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特許拒絶査定不服審判

2022-011062

健常者の知的作業速度向上用組成物および知的作業効率向上用組成物

審判番号
2022-011062
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-087066外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年07月15日
審決日
2024年04月18日
公報発行日
2024年07月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-WZ (A61K) / P18 .121-WZ (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-87066「健常者の知的作業速度向上用組成物および知的作業効率向上用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月22日出願公開、特開2018-184369〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 21項目
理 由

1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、平成29年4月26日の出願であって、その主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和2年 12月 3日付け 拒絶理由通知書

令和3年 2月15日 手続補正書及び意見書の提出

同年 3月26日付け 拒絶理由通知書

同年 5月28日 手続補正書及び意見書の提出

同年 6月17日付け 拒絶理由通知書

同年 10月20日 手続補正書及び意見書の提出

同年 12月27日付け 拒絶理由通知書

令和4年 2月16日 手続補正書及び意見書の提出

同年 4月 5日付け 拒絶査定

同年 7月15日 審判請求書の提出

令和6年 1月11日付け 当審における拒絶理由通知書

同年 2月 8日 手続補正書及び意見書の提出

2 本願発明

本願の請求項1~9に係る発明は、令和6年2月8日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

【請求項1】

酸味料および有機酸の少なくとも一方が共存する状態での乳タンパク質濃縮物を有効成分とし、安定剤を含むが遊離チロシンを含まない

健常者の知的作業速度向上用組成物または知的作業効率向上用組成物。

3 当審における拒絶理由

(1)(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(2)(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1、7、8について

引用文献10(新規性)

・請求項1~8について

引用文献10、16~23(進歩性)

<引用文献等一覧>

10.Brain Research Bulletin,1999年,Vol.48,No.2,p.203-209

16.特開昭58-020180号公報(周知技術を示す文献)

17.特開2003-289799号公報(周知技術を示す文献)

18.特開2016-077253号公報(周知技術を示す文献)

19.国際公開第2016/068251号(周知技術を示す文献)

20.特開2015-228851号公報(周知技術を示す文献)

21.Protifar, Nutricia Southern Africa (PTY) Ltd, May 2016, https://www.nutricia.co.za/upload/product%20pdfs/Protifar%20Fact%20Sheet%20SA%20-%20FC.pdf

22.特表2003-510059号公報(周知技術を示す文献)

23.Journal of the Japanese Society for Horticultural Science, 1989年, Vol.58 Issue3, p.587-594, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjshs1925/58/3/58_3_587/_pdf/-char/en, https://doi.org/10.2503/jjshs.58.587 (周知技術を示す文献)

4 引用文献の記載事項及び引用発明

折りたたみ中(クリックで表示)

(1)引用文献10に記載された事項及び引用発明(翻訳及び下線は当審による。以下同様。)

引用文献10には、以下の事項が記載されている。

ア 「要旨:アミノ酸チロシンが認知課題のパフォーマンスに及ぼす影響について、厳しい軍事戦闘訓練コース中の21人の士官候補生のグループを対象に研究された。さらに、気分、血圧、ノルエピネフリン代謝産物MHPGに対する影響も測定された。10人の被験者には2gのチロシンを含むタンパク質が豊富な飲料を1日5回摂取し、11人の被験者には同じカロリー量(255kcal)の炭水化物が豊富な飲料を摂取させた。評価は戦闘コースの直前とコースの6日目の両方で行われた。チロシンが豊富な飲み物を与えられた群は、炭水化物が豊富な飲料を与えられた群よりも、記憶力と追跡課題でより良い成績を修めた。」(203頁左欄1~12行)

イ 「被験者
王立陸軍士官学校(Koninklijke Militaire Academie;KMA)の32人の士官候補生が、この研究への参加を志願した。16人の被験者はランダムにチロシン群に割り当てられ、残りの16人の被験者はプラセボ群に割り当てられた。研究の過程で、11人の被験者が負傷のために脱落し、21人の被験者が分析のために残った。これにより、チロシン群に属する10人の被験者、プラセボ群に属する11人の被験者が残った。チロシン群には、19歳から26歳までの女性1名と男性9名が含まれていた(平均年齢±SD=22.8±2.7)。プラセボ群、18歳から27歳までの男性のみで構成された(平均±SD=21.4±2.8)。」(204頁左欄下から16~5行)
ウ 「Taskomat battery[9]からの4つのタスクが管理された:記憶比較タスク(MCT)、追跡タスク(TT)、連続記憶タスク(CMT)及びダブルタスク(DT)。
MCTは、短期記憶の速度と質の比較を評価する。MCTの間、刺激は1度に1つずつディスプレイに表示される。4つの事前指定されたうちの1つの標的文字を提示させて、1、2、又は4文字で構成される刺激について監視する。被験者は、それに応じて、「はい」(標的が存在する)又は「いいえ」(標的が存在しない)キーをできるだけ早く押して応答する必要がある。不正解の場合は、画面に「不正解」という文字が表示される。反応と次の刺激の間の時間間隔は500ミリ秒であった。応答がないまま1,000ミリ秒の期限が経過した場合、次の刺激が提示され、応答省略と記録された。この研究では、テスト時間は8分であった。パフォーマンスの尺度は、正解と不正解の反応数であった。
TTは知覚運動スキルを評価する。ディスプレイ上で、トラックが可変方向に上向きに移動する。被験者はゲートウェイを操作する必要がある。ゲートウェイはジョイスティックを使用して水平に移動でき、トラックがゲートウェイの中央を通過するようになる。被験者は2,400ミリ秒の「プレビュー時間」でトラックの動きを予測できる。TTは7分間提示された(30秒間隔を14回)。パフォーマンスの尺度は、トラックとゲートウェイの中央の間の距離の二乗平均平方根(RMS)であった。この測定値は、タスク全体だけでなく、30秒間隔も各個人に対して計算された。」(204頁右欄8~33行)

エ 「L-チロシンは、70gのダイエットパウダーPROTIFAR(Nutricia、Zoetermeer、オランダ)を溶解したオレンジジュースからなる500mlの飲料で供給された。この量のPROTIFARには、2gのチロシンを含む42gのタンパク質が含まれている。チロシンに加えて、PROTIFAR70gには以下が含まれる:アラリン(1.5g)、アルギニン(1.5g)、アスパラギン酸(3.4g)、システイン(0.4g)、グルタミン酸(9.5g)、グリシン(0.8g)、ヒスチジン(1.3g)、イソロイシン(4.3g)、ロイシン(4.3g)、リジン(3.7g)、メチオニン(1.1g)、フェニルアラニン(2.1g)、プロリン(4.2g)、セリン(2.6g)、スレオニン(1.9)、トリプトファン(0.6g)及びバリン(2.7g)。プラセボ群には、67gのFANTOMALT(Nutricia)が溶解されたオレンジジュースの混合物500mlが与えられた。FANTOMALTは、95%が炭水化物で構成されているが、タンパク質は含まれていないダイエットパウダーである。どちらの飲料にも同じ量のカロリー(255kcal)が含まれていた。被験者は5日間毎日1飲料を摂取する必要があった。」(205頁左欄下から9行~右欄7行)

オ 「知覚運動タスク
MCTの正解反応数は、事後テストではプラセボ群よりもチロシン群の方が有意に高かった(F(1,18)=4.11、p<0.05)。対照的に、チロシン群とプラセボ群で観察された不正解反応は有意な差はなかった(図1を参照)。
さらに、チロシン群の方が、プラセボ群(F(1,18)=6.14、p<0.05)よりも優れた事後テストでのRMSトラッキングスコアを示した(図2を参照)。図3には、14個の個別のTT間隔における、チロシン群とプラセボ群の平均RMS値を示す。ANCOVAは群及び間隔(F(13,234)=1.64、p=0.08)の相互作用を示した。この結果は、チロシン群の方がプラセボ群よりもTTでますます優れたパフォーマンスを示したことを示唆する。」(205頁右欄下から4行~206頁左欄10行)
カ 「
[図:0001411687000001.jpg]
図1.記憶比較タスク:事前テストと事後テスト中の、プラセボ群(n=11)とチロシン群(n=10)の正解反応数と不正解反応数の平均値。」(205頁左欄図1)
キ 「
[図:0001411687000002.jpg]
図2.追跡タスクとダブルタスク:事前テストと事後テスト中の、プラセボ群(n=11)とチロシン群(n=10)の追跡スコアの平均二乗平均平方根(RMS)。」(205頁左欄図2)
ク 「
[図:0001411687000003.jpg]
図3.追跡タスクとダブルタスク:事前テストと事後テスト中の、プラセボ群(n=11)とチロシン群(n=10)の各期間追跡スコアの平均二乗平均平方根(RMS)」(205頁右欄図3)

ケ 上記ア~クからすれば、引用文献10には以下のとおりの発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「王立陸軍士官学校(KMA)の士官候補生に対して、短期記憶の速度と質、及び、知覚運動スキルを向上させる、
チロシンを含むタンパク質が含まれる、ダイエットパウダーPROTIFARを溶解したオレンジジュースからなる飲料。」

(2)引用文献21に記載された事項

ア

「
[図:0001411687000004.jpg]
」
イ 「材料
Protifar:濃縮牛乳タンパク質、乳化剤(大豆レシチン)」(2枚目左欄最下行)

5 対比

(1)本願発明と引用発明を対比する。

引用発明の「飲料」は、少なくともチロシンを含むタンパク質、オレンジジュースが含まれる組成を有するものであるから、本願発明の「組成物」に相当する。

引用発明の「短期記憶の速度と質、及び、知覚運動スキルを向上させる」ことは、短期記憶や知覚運動という知的作業に関連する、速度向上、質及びスキル向上(「作業効率向上」に相当)させるものであるから、本願発明の「知的作業速度向上」又は「知的作業効率向上」に相当する。

引用発明の「チロシンを含むタンパク質が含まれる、ダイエットパウダーPROTIFARを溶解したオレンジジュースからなる飲料」と、本願発明の「酸味料および有機酸の少なくとも一方が共存する状態での乳タンパク質濃縮物」とは、ともに、タンパク質を成分するものであるといえるから、「タンパク質を成分」とする点において、一致する。

また、引用発明は、「王立陸軍士官学校(KMA)の士官候補生」を研究対象としており、研究過程で、負傷者は脱落していることからすれば(上記4(1)イ)、本願発明の「健常者」を対象としているといえる。

(2)そうすると、本願発明と引用発明とは、

「タンパク質を成分として含む、
健常者の知的作業速度向上用組成物または知的作業効率向上用組成物。」

の点で一致し、次の点で一応相違する。

<相違点1>

本願発明が「酸味料および有機酸の少なくとも一方が共存する状態での乳タンパク質濃縮物」であることが特定されているのに対して、引用発明はその点が特定されていない点。

<相違点2>

本願発明が「安定剤を含む」ことが特定されているのに対して、引用発明はその点が特定されていない点。

<相違点3>

本願発明が「乳タンパク質濃縮物を有効成分として含」み「遊離チロシンを含まない」ことが特定されているのに対して、引用発明はその点が特定されていない点。

6 判断

(1)相違点1について

引用発明は、オレンジジュースを含む飲料であり、オレンジジュースには、有機酸が含まれていること(引用文献23:588頁Table1.、590頁Table2.)は技術常識である。

また、引用文献21によれば、引用発明のダイエットパウダーPROTIFARは、濃縮牛乳タンパク質を含有している(4(2)イ)とされている。

そうすると、引用発明において、オレンジジュースに含まれる有機酸が、ダイエットパウダーPROTIFAR中の濃縮牛乳タンパク質(「乳タンパク質濃縮物」に相当)と共存しているものと認められるから、相違点1は実質的なものではない。

仮に、相違点1の有機酸が乳タンパク質濃縮物と共存する点が実質的な相違点であるとしても、ダイエットパウダーPROTIFARは、濃縮牛乳タンパク質を含有するものであって、乳タンパク質を含有する飲料に、pH調整、酸特有の清涼感付与等の目的のために、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸等の有機酸を添加することは周知である(引用文献16:特許請求の範囲、2頁左上欄9-15行、実施例2-3等、引用文献17:【0001】、【0012】、試験例等、引用文献18:[特許請求の範囲]、実施例34-36等を参照。)から、引用発明において、有機酸を添加すること、また、有機酸を添加することで、酸特有の清涼感を付与することは、有機酸をいわゆる酸味料として添加することに他ならないから、本願発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者にとって容易である。

(2)相違点2について

引用文献21によれば、引用発明のダイエットパウダーPROTIFARは、乳化剤(大豆レシチン)を含有している(4(2)イ)とされている。

そして、引用文献22によれば、大豆レシチンは調製粉乳に含有可能な乳化剤や安定剤の例(引用文献22:【0039】)に挙げられている。

そうすると、引用発明のダイエットパウダーPROTIFARに含まれる、大豆レシチンは安定剤といえるから、相違点2は実質的なものではない。

仮に、相違点2が実質的なものであるとしても、乳成分を含む組成物において、大豆レシチンを安定剤として含有させること(引用文献21:4(2)イ、引用文献22:【0039】)、酸性乳飲料の分離及び沈殿を抑制する等の目的で安定剤を配合することが周知である(引用文献18:【0030】等、引用文献19:請求の範囲、【0025】等、引用文献20:[特許請求の範囲]、【0007】等を参照。)から、引用発明において、安定剤を配合することによって、本願発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者にとって容易である。

(3)相違点3について

引用文献10には、「チロシンを含むタンパク質が豊富な飲料」(4(1)ア)、「L-チロシンは、70gのダイエットパウダーPROTIFAR(・・・)を溶解したオレンジジュースからなる500mlの飲料で供給された。」(4(1)エ)と記載されている。

一方、引用文献10には、「この量のPROTIFARには、2gのチロシンを含む42gのタンパク質が含まれている。チロシンに加えて、PROTIFAR70gには以下が含まれる:アラリン(当審注:アラリン(alaline)は「アラニン(alanine)」の誤記と認める。)(1.5g)、・・・及びバリン(2.7g)。」(4(1)エ)と記載されており、つまり、PROTIFARに含まれる42gのタンパク質の内訳として、「2gのチロシン」及び「アラリン(1.5g)、・・・及びバリン(2.7g)」とアミノ酸の名称で表記されていることから、これらは、タンパク質の構成要素のアミノ酸を示すもので、単体(フリー)の遊離アミノ酸ではないと考えられる。さらに、引用文献21には、PROTIFARには、タンパク質、炭水化物、糖類、脂肪、繊維が含まれていることが記載されているが、単体(フリー)の遊離チロシンやその他の遊離アミノ酸が含まれることは記載されていない(4(2)ア)。

また、生命活動を営むためにヒト及びその他の哺乳動物は、日常的にタンパク質の摂取を必要とし、タンパク質は消化管系においてアミノ酸(当審注:単体(フリー)の遊離アミノ酸)に消化され、成長、生育、繁殖及び同化作用などのために生体内で利用されることは周知の事実であり(例えば、国際公開第1990/11024号公報:1頁7~10行)、引用文献10で引用する参考文献19においても、乳タンパク質であるカゼインを含む食餌をラットに与えると、血清や脳などのチロシン含有量を増加させることが記載されている(Brain Research, vol.382, 1986, p.195-198, https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0006899386901320)。加えて、一般的に知られる乳タンパク質におけるアミノ酸組成からみても(Milk Science, Vol.61, No.2, 2012, p.95-103, https://www.jstage.jst.go.jp/article/milk/61/2/61_95/_pdf/-char/ja、特に、96頁表1)、引用文献10の「2gのチロシンを含む42gのタンパク質」との記載における「2gのチロシン」は、タンパク質を構成するチロシンの含有量として、矛盾しない量であるといえる。

そうすると、引用文献10の「チロシンを含むタンパク質が豊富な飲料」(4(1)ア)、「L-チロシンは、70gのダイエットパウダーPROTIFAR(・・・)を溶解したオレンジジュースからなる500mlの飲料で供給された。」(4(1)エ)という記載は、体内で、PROTIFARに含まれるタンパク質を消化することによって生じるアミノ酸であるチロシンを摂取することを示すものであって、チロシンはPROTIFARに含まれるタンパク質の構成要素であるアミノ酸の一つではあるが、PROTIFAR自体には遊離チロシンは含まれていないと解するのが自然である。

したがって、引用発明の有効成分はPROTIFARに含まれる、消化によりアミノ酸のチロシンを生じるタンパク質であって、PROTIFARには遊離チロシンは含まれていないから、相違点3は実質的なものではない。

(4)本願発明の効果について

本願発明の効果は、本願明細書【0007】、【0034】、【0054】等の記載からみて、「健常者の知的作業速度又は知的作業効率を有意に高める効果」であると認められる。

引用文献10には、引用発明の飲料が、MCT(短期記憶の速度と質の比較を評価)の制限時間内の正解反応数が有意に高かったこと、TT(ディスプレイ上でトラックがゲートウェイに到達するまでの所定時間内に操作されたゲートウェイ位置に基づく、知覚運動スキルを評価)でますます優れたパフォーマンスを示したことが記載されている(4(1)ウ、オ)から、本願発明の効果は、予測し得るものであるといえる。

審判請求書に添付されている実験成績証明書をみても、本願明細書には、安定剤や酸味料の範囲が明確に定義されていないから、当該実験成績証明書の表1の安定剤や酸味料が、本願明細書の実施例と同等のものとすることができない。

さらに、当該実験成績証明書の図1は、酸性(■)と中性(▲)の効果の優劣を示しているが、そもそも、本願明細書には、本願発明の組成物のpHと効果との関係について記載がないので、図1は、本願明細書に記載された本願発明の効果を裏付けるものではない。

したがって、当該実験成績証明書をみても、直ちには、本願発明の効果が予測し得ないものとすることもできない。

なお、本願明細書には、酸味料又は有機酸を添加することで、それらを添加していない場合に比べて、優れた効果を示すことは記載も示唆もされていないから、当該実験成績証明書に記載された、酸味料又は有機酸を添加することによる有利な効果は、本願明細書の記載されていたものとはいえない。

(5)請求人の主張について

ア 請求人は、令和6年2月8日提出の意見書において、おおむね、以下のとおり主張している。

引用文献10の投稿者が、引用文献10においてチロシンのみならず濃縮牛乳タンパク質も有効成分であると言及している箇所は一箇所もない。

さらに言えば、引用文献10には「The amount of PROTIFAR contains 42g of proteins, including 2g of tyrosine. In addition to tyrosine, 70g PROTIFAR contains the following: alaline (1.5g), arginine (1.5g), (以下略)」と記載されている共に、「It must be stressed that L-tyrosine was not supplemented in pure form but in protein-rich powder(訳:L-チロシンが、精製されたものではなく、タンパク質豊富な粉体の中に入った形態で供給されたことは不本意であり)」と記載されていることからすると、チロシンを含んでいるのはタンパク質ではなく、PROTIFARという製品であり、引用文献10に開示されているチロシンが遊離チロシンである。

一方、本願発明に係る組成物には、遊離チロシンは含まれておらず、乳タンパク質濃縮物が有効成分とされている。

以上から、本願発明に係る組成物は、いわゆる新規性及び進歩性を具備する。

イ 請求人の主張について検討する。

上記(1)、(3)のとおり、引用発明のPROTIFARは濃縮牛乳タンパク質を含有しており、チロシンはPROTIFARに含まれるタンパク質の構成要素であるアミノ酸の一つではあるが、PROTIFAR自体には遊離チロシンは含まれていないと解するのが自然であるから、引用発明のPROTIFARに含まれる濃縮牛乳タンパク質(消化によりチロシンを生じるもの)が有効成分である。

また、引用発明10の「It must be stressed that L-tyrosine was not supplemented in pure form but in protein-rich powder」の記載は、「L-チロシンが精製されたものではなく、タンパク質豊富な粉体の中に入った形態で供給されたことが強調されなければならない」と翻訳すべきであって、「L-チロシン」が「タンパク質豊富な粉体の中に入った形態」とは、前述のとおり、「チロシンは(ダイエットパウダー)PROTIFARに含まれるタンパク質の構成要素であるアミノ酸の一つ」であることを意味するものであり、引用文献10に開示のPROTIFARは、タンパク質に加えて、単体(フリー)の遊離アミノ酸としての遊離チロシンを添加されたものではないと解するのが相当である。

したがって、請求人の主張を採用することができない。

(6)まとめ

よって、本願発明は、引用文献10に記載された発明であり、引用文献10、16~23に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-011062

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  • 2024-005184拒絶査定不服審判 / 2026-08-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)超分岐コポリマーを含む硫酸塩非含有の化粧用洗い流し型組成物
    共通の審決分類: 113・A61K、121・A61K
  • 2024-007994拒絶査定不服審判 / 2026-08-17 / 原査定取消(特許/登録すべき)皮膚障壁強化用組成物
    共通の審決分類: 113・A61K、121・A61K

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