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特許拒絶査定不服審判

2022-011748

静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像用トナーの製造方法

審判番号
2022-011748
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-092544外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年07月28日
審決日
2023年05月22日
公報発行日
2023年08月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G03G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特願2018- 92544「静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像用トナーの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年11月14日出願公開,特開2019-197195〕について,次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は,成り立たない。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

1 手続の経緯

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特願2018-92544号(以下,「本件出願」という。)は,平成30年5月11日の出願であって,令和4年1月18日付けで拒絶理由が通知され,同年3月8日に手続補正書及び意見書が提出され,同年3月29日付けで拒絶理由(最後)が通知され,同年5月23日に意見書が提出されたが,同年5月31日付けで拒絶査定がされたものである。

本件は,同年7月28日に,「原査定を取り消す。本願は特許をすべきものである,との審決を求める。」との請求の趣旨で,審判請求人(以下,「請求人」という。)より請求されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由は,本件出願の請求項1に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由(以下,「査定理由」という。)を含んでいる。

査定理由において引用された引用例は,次のとおりである。

引用文献1:特開2008-116613号公報

3 請求項1に係る発明

本件出願の請求項1に係る発明(以下,「本件発明」という。)は,令和4年3月8日に提出された手続補正書による補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ,当該請求項1の記載は次のとおりである。

「トナー粒子と,外添剤と,樹脂型荷電調整剤とを含み,
前記トナー粒子は,結晶性ポリエステル樹脂を含むバインダー樹脂と,着色剤と,離型剤とを含み,
前記結晶性ポリエステル樹脂は,
酸成分としてセバシン酸を含み,アルコール成分として1,10-デカンジオールを含み,
質量平均分子量が3000~5000であり,
前記トナー粒子中に,5~10質量%含まれる,静電荷像現像用トナー。」

4 引用例の記載及び引用例に記載された発明

(1)引用文献1の記載

引用文献1には,次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の構成の根拠となる箇所等の特に関連する箇所を示すために,合議体が付した。)

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,静電荷像現像用トナー及びその製造方法,並びに,静電荷像現像剤,トナー
カートリッジ,プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
続きを表示(全26行)
【背景技術】
【0002】
・・・(中略)・・・
【0004】
近年,画像形成に際して必要なエネルギーの省力化への要求の高まりに伴い,ある程度の使用電力を占める定着工程の省電力化を図り,また,前記定着可能な温度領域を拡大させるためには,トナーの定着温度をより低温化させる必要となってきた。トナーの定着温度を低温化させることにより,前記省電力化および前記定着可能な温度領域の拡大に加えて,電源入力時における定着ロール等の定着部材の表面の定着可能温度までの待ち時間,いわゆるウォームアップタイムの短時間化,更には定着部材の長寿命化が可能になる等,大きなメリットがある。
【0005】
上記トナーの定着温度を低くする手段としては,トナーに含まれる結着樹脂のガラス転移温度を低くする技術が一般的に行われている。しかし,ガラス転移温度を低くし過ぎると,粉体の凝集(ブロッキング)が起り易くなることから,低温定着性とブロッキング防止との両立を図ることが重要となる。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は,優れた低温定着性を有し,さらに良好な帯電性と保存性とを両立することが可能な静電荷像現像用トナー及びその製造方法,並びに,静電荷像現像剤,トナーカートリッジ,プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は,以下の本発明により達成される。
すなわち請求項1に係る発明は,溶融温度Tm1(℃)が50~100℃の結晶性ポリエステル樹脂と,非結晶性ポリエステル樹脂と,着色剤とを含んで構成される着色粒子を有し,
JIS K7121:1987に準拠した示差走査熱量測定における,1回目の昇温過程での前記結晶性ポリエステル樹脂由来の吸熱ピークの温度Tm2(℃)と,2回目の昇温過程での前記結晶性ポリエステル樹脂由来の吸熱ピークの温度Tm3(℃)とが,下記式(1)及び式(2)を満たす静電荷像現像用トナーである。
0≦(Tm1-Tm2)<2 ・・・ 式(1)
4<(Tm1-Tm3)≦15 ・・・ 式(2)
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に係る発明によれば,本構成を有していない場合に比較して,低温定着条件で画像形成を行うことができ,さらに良好な帯電性と保存性とを両立することが可能な静電荷像現像用トナーを得ることができる。」
イ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下,本発明を詳細に説明する。
・・・(中略)・・・
続きを表示(全17行)
【0020】
本発明においては,前記低温定着性と保存性とを両立させるため,トナーが前記式(1)及び式(2)を満たす必要があることが見いだされた。ここで,Tm1,Tm2及びTm3は後述する示差走査熱量測定(DSC)により求められるが,Tm1はトナーに用いられている結晶性ポリエステル樹脂そのものの溶融温度であり,Tm2はトナーのDSCにおける1回目の昇温過程での結晶性ポリエステル樹脂由来の吸熱ピーク温度,Tm3は2回目の昇温過程での結晶性ポリエステル樹脂由来の吸熱ピーク温度である。
【0021】
具体的には,前記式(1)の関係式が成り立つ場合は,前記両樹脂を含む結着樹脂中で結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度の降下が小さいことを示し,トナー内部で結晶性ポリエステル樹脂が非結晶性ポリエステル樹脂に非相溶の状態で分散していることを意味する。結晶性ポリエステル樹脂を非相溶の状態でトナー内部に分散することで,非結晶性ポリエステル樹脂を可塑化させることがなく,その結果熱保管性を維持することができる。また,結晶性ポリエステル樹脂を非結晶性ポリエステル樹脂中に分散させることで,トナー内部に結晶性ポリエステル樹脂の導通路が形成されることがなく,結果として帯電性を良好に保つことができる。
【0022】
また,前記式(2)の関係式が成り立つ場合は,結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度の降下が大きいことを示し,結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度以上の温度でトナーが溶融した後は,結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂とが相溶した状態であることを意味している。すなわち,結晶性ポリエステル樹脂の溶融後は非結晶性ポリエステル樹脂と相溶するために,非結晶性ポリエステル樹脂を低粘度化することができ,その結果優れた低温定着性を得ることができる。
なお,前記低温定着とはトナーを120℃程度以下で加熱して定着させることをいう。
【0023】
前記式(1)に関し,(Tm1-Tm2)が2℃以上の場合には作製後の熱的履歴を受けない状態のトナーで,十分な保存性を確保できない。
(Tm1-Tm2)は1℃以下であることが望ましく,0℃(Tm1とTm2とが一致する)とすることが最も望ましい。
【0024】
一方,前記式(2)に関しては,(Tm1-Tm3)が4℃以下では結晶性ポリエステ
ル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂との相溶性が悪く低温定着化が十分でない。15℃を超えると定着後の画像保存性が問題となる場合がある。」
ウ 「【0029】
以下,本発明の静電荷像現像用トナーの構成をより詳細に説明する。なお,下記は本発明の1実施形態であり,本発明はこれらに限定されるものではない。
(結晶性ポリエステル樹脂)
本実施形態のトナーにおいては,着色粒子中に溶融温度Tm1が50~100℃の結晶性ポリエステル樹脂が分散されていてもよい。結晶性ポリエステル樹脂は適切な溶融温度の選択が容易であり,非結晶性ポリエステル樹脂との相溶性にも優れていることから,トナーの低温定着化のために有効であり,また定着後の紙との接着性を低下させることもない。
続きを表示(全30行)
・・・(中略)・・・
【0031】
本実施形態に使用する結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度Tm1は,低温定着性と保存性のバランスの観点から50~100℃の範囲である。Tm1は55~95℃の範囲であることが望ましく,60~90℃の範囲であることがより望ましい。溶融温度が50℃より低いとトナーの保存性や,定着後のトナー画像の保存性が問題となる。また100℃より高いと,従来のトナーに比べて十分な低温定着が得られない。
【0032】
前記結晶性ポリエステル樹脂は,酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものであり,下記において「酸由来構成成分」とは,ポリエステル樹脂において,ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し,「アルコール由来構成成分」とは,ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。
【0033】
-酸由来構成成分-
前記酸由来構成成分となるための酸としては,種々のジカルボン酸が挙げられるが,本発明における結晶性ポリエステル樹脂における酸由来構成成分としては,芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸が望ましく,中でも脂肪族ジカルボン酸が望ましく,特に直鎖型のジカルボン酸が望ましい。
【0034】
脂肪族ジカルボン酸としては,例えば,蓚酸,マロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,スベリン酸,アゼリン酸,セバシン酸,1,9-ノナンジカルボン酸,1,10-デカンジカルボン酸,1,11-ウンデカンジカルボン酸,1,12-ドデカンジカルボン酸,1,13-トリデカンジカルボン酸,1,14-テトラデカンジカルボン酸,1,16-ヘキサデカンジカルボン酸,1,18-オクタデカンジカルボン酸など,或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが,この限りではない。これらの中では,入手容易性を考慮するとアジピン酸,セバシン酸,1,10-デカンジカルボン酸が望ましい。
・・・(中略)・・・
【0039】
-アルコール由来構成成分-
アルコール由来構成成分となるためのアルコールとしては,脂肪族ジオールが望ましく,炭素数が7~20である直鎖型脂肪族ジオールがより好ましい。
脂肪族ジオールとしては,エチレングリコール,1,3-プロパンジオール,1,4-ブタンジオール,1,5-ペンタンジオール,1,6-ヘキサンジオール,1,7-ヘプタンジオール,1,8-オクタンジオール,1,9-ノナンジオール,1,10-デカンジオール,1,11-ドデカンジオール,1,12-ウンデカンジオール,1,13-トリデカンジオール,1,14-テトラデカンジオール,1,18-オクタデカンジオール,1,20-エイコサンジオール,などが挙げられるが,この限りではない。これらの中では,入手容易性やコストを考慮すると1,4-ブタンジオール,1,6-ヘキサンジオール,1,8-オクタンジオール,1,9-ノナンジオール,1,10-デカンジオールが望ましい。
・・・(中略)・・・
【0045】
結晶性ポリエステル樹脂の分子量(重量平均分子量Mw)は,2000~12000の範囲であれば樹脂の製造性,トナー製造時の分散化や,溶融時の相溶性をトナーに付与できる点で望ましく,2500~10000の範囲がさらに望ましい。
・・・(中略)・・・
【0047】
また,結晶性ポリエステル樹脂の酸価は2~30mgKOH/gの範囲が望ましく,3~25mgKOH/gの範囲がより好適である。
【0048】
本実施形態において,トナー中における前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量としては,3~40質量%の範囲が望ましく,5~35質量%の範囲がより好適である。3質量%未満では,溶融の際に非結晶性ポリエステル樹脂を必要なレベルまで低粘度化することができず,結果として十分な低温定着性が得られない場合がある。また40質量%を超えると,結晶性ポリエステル樹脂をばらつきなく分散することが困難になり,結果として帯電性を悪化させてしまう場合が生じる。また定着後の画像強度が得られない場合が生じる。
・・・(中略)・・・
【0057】
上記観点からは,例えば前記結晶性ポリエステル樹脂としては,セバシン酸とデカンジオールとを重合して得られるポリエステル樹脂などを用いることが好適であり,非結晶性ポリエステル樹脂としては,酸成分としてアルケニルコハク酸と,アルコール成分としてビスフェノールのアルキレングリコール付加物とを重合したポリエステル樹脂などを用いることが望ましい。」
エ 「【0060】
(その他の添加剤)
本実施形態のトナーを構成する成分としては,既述したように,少なくとも結着樹脂として結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂とを含むものであれば特に限定されないが,必要に応じて,離型剤等の他の成分を含んでいてもよい。
・・・(中略)・・・
【0063】
本実施形態におけるトナーには,更に必要に応じて内添剤,帯電制御剤,無機粉体(無機粒子),有機粒子等の種々の成分を添加することができる。
内添剤としては,例えば,フェライト,マグネタイト,還元鉄,コバルト,ニッケル,マンガン等の金属,合金,またはこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。
【0064】
帯電制御剤としては,例えば4級アンモニウム塩化合物,ニグロシン系化合物,アルミ,鉄,クロムなどの錯体から構成される染料,トリフェニルメタン系顔料などが挙げられる。」
オ 「【0101】
本実施形態においては,上記のようにして得られた着色粒子を未処理のまま静電荷像現像用トナーとしてもよいし,着色粒子表面に流動化剤や助剤等の外添剤を添加処理して静電荷像現像用トナーとしてもよい。
外添剤としては,表面を疎水化処理したシリカ粒子,酸化チタン粒子,アルミナ粒子,酸化セリウム粒子,カーボンブラック等の無機粒子やポリカーボネート,ポリメチルメタクリレート,シリコーン樹脂等のポリマー粒子等,公知の粒子が使用できるが,これらのうち少なくとも2種以上の外添剤を使用し,該外添剤の少なくとも1種は,30nm~200nmの範囲,さらには30nm~180nmの範囲の平均1次粒子径を有することが望ましい。」
(6) 「【実施例】
【0135】
以下,実施例および比較例を挙げ,本発明をより具体的に詳細に説明するが,本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお,以下において特に断りのない限り「部」は「質量部」を,「%」は「質量%」を表す。
・・・(中略)・・・
続きを表示(全71行)
【0141】
<各樹脂の合成>
(結晶性ポリエステル樹脂(1))
加熱乾燥した3口フラスコに,セバシン酸ジメチル43.4部と,1,10-デカンジオール32.8部と,ジメチルスルホキシド27部と,触媒としてジブチル錫オキサイド0.03部と,を入れた後,減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし,機械攪拌にて180℃で4時間攪拌を行った。減圧下,ジメチルスルホキシドを留去し,その後,減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い1.5時間攪拌し,粘稠な状態となったところで空冷し,反応を停止させ,脂肪族系の結晶性ポリエステル樹脂(1)65部を合成した。
【0142】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量測定(ポリスチレン換算)で,得られた結晶性ポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は3400であった。また,示差走査熱量測定(DSC)を行ったところ,結晶性ポリエステル樹脂(1)は明確なピークを有し,溶融温度Tm1は76℃であった。さらに,Fedorsらの方法を用いた結晶性ポリエステル樹脂(1)の溶解性パラメーターSPA(1)は9.11であった。
・・・(中略)・・・
【0146】
(非結晶性ポリエステル樹脂(1))
加熱乾燥した二口フラスコに,ジオール成分として,ポリオキシプロピレン(2,2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン,エチレングリコール及びシクロヘキサンジオールを488部(構成モル比:80/10/10)と,ジカルボン酸成分として,テレフタル酸,イソフタル酸及びn-ドデセニルコハク酸を356部(構成モル比:80/10/10)と,触媒としてジブチル錫オキサイド0.6部とを入れ,容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち昇温した後,150~230℃で12時間共縮重合反応させ,その後,210~250℃で徐々に減圧して,非結晶性ポリエステル樹脂(1)を合成した。
【0147】
得られた非結晶性ポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は12300であった。また,前述の溶融温度の測定に準じてDSC測定を行ったところ,明確なピークを示さず,階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の中間点をとったガラス転移点(Tg)は64℃であった。また非結晶性ポリエステル樹脂(1)の溶解性パラメーターSPB(1)は9.73であった。
・・・(中略)・・・
【0150】
<各分散液の作製>
(結晶性ポリエステル樹脂分散液)
結晶性ポリエステル樹脂(1)30部と,酢酸エチル270部とを,DCPミルを用いて3℃に冷却した状態で湿式粉砕し,結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)(固形分量:10%)を作製した。分散粒子の体積平均粒径は0.54μmであった。・・・(中略)・・・
【0152】
(顔料分散液)
シアン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3,大日精化(株)製)75部と,酢酸エチル412.4部と,溶媒除去したディスパロンDA-703-50(ポリエステル酸アマイドアミン塩,楠本化成(株)社製)12.6部と,をDCPミル(日本アイリッヒ株式会社製)を用いて溶解/分散し,顔料分散液を作製した。
【0153】
(離型剤分散液)
パラフィンワックス(溶融温度:75℃)30部と,酢酸エチル270部とを,DCPミルを用い5℃に冷却した状態で湿式粉砕し,離型剤分散液を作製した。分散粒子の体積平均粒径は0.48μmであった。
・・・(中略)・・・
【0156】
<実施例1>
(トナーの製造)
-混合液作製-
非結晶性ポリエステル樹脂(1)65.5部と,前記顔料分散液30部と,前記離型剤分散液100部と,前記結晶性ポリエステル樹脂(1)分散液200部とを,均一になるまでメカニカルスターラーで30分間攪拌して混合液(1)を得た。
【0157】
-分散懸濁液作製,溶媒除去-
炭酸カルシウム40部を水60部に分散した炭酸カルシウム分散液124部と,セロゲンBS-H(第一工業製薬(株))の2%水溶液99部と,水157部とを混合し,ホモジナイザー(ウルトラタラックス:IKA社製)を用いて3分間攪拌して分散液を得た。
前記混合液(1)345部と前記分散液250重量部とを混合し,ホモジナイザー(ウルトラタラックス:IKA社製)を用いて10000rpmで1分間攪拌し混合液を懸濁し,分散懸濁液を作製した。なお,攪拌中は外部より冷却して,液温度が15℃になるように調整した。
【0158】
次いで,得られた分散懸濁液を撹拌しながら,40℃で,局排装置により懸濁液面上の気相を強制更新して,24時間そのままに保ち溶媒除去を行い,着色粒子分散液(1)を得た。
【0159】
-洗浄脱水,乾燥篩分-
得られた着色粒子分散液(1)300部を20μmメッシュにて篩分した。その後,10規定塩酸40部を加え炭酸カルシウムを除去した後,さらに吸引濾過によるイオン交換水洗浄を4回繰り返して,湿潤粉体を得た。その後,得られた湿潤粉体を真空乾燥機で乾燥し,45μmメッシュで篩分して着色粒子(1)を得た。得られた着色粒子(1)の粒度分布をマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm,ベックマン-コールター社製)を用いて測定したところ,体積平均粒子径は6.1μmであった。
【0160】
この着色粒子(1)に対して,外添剤として,表面疎水化処理した1次粒子径40nmのシリカ粒子(日本アエロジル社製疎水性シリカ,RX50)と,メタチタン酸100部にイソブチルトリメトキシシラン40部及びトリフルオロプロピルトリメトキシシラン10部で処理した反応生成物である1次粒子平均径20nmのメタチタン酸化合物粒子とを,各々トナー中で1.0%の含有量となるように添加し,ヘンシェルミキサーで5分間混合した。さらに超音波振動篩(ダルトン社製)にかけてトナー(1)を得た。
【0161】
(トナーの特性)
-結晶性ポリエステル樹脂の個数平均分散径-
得られたトナー(1)の断面を,前述の方法により透過型電子顕微鏡を用いて観察し,トナー中の結晶性ポリエステル樹脂の個数分散平均粒子径を測定したところ,0.57μmであった。
【0162】
-トナーの熱分析(Tm2,Tm3)-
トナー(1)について,前述の条件によりDSC測定を行い,1回目の昇温過程でのDSC曲線における明瞭な吸熱ピークからTm2が75℃,2回目の昇温過程でのDSC曲線における明瞭な吸熱ピークからTm3が68℃として求められた。
【0163】
-粉体凝集性(耐トナーブロッキング性)-
試料として,55℃/50%RHの環境下に24時間放置したトナー(1)を用いた。
パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)を用い,上段より目開き53μm,45μm及び38μmのふるいを直列的に配置し,53μmのふるい上に正確に秤量した2gの前記試料を投入し,振幅1mmで90秒間振動を与え,振動後の各ふるい上のトナー質量を測定し,それぞれの質量に順に0.5,0.3,0.1を乗じた数値を加算し,もとの試料の重さ(2g)に対する百分率として粉体凝集性の指標を算出した。なお,測定は25℃/50%RHの環境下で行った。この評価においては,前記振動後の粉体凝集性の指標が40以下であれば,通常実用上問題なく使用でき,より好適には30以下である。
【0164】
(実機評価)
得られたトナー(1):36部と前記キャリア:414部とを2LのVブレンダーに入れ,20分間撹拌し,その後212μmのメッシュで篩分して現像剤(1)を作製した。
得られた現像剤(1)をDocuPrint C2220(富士ゼロックス(株)製)の現像器に充填して,以下の評価を行った。
・・・(中略)・・・
【0166】
-定着性-
前記現像剤(1)を充填したDocuPrint C2220(富士ゼロックス(株)製)から定着装置を取り外して,未定着画像を採取した。画像条件は40mm×50mmのソリッド画像(べた画像)で,トナー乗り量は1.5mg/cm2,記録紙はJ紙(富士ゼロックスオフィシャルサプライ社製)を使用した。
【0167】
次いで,定着温度が可変となるように改造したDocuPrint C2220を用いて,定着温度を100℃から200℃まで5℃おきに段階的に上昇させながら各画像の定着性を評価した。なお定着性は,離型不良による画像欠損のない,良好な定着画像を1kg荷重の重りを用いて5秒間画像を折り曲げ,その部分の画像欠損の幅をmm単位で示したものであり,欠損の幅が1mm以下になった温度を最低定着温度とした。この評価では,定着温度が120℃以下であれば低温定着性を有するものとした。結果を表1に表す。
・・・(中略)・・・
【0178】
【表1】
[図:0001400170000001.jpg]
【0179】
表1に示す結果から,実施例ではTm1とTm2とが前記式(1)の関係を満たしているため,結晶性ポリエステル樹脂が非相溶状態でトナー内部に分散されており,熱保管性は良好であった。また,Tm1とTm3とが前記式(2)の関係を満たしているため,結晶性ポリエステル樹脂の溶融後は相溶状態になるため,優れた低温定着性及び高光沢性が得られ,定着画像の強度も十分であることがわかった。」

(2)引用文献1に記載された発明

前記(1)アないしオで摘記した記載から,引用文献1には,実施例1に係る発明として次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「溶融温度Tm1(℃)が50~100℃の結晶性ポリエステル樹脂と,非結晶性ポリエステル樹脂と,着色剤とを含んで構成される着色粒子を有し,JIS K7121:1987に準拠した示差走査熱量測定における,1回目の昇温過程での前記結晶性ポリエステル樹脂由来の吸熱ピークの温度Tm2(℃)と,2回目の昇温過程での前記結晶性ポリエステル樹脂由来の吸熱ピークの温度Tm3(℃)とが,下記式(1)及び式(2)を満たす静電荷像現像用トナーであって,
前記非結晶性ポリエステル樹脂として下記非結晶性ポリエステル樹脂(1)65.5部と,前記着色剤としてシアン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3,大日精化(株)製)を含む下記顔料分散液30部と,下記離型剤分散液100部と,前記結晶性ポリエステル樹脂として下記結晶性ポリエステル樹脂(1)を分散した下記結晶性ポリエステル樹脂(1)分散液200部とを原料として,前記着色粒子として体積平均粒子径が6.1μmである着色粒子(1)を作製し,当該着色粒子(1)に対して,外添剤として,表面疎水化処理した1次粒子径40nmのシリカ粒子(日本アエロジル社製疎水性シリカ,RX50)と,メタチタン酸100部にイソブチルトリメトキシシラン40部及びトリフルオロプロピルトリメトキシシラン10部で処理した反応生成物である1次粒子平均径20nmのメタチタン酸化合物粒子とを,各々トナー中で1.0%の含有量となるように添加することによって得られ,前記Tm2及び前記Tm3がそれぞれ75℃及び68℃である,静電荷像現像用トナー。
[式(1)及び式(2)]
0≦(Tm1-Tm2)<2 ・・・ 式(1)
続きを表示(全15行)
4<(Tm1-Tm3)≦15 ・・・ 式(2)
[結晶性ポリエステル樹脂(1)]
加熱乾燥した3口フラスコに,セバシン酸ジメチル43.4部と,1,10-デカンジオール32.8部と,ジメチルスルホキシド27部と,触媒としてジブチル錫オキサイド0.03部と,を入れた後,減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし,機械攪拌にて180℃で4時間攪拌を行い,減圧下,ジメチルスルホキシドを留去し,その後,減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い,1.5時間攪拌し,粘稠な状態となったところで空冷し,反応を停止させることにより得られる。重量平均分子量(Mw)は3400,溶融温度Tm1は76℃,溶解性パラメーターSPA(1)は9.11。
[非晶性ポリエステル樹脂(1)]
加熱乾燥した二口フラスコに,ジオール成分として,ポリオキシプロピレン(2,2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン,エチレングリコール及びシクロヘキサンジオールを488部(構成モル比:80/10/10)と,ジカルボン酸成分として,テレフタル酸,イソフタル酸及びn-ドデセニルコハク酸を356部(構成モル比:80/10/10)と,触媒としてジブチル錫オキサイド0.6部とを入れ,容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち,昇温した後,150~230℃で12時間共縮重合反応させ,その後,210~250℃で徐々に減圧することにより得られる。重量平均分子量(Mw)は12300,階段状の吸熱量変化の中間点をとったガラス転移点(Tg)は64℃,溶解性パラメーターSPB(1)は9.7。
[顔料分散液]
シアン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3,大日精化(株)製)75部と,酢酸エチル412.4部と,溶媒除去したディスパロンDA-703-50(ポリエステル酸アマイドアミン塩,楠本化成(株)社製)12.6部と,をDCPミル(日本アイリッヒ株式会社製)を用いて溶解/分散することにより得られる。
[離型剤分散液]
パラフィンワックス(溶融温度:75℃)30部と,酢酸エチル270部とを,DCPミルを用い5℃に冷却した状態で湿式粉砕することにより得られる。
[結晶性ポリエステル樹脂(1)分散液]
結晶性ポリエステル樹脂(1)30部と,酢酸エチル270部とを,DCPミルを用いて3℃に冷却した状態で湿式粉砕することにより得られる。固形分量:10%。」

5 対比

(1) 引用発明の「着色粒子(1)」,「表面疎水化処理した1次粒子径40nmのシリカ粒子(日本アエロジル社製疎水性シリカ,RX50),メタチタン酸100部にイソブチルトリメトキシシラン40部及びトリフルオロプロピルトリメトキシシラン10部で処理した反応生成物である1次粒子平均径20nmのメタチタン酸化合物粒子」,「結晶性ポリエステル樹脂(1)」,「シアン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3,大日精化(株)製)」,「パラフィンワックス(溶融温度:75℃)」及び「静電荷像現像用トナー」は,本件発明の「トナー粒子」,「外添剤」,「結晶性ポリエステル樹脂」,「着色剤」,「離型剤」及び「静電荷像現像用トナー」にそれぞれ対応する。

(2) 引用発明の静電荷像現像用トナーは,「着色粒子(1)」(本件発明の「トナー粒子」に対応する。以下,「5 対比」欄において,カギ括弧で囲まれた引用発明の構成に続く丸括弧中の文言は,当該引用発明の構成に対応する本件発明の発明特定事項を表す。)と,「表面疎水化処理した1次粒子径40nmのシリカ粒子(日本アエロジル社製疎水性シリカ,RX50),外添剤としての「メタチタン酸100部にイソブチルトリメトキシシラン40部及びトリフルオロプロピルトリメトキシシラン10部で処理した反応生成物である1次粒子平均径20nmのメタチタン酸化合物粒子」(外添剤)を含むから,本件発明と引用発明は,「トナー粒子と,外添剤とを含」む点で一致する。

(3) 引用発明の「着色粒子(1)」(トナー粒子)は,非結晶性ポリエステル樹脂(1)65.5部と,「シアン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3,大日精化(株)製)」(着色剤)を含む顔料分散液30部と,「パラフィンワックス(溶融温度:75℃)」(離型剤)を含む離型剤分散液100部と,「結晶性ポリエステル樹脂(1)」(結晶性ポリエステル樹脂)を分散した結晶性ポリエステル樹脂(1)分散液200部とを原料として作製されたものであり,当該原料中の非結晶性ポリエステル樹脂(1)と結晶性ポリエステル樹脂(1)とを合わせて「バインダー樹脂」ということができるから,本件発明のトナー粒子と引用発明の着色粒子(1)は,「結晶性ポリエステル樹脂を含むバインダー樹脂と,着色剤と,離型剤とを含」む点で一致する。

(4) 引用発明の「結晶性ポリエステル樹脂(1)」(結晶性ポリエステル樹脂)は,酸(ジカルボン酸)成分としてセバシン酸ジメチルを,アルコール(ジオール)成分として1,10-デカンジオールを用いたものであるから,本件発明の結晶性ポリエステル樹脂と引用発明の結晶性ポリエステル樹脂(1)は,「酸成分としてセバシン酸を含み,アルコール成分として1,10-デカンジオールを含」む点で一致する。

(5) 引用発明の「結晶性ポリエステル樹脂(1)」(結晶性ポリエステル樹脂)の重量平均分子量(Mw)は3400であるから,本件発明の結晶性ポリエステル樹脂の「質量平均分子量が3000~5000であ」るとの要件を満たしている。

(6) 前記(1)ないし(5)に照らせば,本件発明と引用発明は,

「トナー粒子と,外添剤とを含み,
前記トナー粒子は,結晶性ポリエステル樹脂を含むバインダー樹脂と,着色剤と,離型剤とを含み,
前記結晶性ポリエステル樹脂は,
酸成分としてセバシン酸を含み,アルコール成分として1,10-デカンジオールを含み,
質量平均分子量が3000~5000である,静電荷像現像用トナー。」

である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:

本件発明は,樹脂型荷電調整剤を含むのに対して,

引用発明は,樹脂型荷電調整剤を含まない点。

相違点2:

本件発明の結晶性ポリエステル樹脂は,トナー粒子中に,5~10質量%含まれるのに対して,

引用発明の結晶性ポリエステル樹脂(1)は,着色粒子(1)中に,およそ20質量%含まれる点。

6 判断

(1)相違点1について

例えば,特開2008-186002号公報(特に,請求項1,【0007】,【0008】,【0010】,【0012】ないし【0019】,【0048】ないし【0053】,表1等を参照。),特開2008-145723号公報(特に,請求項1,【0007】,【0008】,【0012】,【0028】ないし【0031】,表1),特開2002-278160号公報(特に,請求項1,【0014】ないし【0016】,【0073】ないし【0078】,表2等を参照。)等にみられるように,静電荷像現像用トナーの技術分野において,帯電性能に優れた樹脂型荷電調整剤が,本件出願の出願前に周知であったと認められる。

そして,引用文献1の【0063】には,引用発明の静電荷像現像用トナーに帯電制御剤を添加できることが記載されている。

そうすると,引用発明の静電荷像現像用トナーにおいて,引用文献1の【0063】の記載に基づいて,帯電調整剤を添加することとし,その具体的物質として,前述した周知の帯電性能に優れた樹脂型荷電調整剤を採用して,相違点1に係る本件発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について

ア 引用文献1の【0048】には,トナー中における結晶性ポリエステル樹脂の含有量について,十分な低温定着性を得るために,望ましくは3質量%以上,より好適には5質量%以上にするとともに,帯電性の悪化の防止や定着後の画像強度の確保のために,望ましくは40質量%以下,より好適には35質量%以下にすることが記載されており,引用発明におけるトナー中における結晶性ポリエステル樹脂(1)の含有量である20質量%(外添剤を含めずに計算すると,結晶性ポリエステル樹脂(1)の質量20g/{非結晶性ポリエステル樹脂(1)の質量65.5g+結晶性ポリエステル樹脂(1)の質量20g+シアン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3,大日精化(株)製)の質量4.5g+パラフィンワックス(溶融温度:75℃)の質量10g})という値は,前記【0048】に記載された観点から定められたものと解される。

また,引用文献1の【0008】には,引用発明が解決しようとする課題が,優れた低温定着性を有し,さらに良好な帯電性と保存性とを両立することが可能な静電荷像現像用トナーを提供することであることが記載されている。

ここで,例えば,特開2018-59964号公報(特に,【0065】等を参照。),特開2017-173728号公報(特に,【0097】等を参照。),特開2014-106446号公報(特に,【0017】等を参照。)等にみられるように,静電荷像現像用トナーの技術分野において,結着樹脂として結晶性樹脂と非晶性樹脂とを併用する場合に,結晶性樹脂の含有量が大きくなりすぎると,静電荷像現像用トナーの耐熱保存性が悪化することから,結着樹脂中の結晶性樹脂の含有量を10質量%以下にする技術が,本件出願の出願前に周知技術であったと認められる。

そうすると,引用発明において,静電荷像現像用トナーの保存性(耐熱保存性)をさらに高めるとともに,十分な低温定着性を確保することを目的として,トナー中における結晶性ポリエステル樹脂(1)の含有量を5質量%以上10質量%以下の範囲内の値に変更することは,前記周知技術に熟知するとともに引用文献1の記載に接した当業者が容易に想到し得たことである。

イ 請求人は,審判請求書において,引用文献1においては,トナーの保存安定性に影響を及ぼすことは,結晶性ポリエステル樹脂の式(1)や式(2)を具備するかという観点や,その数値による影響のみが述べられているにすぎず,保存安定性の解決手段としては,本件発明と顕著に異なること,また,結晶性ポリエステル樹脂がその分子量・含有量と連動して,トナーの定着性を向上させる一方で,保存安定性にも影響を与える点は,従来周知であるとの原査定における説示は,なんら証拠が示されていないことから,後知恵によるもの等と主張する。

確かに,引用文献1には,【0023】に,十分な保存性を確保するためには,式(1)を満たす必要があることが記載され,【0031】に,結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度Tm1が50℃より低いと,トナーの保存性が問題になることが記載されている一方,トナーの保存性が,トナー中における結晶性ポリエステル樹脂の含有量に影響されることは記載されていない。

しかしながら,前記アで述べたように,特開2018-59964号公報,特開2017-173728号公報,特開2014-106446号公報等にみられるように,静電荷像現像用トナーの技術分野において,結着樹脂として結晶性樹脂と非晶性樹脂とを併用する場合に,結晶性樹脂の含有量が大きくなりすぎると,静電荷像現像用トナーの耐熱保存性が悪化することから,結着樹脂中の結晶性樹脂の含有量を10質量%以下にする技術が,本件出願の出願前に周知技術であったと認められるのであって,引用発明において,トナーの保存性(耐熱保存性)のさらなる改善を目的として,トナー中における結晶性ポリエステル樹脂(1)の含有量を10質量%以下に変更することは,前記周知技術を熟知する当業者が,容易に想到し得たことである。

以上のとおりであるから,請求人の主張は採用できない。

(3)効果について

本件発明の効果は,本件出願の出願当時本件発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができた程度のものであり,当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものではない。

(4)まとめ

本件発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,本件出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 むすび

以上のとおり,本件発明は,引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて,本件出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

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2022-011748

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