径を有する領域が「クワイエット・ゾーン」となり、被試験デバイス(DUT)は「クワイエット・ゾーン」に配置されるものとなる。

また、技術常識1として示したとおり、所定のクワイエット・ゾーン直径を有するクワイエット・ゾーンにおける、「供給アンテナ(Feed Antenna)からの球面波の電波を被試験デバイス(DUT)に向かう平面波」への変換を、「回転放物面の一部からなるオフセット放物面反射鏡」を用いて行うことも、技術常識である。

したがって、引用発明の「電波暗室」において、技術常識1の「間接遠方界(IFF)測定セットアップ」を選択採用して、被試験デバイス(DUT)をクワイエット・ゾーンに配置し、「回転放物面の一部からなるオフセット放物面反射鏡」を用いた「間接遠方界(IFF)測定セットアップ」を採用して、「ユーザー端末RF特性の試験」を行うことは、当業者にとっては、適宜選択できる設計変更にすぎない。

そして、この場合、平面波が直方体形状のカバー12を構成する平板状部分に垂直に入射するように設定することは、最も自然な設定にすぎない。

さらに、前記(2)エ(ウ)において技術常識2として示したとおり、無線端末の試験を、簡易的又は安価に行う場合に、電波暗室ではなく電波暗箱を用いることは、当業者における技術常識であるから、「回転放物面の一部からなるオフセット放物面反射鏡」を用いた「間接遠方界(IFF)測定セットアップ」を採用した際には、小型で簡易的なものとなることを踏まえ、電波暗室ではなく電波暗箱となるようにすることもまた、当業者が適宜選択できる設計変更にすぎない。

したがって、引用発明において、技術常識1及び技術常識2に基づいて、前記相違点1に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得た設計変更にすぎない。

(イ) 相違点2について

前記(2)ウ(エ)において周知技術1として示したとおり、電波暗室において、被試験体の温度特性試験のために設けられたカバーの内部において、被試験体の姿勢を変化させるためのターンテーブルを設けることは、周知であり、引用発明において、アンテナと被試験体との位置関係を変えるために周知技術1を採用して適用することは、当業者にとっては容易になし得る設計変更にすぎない。

そして、実際に試験するに際して、被試験体の姿勢が変化するごとに特性測定器122に測定を行うことは、自明の選択肢にすぎない。

したがって、引用発明において、周知技術1を採用して、前記相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得た設計変更にすぎない。

(ウ) 総合評価

前記(ア)及び(イ)において検討したとおり、引用発明において前記相違点1及び相違点2を備えることは、技術常識1、2及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、前記相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。

したがって、本件補正発明は、引用発明、技術常識1、2及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 請求人の主張について

請求人の審判請求書における主張、及び、当該主張に対する合議体の判断は、以下のとおりである。

(ア) 請求人の主張1

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a 請求人の主張1の内容

本件補正発明は、引用文献1に記載された床に立設された電波暗室とは異なり、「電波暗箱」を備える温度試験装置に関する発明である。引用文献1からは、具体的な電波暗室の寸法についての記載を確認することができないが、この電波暗室は、名称からして作業者が入室できる程度の広さの試験空間を有していると考えられる。したがって、引用文献1の「電波暗室」の記載のみで制限された広さの試験空間において、より狭い試験空間で用いられるIndirect far field (IFF) methodをあえて適用することは容易に想到できるものではない。

b 請求人の主張1についての合議体の判断

「電波暗箱」と狭義の「電波暗室」は、共に内部空間を覆い漏洩電波を十分に減衰・遮蔽する設備であって周囲の電波環境に影響されない内部空間を提供する点において基本機能を共通するものであり、前者は後者に比較して小型・簡易である点において相違すると認められる。

引用文献1には、電波暗室の大きさについての具体的な記載は無く、また、電波暗室内で行われる電子機器などの被試験体に関する種々の特性評価について、電波暗室の大きさを限定するような記載も無い。

そうすると、引用文献1の電波暗室については、具体的なサイズを捨象して、機能のみに基づいて抽象的に考察することは可能というべきであるから、これを小型・簡易な物にすることは、アイデアとしては想到容易というべきであり、引用文献1の「電波暗室」の記載のみで制限された広さの試験空間において、より狭い試験空間で用いられるIndirect far field (IFF) methodをあえて適用することは容易に想到できるものではないとの請求人の主張1を採用することはできない。

(イ) 請求人の主張2

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a 請求人の主張2の内容

引用文献1の[図1]及び[図2]によれば、アンテナ116と電子機器112は同じ高さに配置されておらず、アンテナ116から放射される電磁波の強度分布や波面の記載も無いことから、カバー12の面に対してアンテナ116から放出される電波が垂直に入射されるようになることは自明でない。

b 請求人の主張2についての合議体の判断

前記イ(ア)の「相違点1について」において示したとおり、引用発明において、間接遠方界(IFF)測定セットアップを採用すると、被試験デバイス(DUT)(電子機器112)はクワイエット・ゾーンに配置され平面波が照射されることになるから、平面波が直方体形状のカバー12を構成する平板状部分に垂直に入射するように設定することは、最も自然な設定にすぎない。

したがって、請求人の主張2を採用することはできない。

(ウ) 請求人の主張3

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a 請求人の主張3の内容

本件補正発明の、オフセットパラボラ型のリフレクタを使用した構成では、試験用アンテナ6から放射された球面波は、オフセットパラボラ型のリフレクタ7で反射され、円柱状の平面波となる。リフレクタ7で反射された平面波は、断熱筐体70の平板状部分70aに垂直に入射し、平板状部分70aにおける透過減衰量は均一となる。

このため、本件補正発明は、段落[0077]に記載された、等価等方放射電力、全放射電力、スプリアス放射、送信パワー、スペクトラム、受信感度、ビット誤り率(BER)、パケット誤り率(PER)などの「測定結果が安定する」という顕著な効果を有する。

b 請求人の主張3についての合議体の判断

前記(イ)bにおいて示したとおり、引用発明において、間接遠方界(IFF)測定セットアップを採用した際に、平面波が直方体形状のカバー12を構成する平板状部分に垂直に入射するように設定することは、最も自然な設定にすぎないところ、この場合、カバー12を構成する平板状部分における平面波の透過減衰量は、本件補正発明と同様に均一となることは自明である。

請求人が主張する「測定結果が安定する」という効果は、当該構成のものとして予測・発見困難なものとはいえない。しかも、前記構成は、技術常識1から当業者が自明である以上、格別顕著な効果と評価できるものではない。

したがって、請求人の主張3は採用することができない。

エ 小括

以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明について

本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~4に係る発明は、令和4年2月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるとおりである。

2 原査定における拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由(進歩性)のうち、請求項1に係るものは、概略次のとおりである。

理由(進歩性)

この出願の請求項1に係る発明は、その出願日前に日本国内又は外国において発行された下記の引用文献1に記載された発明、下記の引用文献2に例示される周知技術1及び下記の引用文献3~5に例示される慣用技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献1 特開2005-347524号公報

引用文献2 “3GPP TR 38.810 V16.2.0 (2019-03)”,[online],2019年03月,[検索日2022.01.04], インターネット<URL: https://www.3gpp.org/ftp//Specs/archive/38_series/38.810/38810-g20.zip >,pp. 20-25, 104-114

引用文献3 特開2008-164424号公報

引用文献4 特開2008-166474号公報

引用文献5 特開2012-80022号公報

3 引用文献に記載された事項

上記引用文献1には、前記第2の3(2)ア(ウ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。

また、前記第2の3(2)イ(イ)において認定したとおり、引用文献2の記載から技術常識1が、前記第2の3(2)ウ(エ)において認定したとおり、引用文献3~5の記載から周知技術1が、前記第2の3(2)エ(ウ)において認定したとおり、引用文献7及び8の記載から技術常識2が、それぞれ認められる。

4 対比・判断

(1) 本願発明は、本件補正発明における、「所定の回転放物面を有するオフセットパラボラ型のリフレクタ(7)」について、「オフセットパラボラ型の」とする限定を省いたものである(前記第2の2参照)。

(2) そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(3)に記載したとおり、引用発明、技術常識1、2及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、技術常識1、2及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

第4 むすび

以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-013770

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