2022-012377
遮光層付き透明板
- 審判番号
- 2022-012377
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-083096外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年08月08日
- 審決日
- 2023年07月05日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】AGC株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人樹之下知的財産事務所
- 分類
- P18 .121-Z (G09F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成30年4月24日に出願された特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
同年 2月25日付け:拒絶理由通知書
同年 4月15日 :意見書、手続補正書の提出
(同年 5月10日 :原査定の謄本の送達)
同年 8月 8日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~9に係る発明は、令和4年4月15日に提出された手続補正書により補正された請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。
以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。
「 【請求項1】第1の主面および第2の主面を有する透明板と、前記透明板の前記第1の主面に接するように設けられ、赤外線を透過し、可視光を遮蔽する赤外線透過層と、前記赤外線透過層上に設けられ、前記赤外線透過層を露出させる開口部を備え、可視光および赤外線を遮蔽する遮光層と、を備え、前記遮光層は、前記赤外線透過層の縁部のうち、前記透明板の外周から最も近い部分から張り出して前記透明板と接しており、前記遮光層は、前記透明板と接している縁部が、前記赤外線透過層の縁部よりも0.01mm以上、かつ0.5mm以下、前記透明板の外周側に張り出しており、前記遮光層および前記赤外線透過層は、平面形状が枠状であり、前記遮光層の枠の外周縁部が前記透明板と接していることを特徴とする遮光層付き透明板。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由(進歩性)の概要は、次のとおりである。
理由(進歩性の欠如)
本願発明は、本願の出願前に発行された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
第4 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
1 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(1) 引用文献1の記載事項
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原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開2014-52775号公報)には、以下の記載がある。下線は合議体によるもので、後記の引用発明の認定において直接用いるところに付してある。以下同様である。
ア 段落【0001】~【0008】
「【技術分野】【0001】本発明は、表示装置用前面保護板と、これを備えた表示装置に関する。特に、耐光性が改善された遮光層を有する表示装置用前面保護板と、これを備えた表示装置に関する。【背景技術】続きを表示(全34行)【0002】近年、スマートフォン、タブレットPC(パーソナルコンピュータ)など各種表示装置において、表示パネルと組み合わせて使用される位置入力装置として、タッチパネルが急速に普及してきている。タッチパネルは、以前から、電磁誘導方式、抵抗膜方式など各て種方式のものが知られ、各種用途で使用されてきたが、最近その中でも特に注目されてきているのは、マルチタッチ(多点同時入力)が可能な静電容量方式のタッチパネルである。【0003】図26は、タッチパネル20を備えた従来の表示装置200の一例を模式的に示す図である。図26(a)は分解平面図であり、図26(b)の断面図は図26(a)の分解平面図中で、C-C線で従来の表示装置用前面保護板40を切断したときの表示装置用前面保護板40のみの断面図である。タッチパネル20は、表示パネル30に対して、表示パネル30からの表示光の出光側である表側(紙面で手前側)に配置される。さらに、タッチパネル20の保護の為に、前記表示パネル30からの表示光がタッチパネル20を通過して出光する側であるタッチパネル20の表側に、表示装置用前面保護板40が配置される(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。従来の表示装置用前面保護板40は、通常、図26で例示する様に、その表示用領域A1の外周部が不透明領域A2となっており、不透明領域A2には遮光層2が透光性基板1に形成されている。この遮光層2は、通常、着色顔料を樹脂バインダ中に含む着色樹脂層2aによって構成されている。この不透明領域A2によって、表示装置用前面保護板40の裏側に配置されるタッチパネル20が、その外周部に有する配線7やコネクタ等が見えて外観を損ねないようにしている。また、不透明領域A2中には、製品ロゴなどの可視情報8なども適宜設けられ、不透明領域A2は表示装置用前面保護板40の加飾部にもなっている。【0004】表示装置用前面保護板40、タッチパネル20及び表示パネル30の各部材の間は、界面反射による表示光の損失や外光反射を減らして表示を見易くする等のために、空間を設けずに樹脂層で埋めて密着積層することもある。また、薄型化、軽量化、部品点数削減などに対する要求に応えるべく、表示装置用前面保護板40とタッチパネル20との一体化、或いはタッチパネル20と表示パネル30との一体化などの各種一体化の形態が、提案され実用化も始まっている(特許文献1、特許文献2)。【先行技術文献】【特許文献】【0005】【特許文献1】特開2009-193587号公報【特許文献2】実用新案登録第3153971号公報【特許文献3】特開2008-266473号公報(〔0009〕、〔0030〕、図2)【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0006】ところで、不透明領域A2の遮光層2を構成する着色樹脂層2aは、通常、スクリーン印刷によって熱硬化性樹脂の硬化物層として形成される。ただ、スクリーン印刷では位置精度よくパターン形成できない点、膜厚が厚くなりタッチパネル用の透明電極や配線などを一体化する際に段差部分で断線し易い点などがあることから、感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィ法によって、感光性樹脂の硬化物層として形成することが考えられる。しかし、感光性樹脂を用いた着色樹脂層2aは、光重合性化合物を光重合させて形成される為に、露光後に重合反応を完結させるポストベーク処理をしても、経時的な光劣化により変質するためか、正反射光の増大、密着性の低下など、耐光性が不足することがあることが判明した。【0007】そこで、本発明の課題は、表示装置用前面保護板において、遮光層を構成する感光性樹脂を用いた着色樹脂層について、その耐光性を向上させることである。また、こうした表示装置用前面保護板を備えた表示装置を提供することである。【課題を解決するための手段】【0008】本発明では、次の様な構成の表示装置用前面保護板、及び表示装置とした。(1)中央の表示用領域と、この表示用領域の外周部に設けられ可視光を遮蔽する不透明領域とを有する表示装置用前面保護板であって、透光性基板と、この透光性基板の一方の面上の前記不透明領域に設けられ、着色顔料を感光性樹脂の硬化物を用いた樹脂バインダ中に含む着色樹脂層を一構成層とする遮光層と、前記一方の面上に前記着色樹脂層を被覆するように設けられた酸素遮断層と、を少なくとも有する、表示装置用前面保護板。」
イ 段落【0017】~【0023】、【図1】
「【0017】《第1の実施形態》図1(a)の平面図及び図1(b)の部分拡大断面図を参照して、本発明による表示装置用前面保護板の第1の実施形態例を説明する。図1(b)の断面図は図1(a)の平面図中で、C-C線での断面図である。【0018】続きを表示(全17行)図1に示す本実施形態の表示装置用前面保護板10は、中央の表示用領域A1と、この表示用領域A1の外周部に設けられ可視光を遮蔽する不透明領域A2とを有する。本実施形態における表示装置用前面保護板10は、透光性基板1と、この透光性基板1の一方の面である第1面S1において、不透明領域A2に設けられる遮光層2の一構成層として着色樹脂層2aが設けられ、この着色樹脂層2aにより遮光層2は黒色などの色を呈する。【0019】本実施形態においては、遮光層2は透光性基板1の第1面S1上に設けられ、この第1面S1を裏側にして、第2面S2は表示用領域A1を透して見る表示パネルの観察者V側に向けて用いられることを、想定した形態である。【0020】着色樹脂層2aは、着色顔料を、感光性樹脂の硬化物を用いた樹脂バインダ中に含む。着色樹脂層2aは、着色顔料と感光性樹脂の未硬化物とを含む着色感光性樹脂組成物を透光性基板1上に塗布し、フォトリソグラフィ法によってパターニングすることで形成されている。【0021】こうして、本実施形態では、遮光層2は着色樹脂層2aによって黒色などの色意匠を意匠表現しつつ、遮光性も確保した層となっている。このため、遮光層2は、配線7などを隠す機能以外に、表示装置用前面保護板10を加飾する加飾層となっている。【0022】さらに、透光性基板1の遮光層2が形成された後の一方の面である第1面S1の面上には、酸素遮断層3が着色樹脂層2aの全表面を被覆するように形成されている。本実施形態においては、酸素遮断層3は、着色樹脂層2aの部分のみに形成されている。したがって、酸素遮断層3は、表示用領域A1の全面には形成されていない。なお、本実施形態においては、表示装置用前面保護板10は、図1(a)で示すように、製品ロゴなどの可視情報8を有し、酸素遮断層3は、この可視情報8の部分も形成されており、したがって、酸素遮断層3は不透明領域A2の全域に形成されている。【0023】本発明においては、この酸素遮断層3によって、着色樹脂層2aの光劣化を抑制することができ、着色樹脂層2aを用いた遮光層2の耐光性が向上した構成となっている。」
「【図1】[図:0001401287000001.jpg]」
ウ 段落【0025】~【0029】
「【0025】〔表示用領域A1と不透明領域A2〕表示装置用前面保護板10は、図1(a)の平面図で例示したように、中央に表示用領域A1を有し、表示用領域A1の外周部に、可視光を遮蔽する不透明領域A2を有する。表示用領域A1は、表示装置用前面保護板10を表示パネルに適用したときに、表示装置用前面保護板10を透して、表示パネルが表示する内容を表示できる領域である。不透明領域A2は、不透明な、配線7やコネクタなどを隠したり、或いは、表示パネルが外周部に有する配線、コネクタなどを隠したりする為の領域である。また、不透明領域A2は、それが表現する色や模様、適宜設けるロゴやマークなどの可視情報8によって加飾部にもなる領域である。【0026】続きを表示(全16行)〔透光性基板1〕透光性基板1は、少なくとも可視光線に対して透明で、表示装置用前面保護板10を適用する表示パネルに対して、表面を保護し得る機械強度を有するものであれば、特に制限はなく、代表的にはガラス板を用いることができる。とくに、前記ガラス板として、化学強化ガラスはフロートガラスに比べて機械的強度に優れ、その分薄くできる点で好ましい。化学強化ガラスは、典型的には、ガラスの表面近傍について、ナトリウムをカリウムに代えるなどイオン種を一部交換することで、化学的な方法によって機械的物性を強化したガラスである。透光性基板1には、樹脂を用いることも可能である。例えば、前記樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂などを用いることができる。透光性基板1に樹脂を用いることで、軽量にできる上、可撓性を持たせることも可能となる。【0027】〔遮光層2〕本実施形態における遮光層2は、透光性基板1の表示パネル側とする裏側の第1面S1の不透明領域A2の部分に形成されている。遮光層2は、不透明領域A2中の全領域に設けられている。逆に言えば、この遮光層2によって、不透明領域A2が不透明な領域として形成される。本実施形態においては、遮光層2は、透光性基板1の第1面S1と第2面S2のうちの一方の面として第1面S1の面の、不透明領域A2に形成される。遮光層2は、タッチパネルとしての中央の位置検知領域に対して、その外周部に有する配線7や制御回路、或いは表示パネルがその中央の表示領域に対して、その外周部に有する配線や制御回路などを隠して、目視不能にして、表示パネルと組み合わされた表示装置において、外観を損なわないようにする機能を有する。【0028】遮光層2は、不要な部品を隠すための遮光性と共に、外観意匠を向上させる機能も有する。本実施形態においては、遮光層2は着色樹脂層2aを一構成層として有する。そして、この着色樹脂層2aは、酸素遮断層3によって、光に対する耐光性が向上している。この結果、遮光層2の耐光性が向上している。【0029】遮光層2の遮光性は、要求仕様、表現色にもよるが、透過率で言えば大きくても3%以下(光学濃度ODにて1.5以上)、より好ましくは透過率で1%以下(光学濃度OD2.0以上)、さらに好ましくは透過率で0.01%以下(光学濃度OD4.0以上)が望ましい。」
エ 段落【0106】~【0110】、【図6】、【図20】
「【0106】〔赤外透過窓9〕図6の平面図及び図20の部分拡大断面図に示すように、本発明においては、表示装置用前面保護板10は、赤外透過窓9を不透明領域A2に有してしてもよい。赤外透過窓9を設けることによって、赤外線センサに対応したものとできる。【0107】続きを表示(全18行)赤外透過窓9は、例えば、通話時に携帯電話を耳にあてがったときに、タッチパネルの誤作動を防ぐ必要から、また、表示パネルの表示を消して電池寿命を長くする観点などから、人肌の接近を感知する人感センサとして設ける赤外線センサの部分に設けられる。赤外透過窓9は、不透明領域A2内において遮光層2の非形成部として設けられ、可視光に対しては遮光性を示すと共に赤外光に対しては透過性を示す部分として形成される。赤外透過窓9の上記光学性能は、上記光学性能を有する赤外透過層9Lを、赤外透過窓9の部分に形成することで実現できる。赤外透過層9Lを用いるのは、遮光層2の着色樹脂層2aが例えば黒色の場合、黒色顔料としてカーボンブラックを用いると、可視光のみならず赤外光に対しても遮光性となってしまうために、着色樹脂層2aとは材料が異なる層として赤外透過層9Lが必要になることがあるからである。【0108】赤外透過窓9の赤外光に対する透過性は、要求仕様、表現色、赤外透過窓9に適用する赤外線センサなどの赤外利用部品にもよるが、一例を示せば、赤外領域での透過率70%以上にする。前記透過率70%以上とする赤外領域は、必ずしも780nm以上の領域でなくてもよく、例えば850nm以上の領域であれば、充分に対応可能である。なお、透過率70%以上とする赤外領域の上限は、近赤外域、それも通常、1300nmまでを満たせば、対応できる。赤外透過窓9の可視光に対する遮光性は、要求仕様、表現色にもよるが、赤外透過窓9の部分は、通常、スポット的に小さいため、必ずしも、遮光層2の遮光性のレベルに合わせる必要はない。このため、赤外透過窓9の可視光に対する遮光性は、一例を示せば、透過率で言えば大きくても50%以下(光学濃度ODにて0.2以上)、より好ましくは透過率で25%以下(光学濃度OD0.6以上)、さらに好ましくは透過率で10%以下(光学濃度OD1.0以上)が望ましい。こうして、赤外透過窓9は、例えば、赤外光領域に対しては、波長850nm以上1300nm以下で70%以上、可視光領域に対しては10%以下で設ける。なお、この透過率とは、平均値ではなく、各波長毎の値である。【0109】(赤外透過層9L)赤外透過層9Lは、着色樹脂層2aと共に遮蔽層3の一構成層である。赤外透過層9Lは、赤外透過窓9の存在を目立たなくさせるために、通常、着色樹脂層2aと類似色で形成される。そして、赤外透過層9Lは、可視光に対しては遮光性を示すと共に赤外光に対しては透過性を示す。赤外透過層9Lは、カーボンブラックのような黒色顔料は含有させずに、互いに色が異なる有彩色の着色顔料の複数種類、例えば、赤色、黄色、青色を含有させることで、黒色など暗色を表現した層として形成することができる。【0110】赤外透過層9Lと遮光層2との関係は、図20(a)のように着色樹脂層2aよりも先に形成する構成、図20(b)のように着色樹脂層2aよりも後に形成する構成などがある。なお、酸素遮断層3との関係では、赤外透過層9Lは図20(a)では酸素遮断層3よりも先に形成され、図20(b)では酸素遮断層3よりも後に形成される例である。なお、同図に例示する構成では、酸素遮断層3は赤外透過層9Lと重なっているので、可視光及び赤外光において透明とする。」
「【図6】[図:0001401287000002.jpg]」
「【図20】[図:0001401287000003.jpg]」
(2) 引用文献1の記載から認定した事項
ア 遮光層2について
引用文献1の【0018】、【0025】、【0027】、【図1】、【図6】の記載からみて、引用文献1の遮光層2は、表示用領域A1の外周部に設けられる不透明領域A2に形成されているから、その平面視したときの形状が枠状に形成されていると認められる。
イ 赤外透過窓9について
(ア) 引用文献1の赤外透過窓9に関し、平面図を表す【図6】の記載からみて、赤外透過窓9は表示装置用前面保護板10の右上隅に円形状に設けられていることが読み取れる。
(イ) 引用文献1の段落【0110】、部分拡大断面図を表す【図20】(a)の記載からみて、赤外透過窓9の部分にある赤外透過層9Lは、透光性基板1の第1面S1に接して設けられており、不透明領域A2の全域に形成された遮光層2は、赤外透過層9Lの表面が円形状に露出するように円形状の開口部を備えて赤外透過層9Lと一部重なっており、その上に、酸素遮断層3が不透明領域A2の全域に形成されていることが読み取れる。
(ウ) 引用文献1の【図20】(a)の記載において、図の左側は、赤外透過窓9を含んだ表示装置用前面保護板10の外周端部を示しており、図の右側は、表示用領域A1が省略されていることを示しているから、この図において遮光層2は、透光性基板1の外周端部から赤外透過窓9に至るまでの間において透光性基板1に接して設けられていると認められる。
(3) 引用発明の認定
前記(1)において摘記した事項及び前記(2)において認定した事項から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「 中央の表示用領域A1と、この表示用領域A1の外周部に設けられ可視光を遮蔽する不透明領域A2とを有する表示装置用前面保護板10であって、透光性基板1と、この透光性基板1の一方の面である第1面S1において、不透明領域A2に設けられる遮光層2の一構成層として着色樹脂層2aが設けられ、この着色樹脂層2aにより遮光層2は黒色などの色を呈するものであり、(【0018】)遮光層2が設けられた第1面S1を裏側にして、第2面S2は表示用領域A1を透して見る表示パネルの観察者V側に向けて用いられることを想定しており、(【0019】)表示用領域A1は、表示装置用前面保護板10を表示パネルに適用したときに、表示装置用前面保護板10を透して、表示パネルが表示する内容を表示できる領域であり、続きを表示(全17行)不透明領域A2は、不透明な、配線7やコネクタなどを隠したり、或いは、表示パネルが外周部に有する配線、コネクタなどを隠したりする為の領域であり、また、不透明領域A2は、それが表現する色や模様、適宜設けるロゴやマークなどの可視情報8によって加飾部にもなる領域であり、(【0025】)透光性基板1は、少なくとも可視光線に対して透明で、表示装置用前面保護板10を適用する表示パネルに対して、表面を保護し得る機械強度を有するガラス板が用いられ、(【0026】)遮光層2は着色樹脂層2aによって黒色などの色意匠を意匠表現しつつ、遮光性も確保した層となっているため、遮光層2は、配線7などを隠す機能以外に、表示装置用前面保護板10を加飾する加飾層となっており、(【0021】)遮光層2は、不透明領域A2中の全領域に設けられており、(【0027】)遮光層2は、平面視したときの形状が枠状に形成されており、(前記(2)ア認定事項)さらに、透光性基板1の遮光層2が形成された後の一方の面である第1面S1の面上には、酸素遮断層3が、着色樹脂層2aの全表面を被覆するように、不透明領域A2の全域に形成されており、(【0022】)表示装置用前面保護板10は、赤外線センサに対応したものとできるように、赤外透過窓9を不透明領域A2に有しており、(【0106】)赤外透過窓9は、不透明領域A2内において遮光層2の非形成部として設けられ、可視光に対しては遮光性を示すと共に赤外光に対しては透過性を示す部分として形成され、赤外透過窓9の上記光学性能は、上記光学性能を有する赤外透過層9Lを、赤外透過窓9の部分に形成することで実現され、(【0107】)赤外透過層9Lは、赤外透過窓9の存在を目立たなくさせるために、着色樹脂層2aと類似色で形成され、可視光に対しては遮光性を示すと共に赤外光に対しては透過性を示し、カーボンブラックのような黒色顔料は含有させずに、互いに色が異なる有彩色の着色顔料の複数種類、例えば、赤色、黄色、青色を含有させることで、黒色など暗色を表現した層から形成されており、(【0109】)赤外透過窓9は表示装置用前面保護板10の右上隅に円形状に設けられており、(前記(2)イ(ア)認定事項)赤外透過窓9の部分にある赤外透過層9Lは、透光性基板1の第1面S1に接して設けられており、不透明領域A2の全域に形成された遮光層2は、赤外透過層9Lの表面が円形状に露出するように円形状の開口部を備えて赤外透過層9Lと一部重なっており、その上に、酸素遮断層3が不透明領域A2の全域に形成されており、(前記(2)イ(イ)認定事項)遮光層2は、透光性基板1の外周端部から赤外透過窓9に至るまでの間において透光性基板1に接して設けられている、(前記(2)イ(ウ)認定事項)表示装置用前面保護板10。」
2 引用文献4、引用文献6の記載事項及び周知技術1の認定について
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(1) 引用文献4の記載事項
原査定において引用した引用文献4(国際公開第2013/094476号)には、以下の記載がある。
「[0009] 本発明による表示装置用前面保護板は、中央の表示用領域と、この表示用領域の外周部に設けられ可視光を遮蔽する不透明領域とを有し、且つ、前記不透明領域内の一部に赤外光を透過する赤外透過窓が設けられた表示装置用前面保護板であって、透光性基板と、この透光性基板の第1面とこの第1面とは反対側の第2面との少なくとも一方の面の側において前記不透明領域に形成された遮蔽層であって、少なくとも可視光を遮蔽し、前記赤外透過窓となる部分は非形成部として形成された遮蔽層と、前記一方の面の側において前記不透明領域内であって前記遮蔽層の前記非形成部を含む部分に積層された赤外透過層であって、可視光を遮蔽し赤外光を透過する赤外透過層と、を有し、前記赤外透過層は、前記赤外透過窓となる前記非形成部を含んだ前記遮蔽層と前記透光性基板との間の全領域に形成されている。」
「[0023]〔B〕表示装置用前面保護板:本実施形態による表示装置用前面保護板を、図1に示す一実施形態を参照して説明する。図1(a)は、平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示すC-C線に沿った断面における断面図である。[0024] 本実施形態の表示装置用前面保護板10は、図1(a)の平面図に示すように、中央の表示用領域A1と、この表示用領域A1の外周部に設けられ可視光を遮蔽する不透明領域A2とを有し、この不透明領域A2の領域内の一部に赤外光を透過する赤外透過窓4が設けられている。[0025] 図1(b)の断面図に示すように、本実施形態における表示装置用前面保護板10は、透光性基板1と、この透光性基板1の第1面S1とこの第1面S1とは反対側の第2面S2との2面のうちの第2面S2の側において、前記不透明領域A2に形成された遮蔽層3であって、可視光と共に赤外光も遮蔽し、前記赤外透過窓4となる部分は非形成部として形成された遮蔽層3と、前記一方の面の側である前記第2面S2の側において、前記不透明領域内A2であって前記遮蔽層3の非形成部を含む部分に積層された赤外透過層2であって、可視光を遮蔽し赤外光を透過する赤外透過層2とを有する。前記遮蔽層3は、赤外光を透過しない、すなわち、赤外光に遮蔽性(遮光性)を有するため、赤外透過窓4とする部分は、非形成部となっている。一方、前記赤外透過層2は、前記赤外透過窓4となる部分の遮蔽層3の非形成部のみならず、前記透光性基板1と前記遮蔽層3との間の全領域に亘って形成されている。もっとも、図示する例に限定されず、赤外透過層2及び遮蔽層3は、ともに、透光性基板1の第1面S1と第2面S2のうちの少なくとも一方の面の側の不透明領域A2に形成されていればよく、前記一方の面は、第1面S1及び第2面S2のいずれでもよい。」
「[0057]〔遮蔽層3〕図1に例示する実施形態における遮蔽層3は、タッチパネル20及び表示パネル30の側を向く透光性基板1の裏側、すなわち、透光性基板1の第2面S2の側となる不透明領域A2の領域に形成されている。より具体的には、遮蔽層3は、不透明領域A2中の赤外透過窓4の部分を除く全領域に形成されている。この遮蔽層3と前記赤外透過層2とによって、不透明領域A2が、可視光に対して不透明な領域として形成される。遮蔽層3は、可視光には遮光性である前記赤外透過層2と共に、タッチパネル20の中央の位置検知領域に対してその外周部に配置された配線や制御回路、或いは表示パネル30の中央の表示領域に対してその外周部に配置された配線や制御回路などを隠し、これら配線や制御回路を目視不能にする。これにより、遮蔽層3は、タッチパネル20や表示パネル30を用いた表示装置において、外観を損なわないようにする機能を有する。[0058] 遮蔽層3は、少なくとも可視光を遮蔽すれば良く、不透明領域A2としての可視光に対する必要な遮光性を、この遮蔽層3と、前記赤外透過層2の可視光部分での遮光性とによって実現すれば良い。したがって、遮蔽層3単独としての遮光性は、その分、小さくても良く、膜厚を薄くもできる。ただ、遮蔽層3は、黒色を表現する場合で言えば、カーボンブラックの他、チタンブラックのようにカーボンブラックに比べて膜厚が薄くても遮光性に優れた黒色顔料を含有させることができる。したがって、遮蔽層3は、膜厚が薄くても充分な可視光に対する遮光性を得ることが可能である。例えば、遮蔽層3は膜厚1.5μmで光学濃度OD5.0(透過率で10万分の1)の遮光性を容易に実現できる。不透明領域A2としての可視光に対する遮蔽性つまり遮光性は、遮蔽層3と、赤外透過層2とによって得られたものでよい。通常、遮蔽層3及び赤外透過層2との両層合わせての遮光性は、要求仕様、表現色にもよるが、透過率で言えば大きくても3%以下(光学濃度ODにて1.5以上)、より好ましくは透過率で1%以下(光学濃度OD2.0以上)、さらに好ましくは透過率で0.01%以下(光学濃度OD4.0以上)となることが望ましい。[0059] ただし、本実施形態のように、とくに黒色顔料を含有する遮蔽層3それ自体は、透光性基板1、特に化学強化ガラス製の透光性基板1との、高温高湿下での密着性の低下の問題を生じ得る。しかし、これらの間に常に前記赤外透過層2を介在させることで、こうした黒色顔料で黒色を表現した不透明領域A2であっても、高温高湿下での密着性の低下の問題を改善しつつ、赤外透過窓4を前記赤外透過層2によって形成することが可能となる。また、遮蔽層3は、常に前記赤外透過層2を介して透光性基板1に積層されていることから、本実施形態にように、遮蔽層3のみで黒色を表現した場合に遮蔽層3の反射率が高くなり、特に太陽光下などでコントラストが損なわれる現象も、赤外透過層2の存在によって改善することができる。また、赤外透過層2は遮蔽層3に対して表側となる透光性基板1側に、遮蔽層3の形成部及び遮蔽層3の非形成部である赤外透過窓4の部分も含めた領域に積層されている。このため、不透明領域A2の外観色を、赤外透過窓4の部分も含めて一葉(当審注:「一様」の誤記と認める。)な色にできるので、赤外透過窓4を違和感のないデザインで設けることができる。」
「【図1】[図:0001401287000004.jpg]」
(2) 引用文献6の記載事項
原査定において引用した引用文献6(国際公開第2014/156399号)には、以下の記載がある。
「[0063] <実施形態2>本発明の実施形態2を図9によって説明する。この実施形態2では、カバーパネル112に赤外線透過性遮光部41を設けたものを示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。[0064] 本実施形態に係るカバーパネル112には、図9に示すように、遮光部112aに対して積層する形で赤外線を選択的に透過する赤外線透過性遮光部41が設けられている。赤外線透過性遮光部41は、赤外線については透過するものの、可視光線及び紫外線については遮光することができ、例えば近赤外線の透過率が80%程度とされるのに対し、可視光線及び紫外線の透過率がほぼ0%とされる。つまり、赤外線透過性遮光部41は、可視光線については遮光部112aと同様に遮光するため、人間にとっては遮光部112aと同様に「黒色」に見えるものとされる。赤外線透過性遮光部41は、カバーパネル112における裏側の板面、つまり表側近接センサ119A側を向いた内面に形成されている。詳しくは、赤外線透過性遮光部41は、カバーパネル112の内面のうち、液晶パネル111における非表示部NAAの全域と重畳する部分に加えて、液晶パネル111の外周端よりも外側に張り出した外周部分、つまり表示部AA外の領域のほぼ全域に形成されることで、平面に視て縦長の略枠状(略額縁状)に形成されており、その形成範囲が遮光部112aとほぼ同じとされる。赤外線透過性遮光部41は、上記した略枠状の領域においてベタ状のパターンとして形成されており、遮光部112aのように表側近接センサ119Aと重畳する位置に開口部112a1を有していない。つまり、赤外線透過性遮光部41は、遮光部112aの開口部112a1と平面に視て重畳する部分にも配されている。従って、使用者がこの液晶表示装置110を表側から見たとき、カバーパネル112のうち赤外線透過性遮光部41及び遮光部112aの形成部位は、全て黒色に見えることになり、開口部112a1を通して表側近接センサ119Aが見えることがないものとされる。これにより、液晶表示装置110の外観が良好なものとなり、デザイン性を向上させることができる。赤外線透過性遮光部41は、例えばスクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷手段を用いてカバーパネル112の内面に対して直接印刷されている。これに対し、遮光部112aは、赤外線透過性遮光部41の裏側に積層する形で形成されている。[0065] 以上説明したように本実施形態によれば、少なくとも近接センサ119を覆う形で配されるとともに、少なくとも赤外線を透過するものの少なくとも可視光線については遮光する赤外線透過性遮光部41が備えられている。このようにすれば、近接センサ119が少なくとも赤外線を透過するものの少なくとも可視光線については遮光する赤外線透過性遮光部41により覆われるので、外部から使用者により視認され難くなり、当該液晶表示装置110の外観を良好なものとすることができる。」
「【図9】[図:0001401287000005.jpg]」
(3) 周知技術1の認定
前記(1)に摘記した引用文献4の記載及び前記(2)に摘記した引用文献6の記載に例示されるように、次の事項は、本願の出願前において、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。
[周知技術1]
「非表示領域に遮光層及び赤外線透過層を積層した透光性基板からなる表示装置用前面保護板において、赤外線透過窓に対応する領域以外にも赤外線透過層を遮光層に沿って重ねて形成することにより、非表示領域の外観を良好なものにすること。」
3 引用文献7、引用文献8の記載事項及び技術常識1の認定について
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(1) 引用文献7の記載事項
当審において新たに引用する、本願出願前に発行された文献である特開2007-171853号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0003】どちらの製法においても一般に、微細な顔料粒子をワニスのような着色料担体に分散させ、安定な分散体を得ることは難しく、分散体は往々にして経時で顔料粒子の凝集などにより高粘度化し、チキソトロピック性を示すようになる。このような組成物の粘度上昇、流動性不良は、製造作業上の問題や製品価値に種々の問題を引き起こす。例えば、カラーフィルタのフィルタセグメントの形成は、一般にモノマーおよび樹脂を含む担体に顔料が分散されている着色組成物をガラス等の透明基板上に塗布することで行われているが、高粘度、流動性不良の着色組成物を用いると塗布性不良、レベリング不良などにより、膜厚の均一な塗膜を得ることができず好ましくない。このような問題を改善するために、界面活性剤や分散性高分子物質などの分散剤を用いる方法が知られている。しかし、これらの分散剤を用いることでの塗膜の強度低下や現像性、ガラス等の透明基板への密着性、耐久性が低下するという問題が起こっており、カラーフィルタ用着色組成物の流動性確保と、塗膜とガラス等の透明基板との間で強固な密着性を与えるという双方を両立することは困難であった。【特許文献1】特開2003-294935【特許文献2】特開2001-164142【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0004】そこで、本発明は、流動性に優れ、塗膜とガラス等の透明基板との間で強固な密着性を有する、高品質なカラーフィルタ用着色組成物を提供することを目的とする。」
(2) 引用文献8の記載事項
当審において新たに引用する、本願出願前に発行された文献である特開2011-141512号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0004】カーボンブラックを含有する感光性樹脂組成物を紫外線等の露光によって硬化させようとすると、カーボンブラックが300nm~500nm領域の紫外線を吸収してしまう。そのため、感光性樹脂組成物の硬化が不十分となり、上記要求を満足させるものが得られなかった。その他の黒色無機顔料、例えば、銀、錫などの金属を含有する金属顔料やチタンブラックは、カーボンブラックよりも赤外領域の遮光性が高く、かつ300nm~500nmの波長の紫外線の吸収はカーボンブラックに比べれば少ない。しかし、この黒色無機顔料を含有する感光性樹脂組成物を紫外線で硬化させようとすると、依然として硬化が不十分であり、基板への密着性が低いという問題点があった。【0005】近年、遮光性硬化組成物を携帯電話等のカメラモジュール部材に使用する試みがなされている。特に、携帯端末の小型化・薄型化、そして携帯端末の普及により、それに搭載される撮像ユニットにも更なる小型化・薄型化が要請され、生産性が要請される。かかる要請に対して、複数のレンズが形成されたレンズ基板と、複数の固体撮像素子が形成されたセンサ基板とを一体に組み合わせ、その後に、それぞれにレンズ及び固体撮像素子を含むようにレンズ基板及びセンサ基板を切断して撮像ユニットを量産する方法が知られている。また、レンズのみをガラスウエハ上等で作成し、個々のセンサと組み合わせるサイズに切断し、予め個片化された撮像素子と組み合わせて撮像ユニットを作成することができる。また、樹脂のみで金型で複数のレンズを形成し、これらをセンサ基板上に組み合わせ切断する方法、レンズを個々のセンサと組み合わせるサイズに切断し、予め個片化された撮像素子と組み合わせ、撮像ユニットを作成することができる。以下、レンズ基板に形成された複数のレンズの個々のレンズをウエハレベルレンズと呼び、レンズ基板に形成されたレンズ群を、このレンズ基板を含めて、ウエハレベルレンズアレイと呼ぶ。【0006】従来のウエハレベルレンズアレイとしては、ガラス等の光透過性材料で形成された平行平板の基板の表面に硬化性樹脂材料を滴下し、この樹脂材料を金型にて所定の形状に整形した状態で硬化させ、複数のレンズを形成したものが知られている(例えば特許文献6、7参照)。ウエハレベルレンズのレンズの周縁部、或いは、レンズの一部には、光の量を調整するため、黒色膜や金属膜などからなる遮光性の領域が形成されることがある。この遮光性の領域は、一般には、遮光性硬化性組成物を用いてフォトリソグラフィ法により形成されたり、金属を蒸着したりすることで形成される。フォトリソグラフィ法を用いる場合、遮光性硬化性組成物をレンズ及びガラス基板上に塗布し、遮光膜を形成する部分を露光・硬化させ、アルカリ現像液で未露光部の遮光性硬化性組成物を除去することで、黒色膜を形成する。そのため遮光膜には、レンズ部との高い密着性と、ガラス基板上での高い密着性との両者を満たすことが重要となる。しかし、これら両者を満足させることは非常に困難であった。」
(3) 技術常識1の認定
前記(1)に摘記した引用文献7の記載及び前記(2)に摘記した引用文献8の記載に例示されるように、次の事項は、本願の出願前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)。
[技術常識1]
「樹脂及び顔料からなる着色組成物を用いてガラス基板上に有機樹脂膜を形成する場合には、ガラス基板と有機樹脂膜の密着性が低いという課題があること。」
4 引用文献9の記載事項及び周知技術2の認定について
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(1) 引用文献9の記載事項
当審において新たに引用する、本願出願前に発行された文献である特開2002-341143号公報(以下「引用文献9」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 段落【0020】~【0025】
「【0020】しかしながら、光学的等方性基板上に光学的異方性膜が形成される際、接着やスピンコート等により膜が形成されるので、密着性及び応力等が素子特性やその信頼性に影響を与える可能性が高い。そして、密着性が悪くなると密着不良が生じ、この密着不良によって偏光分離素子の初期不良、経時変化による不良、温度による不良等が発生するという問題がある。【0021】さらに、偏光分離素子を製造する際に、膜の剥離等による素子破壊が生じる可能性があるため、安定した製造ができない場合があり、結果的に素子が高価になってしまう。具体的には、偏光分離素子の切り出しの際、素子に大きな力がかかることが多く、素子が壊れ、歩留まりが低下してしまう等の問題がある。【0022】本発明は、光学的等方性基板と光学的異方性膜との密着不良に起因する不良を低減することができる偏光分離素子及びその製造方法を提供することを目的とする。【0023】本発明は、安定した製造ができる偏光分離素子及びその製造方法を提供することを目的とする。【0024】【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、光学的等方性基板上に光学的異方性膜を形成し、その表面に凹凸状の周期構造を形成して、この周期構造の凹部に光学的異方性膜の常光線方向屈折率と異常光線方向屈折率との何れか一方と同じ屈折率である光学的に透明な材料を充填してなる偏光分離素子において、材料によって光学的異方性膜の側面の一部あるいは全ての領域が覆われるようにした。【0025】したがって、材料が光学的異方性膜の側面の一部あるいは全ての領域を覆い光学的等方性基板と密着することによって、光学的等方性基板と光学的異方性膜との密着性が良くなり、密着不良に起因する不良が低減する。さらに、偏光分離素子の強度も上がり、安定した製造が可能になる。」
イ 段落【0042】~【0065】
「【0042】【発明の実施の形態】本発明の偏光分離素子の第一の実施の形態について、図1に基づいて説明する。【0043】図1は、本実施の形態の偏光分離素子1を示し、(a)は外観斜視図、(b)はA-A線断面図、(c)はB-B線断面図である。ここで、図1(a)に示すように、X軸方向が光学的異方性膜2の常光線方向であり、Y軸方向が異常光線方向である。また、図1(c)においては、紙面に平行な方向が常光線方向であり、紙面に垂直な方向が異常光線方向である。【0044】図1(c)に示すように、偏光分離素子1は、光学的等方性基板3上に光学的異方性膜2を接着層4により接着して形成し、この光学的異方性膜2の表面に凹凸状の周期構造である回折格子5を形成して、この回折格子5の凹部5a(図5(d)参照)に光学的異方性膜2の常光線方向屈折率と異常光線方向屈折率との何れか一方と同じ屈折率である光学的に透明な材料6を充填したものである。そして、図1(b)に示すように、光学的異方性膜2の側面を覆うように切欠部7にも材料6が充填されている。つまり、図1に示すように、偏光分離素子1は、異常光線方向と平行で、光学的異方性膜2の対向する2側面それぞれの一部の領域が材料6によって覆われている構成となっている。続きを表示(全20行)【0045】ここで、光学的等方性基板3としては、厚み0.5mmの光学ガラス(材質名BK7)を用いている。また、光学的異方性膜2としては、ポリエステル系の有機高分子材料からなるフィルムを延伸することにより複屈折性を持たせたものを使用している。その屈折率は、常光線方向で1.579、異常光線方向で1.588であり、その屈折率差は約0.01となっている。また、凹凸状の周期構造である回折格子5は、周期が2μmである矩形回折格子5を酸素系のドライエッチングにより形成されたものであり、その深さは4.0μmとなっている。【0046】充填する材料6としては、光学的異方性膜2の常光線方向屈折率と異常光線方向屈折率との何れか一方と同じ屈折率を持つ樹脂が使用されている。本実施の形態の偏光分離素子1においては、屈折率が光学的異方性膜2の常光線方向屈折率と同じ1.579であるアクリル系紫外線硬化樹脂が使用されているが、これに限るものではない。この材料6による凹部5aの充填は、ボッティングの後、スピンコートにより行われている。…(中略)…【0052】このような偏光分離機能を有する本実施の形態の偏光分離素子1においては、材料6が光学的異方性膜2の対向する2側面それぞれの一部の領域を覆い光学的等方性基板3と密着することによって、光学的等方性基板3と光学的異方性膜2との密着性が良くなるので、密着不良に起因する偏光分離素子1の初期不良、経時変化による不良、温度による不良等を低減することができる。また、光学的異方性膜2の対向する2側面それぞれの一部の領域が材料6により覆われることで、偏光分離素子1の強度も上がるため、安定した製造ができる。…(中略)…【0055】本実施の形態の偏光分離素子1の基本的構成は、偏光分離素子1の第一の実施の形態と同じであり、偏光分離素子1の第一の実施の形態との相違点は、図2に示すように、異常光線方向と平行で、光学的異方性膜2の対向する2側面の全ての領域が材料6によって覆われている点である。また、偏光を完全に分離する偏光分離機能は偏光分離素子1の第一の実施の形態と全く同じである。【0056】本実施の形態の偏光分離素子1においても、偏光分離素子1の第一の実施の形態と同様な効果が得られるが、特に、材料6が光学的異方性膜2の対向する2側面の全ての領域を覆うため、偏光分離素子1の第一の実施の形態に比べ、密着性がより良くなり、強度もさらに上がる。【0057】本発明の偏光分離素子の第三の実施の形態について、図3に基づいて説明する。…(中略)…【0059】本実施の形態の偏光分離素子1の基本的構成は、偏光分離素子1の第一の実施の形態と同じであり、偏光分離素子1の第一の実施の形態との相違点は、図3に示すように、光学的異方性膜2の全側面それぞれの一部の領域が材料6によって覆われている点である。また、偏光を完全に分離する偏光分離機能は偏光分離素子1の第一の実施の形態と全く同じである。【0060】本実施の形態の偏光分離素子1においても、偏光分離素子1の第一の実施の形態と同様な効果が得られるが、特に、材料6が光学的異方性膜2の全側面それぞれの一部の領域を覆うため、偏光分離素子1の第一の実施の形態に比べ、密着性がより良くなり、強度もさらに上がる。【0061】本発明の偏光分離素子の第四の実施の形態について、図4に基づいて説明する。…(中略)…【0063】本実施の形態の偏光分離素子1の基本的構成は、偏光分離素子1の第一の実施の形態と同じであり、偏光分離素子1の第一の実施の形態との相違点は、図4に示すように、光学的異方性膜2の全側面の全ての領域が材料6によって覆われている点である。また、偏光を完全に分離する偏光分離機能は偏光分離素子1の第一の実施の形態と全く同じである。【0064】本実施の形態の偏光分離素子1においても、偏光分離素子1の第一の実施の形態と同様な効果が得られるが、特に、材料6が光学的異方性膜2の全側面の全ての領域を覆うため、偏光分離素子1の他の実施の形態に比べ、密着性が最も良くなり、強度も最も上がる。【0065】ここで、光学的異方性膜2の側面が覆われる領域が増えると密着性は良くなり、素子強度は上がる。また、光学的異方性膜2の側面が覆われる領域が減ると広い偏光領域が得られる。」
「【図1】[図:0001401287000006.jpg]」
(2) 周知技術2の認定
前記(1)に摘記した引用文献9の記載に例示されるように、次の事項は、本願の出願前において、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術2」という。)。
[周知技術2]
「光学部材を構成するガラス基板とガラス基板上に設けられた有機膜の密着性を向上させるために、有機膜の上部及び側面を覆ってガラス基板に接する被覆層を設けること。」
5 引用文献10の記載事項及び技術常識2の認定について
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(1) 引用文献10の記載事項
当審において新たに引用する、本願出願前に発行された文献である特開2014-109780号公報(以下「引用文献10」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】本発明は、ベゼル(bezel)を減らした液晶表示装置とその製造方法に関する。【背景技術】【0002】続きを表示(全16行)表示装置分野は、体積か大きい陰極線管(Cathode Ray Tube:CRT)を代替する、薄くて軽く、大面積が可能な平板表示装置(Flat Panel Display Device:FPD)へと急速に変化してきた。平板表示装置には、液晶表示装置(Liquid Crystal Display Device:LCD)、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel:PDP)、有機発光表示装置(Organic Light Emitting Display Device:OLED)、それと電気泳動表示装置(Electrophoretic Display Device :EPD)などがある。この中で液晶表示装置は、液晶分子に印加される電界をデータ電圧に応じて制御して画像を表示する。アクティブマトリックス(Active Matrix)型の液晶表示装置は、工程技術と駆動技術の発達のおかげで価格が下がり、性能が高くなり、小型モバイル機器から大型テレビまで、ほぼすべての表示装置に適用され、最も広く利用されている。【0003】液晶表示装置のメーカーはナローベゼル(Narrow bezel)を実現するための様々な試みをしている。ナローベゼル技術は、同じ大きさの表示パネルにおいて映像が表示される有効画面の大きさを相対的に大きくするために表示パネルの端からの映像が表示されないベゼル(bezel)を最小化する技術である。ナローベゼル技術は、微細工程技術の限界により、ベゼル幅を減らすのに限界がある。…(中略)…【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0005】本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ベゼル幅を最小限に抑えることができる液晶表示装置とその製造方法を提供することにある。…(中略)…【発明の効果】【0010】本発明は、垂直データラインと垂直ゲートラインと垂直共通電圧ラインを含む垂直配線を介して表示パネルの駆動に必要なすべての信号を供給し、表示パネルの左側、右側と下端それぞれのベゼル領域の幅を1.0mm以下に減らすことができる。」
(2) 技術常識2の認定
前記(1)に摘記した引用文献10の記載に例示されるように、次の事項は、本願の出願前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識2」という。)。
[技術常識2]
「表示装置の映像が表示される有効画面の大きさを相対的に大きくするために表示パネルの端にある映像が表示されないベゼル幅を減らすこと。」
第5 本願発明と引用発明の対比
1 対比分析
請求項1における本願発明の特定の順に沿って、本願発明と引用発明を対比する。
(1) 引用発明の「透光性基板1」は、「少なくとも可視光線に対して透明で、表示装置用前面保護板10を適用する表示パネルに対して、表面を保護し得る機械強度を有するガラス板」が用いられるから、本願発明の「透明板」に相当する。
また、引用発明の「透光性基板1」には、「一方の面である第1面S1において、不透明領域A2に設けられる遮光層2の一構成層として着色樹脂層2aが設けられ」ており、当該「一方の面である第1面S1」は、本願発明の「第1の主面」に相当する。
そして、引用発明では、「遮光層2が設けられた第1面S1を裏側にして、第2面S2は表示用領域A1を透して見る表示パネルの観察者V側に向けて用いられることを想定」しているところ、当該「第2面S2」が、本願発明の「第2の主面」に相当する。
したがって、「第1面S1」及び「第2面S2」を有する引用発明の「透光性基板1」は、本願発明の「第1の主面および第2の主面を有する透明板」に相当するから、本願発明と引用発明は、「第1の主面および第2の主面を有する透明板」を備える点で一致する。
(2) 引用発明において、「赤外透過窓9の部分にある赤外透過層9Lは、透光性基板1の第1面S1に接して設けられて」いるところ、引用発明の「赤外透過層9L」は、「可視光に対しては遮光性を示すと共に赤外光に対しては透過性を示[す]」から、本願発明の「前記透明板の前記第1の主面に接するように設けられ、赤外線を透過し、可視光を遮蔽する赤外線透過層」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記透明板の前記第1の主面に接するように設けられ、赤外線を透過し、可視光を遮蔽する赤外線透過層」を備える点で一致する。
(3)ア 引用発明の「赤外透過窓9」は、「不透明領域A2内において遮光層2の非形成部として設けられ、可視光に対しては遮光性を示すと共に赤外光に対しては透過性を示す部分として形成」されているから、「赤外透過窓9」のない「可視光を遮蔽する不透明領域A2」にある引用発明の「遮光層2」は、本願発明の「可視光および赤外線を遮蔽する遮光層」に相当する。
イ 引用発明の「赤外透過層9Lの表面が円形状に露出するように」備えられた「遮光層2」の「円形状の開口部」は、本願発明の「前記赤外線透過層を露出させる開口部」に相当する。
ウ 引用発明の「遮光層2」は、「赤外透過層9Lと一部重なって」いるから、赤外透過層9L上に設けられているといえる。
エ 前記ア~ウを踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記赤外線透過層上に設けられ、前記赤外線透過層を露出させる開口部を備え、可視光および赤外線を遮蔽する遮光層」を備える点で一致する。
(4) 引用発明において、「赤外透過窓9は表示装置用前面保護板10の右上隅に円形状に設けられており」、「遮光層2は、透光性基板1の外周端部から赤外透過窓9に至るまでの間において透光性基板1に接して設けられている」ことを踏まえると、「赤外透過窓9の部分にある赤外透過層9L」の縁部のうち、透光性基板1の外周端部から最も近い部分から、「遮光層2」は張り出して透光性基板1と接しているといえる。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記遮光層は、前記赤外線透過層の縁部のうち、前記透明板の外周から最も近い部分から張り出して前記透明板と接して[いる]」点で一致する。
(5) 引用発明において、「遮光層2は、平面視したときの形状が枠状に形成されて[いる]」から、前記(4)を踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記遮光層は、平面形状が枠状であり、前記遮光層の枠の外周縁部が前記透明板と接している」点で共通する。
(6) 前記(1)~(5)の対比結果を踏まえると、「遮光層付き透明板」の発明である本願発明と、「表示装置用前面保護板10」の発明である引用発明は、「遮光層付き透明板」の発明である点で一致する。
2 一致点及び相違点の認定
前記1の対比分析の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次の(1)の一致点において一致し、後記(2)の相違点において相違する。
(1) 一致点
「 第1の主面および第2の主面を有する透明板と、前記透明板の前記第1の主面に接するように設けられ、赤外線を透過し、可視光を遮蔽する赤外線透過層と、前記赤外線透過層上に設けられ、前記赤外線透過層を露出させる開口部を備え、可視光および赤外線を遮蔽する遮光層と、を備え、前記遮光層は、前記赤外線透過層の縁部のうち、前記透明板の外周から最も近い部分から張り出して前記透明板と接しており、前記遮光層は、平面形状が枠状であり、前記遮光層の枠の外周縁部が前記透明板と接している、遮光層付き透明板。」である点。
(2) 相違点
本願発明においては、「前記遮光層は、前記透明板と接している縁部が、前記赤外線透過層の縁部よりも0.01mm以上、かつ0.5mm以下、前記透明板の外周側に張り出しており」、「赤外線透過層」は、「平面形状が枠状」であるのに対し、
引用発明においては、「遮光層2」が「透光性基板1」と接している部分の具体的な大きさが不明であり、また、「赤外透過窓9の部分にある赤外透過層9L」の平面形状が枠状ではない点。
第6 判断
1 本願発明の想到容易性についての判断
(1) 相違点の検討
ア 赤外線透過層の平面形状を「枠状」とすることについて
(ア) 非表示領域に遮光層及び赤外線透過層を積層した透光性基板からなる表示装置用前面保護板において、赤外線透過窓に対応する領域以外にも赤外線透過層を遮光層に沿って重ねて形成することにより、非表示領域の外観を良好なものにすることは、本願出願時において周知技術である(「周知技術1」を参照)。
(イ) 引用発明の「不透明領域A2」は、「それが表現する色や模様、適宜設けるロゴやマークなどの可視情報8によって加飾部にもなる領域であ[る]」から、当該加飾部においては表現色を含めた装飾性が要請されるといえる。
(ウ) この点に関し、引用発明においては、「赤外透過層9Lは、赤外透過窓9の存在を目立たなくさせるために、着色樹脂層2aと類似色で形成され」るとしているものの、「遮光層2」は「赤外透過層9Lと一部重なって」いるから、「不透明領域A2」には、「遮光層2」と「赤外透過層9L」の重なりがある領域と、重なりがない領域が混在していることになり、各層の厚みを適切に調整しない限り、両層を類似色で形成しても、これらの領域の間に積層態様の差異に由来する色味の差異が生じてしまい、必ずしも前記要請に沿ったものにならないことは明らかである。
(エ) 表現色を含めた装飾性の要請に応えるために、引用発明において前記周知技術1を採用して、「赤外透過窓9」に対応する領域以外にも、「赤外透過層9L」を「遮光層2」に沿って重ねて形成することにより、「不透明領域A2」の外観を良好なものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
(オ) その際、引用発明の「遮光層2」は「平面視したときの形状が枠状に形成」されたものであるから、「赤外透過層9L」もそれに倣って「平面視したときの形状が枠状に形成」されたものとすることは自明な設計変更である。
(カ) したがって、前記相違点に係る「前記赤外線透過層は、平面形状が枠状であ[る]」ことは、格別のものではない。
イ 遮光層張出幅Dについて
前記相違点に係る本願発明の「前記遮光層は、前記透明板と接している縁部が、前記赤外線透過層の縁部よりも0.01mm以上、かつ0.5mm以下、前記透明板の外周側に張り出しており」との構成は、遮光層の透明板と接している縁部が赤外線透過層の縁部よりも透明板の外周側に張り出している幅(以下、この幅を「遮光層張出幅D」という。)が「0.01mm以上、かつ0.5mm以下」であること、すなわち、「0.01mm≦D≦0.5mm」という条件を満たすことを規定したものである。
しかしながら、以下の(ア)において説示するとおり、「透明板」、「遮光層」及び「赤外線透過層」の材質や厚み、各層の外観色等について何ら規定していない本願発明においては、遮光層張出幅Dのみを「0.01mm≦D≦0.5mm」と数値限定してもその技術上の意義を認めることはできないから、上記構成とすることは当業者が適宜なし得た設計事項にすぎないという評価を免れない。
また、(ア)の観点とは別に、引用発明を出発点して検討しても、以下の(イ)及び(ウ)において説示するとおり、上記構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
よって、いずれにしても、前記相違点に係る本願発明の構成のうち、遮光層張出幅Dの数値限定は、格別のものではない。以下詳述する。
(ア) 本願発明における遮光層張出幅Dの数値範囲の意義について
a 本願明細書の記載
(a) 遮光層張出幅Dが0.01mm≦D≦0.5mmを満たすことに関し、本願明細書の【0035】には、次のように記載されている。
「【0035】表示領域33は、可視光を透過する領域である。例えば、遮光層付き透明板1が表示パネルの保護カバーである場合、表示パネルの表示部に対応する。張出領域37は、遮光層5が赤外線透過層3から張り出している領域であり、遮光層5からなる。張出領域37は、赤外線透過層3の縁部よりも0.01mm以上、透明板2の外周側に張り出しているのが好ましい。具体的には、図3に示す面方向の幅D(厚さ)は0.01mm以上が好ましい。幅Dが0.01mm以上であることにより、遮光層5が赤外線透過層3よりも張り出す部分が、赤外線透過層3の剥離を防止するのに十分な長さとなる。0.05mm以上がより好ましく、0.1mm以上がさらに好ましい。幅Dは0.5mm以下が好ましい。幅Dが0.5mm以下であることにより、張出領域37と赤外線透過層3の色彩の差が目立ってしまうのを抑制でき、張出領域37が、赤外線透過層3の輪郭をなぞるように、黒く見えてしまうのを防止できる。0.4mm以下がより好ましく、0.3mm以下がさらに好ましい。」
(b) 上記記載から、遮光層張出幅Dに下限を設けたことの意義は、赤外線透過層3の剥離を防止することにあり、上限を設けたことの意義は、遮光層と赤外線透過層の色彩の差を目立たなくすることであると認められる。
b ここで、赤外線透過層の剥離が生じるか否かは、透明板と赤外線透過層の密着の度合いに依存するから、剥離を防止するための前提として、透明板と赤外線透過層の密着性がどの程度であるかを検討しなければならないところ、当該密着性については、透明板と赤外線透過層がどのような材質で構成されており、両者の厚みがどの程度のものであり、さらには、剥離を防止するのに役立つ遮光層の材質や厚みがどのようなものであるかを具体的に想定しなければ、剥離防止の有効性を議論できないことは明らかである。
同様に、遮光層と赤外線透過層の色彩差は、遮光層と赤外線透過層のそれぞれの外観色がどのようなものであるかを具体的に想定しなければ、色彩差の解消の有効性を議論できないことも明らかである。
c しかしながら、これらの事項については、本願発明には何ら特定されておらず、遮光層張出幅Dが所定の数値範囲内のものであると単に規定しても、赤外線透過層の剥離防止や、遮光層と赤外線透過層の色彩差の解消の前提となるべき事項を欠いているのであるから、本願発明の特定事項に基づいて、遮光層張出幅Dを所定の数値範囲に限定したことの技術上の意義を前記a(b)に示したとおりに認めることはできない。
すなわち、遮光層張出幅Dが0.01mm≦D≦0.5mmを満たすことは、当業者が適宜なし得た設計事項の域を超えるものであるとは認められない。
(イ) 遮光層張出幅Dが「0.01mm≦D」を満たすことについて
a 樹脂及び顔料からなる着色組成物を用いてガラス基板上に有機樹脂膜を形成する場合には、ガラス基板と有機樹脂膜の密着性が低いという課題があることは、本願出願時において技術常識であったと認められる(「技術常識1」を参照)。
したがって、引用発明においても、「ガラス板」からなる「透光性基板1」と、「互いに色が異なる有彩色の着色顔料の複数種類、例えば、赤色、黄色、青色を含有させることで、黒色など暗色を表現した層から形成」された「赤外透過層9L」の密着性が低いという課題が内在していることは、前記技術常識1からみて自明である。
b 他方、光学部材を構成するガラス基板とガラス基板上に設けられた有機膜の密着性を向上させるために、有機膜の上部及び側面を覆ってガラス基板に接する被覆層を設けることは、本願出願時において周知技術である(「周知技術2」を参照)。
c(a) ここで、引用発明の「遮光層2」は、「赤外透過層9Lの表面が円形状に露出するように円形状の開口部を備えて赤外透過層9Lと一部重なっており」、「透光性基板1の外周端部から赤外透過窓9に至るまでの間において透光性基板1に接して設けられている」から、その一部重なった部分から透光性基板1に接するように設けられた遮光層2が、透光性基板1と赤外透過層9Lの密着性を一定程度向上させて、前記密着性に係る課題の解決に寄与していることは、前記周知技術2に照らしてみれば明らかである。
(b) そして、遮光層2が赤外透過層9Lと一部重なった部分からみて、遮光層2が透光性基板1と接する領域の幅がほとんどないと、透光性基板1と赤外透過層9Lの密着性の向上が期待できないことも自明であるから、引用発明において、遮光層2が赤外透過層9Lと一部重なった部分からみて、遮光層2が透光性基板1と接する領域の幅には自ずと下限が存在するのであって、当該下限値を本願発明のように、「0.01mm」とすることは当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
(ウ) 遮光層張出幅Dが「D≦0.5mm」を満たすことについて
a 表示装置の映像が表示される有効画面の大きさを相対的に大きくするために表示パネルの端にある映像が表示されないベゼル幅を減らすことは、本願出願時において技術常識である(「技術常識2」を参照)。
b ここで、前記技術常識2を踏まえると、引用発明においてもベゼル幅を減らすことは当然要求される事項であり、遮光層2が全域に形成される不透明領域A2自体を減らすことも当然検討すべき事項である。
c そして、不透明領域A2自体を減らすことにより、「透光性基板1の外周端部から赤外透過窓9に至るまでの間において透光性基板1に接して設けられている」「遮光層2」の幅にも自ずと上限が存在するようになることは自明であり、その上限値を「0.5mm」とすることは当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
d なお、引用発明の「不透明領域A2」は、「不透明な、配線7やコネクタなどを隠したり、或いは、表示パネルが外周部に有する配線、コネクタなどを隠したりする為の領域であり」、「それが表現する色や模様、適宜設けるロゴやマークなどの可視情報8によって加飾部にもなる領域」であるから、不透明領域A2自体を減らすと、配線、コネクタなどを隠したり、加飾部にもなるという機能が阻害されてしまうおそれのあることが一応考えられる。
しかしながら、不透明領域A2として、「透光性基板1の外周端部から赤外透過窓9に至るまでの間」の領域を主に減少させるようにして、表示用領域A1に隣接する側の不透明領域A2の減少は、その減少の程度を軽減するように構成すれば、前記機能を維持した上で不透明領域A2を全体として減らすことが可能であるといえるから、不透明領域A2自体を減らしても、前記機能が阻害されてしまうことはないというべきである。
(エ) 小括
以上、前記(ア)~(ウ)において検討した結果を踏まえると、前記相違点に係る本願発明の構成のうち、遮光層張出幅Dの数値限定(0.01mm≦D≦0.5mm)は、格別のものではない。
(2) 総合評価
前記(1)のア及びイの検討結果を総合しても、前記相違点に係る本願発明の構成を導き出すことは当業者にとっては、格別困難なものではない。
また、本願発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることができない。
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術1~2及び技術常識1~2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
2 請求人の主張について
(1) 請求人の主張の内容
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審判請求書において、請求人は、概略次のア及びイの主張をしている。
ア 引用発明では、赤外線透過層9Lの平面形状が枠状ではないため、デザインの前提が全く異なるので、遮光層2が外周側に張り出している距離を本願発明で規定するような数値範囲に選択できない。
また、引用文献6に記載の発明でも、遮光部112aが赤外線透過性遮光部41の外周側に張り出していないため、デザインの前提が全く異なるので、遮光部112aが外周側に張り出している距離を本願発明で規定するような数値範囲に選択できない。
これに対し、本願発明においては、張り出した部分と、赤外線透過層の色彩差が目立つのを防止しつつ(本願明細書の段落[0012]参照)、遮光層が赤外線透過層よりも張り出す部分が、赤外線透過層の剥離を防止するのに十分な長さとなるという効果を達成しており(本願明細書の段落[0011]参照)、かかる効果は、引用文献1及び6からは想起できない有利な効果である。
イ 引用文献1又は引用文献6に記載の発明は、前述のとおり、本願発明の構成とはデザインの前提が異なるので、これらの文献に記載の構成から、上記本願発明の効果が予期できるはずがなく、上記本願発明の効果は、当業者が予測し得ないような格別な効果である。また、張り出した部分と、赤外線透過層の色彩差が目立つのを防止でき、0.01mm以上であれば赤外線透過層の剥離を防止するのに十分な長さとなるという効果は、膜厚などの各種条件によって変わり得る効果ではあるが、遮光層が外周側に張り出している距離が、主要な要因であることは明らかであり、この距離を本願発明において規定された範囲とすることで、本願発明の効果を達成できるものと思料する。
(2) 請求人の主張に対する当審の判断
折りたたみ中(クリックで表示)
上記主張ア及びイについてまとめて判断する。
まず、引用発明の「赤外透過層9L」の平面形状が枠状ではなくても、「赤外透過層9L」は「透光性基板1の第1面S1に接して設けられて」いる以上、「透光性基板1」と「赤外透過層9L」の密着性に係る課題は内在しているから、「赤外透過層9L」の平面形状が枠状ではないことが、(密着性向上に寄与する)「遮光層2」の張出幅を数値限定(下限値)することの妨げにはならないというべきである。
同様に、「赤外透過層9L」の平面形状が枠状ではないことが、「不透明領域A2」自体を減らしたときの「遮光層2」の張出幅を数値限定(上限値)することの妨げにはならないというべきである。
請求人の主張は、要するに、「赤外透過層9L」の平面形状が枠状でなければ「遮光層2」の張出幅を本願発明のごとく数値限定できないとするものであるが、上述の理由により、かかる主張を採用することはできない。
また、引用発明の「赤外透過層9L」を枠状に形成することについては、前記1(1)アにおいて検討したとおり、周知技術1を採用することにより当業者が容易に想到し得たことである。
そして、適宜数値範囲の上限及び下限を定めることについては、前記1(1)イにおいて検討したとおりである。その効果についても、前記引用発明、周知技術1、2及び技術常識1、2を踏まえると、本願出願時において知られた効果にすぎない。
さらに、赤外線透過層の色彩差が目立つのを防止すること及び赤外線透過層の剥離を防止することについて、請求人は、「膜厚などの各種条件によって変わり得る効果ではあるが、遮光層が外周側に張り出している距離が、主要な要因であることは明らか」であると主張するが、前記1(1)イ(ア)において説示したとおり、遮光層張出幅Dが所定の数値範囲内のものであると単に規定しても色彩差の解消及び剥離防止の有効性がそれだけで裏付けられるものではなく、その効果を達成することができるとの主張は採用できない。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-012377